JP2009143989A - 水素添加油及びそれを含有する潤滑油 - Google Patents

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Abstract

【課題】室温下で潤滑油として使用することができ、かつ、酸化安定性が高い潤滑油、及びその製造方法の提供。
【解決手段】全構成脂肪酸中のステアリン酸含量が4質量%以下であり、かつ、炭素数18のジ不飽和脂肪酸含量が4質量%以下であることを特徴とする菜種油の水素添加油、及び菜種油を、0.005〜0.04MPaの水素圧力条件下で水素添加処理することを特徴とする、全構成脂肪酸中のステアリン酸含量が4質量%以下であり、かつ、炭素数18のジ不飽和脂肪酸含量が4質量%以下である水素添加油の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、植物油由来の潤滑油及びその製造方法に関するものである。
従来、動植物油の水素添加処理は、多価不飽和脂肪酸の減少による酸化安定性の向上や飽和脂肪酸等の増加による結晶性の付与を目的に行われてきた。そして、特に、酸化安定性が高く、かつ、生分解性の特徴を生かした潤滑油等への応用として、植物油原料由来の微水素添加油の開発が行われてきた。
例えば、特許文献1においては、ハイオレイック菜種油やハイオレイックサフラワー等のモノ不飽和脂肪酸含量の高い植物油を原料として、通常の水素添加処理後、ウィンタリング処理をして耐冷性液状潤滑油を製造している。しかしながら、室温で使用する潤滑油の場合には、耐冷性機能よりも、酸化安定性がさらに高い潤滑油が求められるようになった。
一般に植物油の水素添加処理としては、ニッケル触媒を用いて、120〜200℃の温度で、0.05〜0.5MPaの水素圧力で行うのが一般的である(非特許文献1)。そして、かかる条件で植物油を水素添加処理することで、室温で流動性のある水素添加油を得ることができ、かかる水素添加油のCDM値(酸化安定性の指標)は40時間程度であり、通常の植物油に比べると酸化安定性も高い。しかしながら、不飽和脂肪酸を含有しない合成の分岐脂肪酸エステル油に比べると、その酸化安定性はまだまだ十分なものではなかった。
特許文献2では、軟質パーム油について、0.01〜0.05MPaの圧力条件下で水素添加をしたフライ用、スプレー用の硬化油が例示されている。しかしながら、融点が25℃以下の室温で流動性のあるものを得るためには、水素添加した硬化油を分別処理して、低融点画分を得る必要があった。
特開2005−306894号公報 特公昭62−32240号公報 日本油化学会編、編者社団法人日本油化学会、「第四版 油化学便覧−脂質・界面活性剤−」発行所丸善株式会社、平成13年11月20日発行、p442−447
本発明の目的は、室温下で潤滑油として使用することができ、かつ、酸化安定性が高い潤滑油、及びその製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、安価で最も一般的な菜種油を用いて、0.005〜0.04MPaの微加圧下で水素添加処理することにより、飽和脂肪酸の増加が少なく、多価不飽和脂肪酸の残存量が少ない水素添加処理を行うことができ、酸化安定性が非常に高く、同時に、室温近傍で比較的結晶が析出しにくい水素添加油を得るに至った。
すなわち、本発明の第1の発明は、菜種油の水素添加油であり、該水素添加油の全構成脂肪酸中のステアリン酸含量が4質量%以下であり、かつ、炭素数18のジ不飽和脂肪酸含量が4質量%以下であることを特徴とする水素添加油である。
本発明の第2の発明は、前記水素添加油が、0.005〜0.04MPaの水素圧力条件下で水素添加処理されたものであることを特徴とする第1の発明に記載の水素添加油である。
本発明の第3の発明は、前記菜種油が、全構成脂肪酸中の炭素数18のモノ不飽和脂肪酸含量が56〜64質量%、炭素数18のジ不飽和脂肪酸含量が18〜24質量%、及び炭素数18のトリ不飽和脂肪酸含量が7〜13質量%であることを特徴とする第1又は第2の発明に記載の水素添加油である。
本発明の第4の発明は、前記菜種油が、全構成脂肪酸中のパルミチン酸含量が3〜6質量%、及びステアリン酸含量が1〜4質量%であることを特徴とする第1〜3のいずれか1つの発明に記載の水素添加油である。
本発明の第5の発明は、第1〜4の発明のいずれか1つの発明に記載の水素添加油を含有することを特徴とする潤滑油である。
本発明の第6の発明は、さらに、合成エステルを含有することを特徴とする第5の発明に記載の潤滑油である。
本発明の第7の発明は、前記合成エステルが、中鎖脂肪酸トリグリセリドであることを特徴とする第6の発明に記載の潤滑油である。
本発明の第8の発明は、菜種油を、0.005〜0.04MPaの水素圧力条件下で水素添加処理することを特徴とする、全構成脂肪酸中のステアリン酸含量が4質量%以下であり、かつ、炭素数18のジ不飽和脂肪酸含量が4質量%以下である水素添加油の製造方法である。
本発明の第9の発明は、前記菜種油が、全構成脂肪酸中の炭素数18のモノ不飽和脂肪酸含量が56〜64質量%、炭素数18のジ不飽和脂肪酸含量が18〜24質量%、及び炭素数18のトリ不飽和脂肪酸含量が7〜13質量%であることを特徴とする第8の発明に記載の水素添加油の製造方法である。
