JP2009138922A - 流体封入式防振装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】コイルへの通電を制御することによって流体流路を連通状態と遮断状態に切り換える弁体が、コイルへの通電を要することなく目的とする切換状態に保持されるようにした新規な構造の流体封入式防振装置を、少ない部品点数で実現し、提供すること。
【解決手段】通電により磁界を形成するコイル80を配設すると共に、コイル80にヨーク部材97を組み付けて、コイル80への通電により各一方の磁極を生じる第一の磁極部88および第二の磁極部94,96をヨーク部材97に設ける一方、第一の磁極部88と第二の磁極部94,96の間に永久磁石を有する可動弁体106を配設して、コイル88への通電方向を切り換えることによって、可動弁体106を第一の磁極部88および第二の磁極部94,96と可動弁体106の間に作用する磁力の吸引力と反発力により駆動変位させて、流体流路104を可動弁体106で連通状態と遮断状態に切り換えるようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、内部に封入された非圧縮性流体の流動作用に基づく防振効果を利用する流体封入式防振装置に係り、特に通電によって防振特性を切り換えることが出来る切換型の流体封入式防振装置に関する。
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装されて、それら振動伝達系を構成する部材を相互に防振連結乃至は防振支持せしめる防振装置の一種として、内部に封入された封入流体の流動作用を利用して、目的とする周波数の振動に対して効果的な防振効果を発揮するようにされた流体封入式防振装置が知られている。このような流体封入式防振装置は、例えば、自動車のエンジンマウントやメンバマウント等として採用されている。
ところで、流体封入式防振装置においては、非圧縮性流体が封入された受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路が設けられており、防振対象の振動が入力されると、本体ゴム弾性体の弾性変形によって圧力変動が惹起される受圧室と、可撓性膜の弾性変形によって容積変化が許容される平衡室の間で相対的な圧力変動の差が生ぜしめられる。そして、かかる圧力変動の差に基づいて、両室間において封入流体がオリフィス通路を通じて流動せしめられることにより、流動流体の共振現象等に基づいて防振効果が発揮されるようになっている。
このような流体の流動作用を利用する流体封入式防振装置においては、オリフィス通路がチューニングされた特定周波数の振動入力に対して効果的な防振効果が発揮される一方で、その他の周波数の振動入力に対しては有効な防振効果が得られないという問題があり、複数の異なる周波数域の振動が選択的に入力されるような場合には、目的とする防振効果を充分には実現出来ないおそれがあった。
そこで、特許文献1(特開2004−150546号公報)に示された流体封入式防振装置においては、相互に異なる周波数にチューニングされた第一のオリフィス通路と第二のオリフィス通路を設けて、第二のオリフィス通路を連通状態と遮断状態に制御することにより、防振特性を切換制御することが出来るようになっている。
特に特許文献1では、コイルへの非通電下においては、コイルスプリングの付勢力によって弁体が第二のオリフィス通路の平衡室側の開口部に押し付けられて、第二のオリフィス通路が遮断状態に保持されるようになっていると共に、コイルへの通電によって生じる磁界の作用によって、弁体がコイルスプリングの付勢力に抗して第二のオリフィス通路の平衡室側の開口部から離隔せしめられて、第二のオリフィス通路が連通状態に切り換えられるようになっている。
そこにおいて、特許文献1に示された構造の流体封入式防振装置では、コイルスプリングの付勢力が弁体に対して常時作用せしめられていることから、第二のオリフィス通路の連通状態を維持するためには、コイルに対して連続的に通電することにより弁体に対して保持力を作用せしめて、弁体を所定の開作動位置に保持する必要がある。
しかしながら、コイルへの連続的な通電状態を長時間に亘って維持すると、コイルの電気抵抗に起因する発熱が生じて、熱による耐久性の低下等が問題となり易いと共に、必要とされる電力量が多くなることから、特に車載用バッテリ等を電源とする場合には、バッテリの容量不足や大型化を招くおそれがあった。
また、特許文献1に係る流体封入式防振装置では、コイルスプリングの付勢力を弁体に作用させることにより、第二のオリフィス通路の遮断状態が非通電で実現されると共に、通電を要することなく弁体が閉作動位置に保持されるようになっている。ところが、このような構造では、弁体を付勢する手段として特別にコイルスプリングを設ける必要があることから、部品点数の増加によって構造が複雑となったり、コイルスプリングの組付け工程が余分に必要となって生産性が低下するといった問題があった。
特開2004−150546号公報
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、コイルへの通電を制御することによって流体流路を連通状態と遮断状態に切り換える弁体が、コイルへの通電を要することなく目的とする切換状態に保持されるようにした新規な構造の流体封入式防振装置を、少ない部品点数で実現することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
すなわち、本発明は、第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室と、可撓性膜で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された平衡室を形成して、それら受圧室と平衡室を流体流路によって相互に連通した流体封入式防振装置において、通電によって磁界を形成するコイルが配設されていると共に、該コイルにヨーク部材が組み付けられており、該コイルへの直流電流の通電によって各一方の磁極が生ぜしめられる第一の磁極部および第二の磁極部が該ヨーク部材において互いに離隔位置して設けられている一方、それら第一の磁極部と第二の磁極部の間には永久磁石を有する可動弁体が配設されており、該コイルにおける直流電流の通電方向を切り換えることによって該可動弁体が該第一の磁極部および該第二の磁極部と該可動弁体の間に作用する磁力の吸引力と反発力を利用して駆動変位せしめられて、前記流体流路が該可動弁体によって連通状態と遮断状態に切り換えられるようになっていることを特徴とする。
このような本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、流体流路を連通状態と遮断状態に切り換える弁体として、永久磁石を含んで構成された可動弁体が採用されている。それ故、コイルへの通電によって第一,第二の磁極部に各一方の磁極を生ぜしめることで、可動弁体と第一,第二の磁極部の間で磁力による吸引力と反発力を作用させて、可動弁体を駆動変位せしめることが出来る。
しかも、コイルにおける直流電流の通電方向を逆向きにして第一,第二の磁極部に生じる磁極を反転させることにより、可動弁体の駆動方向を逆向きに変えることが出来る。それ故、コイルへの通電方向を制御することで可動弁体の往復変位を容易に実現することが出来る。
さらに、可動弁体が永久磁石を有していることにより、コイルへの非通電下において、可動弁体が第一の磁極部と第二の磁極部の何れか距離の近い側に対して吸着されるようになっている。それ故、コイルへの通電によって流体流路を連通状態と遮断状態の何れかに切り換えた状態で、コイルへの通電を停止した場合にも、永久磁石の磁力が作用することによって可動弁体がコイルへの通電停止時における切換位置に保持されるようになっており、可動弁体を切換作動せしめる場合にのみ通電することで目的とする防振特性の切換えを実現することが出来るようになっている。従って、コイルへの通電状態を維持することによる発熱を抑制することで耐久性の向上を図ることが出来ると共に、必要とされる電力の量を削減することも出来る。
