JP2007089573A - バイオマスを原料とする糖組成物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 固形バイオマス、特に木質系バイオマスを酸濃度の異なる2種以上の酸処理液による処理工程で順次処理し、各処理工程で処理液から上清と固形物を分離し、分離した固形物を引き続く酸処理工程で処理する操作を繰り返すことによって各処理工程で種類の異なる糖組成物を分離、回収する工程を含むことを特徴とするヘミセルロース系オリゴ糖、セルロース系オリゴ糖、グルコース類の3種の糖組成物を製造する方法。
【選択図】 なし
Description
このうち、酵素加水分解反応は、酵素分子を対象とするバイオマス空隙に進入させる必要があることから、酵素を基質に接触させるために、化学的、物理的、微生物的方法による前処理を行う必要がある点がコスト的な面などから、実用化の障壁になっている。
希酸法は数%程度の硫酸を用いて120℃から、時には240℃程度の反応条件で行うことにより糖化を目指す方法である。容易な酸の回収と再利用、装置の腐食性が低いことが特徴としてあげられる反面、高温高圧下の反応条件が必要であることと、グルコース収率が低いという欠点がある。
濃酸法は70%程度の硫酸もしくは40%程度の塩酸を用いる方法であり、希酸法に比べて低い温度で反応が可能で収率が高いという利点がある反面、装置の腐食と酸の回収が難しいことが挙げられる。
(2)セルロース及びヘミセルロース系物質を約25〜90質量%の酸溶液で35〜80℃の条件で混合することによってゲル化し、その後、酸濃度を20〜30質量%に希釈した後、80〜100℃に加熱して加水分解を促進する(特許文献2)。
(4)セルロース系材料を濃塩酸と、濃硫酸との混液中で処理する(特許文献4)。
(5)微細構造破壊の為に、アセチル化を目的として鉱酸と酢酸で処理する(特許文献5)。
さらに酸による糖化法は、いずれの反応も高温・高圧条件もしくは強攪拌条件が必要であることなど、製造コストが問題となっている。
また、後段の発酵過程での効率化のため、前途の糖化液中でほとんど単糖の状態にまで分解されており、近年、整腸作用などの生理作用が注目されているオリゴ糖そのものを取り出すことについて着目されておらず、得られたオリゴ糖を再度、酸又は酵素加水分解を行うことによりグルコース収率を向上することだけに着目されてきた。
(1)天然リグノセルロース材料を蒸解して得られるパルプを、セルラーゼによって部分的に加水分解してセロオリゴ糖を得る。この際、反応液を連続的に限外濾過膜で処理し、オリゴ糖の重合度を調節する(特許文献6)。
(2)キシラン原料をヘミセルラーゼ処理により、特定の反応条件で分解することでキシロースの生成を抑えながらキシロビオースを高濃度で得る(特許文献7)。
(4)キシラン含有天然物から細片化、蒸煮、水洗、水抽出、オゾン処理、イオン交換樹脂、濃縮乾固してオリゴ糖を得る(特許文献9)。
(5)製紙用パルプのヘミセルラーゼ処理後の液を膜濾過法によって濃縮し、酸加水分解してオリゴ糖を得る(特許文献10)。
(1)固形バイオマスを酸濃度の異なる2種以上の酸処理液による処理工程で順次処理し、各処理工程で処理液から上清と固形物を分離し、分離した固形物を引き続く酸処理工程で処理する操作を繰り返すことによって、各処理工程で種類の異なる糖組成物を分離、回収する工程を含むことを特徴とする固形バイオマスから複数種の糖組成物を製造する方法。
本発明が処理対象とするバイオマスには、間伐材、建築廃材、木材チップ、おがくず、剪定材や、木質材含有物を含む産業・生活廃棄物の他に、籾殻、竹、バガス、ワラ類、トウモロコシ穂軸などの農産廃棄物などが含まれる。また、古新聞、雑誌、段ボール、古紙、パルプ、パルプスラッジ、リンター、綿、木綿などのセルロース系物質も処理可能である。上記バイオマス原料は、処理に供する前に微細化を行うことによって反応時間を短縮することが可能である。微細化の程度としては、10mmの目開きふるいを通過すれば、反応時間短縮に効果があり、5mm以下の粒子にすることがさらに望ましい。
この反応は特に加熱・加圧の必要がなく、従来の技術とは異なり生成物はオリゴ糖が主体で単糖は存在しても微量である。このため、単糖の過分解により生ずるフルフラール化合物や、単糖とアミノ酸が関与するメイラード反応由来の着色は抑制される。
