JP2009143058A - 無機塗膜を有する塗装鋼板 - Google Patents

無機塗膜を有する塗装鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】無機塗膜を有する塗装鋼板であって、無機塗膜と鋼板の密着性に優れ、アルミニウム鋳物との離型性に優れる塗装鋼板を提供する。
【解決手段】鋼板の上にケイ素を主成分とする無機塗膜を有する塗装鋼板を用いる。前記無機塗膜は金属元素を含む顔料を含有し、前記塗装鋼板は、鋼板の上にシリコーンポリエステル樹脂と前記顔料を含む塗膜が形成された積層体を、500℃以上で加熱して得られることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、無機塗膜を有する塗装鋼板に関する。
アルミニウム鋳物は、ダイカスト法や低圧鋳造法により製造される。これらの方法を用いて板状のアルミニウム鋳物を、同時に多数製造する場合、鋳造金型には仕切り板がセットされる。仕切り板により、金型内部は仕切られ、所定サイズのキャビティが形成される。当該仕切り板には、鋳造後にアルミニウム鋳物から容易に分離できることが必要とされる。
アルミニウム鋳物と仕切り板との分離を容易にするため、離型剤を仕切り板に塗布する方法が提案されている。離型剤として黒鉛粉末、雲母やタルク等を主成分とするものが提案されている(特許文献1など)。
しかし、従来の仕切り板は、離型剤が仕切り板からアルミニウム鋳物に移行しやすく、アルミニウム鋳物表面を汚染するという問題があった。このような問題をふまえ、仕切り板の表面に離型剤を塗布する代わりに、アクリルシリコーン樹脂の塗膜を形成する方法が提案されている(特許文献2、3)。しかし、アクリルシリコーン樹脂は、耐熱性に劣るため、アルミニウムの鋳造時に有機物が分解しやすい。分解した有機物は気泡となって塗膜に巣穴を形成したり、塗膜を剥離・脱落させたりする。その結果アルミニウム鋳物に、鋳巣や肌荒れ等の不良が発生することがあった。あるいは、塗膜が脱落した部分では、鋳物と仕切り板に焼付きが生じるという問題があった。
このようなアクリルシリコーン樹脂の問題点を改善するため、特許文献4には、アクリルシリコーン樹脂とシリカ系バインダー(コロイダルシリカ分散液にオルガノアルコキシシランを添加して加水分解させて得たもの等)を含む塗料から形成された塗膜を有する塗装金属板が提案されている。当該塗装金属板は、シリカ系バインダーがアクリルシリコーン樹脂を巻き込む形で塗膜が形成され、650℃前後の高温雰囲気下でも塗膜自体が結合力の高い三次元の網目構造を維持し、シリコーン由来のSi−O−Si構造が離型性を向上さすため仕切り板として好適であるとされている。
特開2003−285155号公報 特開2004−91566号公報 特開2004−18797号公報 特開2006−255898号公報
特許文献4に記載の塗装金属板は、シリカ系バインダーが必須である。しかし、シリカ系バインダーの調製等は煩雑であることと、切断加工において切り口の塗膜が細長く剥離するため、本文献に記載の方法とは異なる、新規な、無機塗膜を有する塗装鋼板が望まれていた。
発明者らは、特許文献4に記載の塗装金属板において、シリカ系バインダーが必須である原因について詳細に検討した結果、650℃前後の高温雰囲気下ではアクリルシリコーン樹脂が分解するため、耐熱性を向上させて健全な塗膜を維持するために、シリカ系バインダーが必要であることを見出した。一方で、シリカ系バインダーは塗膜を硬くし、金属との密着性を低下させることも明らかにした。
このような事情に鑑み、本発明は、無機塗膜を有する塗装鋼板であって、無機塗膜と鋼板の密着性に優れ、アルミニウム鋳物との離型性に優れる塗装鋼板を提供することを目的とする。