本発明の第10の発明は、前記菜種油が、全構成脂肪酸中のパルミチン酸含量が3〜6質量%、及びステアリン酸含量が1〜4質量%であることを特徴とする第8又は9の発明に記載の水素添加油の製造方法である。
本発明によれば、室温下で潤滑油として使用することができ、かつ、酸化安定性が高い潤滑油を得ることができ、潤滑油としては、金属加工、塑性加工、及び金属表面処理時の各種潤滑油(圧延油、切削油、研削油、引抜き加工油、プレス加工油、及び防錆油等)として使用することができる。また、食品機械用の潤滑油としても使用することができる。
さらに、本発明の水素添加油及びそれを含有することを特徴とする潤滑油は、乳化系、分散系、可溶化系の潤滑油製剤においても使用することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
先ず、本発明の原料として使用する菜種油について説明する。
本発明に使用する菜種油は、食品用・工業用として一般的に使用されている菜種油を使用することができ、全構成脂肪酸中の炭素数18のモノ不飽和脂肪酸(炭素数:二重結合数=18:1)含量が56〜64質量%であることが好ましく、炭素数18のジ不飽和脂肪酸(炭素数:二重結合数=18:2)含量が18〜24質量%であることが好ましく、 炭素数18のトリ不飽和脂肪酸(炭素数:二重結合数=18:3)含量が7〜13質量%であることが好ましい。
そして、特に飽和脂肪酸については、全構成脂肪酸中のパルミチン酸含量が3〜6質量%であることが好ましく、3〜4質量%であることがより好ましく、ステアリン酸含量が1〜4質量%であることが好ましく、1〜2質量%であることがより好ましい。
ここで、炭素数18のモノ不飽和脂肪酸とは、二重結合を1つ有する炭素数18の脂肪酸のことをいい、具体的には、シス体であるオレイン酸や、トランス体であるエライジン酸等のオクタデセン酸が挙げられる。また、炭素数18のジ不飽和脂肪酸とは、二重結合を2つ有する炭素数18の脂肪酸のことをいい、具体的には、シス・シス体であるリノール酸や、シス・トランス体等のオクタデカジエン酸が挙げられる。また、炭素数18のトリ不飽和脂肪酸とは、二重結合を3つ有する炭素数18の脂肪酸のことをいい、具体的には、シス・シス・シス体のα−リノレン酸やγ−リノレン酸等のオクタデカトリエン酸が挙げられる。
以下、本発明において、単に「モノ不飽和脂肪酸」、「ジ不飽和脂肪酸」、又は「トリ不飽和脂肪酸」と記載したには場合、それらの脂肪酸は、炭素数が18の脂肪酸のことをいう。
菜種油は、植物油の中でもパルミチン酸やステアリン酸等の飽和脂肪酸含量が少なく、また、他の植物油、例えば、大豆油、コーン油、綿実油、及びオリーブ油等は、パルミチン酸やステアリン酸等の飽和脂肪酸含量が約10〜25質量%であることから、流動性を有する水素添加油を得るために、菜種油を原料として使用する必要がある。また、油脂の酸化安定性を低下させる要因となるジ不飽和脂肪酸、及びトリ不飽和脂肪酸、すなわち多価不飽和脂肪酸の含量が、25〜37質量%と、大豆油等に比較して少なく、安価でもある。
そして、水素添加処理をすると、ステアリン酸含量が増加し、炭素数18のジ不飽和脂肪酸含量が減少してしまうことから、菜種油以外の大豆油、コーン油、綿実油、及びオリーブ油を原料として水素添加処理をした場合には、もともと原料に存在するステアリン酸含量及び炭素数18のジ不飽和脂肪酸含量の関係から、全構成脂肪酸中のステアリン酸含量が4質量%以下であり、かつ、炭素数18のジ不飽和脂肪酸含量が4質量%以下である水素添加油を得ることが困難、又はできない。つまり、水素添加処理により増加するステアリン酸含量を4質量%以下に抑えようとすると、酸化安定性を低下させる要因となる炭素数18のジ不飽和脂肪酸含量が4質量%より多くの量が残存してしまい、一方、水素添加処理により炭素数18のジ不飽和脂肪酸含量を4質量%以下に減少させようとすると、流動性を低下させる要因となるステアリン酸含量が4質量%より多くなってしまう。
なお、水素添加処理をした場合に、全構成脂肪酸中のステアリン酸含量が4質量%以下であり、かつ、炭素数18のジ不飽和脂肪酸含量が4質量%以下である水素添加油を得ることに支障を及ぼさない程度の量であれば、菜種油以外の植物油を原料菜種油に添加することができる。かかる植物油としては、例えば、高オレイン酸ヒマワリ油、コーン油、大豆油、紅花油、パーム分別液状油等が挙げられる。
次に、本発明の水素添加油について説明をする。
本発明の水素添加油は、全構成脂肪酸中のステアリン酸(炭素数:二重結合数=18:0)含量が4質量%以下であり、3〜4質量%であることが好ましく、また、ジ不飽和脂肪酸(炭素数:二重結合数=18:2)含量が4質量%以下であり、2〜4質量%であることが好ましい。全構成脂肪酸中のステアリン酸の含量が、4質量%より多くなると、水素添加油の流動性が低くなり、又は固化してしまい、また、ジ不飽和脂肪酸の含量が4質量%より多くなると酸化安定性が低下してしまうからである。
さらに、酸化安定性を高めるために、トリ不飽和脂肪酸(炭素数:二重結合数=18:3)含量は、0質量%であることが好ましい。