平均粒子径0.5mmサイズに調製されたスギ木粉100mgづつをプラスチック試験管3本に入れ、夫々に49%硫酸10mlを加え、25℃に保ちながらスターラーにより8時間攪拌し、反応液を得た。同様な操作を、53%、57%、61%、65%の各濃度の硫酸についても行った。
上記反応液を遠心分離により上清と沈殿物を分離した。得られた上清から全糖1.4mg〜53.1mgの糖組成物が得られた。これら糖組成物溶液の全糖回収率及び還元末端定量から得られた平均重合度を測定し表1に示す。なお、表の数値は、3本の試験管の算術平均値を採用して記載した。
参考例1−4と同じ糖組成物を更に一つ作成し、蒸留水で20倍に希釈し、110℃、30分のオートクレーブ処理を行い、単糖まで加水分解し、ダイオネクス社製イオンクロマトにより分析したところ、キシロース4.4mg、マンノース7.1mg、ガラクトース2.7mg、アラビノース2.1mg、グルコース4.5mgであった。イオンクロマトグラフを図1に示す。
参考例1−5と同じ糖組成物を更に一つ作成し、蒸留水で20倍に希釈し、110℃、30分のオートクレーブ処理を行い、単糖まで加水分解し、ダイオネクス社製イオンクロマトにより分析したところ、キシロース4.8mg、マンノース13.1mg、ガラクトース4.6mg、アラビノース2.9mg、グルコース27.7mgであった。
平均粒子径0.5mmサイズに調製されたスギ木粉100mgづつをプラスチック試験管多数本に入れ、夫々に61%硫酸10m1を加え、25℃に保ちながらスターラーにより8時間攪拌し、一段目の反応液を得た。上記反応液を遠心分離により上清と沈殿物を分離した。以上は参考例1−4と同じ条件である。この試料を多数本作成し、以下の実施例に供した。
上清は別の試験管に移し、沈殿物を試験管内に残し、これに63%硫酸を10ml加え、25℃に保ちながら4時間攪拌した。得られた二段目の反応液を遠心分離した。得られた上清からは全糖17.4mgの糖組成物が得られた。これを実施例1−1とする。
前記一段目の沈殿物に対して、63%硫酸に変えて、65%、67%、69%の各硫酸により同様の操作を行い、二段目の反応液を得た。これらを実施例1−2、1−3、1−4とした。また、参考のため、61%の硫酸により同様の操作を行い二段目の反応液を得て、これを参考例4とした。
上記の各二段目の反応液として得られた糖組成物について、参考例1と同様に全糖回収率及び還元末端定量から得られた平均重合度を測定し、表2に示す。
実施例1−2で得られた、二段目の反応液の糖組成物溶液を参考例3と同様にダイオネクス社製イオンクロマトにより分析したところ、重合度10までのセロオリゴ糖が存在した(図2参照)。この糖組成物溶液を単糖まで加水分解し、ダイオネクス社製イオンクロマトにより分析したところ、95%以上がグルコースであった(図3参照)。本実施例により、一段目にはヘミセルロース由来の糖だけを主として抽出することが可能で、同様に二段目の反応液にはセルロース由来の糖だけを主として抽出可能であることが判明した。
実施例1−2において、65%硫酸で二段目の反応液を得るための反応温度を25℃に変えて、0℃、20℃、30℃、35℃、40℃、50℃、60℃の各温度でそれぞれ行った。反応温度と、糖組成物量(回収率)と平均重合度を表3に示す。なお、表3中の実施例1−2は、表2中の実施例1−2のデータを転記したものである。本実施例により、温度は糖の回収率にあまり影響しないが、糖の重合度が大きく変化することが判明した。
フナコシ社製 微結晶セルロース粉末(商品名:フナセル)、雑誌古紙、段ボール原紙、トイレットペーパー(王子製紙社製 商品名ネピア)、醤油絞りかすを、FRITCH社製 遊星型ボールミルにて粉砕した。これら試料100mgを、それぞれプラスチック製試験管に取り、以下実施例1−2と同様の条件で、二段目の反応液を得た。この糖組成物量(回収率)と平均重合度を表4に示す。比較のため、実施例1−2のデータも転記した。
本実施例により、様々な形態の木質バイオマス原料を利用可能であることが判明した。
平均粒子径0.5mmサイズに調製されたスギ、ヒノキ、コナラ、ユーカリ木粉それぞれ100mgに対し、実施例1−2と概略同様であるが、二段目の反応を27℃、2時間とし、二段目の反応液を得た。それぞれの一段目の反応液、二段目の反応液の糖組成物を単糖まで加水分解し、ダイオネクス社製 イオンクロマトにより分析した。イオンクロマトグラフを図4〜図11に示す。図と試料の対応は、「図面の簡単な説明」の欄に記載した。本実施例により、様々な樹種の木質バイオマスが利用可能であることが判明した。