発明者らは、鋭意検討した結果、シリコーンポリエステル樹脂と特定の顔料を用いることにより、上記課題が解決できることを見出した。すなわち上記課題は以下の本発明により解決される。
[1]鋼板の上にケイ素を主成分とする無機塗膜を有する塗装鋼板であって、
前記無機塗膜は、金属元素を含む顔料を含有し、
前記塗装鋼板は、鋼板の上にシリコーンポリエステル樹脂と前記顔料を含む塗膜が形成された積層体を、500℃以上で加熱して得られる、塗装鋼板。
[2]前記顔料は、金属酸化物を含む、[1]に記載の塗装鋼板。
[3]前記[1]または[2]に記載の塗装鋼板を用いた、アルミニウム鋳造用仕切り板。
[4](A)鋼板の上にシリコーンポリエステル樹脂および前記顔料を含む塗膜が形成された積層体を準備する工程と、
(B)前記積層体を500℃以上で加熱する工程を含む、
鋼板の上にケイ素を主成分とする無機塗膜を有する塗装鋼板であって、
前記無機塗膜は、金属元素を含む顔料を含有する、塗装鋼板の製造方法。
[5]前記積層体に形成された塗膜中の前記顔料の含有量は、前記塗膜に対して2〜50質量%である、[4]に記載の製造方法。
本発明により、無機塗膜を有する塗装鋼板であって、無機塗膜と鋼板の密着性に優れ、アルミニウム鋳物との離型性に優れる塗装鋼板が提供できる。
1.塗装鋼板
本発明の塗装鋼板は、鋼板の上にケイ素を主成分とする無機塗膜を有する塗装鋼板であって、前記無機塗膜は、金属元素を含む顔料を含有し、かつ鋼板の上にシリコーンポリエステル樹脂と前記顔料を含む塗膜が形成された積層体を、500℃以上で加熱して得られる、ことを特徴とする。
(1)鋼板
塗装鋼板とは鋼板表面に塗膜を有する鋼板である。塗膜は鋼板表面に塗料を塗布して(塗装して)得られるが、本発明においては、特定の塗料を鋼板表面に塗装した積層体を500℃以上で加熱して得られる。これにより、塗膜に含まれる炭素・水素を主成分とする有機物が分解・除去され、ケイ素を主成分とする無機塗膜が鋼板の上に形成される。
鋼板とは板状の鋼である。鋼板は、塗装鋼板の分野においては「塗装原板」とも呼ばれる。鋼板の例には冷圧延鋼板、ステンレス鋼板が含まれる。ステンレス鋼板の例には、オーステナイト系、フェライト系およびマルテンサイトが含まれる。
鋼板は、塗装される前に、必要に応じて酸洗浄、あるいはアルカリ脱脂処理等により、表面に洗浄処理が施されていてもよい。また、鋼板は、リン酸処理、表面調整、塗布型ノンクロメート等により、化成処理がなされていてもよい。
鋼板の厚みは、特に限定されないが、アルミニウム鋳造用仕切り板としたときの加工しやすさ、熱歪み等から、0.5〜2mmであることが好ましく、経済的理由を加味すると、0.8mm程度であることがより好ましい。
(2)無機塗膜
無機塗膜とは、ケイ素等の無機元素が、単独あるいは酸素原子を介して結合して形成された塗膜をいう。本発明の無機塗膜は、ケイ素を主成分とし、かつ「金属元素を含む顔料」(以下「金属元素含有顔料」ともいう)を含む。本発明の無機塗膜は、シリコーンポリエステル樹脂、金属元素含有顔料を含む塗膜を、500℃以上で加熱する(「焼成する」ともいう)ことにより、鋼板表面に形成される。
便宜上、焼成前の塗膜を「焼成前塗膜」と、焼成後の塗膜を「焼成後塗膜」または「無機塗膜」という。
1)シリコーンポリエステル樹脂
シリコーンポリエステル樹脂とは、水酸基を有する有機ケイ素化合物等の水酸基含有化合物と酸をエステル化反応させて得られる樹脂をいう。水酸基含有化合物は、通常のポリエステル樹脂に用いられるアルコールを含んでいてもよい。本発明においては、後述するとおり、シリコーンポリエステル樹脂をマトリックスとし、金属元素含有顔料を含む塗膜を鋼板の上に形成して積層体を調製し、その後、当該積層体を500℃以上で焼成することにより無機塗膜が形成される。