しかも、可動弁体の保持力として永久磁石の磁力を利用することにより、コイルへの通電状態を維持することで保持力を得る場合に比して、必要な大きさの保持力を安定して得ることが出来る。それ故、切り換えられた防振特性を安定して維持することが出来て、目的とする防振効果を効果的に得ることが可能となる。更に、可動弁体を何れか一方の切換状態に保持するための付勢手段としてコイルスプリング等を設ける必要もないことから、部品点数の増加を防ぐことが出来て、簡単な構造で切換型の流体封入式防振装置を実現することが出来る。
また、本発明に係る流体封入式防振装置においては、前記可動弁体が柱状連結部を有していると共に、該柱状連結部が軸方向両端部に作用フランジ部を有しており、それら作用フランジ部が永久磁石の一対の磁極とされていても良い。
このような構造の可動弁体を採用することによっても、作用フランジ部が永久磁石の磁極とされることにより、第一,第二の磁極部との間で作用する磁力による吸引力と反発力によって、コイルへの通電による可動弁体の往復作動と、非通電下における切換位置での可動弁体の保持を、何れも効果的に実現することが出来る。
さらに、上述の如き構造の可動弁体を備えた本発明に係る流体封入式防振装置において、より好適には、前記第一の磁極部と前記第二の磁極部が所定距離を隔てて対向位置するように一対形成されて、前記可動弁体における前記作用フランジ部の何れか一方がそれら第一の磁極部と第二の磁極部の対向間に位置せしめられていると共に、該作用フランジ部の何れか他方がそれら第一の磁極部と第二の磁極部の対向間を外れて外側に位置せしめられており、更に、該第一の磁極部と該第二の磁極部の何れか一方を貫通して前記柱状連結部が位置せしめられている。
これによれば、永久磁石の磁極とされた作用フランジ部と、第一,第二の磁極部の間で磁力による吸引力と排斥力を効率的に作用せしめて、可動弁体に作用する直線的な駆動力を有利に得ることが出来る。
また、本発明に係る流体封入式防振装置においては、前記受圧室と前記平衡室が前記第二の取付部材によって支持された仕切部材を隔てた両側に形成されていると共に、前記流体流路が該仕切部材に形成された第一のオリフィス通路と該仕切部材に形成されて該第一のオリフィス通路よりも高周波数にチューニングされた第二のオリフィス通路を含んで構成されており、該第二のオリフィス通路が前記可動弁体によって連通状態と遮断状態に切換え可能とされていても良い。
このように流体流路として第一,第二のオリフィス通路を備えたダブルオリフィス構造の流体封入式防振装置において、より高周波数域にチューニングされた第二のオリフィス通路の連通状態と遮断状態を、磁力の作用を利用して往復作動せしめられる可動弁体によって切り換えることにより、第一のオリフィス通路がチューニングされた周波数域の振動に対する防振効果と、第二のオリフィス通路がチューニングされた周波数域の振動に対する防振効果を、両立して何れも効果的に発揮せしめることが出来る。
さらに、受圧室と平衡室を隔てる仕切部材を備えた本発明に係る流体封入式防振装置において、より好適には、前記仕切部材に対して前記コイルおよび前記ヨーク部材が組み付けられている。
これによれば、受圧室と平衡室を隔てる仕切部材に対してコイルおよびヨーク部材を組み付けることにより、コイルやヨーク部材を設けることによる流体封入式防振装置の大型化を抑えることが出来る。従って、例えば自動車のエンジンマウントのように、配設スペースが制限される場合にも、本発明に係る切換型の流体封入式防振装置を採用することが可能となり得る。
また、本発明に係る流体封入式防振装置においては、前記可動弁体には、前記連通状態と前記遮断状態とにおける少なくとも一方の位置において、前記ヨーク部材における前記第一の磁極部又は前記第二の磁極部に対して当接せしめられる部分に、前記永久磁石による磁極が形成されていても良い。
これによれば、可動弁体における永久磁石により形成された磁極が、ヨーク部材に形成された第一又は第二の磁極部に対して直接に当接せしめられることから、磁気吸引力がより効率的に発揮され得る。また、このような構造を採用するにあたっては、より好適には、前記可動弁体に形成された両磁極が、それぞれ、前記ヨーク部材における前記第一の磁極部および前記第二の磁極部に対して同時に当接せしめられるようにされる。これにより、可動弁体の両磁極と第一および第二磁極部との間のそれぞれの磁力作用が、同時に協調して作用せしめられることにより、磁気効率がより向上され得る。
さらに、上述の如く、可動弁体における磁極が、第一の磁極部又は第二の磁極部に対して当接せしめられる部分に形成された本発明に係る流体封入式防振装置においては、より好適には、前記ヨーク部材における前記第一の磁極部又は前記第二の磁極部に対して流体連通孔が形成されており、該流体連通孔を含んで前記流体流路が形成されていると共に、該第一の磁極部又は該第二の磁極部における該流体連通孔の形成部位に前記可動弁体が磁気吸引されて当接せしめられることにより、該流体連通孔が該可動弁体で閉塞されて該流体流路が遮断状態とされるようにした構造が採用される。
これによれば、可動弁体の磁極と、第一の磁極部又は第二の磁極部との間の磁気吸引力が、流体連通孔の周辺において最も強く作用することとなるため、可動弁体による流体流路の遮断がより確実に行われ得る。
また、本発明に係る流体封入式防振装置においては、前記可動弁体において、前記流体流路を前記連通状態とする方の変位端と、該流体流路を前記遮断状態とする方の変位端との、少なくとも一方の変位端が、前記第一の磁極部又は前記第二の磁極部に対する該可動弁体の当接によって規定されるようになっていると共に、該可動弁体と該第一の磁極部又は該第二の磁極部との当接部分が弾性の緩衝材で形成されるようにしてもよい。
これによれば、弾性の緩衝材を介して可動弁体と第一の磁極部又は第二の磁極部とが当接せしめられることから、当接時の打音や衝撃の発生を抑えることができる。
そして、上述のように緩衝材を含んで構成される本発明に係る流体封入式防振装置においては、永久磁石によって構成された弁本体に対して、該弁本体よりも軟質の強磁性材によって前記緩衝材が一体的に形成されてなる複合構造体によって前記可動弁体が構成されていることが望ましい。
これにより、緩衝材による打音や衝撃の緩和作用を発揮せしめつつ、弁本体の磁力特性を、緩衝材からなる可動弁体の表面に発現せしめることができることから、可動弁体の磁極と第一又は第二の磁極部の間の磁気吸引力を効率的に作用せしめ得る。
また、上述の如く可動弁体が弁本体と緩衝材とからなる複合構造体とされている場合には、より好適には、前記緩衝材に対して着磁されることにより、複合構造体である前記可動弁体の全体が磁石とされる。
これにより、緩衝材による防音や衝撃吸収作用を発揮させつつ、可動弁体と第一の磁極部又は第二の磁極部との磁気吸引力をより有利に発揮せしめ得る。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1,2には、本発明に係る流体封入式防振装置の一実施形態として、自動車用エンジンマウント10が示されている。このエンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16で相互に連結された構造を有している。そして、第一の取付金具12が振動伝達系を構成する一方の部材である図示しない自動車のパワーユニットに取り付けられると共に、第二の取付金具14が振動伝達系を構成する他方の部材である図示しない自動車のボデーに取り付けられることにより、エンジンマウント10がそれらパワーユニットと車両ボデーの間に介装されて、パワーユニットが車両ボデーに防振支持されるようになっている。
より詳細には、第一の取付金具12は、鉄やアルミニウム合金等で形成された高剛性の部材とされており、円柱形状の取付部18を有している。この取付部18には、中心軸上を直線的に延びて上端面に開口するボルト穴20が形成されており、内周面にねじ山が形成されている。また、取付部18の下端部には、外周側に広がるフランジ部22が形成されている。更に、取付部18の下方には、半球形状で下方に向かって凸とされた固着部24が一体形成されている。