水素添加油の脂肪酸組成は、日本油化学会制定の基準油脂分析試験法に従い測定を行った。すなわち、暫15−2003「脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」に準じて行った。各脂肪酸の含量は全ピーク面積に対する百分率で算定した。水素添加油については、トランス体が生成するため、モノ不飽和脂肪酸含量は、トランス体も含めた合計値であり、ジ不飽和脂肪酸含量及びトリ不飽和脂肪酸含量についても、トランス体も含めた合計値である。
本発明の特定の脂肪酸組成を有する水素添加油を得るためには、菜種油を特定の加圧条件下で水素添加処理することが必要である。以下、本発明の水素添加油の製造方法について説明をする。
本発明の水素添加油の水素添加処理における水素圧力は、0.005〜0.04MPaであることが好ましく、0.008〜0.02MPaであることがより好ましい。水素圧力がこの範囲であると、流動性を低下させる要因となるステアリン酸の増加量を抑えることができ、しかも酸化安定性を低下させる要因となるジ不飽和脂肪酸をより多く減少させることができるからである。また、製造効率の点を考慮すると、水素圧力は0.005MPa以上が良い。
反応時の水素圧力は、反応開始から終了まで一定に保つことが望ましいが、反応時間短縮のために反応初期段階において圧力を高めることもできる。例えば、反応初期段階の水素圧力を0.05〜0.1MPaとし、反応途中から0.005〜0.04MPaとすることもできる。ただし、その場合にはステアリン酸含量の増加に留意する必要がある。本発明では、得られる水素添加油の構成脂肪酸中のステアリン酸含量を4質量%以下とすることが重要だからである。
水素圧力以外の条件は、通常の油脂の水素添加処理と同じ条件で行うことができ、水素添加反応は、菜種油を攪拌しながら行うのが好ましい。
る。例えば、触媒としては、ニッケル、白金、パラジウム、及び銅等を製剤化した触媒や、それらに油脂コーティング等の製剤化をしたもの等を使用できる。そして、油脂の水添用に使用する本発明の場合は、油脂コーティングをしたニッケル触媒製剤がより好ましい。これらの触媒は、市販品を使用できる。
触媒の添加量は、例えば、ニッケルに油脂コーティングをしたニッケル含量が20質量%である触媒製剤の場合の添加量は、原料菜種油の質量に対して0.01〜5質量%であることが好ましく、0.05〜1質量%であることがより好ましく、0.1〜0.5質量%であることが最も好ましい。
そして、水素添加反応の温度は、150〜240℃であることが好ましく、160〜220℃であることがより好ましい。工業スケールで行う場合、反応による発熱により反応途中において、反応温度が初期の設定温度よりも高い温度になってしまうことが多いが、先に説明をした温度範囲内の温度で反応させることが好ましい。
水素添加反応を終了させる時点の判断は、反応液の脂肪酸組成を測定し、全構成脂肪酸中のステアリン酸含量が4質量%以下であり、かつ、ジ不飽和脂肪酸含量が4質量%以下になっていることを確認することにより行うことができる。
簡易な方法として、得られた水素添加油の屈折率を測定し、求める水素添加油とほぼ同じ屈折率であれば、反応が終了時点に達していると判断することができる。また、一度製造行えば、同じ条件の製造であれば、反応時間により反応終了時点の判断をすることができ、使用した水素の総量からも反応終了時点を判断することができる。
なお、簡易な方法により反応終了時点を判断することもできるが、最終的には得られた水素添加油の脂肪酸組成により、反応終了時点を判断することが望ましい。
また、先に説明をした特定の水素圧力条件下で水素添加反応を行ったとしても、反応終了時点を過ぎてもさらに反応をさせたり(過剰反応)、また、反応終了時点到達前に反応を終了(不十分な水素添加反応)させたりすると、本発明の水素添加油を得ることができないため、反応終了点の判断が重要となる。そして、反応終了時点に到達させるのに必要な反応時間は、そのロットスケールや、触媒量、及び水素圧力等によって変ってくるため、得られる水素添加油の脂肪酸組成や屈折率等を確認することにより、反応終了時点を判断する必要がある。
次に、触媒の除去は、得られた反応液を、通常行われているろ過処理することにより行うことができる。また、必要に応じて油脂の精製処理を行うこともでき、例えば、活性白土、活性炭、その他吸着剤による脱色・吸着処理や脱臭処理を行うことができる。
次に、本発明の水素添加油の製造方法の具体例を挙げる。
菜種油12〜18kg、及び油脂コーティングしたニッケル触媒12〜90gを水素添加反応装置に入れる。撹拌をしながら、脱気処理により減圧をし、系内の温度を150〜240℃に加温する。そして、水素を流して反応容器内の水素圧力を0.005〜0.04MPaに保ちながら、水素添加処理を行う。反応途中でサンプリングした反応液の屈折率を測定して、反応の進行状況を確認し、求める水素添加油とほぼ同じ屈折率になる時点で、減圧又は窒素を流すことにより水素を脱気し、温度を40〜100℃に下げて冷却し、反応を止める。念のために、得られた水素添加油の脂肪酸組成を測定し、反応終了時点が正しかったことを確認する。
得られた反応液をろ過処理することでニッケル触媒を除去する。また、ろ過処理した後、さらに脱色・吸着処理や脱臭処理を行うこともできる。
