JP2009142172A - バイオマスを原料とする糖組成物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 リグノセルロース系バイオマス原材料の粉砕処理を必要とせず、糖回収率を低下させることなく、低温、常圧での糖化工程に濃度の低い酸を使用しながら、必要な酸糖化処理時間を大幅に短縮することを可能とする糖組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 原料リグノセルロース系バイオマスを80℃〜200℃の温度で摩砕処理する摩砕処理工程、該摩砕工程からの摩砕処理された原料リグノセルロース系バイオマスを液温35℃以下、好ましくは液温25℃以下で酸加水分解して糖含有液を得る酸糖化処理工程、該酸糖化処理工程からの酸糖化処理液から不溶画分を除去して糖含有液を分離取得する糖液分離工程を有することを特徴とする、リグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法。
【選択図】 なし
【解決手段】 原料リグノセルロース系バイオマスを80℃〜200℃の温度で摩砕処理する摩砕処理工程、該摩砕工程からの摩砕処理された原料リグノセルロース系バイオマスを液温35℃以下、好ましくは液温25℃以下で酸加水分解して糖含有液を得る酸糖化処理工程、該酸糖化処理工程からの酸糖化処理液から不溶画分を除去して糖含有液を分離取得する糖液分離工程を有することを特徴とする、リグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、リグノセルロース系バイオマスを原料として、酸処理を行うことによりオリゴ糖やグルコースなどの糖組成物を製造する方法に関する。
地球温暖化問題への対応として、京都議定書により日本は二酸化炭素排出量を1990年比で6%削減する必要がある。二酸化炭素排出量削減のためには化石燃料への依存度を下げていくことが重要であり、バイオマス等の再生可能エネルギーについて開発、利用が進められている。
全世界での化石燃料消費量のうちの約6割が輸送用燃料として利用されており、ガソリンの年間消費量は約6000万キロリットルに及ぶ。化石燃料への依存度を下げるためにはガソリンの消費量を抑えることが有効である。この点から、日本においても3%エタノールを添加したガソリンの販売が2006年より一部開始している。2000年実績のガソリン使用量で換算した場合、全てのガソリンに添加すれば約180万キロリットルのエタノール需要が見込まれる。
バイオマスのうち、将来にわたり最も供給量が期待されるリグノセルロース系バイオマスは、セルロース繊維の結晶構造がリグニンと複合体を形成して物理的及び化学的に強い構造を有する。リグノセルロース系バイオマスからエタノールを製造するためには、組織中のリグニンを除去し、セルロースやヘミセルロースを分解して発酵基質となる単糖を得るという糖化プロセスが必要である。糖化の方法としては酵素や酸加水分解による方法が広く研究されている。
酵素を用いた糖化方法では、セルロースが酵素の作用を受けやすくするために高温高圧蒸気によるリグノセルロース系バイオマス原料の爆砕処理などの前処理が必要となる。酵素処理の前処理として酸処理を用いる場合は併せて中和処理が必要となる。このように現段階では、酵素を用いた糖化方法はコスト面が実用化の障壁となっている(非特許文献1)。
一方、酸加水分解による糖化方法としては、主成分であるセルロース、ヘミセルロースなどの多糖を単糖に加水分解し、芳香族性高分子のリグニンと分離する方法が古くから取り組まれてきた。これまでに提案されてきた糖化方法は、触媒として用いる酸の濃度によって希酸法と濃酸法に大別される。希酸法は濃度数%の硫酸を用いて120〜140℃でセルロースやヘミセルロースを加水分解する方法であるが、加水分解液中の糖濃度が低いことなどが課題である。
濃酸法は、70%程度の硫酸もしくは40%程度の塩酸を用いる方法であり、希酸法に比べて低い温度で加水分解液中の糖濃度が高いという利点がある反面、装置の腐食と酸の回収が難しいことが課題である(非特許文献2)。
濃酸法は、70%程度の硫酸もしくは40%程度の塩酸を用いる方法であり、希酸法に比べて低い温度で加水分解液中の糖濃度が高いという利点がある反面、装置の腐食と酸の回収が難しいことが課題である(非特許文献2)。
以上の方法は、いずれも後段のエタノール発酵過程に供する液を効率的に産出するためのものであり、さらに改良された方法として、以下のような技術も提案されている。
(1)リグノセルロース系バイオマス原料を、65〜80%で、30〜70℃の硫酸中で予備処理し、続いて20〜60質量%で、液温40〜100℃で糖化処理を行う(特許文献1)。
しかし、上記の方法では、酸加水分解による糖化工程に要する時間を短縮するために、高温条件を必要としている。したがって、この方法では設備材質が高価となり、製造コストの低減が課題となっている。
しかし、上記の方法では、酸加水分解による糖化工程に要する時間を短縮するために、高温条件を必要としている。したがって、この方法では設備材質が高価となり、製造コストの低減が課題となっている。
酸加水分解、もしくは酵素加水分解による糖化工程の効率化を図るために以下のような前処理技術も提案されている。
(2)リグノセルロース系バイオマス原料をあらかじめ100〜1000μmに粗粉砕し、高温高圧の加圧熱水と接触させる。さらに平均粒径10μm以下になるまで粉砕したのち、加水分解を行う(特許文献2)。
(3)リグノセルロース系バイオマス原料を、80〜160℃、pH 5〜10の温水又は温エタノール水溶液で蒸煮する、もしくは、大気圧以上(圧力1〜10 kg/cm2)で温度100〜180℃の蒸気にさらしたのち、公知の方法による加水分解を行う(特許文献3)。