一方、第二の取付金具14は、第一の取付金具12と同様の金属材で形成されており、薄肉大径の略円筒形状を有している。また、第二の取付金具14の一方の開口部分には、上方に行くに従って次第に拡開するテーパ部26が一体形成されていると共に、テーパ部26の上端には、外周側に広がるフランジ状部28が一体形成されている。また、第二の取付金具14の下端縁部には、内周側に屈曲して延び出す第一の係止爪30が全周に亘って形成されている。
それら第一の取付金具12と第二の取付金具14は、第一の取付金具12と第二の取付金具14が同一中心軸上に配設されて、第一の取付金具12が第二の取付金具14に対してテーパ部26の形成された開口部側に離隔して配置される。そして、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に本体ゴム弾性体16が介在せしめられて、第一の取付金具12と第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16で相互に連結されている。
本体ゴム弾性体16は、大径の略円錐台形状を有するゴム弾性体であって、大径側の端部には大径凹所32が形成されている。大径凹所32は、逆向きの略すり鉢形状を有しており、本体ゴム弾性体16の大径側の端面に開口せしめられている。
そして、第一の取付金具12の固着部24が本体ゴム弾性体16の小径側端部差し込まれると共に、フランジ部22の下面が本体ゴム弾性体16の小径側端面に重ね合わされて、それぞれ加硫接着されることにより、第一の取付金具12が本体ゴム弾性体16の小径側端部に固着されている。更に、第二の取付金具14の上部の内周面が本体ゴム弾性体16の大径側端部の外周面に重ね合わされて加硫接着されることにより、第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16の大径側端部に固着されている。なお、本実施形態においては、第一の取付金具12のフランジ部22の上面と外周面に対して本体ゴム弾性体16と一体形成されたストッパゴムが固着されている。
かくの如くして、第一の取付金具12と第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16にそれぞれ加硫接着されており、それら第一の取付金具12と第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16で相互に弾性連結されている。これにより、本実施形態では、本体ゴム弾性体16が第一の取付金具12と第二の取付金具14を一体的に備えた第一の一体加硫成形品34として形成されている。
また、本体ゴム弾性体16の下端部には、シールゴム層36が一体形成されている。シールゴム層36は、薄肉大径のゴム弾性体で形成されており、大径凹所32の開口周縁部から下方に延びている。また、シールゴム層36は、外周面が第二の取付金具14の下部内周面に重ね合わされて加硫接着されている。これにより、第二の取付金具14の内周面が軸方向の略全体に亘ってゴム弾性体で被覆されている。
一方、エンジンマウント10は、可撓性膜としてのダイヤフラム38を備えている。ダイヤフラム38は、軸方向に充分な撓みを有する薄肉のゴム膜であって、全体として略円板形状乃至は略円形ドーム形状を呈している。また、ダイヤフラム38の外周縁部には、略円環形状の環状固着ゴム40が一体形成されている。更に、環状固着ゴム40の外周面は、固定金具42の内周面に重ね合わされて加硫接着されている。固定金具42は、大径の略円環形状を有しており、本実施形態では第二の取付金具14と同様に縮径変形可能な金属材で形成されている。また、固定金具42の上端縁部が全周に亘って内周側に屈曲せしめられることにより、第二の係止爪44が一体として設けられている。なお、本実施形態において、ダイヤフラム38は、固定金具42を一体的に備えた第二の一体加硫成形品46として形成されている。
また、第一の一体加硫成形品34と第二の一体加硫成形品46は、図3,4に示された仕切部材48に取り付けられている。仕切部材48は、仕切部材本体50と上蓋部材52と下蓋部材54を含んで構成されている。
仕切部材本体50は、厚肉の円形ブロック形状を有しており、本実施形態では、硬質の合成樹脂材で形成されている。仕切部材本体50の中央部分には、下面に開口する中央凹所56が形成されている。
また、仕切部材本体50は、軸方向の中間部分よりも上下両端部の方が小径とされており、軸方向中間部分が外周側に突出している。また、仕切部材本体50において、小径とされた上端部の下端には、全周に亘って連続して延びる上係止溝58が形成されている。更に、仕切部材本体50において、小径とされた下端部の上端には、全周に亘って連続して延びる下係止溝60が形成されている。
また、仕切部材本体50の上端外周縁部には、上切欠部62が形成されている。上切欠部62は、仕切部材本体50の上端面と外周面に開口して、略一定の断面形状をもって周方向に所定の長さで連続的に延びている。一方、仕切部材本体50の下端外周縁部には、下切欠部64が形成されている。下切欠部64は、仕切部材本体50の下端面と外周面に開口して、略一定の断面形状をもって周方向に所定の長さで連続的に延びている。また、上切欠部62と下切欠部64は、周方向に一周弱の同じ長さで延びており、周方向端部が相互に位置合わせされている。更に、上切欠部62と下切欠部64の一方の端部が仕切部材本体50に形成された接続路66によって相互に連通されている。
また、仕切部材本体50の上端面には、上蓋部材52が重ね合わされて固着されている。この上蓋部材52によって、上切欠部62の上側開口部が覆蓋されている。更に、仕切部材本体50の下端面には、下蓋部材54が重ね合わされて固着されている。この下蓋部材54によって、下切欠部64の下側開口部が覆蓋されている。以上により、上切欠部62と下切欠部64は、それぞれ仕切部材48の外周面に開口して周方向に延びる溝状とされている。
そして、仕切部材本体50に上下の蓋部材52,54を組み付けてなる仕切部材48には、図1に示されているように、第一の一体加硫成形品34と第二の一体加硫成形品46がそれぞれ組み付けられている。
すなわち、比較的に小径とされた仕切部材本体50の上端部分が、第一の一体加硫成形品34を構成する第二の取付金具14の下側開口部から差し入れられると共に、第二の取付金具14の下端に設けられた第一の係止爪30が、仕切部材本体50の外周面に形成された上係止溝58に差し込まれる。そして、第二の取付金具14に対して八方絞り等の縮径加工が施されることにより、第一の一体加硫成形品34が仕切部材48に固定される。
一方、比較的に小径とされた仕切部材本体50の下端部分が、第二の一体加硫成形品46を構成する固定金具42の上側開口部から差し入れられると共に、固定金具42の上端に設けられた第二の係止爪44が、仕切部材本体50の外周面に形成された下係止溝60に差し込まれる。そして、固定金具42に対して八方絞り等の縮径加工を施すことにより、第二の一体加硫成形品46が仕切部材48に固定される。
なお、図1からも明らかなように、第一の係止爪30が上係止溝58に係止されることにより、第一の一体加硫成形品34と仕切部材48が軸方向で位置決めされていると共に、第二の係止爪44が下係止溝60に係止されることにより、第二の一体加硫成形品46と仕切部材48が軸方向で位置決めされている。
また、第一の一体加硫成形品34と第二の一体加硫成形品46の仕切部材48への組付け下において、本体ゴム弾性体16と仕切部材48の軸方向対向面間には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、本体ゴム弾性体16の弾性変形によって内圧の変動が生ぜしめられる受圧室70が、大径凹所32を利用して形成されている。なお、第二の取付金具14の下端部は、シールゴム層36を介することで仕切部材48の外周面に密着せしめられており、受圧室70が外部から流体密に隔てられている。