なお、本発明の水素添加油は、分別処理により液状を分別することで、さらに流動性の高い水素添加油を得ることもできる。しかし、分別処理により結晶部を除去すると、収率が低下し、また、ジ不飽和脂肪酸の含量が増加してしまうという傾向がある。
次に本発明の潤滑油について説明する。
本発明の潤滑油は、先に説明をした水素添加油を含有するものであり、水素添加油をそのまま潤滑油として使用することもでき、その場合は潤滑油中の水素添加油含量は100質量%である。潤滑油中の水素添加油の含量は、10〜100質量%であることが好ましく、10〜99.99質量%であることがより好ましく、30〜99.99質量%であることがさらにより好ましく、50〜99.9質量%であることがさらにより好ましく、70〜99.9質量%であることが最も好ましい。
本発明の潤滑油は、金属加工時、塑性加工時、及び金属表面処理時の各種潤滑油(圧延油、切削油、研削油、引抜き加工油、プレス加工油、防錆油等)として利用することができ、さらに、食品機械用の潤滑油として使用することができる。
本発明の潤滑油中の水素添加油以外の成分としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、流動点降下剤、抗酸化剤、動植物油、合成エステル、鉱物油、合成炭化水素油及び潤滑油用添加剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を含有させることができ、これらは、市販品を使用することができる。
これらの成分を含有する潤滑油は、先に説明した水素添加油と、ポリグリセリン脂肪酸エステル、流動点降下剤、抗酸化剤、動植物油、合成エステル、鉱物油、合成炭化水素油及び潤滑油用添加剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上とを、40〜150℃で、5分〜120時間混合攪拌することにより製造することができる。
以下、本発明の潤滑油中の水素添加油以外の成分について説明をする。
本発明の潤滑油に使用するポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、構成脂肪酸として異なる種類の脂肪酸を有するポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、それらは結晶防止効果が高いことは一般的に良く知られているが、特に、その構成脂肪酸を限定するものではない。異なる種類の脂肪酸の組み合わせとしては、例えば、中鎖飽和脂肪酸、長鎖飽和脂肪酸、及び長鎖飽和脂肪酸から選ばれる2種以上の組み合わせが挙げられる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有させることで、より流動性が良く、室温において結晶固化しない潤滑油を得ることができる。
潤滑油中のポリグリセリン脂肪酸エステルの含量は、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.05〜3質量%であることがより好ましい。
本発明の潤滑油に使用する流動点降下剤としては、重合物系の化合物を使用することができ、かかる化合物として、例えば、ポリアルキルメタクリレート系、ポリアルキル化芳香族化合物系、アルキルフマレート−酢酸ビニル共重合物系、及びエチレン−酢酸ビニル共重合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。流動点降下剤を含有させることで、より流動性が良く、室温において結晶固化しない潤滑油を得ることができる。
潤滑油中の流動点降下剤の含量は、0.01〜3質量%であることが好ましく、0.05〜2質量%であることがより好ましく、0.1〜1質量%であることが最も好ましい。
本発明の潤滑油に使用する抗酸化剤としては、各種フェノール系化合物、各種アミン系化合物、レシチン、有機酸、及び抗酸化用の各種抽出エキス等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。抗酸化剤を含有させることで、より酸化安定性に優れた潤滑油を得ることができる。
フェノール系化合物としては、例えばトコフェロール、トコトリエノール、及びTBHQ等が挙げられる。有機酸としてはクエン酸、アスコルビン酸及びその誘導体等が挙げられる。各種抽出エキスとしては、茶抽出物、ローズマリー抽出物、ブドウ種子抽出物、セサモール、アセロラ抽出物、ローズヒップ抽出物、及びオリザノール等が挙げられる。
特に、潤滑油として食品機械用途や作業者への環境配慮が必要な用途に使用する場合には、植物由来のトコフェロール、トコトリエノール、レシチン、有機酸、及び各種抽出エキス等を使用することがより望ましい。
潤滑油中の抗酸化剤の含量は、50〜10000ppmであることが好ましく、100〜9000ppmであることがより好ましく、200〜8000ppmであることが最も好ましい。
本発明の潤滑油に使用する動植物油としては、植物油が好ましく、高オレイン酸含有のヒマワリ油、菜種油、大豆油等の他、パーム油等南方系油脂の分別液油や水素添加油、菜種油以外の植物油の水素添加油(分別処理を経たものを含む)等が挙げられる。動物油としては、豚脂、及び牛脂等が挙げられるが、凝固しやすい点や動物由来原料が好まれない場合には注意が必要である。そして、動物油を添加して凝固しやすい場合であっても、先に説明をしたポリグリセリン脂肪酸エステルや流動点降下剤、及び後に説明をする合成エステル等をさらに添加することで、その問題点を解消することができることが多い。
