JP2009140841A - 加熱体、及びこの加熱体を有する像加熱装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】通電暴走や異常昇温によって基板に破断が生じた場合でも、発熱体に不完全な破断が起きることを低減できるようにした加熱体の提供。
【解決手段】基板3aと、通電により発熱する発熱体であって、前記基板に前記基板の長手方向に沿って設けられた発熱体3bと、前記発熱体の前記基板の反対側の面を覆う保護層3cと、を有する加熱体3において、前記発熱体は有機物を炭化させて形成した炭素系発熱体であり、前記炭素系発熱体と前記基板との接着強度を、前記炭素系発熱体と前記保護層との接着強度よりも強くしたことを特徴とする。
【選択図】図6
【解決手段】基板3aと、通電により発熱する発熱体であって、前記基板に前記基板の長手方向に沿って設けられた発熱体3bと、前記発熱体の前記基板の反対側の面を覆う保護層3cと、を有する加熱体3において、前記発熱体は有機物を炭化させて形成した炭素系発熱体であり、前記炭素系発熱体と前記基板との接着強度を、前記炭素系発熱体と前記保護層との接着強度よりも強くしたことを特徴とする。
【選択図】図6
Description
本発明は、例えば、電子写真複写機、電子写真プリンタ等の画像形成装置に搭載する加熱定着装置として用いれば好適な像加熱装置に用いられる加熱体、及びこの加熱体を有する像加熱装置に関する。特に、基板と、通電により発熱する発熱体であって、前記基板に前記基板の長手方向に沿って設けられた発熱体と、前記発熱体の前記基板の反対側の面を覆う保護層と、を有する加熱体、及びこの加熱体を有する像加熱装置に関するものである。
電子写真式のプリンタや複写機に搭載する像加熱装置(定着器)として、フィルム加熱方式の定着装置が知られている。このフィルム加熱方式の定着装置としては、セラミックス製の基板上に通電発熱体を有するヒータと、そのヒータに接触しつつ移動する可撓性部材と、その可撓性部材を介してヒータとニップ部を形成する加圧ローラと、を有するものがある。特許文献1、2にはフィルム加熱方式の定着装置が記載されている。未定着トナー画像を担持する記録材は定着器のニップ部で挟持搬送されつつ加熱され、これにより記録材上の未定着トナー画像は記録材に加熱定着される。この定着器は、ヒータへの通電を開始し定着可能温度まで昇温するのに要する時間が短いというメリットを有する。従って、この定着器を搭載するプリンタは、プリント指令の入力後、一枚目の画像を出力するまでの時間(FPOT:First PrintOut Time)を短く出来る。またこのタイプの定着器は、プリント指令を待つ待機中の消費電力が少ないというメリットもある。
ところで、可撓性部材を用いた定着器を搭載するプリンタで小サイズの記録材を大サイズの記録材と同じプリント間隔で連続プリントすると、ヒータの記録材が通過しない領域(非通紙領域)が過度に昇温することが知られている。ヒータの非通紙領域が過昇温すると、ヒータを保持するホルダや加圧ローラが熱により損傷する場合がある。
そこで、上記の定着器を搭載するプリンタは、小サイズの記録材に連続プリントする場合、大サイズの記録材に連続プリントする場合よりもプリント間隔を広げる制御を行いヒータの非通紙領域の過昇温を抑えている。
しかしながら、プリント間隔を広げる制御は単位時間当りの出力枚数を減らすものであり、単位時間当りの出力枚数を大サイズの記録材の場合と同等或いは若干少ない程度に抑えることが望まれる。
そこで、上述した定着器に用いるヒータとして、温度が上昇するほど抵抗値が下がる特性(NTC:Negative Temperature Coefficient)のものを用いることも考えられている(特許文献3)。ヒータがNTC特性であれば、非通紙領域が過昇温しても非通紙領域の抵抗値は下がるので非通紙領域の過度の昇温(過昇温)を抑えられるという発想である。
また特許文献4にはそのようなNTC特性をもつ炭素系発熱体を基板上に貼り付け、炭素系発熱体を使ったヒータの強度をあげた構成の定着装置が開示されている。
特開昭63−313182号公報
特開平4−44075号公報
特開2004−234998号公報
特開2006−134746号公報
通例フィルム加熱方式の定着装置に用いられるヒータは、2重3重の安全装置が盛り込まれるが、リスクアセスメントとして万一の通電暴走や異常昇温の場合まで想定して、安全対策を講じる必要がある。その安全対策の一例として、ヒータが通電暴走や異常昇温を起こした場合、最終的にはヒータ基板自体が熱ストレスにより破断して、通電発熱体が分断されることで通電が遮断するようにヒータを構成することが望ましい。
ところで、上記ヒータにおいて、通電発熱体の材料として炭素系発熱体を用いた場合、その通電発熱体の可撓性部材側の面(表面)を保護するため、通電発熱体表面に耐熱性の樹脂材料からなる保護層を設けることが考えられる。
しかし、保護層の材料として耐熱性の樹脂を用いると、熱ストレスによりヒータ基板が割れた場合でも、樹脂が基板の割れるときの衝撃を吸収しやすいため、保護層がきれいに破断せず、通電発熱体もこれにつられて不完全な破断になりやすい。その場合、通電発熱体への通電がすぐに止まらない可能性がある。
そこで、本発明の目的は、通電暴走や異常昇温によって基板に破断が生じた場合でも、発熱体に不完全な破断が起きることを低減できるようにした加熱体、及びこの加熱体を有する像加熱装置を提供することにある。
上記の目的を達成するための構成は、基板と、通電により発熱する発熱体であって、前記基板に前記基板の長手方向に沿って設けられた発熱体と、前記発熱体の前記基板の反対側の面を覆う保護層と、を有する加熱体において、前記発熱体は有機物を炭化させて形成した炭素系発熱体であり、前記炭素系発熱体と前記基板との接着強度を、前記炭素系発熱体と前記保護層との接着強度よりも強くしたことを特徴とする。
本発明によれば、通電暴走や異常昇温によって基板に破断が生じた場合でも、発熱体に不完全な破断が起きることを低減できる。
本発明を図面に基づいて説明する。
[実施例1]
(1)画像形成装置例
図1は本発明に係る加熱体を有する像加熱装置を加熱定着装置として搭載できる画像形成装置の一例の概略構成図である。この画像形成装置は転写式電子写真プロセスを用いたレーザービームプリンタである。
