JP6349518B2 - リグニン分解物の製造方法 - Google Patents

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本発明は、リグノセルロースからなる木質系バイオマスおよび草本系バイオマス等を酵素糖化したときに発生する残渣から低分子リグニン分解物を製造する方法に関する。
木材や稲わら、バガス、ネピアグラスといった廃棄物系を含む木質系、草本系バイオマスに対して粉砕や酸加水分解、アルカリ蒸解、加溶媒分解等の前処理を行い、その処理物を糖化酵素と反応させると遊離糖やオリゴ糖に変換できる。そして、これらの糖から例えばエタノール発酵によるバイオエタノール製造のように種々の化学品を製造することが試みられている。
木質系、草本系バイオマスを原料としたバイオエタノール製造方法として、希硫酸等やアルカリを用いた酸‐、アルカリ‐酵素糖化処理法等を前処理としたエタノール発酵が行われている。エタノール発酵後に、糖化・発酵処理を受けないリグニンが主成分となる残渣が発生する。リグニンの発熱量は糖よりも高いため、パルプ産業で行われている黒液の燃焼のように、この残渣を燃焼して、熱エネルギーの回収に利用することが考えられている。一方、リグニンは芳香族化合物であり、木材の構成成分の2〜3割を占めている。この残渣からリグニンを回収すれば、糖とは異なる用途が可能となる。特に、フェノール樹脂やエポキシ樹脂等への樹脂原料の代替物として電子基板や半導体部品、自動車部品等への適用が期待されている(非特許文献1、特許文献1)他、化学品原料としての芳香族モノマーの製造が期待されている(非特許文献2)。
木材中のリグニンは非常に大きな高分子化合物であり、溶媒に溶解させることが難しく、一般的にリグニンを木材から分離させるためにはジオキサンや高濃度のアルカリ溶液が用いられている。また、酸やアルカリを前処理に用いた場合の残渣中のリグニンは大きな変成を受けているため、これまでは主に熱エネルギーの回収に利用されてきた。
このようなリグニンを利用することを目的として、例えば硫酸処理を行ったリグニン100mgを50mg/3ml以上の水酸化ナトリウム存在下で180℃以上、1時間以上の水熱処理をすることにより、21.9%(50mg/3ml水酸化ナトリウム、200℃、1時間)から100%(100mg/3ml水酸化ナトリウム、200℃、2時間)の可溶化が報告されており、抗酸化剤や生物活性剤への利用が検討されている(非特許文献3、4)。
一方、水熱処理工程と粉砕工程を組み合わせることで、穏和な前処理条件で酵素糖化を行うことができる水熱・メカノケミカル処理方法は、酸やアルカリ、有機溶媒等を使わずに木質系、草本系バイオマス等から糖を製造する技術であり、他の技術に比べて環境負荷が少ない方法である(特許文献2)。水熱処理工程では過分解を抑制するために低温で処理し、粉砕工程では乾式・湿式繊維カッターや湿式磨砕型粉砕機(湿式ディスクミル)等の公知の粉砕技術を適宜組み合わせて用いる技術である。用いられる糖化酵素は特に限定されておらず、公知の糖化酵素を含めたものである。この方法で生成する残渣中のリグニンは、大きな化学変化を受けないために低変成なリグニンと言われている。
酵素糖化後の残渣には、リグニンの他に未反応のセルロースやヘミセルロースも存在する。そのため、リグニンの有効利用のためには酵素糖化残渣からセルロースやヘミセルロースを除きリグニンを回収する必要がある。そのため、酵素糖化残渣をそのまま熱利用する以外、リグニンの樹脂化を始めとした有効利用に関する研究は少ない。
粉砕技術を主な前処理技術として利用した酵素糖化残渣からのリグニンの回収方法として、非特許文献5や特許文献1に記載されている技術がある。これらの技術では、有機溶媒や水‐有機溶媒抽出が行われており、有機溶媒として94%または85%濃度のジオキサンや50%濃度のアセトン等を用い、90〜160℃程度で30分〜2時間程度加熱処理をする。また、水‐有機溶媒混合液中に酸やアルカリを添加する場合もある。酵素糖化後の残渣中のリグニンから有機溶媒への回収率は80重量%以上、条件が良ければ90重量%を超える結果が報告されている。
樹脂代替原料としてリグニンを用いる場合、例えば特許文献3や特許文献4では樹脂原料に供するリグニンの数平均分子量を300〜2000としており、エポキシ基を導入したリグニン誘導体の製造方法を開示している。また、特許文献5では、リグニンをエポキシ樹脂硬化剤として用いた製造方法を開示しており、重量平均分子量として300以上10000以下としているが、段落番号[0039]では重量平均分子量1500のリグニンが有機溶媒に20g/100ml溶解することが好ましいとしている。また、特許文献6では不飽和ポリエステル樹脂製造には600〜1300の分子量のリグニンが好ましいとしている。