植物油を含有させる場合、これらを含有させることにより、例えば、高オレインの植物油を含有させた場合は酸化安定性が低下したり、逆に、酸化安定性が高い油脂を含有させた場合は結晶析出が多量になる傾向があるため注意が必要である。そして、植物油を添加して結晶析出が多い場合であっても、先に説明をしたポリグリセリン脂肪酸エステルや流動点降下剤、及び後に説明をする合成エステル等をさらに添加することで、その問題点を解消することができることが多い。
なお、動植物油を配合した潤滑油は、全構成脂肪酸中のステアリン酸含量が4質量%以下であり、かつ、炭素数18のジ不飽和脂肪酸含量が4質量%以下となるように調整することが、流動性、及び酸価安定性の点でより望ましい。
本発明の潤滑油に使用する合成エステルとしては、中鎖脂肪酸トリグリセリド、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸多価アルコールエステル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、トリオクチル酸・デカン酸トリグリセリド(トリカプリル酸・カプリン酸トリグリセリド)が挙げられる。
脂肪酸アルキルエステルとは、脂肪酸及びアルキルアルコールからなるエステルのことであり、脂肪酸としては、例えば、n−オクチル酸(カプリル酸)、n−デカン酸(カプリン酸)、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エルシン酸、及び各種合成分岐脂肪酸等が挙げられ、アルキルアルコールとしては、直鎖、及び合成分岐アルコール等が挙げられる。特に、オレイン酸、エルシン酸等の不飽和脂肪酸や不飽和結合を有する酸及びアルコールの場合には、酸化安定性を考慮して使用する必要があり、さらに、それらに含有する不純物に多価の不飽和結合を含有しているかどうかにも留意する必要がある。
脂肪酸多価アルコールエステルとしては、各種脂肪酸のトリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びペンタエリスルトール等のエステルが挙げられる。
本発明潤滑油に、合成エステルを含有させることで、粘度の調整をしたり、より酸化安定性を向上させたり、及び潤滑油耐久性能をより向上させたりすることができる。特に、食用油脂としても使用され、酸化安定性が高く、流動性も良好な中鎖脂肪酸トリグリセリドを使用するのが最も好ましい。
本発明の潤滑油に使用する鉱物油としては、パラフィン系鉱物油、ナフテン系鉱物油等が挙げられる。
本発明の潤滑油に使用する合成炭化水素油としては、ポリアルファーオレフィン油、ポリイソブテン油等が挙げられる。
先に説明した合成エステル、鉱物油、及び合成炭化水素油の潤滑油中の含量は、それらを単独で使用する場合であっても、2種以上使用する場合であっても、0.01〜90質量%であることが好ましく、0.01〜70質量%であることがより好ましく、0.1〜50質量%であることがさらにより好ましく、0.1〜30質量%であることが最も好ましい。
ただし、鉱物油については、環境問題、及び生分解性等の観点から、その含量はより少ない方が好ましく、また、合成炭化水素油についても、環境問題、及び生分解性等の観点から、その含量はより少ない方が好ましい。
そして、例えば、本発明の水素添加油と合成エステルを含有する潤滑油の配合としては、水素添加油が、10〜99.99質量%であることが好ましく、30〜99.99質量%であることがより好ましく、50〜99.9質量%であることがさらにより好ましく、70〜99.9質量%であることが最も好ましく、合成エステルが、0.01〜90質量%であることが好ましく、0.01〜70質量%であることがより好ましく、0.1〜50質量%であることがさらにより好ましく、0.1〜30質量%であることが最も好ましい。この場合、合成エステルとしては、食用油脂としても使用され、酸化安定性が高く、流動性も良好な中鎖脂肪酸トリグリセリドを使用するのが最も好ましい。
次に、潤滑油用添加剤について説明をする。
本発明の潤滑油には、潤滑油用の各種添加剤を含有させることができる。潤滑油用添加剤としては、極圧剤、防錆剤、防食剤、増ちょう剤、清浄剤、分散剤、及び消泡剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。潤滑油用添加剤の使用量については特に制限はなく、通常潤滑油に使用される量、例えば潤滑油中の含量が0.01〜50質量%となる量を添加して使用することができる。
極圧剤としては塩化パラフィン、硫化油、イオウ系化合物、リン系化合物、及びその他の各種減摩材等が挙げられる。防錆剤及び防食剤としては、カルボン酸、リン酸、スルフォン酸及びその塩、各種活性剤、アルキルアミン、並びにベンゾトリアゾール等が挙げられる。
増ちょう剤としては、各種金属石けん、ウレア化合物、及び無機紛体等が挙げられる。清浄剤及び分散剤としては、各種金属スルフォネート、フェネート、ホスフォネート、サリシレート、カルボキシレート、及びコハク酸系化合物等が挙げられる。消泡剤としては、シリコーン油等が挙げられる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〔水素添加油1の製造〕