(1)画像形成装置例
図1は本発明に係る加熱体を有する像加熱装置を加熱定着装置として搭載できる画像形成装置の一例の概略構成図である。この画像形成装置は転写式電子写真プロセスを用いたレーザービームプリンタである。
本実施例に示すプリンタは、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)101を有する。この感光ドラム101は、例えばアルミニウム等の導電性ドラム基体の外周面に有機光導電体等の感光層を形成した有機感光ドラムである。
102は帯電手段としての帯電ローラである。この帯電ローラ102により感光ドラム101の外周面(表面)が所定の極性・電位に一様に帯電処理される。本例のプリンターでは感光ドラム101表面は負極性の所定の電位に一様に帯電処理される。
103は露光手段としてのレーザー露光装置である。このレーザー露光装置103は不図示のイメージスキャナやコンピュータ等の外部機器(ホスト機器)から入力する画像情報に対応して変調したレーザー光Lを出力する。このレーザー光Lにより感光ドラム101表面の一様帯電処理面を走査露光する。この走査露光により感光ドラム101表面の露光明部の電荷が減衰または除電されて、感光ドラム101表面に画像情報に対応した静電潜像が形成される。
104は現像手段としての現像装置である。感光ドラム101表面に形成された静電潜像はこの現像装置104によりトナー像(現像像)として可視像化される。レーザービームプリンタの場合、一般に、静電潜像の露光明部にトナーを付着させて現像する反転現像方式が用いられる。104aは現像スリーブ、104bは現像ブレード、104cは現像バイアス印加電源、tは1成分磁性トナーである。
107は給送カセットであり、記録材(転写材)Pを積載収納させてある。給送スタート信号に基いて給送ローラ108が駆動されて給送カセット107内の記録材Pが一枚ずつ分離給送される。その給送された記録材Pはシートパス109→レジストローラ110→トップセンサ111を通って、感光ドラム101表面と転写手段としての転写ローラ112の外周面(表面)との間の当接ニップ部である転写部Tnに所定の制御タイミングにて導入される。即ち、感光ドラム101表面上のトナー像の先端部位が転写部Tに到達したとき、記録材Pの先端部位も到達するタイミングとなるように、レジストローラ110で記録材Pの搬送タイミングが制御される。またトップセンサ111による記録材先端通過検知信号に基いて感光ドラム101に対する画像書き出しタイミングが制御される。
転写部Tnに導入された記録材Pは感光ドラム101表面と転写ローラ112表面とにより挟持搬送され、その間、転写ローラ112には転写バイアス印加電源112aよりトナーの帯電極性とは逆極性の所定電位の転写バイアスが印加される。これにより転写部Tnにおいて感光ドラム101表面上のトナー像が記録材Pの面上に順次に静電的に転写されていく。
転写部Tnにおいてトナー像の転写を受けた記録材Pは、感光ドラム101表面から分離されシートパス113を通って像加熱装置である定着装置114へ搬送導入され、トナー像の加熱定着処理を受ける。
一方、記録材分離後(記録材に対するトナー像転写後)の感光ドラム101表面はクリーニング装置105のクリーニングブレード105aで転写残トナーや紙粉等の付着物の除去を受けて清浄面化され、繰り返して作像に供される。
また、定着装置114を通った記録材Pはシートパス115を通って、排出口116からプリンタ上面の排出トレイ117上に排出される。
給送カセット107は、給送カセット107の内部にサイズの異なる各種記録材Pを積載収納するための移動可能な規制ガイド(不図示)を有する。その規制ガイドを記録材Pのサイズに応じて変位させその記録材Pを給送カセット107内に積載収納することによって、サイズの異なる記録材Pを給送カセット107から一枚ずつ分離給送することができる。
本実施例のプリンタは、感光ドラム101、帯電ローラ102、現像装置104、クリーニング装置105の4つのプロセス機器について、これらを一括してプリンタ本体に対して着脱・交換自在のプロセスカートリッジ106として構成してある。
(2)定着装置
以下の説明において、定着装置及びこの定着装置を構成する部材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向である。短手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向である。幅とは短手方向の寸法である。長さとは長手方向の寸法である。また、記録材に関し、紙幅とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向の寸法である。
以下の説明において、定着装置及びこの定着装置を構成する部材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向である。短手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向である。幅とは短手方向の寸法である。長さとは長手方向の寸法である。また、記録材に関し、紙幅とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向の寸法である。
図2は定着装置114の一例の横断面模型図である。図3は定着装置114の縦断面模型図である。図4は定着装置114を記録材導入側から見た図である。図5の(a)はステー1の正面図、(b)はステー1の下面図(底面図)である。図6の(a)はヒータ3の表面側を表す説明図、(b)はヒータ3の裏面側を表す説明図である。また、図6の(c)は(a)のヒータ3の横断面拡大図、(d)は(a)のヒータ3の長手方向端部の通電発熱体3bとAC給電用電極31(32)と保護層3bとの積層関係を表す縦断面拡大図である。
この定着装置は特開平4−44075〜44083号公報、同4−204980〜204984号公報等に開示のテンションレスタイプのフィルム加熱方式の像加熱装置である。このタイプのフィルム加熱方式の像加熱装置は、可撓性部材としてエンドレスベルト状もしくは円筒状の耐熱性フィルムを用いている。そしてその耐熱性フィルムの周長の少なくとも一部は常にテンションフリー(テンションが加わらない状態)とし、耐熱性フィルムは加圧部材の回転駆動力で回転駆動するようにした装置である。