このとき、シリコーンポリエステル樹脂と鋼板との密着性が十分でないと、焼成時に塗膜が剥離してしまうため、無機塗膜と鋼板の接着性が低下する。また、焼成時に塗膜が剥離して鋼板から脱落し、無機塗膜が得られない場合がある。従って、本発明においては、シリコーンポリエステル樹脂と鋼板の密着性が十分である必要がある。シリコーンポリエステル樹脂の柔軟性が低いと、塗膜と鋼板の密着性は低下する傾向にあるため、シリコーンポリエステル樹脂は柔軟性が高いことが好ましい。
このようなことから、本発明で用いるシリコーンポリエステル樹脂は、水酸基を有する有機ケイ素化合物、アルコール、酸をエステル化反応させて得られる樹脂であって、水酸基を有する有機ケイ素化合物成分の含有量が、全モノマー中、20〜60質量%であることが好ましい。前記有機ケイ素化合物成分の含有量が、この範囲にあると、焼成前塗膜と鋼板の密着性に優れる。
シリコーンポリエステル樹脂の原料である水酸基を有する有機ケイ素化合物としては、公知のものを用いてよいが、本発明においては、一分子内に水酸基を3つ有する「三官能タイプ」や、一分子内に水酸基を4つ有する「四官能タイプ」の有機ケイ素化合物が好ましい。さらには、「三官能タイプ」と「四官能タイプ」の有機ケイ素化合物を混合して用いることがより好ましい。
シリコーンポリエステル樹脂の原料である酸としては、公知のものを用いてよい。しかしながら、本発明においてはイソフタル酸が好ましい。
本発明のシリコーンポリエステル樹脂の分子量は数平均分子量(Mn)が2000〜3000であり、重量数平均分子量(Mw)は30000〜60000であることが好ましい。分子量がこの範囲にあると、焼成前塗膜と鋼板との密着性に優れる。本発明において記号「〜」はその両端の数値を含む。分子量はGPCを用いて、ポリスチレン換算して求めることが好ましい。
ポリエステルはその末端に水酸基またはカルボキシル基を有する。本発明のシリコーンポリエステル樹脂の酸価は12〜16mgKOH/gであることが好ましい。
本発明のシリコーンポリエステル樹脂は、硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤の例には、メラミン硬化剤が含まれる。メラミン硬化剤は、シリコーンポリエステル樹脂100質量部に対して、10〜60質量%であることが好ましく、40質量%程度であることがより好ましい。
2)金属元素含有顔料
本発明の無機塗膜は、金属元素含有顔料を含む。当該顔料は、後述するようにシリコーンポリエステル樹脂が焼成されて生成されるケイ素を主成分とする強固な無機塗膜の中に分散して存在する。また、当該顔料は金属元素を含むため、同じ金属元素であるケイ素との親和性も高く、無機塗膜との密着性も良好である。そのため、塗膜から当該顔料が脱落しにくい。よって本発明の塗装鋼板は、アルミニウム鋳物との離型性(以下単に「離型性」という)に優れる。
鋳型に注入されたアルミニウムと鋼板は、原子が互いに拡散し合って接合する、いわゆる拡散接合を生じやすい。しかし、本発明の塗装鋼板は、無機塗膜中に強固に固定された金属元素含有顔料が存在するため、アルミニウム原子と鉄原子の拡散を防止できる。このようなメカニズムによって、顔料による離型性が発現していると推察される。
本発明で好ましく用いられる金属元素含有顔料の例には、金属酸化物、金属塩や、表面を金属酸化物で被覆した有機顔料が含まれる。金属酸化物の例には、四酸化三鉄(Fe)、酸化第二鉄(Fe)、水酸化鉄(FeO・OH)、シリカ(SiO)、酸化チタン(TiO)が含まれる。金属塩の例には、硫酸バリウム(BaSO)が含まれる。表面を金属酸化物で被覆した有機顔料の例には、キナクリドン、フタロシアニンブルー、イソインドリノンを、アルミナやシリカで表面被覆したものが含まれる。