菜種油(日清オイリオグループ(株)製、商品名:菜種白絞油)16kg、及び油脂コーティングしたフレーク状のニッケル触媒16g(ニッケル含量20質量%、添加量:油に対して0.1質量%)を水素添加装置に入れ、400rpmの条件で撹拌をし、減圧処理により脱気をし、また、反応系内の温度を160℃に加温した。
次に、水素を流して反応容器内の水素圧力を0.01MPaに調整して反応を開始し、かかる水素圧力を維持しながら水素添加処理を行った。反応開始から4.3時間後、減圧処理により水素を脱気し、80℃に冷却し反応を止めた。反応終了の判断は、反応途中でサンプリングをした反応液の屈折率を測定することにより行い、以前同じ条件で製造をした本発明の水素添加油(構成脂肪酸中のステアリン酸(炭素数:二重結合数=18:0)含量が4質量%品)と、その屈折率の値がほぼ同じ値になった時点を反応終了時点と判断した。
得られた反応液をろ過処理して触媒を除去し、水素添加油1を約16kg得た。なお、得られた水素添加油1のヨウ素価は83であった。
原料に使用した菜種油、及び得られた水素添加油1の脂肪酸組成を、ガスクロマトグラフ法で分析した。
実施例2〔水素添加油2の製造〕
実施例1と同じ原料を使用し、触媒量を0.3質量%、反応温度を200℃、水素圧力を0.02MPaとした以外は、実施例1と同条件で水素添加処理を行った。反応開始から4.0時間後、減圧処理により水素を脱気し、80℃に冷却し反応を止めた。反応終了の判断は、反応途中でサンプリングをした反応液の屈折率を測定することにより行い、以前同じ条件で製造をした本発明の水素添加油(構成脂肪酸中のステアリン酸(炭素数:二重結合数=18:0)含量が4質量%品)と、その屈折率の値がほぼ同じ値になった時点を反応終了時点と判断した。
得られた反応液をろ過処理して触媒を除去することで、水素添加油2を約16kg得た。なお、得られた水素添加油2のヨウ素価は82であった。
水素添加油2の脂肪酸組成を、ガスクロマトグラフ法で分析した。
実施例3〔水素添加油3の製造〕
実施例1と同じ原料を使用し、反応温度を200℃とした以外は、実施例1と同条件で水素添加処理を行った。反応開始から3.5時間後、減圧処理により水素を脱気し、80℃に冷却し反応を止めた。反応終了の判断は、反応途中でサンプリングをした反応液の屈折率を測定することにより行い、以前同じ条件で製造をした本発明の水素添加油(構成脂肪酸中のステアリン酸(炭素数:二重結合数=18:0)含量が4質量%品)と、その屈折率の値がほぼ同じ値になった時点を反応終了時点と判断した。
得られた反応液をろ過処理して触媒を除去することで、水素添加油3を約16kg得た。なお、得られた水素添加油3のヨウ素価は81であった。
水素添加油3の脂肪酸組成を、ガスクロマトグラフ法で分析した。
比較例1〔比較油1の製造〕
実施例1と同じ原料を使用し、水素圧力を0.05MPaとした以外は、実施例1と同条件で水素添加処理を行った。反応開始から3.2時間、減圧処理により水素を脱気し、80℃に冷却し反応を止めた。反応終了の判断は、構成脂肪酸中のステアリン酸含量(炭素数:二重結合数=18:0)が4質量%と推測される時点を反応終了時点と判断した。
得られた反応液をろ過処理して触媒を除去することで、水素添加比較油1を約16kg得た。なお、得られた水素添加比較油1のヨウ素価は82であった。水素添加比較油1の脂肪酸組成を、ガスクロマトグラフ法で分析した。
比較例2〔比較油2の製造〕
実施例1と同じ原料を使用し、水素圧力を0.1MPaとした以外は、実施例1と同条件で水素添加処理を行った。反応開始から3.4時間後、減圧処理により水素を脱気し、80℃に冷却し反応を止めた。反応終了の判断は、構成脂肪酸中の炭素数18のジ不飽和脂肪酸(炭素数:二重結合数=18:2)含量が4質量%以下と推測される時点を反応終了時点と判断した。
得られた反応液をろ過処理して触媒を除去することで、水素添加比較油2を約16kg得た。なお、得られた水素添加比較油2のヨウ素価は74であった。水素添加比較油2の脂肪酸組成を、ガスクロマトグラフ法で分析した。
比較例3〔比較油3の製造〕
実施例1と同じ原料を使用し、実施例1と同条件で水素添加処理を行った。反応開始から4.5時間後、減圧処理により水素を脱気し、80℃に冷却し反応を止めた。反応時間は、実施例1よりも長い時間で、反応液の屈折率から判断して、構成脂肪酸中のステアリン酸(炭素数:二重結合数=18:0)含量が4質量%より多くなっていると推測される時間とした。
得られた反応液をろ過処理して触媒を除去することで、水素添加比較油3を約16kg得た。なお、得られた水素添加比較油3のヨウ素価は79であった。水素添加比較油3の脂肪酸組成を、ガスクロマトグラフ法で分析した。
比較例4〔比較油4の製造〕
実施例1と同じ原料を使用し、実施例1と同条件で水素添加処理を行った。反応開始から4.0時間後、減圧処理により水素を脱気し、80℃に冷却し反応を止めた。反応時間は、実施例1よりも短い時間で、反応液の屈折率から判断して、構成脂肪酸中の炭素数18のジ不飽和脂肪酸(炭素数:二重結合数=18:2)含量が4質量%より多いと推測される時間とした。