1は加熱体支持部材兼フィルムガイド部材としてのステーである。ステー1は、長手方向に長い横断面略半円形樋型の耐熱樹脂製の剛性部材である。本実施例では、ステー1の材料として高耐熱性の液晶ポリマーを用いた。ステー1の下面には、ステー1の短手方向中央に長手方向に沿って溝部1a(図5)が設けられている。また、ステー1の長手方向中央部の近傍には、後述するヒータ3の基板3aに設けられるサーミスタ5を収納する孔1bが溝部1aと連通させて設けてある。
3は加熱体としてのヒータである。ヒータ3は、ステー1の下面において短手方向中央にステー1の長手方向に沿って設けられた溝部1a(図5)内に嵌入させて固定支持させてある。図6の(a)に示すように、ヒータ3は、長手方向に細長いアルミナ製の基板3aを有する。その基板3aは厚さ0.65mm×幅8mm×長さ270mmの直方体である。その基板3aの表面(ニップ部Nと反対側の面)の全域にサンドペーパー等の粗し加工具により粗し処理を施すことによって、基板3a表面の全域を所定の表面粗さを有する凹凸面3a1に形成している。そしてその基板3a表面の短手方向中央には、基板3aの長手方向に沿って通電発熱体としての炭素系発熱体3bが配置されている。従って基板3aの表面とは炭素系発熱体側の面でもある。この炭素系発熱体3bの長手方向両端には、炭素系発熱体3bの端部上にかかるように銀Pd(パラジウム)ペーストにてAC給電用電極31,32がスクリーン印刷にて塗布されている(図6(d))。この炭素系発熱体3bの電極31,32間の塗付領域の長さは220mmである。また、耐熱性樹脂からなる保護層3cがスクリーン印刷により炭素系発熱体3b上で厚み25μmになるように塗布されている。その保護層3cは基板3aの長手方向において電極31,32の端部だけを残し炭素系発熱体3bの基板3aと反対側の面の全域を覆うように塗布されている。この保護層3cの塗付領域の長さは245mmである。基板3a表面の凹凸面3a1は基板3a表面の全域に形成する必要はなく、少なくとも炭素系発熱体3bと対向する領域、つまり炭素系発熱体3bを設けるための領域に粗し処理を施してその領域を凹凸面3a1に形成してもよい。
炭素系発熱体3bは、炭素を導電物質として利用した発熱体であり、少なくとも有機物を含有する原材料(以降“前駆体”と呼ぶ)を、炭素の非酸化雰囲気中(炭素が殆ど酸化しない雰囲気中)にて熱処理し、有機物を炭化させたものである。このような炭素系発熱体3bを有するヒータ3を用いる理由は、温度が上がると抵抗値が低下する特性、即ちヒータ3のNTC(Negative Temperature Coefficient)特性を利用するためである。そのNTC特性を利用することによってヒータ3の記録材Pが通過しない領域(非通紙領域)の過昇温を抑えることができる。その理由は後述の(4)項で説明する。
2は可撓性部材としての、耐熱性に優れた円筒状の耐熱性フィルムであり、ヒータ3を支持させたステー1の外周に外嵌させてある。このフィルム2の内周長とヒータ3を含むステー1の外周長はフィルム2の方を例えば3mm程度大きくしてある。従ってフィルム2は周長に余裕を持ってステー1の外周にルーズに外嵌されている。
フィルム2は熱容量を小さくしてクイックスタート性を向上させるために、フィルム2の膜厚は総厚100μm以下程度としてある。また、フィルム2の材料として、耐熱性、離型性、強度、耐久性等のあるPTFE、PFA、FEPの単層を使用できる。或いは、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PES、PPS等の外周表面にPTFE、PFA、FEP等をコーティングした複合層フィルムを使用できる。本実施例では、フィルム2として、厚み50μmのポリイミドフィルム上に厚み10μmのPTFEをコーティングしたフィルム層厚60μmのものを使用した。フィルム2の内周面(内面)には、ヒータ3との摺動性を向上させるためにグリスが塗られている。
上記のステー1、ヒータ3、フィルム2等により加熱アセンブリ4が構成されている。
6はバックアップ部材としての弾性加圧ローラである。本例の加圧ローラ6は、外径13mmの鉄、ステンレス、アルミ等の丸軸の芯金6a上に、耐熱性弾性層6bとして、長さ240mm、厚さ3mmのシリコ−ン発泡体を被覆したものである。この加圧ローラ6はステー1に保持されているヒータ3とフィルム2を挟んで対向している。そして、加圧機構(不図示)によりステー1と加圧ローラ6の間には所定の圧力が掛けられている。この圧力により加圧ローラ6の弾性層6bがフィルム2を挟んでヒータ3に沿って長手方向に弾性変形する。これによって加圧ローラ6はフィルム2を挟んでヒータ3と記録材Pが担持する未定着トナー画像の加熱定着に必要な所定幅のニップ部(定着ニップ部)Nを形成する。
(3)定着装置の加熱定着動作
図7はヒータ3の給電制御系の一例のブロック図である。
図7はヒータ3の給電制御系の一例のブロック図である。
加圧ローラ6の芯金6aの長手方向端部に設けたドライブギアGをモータ等の駆動源Mにより回転駆動することによって加圧ローラ6は矢印方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転される。加圧ローラ6の回転により、ニップ部Nにおける加圧ローラ6の外周面(表面)とフィルム2の外周面(表面)の摩擦力によってフィルム2に回転力が作用する。すると、フィルム2は、フィルム2内面がニップ部Nにおいてヒータ3の保護層3cの表面を摺動しながらステー1の周りを矢印方向に加圧ローラ6の回転周速度とほぼ同じ周速度で従動回転する。このときステー1は従動回転するフィルム2内面をステー1の弧状の外周面によりガイドする。