本発明に用いられる金属元素含有顔料の粒径は、通常顔料として用いられる粒径であれば限定されない。
本発明に用いられる金属元素含有顔料の添加量は、焼成前塗膜中、2〜50質量%であることが好ましく、2〜46質量%であることがより好ましい。ここでの「焼成前塗膜」とは、焼成前の塗膜であって、溶剤等の揮発分を含まない塗膜を意味する。金属元素含有顔料の添加量が2質量%未満では、離型性が十分でないことがある。また、金属元素含有顔料の添加量が46質量%を超えると、当該顔料が無機塗膜から脱落しやすくなり、その結果、アルミニウム鋳物に付着することがある。
3)無機塗膜
本発明の無機塗膜は、焼成前塗膜を500℃以上で焼成して得られる。この際に、有機物は分解して除去され、シリコーンポリエステル樹脂由来のケイ素を主成分とする無機塗膜が鋼板の上に形成される。このときケイ素は酸素と交互に結合して三次元状の構造体、すなわち、ケイ素酸化物を形成していると考えられる。本発明においては、焼成前塗膜と鋼板が良好な密着を保ったまま焼成され、ケイ素を主成分とする塗膜が形成される。従って、ケイ素を主成分とする塗膜は、鋼板と強固に密着している。そして、この塗膜中に、離型剤である前記顔料が分散している。このような構造をとることにより、本発明の塗装鋼板は、離型性に優れるのである。
無機塗膜の厚みは、焼成前塗膜を焼成して得られるため、焼成前塗膜の厚みよりも薄くなる。また、無機塗膜に含まれる金属元素含有顔料の濃度も、焼成前塗膜に含まれる金属元素含有顔料の濃度よりも高くなる。
無機塗膜の厚さは、離型性を発現できる厚さであれば特に限定されないが、1〜5μmであることが好ましい。また、無機塗膜中に含まれる金属元素含有顔料の量も離型性を発現できる厚さであれば特に限定されないが、無機塗膜に対して10〜80質量%であることが好ましい。
図1は、本発明の塗装鋼板の一態様を示す図である。図中、1は鋼板であり、2は無機塗膜であり、3は化成処理層である。
2.本発明の塗装鋼板の製造方法
本発明の塗装鋼板は、
(A)鋼板の上にシリコーンポリエステル樹脂、金属元素含有顔料を含む塗膜が形成された積層体を準備する工程と、
(B)前記積層体を500℃以上で加熱する工程、
を含む方法により製造される。
(1) A工程について
本工程では、鋼板の上にシリコーンポリエステル樹脂、金属元素含有顔料を含む塗膜、すなわち焼成前塗膜を有する鋼板(「積層体」という)を準備する。「積層体」は、シリコーンポリエステル樹脂、顔料を含む塗料を調整し、これを鋼板の表面に塗装して得ることができる。
1)塗料の調整
シリコーンポリエステル樹脂、金属元素含有顔料を含む塗料は、公知の方法で製造されうる。例えばシリコーンポリエステル樹脂に金属元素含有顔料、必要に応じて各種添加剤(メラミン硬化剤等)を混合して得られる。混合する手段は特に限定されないが、三本ロール、ビーズミル等を用いることが好ましい。金属元素含有顔料の配合量は、シリコーンポリエステル樹脂と金属元素含有顔料の合計量(「焼成前塗膜」または「乾燥塗膜」ともいう)に対して2〜50質量%とすることが好ましい。
また、塗料は溶媒を含んでいてもよく、シリコーンポリエステル樹脂と金属元素含有顔料の合計量が塗料中45〜55質量%となるように加えられることが好ましい。
2)塗装
上記のようにして得た塗料を鋼板に塗布し(「塗布工程」ともいう)、当該塗膜を加熱して乾燥させる(「焼付工程」ともいう)ことにより積層体が製造される。
塗料を鋼板に塗布する方法の例には、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、ナイフコートが含まれる。塗料の塗布量は、無機塗膜としたときに所望の膜厚となるように調整される。焼付処理は最高到達板温度が200〜280℃となるような条件で20〜90秒加熱して行うことが好ましい。