(4)リグノセルロース系バイオマス原料に水酸化カルシウム及び水を混合し、約20〜500psigの圧力下で酸素および酸素含有ガスなどの酸化剤を添加する。約40〜150℃で1〜36時間維持する。予備処理したリグノセルロース系バイオマスは酸加水分解などを行い、有用な産物に転化する(特許文献4)。
(5)リグノセルロース系バイオマス原料を平均粒子径10 mm以下となるように微粉砕したのち、酸加水分解を行う(特許文献5)。
(2)リグノセルロース系バイオマス原料をあらかじめ100〜1000μmに粗粉砕し、高温高圧の加圧熱水と接触させる。さらに平均粒径10μm以下になるまで粉砕したのち、加水分解を行う(特許文献2)。
(3)リグノセルロース系バイオマス原料を、80〜160℃、pH 5〜10の温水又は温エタノール水溶液で蒸煮する、もしくは、大気圧以上(圧力1〜10 kg/cm2)で温度100〜180℃の蒸気にさらしたのち、公知の方法による加水分解を行う(特許文献3)。
(4)リグノセルロース系バイオマス原料に水酸化カルシウム及び水を混合し、約20〜500psigの圧力下で酸素および酸素含有ガスなどの酸化剤を添加する。約40〜150℃で1〜36時間維持する。予備処理したリグノセルロース系バイオマスは酸加水分解などを行い、有用な産物に転化する(特許文献4)。
(5)リグノセルロース系バイオマス原料を平均粒子径10 mm以下となるように微粉砕したのち、酸加水分解を行う(特許文献5)。
上記の各方法のうち、(3)、(4)はいずれも、高温高圧条件を必要とする前処理であり、設備コストが高価となる。また、(2)の機械的粉砕については、粗粉砕の後、熱水処理を行い、さらに微粉砕が必要であり、(5)についても微粉砕が必要であるなど、処理に必要なエネルギー面でも課題が残っている。
本発明者らは、リグノセルロース系バイオマスの酸加水分解による糖化技術において、原材料の粉砕処理を必要とせず、糖回収率を低下させることなく、低温、常圧での糖化工程に濃度の低い酸を使用しながら、必要な酸処理時間を大幅に短縮することが可能となる原材料の前処理方法を開発した。したがって、本発明はリグノセルロース系バイオマスに含まれる糖組成物を高純度で、簡便にかつ迅速に取得することを目的とする。
上記の目的を達成することができる特許請求の範囲記載の本発明は次の各発明から選択される発明である。
(1)原料リグノセルロース系バイオマスを80℃〜200℃の温度で摩砕処理する摩砕処理工程、該摩砕工程からの摩砕処理された原料リグノセルロース系バイオマスを液温35℃以下、好ましくは液温25℃以下で酸加水分解して糖含有液を得る酸糖化処理工程、該酸糖化処理工程からの酸糖化処理液から不溶画分を除去して糖含有液を分離取得する糖液分離工程を有することを特徴とする、リグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法。
(1)原料リグノセルロース系バイオマスを80℃〜200℃の温度で摩砕処理する摩砕処理工程、該摩砕工程からの摩砕処理された原料リグノセルロース系バイオマスを液温35℃以下、好ましくは液温25℃以下で酸加水分解して糖含有液を得る酸糖化処理工程、該酸糖化処理工程からの酸糖化処理液から不溶画分を除去して糖含有液を分離取得する糖液分離工程を有することを特徴とする、リグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法。
(2)前記摩砕処理工程は、温度が120℃〜190℃で摩砕処理が行われる工程である、(1)項記載のリグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法。
(3)前記摩砕処理工程における摩砕処理は、リグノセルロース系バイオマスの水分量が30〜90質量%で行われることを特徴とする(1)項又は(2)項に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法。
(4)前記摩砕処理が、原料リグノセルロース系バイオマスに対して液温80℃〜200℃で2〜4回繰り返して施されることを特徴とする(1)項〜(3)項のいずれかに記載のリグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法。
(5)前記酸糖化処理工程は、前記摩砕処理されたリグノセルロース系バイオマスに対して、最初に濃度40〜65質量%の酸を用いる加水分解反応によって糖を抽出する処理をし、次に、濃度55〜80質量%の酸を用いる加水分解反応によって糖を抽出する処理を、それぞれ少なくとも1回行うことからなる工程であることを特徴とする(1)項〜(4)項のいずれか1項に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法。
(6)前記最初に濃度40〜65質量%の酸を用いる加水分解反応によって糖を抽出する酸処理がリグノセルロース系バイオマスのヘミセルロースを選択的に加水分解してヘミセルロース系糖成分を抽出する酸処理であり、続く、濃度55〜80質量%の酸を用いる加水分解反応によって糖を抽出する処理が最初の酸処理における残渣分中のセルロースを加水分解してセルロース系糖成分を抽出する酸処理であることを特徴とする(5)項記載のリグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法。
(7)前記酸処理に用いられる酸が、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、弗酸などの鉱酸、トリフルオロ酢酸のような有機酸、もしくはそれらの混合酸から選ばれることを特徴とする(1)項〜(6)項のいずれか1項に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法。