さらに、ダイヤフラム38と仕切部材48の軸方向対向面間には、壁部の一部がダイヤフラム38で構成されて、ダイヤフラム38の弾性変形によって容積の変化が許容される平衡室72が、中央凹所56を利用して形成されている。要するに、仕切部材48を軸方向で挟んだ一方の側に受圧室70が形成されていると共に、他方の側に平衡室72が形成されている。なお、固定金具42は、環状固着ゴム40を介することで仕切部材48の外周面に密着せしめられており、平衡室72が外部から流体密に隔てられている。
また、第一の一体加硫成形品34および第二の一体加硫成形品46の仕切部材48への組付けを非圧縮性流体中で行うこと等により、受圧室70と平衡室72には、それぞれ非圧縮性流体が封入されている。なお、受圧室70と平衡室72に封入される非圧縮性流体は、特に限定されるものではないが、例えば、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油およびそれらの混合液等が好適に採用される。特に、後述する流体の共振作用等に基づく防振効果を有効に得るために、粘度が0.1Pa・s以下の低粘性流体が望ましい。
また、第二の取付金具14が仕切部材48の上端部の外周面に重ね合わされることにより、上切欠部62の外周側の開口部が第二の取付金具14によって覆われて流体密に閉塞されていると共に、固定金具42が仕切部材48の下端部の外周面に対して密着状態で重ね合わされることにより、下切欠部64の外周側の開口部が固定金具42によって覆われて流体密に閉塞されている。これらによって、上下の切欠部62,64とそれらを連通する接続路66を利用して、周方向で折り返して所定の長さで延びるトンネル状の通路が形成されている。
さらに、切欠部62,64を含んで構成されたトンネル状通路の一方の端部には、上蓋部材52の外周縁部を貫通する連通窓74が位置せしめられていると共に、他方の端部には、下蓋部材54の外周縁部を貫通する連通窓76が位置せしめられている。そして、該トンネル状通路の一方の端部が連通窓74を通じて受圧室70に連通せしめられていると共に、他方の端部が連通窓76を通じて平衡室72に連通せしめられている。これにより、該トンネル状の通路を利用して、受圧室70と平衡室72を相互に連通する流体流路としての第一のオリフィス通路78が形成されている。
なお、本実施形態では、第一のオリフィス通路78を通じて流動せしめられる流体の共振周波数が、該流体の共振作用に基づいてエンジンシェイク等に相当する10Hz前後の低周波数域の振動に対して有効な防振効果(高減衰効果)が発揮されるようにチューニングされている。
また、図1,図2に示されているように、仕切部材本体50の内部には、コイル80が配設されている。コイル80は、仕切部材本体50の径方向中央部分において、中心孔がマウント中心軸に対して直交する方向に延びるように配設されている。更に、コイル80は給電金具82に接続されており、仕切部材本体50の外部に突出せしめられた給電金具82が外部の図示しない電源に接続されることにより、外部電源から直流電流を通電出来るようになっている。そして、直流電流の通電によって、コイル80は、周囲に磁界を形成するようになっている。
また、コイル80の中心孔には、中央磁極金具84が挿通されている。中央磁極金具84は、円柱形状を有する挿入部86の軸方向一方の側に磁極形成部88を備えると共に、軸方向他方の側に連結部90を備えた構造とされている。
挿入部86は、中央磁極金具84においてコイル80の中央孔に挿入された部分であって、コイル80の中央孔に応じた形状とされている。また、磁極形成部88は、図1,2に示されているように、エンジンマウント10の中心軸に対して直交する方向で広がって、挿入部86の一方の端部から外方に向かって突出する平板形状とされており、先端部分がマウント軸方向視で略円環形状を有している。また、連結部90は、挿入部86に比して小径の略円柱形状を有しており、挿入部86の中心線上において挿入部86の他方の端部から外方に向かって突出している。
なお、本実施形態においては、コイル80に対して中央磁極金具84と磁路金具92を組み付けた状態で、コイル80を仕切部材本体50の樹脂成形用金型にセットして、該樹脂成形用金型に樹脂材料を充填して成形することにより、仕切部材本体50がコイル80と中央磁極金具84と磁路金具92を備えた一体成形品として形成されている。
また、中央磁極金具84には、磁路金具92が組み付けられている。磁路金具92は、図2に示されているように、エンジンマウント10の中心軸方向視で略コの字形状を呈する金具であって、幅方向(図2における上下方向)の中央部分に小径の円形孔が形成されている。そして、該円形孔に中央磁極金具84の連結部90が嵌め入れられることにより、磁路金具92が中央磁極金具84に固定されている。なお、図2に示されているように、中央磁極金具84と磁路金具92の組付け状態において、磁路金具92は中央磁極金具84の幅方向両側に離隔して延びており、磁路金具92と中央磁極金具84の挿入部86の間にコイル80が位置せしめられている。
さらに、磁路金具92の先端部分には、マウント軸方向で所定距離を隔てて対向する上磁極金具94と下磁極金具96が配設されている。上磁極金具94は、鉄等の強磁性体で形成されており、軸直角方向に広がる平板形状を有している。また、上磁極金具94は、仕切部材48の上端面の一部に重ね合わされて固着されることにより、仕切部材48に取り付けられている。なお、上磁極金具94は、仕切部材48において上蓋部材52を外れた位置に取り付けられている。また、磁路金具92の先端部分の上端面が、上磁極金具94の取付部位において仕切部材本体50から外部に露出せしめられており、磁路金具92の先端部分が上磁極金具94に接触せしめられている。
また、下磁極金具96は、上磁極金具94と同様の強磁性体で形成されており、軸直角方向に広がる平板形状を有している。また、下磁極金具96は、仕切部材48の下端面の一部に重ね合わされて固着されることにより、仕切部材48に取り付けられている。また、磁路金具92の先端部分の下端面が、下磁極金具96の取付部位において仕切部材本体50から外部に露出せしめられており、磁路金具92の先端部分が下磁極金具96に接触せしめられている。
なお、本実施形態では、中央磁極金具84と磁路金具92と上下の磁極金具94,96が、何れも強磁性体で形成されていると共に、相互に接触せしめられており、コイル80への通電によって生ぜしめられる磁界の磁束が、それら中央磁極金具84と磁路金具92と上下の磁極金具94,96に沿って運ばれるようになっている。このように、本実施形態では、中央磁極金具84と磁路金具92と上下の磁極金具94,96が相互に組み合わされることによって、所定の磁路を形成するヨーク部材としてのヨーク金具97が構成されており、かかるヨーク金具97がコイル80の周囲に組み付けられて、仕切部材48に組み込まれている。
さらに、本実施形態では、コイル80への通電によって、中央磁極金具84の磁極形成部88と、上下の磁極金具94,96における後述する連通孔100および透孔117の開口周縁部に、一対の磁極が形成されるようになっており、それら磁極形成部88と連通孔100および透孔117の周縁部によって本実施形態における第一,第二の磁極部が形成されている。
また、上磁極金具94と下磁極金具96の軸方向対向面間には、収容領域98が形成されている。この収容領域98は、図2,図4に示されているように、上下磁極金具94,96の幅方向(図2における上下方向)の中央部分に設けられており、内部には非圧縮性流体が充填されている。
また、収容領域98には、図1,2に示されているように、中央磁極金具84を構成する磁極形成部88の先端部分が突出せしめられている。磁極形成部88は、その突出先端面が収容領域98の壁面に対して所定距離を隔てて位置せしめられており、収容領域98において磁極形成部88を挟んだ上側の領域と下側の領域が、磁極形成部88の先端面と収容領域98の壁面との対向面間を通じて相互に連通されている。更に、磁極形成部88は、上磁極金具94と下磁極金具96の対向面間において対向方向の中央に位置せしめられており、それら上磁極金具94と下磁極金具96との離隔距離が相互に等しくなっている。
また、収容領域98の上側の壁部を構成する上磁極金具94において、円環板形状とされた磁極形成部88の先端部分と軸方向の投影で重なる部分には、円形の流体連通孔としての連通孔100が形成されている。そして、上磁極金具94に貫通形成された連通孔100を通じて、収容領域98が受圧室70に連通せしめられている。