一方、図7に示すように、ヒータ3の電極31,32には、給電用コネクタ7,8を介して商用電源(AC電源)13からトライアック12を通じて給電される。これにより電極31,32間の炭素系発熱体3bが発熱してヒータ3の基板3aは迅速急峻に昇温する。そしてそのヒータ3の温度は基板3aの裏面(ニップ部Nと反対側の面)に設けられている温度検知手段としてのサーミスタ5により検知され、そのサーミスタ5の出力をA/D変換器10を介して制御手段としての給電制御部(MPU)11が取り込む。制御部11は、サーミスタ5から得られる検知温度情報に基づいてトライアック12を位相制御、或いは波数制御してヒータ3に通電する電力を制御することにより、ヒータ3を所定の温度に維持する。即ち、サーミスタ5の検知温度が所定の定着温度(目標温度)より低い時はヒータ3が昇温するように、またサーミスタ5の検知温度が所定の定着温度より高い時はヒータ3が降温するように、ヒータ3に通電する電力を制御する。これにより定着時のヒータ3の温度を所定の定着温度に保つ。本実施例では位相制御により出力を0〜100%まで5%刻みの21段階で変化させている。出力100%とは、発熱体に商用電源からの電力を全通電したときである。
ヒータ3の温度が定着温度に立ち上がり、フィルム2の回転周速度が定常化した状態で、ニップ部Nに未定着トナー画像Tを担持する記録材Pが導入される。そして、ニップ部Nにおいてその記録材Pがフィルム2表面と加圧ローラ6表面とにより挟持搬送される。その搬送過程において、記録材Pにはニップ部Nの圧力が付与されるとともにヒータ3の熱がフィルム2を介して付与されることにより、記録材P上の未定着トナー画像Tが記録材Pの面上に加熱定着される。そして未定着トナー画像Tが加熱定着された記録材Pはフィルム2表面から分離(曲率分離)してニップ部Nから排出される。
ここで、本実施例のプリンタおける記録材の搬送基準を図3及び図7を参照して説明する。
本実施例のプリンタは記録材Pの紙幅中央を搬送基準としている。従って、定着装置114においてはヒータ3の長手方向中央が各種サイズの記録材Pの搬送基準となる。Oは記録材の搬送基準線(仮想線)である(図7)。図3及び図7において、Aはこのプリンタで使用可能な定型の最大紙幅の記録材をニップ部Nに導入したときその記録材がヒータ3を通過する領域(最大通紙領域)である。この通紙領域Aはヒータ3の炭素系発熱体3bの長さにほぼ対応している。Bはこのプリンタで使用可能な定型の最小紙幅の記録材をニップ部Nに導入したときその記録材がヒータ3を通過する領域(通紙領域)である。Cは最大紙幅の記録材よりも紙幅の小さい記録材(小サイズ紙)をニップ部Nに導入したときその記録材がヒータ3を通過しない領域(非通紙領域)である。この非通紙領域Cの領域幅は小サイズ紙の紙幅の大小に応じて異なる。
ヒータ3の温度を検出するサーミスタ5は、ヒータ3の基板3a裏面において、大小どの紙幅の記録材をニップ部Nに導入してもその記録材が必ず通過する最小通紙領域Bに対応する位置に接触させて設けてある。
(4)NTC発熱体の発熱特性
次にNTC特性のヒータ3を用いれば非通紙領域の過昇温が低減できる理由について図8を参照して説明する。図8はヒータ3の電気的モデル図である。
次にNTC特性のヒータ3を用いれば非通紙領域の過昇温が低減できる理由について図8を参照して説明する。図8はヒータ3の電気的モデル図である。
ヒータ3の炭素系発熱体3bに流れる電流をIとし、ヒータ3の長手方向において中央部(通紙領域)の抵抗値をR1、端部(非通紙領域の片側)の抵抗値をR2とした場合、中央部の発熱量W1はI2・R1であり、端部の発熱量W2はI2・R2である。なお、理解しやすいように、ニップ部Nに記録材を通紙(導入)していない状態でR1=2×R2となる位置、つまり非通紙領域の長さ(両端部の長さの和)が通紙領域の長さと等しくなる位置で通紙領域と非通紙領域を区切って考える。ここで、ニップ部Nに記録材を通紙していない状態において、炭素系発熱体3bの単位長さ当りの抵抗値はヒータ3全体で均一である。
PTC(Positive Temperature Coefficient)発熱体において、小サイズ紙を通紙した場合を考えると、その発熱体がフィルムを介して紙と接触するため小サイズ紙の紙幅分、中央部の熱が奪われる。サーミスタは中央部の温度を検知しており、中央部の温度が下がらないように通電制御が行われるため、紙に熱を奪われることのない端部は中央部に対して高温となる。この場合、PTC特性により端部の単位長さ当りの抵抗値は中央部の単位長さ当りの抵抗値よりも高くなるので、片側の端部の発熱量W2は中央部の発熱量W1に比べて大きくなる。つまり端部の単位長さ当りの発熱量が中央部よりも増えてしまう。また発熱量が大きくなると温度が上昇するので更に抵抗が高くなり、いっそう発熱量が増えてしまう。
一方、NTC発熱体において、小サイズ紙を通紙した場合では、温度が高いほうが抵抗値が低くなるので、端部の単位長さ当りの抵抗値は中央部の単位長さ当りの抵抗値よりも低くなる。よって片側の端部の発熱量W2は中央部の発熱量W1に比べて小さくなる。つまり端部の単位長さ当りの発熱量が中央部よりも少なくなる。このため、PTC発熱体のときよりも両端部の発熱を抑制できる。
以上の理由によりNTC特性の抵抗発熱体であれば小サイズ紙通紙時の端部の温度を低く抑えることができる。
次に、炭素系発熱体3bの材料及び製法について説明する。本実施例の炭素系発熱体では特に炭化させる有機物としては、炭素の非酸化雰囲気中、例えば真空中、又は窒素ガスやアルゴンなどの不活性ガス中での熱処理により5%以上の炭化収率を示す有機物質を使用する。この有機物質として、例えば、塩素化塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル−ポリ酢酸ビニル共重合体等の縮合多環芳香族を分子の基本構造内に持つ天然高分子物質が挙げられる。用いられる。また、この有機物質として、ポリアミド等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の熱硬化性樹脂等の縮合多環芳香族を分子の基本構造内に持つ天然高分子物質が挙げられる。また、この有機物質として、リグニン、セルロース、トラガントガム、アラビアガム、糖類等の縮合多環芳香族を分子の基本構造内に持つ天然高分子物質が挙げられる。その他に、この有機物質として、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、コプナ樹脂等の縮合多環芳香族を分子の基本構造内に持つ合成高分子物質が挙げられる。
前記炭素の非酸化雰囲気中(炭素が殆ど酸化しない雰囲気中)とは、真空中(1×10−2Pa以下)、又は窒素ガス中、不活性ガス中のことを指す。このような雰囲気中で熱処理することで、熱処理時の酸化が確実に防止でき、炭素系発熱体を安定して作ることが出来る。