(8)原料リグノセルロース系バイオマスが、間伐材、建築廃材、林地残材、木材チップ及びパルプ等から選ばれる木本系バイオマスから選ばれる少なくとも1種及び/又はバガス、スイッチグラス、エレファントグラス、稲ワラ、ムギワラ、トウモロコシの芯等の草本系バイオマスから選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする(1)項〜(7)項のいずれか1項に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法。
(9)前記酸糖化処理液から糖含有液を分離する糖液分離工程は、酸糖化処理液から不溶画分を除いた後、イオン交換膜を利用した透析処理により酸含有液と糖含有液を分離する工程であることを特徴とする(1)項〜(8)項のいずれか1項に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法。
(10)前記イオン交換膜を利用した透析処理により酸糖化処理液から分離された酸含有液を酸糖化処理工程に循環再利用することを特徴とする(9)項記載のリグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法。
(11)前記(1)項〜(10)項のいずれか1項に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法で製造される糖含有液をエタノール醗酵工程の原料糖液として使用することを特徴とするリグノセルロース系バイオマスからエタノールを製造する方法。
本発明によれば、従来、リグノセルロース系バイオマスの酸加水分解法による糖化に要していた時間を大幅に短縮することが可能で、かつ、硫酸等の酸加水分解反応に必要とされる酸濃度を低減させることが可能となり、延いては、リグノセルロース系バイオマスを原料とするエタノール製造工程の効率化に多大の貢献をなす技術が提供される。
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
<摩砕処理工程>
本発明のリグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法が処理対象とするリグノセルロース系バイオマスの主たるものとしては、間伐材や建築廃材、ユーカリ、ポプラ、アカシア、ブナ、マツ、ヒノキ、スギ、モミ、トウヒ、カラマツ、コナラなどの木材のチップやパルプなどの木本系のリグノセルロース系バイオマスが挙げられ、他に、バガス、スイッチグラス、エレファントグラス、稲ワラ、ムギワラ、トウモロコシの芯などの草本系バイオマスも処理対象とすることができる。
<摩砕処理工程>
本発明のリグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法が処理対象とするリグノセルロース系バイオマスの主たるものとしては、間伐材や建築廃材、ユーカリ、ポプラ、アカシア、ブナ、マツ、ヒノキ、スギ、モミ、トウヒ、カラマツ、コナラなどの木材のチップやパルプなどの木本系のリグノセルロース系バイオマスが挙げられ、他に、バガス、スイッチグラス、エレファントグラス、稲ワラ、ムギワラ、トウモロコシの芯などの草本系バイオマスも処理対象とすることができる。
本発明のリグノセルロース系バイオマスの酸処理による糖の抽出方法においては、まず、原料となるリグノセルロース系バイオマスが摩砕処理工程で摩砕処理される。
原料となるリグノセルロース系バイオマスは、水分量が30〜90質量%、望ましくは40〜50質量%となるように調整されて摩砕処理原料とされる。リグノセルロース系バイオマス中の水分量の調整は、原料となるリグノセルロース系バイオマスを水中に所定時間浸漬すること等によって行われる。
原料となるリグノセルロース系バイオマスは、水分量が30〜90質量%、望ましくは40〜50質量%となるように調整されて摩砕処理原料とされる。リグノセルロース系バイオマス中の水分量の調整は、原料となるリグノセルロース系バイオマスを水中に所定時間浸漬すること等によって行われる。
水分量が調整されたリグノセルロース系バイオマスの摩砕処理には、木材から機械パルプを製造する際に使用されるグラインダーやリファィナーからなる摩砕機が使用できる。グラインダーとしてはストーンロールにリグノセルロース材料を押し付けて摩砕するストーングラインダーが好ましく、例えばシリンダーにより押し付けるポケットグラインダー、チェーンにより押し付けるチェーングラインダーが使用できる。ストーンとしては、天然石、セメントストーン、セラミックストーンなどが使用できる。また、石臼式の摩砕機も使用できる。
リファイナーとしては、木材から機械パルプを製造する際に用いられる各種高濃度リファイナー機を使用することができる。リファイナーの型としては、固定板と回転する1枚のディスクにより摩砕するシングルディスクリファイナー、2枚の逆回転するディスクにより摩砕するダブルディスクリファイナー、固定板を挟んで両側の回転するディスクにより摩砕するツインディスクリファイナーが使用できる。また、回転板が平板ではなく円錐型であるコニカルディスクリファイナーも使用できる。グラインダーやリファィナーからなる摩砕機では、摩砕効率を維持するために温水シャワーなどを使用して摩砕機内の目詰まりを防ぎながら摩砕処理が行われる。
なお、温水シャワーなどにより追加される水分、蒸発により飛散する水分などの水分変化も含めて、摩砕終了時の好ましい処理液の水分量は30〜90質量%、より好ましくは50〜85質量%である。
なお、温水シャワーなどにより追加される水分、蒸発により飛散する水分などの水分変化も含めて、摩砕終了時の好ましい処理液の水分量は30〜90質量%、より好ましくは50〜85質量%である。
摩砕処理は発熱を伴うため、摩砕処理中のリグノセルロース系バイオマス原料の温度は80〜200℃となり、多くの場合、120〜190℃となる。この熱によりリグノセルロース系バイオマス中のセルロースが解繊される。摩砕処理を1回もしくは2〜4回繰り返して行うことにより、リグノセルロース系バイオマスの表面から繊維が剥離され、細胞壁が破壊されてセルロースが露出した状態となり、続いて行われる酸加水分解反応においてセルロースは、より酸と反応し易く、酸加水分解反応が容易に進行する状態とされる。