平均粒子径0.25mm、0.1mm、0.05mmの各サイズに調製されたスギ木粉を用いた他は実施例1−2と同様にして二段目の反応液を得た。これを実施例6−1〜6−3とする。各二段目の反応液の糖組成物量(回収率)と平均重合度及び原料サイズを表5に示し、比較のため実施例1−2のデータも転記した。
更に、1、5、10、20mmのメッシュのふるいを通過したスギのカンナ屑を用いた他は実施例1−2と同様にして二段目の反応液を得た。これを実施例6−4〜6−7とする。各二段目の反応液の糖組成物量(回収率)と平均重合度及び原料サイズを表5に示した。本実施例により、使用する木質バイオマス原料は粒径が10mmまでは回収率に影響がないことが判明した。
実施例1−2と同様な条件で、多数の試験管で二段目の反応液を得て以下の実施例7、8に供した。この段階において、61%硫酸による第一の反応液を別の試験管に取ったものをフラクション1としFr.1と表示する。65%硫酸による第二の反応液の上清液を別の試験管に取ったものをフラクション2としFr.2と表示する。
Fr.2の試験管から液1m1を100ml用のビーカーに移し、これに20℃の水19m1を添加した。析出した多量の沈殿を遠心分離機(15000rpm、15min、20℃)で分離して回収し、得られた処理液の上清(Fr.3)と沈殿(Fr.4)の糖組成物量(回収率)と平均重合度を表6に示す。本実施例により、溶解度の違いを利用することで、重合度の高いオリゴ糖を分離可能であることが判明した。
Fr.2を3NのNaOHで中和し、該中和液とフナコシ社製 微結晶セルロース粉末(商品名:フナセル)1gとを混合し、25℃で一時間、50rpmで攪拌した。処理後、上清(Fr.5)を取り除き、純水で沈殿を数回洗浄した後に、70%エタノールを2ml添加し、25℃で一時間、50rpmで攪拌して上清(Fr.6)を回収した。
さらに、Fr.5の1mlに対し、活性炭(WAKO社製 品番034−18051)100mgを添加し、25℃で一時間、50rpmで攪拌し、上清を取り除き、純水で活性炭を数回洗浄した後に、70%エタノールを2ml添加し、25℃で一時間、50rpmで攪拌して上清(Fr.7)を得ることによって、硫酸やNaOHなどの塩を除去した。得られたオリゴ糖の回収率、平均重合度を表7に示す。本実施例により、結晶性セルロースや活性炭などを用いることにより、吸着作用度の違いを利用して重合度の異なるオリゴ糖を分離可能であることが判明した。
Fr.2と、参考例3の上清をそれぞれ10ml採取した。5NのNaOHでpH4.5に調製した後、0.2M酢酸緩衝液(pH4.5)に溶解させた1%セルラーゼ Tア
マノ4(天野エンザイム社製)を1ml添加し、総量を20mlになるように純水を添加して45℃で72時間の酵素処理を行った。コントロールとして煮沸して失活させた酵素液を用いて、同様に処理を行った。処理後、上清を回収し、イオンクロマトによってグルコース量を測定し、回収率を表8に示す。本実施例により、得られるオリゴ糖はセルラーゼにより単糖に分解可能であることが判明した。
Fr.2に対し、新たに調製した実施例1−1の一段目沈殿物を添加し、25℃に保ちながら8時間攪拌し2回目の反応液を得た。上記反応液を遠心分離により上清(Fr.8)と沈殿物に分離した。Fr.8に対し、再度、新たに調製した実施例1−1の一段目沈殿物を添加し、同様の処理を経て3回目の反応液上清(Fr.9)を得た。以上同様の手順を繰り返し、4回目(Fr.10)、5回目(Fr.11)、6回目(Fr.12)の処理液の上清について全糖量回収率及び平均重合度として表9に示す。本実施例により、処理液中の糖濃度を増加することが可能であることが判明した。
平均粒子径0.5mmサイズに調製されたスギ木粉100mgづつをプラスチック試験管多数本に入れ、夫々に10−70%の酸10m1を加え、25℃に保ちながらスターラーにより8時間攪拌し、一段目の反応液を得た。使用した酸は硫酸、リン酸、硝酸、沸酸、塩酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸をそれぞれ行い、高濃度の酸を入手しにくい、硝酸、沸酸、塩酸はそれぞれ上限濃度が60%、40%、30%までを利用した。上記反応液を遠心分離により上清と沈殿物を分離した。処理液の上清について全糖量回収率として表10に示す。