本(A)工程において得られる積層体は、焼成前塗膜と鋼板の密着性に優れるため、切断や折り曲げ加工を行うことができる。次工程で焼成して得た塗装鋼板を、後から加工することも可能ではあるが、無機塗膜は焼成前塗膜ほど柔軟ではないため、加工の仕方によっては、塗膜が割れることがある。従って、焼成後の塗装鋼板は、加工性が制限されることがある。しかし、折り曲げ加工後を施した積層体を次工程で焼成すれば、無機塗膜を有する塗装鋼板であって、任意の形状を有する塗装鋼板が得られる。従って、本発明の製造方法は、無機塗膜を有する塗装鋼板の形状の自由度を向上させられる利点がある。
また、積層体は、焼成前塗膜と鋼板の密着性に優れているため、切断された際に塗膜が細い線状に剥離する、いわゆるエナメルヘアーの発生を低減させることができる。エナメルヘアーが発生すると、連続加工性すなわち生産性が極めて悪くなることがある。従って、本製造方法は、生産性に優れるという利点も有する。
焼付工程により形成された焼成前塗膜の厚みは、1〜20μmであることが好ましく、5〜10μmであることがより好ましい。焼成前塗膜の厚みがこの範囲にあると、後述する(B)工程での焼成により、無機塗膜厚みを好ましい範囲である1〜5μmとすることができ、かつ積層体の加工性にも優れるからである。
ただし、焼付工程は、本工程の後の(B)工程の中で行ってもよい。この場合は、本発明の塗装鋼板をより簡易な工程で製造できるという利点がある。
(2) B工程について
本工程では、前工程で得た積層体を500℃以上で加熱して、塗膜の焼成を行う。本工程においては、シリコーンポリエステル樹脂中の、炭素、水素等の成分が分解されて、除去される。ほとんどの有機物は二酸化炭素となって塗膜から除去されると考えられる。そのため、焼成の雰囲気には酸素が存在することが好ましい。すなわち、焼成は大気中で行われることが好ましい。焼成において、ケイ素は塗膜にもともと存在していた酸素または空気中の酸素と反応し、ケイ素酸化物になると考えられる。つまり、ケイ素を主成分とする無機塗膜が鋼板の上に形成される。本発明においては、焼成前塗膜が鋼板と良好な密着性を保ったままケイ素酸化物が生成されるので、無機塗膜と鋼板の密着性も非常に良好となる。
金属元素含有顔料として金属酸化物や金属塩を用いた場合は、焼成においてその形状、化学的構造はほとんど変化しないと考えられる。また顔料として金属酸化物で被覆された有機顔料を用いた場合も、金属酸化物被覆層には変化が生じないため、顔料全体の形状、化学的構造も大きく変化しないと考えられる。金属元素含有顔料は、無機塗膜中に分散して存在し、かつ無機塗膜との密着性も、金属元素を含んでいるため良好と考えられる。以上から、優れた離型性を有する無機塗膜が形成される。
また、前記積層体は、焼成前塗膜と鋼板の密着性が良好であるため、本(B)工程の前に、積層体に切削加工、折り曲げ加工を施されていても、本工程において焼成前塗膜が鋼板から剥離・脱落しにくい。そのため、所望の形状に成形された、無機塗膜含有塗装鋼板を得ることができる。特に、積層体が、垂直方向に延びる部分を有するように加工されたり、焼成前塗膜が鋼板の下(鉛直方向)に存在する部分を有するように加工されたりした場合、焼成前塗膜と鋼板の密着性が良好でないと、本工程での加熱時に焼成前塗膜が剥離し、重力により塗膜が脱落・落下することがある。また、焼成前塗膜が鋼板の下(鉛直方向)に存在するように積層体を静置して本工程を行う際にも、焼成前塗膜と鋼板の密着性が良好でないと塗膜が脱落・落下することがある。しかし本発明においては、焼成前塗膜と鋼板の密着性が良好であるため、このような問題が生じにくい。