摩砕機を出た摩砕されたリグノセルロース系バイオマスは、脱水、乾燥されて含水率1〜15質量%のバイオマス摩砕処理生成物とされる。
摩砕機を出た摩砕されたリグノセルロース系バイオマスは、脱水、乾燥されて含水率1〜15質量%のバイオマス摩砕処理生成物とされる。
<酸糖化処理工程>
次に、摩砕処理工程で製造された、脱水・乾燥されたバイオマスの摩砕処理生成物は、酸糖化処理工程に送られ、1〜80質量%、望ましくは50〜70質量%の濃度の酸で処理されてリグノセルロース系バイオマス中のヘミセルロースやセルロースなどの多糖類がオリゴ糖や単糖に分解され、酸水溶液中に溶出される。
次に、摩砕処理工程で製造された、脱水・乾燥されたバイオマスの摩砕処理生成物は、酸糖化処理工程に送られ、1〜80質量%、望ましくは50〜70質量%の濃度の酸で処理されてリグノセルロース系バイオマス中のヘミセルロースやセルロースなどの多糖類がオリゴ糖や単糖に分解され、酸水溶液中に溶出される。
酸糖化処理工程では、1回の酸処理によりヘミセルロースとセルロースの双方に由来するオリゴ糖及び単糖をまとめて得ることができるが、2段階の酸処理を行うことによって双方に由来するオリゴ糖及び単糖を別々に得ることもできる。2段階の酸処理の場合、まず、上記バイオマス原料を40〜65質量%の酸で処理することにより、ヘミセルロース系オリゴ糖を主として溶出させる。酸としては、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、弗酸などの鉱酸やトリフルオロ酢酸のような有機酸もしくは、これらの酸混合液が使用可能であるが、中でも硫酸が望ましく、特に50〜65質量%、好ましくは55〜60質量%の硫酸が適している。ヘミセルロース系オリゴ糖を溶出させる反応は、常圧、35℃以下で速やかに起こるが、生成するヘミセルロース系オリゴ糖成分の重合度低下を防ぐためには10℃〜25℃が望ましい。
この反応は特に加熱・加圧の必要がなく、従来の技術とは異なり、生成物はヘミセルロース系オリゴ糖が主体で単糖の存在は微量である。このため、単糖の過分解によるフルフラール化合物の生成や、単糖とアミノ酸が関与するメイラード反応由来の着色物質の生成は抑制される。
この反応は特に加熱・加圧の必要がなく、従来の技術とは異なり、生成物はヘミセルロース系オリゴ糖が主体で単糖の存在は微量である。このため、単糖の過分解によるフルフラール化合物の生成や、単糖とアミノ酸が関与するメイラード反応由来の着色物質の生成は抑制される。
溶出したヘミセルロース系オリゴ糖の回収方法としては、イオン交換樹脂法、膜濃縮法などが適用可能であるが、パルプ、セルロースパウダー、セルロースフィルターによる吸着でも容易に分離、回収することが可能である。また、上記処理液から不要画分を取り除いた後、酸濃度を急激に希釈低下させることによってオリゴ糖を凝集させる方法も有効である。
以上の方法によって得られるヘミセルロース系オリゴ糖組成物は、処理したバイオマス原料によって、収率、構造、割合などが異なるものとなる。オリゴ糖の種類としては、グルクロノキシラン由来のキシロオリゴ糖や、ガラクタン由来のガラクトオリゴ糖、グルコマンナン由来のマンノオリゴ糖など、また、少量のキシロース、アラビノース、ガラクトース、ラムノース、ガラクツロン酸、グルクロン酸、グルコースなどで構成されるオリゴ糖組成物となる。
次に、上記ヘミセルロース系オリゴ糖を溶出させる酸処理で得られる酸糖化処理液から分離される不溶画分について、さらに55〜80質量%の酸で処理することにより、セルロース系オリゴ糖を溶出させることができる。酸としては、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、沸酸、トリクロロ酢酸もしくは、これらの酸を主成分とした混合液が使用可能であるが、中でも硫酸が望ましく、特に55〜70質量%、好ましくは60〜64質量%の硫酸がセルロース系オリゴ糖を溶出させるためには適している。セルロース系オリゴ糖を溶出させる反応は、常圧、35℃以下で速やかに起こるが、オリゴ糖の重合度の低下を防ぐには10℃〜25℃が望ましい場合が多い。セルロース系オリゴ糖の回収方法もヘミセルロース系オリゴ糖の回収方法がそのまま踏襲できる。特に、凝集による回収を行う場合、セルロース系オリゴ糖が溶解した液をヘミセルロース系オリゴ糖溶出時に使用する酸濃度と同じ濃度にした場合、処理後の酸液濃度を調整することなく前段工程に利用可能となる。
なお、前記摩砕されたリグノセルロース系バイオマスを前記のように乾燥することなく、酸処理時の酸の濃度が上記の濃度範囲となるように調整することにより、乾燥工程を省略することも可能である。
なお、前記摩砕されたリグノセルロース系バイオマスを前記のように乾燥することなく、酸処理時の酸の濃度が上記の濃度範囲となるように調整することにより、乾燥工程を省略することも可能である。
これまでの技術では、低温、常圧にてリグノセルロース系バイオマスに酸処理を行ってオリゴ糖や単糖などの糖組成物を得るためには、強酸で長時間反応させる必要があった。本発明の方法で原料とされる摩砕処理されているリグノセルロース系バイオマスは、バイオマス中のセルロースが十分に解繊されているため、低温、常圧での酸加水分解の処理時間を大幅に短縮することが可能となる。
<糖液分離工程>
酸糖化処理工程で酸糖化処理液中に溶出した糖組成物又は糖液の回収方法としては、イオン交換樹脂法、膜濃縮法などが適用可能であるが、パルプ、セルロースフィルターによる吸着でも容易に分離、回収することが可能である。また、上記処理液から不溶画分を取り除いた後、酸濃度を急激に希釈低下させることによってオリゴ糖を凝集させる方法も有効である。