ここでいう炭化収率とは、炭素の非酸化雰囲気中での熱処理により得られる炭化物質(グラファイトや無定形炭素などの複合体)の重量と、熱処理前の原材料中の有機物質の重量と、の比のことである。従って、例えば炭化収率が5%とは、熱処理前の有機物質の重量が100gの場合、熱処理後の炭化物質の重量が5gであるということである。因みに有機物を酸化雰囲気中で熱処理した場合には、使用する有機物の種類にもよるが、一般に500℃くらいの熱処理温度から酸化が始まる。酸化が生じるため炭素が分解または燃焼してしまい、ヒータとして利用できる安定した炭化物質が得られない。なお、使用する有機物の種類と量は、炭素系発熱体の抵抗温度特性、抵抗値、形状により適宜選択され、一種或いは数種の有機物の混合体で使用することが可能である。
また予め有機物中に炭素粉末を混合しておいても良い。ここでいう炭素粉末としては、カーボンブラック、黒鉛、コークス等があり、炭素系発熱体の抵抗値、形状により一種或いは数種の混合体として使用することが可能である。この場合電子は、予め混ぜておいた炭素粉末中及び熱処理により炭化した有機物中を流れる。原材料の中に予め炭素粉末を混合する手法は、炭素系発熱体の体積抵抗を下げたい場合に有効である。
また、任意の抵抗値の炭素系発熱体を作るには絶縁性物質や半導電性物質を有機物と共に混合した原材料を熱処理することが望ましい。絶縁性物質、半導電物質としては、金属炭化物、金属硼化物、金属珪化物、金属窒化物、金属酸化物、半金属窒化物、半金属酸化物、半金属炭化物が好ましく、炭素系発熱体の抵抗値、形状により1種或いは数種を選択すれば良い。
絶縁性物質や半導電性物質を混合した原材料においては、炭素だけでなく炭素を伝わって流れる電子の導電阻害物質となる絶縁性物質、半導電物質も持っているため、所望の抵抗値の炭素系発熱体を容易に製造できる。これらの手法を用いることで炭素系発熱体の抵抗値や採り得る形状の自由度が広がる。
即ち、熱処理により炭化させる有機物と、この有機物に少なくとも絶縁性或いは半導電性の物質の一種又は数種を混合する。そして、これを成形後、炭素の非酸化雰囲気中にて熱処理することによって炭素系発熱体を作れば、抵抗温度特性、抵抗値、及び炭素系発熱体の形状の設定幅が広がる。従って、フィルム2を用いた定着装置114のヒータ3に適した炭素系発熱体3bを容易に提供できる。なお、必要に応じて、絶縁性物質や半導電性物質だけでなく、炭素粉末も原材料に混合しても良い。
また、前記絶縁性物質或いは半導電性物質は窒化ホウ素、アルミナ、炭化珪素、炭化ホウ素等が推奨される。このような物質を用いることで炭素系発熱体の抵抗値制御が容易にできる。
また、前記炭素系発熱体の熱処理時の熱処理温度(熱処理時の最高到達温度)は、850℃以上、1750℃以下であることが好ましい。上記温度にて熱処理することで、炭素系発熱体の抵抗変化率をゼロ近傍または負にすることが可能となる。また、炭素系発熱体の抵抗値を実用的な抵抗値に調整することが出来、非通紙部昇温の抑制と電力の過不足がない定着装置が提供できる。
黒鉛化は熱処理する有機物及び原材料に混入する炭素粉末の種類とその入れ目量でもある程度調整が可能であるが、黒鉛化させる有機物の熱処理の条件に大きく依存し、特に熱処理温度が高いほど黒鉛化の度合いが高くなる。
このように炭素系発熱体は熱処理の条件を変え、黒鉛化を調整するだけで容易に抵抗温度特性を大きく変化させることが出来る特徴を持っている。
なお、ヒータ3の基板3a表面に設けられた炭素系発熱体3aにおいて、フィルム2内面と摺動するフィルム摺動面には、必要に応じて、耐熱性の潤滑材層など他の所望の機能層を付加することもできる。
(5)ヒータ3の具体例
以下に具体的なヒータ例として、実施例ヒータ1、実施例ヒータ2、実施例ヒータ3、実施例ヒータ4の構成を説明する。また、その実施例ヒータ1から実施例ヒータ4の各ヒータの比較例として、比較例ヒータ1の構成を説明する。実施例ヒータ1から実施例ヒータ4及び比較例ヒータ1の各ヒータの外観形態は図6に示すヒータ3と同じである。
以下に具体的なヒータ例として、実施例ヒータ1、実施例ヒータ2、実施例ヒータ3、実施例ヒータ4の構成を説明する。また、その実施例ヒータ1から実施例ヒータ4の各ヒータの比較例として、比較例ヒータ1の構成を説明する。実施例ヒータ1から実施例ヒータ4及び比較例ヒータ1の各ヒータの外観形態は図6に示すヒータ3と同じである。
(5−1)実施例ヒータ1
図9は実施例ヒータ1の横断面模型図である。
図9は実施例ヒータ1の横断面模型図である。
実施例ヒータ1では、基板13aとして、アルミナ製のセラミック基板(以下、基板と記す)を用いている。そしてその基板13a表面に直接炭化発熱体13bを成形した。即ち、炭化発熱体13bの前駆体として、塩素化塩化ビニル樹脂、黒鉛粉末、窒化硼素を分散させ混練し、押し出し成型機で基板13a表面上に直接板状に成形後に真空中(0.01Pa以下)で1500℃にて熱処理することにより、炭化発熱体13bを成形した。因みに基板13a表面の全域に渡って、予めサンドペーパーにより表面粗さRa5μm、R(max)10μmの粗し処理を行っておいた。従って基板13a表面はその表面粗さを有する凹凸面13a1となっている。炭素系発熱体13bは基板13aの粗し処理を行った表面即ち粗面13a1の上で直接、上記塩素化塩化ビニル樹脂の炭化により形作られる。これにより、基板13a表面上に長さ250mm×幅5mm×厚さ0.2mmの板形状にて総抵抗値75.2Ω(室温20℃)の炭素系発熱体13bを得た。この炭素系発熱体13bの基板13aの反対側の面、つまり保護層側の面(表面)の表面粗さはRa2μm、R(max)5μmである。
また、炭素系発熱体13bの長手方向両端部の表面には、先にAC印加用の電極31,32を銀Pdペーストのスクリーン印刷により設け、その電極31,32間の距離が220mmになるようにした。次に炭素系発熱体13bの表面の全域と電極31,32の端部を覆うようにポリイミド樹脂からなる保護層13cを設けた。保護層13cは、ポリイミドのワニスをスクリーン印刷により塗布し、炭素系発熱体3b上で厚み20μmになるように成膜した。