さらに、収容領域98の底壁部において下磁極金具96を外れた位置には、連通孔102が貫通形成されている。連通孔102は、図2に示されているように、湾曲して周方向に延びている。そして、収容領域98が連通孔102を通じて平衡室72に連通せしめられている。
これらによって、収容領域98と連通孔100,102を通じて、受圧室70と平衡室72が相互に連通されており、収容領域98を利用して本実施形態における流体流路としての第二のオリフィス通路104が形成されている。なお、第二のオリフィス通路104を通じて流動せしめられる流体の共振周波数は、第一のオリフィス通路78よりも高周波数にチューニングされており、本実施形態では、該流体の共振作用に基づいてアイドリング振動等に相当する20〜40Hz前後の中乃至高周波数域の振動に対して有効な防振効果(低動ばね効果)が発揮されるようにチューニングされている。
また、収容領域98には、可動弁体としての磁性弁体106が配設されている。本実施形態における磁性弁体106は、帯磁金具108と磁石部材110を含んで構成されている。帯磁金具108は、全体として略円板形状を呈しており、鉄等の強磁性体で形成されている。
磁石部材110は、全体が永久磁石で形成されており、エンジンマウント10の中心軸方向に着磁されている。また、本実施形態における磁石部材110は、柱状連結部112と作用フランジ部としての下磁極フランジ部114を一体的に備えている。柱状連結部112は、小径の円柱形状を有しており、マウント軸方向に延びている。また、下磁極フランジ部114は、柱状連結部112の下端部において柱状連結部112と一体形成されており、全周に亘って外周側に突出せしめられている。これら柱状連結部112と下磁極フランジ部114が一体形成されていることにより、磁石部材110は、全体として下端部が大径とされた段付の円柱形状を呈している。なお、下磁極フランジ部114は、帯磁金具108と略等しい外径寸法を有している。
そして、帯磁金具108と磁石部材110が同一中心軸状に配置されて軸方向で相互に固定されることにより、本実施形態における磁性弁体106が構成されている。それら帯磁金具108と磁石部材110の固定方法は、特に限定されるものではなく、例えば、圧入等によって相互に嵌め付けるようになっていても良いし、帯磁金具108と磁石部材110に係止構造等の固定手段を設けても良いが、本実施形態では、帯磁金具108と磁石部材110の重ね合わせ面に接着剤を塗布することにより、それら帯磁金具108と磁石部材110を相互に接着している。
かかる帯磁金具108と磁石部材110の組付け下においては、帯磁金具108の外周縁部が柱状連結部112よりも外周側に突出せしめられており、柱状連結部112の上端部において、作用フランジ部としての上磁極フランジ部116が帯磁金具108の外周縁部を利用して形成されている。要するに、本実施形態に係る磁性弁体106は、柱状連結部112の軸方向両端部に上磁極フランジ部116と下磁極フランジ部114が形成された構造となっている。
さらに、帯磁金具108と磁石部材110の組付け下においては、帯磁金具108が永久磁石で形成された磁石部材110の磁界の作用によって磁化されて、帯磁金具108と磁石部材110の全体が1つの永久磁石として磁界を形成している。そして、磁石部材110の下磁極フランジ部114と帯磁金具108の上磁極フランジ部116は、磁性弁体106の着磁方向である軸方向の両端に設けられていることから、互いに異なる一対の磁極となっている。
また、磁石部材110の柱状連結部112が中央磁極金具84の磁極形成部88の中央孔に挿通せしめられた状態で、磁石部材110と帯磁金具108が重ね合わされて固定されており、磁性弁体106の上端部に設けられた上磁極フランジ部116が上磁極金具94と中央磁極金具84の対向面間に位置せしめられていると共に、磁性弁体106の下端部に設けられた下磁極フランジ部114が中央磁極金具84と下磁極金具96の対向面間に位置せしめられている。
さらに、帯磁金具108における上磁極フランジ部116の軸方向での厚さと、磁石部材110における下磁極フランジ部114の軸方向での厚さが、中央磁極金具84と上磁極金具94および中央磁極金具84と下磁極金具96の対向面間距離よりも充分に小さくなっていると共に、上磁極フランジ部116の外径と下磁極フランジ部114の外径が、何れも磁極形成部88の中央孔の内径よりも大きくなっている。これらにより、磁性弁体106が磁極形成部88に対して軸方向で所定の距離だけ相対変位を許容された状態で抜出し不能に組み付けられている。
ここにおいて、図示しない外部電源からコイル80に対して通電されることによって形成される磁界の作用により、ヨーク金具97を構成する中央磁極金具84の磁極形成部88と上磁極金具94および下磁極金具96に磁極が生ぜしめられると、永久磁石で形成された磁性弁体106は、上下の磁極フランジ部114,116とそれら磁極金具84,94,96の間で作用する磁力による吸引力と反発力によって、軸方向に往復駆動せしめられるようになっている。
すなわち、図示しない外部電源からコイル80に対して通電されると、コイル80が形成する磁界の作用によって、中央磁極金具84の磁極形成部88に何れか一方の磁極が生ぜしめられると共に、上磁極金具94および下磁極金具96に何れか他方の磁極が生ぜしめられる。なお、本実施形態では、中央磁極金具84と上下の磁極金具94,96が磁路金具92で相互に接続されることによって磁路を形成するヨーク金具97が構成されており、中央磁極金具84の磁極形成部88と、上下の磁極金具94,96の磁路金具92との接触部位を外れた部分において、各一方の磁極が生ぜしめられるようになっている。
ここで、図5に示されているように、中央磁極金具84の磁極形成部88に生ぜしめられた磁極が、磁性弁体106における上磁極フランジ部116の磁極と同じである場合には、上磁極フランジ部116と上磁極金具94の間と、下磁極フランジ部114と中央磁極金具84の間でそれぞれ作用せしめられる吸引力と、上磁極フランジ部116と中央磁極金具84の間と、下磁極フランジ部114と下磁極金具96の間でそれぞれ作用せしめられる反発力によって、磁性弁体106がヨーク金具97に対して軸方向上側(上磁極金具94に接近する方向)に変位せしめられるようになっている。
そして、磁性弁体106の上磁極フランジ部116が上磁極金具94に当接せしめられると共に、下磁極フランジ部114が中央磁極金具84に当接せしめられることにより、磁性弁体106が作動方向の上端で停止せしめられる。これによって、磁性弁体106が上磁極金具94に形成された連通孔100を下方から覆って閉塞することとなって、第二のオリフィス通路104が磁性弁体106によって遮断状態とされる。
そこにおいて、図6に示されているように、コイル80への通電が停止されて、中央磁極金具84と上磁極金具94と下磁極金具96の磁極が消失せしめられると、永久磁石とされた磁性弁体106は、磁力に基づく吸引力によって中央磁極金具84および上磁極金具94に対して当接した状態に保持されるようになっている。即ち、磁性弁体106では、上下の磁極フランジ部114,116が一対の磁極とされていることにより、上磁極フランジ部116と中央磁極金具84の間と、下磁極フランジ部114と上磁極金具94の間において、それぞれ吸引力が作用せしめられるからである。
次に、図7に示されているように、中央磁極金具84に生ぜしめられた磁極が、磁性弁体106における上磁極フランジ部116の磁極と異なる場合には、上磁極フランジ部116と上磁極金具94の間と、下磁極フランジ部114と中央磁極金具84の間でそれぞれ作用せしめられる反発力と、上磁極フランジ部116と中央磁極金具84の間と、下磁極フランジ部114と下磁極金具96の間でそれぞれ作用せしめられる吸引力によって、磁性弁体106がヨーク金具97に対して軸方向下側(下磁極金具96に接近する方向)に変位せしめられるようになっている。