酸糖化処理工程で酸糖化処理液中に溶出した糖組成物又は糖液の回収方法としては、イオン交換樹脂法、膜濃縮法などが適用可能であるが、パルプ、セルロースフィルターによる吸着でも容易に分離、回収することが可能である。また、上記処理液から不溶画分を取り除いた後、酸濃度を急激に希釈低下させることによってオリゴ糖を凝集させる方法も有効である。
上記酸糖化処理工程で得られるオリゴ糖及び単糖を含む酸糖化処理液からは、そのまま酵素処理に供してアルコール発酵を行うための糖液を得ることができる。
通常、セルロース材料の酸糖化処理によって得られた処理液、即ち、酸・糖混合液は、アルコール発酵酵母が作用できるpH領域になるように中和されることが一般的である。しかし、該酸糖化処理液をガラス繊維濾紙やポリフッ化エチレン系繊維製濾布などによって固液分離して清澄な溶液を得た後、図1のイオン交換膜フローを有する透析法に従って、イオン交換膜の片面に該清澄溶液を接触させ、他方の面に水(回収用水)を接触させることにより、清澄溶液中の硫酸などの酸を選択的に他方の面側に透過させてアルコール発酵にそのまま使用できるpHを有する糖液とすることができる。
通常、セルロース材料の酸糖化処理によって得られた処理液、即ち、酸・糖混合液は、アルコール発酵酵母が作用できるpH領域になるように中和されることが一般的である。しかし、該酸糖化処理液をガラス繊維濾紙やポリフッ化エチレン系繊維製濾布などによって固液分離して清澄な溶液を得た後、図1のイオン交換膜フローを有する透析法に従って、イオン交換膜の片面に該清澄溶液を接触させ、他方の面に水(回収用水)を接触させることにより、清澄溶液中の硫酸などの酸を選択的に他方の面側に透過させてアルコール発酵にそのまま使用できるpHを有する糖液とすることができる。
上記のような透析法は、回収した酸を再利用するため、中和のための薬品を使用し廃棄する必要がなくなる点で好ましい。この透析方法で使用する陰イオン交換膜は、高分子材料により形成される膜であり、高分子の分子中にカチオン基を有するものである。カチオン基としては、四級アンモニウム基、四級ピリジニウム基などである。陰イオン交換膜は、溶液中のカチオン物質、中性溶解物は透過せず、小さなアニオン及び水素イオンのみを透過させる。
高分子材料としては、一般に、ハロアルキルスチレン及び、これと共重合可能なモノマーとの共重合体を四級アミノ化するか、ビニルピリジン及びこれと共重合可能なモノマーとの共重合体を四級ピリジニウム化したものである。共重合可能なモノマーとしては、スチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン、ビニルナフタレンなどのビニルモノマー、或いは、ジビニルベンゼンなどのジエンモノマー、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどのアクリル系モノマーなどが挙げられる。ジエン系モノマーを共重合することにより、耐薬剤性を向上することが一般的である。また、エポキシ基を有する高分子物質を混合することも可能である。
上記透析方法では、処理液中に含まれる糖類はイオン交換膜を通過することなく処理液中に残存し、酸の移動は濃度差を駆動力とするため、逆浸透膜などの運転とは異なり、圧力を負荷する必要はない。この透析方法では、イオン交換膜を挟んで対面している糖化処理液と回収用水の流動方向は逆方向に流すことが必要である。静置法あるいは順方向に流す方法では、酸の除去率を100%に近づけることは困難である。
本発明の方法のように、前記酸糖化処理工程におけるセルロース系バイオマス原料が木質系バイオマス、即ち、リグニンを含むバイオマス原料であると、酸糖化処理液中には酸可溶性リグニンが溶解している。酸可溶性リグニンは、酸による溶解処理直後は可溶化していても、光酸化や温度上昇により重合し、不溶化してしまう。このようなリグニン成分の不溶化が生起すると、その後の透析処理工程でイオン交換膜に付着して酸の除去効率を低下させるので、イオン交換膜による硫酸回収を遮光条件下で、かつ、処理液及び回収用水の温度を50℃以下、好ましくは40℃以下、最も望ましくは、30℃以下に厳密に制御した条件で行うことが必要となる。
前記した酸可溶性リグニンの重合による弊害を避けるための手段としては、酸糖化工程における酸処理に先立ってリグノセルロース中のリグニン成分を加熱水又は有機溶剤により除去することも有効な手段である。また、酸処理液に光を当てるか又は酸処理液を50℃を越える温度に加熱して酸可溶性リグニンの重合・不溶化を促進した後、ろ過、あるいは比重分離によって酸処理液から除去してから前記透析処理工程に送ることも有効な手段である。しかし、このようなリグニン物質を透析処理工程に先立って除去したり、酸糖化処理液中に含まれている酸可溶性リグニン物質を除去するための処理工程を別途設けることはコスト面からも避けることが望ましい。
本発明の方法によれば、原料リグノセルロース系バイオマスに対して通常施されている粉砕処理に代えて摩砕処理を施すことにより、その後の酸糖化処理における酸の濃度を下げることができ、かつ、酸処理時間も大幅に短縮することができるため、酸糖化処理液中における酸可溶性リグニンの溶出を抑制することが可能となる。このような酸可溶性リグニンを殆ど含まない酸糖化処理液は、固−液分離後に、図1に示されるようなイオン交換膜を有する透析処理工程で処理してもイオン交換膜を汚染することなく、アルコール発酵原料とすることができるような糖液と、酸糖化処理工程に循環して再利用することができる酸水溶液とに容易に分離することができるという利点を有している。
以下、本発明を実施例等により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下に示す実施例等において、%は、特に断りがない限りは全ての質量による。糖濃度の測定には、フェノール硫酸法を用いた。方法については、「還元糖の定量法」(福井作蔵著 学会出版センター)を参考にした。
<参考例1>