実施例ヒータ1は、基板13a表面が表面粗さRa5μm、R(max)10μmの凹凸面13a1に形成してある。そのため、基板13a表面の凹凸面13a1に炭素系発熱体13bがよく喰いつき、所謂アンカー効果により、基板13aと炭素系発熱体13bを強固に固着(接着)することができる。一方、炭素系発熱体13b表面の表面粗さはRa2μm、R(max)5μmであって基板13a表面の表面粗さよりも小さい。そのため、炭素系発熱体13bと保護層13cの固着強度(接着強度)は、基板13aと炭素系発熱体13bの固着強度(接着強度)よりも弱い。言い換えれば、炭素系発熱体13bと基板13aの接着強度は、炭素系発熱体13bと保護層13cの接着強度よりも強い。
(5−2)実施例ヒータ2
図10は実施例ヒータ2の横断面模型図である。
図10は実施例ヒータ2の横断面模型図である。
実施例ヒータ2の構成は、基本的に実施例ヒータ1と同じ保護層、基板を用いているので、これらの保護層、基板については実施例ヒータ1の保護層13c、基板13aと同一符号を付した。
実施例ヒータ2において、実施例ヒータ1との違いは、炭素系発熱体23bと基板13aの間に接着性を有する耐熱性樹脂の層として接着層23cを設けた点にある。接着層23cを設けることによって、実施例ヒータ1よりも炭素系発熱体23bと基板13aとの接着強度を上げた構成となっている。
また、実施例ヒータ2では、炭素系発熱体23bは実施例ヒータ1のように直接酸化される有機物を基板13a表面上に塗布して基板13aと一緒に焼成するのではなく、予め焼成して単体の板として用意した。即ち、炭素系発熱体23bの前駆体として、塩素化塩化ビニル樹脂、黒鉛粉末、窒化硼素を分散させ混練し、押し出し成型機で棒状に成形後に真空中(0.01Pa以下)で1500℃にて熱処理することにより室温環境で所定の固有抵抗の基材を得る。その室温環境は20℃、固有抵抗は30.1×10−3Ω・cmである。そしてこの基材を長さ250mm×幅5mm×厚さ0.2mmの形に加工し、総抵抗値75.2Ωとしたものを炭素系発熱体23bとして用いた。
また、実施例ヒータ2では、炭素系発熱体23bの基板側の面(裏面)には、予め炭素系発熱体23bの裏面全域にサンドペーパーにより表面粗さRaで5μm、R(max)で10μmの粗し処理を行っておいた。従って炭素系発熱体23b裏面はその表面粗さを有する粗面23b1となっている。因みに粗し処理を行っていない炭素系発熱体23b表面の表面粗さはRa2μm、R(max)5μmであった。
実施例ヒータ2は、基板13aと炭素系発熱体23bの間に接着層23cとしてポリイミドのワニスを塗っておき焼成させることで、基板13aと炭素系発熱体23bを接着させた。因みにポリイミドのワニスとしては、実施例ヒータ1の保護層13cと同じものを用いた。また、炭素系発熱体23bの裏面に粗し処理を行うことで接着層23cと基板13aの接着、接着層23cと炭素系発熱体23bの接着が強固になる。即ち、基板13a表面の表面粗さによる炭素系発熱体13bのアンカー効果に加え、接着層23c自体の接着効果により基板13aと炭素系発熱体13bを実施例ヒータ1よりもより強固に固着(接着)することができる。また、炭素系発熱体23b裏面の表面粗さによる接着層23cのアンカー効果に加え、接着層23c自体の接着効果により接着層23cと炭素系発熱体23bを強固に固着(接着)することができる。一方、炭素系発熱体23b表面を粗し処理を行わない滑らかな面のままにしておくことで、相対的に炭素系発熱体23bと保護層13cの固着強度(接着強度)を弱くすることができる。従って、実施例ヒータ2においても、炭素系発熱体23bと基板13aの接着強度は、炭素系発熱体23bと保護層13cの接着強度よりも強い。
(5−3)実施例ヒータ3
実施例ヒータ3は、実施例ヒータ2よりも保護層と炭素系発熱体との接着強度を弱めた構成である。即ち保護層のポリイミド樹脂中にフィラー(図示せず)を分散させ、炭素系発熱体と保護層の実質的な接着面積を減らすことにより、炭素系発熱体と保護層の接着強度を弱めた。実施例ヒータ3の構成は基本的に実施例ヒータ2と保護層13cを除き同じであるので、実施例ヒータ2と同じ部材・部分には同一の符号を付してその説明は割愛する。
実施例ヒータ3は、実施例ヒータ2よりも保護層と炭素系発熱体との接着強度を弱めた構成である。即ち保護層のポリイミド樹脂中にフィラー(図示せず)を分散させ、炭素系発熱体と保護層の実質的な接着面積を減らすことにより、炭素系発熱体と保護層の接着強度を弱めた。実施例ヒータ3の構成は基本的に実施例ヒータ2と保護層13cを除き同じであるので、実施例ヒータ2と同じ部材・部分には同一の符号を付してその説明は割愛する。
図11は実施例ヒータ3の横断面模型図である。
実施例ヒータ3の保護層33cは、ポリイミドワニス中に窒化硼素フィラーを体積比で30%wt分散させ、スクリーン印刷により炭素系発熱体23b表面に塗布した後、厚み20μmになるように成膜した。ここで窒化硼素フィラーとしては、平均粒径が5μmのものを用いた。保護層33cのポリイミド樹脂中に分散させるフィラーの材料として、窒化硼素以外にもアルミナ、炭化珪素(SiC)、シリカ、ガラス、などのフィラーを用いることもできる。
(5−4)実施例ヒータ4
図12の(a)は実施例ヒータ4の表面側の図、(b)は(a)の実施例ヒータ4のスルーホールTH近傍の拡大図である。
図12の(a)は実施例ヒータ4の表面側の図、(b)は(a)の実施例ヒータ4のスルーホールTH近傍の拡大図である。
実施例ヒータ4の最大の特徴は、基板13aの短手方向において炭素系発熱体13bの外側位置に基板13aを厚さ方向に貫通するスルーホールTHを設けたことである。スルーホールTHは、基板13aに対して炭酸ガスレーザー加工することによって基板13aにφ0.5mmの貫通孔を開けた。また、実施例ヒータ4の他の特徴は、基板13aにおいてスルーホールを含む領域としてのスルーホール周辺領域13Aのみに対して、実施例ヒータ1と同じ手法により同じ表面粗さの粗し処理を行ったことにある。従って、基板13a表面のスルーホール周辺領域13Aは表面粗さRa5μm、R(max)10μmの凹凸面13a1に形成してある。実施例ヒータ4は、上記の2つの特徴点を除いて、実施例ヒータ1と同じ構成としてある。