得られた反応液をろ過処理して触媒を除去することで、水素添加比較油4を約16kg得た。なお、得られた水素添加比較油4のヨウ素価は84であった。水素添加比較油4の脂肪酸組成を、ガスクロマトグラフ法で分析した。
比較例5〔比較油5の製造〕
実施例1で使用した原料の菜種油を、大豆油(日清オイリオグループ(株)製、商品名:大豆白絞油)に代え、撹拌条件を500rpmとした以外は、実施例1と同条件で水素添加処理を行った。
反応開始から3.4時間後、減圧処理により水素を脱気し、80℃に冷却し反応を止めた。反応終了の判断は、構成脂肪酸中のステアリン酸含量(炭素数:二重結合数=18:0)が4質量%と推測される時点を反応終了時点と判断した。
得られた反応液をろ過処理して触媒を除去することで、水素添加比較油5を約16kg得た。なお、得られた水素添加比較油5のヨウ素価は86であった。原料として使用した大豆油、及び水素添加比較油5の脂肪酸組成を、ガスクロマトグラフ法で分析した。
実施例4〔潤滑油1の製造〕
実施例3で得られた水素添加油3を98.91g、トコフェロールを0.09g、及びポリグリセリン混合脂肪酸エステル(商品名:サンソフトQMP−5、太陽化学(株)製)1gを500ミリリットルガラスビーカーに入れ、50℃で30分間、プロペラ攪拌により混合することで、潤滑油1を100g製造した。
実施例5〔潤滑油2の製造〕
実施例1で得られた水素添加油1を90g、トリオクチル酸・デカン酸トリグリセリド(日清オイリオグループ(株)製、商品名:ODO)10gを500ミリリットルガラスビーカーに入れ、50℃で30分間、プロペラ攪拌により混合することで、潤滑油2を100g製造した。
〔脂肪酸組成の測定結果〕
表1及び2に、原料として使用した菜種油及び大豆油、実施例1〜3の水素添加油(水素添加油1〜3)、並びに比較例1〜5の水素添加比較油(水素添加比較油1〜5)について測定をした脂肪酸組成を示す。なお、炭素数18のモノ不飽和脂肪酸(炭素数:二重結合数=18:1)含量、炭素数18のジ不飽和脂肪酸(炭素数:二重結合数=18:2)含量、及び炭素数18のトリ不飽和脂肪酸(炭素数:二重結合数=18:3)含量の数値は、それぞれトランス体を含んだ数値である。
以下の結果から明らかなように、実施例1〜3の製造で得られた水素添加油1〜3は、水素添加処理することで、酸化安定性を低下させる要因となる炭素数18のジ不飽和脂肪酸(炭素数:二重結合数=18:2)含量は、4質量%以下まで減少していたにもかかわらず、水素添加処理により量が増加し、また、流動性を低下させる要因ともなるステアリン酸(炭素数:二重結合数=18:0)含量は、4質量%以下に抑えられていた。
しかし、水素圧力を0.001〜0.04MPaの範囲から外れる圧力にした場合、具体的には、水素圧力を0.05MPaとして水素添加処理した比較例1の製造で得られた水素添加比較油1は、流動性を低下させる要因となるステアリン酸(炭素数:二重結合数=18:0)含量を4質量%に抑えた場合、酸化安定性を低下させる要因となる炭素数18のジ不飽和脂肪酸(炭素数:二重結合数=18:2)含量は5質量%であり、4質量%以下には減少していなかった。
また、水素圧力を0.1MPaとして水素添加処理した比較例2の製造で得られた水素添加比較油2は、酸化安定性を低下させる要因となる炭素数18のジ不飽和脂肪酸(炭素数:二重結合数=18:2)含量は、1質量%まで減少していたが、流動性を低下させる要因となるステアリン酸(炭素数:二重結合数=18:0)含量は、4質量%以上に増加していた。
そして、過剰に水素添加処理をした場合、すなわち、実施例1より反応時間を長くした比較例3の製造で得られた水素添加比較油3は、酸化安定性を低下させる要因となる炭素数18のジ不飽和脂肪酸(炭素数:二重結合数=18:2)含量は3質量%であり、4質量%以下に減少していたが、流動性を低下させる要因となるステアリン酸(炭素数:二重結合数=18:0)含量は6質量%であり、4質量%より多いものとなっていた。
また、本発明の水素添加油を得るための水素添加処理が十分に行われていない場合、すなわち、実施例1の反応時間を短くした比較例4の製造で得られた水素添加比較油4は、ステアリン酸(炭素数:二重結合数=18:0)含量は3質量%であり、4質量%以下に抑えられてはいるが、炭素数18のジ不飽和脂肪酸(炭素数:二重結合数=18:2)含量は5質量%であり、4質量%以下に減少していなかった。
さらに、原料として大豆油を用い、実施例1と同条件で水素添加処理を行った比較例5の製造で得られた水素添加比較油5は、ステアリン酸(炭素数:二重結合数=18:0)含量を4質量%に維持しようとした場合、炭素数18のジ不飽和脂肪酸(炭素数:二重結合数=18:2)含量は16質量%までしか減少せず、4質量%以下に減少させることはできなかった。このことから、原料自体の構成脂肪酸のステアリン酸(炭素数:二重結合数=18:0)含量が4質量%であり、また、炭素数18のジ不飽和脂肪酸(炭素数:二重結合数=18:2)含量も多い大豆油は、本発明の水素添加油の原料として使用することは不適であることがわかる。
Figure 2009143989
Figure 2009143989
〔CDM試験による酸化安定性評価試験〕