平均粒子径0.5mm、0.25mm、0.1mm、0.05mmの各サイズに調整したスギ木片及び、1mm、5mm、10mm、20mmのメッシュふるいを通過したスギのカンナ屑の夫々100mgを別々にプラスチック試験管に投入し、夫々に61質量%硫酸10mlを加え、25℃に保ちながらスターラーにより8時間攪拌し、一段目の反応液を得た。各試験管中の反応液を遠心分離により上清と沈殿物に分離し、上清は別の容器に移して沈殿物を試験管内に残した。各試験管中の沈殿物に65質量%硫酸10mlを加え、25℃に保ちながら4時間攪拌した。得られた二段目の反応液を遠心分離して上清と沈殿物に分離した。上記一段目と二段目の上清を合わせた上清中の糖組成物量(回収率)と原料サイズの関係を表1に示した。リグノセルロース系バイオマスより常温硫酸処理によって糖を抽出した場合、原料サイズを平均粒子径10mm以下とすることにより回収率の極端な低下を防止できることが判明した。
平均粒子径0.5mm、0.25mm、0.1mm、0.05mmの各サイズに調整したスギ木片及び、1mm、5mm、10mm、20mmのメッシュふるいを通過したスギのカンナ屑の夫々100mgを別々にプラスチック試験管に投入し、夫々に61質量%硫酸10mlを加え、25℃に保ちながらスターラーにより8時間攪拌し、一段目の反応液を得た。各試験管中の反応液を遠心分離により上清と沈殿物に分離し、上清は別の容器に移して沈殿物を試験管内に残した。各試験管中の沈殿物に65質量%硫酸10mlを加え、25℃に保ちながら4時間攪拌した。得られた二段目の反応液を遠心分離して上清と沈殿物に分離した。上記一段目と二段目の上清を合わせた上清中の糖組成物量(回収率)と原料サイズの関係を表1に示した。リグノセルロース系バイオマスより常温硫酸処理によって糖を抽出した場合、原料サイズを平均粒子径10mm以下とすることにより回収率の極端な低下を防止できることが判明した。
<参考例2>
平均粒子径20mmサイズに調製したスギ木片20g(含水率1.80%)ずつを2つのプラスチックビーカーに投入し、それぞれに64質量%硫酸500mlを加え、15℃に保ちながら150rpmで攪拌機により一方は1時間、他方は18時間の攪拌を行った。処理終了後、アドバンテック社製ガラス繊維濾紙GA−100で濾過を行い、処理液から残渣を除去した。得られたそれぞれの処理液の糖濃度を測定し、回収率を算出した。
各処理液について糖成分の回収率を算出した結果を表2に示す。リグノセルロース系バイオマスより低温条件下での硫酸処理によって糖を抽出するには18時間程度の処理時間が必要であることが判明した。
平均粒子径20mmサイズに調製したスギ木片20g(含水率1.80%)ずつを2つのプラスチックビーカーに投入し、それぞれに64質量%硫酸500mlを加え、15℃に保ちながら150rpmで攪拌機により一方は1時間、他方は18時間の攪拌を行った。処理終了後、アドバンテック社製ガラス繊維濾紙GA−100で濾過を行い、処理液から残渣を除去した。得られたそれぞれの処理液の糖濃度を測定し、回収率を算出した。
各処理液について糖成分の回収率を算出した結果を表2に示す。リグノセルロース系バイオマスより低温条件下での硫酸処理によって糖を抽出するには18時間程度の処理時間が必要であることが判明した。
<参考例3>
平均粒子径0.5mmサイズに調製したスギ木粉100 mgずつをプラスチック試験管多数本に入れ、それぞれに表3に示す濃度の硫酸10mlを加え、25℃に保ちながらスターラーにより8時間攪拌し、一段目の反応液を得た。上記反応液を遠心分離により上清と沈殿物を分離した。各処理液の上清について糖濃度を測定し、回収率を算出した結果を表3に示す。
平均粒子径0.5mmサイズに調製したスギ木粉100 mgずつをプラスチック試験管多数本に入れ、それぞれに表3に示す濃度の硫酸10mlを加え、25℃に保ちながらスターラーにより8時間攪拌し、一段目の反応液を得た。上記反応液を遠心分離により上清と沈殿物を分離した。各処理液の上清について糖濃度を測定し、回収率を算出した結果を表3に示す。
<実施例1>
平均粒子径20mmサイズに調製したスギ木片(含水率17%)2kgを一昼夜水に浸漬して含水率50%とした。熊谷理機工業社製連続式高濃度リファイナー機のクリアランスを0.8mmに調節し、80℃の温水4.5Lを供給しながら上記木片を投入して3分間摩砕処理を行って1回目の摩砕処理物を得た。次いで、上記リファイナーのクリアランスを0.3mmに調節し、1回目の摩砕処理物を摩砕処理して2回目の摩砕処理物を得、さらに、リファイナーのクリアランスを0.2mmに調節し、該2回目の摩砕処理物を摩砕処理して摩砕処理直後の温度が120℃となっている3回目の摩砕処理物(含水率72.65%)を得た。最後に、該3回目の摩砕処理物を65℃のオーブンで12時間乾燥して含水率1.74%の摩砕処理試料を調製した。
平均粒子径20mmサイズに調製したスギ木片(含水率17%)2kgを一昼夜水に浸漬して含水率50%とした。熊谷理機工業社製連続式高濃度リファイナー機のクリアランスを0.8mmに調節し、80℃の温水4.5Lを供給しながら上記木片を投入して3分間摩砕処理を行って1回目の摩砕処理物を得た。次いで、上記リファイナーのクリアランスを0.3mmに調節し、1回目の摩砕処理物を摩砕処理して2回目の摩砕処理物を得、さらに、リファイナーのクリアランスを0.2mmに調節し、該2回目の摩砕処理物を摩砕処理して摩砕処理直後の温度が120℃となっている3回目の摩砕処理物(含水率72.65%)を得た。最後に、該3回目の摩砕処理物を65℃のオーブンで12時間乾燥して含水率1.74%の摩砕処理試料を調製した。
上記摩砕処理試料の絶乾質量15.0g相当(含水率1.74%)をプラスチックビーカーに投入し、64質量%硫酸500mlを加え、15℃に保ちながら150rpmの攪拌速度で攪拌機により一時間もしくは18時間の攪拌を行った。処理終了後、アドバンテック社製ガラス繊維ろ紙GA−100で濾過を行い、処理液と残渣を分離した。得られた処理液の糖濃度を測定し、回収率を算出した。