一方、酸やアルカリを前処理として用いた酵素糖化残渣中にはリグニンは縮合した状態にあり、有機溶媒にも溶解しがたく、高濃度のアルカリ溶液が用いられる。上述した非特許文献3において、硫酸リグニンをアルカリ存在下で水熱処理した場合では、100mg/3ml水酸化ナトリウム中で280℃、4時間処理した場合に重量平均分子量1800が報告されているが、温度やアルカリ量を低くすると重量平均分子量は数千〜数万になる。同様に、非特許文献5や特許文献1に開示されている有機溶媒を用いた技術でも重量平均分子量は数千〜数万と分子量が大きくなってしまうという問題があった。
このように、樹脂の原料として供するリグニンは数平均分子量ならびに重量平均分子量がおよそ300〜2000の範囲にあることが好ましい。芳香族モノマーまで分解させると、分子量はおよそ180程度になる。
また、上記した従来技術では、高濃度のアルカリ水熱や、有機溶媒、水-有機溶媒加熱抽出を利用する場合、pH処理や有機溶媒の回収時のロスを考慮する必要があり、低分子へのリグニンに変換するための処理をさらに行う必要があった。
国際出願番号PCT/JP2012/081421 特許第5278991号 特開2009−84320号(特願2007−252591号) 特開2011−57997号(特願2010−256670号) 特開2012−224787号(特願2011−95173号) 特開2010−7001号(特願2008−169762号)
Bioresour. Technol., 135, 738 (2013). Chem. Eng. Technol., 31, 736 (2008). Bioresour.Technol., 100, 1024 (2009). Ind. Crops Products, 42, 181 (2013). J. Agric. Food Chem., 54, 5939 (2006).
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は酵素糖化後に生じる残渣から低分子のリグニン分解物の製造方法として、有機溶媒や高濃度の酸、アルカリを加熱時の溶媒として使わない製造方法を提供することである。さらに、樹脂化原料として利用するためには有機溶媒への可溶化が必要であるため、同時に有機溶媒への溶解が可能である低分子リグニン分解物の製造方法を提供することにある。また本願発明は、セルロース分解物などの不純物含量が少ないリグニン分解物の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、水熱処理及び粉砕処理による前処理を行い、酵素糖化し、残渣を水溶液中でのオートクレーブによる水熱処理工程を行うことにより、当該課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
このような目的は、下記(1)〜(10)の本発明により達成される。
(1)リグノセルロースからなる木質系バイオマスおよび/又は草本系バイオマス等を水熱処理及び粉砕処理を組み合わせて前処理することを含む工程、
その前処理したバイオマスを酵素糖化したときに発生する酵素糖化残渣をさらにオートクレーブにより水熱処理を行い、その処理物の固液分離から固形物を得ることを含む工程、及び
固液分離から得られた固形物を有機溶媒に溶解することを含む工程、を包含するリグニン分解物溶液又はリグニン分解物製造方法。
(2)水熱処理及び粉砕処理を組み合わせた前処理における前記粉砕処理が機械的な粉砕処理である上記(1)に記載のリグニン分解物溶液又はリグニン分解物製造方法。
(3)オートクレーブによる水熱処理における反応溶液中の酵素糖化残渣の固形分濃度が1重量%〜20重量%である上記(1)又は(2)に記載のリグニン分解物溶液又はリグニン分解物製造方法。
(4)オートクレーブの処理温度が150℃〜210℃である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のリグニン分解物溶液又はリグニン分解物製造方法。
(5)酵素糖化残渣のオートクレーブ処理時間が10分間〜2時間である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のリグニン分解物溶液又はリグニン分解物製造方法。
(6)オートクレーブによる水熱反応溶液に酸を添加する上記(1)〜(5)のいずれかに記載のリグニン分解物溶液又はリグニン分解物製造方法。
(7)酸が無機酸及び/又は有機酸である上記(6)に記載のリグニン分解物溶液又はリグニン分解物製造方法。
(8)無機酸の濃度が0.001mmol/L〜0.5mol/Lである上記(7)に記載のリグニン分解物溶液又はリグニン分解物製造方法。