そして、磁性弁体106の上磁極フランジ部116が中央磁極金具84に当接せしめられると共に、下磁極フランジ部114が下磁極金具96に当接せしめられることにより、磁性弁体106が作動方向の下端で停止せしめられる。これによって、磁性弁体106が上磁極金具94に形成された連通孔102から下方に離隔せしめられて、連通孔102が連通状態とされることにより、第二のオリフィス通路104が連通状態とされる。
なお、本実施形態においては、下磁極金具96の磁性弁体106が重ね合わされる部分に円形の透孔117が形成されている。これにより、磁性弁体106が下方に変位せしめられる際に透孔117を通じて封入流体が平衡室72側に逃されて、下磁極金具96と磁性弁体106の間で流体ばねによる反発力が作用するのを効果的に回避出来るようになっている。
そこにおいて、図8に示されているように、コイル80への通電が停止されて、中央磁極金具84と上磁極金具94と下磁極金具96の磁極が消失せしめられると、永久磁石とされた磁性弁体106は、磁力に基づく吸引力によって中央磁極金具84および下磁極金具96に対して当接した状態に保持されるようになっている。即ち、磁性弁体106では、上下の磁極フランジ部114,116が一対の磁極とされていることにより、上磁極フランジ部116と中央磁極金具84の間と、下磁極フランジ部114と下磁極金具96の間において、それぞれ吸引力が作用せしめられるからである。
なお、図5〜8は、磁性弁体106の作動を説明するための概略図であって、これらの図に示された構造は、図1等に示されたエンジンマウント10の具体的な構造に比して簡略化されている。また、図5〜8において示されたNとSは、磁極のN極とS極を示している。更に、図5,7に示された矢印は、磁性弁体106の駆動方向を示している。更にまた、図5〜8においては、外部電源とコイル80を接続する導線上にスイッチが示されているが、このスイッチはコイル80への通電と非通電を分かり易く示したものであり、コイル80の通電状態と非通電状態の切換えがこのようなスイッチによってのみ実現されることを示すものではない。
このような構造とされた自動車用エンジンマウント10は、第一の取付金具12がボルト穴20に螺着される図示しない固定ボルトによって図示しない自動車のパワーユニットに取り付けられていると共に、第二の取付金具14が外嵌固定されるブラケット部材等を介して図示しない車両ボデーに取り付けられることにより、それらパワーユニットと車両ボデーの間に介装されている。
かかるエンジンマウント10の車両への装着下において、走行時に問題となるエンジンシェイク等の低周波数域の振動が入力されると、受圧室70に比較的に大きな圧力変動が生ぜしめられる。そして、受圧室70と平衡室72の間に生ぜしめられる相対的な圧力変動の差により第一のオリフィス通路78を通じての流体の流動量が確保されて、該流体の共振作用等の流動作用に基づいて、エンジンシェイク等の低周波数域の振動に対して有効な防振効果(高減衰効果)が発揮されるのである。
その際、磁性弁体106は、図1に示されているように、往復作動方向の上端に位置せしめられた状態で保持されており、第二のオリフィス通路104の受圧室70側の開口部である連通孔100が磁性弁体106によって閉塞されている。これにより、第二のオリフィス通路104が遮断状態とされており、第二のオリフィス通路104を通じて受圧室70と平衡室72の間で流体が流動して受圧室70内の液圧が平衡室72に逃されるのを防ぐことで、第一のオリフィス通路78を通じての流体流動量を有利に確保することが出来て、流体の流動作用に基づく防振効果を効果的に得ることが出来るようになっている。
また、停車時に問題となるアイドリング振動や走行時に問題となる低速こもり音等の中乃至高周波数域の振動の入力では、受圧室70に対して小さな振幅の圧力変動が惹起されることとなる。かかる振動の入力時には、外部電源からコイル80に通電されることにより、磁性弁体106が下方に向かって駆動せしめられて、第二のオリフィス通路104の受圧室70側の開口部である連通孔100から離隔せしめられる。
これにより、図9に示されているように、第二のオリフィス通路104の受圧室70側の開口部が連通状態に切り換えられて、第二のオリフィス通路104によって受圧室70と平衡室72が相互に連通される。そして、受圧室70と平衡室72の間に生ぜしめられる相対的な圧力変動の差により第二のオリフィス通路104を通じての流体の流動量が確保されて、該流体の共振作用等の流動作用に基づいて、アイドリング時振動等の中乃至高周波数域の振動に対して有効な防振効果(低動ばね効果)が発揮されるのである。
要するに、本実施形態に係る流体封入式防振装置においては、コイル80への通電方向を制御して磁性弁体106を往復作動せしめることにより、第二のオリフィス通路104が連通状態と遮断状態に切換制御されて、入力振動に応じて防振特性が切り換えられるようになっている。なお、図1,9においては、分かり易さのために、磁性弁体106の往復作動のストロークが誇張されて大きく示されている。
このような自動車用エンジンマウント10では、第二のオリフィス通路104を連通状態と遮断状態に切り換える磁性弁体106が永久磁石で形成されている。それ故、コイル80に通電される直流電流の極性を制御することで、中央磁極金具84と上磁極金具94および下磁極金具96の磁極を適宜に変化させることにより、永久磁石で形成された磁性弁体106との間で作用する吸引力と反発力を制御して、磁性弁体106を軸方向の両側に向かって変位させることが出来る。
従って、強磁性体で形成された可動弁体を電磁石で吸引して駆動させる従来構造の弁手段において必要とされた付勢手段を設けることなく、磁性弁体106を往復駆動させることが可能となって、少ない部品点数で切換型のエンジンマウント10を実現することが出来る。更に、コイルスプリング等の付勢手段が不要であることから、製造に際してかかる付勢手段の組付け工程を省略することが出来て、生産性の向上を図ることも出来得る。
特に本実施形態では、中央磁極金具84の磁極形成部88と上磁極金具94の対向面間に上磁極フランジ部116が配置されていると共に、中央磁極金具84の磁極形成部88と下磁極金具96の対向面間に下磁極フランジ部114が配置されている。これにより、磁力の作用による吸引力や反発力を磁性弁体106に対して効率的に及ぼすことが出来て、必要とされる駆動力を少ない消費電力で得ることが出来る。
また、磁性弁体106が永久磁石で形成されていることにより、コイル80への非通電下において、磁性弁体106が磁力の作用で中央磁極金具84や上下の磁極金具94,96に接近するように吸引されるようになっている。これにより、コイル80への非通電下において、磁性弁体106を開作動位置又は閉作動位置に保持する保持力が、永久磁石の磁力を利用して発揮されるようになっている。それ故、走行状態やアイドリング状態が連続的に維持された場合には、コイル80への通電を停止することが可能となって、コイル80への連続的な通電に起因する発熱や消費電力量の増大を効果的に防ぐことが出来る。
また、保持力として永久磁石の磁力を利用することにより、コイル80への通電を維持することによって保持力を作用せしめる場合に比べて安定した保持が実現されて、防振特性が切り換えられた状態を効果的に維持することが出来る。蓋し、温度等の諸条件によってコイル80への供給電圧が変化し得る場合には、コイル80への通電によって発揮される保持力が増減するおそれがあるからである。
また、本実施形態では、受圧室70と平衡室72を隔てる仕切部材48が設けられていると共に、仕切部材48を構成する仕切部材本体50がコイル80と中央磁極金具84と磁路金具92を備えた一体成形品とされており、通電部分であるコイル80が仕切部材48の内部に配置されている。このように、コイル80やヨーク金具97が、第二の取付金具14よりも内周側に配設されていることにより、装置の大型化を防ぐことが出来ると共に、例えば、エンジンマウント10が筒形のブラケット金具に嵌め付けられる場合等においても、コイル80やヨーク金具97が設けられることによって取付けが困難となるのを防ぐことが出来る。