各処理液の回収率を算出した結果を表4に示す。本実施例により、酸加水分解の前処理としてリグノセルロース系バイオマスの摩砕処理を行うことにより、処理時間を大幅に短縮し、回収率を増大させることが可能となることが判明した。
各処理液の回収率を算出した結果を表4に示す。本実施例により、酸加水分解の前処理としてリグノセルロース系バイオマスの摩砕処理を行うことにより、処理時間を大幅に短縮し、回収率を増大させることが可能となることが判明した。
<実施例2>
平均粒子径20mmサイズに調製したスギ木片0.5kg(含水率20%)を増幸産業社製スーパーマスコロイダーMKZA10−20+INV(石臼式摩砕機)を用いて摩砕処理を行った。クリアランスは0.3mmとし、水5Lを供給しながらスギ木片を投入し、3分40秒間摩砕処理を行った。得られた摩砕処理物の摩砕直後の温度は150℃であり、含水率は85%であった。得られた摩砕処理物を凍結乾燥し、含水率7.08%の摩砕処理試料を調製した。
比較のために、スギ木片を平均粒子径2.0mm及び5.0mmサイズとなるように破砕処理した。前記破砕処理試料の含水率は2.0mmのものが14.53%、5.0mmのものが17.57%であった。
平均粒子径20mmサイズに調製したスギ木片0.5kg(含水率20%)を増幸産業社製スーパーマスコロイダーMKZA10−20+INV(石臼式摩砕機)を用いて摩砕処理を行った。クリアランスは0.3mmとし、水5Lを供給しながらスギ木片を投入し、3分40秒間摩砕処理を行った。得られた摩砕処理物の摩砕直後の温度は150℃であり、含水率は85%であった。得られた摩砕処理物を凍結乾燥し、含水率7.08%の摩砕処理試料を調製した。
比較のために、スギ木片を平均粒子径2.0mm及び5.0mmサイズとなるように破砕処理した。前記破砕処理試料の含水率は2.0mmのものが14.53%、5.0mmのものが17.57%であった。
上記摩砕処理試料及び上記破砕処理試料のそれぞれについて、絶乾質量2.0g相当を別々にプラスチックビーカーに投入し、70質量%硫酸100mlを加え、15℃に保ちながら150rpmの攪拌速度で攪拌機により、一方については1時間、他方については18時間の攪拌を行った。処理終了後、アドバンテック社製ガラス繊維ろ紙GA−100で濾過を行い、処理液と残渣を分離した。得られた各処理液の糖濃度を測定し、回収率を算出した。
各処理液の回収率を算出した結果を表5に示す。リグノセルロース系バイオマスの前処理に、リグノセルロース系バイオマス試料中の水分を30%〜90%に保った状態で摩砕処理を行うことにより、処理時間を大幅に短縮し、回収率を増大させることが可能となることが判明した。
各処理液の回収率を算出した結果を表5に示す。リグノセルロース系バイオマスの前処理に、リグノセルロース系バイオマス試料中の水分を30%〜90%に保った状態で摩砕処理を行うことにより、処理時間を大幅に短縮し、回収率を増大させることが可能となることが判明した。
<実施例3>
平均粒子径20mmサイズに調製したスギ木片0.5kg(含水率20%)を実施例2と同様に摩砕処理を行い、得られた摩砕処理物を実施例2と同様に凍結乾燥して、含水率7.08%の摩砕処理試料を調製した。
平均粒子径20mmサイズに調製したスギ木片0.5kg(含水率20%)を実施例2と同様に摩砕処理を行い、得られた摩砕処理物を実施例2と同様に凍結乾燥して、含水率7.08%の摩砕処理試料を調製した。
上記摩砕処理試料の絶乾質量2.0g相当を複数個のプラスチックビーカーにそれぞれ投入し、56〜70質量%硫酸100mlを加え、15℃に保ちながら150rpmの攪拌速度で攪拌機により1時間攪拌を行った。処理終了後、アドバンテック社製ガラス繊維ろ紙GA−100で濾過を行い、処理液と残渣を分離した。得られた処理液の糖濃度を測定し、回収率を算出した。各処理液の回収率を表6に示す。
本実施例により、酸加水分解の前処理としてリグノセルロース系バイオマスの摩砕処理を行うことで、糖回収率を大幅に低下させることなく、酸加水分解反応に用いる酸濃度を下げることができることが判明した。
本実施例により、酸加水分解の前処理としてリグノセルロース系バイオマスの摩砕処理を行うことで、糖回収率を大幅に低下させることなく、酸加水分解反応に用いる酸濃度を下げることができることが判明した。
<参考例4>
平均粒子径20mmサイズに調製されたスギ木片400gをプラスチックビーカーに投入し、70%硫酸500mlを加え、硫酸(処理液)の温度を15℃に保ちながら150rpmの攪拌速度で攪拌機により8時間攪拌して酸糖化処理をした。
上記酸糖化処理液をアドバンテック社製ガラス繊維濾紙GA−100で濾過を行い、処理液と残渣を分離した。本操作により、全糖40.7g/lの酸糖化処理液が得られた。この処理液を原液として、以下の拡散透析装置による膜分離操作を行った。
平均粒子径20mmサイズに調製されたスギ木片400gをプラスチックビーカーに投入し、70%硫酸500mlを加え、硫酸(処理液)の温度を15℃に保ちながら150rpmの攪拌速度で攪拌機により8時間攪拌して酸糖化処理をした。
上記酸糖化処理液をアドバンテック社製ガラス繊維濾紙GA−100で濾過を行い、処理液と残渣を分離した。本操作により、全糖40.7g/lの酸糖化処理液が得られた。この処理液を原液として、以下の拡散透析装置による膜分離操作を行った。
図1のイオン交換膜フロー図に示される拡散透析装置において、0.342m2の面積を持つ陰イオン交換膜(旭硝子社製セレミオンDSV)をセットし、膜面の片側(図1の左側)に水を満たした。図示していないが、回収用水の出口(図1の下部)にはバルブがあり、操業開始と同時に、上部からの給水速度と同一の速度で出口から流出するように制御した。
膜面の片側下部より酸糖化処理液を通液し、操業を開始した。操作条件は処理液流量、回収用水流量をそれぞれ毎分1mlとし、膜をセットした装置全体を冷却し、処理液及び回収水の温度を50℃以下に保つようにし、約10時間、前述の条件において運転することによって装置の平衡化を行った。処理液中の硫酸は86%除去されていた。透析処理終了後の膜には酸可溶性リグニン由来の黒ずんだ不溶物の付着が確認された。