実施例ヒータ4は、基板13aにスルーホールTHを設けることにより、基板13aはスルーホールTHを設けなかった場合に比べて割れやすくなる。従って、実施例ヒータ4は、スルーホールTHを設けた個所だけに破断が起きるようにすることができる。よって、炭素系発熱体13bと基板13aが接着する全領域に粗し処理を行う必要がない。またスルーホールTHを起点に亀裂が走りやすくなるため、より強く基板13aの割れた衝撃が保護層13cに伝わり、保護層13cが裂けやすくなる効果がある。
(5−5)比較例ヒータ1
図13は比較例ヒータ1の横断面模型図である。
図13は比較例ヒータ1の横断面模型図である。
比較例ヒータ1は保護層と基板を除き実施例ヒータ1と同じである。よって実施例ヒータ1と同一の部材・部分には同一の符号を付してその説明は割愛する。
比較例ヒータ1において、基板13aが実施例ヒータ1の基板13aと異なる点は、基板13a表面に粗し処理を行っていない点だけである。その他の、炭素系発熱体13b及び保護層13cの塗布域や厚み、電極31,32などは実施例ヒータ1と同じに形成した。因みに基板13aの表面粗さはRa0.5μm、R(max)1.5μmだった。
以下に、実施例ヒータ1〜実施例ヒータ4及び比較例ヒータ1について、リスクアセスメント試験を行った結果を示す。ここでリスクアセスメント試験としては、記録材Pとして幅狭厚紙(小サイズ厚紙)が多重送したことによる異常昇温を想定した異常昇温試験と、停止時にヒータへの通電が行われたことを想定した通電暴走試験の2つを行った。因みにどちらのリスクも現実的には、2重故障以上の異常がないかぎり起きることはない。
まず異常昇温試験の方法としては次の方法を用いた。即ち封筒(COM10)を6枚重ねた束を何束も用意し、これをプロセススピード120mm/secにてカラ回転温調をさせた定着装置に強引に12PPMの等間隔で連続通紙して、ヒータが壊れるかを試験した。これは封筒(COM10)の束により、ヒータの非通紙部は非通紙部昇温を起こすとともに、加圧ローラとフィルムとの間が離間(ニップの浮き)することによって、異常な昇温が発生するモードである。ここで定着温度はサーミスタの温度で200℃になるように統一して行った。通常、複写機やプリンタ等の画像形成装置は、給紙口ないし、給紙機構−定着装置間の紙搬送機構にて重送した記録材が通れない構造に設計される。また、画像形成装置は、仮に重送が発生した場合でも、転写部にて転写電流の変化をモニターすることで重送が検知され、駆動が停止する機構などを有する。
また通電暴走試験では、朝一の冷えた状態から加圧ローラを駆動させずにヒータへの通電だけを行い、ヒータの急速な昇温を引き起こし、ヒータを強引に熱的に破壊して調べた。通電の条件としては、サーミスタによる制御を介さないフル通電モードで入力電圧を180Vから260Vの間にて適時振って、基板の昇温速度をそろえ、破断の様子の比較を行った。因みにこのリスクも画像形成装置のMPUの故障による通電暴走とサーミスタの異常電圧(異常高温時の出力)をハード的に検知し、リレイを強制的にオフにする安全回路の同時故障などの2重故障以上にならないかぎり起きることはない。
ここで、表1に記載の完全破断、不完全破断、及び不完全破断2について、便宜的に図6に示すヒータ3の符号を用いて説明する。
表1中、完全破断とは、図14(c)に模式的に示すように基板3a、炭素系発熱体3b及び保護層3cが割れて、炭素系発熱体3bが十分に離間した状態のことである。
不完全破断とは、図14(a)に模式的に示すように保護層3cが破断せず炭素系発熱体3bが十分に離間していない状態のことである。不完全破断は次の理由によって起こる。即ち、基板3aと炭素系発熱体3bは割れたものの炭素系発熱体3bが基板3aから剥がれることにより、保護層3cまで基板3aが破壊したときの衝撃が十分に伝わらず、保護層3cが破断せず炭素系発熱体3bが十分に離間しないことによる。
不完全破断2とは、図14(b)に示すように炭素系発熱体3bと基板3aの剥がれは発生していないものの、保護層3cが破断せず、やはり炭素系発熱体3bが十分に離間していない状態のことである。
不完全破断と不完全破断2どちらの場合も、炭素系発熱体3bが破断したとはいえ、依然として十分離間していない。炭素系発熱体3bは有機物を炭化した焼結体であり、それ自体が硬くかつ脆性を有した独立の基板であるため、炭素系発熱体3bが破断した場合その破断部が先鋭になりやすい。そのため、炭素系発熱体3bが破断した場合に十分に離間していないと最悪通電が遮断されない可能性があり、リスクアセスメント上好ましくない。一方、完全破断の場合には、炭素系発熱体3bが図14(c)のように破断後十分に離間するため通電が遮断される。
上記表1のリスクアセスメント試験結果が示すように比較例ヒータ1は、異常昇温試験及び通電暴走試験のいずれの試験においても不完全な破断であった。
それに対して、実施例ヒータ1は、異常昇温試験では完全破断が起きる効果がある。また、通電暴走試験では、基板13aの昇温速度(度/秒)が250度/秒と速いとき(入力が比較的高電圧のとき)においてのみ、完全破断が起きる効果があることが判る。
実施例ヒータ2は、異常昇温試験では完全破断が起きる効果がある。また、通電暴走試験においては、実施例ヒータ1よりも基板13aの昇温速度が低い場合(230度/秒)においても完全破断が起きる結果となっている。これは、実施例ヒータ2では、炭素系発熱体23bと基板13aとの接着強度が相対的に実施例ヒータ1よりもアップしたため、基板13aの熱膨張による破断の衝撃が保護層13cに伝わりやすくなったためである。
実施例ヒータ3は、実施例ヒータ2よりさらに強固に基板13aと炭素系発熱体23bの接着強度をあげている。そのため、実施例ヒータ2よりも基板13aの昇温速度が200度/秒とさらに低いとき(入力が比較的低電圧のとき)でも完全破断が起きる結果となっている。
実施例ヒータ4は、基板13aにスルーホールTHを設けた構成とその基板13aのスルーホール周辺領域に粗し処理を行う構成を組み合わせることで、完全破断が起きるようにすることができることを示している。また、実施例ヒータ4においては破断個所はすべてスルーホールTHの箇所で起きており、この結果からスルーホールTHにより破断個所を限定させることができることが判る。故に実施例ヒータ1、実施例ヒータ2及び実施例ヒータ3そのものにおいても基板13aにスルーホールを設けた構成にすることで、それぞれさらに低い基板13aの昇温速度においても、完全破断できるようになることは言うまでも無い。