次に、図10には、本発明の第二の実施形態としてのエンジンマウント118が示されている。なお、以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一の部材乃至部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略するものとする。
すなわち、エンジンマウント118では、磁路金具92によって一端が相互に接続された中央磁極金具84と上磁極金具94が相互に対向して設けられており、コイル80への通電によって、中央磁極金具84における磁極形成部88に一方の磁極が生ぜしめられると共に、上磁極金具94における連通孔100の周囲に他方の磁極が生ぜしめられるようになっている。
また、中央磁極金具84を挟んで上磁極金具94と反対側には、当接部材120が配設されている。当接部材120は、略平板形状であって、硬質の合成樹脂材等で形成された非磁性体とされている。なお、当接部材120において、上磁極金具94の連通孔100と軸方向で対向する部分には、円形の透孔117が形成されている。
そこにおいて、上磁極金具94と当接部材120の対向面間には、収容領域98が形成されており、収容領域98の底壁部において当接部材120を外れた位置には、連通孔102が貫通形成されている。
そして、収容領域98が、連通孔100を通じて受圧室70に連通されると共に、連通孔102を通じて平衡室72に連通されることにより、受圧室70と平衡室72を相互に連通する第二のオリフィス通路104が形成されている。
また、収容領域98には、磁性弁体106が収容配置されている。磁性弁体106は、柱状連結部112が中央磁極金具84の磁極形成部88に形成された貫通孔に挿通されており、上磁極フランジ部116が中央磁極金具84と上磁極金具94の対向面間に位置せしめられていると共に、下磁極フランジ部114が中央磁極金具84と当接部材120の対向面間に位置せしめられている。
このような構造のエンジンマウント118において、コイル80に通電されて、中央磁極金具84の磁極形成部88に上磁極フランジ部116と同じ磁極が生ぜしめられると、中央磁極金具84と下磁極フランジ部114の間と、上磁極金具94と上磁極フランジ部116の間で作用する吸引力と、中央磁極金具84と上磁極金具94の間で作用する反発力によって、磁性弁体106が上方に駆動変位せしめられる。なお、作動方向上端において磁性弁体106に及ぼされる保持力については、前記第一の実施形態と同様であることから説明を省略する。
また、コイル80に通電されて、中央磁極金具84の磁極形成部88に上磁極フランジ部116と異なる磁極が生ぜしめられると、中央磁極金具84と下磁極フランジ部114の間と、上磁極金具94と上磁極フランジ部116の間で作用する反発力と、中央磁極金具84と上磁極金具94の間で作用する吸引力によって、磁性弁体106が下方に駆動変位せしめられる。
そこにおいて、磁性弁体106が作動方向の下端に位置せしめられた状態で、コイル80への通電が停止されて、中央磁極金具84および上磁極金具94の磁極が消失せしめられると、磁極とされた上磁極フランジ部116と強磁性体で形成された中央磁極金具84の間で吸引力が作用せしめられる。これにより、コイル80への非通電下においても、磁力による吸引力を保持力として、磁性弁体106が作動方向の下端に保持されるようになっている。
このような構造とされた本実施形態に係るエンジンマウント118においても、前記第一の実施形態に示されたエンジンマウント10と同様の効果を有効に得ることが出来る。また、第二のオリフィス通路104を遮断状態に保持する際の保持力が前記第一の実施形態に示された三つの磁極部を有する構造のエンジンマウント10と同程度に得られることから、切り換えられた防振特性を安定して維持することが可能である。
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、前記第一,第二の実施形態に示されたエンジンマウント10,118においては、コイル80への通電によって磁極が生ぜしめられる磁極部が、三つ設けられている場合と二つ設けられている場合をそれぞれ示したが、磁極部は、一対の磁極が生ぜしめられる少なくとも二つが設けられていれば良く、四つ以上が設けられていても良い。
また、前記第一,第二の実施形態においては、鉄等の強磁性体で形成された帯磁金具108と、永久磁石で形成された磁石部材110を組み合わせて、帯磁金具108を磁化することにより、全体として1つの永久磁石とされた可動弁体としての磁性弁体106が構成されているが、例えば、帯磁金具108に代えて円板形状の永久磁石を用いることも出来る。また、前記実施形態における帯磁金具108と同一形状の永久磁石と、前記実施形態における磁石部材110と同一形状の鉄製の部材を組み合わせて可動弁体を構成しても良い。
また、可動弁体の形状や構造は、前記第一,第二の実施形態に示された具体的な形状や構造によって何等限定されるものではない。例えば、可動弁体は、前記第一,第二の実施形態において示された磁性弁体106のような分割構造とされていなくても良く、例えば、離隔配置された第一,第二の磁極部の間に板状やブロック状の永久磁石を配置して、該永久磁石を可動弁体とすることも出来る。また、必ずしも軸方向視で円形とされている必要もない。
さらに、前記第一,第二の実施形態では、磁性弁体106が上磁極フランジ部116と下磁極フランジ部114を有している構造が示されているが、例えば、図11に示された磁性弁体121のように、上磁極フランジ部116だけを有する片フランジ状の構造を採用することも出来る。
また、可動弁体と第一,第二の磁極部の間に緩衝ゴムを配設することにより、可動弁体と第一,第二の磁極部が当接することによって生じる異音や振動が低減されるようにしても良い。具体的には、例えば、図12に示されているように、前記第一,第二の実施形態と略同様の構造とされた帯磁金具108と磁石部材110とからなる弁本体126における、上磁極フランジ部116の上面および下面と下磁極フランジ部114の上面および下面に対して、それぞれ環状の緩衝材としての緩衝ゴム122を固着せしめることにより、磁性弁体124を、剛性の帯磁金具108および磁石部材110からなる弁本体126と、軟質の緩衝ゴム124とからなる、複合構造体としてもよい。これにより、磁性弁体124と中央磁極金具84および上下の磁極金具94,96とが、緩衝ゴム122を介して緩衝的に当接せしめて、当接時の打音等の低減乃至は回避を図ることが出来る。
なお、このように、磁性弁体を、硬質の材料からなる弁本体と、軟質の緩衝材とからなる複合構造体とするにあたっては、緩衝材がゴムや合成樹脂などの一般的な非磁性材で形成されていても良いが、より好適には、かかる緩衝材が、強磁性材又は永久磁石によって形成される。具体的には、例えば、本発明の更に別の実施形態として図13に示される磁性弁体128のように、前記第一,第二の実施形態に従う構造とされた帯磁金具108と磁石部材110とからなる弁本体126に対して、緩衝材として、ゴム材料にフェライト磁石等の永久磁石の粉末が配合されてなる磁性ゴム130を固着せしめてもよい。
また、本実施形態では、磁性ゴム130が、弁本体126における上下の磁極フランジ部116,114において、各フランジ部116,114の全表面を覆うようにして略一定厚さで固着されている。また、磁性ゴム130の表面における中央磁極金具84および上下の磁極金具94,96との当接部分となる軸方向両端面には、それぞれ当接突起132が設けられている。この当接突起132は、磁性弁体128の移動方向となる軸方向に突出して、磁性ゴム130に一体形成されており、各フランジ部116,114の全周に亘って連続して延びる円環リップ形状とされている。
さらに、本実施形態では、磁性ゴム130に対して、弁本体126における軸方向の磁力特性に合わせた着磁が行われていることにより、弁本体126と磁性ゴム130からなる磁性弁体128全体が一つの永久磁石とされている。その結果、磁性弁体128全体における磁極が、中央磁極金具84および上下の磁極金具94,96と直接に当接せしめられる磁性ゴム130において発現されることとなり、磁性弁体128の磁極と中央磁極金具84および上下の磁極金具94,96に生じる磁極との間の磁気吸引力および排斥力が、相互に直接的に作用せしめられるようになっている。さらに、本実施形態においては、磁性ゴム130上に当接突起132が設けられていることにより、磁性弁体128と、中央磁極金具84および上下の磁極金具94,96との当接時には、まず当接突起132が当接し、次に磁性ゴム130本体が当接せしめられることにより、非線形的なばね特性が発揮され、当接時の打音や衝撃がより有利に緩和されるようになっている。