原料として使用した菜種油、水素添加油1〜3、水素添加比較油1〜5、及び潤滑油1についてCDM試験(ランシマット試験)を行い、各油の酸化安定性の評価を行った。評価試験は、日本油化学会制定の基準油脂分析試験法に従って行い(2.5.1.2「CDM試験」)った。具体的には、3.0gの各種サンプルを、120℃で20リットル/時間の量の空気を吹き込んで行った。試験結果を表3に示す。
CDM試験による酸化安定性の評価は、誘導時間の長短により行うが、時間が長いものほどその油の酸化安定性が高いと判断する。
酸化安定性評価試験の結果、水素添加油1〜3は、すべて誘導時間が60時間前後となり、酸化安定性が高い油であることがわかった。また、潤滑油1は、水素添加油1〜3よりさらに20時間以上誘導時間が延びており、非常に酸化安定性の高い油であることがわかった。
一方、炭素数18のジ不飽和脂肪酸(炭素数:二重結合数=18:2)含量が5質量%である水素添加比較油1及び4は、誘導時間が40時間程度で、水素添加油1〜3より短かった。
そして、炭素数18のジ不飽和脂肪酸(炭素数:二重結合数=18:2)含量が4質量%以下であるが、ステアリン酸(炭素数:二重結合数=18:0)含量が4質量%以上である水素添加比較油2及び3は、酸化安定性の点では、水素添加油1〜3と同程度であった。
また、水素添加比較油5は、酸化安定性が著しく低いことがわかった。
Figure 2009143989
〔結晶析出及び流動性確認試験〕
水素添加油1〜3、潤滑油1及び2、並びに水素添加比較油1〜4について結晶析出及び流動性確認試験を行った。試験結果を表4に示す。
結晶析出については目視で結晶析出の様子を確認し、流動性の評価については、25℃の恒温器に各サンプルを入れて放置し、60時間後の各サンプルの流動性を確認した。
その結果、潤滑油1及び2は、結晶の析出がなく、流動性も良好であった。また、水素添加油1〜3は、僅かに結晶析出があったが、流動性は良好であった。
このことから、潤滑油1及び2、水素添加油1〜3は、酸化安定性が高いのみならず、流動性も良好なものであることから、潤滑油に適しているということがわかった。
ステアリン酸含量が4質量%以下である水素添加比較油1及び4も流動性については良好であったが、先に説明したように、酸化安定性の点で満足できず、酸化価安定性の高い潤滑油には適していないということがわかった。
一方、ステアリン酸含量が4質量%以上である水素添加比較油2及び3は、析出する結晶析出が多くて流動性が悪く、特に、ステアリン酸含量が11質量%の水素添加比較油2は、大部分が結晶化してしまい、潤滑油として使用できないものであることがわかった。
Figure 2009143989
本発明の水素添加油、及びそれを含有する潤滑油は、金属加工時、塑性加工時、及び金属表面処理時の各種潤滑油(圧延油、切削油、研削油、引抜き加工油、プレス加工油、防錆油等)として利用することができる。さらに、食品機械用の潤滑油としても使用することができる。

Claims (10)

  1. 菜種油の水素添加油であり、該水素添加油の全構成脂肪酸中のステアリン酸含量が4質量%以下であり、かつ、炭素数18のジ不飽和脂肪酸含量が4質量%以下であることを特徴とする水素添加油。
  2. 前記水素添加油が、0.005〜0.04MPaの水素圧力条件下で水素添加処理されたものであることを特徴とする請求項1に記載の水素添加油。
  3. 前記菜種油が、全構成脂肪酸中の炭素数18のモノ不飽和脂肪酸含量が56〜64質量%、炭素数18のジ不飽和脂肪酸含量が18〜24質量%、及び炭素数18のトリ不飽和脂肪酸含量が7〜13質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水素添加油。
  4. 前記菜種油が、全構成脂肪酸中のパルミチン酸含量が3〜6質量%、及びステアリン酸含量が1〜4質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水素添加油。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の水素添加油を含有することを特徴とする潤滑油。
  6. さらに、合成エステルを含有することを特徴とする請求項5に記載の潤滑油。
  7. 前記合成エステルが、中鎖脂肪酸トリグリセリドであることを特徴とする請求項6に記載の潤滑油。
  8. 菜種油を、0.005〜0.04MPaの水素圧力条件下で水素添加処理することを特徴とする、全構成脂肪酸中のステアリン酸含量が4質量%以下であり、かつ、炭素数18のジ不飽和脂肪酸含量が4質量%以下である水素添加油の製造方法。
  9. 前記菜種油が、全構成脂肪酸中の炭素数18のモノ不飽和脂肪酸含量が56〜64質量%、炭素数18のジ不飽和脂肪酸含量が18〜24質量%、及び炭素数18のトリ不飽和脂肪酸含量が7〜13質量%であることを特徴とする請求項8に記載の水素添加油の製造方法。
  10. 前記菜種油が、全構成脂肪酸中のパルミチン酸含量が3〜6質量%、及びステアリン酸含量が1〜4質量%であることを特徴とする請求項8又は9に記載の水素添加油の製造方法。
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