(9)酵素糖化残渣をさらにオートクレーブにより水熱処理を行い、その処理物の固液分離から固形物を得ることを含む工程が、固液分離したのち乾燥する工程を含む前記(1)〜(8)のいずれかに記載のリグニン分解物溶液又はリグニン分解物製造方法。
(10)固液分離から得られた固形物を有機溶媒に溶解することを含む工程が、前記固形物をエーテル類、アルコール類、ニトリル類、ケトン類およびジスルホキシド類からなる群から選ばれる1種類または2種類以上の有機溶媒に常温で溶解させ、その溶液を固液分離した後に得られたリグニン分解物溶液、またはそのリグニン分解物溶液から溶媒を除去した有機溶媒可溶性を持ったリグニン分解物を製造する前記(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
本発明によれば、バイオマス原料の酵素糖化残渣から数平均分子量が300〜600ならびに重量平均分子量が2,000以下の低分子のリグニン分解物を1回のオートクレーブによる水熱処理にて製造することができ、かつ溶媒可溶性を持つ樹脂原料が得られる。また、本願発明によれば、セルロース分解物の含量が少ない、溶媒可溶性のリグニン分解物を1回のオートクレーブによる水熱処理にて製造することができる。
以下、本発明の酵素糖化残渣からのリグニン分解物を製造する方法についての一実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明は、バイオマスに水熱処理や粉砕等による前処理を施し、酵素糖化を行って生成された酵素糖化残渣を原料とし、下記工程(1)〜(2)を含む。
工程(1):水熱処理や粉砕等による前処理を施して酵素糖化を行って得られた酵素糖化残渣をさらに水熱処理し、固液分離を行って不溶分を得る工程。
工程(2):工程(1)で得られた不溶分から有機溶媒に溶解するリグニン分解物を得る工程。
本発明のリグニン分解物の製造方法により、低分子量のリグニン分解物が高収率に得られる詳細な理由は明らかではないが、酵素糖化によって木材としての構造が大きく壊れており、さらには水熱処理や溶液に添加した酸により、酵素糖化残渣中の未反応の糖、特にリグニンと結合しているヘミセルロースが分解するとともに、水熱処理や酸により低変成リグニンの低分子化も促進されたものと推測される。また、リグニンが溶けやすい高濃度アルカリ溶液や有機溶媒を使っていないため、高い分子量のリグニンが溶けないため、数平均分子量ならびに重量平均分子量が低いと推測される。
[酵素糖化残渣]
バイオマスに前処理を施し、酵素糖化を行って得られた酵素糖化残渣である。
[バイオマス]
本発明において、原料として用いられるバイオマスは、主としてセルロース、ヘミセルロース、およびリグニンから構成される植物性のバイオマスであり、木質系バイオマス、草本系バイオマス、ならびにそれらの廃棄物などが含まれる。例えば、木材、稲わら、麦わら、バガス、竹、パームヤシ残渣、コーンストーバー等が挙げられる。これらのバイオマス原料は、酵素糖化を行う前にソックスレー抽出法により木材中の抽出成分を除去しても良い。
[前処理]
本発明に係る前処理工程で用いる水熱処理の温度は、通常160℃以下で行っているが、180℃までの温度をかけてヘミセルロースの分解・分離を促しても良い。また、水熱処理前に窒素や酸素で気相を置換してもよく、空気のままでも良い。
本発明に係る原料製造での前処理工程で用いる粉砕処理は、公知の粉砕技術を用いればよく好適には機械的粉砕処理が挙げられる。機械的粉砕処理としては、水熱・メカノケミカル処理法で使用されているディスクミル等の湿式磨砕型粉砕機のみならず、ボールミルおよび振動ミル等の乾式衝撃型粉砕機、さらにはエクストルーダー等の軸型粉砕機等、他の粉砕技術も利用され得る。ボールミルならびに振動ミル等の乾式衝撃型粉砕機でもそれ単独での粉砕処理でも効率的に処理できる。エクストルーダー等の軸型粉砕機も同様に単独でも利用できる。また、これらの粉砕技術は、例えばカッターミル等で事前により細かくバイオマスを処理しても良い。また、上記機械的粉砕処理前に、バイオマスのチップ(数cm角)を一度カッターミルで数mm長までにしておく方が好ましい。ディスクミル処理に関しては、さらに湿式カッターミルで1 mm長以下程度に細かくしておいた方がディスクミル機器への負荷ならびに消費電力の観点から望ましい。