膜面の片側下部より酸糖化処理液を通液し、操業を開始した。操作条件は処理液流量、回収用水流量をそれぞれ毎分1mlとし、膜をセットした装置全体を冷却し、処理液及び回収水の温度を50℃以下に保つようにし、約10時間、前述の条件において運転することによって装置の平衡化を行った。処理液中の硫酸は86%除去されていた。透析処理終了後の膜には酸可溶性リグニン由来の黒ずんだ不溶物の付着が確認された。
<実施例4>
平均粒子径20mmサイズに調製したスギ木片2kgを実施例1と同様にして摩砕処理し、含水率1.74%の乾燥処理試料を得た。この試料15gをプラスチックビーカーに投入し、55質量%硫酸500mlを加え、15℃に保ちながら150rpmの攪拌速度で攪拌機により1時間の攪拌を行った。処理終了後、アドバンテック社製ガラス繊維ろ紙GA−100で濾過を行い、処理液と残渣を分離した。得られた処理液の糖濃度を測定し、回収率を算出したところ、20.4%であった。
上記残渣をプラスチックビーカーに移し、これに60質量%硫酸を500ml加え、15℃に保ちながら1時間攪拌した。得られた二段目の反応液をアドバンテック社製ガラス繊維ろ紙GA−100で濾過を行い、処理液と残渣を分離した。得られた処理液の糖濃度を測定し、回収率を算出したところ、29.2%であった。以上の酸処理により、トータルとして、スギ木片の49.6%が糖分として回収できた。
次いで、上記二段目の酸糖化処理により得られた処理液を用いて、前記参考例4と同様に透析処理を行った。その結果、該二段目の酸糖化処理液中の硫酸は89%が除去された。透析処理終了後のイオン交換膜には酸可溶性リグニン由来の不溶物の付着は確認されなかった。
平均粒子径20mmサイズに調製したスギ木片2kgを実施例1と同様にして摩砕処理し、含水率1.74%の乾燥処理試料を得た。この試料15gをプラスチックビーカーに投入し、55質量%硫酸500mlを加え、15℃に保ちながら150rpmの攪拌速度で攪拌機により1時間の攪拌を行った。処理終了後、アドバンテック社製ガラス繊維ろ紙GA−100で濾過を行い、処理液と残渣を分離した。得られた処理液の糖濃度を測定し、回収率を算出したところ、20.4%であった。
上記残渣をプラスチックビーカーに移し、これに60質量%硫酸を500ml加え、15℃に保ちながら1時間攪拌した。得られた二段目の反応液をアドバンテック社製ガラス繊維ろ紙GA−100で濾過を行い、処理液と残渣を分離した。得られた処理液の糖濃度を測定し、回収率を算出したところ、29.2%であった。以上の酸処理により、トータルとして、スギ木片の49.6%が糖分として回収できた。
次いで、上記二段目の酸糖化処理により得られた処理液を用いて、前記参考例4と同様に透析処理を行った。その結果、該二段目の酸糖化処理液中の硫酸は89%が除去された。透析処理終了後のイオン交換膜には酸可溶性リグニン由来の不溶物の付着は確認されなかった。
Claims (8)
- 原料リグノセルロース系バイオマスを80℃〜200℃の温度で摩砕処理する摩砕処理工程、該摩砕工程からの摩砕処理された原料リグノセルロース系バイオマスを液温35℃以下で酸加水分解して糖含有液を得る酸糖化処理工程、該酸糖化処理工程からの酸糖化処理液から不溶画分及び酸成分を除去して糖含有液を分離取得する糖液分離工程を有することを特徴とする、リグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法。
- 前記摩砕処理工程は、温度が120℃〜190℃で摩砕処理が行われる工程である、請求項1記載のリグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法。
- 前記摩砕処理工程における摩砕処理は、リグノセルロース系バイオマスの水分量が30〜90質量%で行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法。
- 前記摩砕処理が、原料リグノセルロース系バイオマスに対して液温80℃〜200℃で2〜4回繰り返して施されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のリグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法。
- 前記酸糖化処理工程は、前記摩砕処理されたリグノセルロース系バイオマスに対して、最初に濃度40〜65質量%の酸を用いる加水分解反応によってリグノセルロース系バイオマスのヘミセルロースを選択的に加水分解してヘミセルロース系糖成分を抽出する処理をし、次に、濃度55〜80質量%の酸を用いる加水分解反応によって最初の酸処理における残渣分中のセルロースを加水分解してセルロース系糖成分を抽出する酸処理からなる工程であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法。
- 前記酸処理に用いられる酸が鉱酸及び有機酸から選ばれる1種、もしくはそれらの混合酸であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法。
- 原料リグノセルロース系バイオマスが、木本系バイオマスから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法。
- 前記酸糖化処理液から糖含有液を分離する糖液分離工程は、酸糖化処理液から不溶画分を除いた後、イオン交換膜を利用した透析処理により酸含有液と糖含有液を分離する工程であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖類を製造する方法。
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