本実施例により、硫酸を使用した場合に最も糖回収率が高いことが判明した。
Claims (13)
- 固形バイオマスを酸濃度の異なる2種以上の酸処理液による処理工程で順次処理し、各処理工程で処理液から上清と固形物を分離し、分離した固形物を引き続く酸処理工程で処理する操作を繰り返すことによって、各処理工程で種類の異なる糖組成物を分離、回収する工程を含むことを特徴とする固形バイオマスから複数種の糖組成物を製造する方法。
- 前記固形バイオマスが木質系バイオマスを含有することを特徴とする請求項1記載の複数種の糖組成物を製造する方法。
- 前記固形バイオマスが10mmの目開きのふるいを通過するサイズに微細化されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複数種の糖組成物を製造する方法。
- 前記各酸処理工程における処理温度が35℃以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の複数種の糖組成物を製造する方法。
- 前記各酸処理工程で使用する酸が、硫酸、硝酸、塩酸及びリン酸から選ばれる1種の酸もしくは複数種の酸の混合酸であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の複数種の糖組成物を製造する方法。
- 前記各酸処理工程における1つの酸処理工程が、上清としてヘミセルロース系オリゴ糖を分離、取得するための酸処理工程であり、かつ、該酸処理工程における酸処理液の酸濃度が55〜63質量%であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の複数種の糖組成物を製造する方法。
- 前記各酸処理工程における1つの酸処理工程が、上清としてセルロース系オリゴ糖を分離、取得するための酸処理工程であり、かつ、該酸処理工程における酸処理液の酸濃度が64〜70質量%であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の複数種の糖組成物を製造する方法。
- 前記1つの酸処理工程が上清としてセルロース系オリゴ糖を分離、取得するための酸処理工程であり、かつ、該酸処理工程において、分離される上清の酸濃度における酸処理液の酸濃度を64〜70質量%から30〜63質量%まで低下させて上清中のセルロース系オリゴ糖を凝集させることを特徴とする請求項7に記載の複数種の糖組成物を製造する方法。
- 前記各酸処理工程における上清と固形物の分離を、フィルターとしてセルロース基材を使用して行うことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の複数種の糖組成物を製造する方法。
- 前記酸処理工程で得られるセルロース系オリゴ糖を酸又は酵素によって処理してグルコースを主成分とする単糖に転化する工程を有することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の複数種の糖組成物を製造する方法。
- 前記固形バイオマスを酸濃度の異なる2種以上の酸処理液による処理工程で順次処理する一連の処理工程は、最初の酸処理液による処理工程が上清としてヘミセルロース系オリゴ糖を分離、取得する工程であり、次の酸処理液による処理工程が、前段の酸処理工程で上清から分離された固形物を酸処理液で処理して上清としてセルロース系オリゴ糖を分離取得する工程であることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の複数種の糖組成物を製造する方法。
- 前記セルロース系オリゴ糖を分離取得する酸処理工程は、セルロース系オリゴ糖を含有する上清をセルロース基材からなるフィルターで処理して低重合度のセルロース系オリゴ糖成分含有ろ液と比較的に高重合度のセルロース系オリゴ糖成分に分割する工程を有することを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の複数種の糖組成物を製造する方法。
- 前記低重合度のセルロース系オリゴ糖成分含有ろ液の酸濃度を30〜63質量%に低下させて低重合度のセルロース系オリゴ糖成分を凝集させて高重合度のセルロース系オリゴ糖に転化することを特徴とする請求項12に記載の複数種の糖組成物を製造する方法。
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