水熱処理と粉砕処理は適宜組み合わせれば良く、用いる原料種によってもその順番は変わり得る。また、粉砕処理と他の粉砕処理との間に水熱処理を行っても良く、特に湿式磨砕型粉砕機を用いる場合については直前に水熱処理を行うことが好ましい。また、前処理の組み合わせについては、バイオマス種の糖化しやすさや固さを考慮して組み合わせることができる。たとえば、稲わらは糖化しやすく柔らかい原料であるから、前処理としては、カッターミルにより数cm程度の長さに粗く粉砕し、水熱処理後にディスクミル処理することもできる。また、糖化し難いヒノキ等については、カッターミルで粗く処理した後に水熱処理し、再度カッターミルでより粉砕処理し、再度水熱処理、その後ディスクミル処理する、2回の水熱処理を含む工程とすることもできる。なお、すでに十分小さな粒子に調整されたバイオマスを原料とするときは、更に粉砕処理を行わないでもよい。
本発明に係る酵素糖化工程は、上記の前処理工程で処理されたバイオマス原料を糖化酵素によって糖化する工程であり、用いる糖化酵素は特に限定されず、公知の糖化酵素を用いても良い。用いる糖化酵素は単一でもよく、セルラーゼおよびヘミセルラーゼに属する複数の糖化酵素を組み合わせて用いることがより好ましい。セルラーゼとしては、例えば、エンドグルカナーゼ(EC 3.2.1.74)、セロビオヒドロラーゼ(EC 3.2.1.91)、及びβ−グルコシナーゼ(EC 23.2.4.1、EC 3.2.1.21) が挙げられる。また、セルラーゼから1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、こうしたセルラーゼは人工的に改変されていてもよい。改変方法としてはポイントミューテーション法やセルラーゼを産生する微生物に紫外線照射などをすることによる突然変異などが挙げられる。
ヘミセルラーゼも、従来からバイオマスの糖化に利用されているヘミセルラーゼであれば、いずれを利用しても良い。ヘミセルラーゼは、ヘミセルロースをキシロース、アラビノース、マンノース、ガラクトース等に加水分解する酵素反応系を触媒する酵素群の総称であり、その作用様式により、キシラナーゼ、アラビナナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、マンナナーゼ、ガラクタナーゼ、キシロシダーゼ、マンノシダーゼなど種々の名称で呼ばれる酵素が存在する。ヘミセルラーゼとしては,特に限定されないが、それ自体の活性が高いヘミセルラーゼであることが好ましい。こうした各種ヘミセルラーゼから1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、こうしたヘミセルラーゼも人工的に改変されていてもよい。改変方法としてはポイントミューテーション法や微生物に紫外線照射などをすることによる突然変異などが挙げられる。
また上記糖化酵素工程にて、例えばバイオエタノール製造における同時糖化発酵のように、同一のリアクター内でバイオマス原料の糖化とともに生成した糖を変換する反応を同時に行わせてもよいし、糖化発酵溶液を他のリアクターに移して糖を変換する反応を行わせてもよい。所定の糖製造もしくは糖変換反応終了後、固液分離を行い、酵素糖化残渣を得る。
なお、従来のバイオマスの酵素糖化では、酵素糖化の過程でリグニンがあると、酵素がリグニンに吸着するために糖化効率が低下するために、前処理としてリグニンを除去することが必要であった。本願発明では水熱処理と機械的な微粉砕処理などの粉砕処理を組み合わせた前処理をすることにより、リグニンへの酵素の吸着が著しく低くでき、リグニンを先に除去する必要がないので、酵素糖化の残渣にリグニンを残すことが可能となった。
[工程(1)]リグニンの低分子化工程
工程(1)は、バイオマス原料を水熱反応及び/又は粉砕処理による前処理を行って酵素糖化した時に生成した残渣を水熱処理し、前記水熱処理後のサンプルの固液分離を行い、不溶分を得る工程である。
水溶液中にて酵素糖化残渣の水熱処理を行う。水熱処理は、例えば、オートクレーブで行うことができる。オートクレーブについては特に限定されるものでなく、公知の反応装置を用いても良い。さらに、水溶液中に酸をあらかじめ添加しても良い。水蒸気による加熱処理、水溶液中におけるマイクロ波による加熱処理も用いることができる。
水熱処理における水溶液中の酵素糖化残渣固形分濃度は、反応性向上の観点から1重量%〜20重量%であることが好ましく、5重量%〜10重量%がより好ましい。
水熱処理温度は、反応性向上の観点やリグニンの縮合の抑制から、150℃〜230℃以下が好ましく、150℃〜210℃がより好ましく、170℃〜210℃がより好ましい。また、水熱処理時間は、特に制限されず、投入される酵素糖化残渣量ならびに水溶液中の酸濃度に応じて適宜選択されるが、糖過分解物の生成およびリグニンの変成の抑制の観点から10分間〜2時間が好ましい。