焼成の時間は特に限定されないが、0.5〜3時間程度とすることが好ましい。焼成の温度も、500℃以上であれば特に限定されないが、600〜700℃であることが好ましい。
3.本発明の塗装鋼板の用途
本発明の塗装鋼板は、アルミニウム鋳造用仕切り板(以下単に「仕切り板」ということがある)として好適である。仕切り板とは、板状のアルミニウム鋳物を、同時に多数製造する場合に、鋳造金型にセットされる板である。仕切り板は、本発明の塗装鋼板をそのまま用いてもよいが、前記の積層体を鋳型の中にセットし、鋳型を加熱して、当該積層体を焼成して、鋳型内で仕切り板を製造してもよい。
[実施例1〜8]
1)塗料の調製
シリコーンポリエステル樹脂、金属元素含有顔料、溶媒を三本ロールで混練して、塗料を調製した。
金属元素含有顔料は、表1に示すものを用い、乾燥塗膜(シリコーンポリエステル樹脂および金属元素含有顔料の合計量)100質量%に対して、7質量%となるようにした。溶媒にはシクロヘキサンを用い、溶媒の含有量は、金属元素含有顔料と樹脂の合計量が塗料の50質量%となるようにした。表1に示す金属元素含有顔料は、総て市販のものを用いた。
2)塗装鋼板の調製
塗装原板として、板厚0.8mmのSUS430ステンレス鋼板を準備した。当該鋼板に公知の方法により、アルカリ脱脂処理を施した。
続いて、前記のとおり調整した塗料を、ロールコーターを用いて塗布して塗布膜を形成した。塗布膜が形成された鋼板をオーブンに入れ、230℃で1分加熱して、鋼板の上に焼成前塗膜を形成し、積層体を得た。焼成前塗膜の厚みは、8μmであった。
3)離型性試験
i)このようにして得た積層体を、50mm×50mmの大きさに切断したものを二枚準備した。このときの加工性は良好であった。これらを600℃に加熱した炉に装入し、150分間加熱して、焼成し、無機塗膜を有する塗装鋼板を調製した。無機塗膜の厚みは2μmであった。無機塗膜中の金属元素含有顔料の含有量は、30質量%であった。
ii)一方の塗装鋼板の上に、800℃のアルミニウム溶湯を流し込み、もう一方の塗装鋼板をその上に被せ、アルミニウム溶湯8〜10gを本発明の塗装鋼板でサンドイッチした構造体を作成した。
iii)前記ii)工程の直後に、炉の温度を700℃に昇温し、アルミニウム溶湯の流動性を保持しながら、30分間放置した。
iv)構造体を炉から取り出して、室温まで冷却した。
v)構造体から、凝固したアルミニウムを剥がし、容易に剥がすことができたかどうかで、離型性を評価した。具体的には、容易に剥がすことができたものを○、やや容易に剥がすことができたものを△、容易に剥がすことができなかったものを×として評価した。
また、離型性試験において、離型されアルミニウム鋳物の表面を観察し、汚染されていないかどうかを評価した。当該評価を「非汚染性」評価とし、以下の基準で評価した。
汚染されていない場合 ○
やや汚染されていた場合 △
かなり汚染されていた場合 ×
これらの結果を表1に示す。
[実施例9〜12]
顔料として酸化チタンを用い、酸化チタンの添加量を乾燥塗膜100質量%に対して2、23、30、46質量%とした塗料を、実施例1〜8と同様にして調製した。これらの塗料を用いて、実施例1〜8と同様にして、本発明の塗装鋼板を調製し、離型性試験を行った。結果を表2に示す。
実施例7に関しては、切断加工性についても評価を行った。切断時にエナメルヘアーが観察されたものは切断加工性が不良として×、エナメルヘアーが観察されなかったものは切断加工性が良好として○と評価した。結果を表4に示す。
[比較例1〜5]
シリコーンポリエステル樹脂の代わりに、表3に示す樹脂を用いて、実施例と同様にして、比較用塗料を調製した。ただし、顔料は酸化チタンを、乾燥塗膜100質量%に対して7質量%用いた。これらの塗料を用いて、実施例1〜8と同様にして、塗装鋼板を調製し、離型性試験を行った。結果を表3に示す。