以上説明したように、実施例ヒータ1乃至実施例ヒータ4のように、炭素系発熱体13b(23b)と基板13aとの接着強度を、炭素系発熱体13b(23b)と保護層13c(33c)との接着強度よりも強くした。そのため、基板13a破断時の衝撃をまずは炭素系発熱体13b(23b)に強く伝えることができ、そしてさらには保護層13c(33c)にも強く伝えることができる。これによって、炭素系発熱体13b(23b)と保護層13c(33c)を裂けやすくすることができ、ヒータ破断時に炭素系発熱体13b(23b)を確実に破断、離間させることで通電遮断をより安定して行うことができる。つまり、ヒータの通電暴走や異常昇温によって基板に破断が生じた場合でも、炭素系発熱体に不完全な破断が起きることを低減できる。
また、実施例ヒータ1のように基板13a表面に粗し処理を施すことによって、基板13a表面の表面粗さと炭素系発熱体13b表面の表面粗さに差をつけることができる。これにより、炭素系発熱体13bと基板13aとの接着強度を、炭素系発熱体13bと保護層13cとの接着強度よりも強くでき、基板13a破断時により確実に発熱体保護層13bを裂けやすくすることができる。
また、実施例ヒータ2及び実施例ヒータ3のように基板13a表面と発熱体保護層23b裏面にそれぞれ粗し処理を施しその基板13a表面と発熱体保護層23b裏面を接着層23cにより接着する。これによって、炭素系発熱体13bと基板13aとの接着強度を、炭素系発熱体13bと保護層13cとの接着強度よりも強くでき、基板13a破断時に、より確実に発熱体保護層23bを裂けやすくすることができる。
また、実施例ヒータ1乃至実施例ヒータ3において基板13aにスルーホールTHを設けることによって、そのスルーホールTH部で基板13aを破断できるとともに基板13a破断時により確実に発熱体保護層23bを裂けやすくすることができる。
また、実施例ヒータ4のように基板13aにスルーホールTHを設けるとともにスルーホール周辺領域13Aに粗し処理を行うことによって、基板13a破断時により確実に発熱体保護層23bを裂けやすくすることができる。
また、本実施例のヒータ3を有する定着装置114は、通電暴走や異常昇温時により確実にヒータ破断を行うことができる。
[その他]
1)フィルム2内面が摺動するヒータ3の保護層3cの表面には、必要に応じて、耐熱性の潤滑材層など他の所望の機能層を付加することもできる。
1)フィルム2内面が摺動するヒータ3の保護層3cの表面には、必要に応じて、耐熱性の潤滑材層など他の所望の機能層を付加することもできる。
2)定着装置114において、可撓性性部材であるフィルム2の駆動方式は実施例の加圧ローラ駆動方式に限られない。エンドレスの可撓性部材の内周面に駆動ローラを設け、可撓性部材にテンションを加えながら駆動する装置構成であってもよいし、可撓性部材をロール巻きの有端ウエブ状にしてこれを繰り出しながら走行移動させる装置構成にすることもできる。
3)定着装置114において、バックアップ部材はローラ体に限られず、回動ベルト体にすることもできる。
4)ヒータ3に設けられる温度検知手段はサーミスタに限られない。接触型または非接触型の各種のものを使用することができる。
5)炭素系発熱体の前駆体をアルミナ基板上へ成形する方法としては、押し出し成型に限られず、スクリーン印刷などでも構わない。
6)本発明に係る像加熱装置は、画像形成装置の定着装置に限られず、その他、画像を仮定着する像加熱装置、画像を担持した記録媒体を再加熱してつや等の表面性を改質する像加熱装置等としても使用できる。
2・・耐熱性フィルム、3・・ヒータ、3a・・基板、3b・・炭素系発熱体、3c・・保護層、6・・加圧ローラ、13A・・スルーホール周辺領域、114・・定着装置、N・・ニップ部、P・・記録材、T・・未定着トナー画像、TH・・スルーホール。
Claims (8)
- 基板と、通電により発熱する発熱体であって、前記基板に前記基板の長手方向に沿って設けられた発熱体と、前記発熱体の前記基板の反対側の面を覆う保護層と、を有する加熱体において、
前記発熱体は有機物を炭化させて形成した炭素系発熱体であり、前記炭素系発熱体と前記基板との接着強度を、前記炭素系発熱体と前記保護層との接着強度よりも強くしたことを特徴とする加熱体。 - 前記基板の前記炭素系発熱体側の表面において少なくとも前記炭素系発熱体と対向する領域には粗し処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱体。
- 前記炭素系発熱体と前記基板との間に接着性を有する耐熱性樹脂の層を設けるとともに、前記基板の前記炭素系発熱体側の表面において少なくとも前記炭素系発熱体と対向する領域の表面粗さは、前記炭素系発熱体の前記保護層側の表面の表面粗さよりも粗くしてあることを特徴とする請求項1に記載の加熱体。
- 前記炭素系発熱体の前記基板側の裏面の表面粗さは、前記炭素系発熱体の前記保護層側の表面の表面粗さよりも粗くしたことを特徴とする請求項3に記載の加熱体。
- 前記保護層にフィラーを混ぜたことを特徴とする請求項1に記載の加熱体。
- 前記基板はスルーホールを有することを特徴とする請求項1に記載の加熱体。
- 前記スルーホールを有する前記基板は、前記基板の前記炭素系発熱体側の表面において前記スルーホールを含む領域に粗し処理が施されていることを特徴とする請求項6に記載の加熱体。
- 加熱体と、前記加熱体と接触しつつ移動する可撓性部材と、前記可撓性部材を介して前記加熱体とニップ部を形成するバックアップ部材とを有し、前記ニップ部で画像を担持する記録材を挟持搬送しつつ加熱する像加熱装置において、
前記加熱体として請求項1から請求項7の何れかに記載の加熱体を有することを特徴とする像加熱装置。
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EP2341756A1 (en) * | 2009-12-31 | 2011-07-06 | Chi-Seng Huang | Heating structure |
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2007
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