水熱処理には、酸を用いてもよい。水熱処理に用いることができる酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸があげられ、好ましくは、塩酸を用いることができる。これらの無機酸の濃度は投入される糖化残渣量ならびに処理温度、時間に応じて適宜選択されるが、糖過分解物の生成およびリグニンの変成の抑制の観点から、1mmol/L〜0.5mol/Lが好ましく、1mmol/L〜20mmol/Lがより好ましい。水熱処理温度が低い場合は、無機酸の濃度を高くすることが好ましい。また、これらの無機酸のみで水熱処理を行った場合でも、糖の分解に起因する酢酸、ギ酸等の有機酸が水熱処理中に生成し、糖の分解、リグニンの低分子化に作用するが、水熱処理前にあらかじめこのような有機酸を無機酸と一緒に添加して水熱処理を行うこともできる。
水熱処理後に得られた処理物を固液分離し、不溶分を得る。不溶分は乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、リグニンの変成を抑制する観点から、乾燥温度は100℃以下が好ましく、40℃以下での真空乾燥がより好ましく、凍結真空乾燥がさらに好ましい。
[工程(2)]有機溶媒に溶解するするリグニン分解物を回収する工程
工程(2)は、工程(1)で得られた不溶分から有機溶媒に溶解するリグニン分解物を得る工程である。
工程(1)で得られた乾燥状態の不溶分は、エーテル類、アルコール類、ニトリル類、ケトン類およびジスルホキシド類からなる群から選ばれる1種類または2種類以上の有機溶媒に10%以上溶解させ、その溶液を固液分離してリグニン分解物溶液を得る。また、そのリグニン分解物溶液から溶媒を除去して固形の有機溶媒可溶性を持ったリグニン分解物を得ることもできる。
上記の有機溶媒具体例を以下に示す。
エーテル類としては、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。アルコール類としては、エタノール、メタノールなどが挙げられる。ニトリル類としては、アセトニトリルなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトンなどが挙げられる。ジスルホキシド類としては、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。好適には、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランが挙げられる。
工程(1)で得られた乾燥状態の不溶分の上記有機溶媒中への混合割合は0.1〜20重量%が好ましい。溶解させた後、濾過や遠心分離等の固液分離を行う。得られた溶媒溶解分の溶媒を減圧留去し、粉末状の溶媒溶解性のリグニンを得ることができる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本願出願に開示された範囲で種々の変更が可能であり、開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、用いる各種物性の測定方法は以下の通りである。
(1) バイオマス原料微粉砕物の平均粒径と含水率の測定
バイオマス原料微粉砕物の平均粒径測定には、堀場製作所製レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−950V2を用いた。水を分散媒とし、フローセルにより測定した。含水率は、メトラートレド社製のハログン水分計HR−83を用いて測定した。
(2)酵素糖化残渣および処理物中のリグニン含有率(Le)の算出
酵素糖化残渣および処理物中のリグニン含有率は、下記の式により産出した。
リグニン含有率(Le)=酸不溶性リグニン含有率+酸可溶性リグニン含有率
ここで、酸不溶性リグニン含有率ならびに酸可溶性リグニン含有率は、下記に示す方法により算出した。
(酸不溶性リグニン含有率の算出)
バイオマス原料については0.2mm以下に粉砕した後、室温で48時間真空乾燥し、酵素糖化残渣は真空凍結乾燥を行った後にさらに室温で48時間真空乾燥した。これらの乾燥試料を0.5g秤量してビーカーに入れ、72%硫酸7.5mlを加えて、ガラス棒で時々撹拌しながら20℃の恒温水槽中で4時間置いた。次に、内容物を280mlの蒸留水でフラスコに移し、冷却管を付けて4時間加熱還流した。放冷後にフラスコ内の沈殿物をガラス濾過器(1GP16)で吸引濾過した。ろ液は酸可溶性リグニン含有率を求めるために使用するために保管した。沈殿物を熱水、次いで冷水で洗浄後に105℃の乾燥機で24時間乾燥した後に重量を測定した。あらかじめ秤量したガラス濾過器の重量より増加した重量を元の乾燥試料0.5gで割ることにより酸不溶性リグニン含有率を求めた。
(酸可溶性リグニン含有率の算出)