表3に示す樹脂は総て市販のものを用いた。
[比較例6]
シリコーンポリエステル樹脂、溶媒を三本ロールで混練して、顔料を含まない塗料を調製した。溶媒の量は、顔料と樹脂の合計量の50質量%となるようにした。この塗料を用いて、実施例1〜8と同様にして、塗装鋼板を調製し、離型性試験を行った。結果を表3に示す。
[比較例7]
シリコーンポリエステル樹脂、カーボンブラック、溶媒を三本ロールで混練して、塗料を調製した。カーボンブラックの量は焼成前の乾燥塗膜100質量%に対して7質量%とした。溶媒の量は、顔料と樹脂の合計量の50質量%となるようにした。この塗料を用いて、実施例1〜8と同様にして、塗装鋼板を調製し、離型性試験を行った。結果を表3に示す。
[比較例8]
1)アクリルシリコーン樹脂の調製
アクリル酸エステルおよびγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランをエチレングリコールモノブチルエーテルで希釈し、窒素雰囲気中でアゾビスイソブチルニトリルを添加した。この混合物を80℃で約6時間加熱して、重合させて、固形分30%の樹脂溶液を調製した。
2)シリカ系バインダーの調製
酸性の水性コロイド状シリカ分散液をと、メタノール性コロイド状シリカ分散液と混合した後、メチルトリエトキシシラン及び塩基性アルコキシランを添加した。この混合物を室温で5時間撹拌して、加水分解反応を完結させた。当該加水分解生成物をエチレングリコールモノブチルエーテルで希釈し、固形分30%の溶液を調製した。
3)比較塗料の調合
このようにして得たアクリルシリコーン樹脂、シリカ系バインダーを固形分で6:4(質量比)の割合で混合した。この混合物にさらに顔料として酸化チタンを、焼成前の乾燥塗膜100質量%に対して7質量%となるように配合して、塗料を調製した。
4)塗装鋼板の調製、評価
このようにして得た塗料を用いて、実施例7と同様にして塗装鋼板を調製し、評価した。結果を表4に示す。
Figure 2009143058
Figure 2009143058
Figure 2009143058
Figure 2009143058
実施例と比較例から、本発明の塗装鋼板は離型性に優れることが明らかである。また、実施例12から、金属元素含有顔料の添加量が多すぎると、アルミニウム鋳物の表面が汚染されやすくなる傾向が見られた。
本発明の塗装鋼板は、アルミニウム鋳物との離型性に優れるため、アルミニウム鋳造用仕切り板として有用である。
本発明の塗装鋼板の一態様を示す図
符号の説明
1 鋼板
2 塗膜
3 化成処理層

Claims (5)

  1. 鋼板の上にケイ素を主成分とする無機塗膜を有する塗装鋼板であって、
    前記無機塗膜は、金属元素を含む顔料を含有し、
    前記塗装鋼板は、鋼板の上にシリコーンポリエステル樹脂と前記顔料を含む塗膜が形成された積層体を、500℃以上で加熱して得られる、塗装鋼板。
  2. 前記顔料は、金属酸化物を含む、請求項1に記載の塗装鋼板。
  3. 請求項1に記載の塗装鋼板を用いた、アルミニウム鋳造用仕切り板。
  4. (A)鋼板の上にシリコーンポリエステル樹脂および前記顔料を含む塗膜が形成された積層体を準備する工程と、
    (B)前記積層体を500℃以上で加熱する工程を含む、
    鋼板の上にケイ素を主成分とする無機塗膜を有する塗装鋼板であって、
    前記無機塗膜は、金属元素を含む顔料を含有する、塗装鋼板の製造方法。
  5. 前記積層体に形成された塗膜中の前記顔料の含有量は、前記塗膜に対して2〜50質量%である、請求項4に記載の製造方法。
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