酸不溶性リグニンで得られたろ液の容量を測定した。次いで紫外可視分光光度計(島津製作所製UV−1800)を用いて、ろ液の吸光度が0.3〜0.7の範囲になるように3%硫酸水溶液で希釈し、205nm付近の最大吸光度を測定した。
酸可溶性リグニン含有率=ろ液容量(L)×希釈倍率×(試料溶液の吸光度−ブランク溶液の吸光度)/(リグニンの吸光係数(106・L/g・cmを使用)×試料採取量)
(3)リグニンの数・重量平均分子量の測定
リグニンの数・重量平均分子量の測定にはゲル浸透クロマトグラフィー法により島津製作所製Prominence GPCシステムを用いて測定した。カラムは昭和電工製GPC−LF804を3本、ガードカラムとともに連結し、40℃に設定したオーブンの中で使用した。溶離液として高速液体クロマトグラフ用のテトラヒドロフランを1ml/分の流速で流した。検出器は島津製作所製吸光度検出器SPD−20Aで、254nmの吸光度を測定した。試料の分子量を、分子量分布の狭い標準ポリスチレン試料(NMIJ CRM、PS500、PS1000、PS2400、PS8500)を用いて島津製作所製GPCソフトウェアから算出した。
(4)オートクレーブ不溶分回収率およびリグニン可溶化率の算出方法
オートクレーブ不溶分の回収率Rsは、酵素糖化残渣乾燥重量1.5gを水熱処理(例えばオートクレーブ処理)した場合のオートクレーブ処理不溶分重量Was(g)の回収率
Rs=Was/1.5
とする。
リグニン可溶化率は、酵素糖化残渣中のリグニンに対する有機溶媒中溶解したリグニン分解物の比率を示し、酵素糖化残渣中のリグニン含有率をLe、乾燥重量25mgのオートクレーブ処理不溶分を有機溶媒中で抽出した時の有機溶媒不溶分重量をWos(mg)として、
リグニン可溶化率=Rs×(1−Wos/25)/Le
とする。なお、本願発明では、好適には酵素糖化残渣からの有機溶媒中へのリグニン可溶化率が10%以上であることが望ましい。
<実施例1>
(酵素糖化残渣)
原料バイオマスとして約3cm長のユーカリチップを市販のカッターミルで3mm以下に粗く粉砕し、得られた木紛を5〜7質量%となるように水と混合させて一晩以上静置した。このスラリーを増幸産業社製の湿式カッターミルで1mm以下に粉砕し、市販のオートクレーブで150℃、2時間の水熱処理を行った。水熱処理後のスラリーを増幸産業社製ディスクミルに投入して粉砕する処理を10回繰り返し、平均粒径9μmの粉砕物を得た。なお、ディスクミルによる粉砕処理の繰り返し回数は、原料の状態、粉砕機の性能などにより異なる。
ディスクミルにより粉砕したスラリーを固形分濃度5質量%になるように、アクレモニウムセルラーゼ(明治製菓社製、添加濃度10FPU/g−乾燥木紛)およびOptimash BG(ジェネンコア社製、添加濃度0.02ml/g−乾燥木紛)を含んだリン酸緩衝液(pH5.0、50mmol/l)に添加し、50℃で72時間保持して酵素糖化を行った。酵素糖化後、処理物を遠心、蒸留水による洗浄を5回繰り返し、その後に凍結乾燥を行って酵素糖化残渣を得た。酵素糖化残渣中のリグニン含有率は56.9%であった。
[工程(1)]
凍結乾燥後の酵素糖化残渣(絶乾重量1.5g)を反応容器(容量100ml)に取り、蒸留水30mlを添加して密閉した後、190℃で1時間水熱処理を行った。圧力は成り行きに任せたが、190℃では1.2MPaに達した。放冷後、内容物を遠心分離によって固液分離し、蒸留水で3回洗浄後、得られた不溶分を凍結乾燥した。凍結乾燥後、不溶分の重量を測定し、デシケーター内で保管した。
[工程(2)]
工程(1)で得られたオートクレーブ処理不溶分を絶乾で25mgをフラスコに取り、5mlのテトラヒドロフラン(THF)を添加し、密閉して室温で24時間撹拌(145rpm)した。撹拌後、フィルター(PTFE, 孔径0.5μm)により濾過し、得られた抽出液はGPC分析に用い、残った不溶分は40℃で真空乾燥を48時間行い、乾燥後に測定した不溶分の重量に基づいて可溶化率を求めた。結果を表1に示す。
<実施例2>
実施例1で得られたリグニン分解物を含むTHF抽出液に対して、フェノール性水酸基に反応するフェノール試薬を用いてリグニンモデル化合物である没食子酸相当量を求めた。THF抽出液を蒸留水で10倍以上に薄めた溶液1mlに1mlの2%炭酸ナトリウムを混合して3分間静置し、0.2mlの50%Folin−Ciocalteuを加えて暗所で30分間放置した。遠心分離後、島津製作所分光光度計UV−1800で750nmの吸光度を測定した。標準物質として、THF抽出液の代わりに没食子酸溶液を用いて検量線を作成した。その結果、THFに抽出された成分の没食子酸相当量は35.2μg/mg−THF溶解サンプル重量であった。非特許文献4(Ind. Crops Products, 42, 181 (2013)では、水熱処理硫酸リグニン1mg当り1〜2μgであることから、樹脂化の反応に寄与するフェノール性水酸基量が多いことが示され、実施例1で得られたリグニン分解物は十分に樹脂化原料となることが分かった。
<比較例1〜2>
原料のユーカリチップを3mm以下に粗く粉砕し、さらに市販のカッターミルで0.2mm以下のサイズに粉砕した後、ディスクミルによる粉砕及び酵素糖化を行わずに直接工程(1)で170℃又は190℃、いずれも1時間のオートクレーブ処理を行った以外は実施例1と同じ条件で行った。結果を表1に示す。
<比較例3>
酵素糖化残渣に対してアセチル化処理を行い、工程(1)を行わずに直接工程(2)の処理を行った以外は実施例1と同様の条件で行った。結果を表1に示す。
アセチル化処理は下記のとおり行った。酵素糖化残渣試料20mgならびにピリジン−無水酢酸(1:1、v/v)1mlをナスフラスコに添加し、良くかき混ぜた後15時間静置した。混合物に50%メタノール水溶液を8ml添加し、溶媒を減圧留去した。さらに8mlトルエンで3回、8mlメタノールで1回減圧留去し、常温で真空乾燥を48時間行った。
<実施例3>
工程(1)で、塩酸0.01mol/Lを添加した以外は実施例1と同じ条件で行った。結果を表1に示す。
<実施例4〜9>
工程(1)で、オートクレーブ処理温度と添加した塩酸濃度の組み合わせを、それぞれ、オートクレーブ処理温度(℃)/塩酸濃度(mol/L)で表記したとき、150/0.01(実施例4)、150/0.5(実施例5)、170/0(実施例6)、170/0.02(実施例7)、210/0(実施例8)、210/0.01(実施例9)とした以外は実施例3と同じ条件で行った。結果を表1に示す。
<実施例10>
行程(1)で、オートクレーブ処理温度を190℃とし、オートクレーブ処理時間を0.5時間、添加した塩酸濃度を0.02mol/Lとした以外は実施例3と同じ条件で行った。結果を表1に示す。
<比較例4>
工程(1)で、オートクレーブ処理温度は230℃とした以外は実施例1と同じ条件で行った。結果を表1に示す。また、有機溶媒に溶解したサンプルの定性分析を、ガスクロマトグラフィ質量分析計(島津製作所、GCMS−QP2010Ultra)でカラムはAgilent J&W GCカラムDB−5を用いて行った。試料量は1.0μl、60℃で1分間保持した後、300℃まで5℃/分で昇温し、300℃で30分間保持した。
<実施例11〜12>
酵素糖化の原料として、ユーカリチップを市販のカッターミルで3mm以下に粉砕し、粉砕物を遊星式ボールミル(フリッチュ社製P−5)で250rpm、4時間処理したものを酵素糖化し、実施例1と同様に洗浄、凍結乾燥を行った。このとき得られた酵素糖化残渣のリグニン含有率は0.65である。この酵素糖化残渣を用いて工程(1)でのオートクレーブ処理温度と添加塩酸濃度を150/0.02(実施例11)、150/0.5(実施例12)にした以外は実施例3と同じ条件で行った。結果を表1に示す。
<比較例5〜6>
実施例11、12と同様のサンプルを用い、行程(1)でのオートクレーブ処理温度と添加塩酸濃度をそれぞれ125/0.5(比較例5)、150/0(比較例6)とした以外は実施例3と同じ条件で行った。結果を表1に示す。
Figure 0006349518
表1に示される通り、本発明に属する実施例では、前処理粉砕方法としてディスクミル、ボールミルいずれを用いてもオートクレーブ処理後の不溶分中のリグニン含有率を向上できる。さらに、リグニン分解物のテトラヒドロフラン中への可溶化率を10%以上とすることができた。また、温度、及び/又は塩酸濃度を高くすることにより、リグニン可溶化率は高くなり、ディスクミル前処理後に酵素糖化、そして0.01mol/L濃度の塩酸中で190℃、1時間オートクレーブ処理することにより、リグニン可溶率44%が得られた。全ての実施例で、数平均分子量が300〜600であり、重量平均分子量が2000以下であった。
一方、ディスクミルによる粉砕、酵素糖化を行わずに原料ユーカリ粉末を直接170℃で1時間オートクレーブ処理して有機溶媒で抽出した比較例1の場合は、有機溶媒への可溶化率は7%と低い値であった。また、オートクレーブ処理温度を190℃に上げた比較例2の場合、可溶化率は25%であったが、数平均分子量、重量平均分子量ともに300以下であり、酵素糖化を行う必要性が明らかになった。
さらに、オートクレーブ処理を行わずに、酵素糖化残渣をアセチル化してテトラヒドロフラン中に溶解した比較例3の場合では、可溶化率は約6%、そのときの重量平均分子量は4635であり、オートクレーブ処理により可溶化率の向上とリグニンの低分子化が起きたことが分かる。
ディスクミルによる粉砕を行い、オートクレーブ処理温度を230℃にした比較例4の場合では、リグニン可溶化率は42%と高く、重量平均分子量も1360であるが、テトラヒドロフランに溶解した化合物をガスクロマトグラフィ質量分析計で調べると、セルロース由来の過分解物である5−ヒドロキシメチルフルフラール、ヘミセルロース由来のフルフラールが顕著に出始めていることが分かった。これは、セルロースの軟化温度が230℃であるため、230℃のオートクレーブ処理温度では不純物が多く混ざってくることを意味している。なお、ディスクミルで前処理し125℃以上のオートクレーブ処理をした他の試験例でもGCMSでセルロース分解物の分析は行ったが、230℃未満では検出されなかった。また、ヘミセルロース由来分解物(フルフラール)は230℃未満でも検出されたが、ピークは低く、230℃以上になるとフルフラールも著しく増加し始めた。
また、表1の比較例5〜6で示されるように、ボールミル処理を前処理粉砕技術として利用した場合であるが、125℃、0.5mol/L濃度の塩酸濃度でのオートクレーブ処理や150℃、塩酸無しの蒸留水でオートクレーブ処理した場合は、有機溶媒への可溶化率がオートクレーブ処理無しと同様の値であり、温度や塩酸濃度が低いことが示された。
<実施例13>
工程(1)でのオートクレーブ処理温度を150℃、添加塩酸濃度を0.5mol/Lとし、工程(2)での抽出溶媒をテトラヒドロフラン、アセトン、エタノール、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、2−プロパノール、又はエーテルとしたときのリグニン溶解率を表2に示す。
Figure 0006349518
表2から、オートクレーブ処理不溶分の抽出溶媒としては、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトンが好ましく、2−プロパノールやエーテルでは可溶化率が低かった。
本発明の製造方法によれば、バイオマス原料を酵素糖化して生成した酵素糖化残渣から、数平均分子量が300〜600、重量平均分子量が2000以下の低分子のリグニン分解物を収率10〜44%程度得ることができる。このリグニン分解物は、樹脂原料としての最適な分子量を有しているため、各種樹脂原料に利用することができる。

Claims (9)

  1. リグノセルロースからなる木質系バイオマス草本系バイオマス、及びそれら廃棄物から選ばれる一以上の原料を水熱処理及び粉砕処理を組み合わせて前処理することを含む工程、
    その前処理したバイオマスを酵素糖化したときに発生する酵素糖化残渣をさらに170℃〜210℃の処理温度でオートクレーブにより水熱処理を行い、その処理物の固液分離から固形物を得ることを含む工程、及び
    固液分離から得られた固形物を有機溶媒に溶解することを含む工程、を包含するリグニン分解物溶液又はリグニン分解物製造方法。
  2. 前記水熱処理及び粉砕処理を組み合わせた前処理において、粉砕処理が機械的な粉砕処理である請求項1記載のリグニン分解物溶液又はリグニン分解物製造方法。
  3. オートクレーブによる水熱処理における反応溶液中の酵素糖化残渣固形分濃度が1重量%〜20重量%である請求項1又は2に記載のリグニン分解物溶液又はリグニン分解物製造方法。
  4. 酵素糖化残渣のオートクレーブ処理時間が10分間〜2時間である請求項1〜のいずれか1項に記載のリグニン分解物溶液又はリグニン分解物製造方法。
  5. オートクレーブによる水熱反応溶液に酸を添加する請求項1〜のいずれか1項に記載のリグニン分解物溶液又はリグニン分解物製造方法。
  6. 酸が無機酸及び/又は有機酸である請求項に記載のリグニン分解物溶液又はリグニン分解物製造方法。
  7. 無機酸の濃度が0.001mmol/L〜0.5mol/Lである請求項に記載のリグニン分解物溶液又はリグニン分解物製造方法。
  8. 前酵素糖化残渣をさらにオートクレーブにより水熱処理を行い、その処理物の固液分離から固形物を得ることを含む工程が、固液分離から得た固形物を乾燥する工程を含む請求項1〜のいずれか1項に記載のリグニン分解物溶液又はリグニン分解物製造方法。
  9. 固液分離から得られた固形物を有機溶媒に溶解することを含む工程が、前記固形物をエーテル類、アルコール類、ニトリル類、ケトン類およびジスルホキシド類からなる群から選ばれる1種類または2種類以上の有機溶媒に常温で10%以上溶解させる工程である、
    リグニン分解物溶液、またはそのリグニン分解物溶液から溶媒を除去した有機溶媒可溶性を持ったリグニン分解物を製造する請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
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