なお、上述の実施形態においては、磁性ゴム130が弁本体126の軸方向の磁力特性に合わせて着磁されていたが、このような着磁された磁性ゴム130に代えて、ゴム材料に鉄等の強磁性材の粉末を配合すると共に、これを着磁をせずに緩衝材として用いても良い。緩衝材に対して着磁が行われていない場合にも、強磁性材が配合されていることにより、弁本体126の磁束密度を減じることなく、磁性弁体128の表面に磁極を形成することができる。
また、磁性ゴム130の如き着磁された緩衝材を用いることにより、弁本体の磁力を緩衝材の磁力により補うこともできる。これにより、例えば、弁本体には単なる鉄や磁力特性の低い安価な磁石を採用すると共に、充分な磁力特性を有する緩衝材を用いることで、磁性弁体全体として弁体位置の切り替えや保持に必要な磁力を確保することも可能となる。
そして、このように弁本体と緩衝材とを組み合わせてなる磁性弁体を用いた更に別の具体例としては、例えば、図14に示される磁性弁体134のように、磁性弁体134が、剛性のプラスチック磁石からなる弁本体136と、軟質のプラスチック磁石からなる緩衝材としての緩衝部材138とを組み合わせてなる複合構造体とされていてもよい。
かかる磁性弁体134における弁本体136は、前記第一,第二の実施形態等に記載の帯磁金具108および磁石部材110とそれぞれ略同様の構造とされた上側弁部材138と下側弁部材140とにより構成されているが、これら上下の弁部材138,140の形成素材は、何れも、合成樹脂材料にフェライト磁石等の永久磁石の粉末を配合して成形されたプラスチック磁石とされている。また、弁本体136には、中央磁極金具84および上下の磁極金具94,96に形成された貫通孔100等から抜け出さない程度の充分な剛性が付与されている。一方、緩衝部材138は、弁本体136よりも軟質のプラスチック磁石により形成されており、弁本体126の上下の磁極フランジ部114,116の表面全体に対して固着されている。これにより、磁性弁体134における当接時の打音や衝撃が、緩衝部材138の弾性により緩和されるようになっている。
そして、これらの弁本体136および緩衝部材138は、弁本体136の軸方向で着磁されて全体が一つの永久磁石とされており、その結果、磁性弁体134における両磁極が、中央磁極金具84および上下の磁極金具94,96と直接に当接せしめられる上下の磁極フランジ部114,116付近の緩衝部材138において形成されている。そして、かかる緩衝部材138において形成された両磁極が、中央磁極金具84および上下の磁極金具94,96に生じる磁極と対向配置されていることにより、磁性弁体134の磁極と中央磁極金具84および上下の磁極金具94,96の磁極との間の磁気吸引力および排斥力が、各部材間で直接に相互作用せしめられることとなる。
これにより、本実施形態においては、フェライト磁石や鉄等よりも軽量なプラスチック磁石を採用しつつも、磁性弁体134の磁極と中央磁極金具84および上下の磁極金具94,96の磁極の間の磁力作用を効率的に発揮せしめ得ることにより、弁体位置の切り替えに必要な排斥力および吸引力や、磁性弁体134への流体圧力作用時における磁性弁体134と上下の磁極金具94,96との密着保持力を充分に確保することが可能とされているのである。しかも、硬質のプラスチック磁石からなる弁本体136と、軟質のプラスチック磁石からなる緩衝部材138とを組み合わせた複合構造が採用されていることにより、弁本体136の剛性による磁性弁体134の変形に伴う所定の保持位置からの抜け出しの防止作用と、緩衝部材138の柔軟性による当接時の衝撃および打音の低減作用とが、両立して達成されている。また、特に本実施形態においては、上下の磁極フランジ部114,116が硬質のプラスチック磁石からなる弁本体136を含んで形成されていることにより、磁性弁体の変形による抜け出しが有利に抑止されるようになっており、また、当接の安定性や信頼性も良好に確保されるようになっている。
なお、ここまでに挙げた各種の緩衝材、すなわち、非磁性材である通常のゴムや樹脂、又は、強磁性材とされたゴムや樹脂等からなる緩衝材の硬さは、充分な緩衝性能を発揮できるよう、シェアA硬さが70以下とされることが望ましく、より好適には、シェアA硬さが50以下とされる。一方、弁本体は、変形による磁性弁体の所定の保持位置からの抜け出しなどを防ぐために、シェアA硬さが80以上とされることが望ましい。また、非磁性材又は強磁性材とされたゴムや樹脂等からなる緩衝材は、磁性弁体が全体として充分な磁力を発揮し得る永久磁石とされ得る限りにおいて、永久磁石や鉄等の各種の素材からなる弁本体と任意に組み合わせることが可能である。また、緩衝材おいて、ゴムや合成樹脂材料に対して強磁性材の粉末を配合して強磁性材とするに際しては、強磁性材への着磁は、必要に応じて任意に行われるものであって、必須のものではない。更にまた、緩衝材の具体的な形状は、特に限定されることなく任意に変更され得る。
さらに、磁性弁体側ではなく、中央磁極金具84および上下の磁極金具94,96における磁性弁体との当接部において、強磁性を有さない通常のゴム素材や合成樹脂、あるいは強磁性材を配合した着磁を施していないゴムや樹脂等からなる緩衝部材を設けて、磁性弁体と各部材とが弾性的に当接するようにしても良い。また、図11に示されるような上下の磁極フランジ部114,116のうち一方のみを有する磁性弁体においても、緩衝材を設けることができる。具体的には、例えば、図11における柱状連結部112の下側の軸方向端部に緩衝材を設けて、磁石部材110と下磁極金具96とが緩衝的に当接するようにしても良い。
また、前記第一,第二の実施形態においては、可動弁体としての磁性弁体106が強磁性体で形成された帯磁金具108と永久磁石で形成された磁石部材110で構成されており、実質的に磁性弁体106の全体が永久磁石とされている。しかしながら、可動弁体は、必ずしも全体が永久磁石とされていなくても良い。
具体的には、例えば、図15に示されている磁性弁体144のように、円柱形状を有する永久磁石で形成された磁石部材146の軸方向両端面に、硬質の合成樹脂材で形成されて連通孔100よりも大径の円板形状を有する変位制限部材148が固着された構造を採用することも出来る。このような磁性弁体144では、簡単な形状の永久磁石を磁石部材146として採用することにより、磁石部材146の製造を容易とすることが出来て、防振装置の製造コストの低減等を図ることが出来る。なお、連通孔100と透孔117の内径寸法を磁石部材146の外径寸法よりも小さくして、磁石部材146と上下の磁極金具94,96の当接によって磁石部材146の軸方向での変位を制限しても良く、その場合には変位制限部材148を省略することも出来る。
さらに、例えば、図16に示されているように、硬質の合成樹脂材やアルミニウム合金等の非磁性体で形成された円板形状の連結部材150の両面に対して、円板形状を有する永久磁石で形成された磁石部材152a,152bを同じ磁極が外側となるように固着せしめることにより、可動弁体としての磁性弁体154を形成することも出来る。この構造からも明らかなように、可動弁体に設けられる永久磁石は必ずしも一つでなくても良い。なお、磁性弁体154は、中央磁極金具84の磁極形成部88と上磁極金具94の対向面間に配設されている。
また、前記第一,第二の実施形態では、磁性弁体106の作動方向上端において、上磁極フランジ部116が上磁極金具94に当接せしめられるようになっていると共に、下磁極フランジ部114が中央磁極金具84に当接せしめられるようになっている。しかしながら、磁性弁体106が作動方向上端部に位置せしめられた状態において、下磁極フランジ部114が中央磁極金具84に当接せしめられるようになっていることは必須ではない。
具体的には、例えば、図17に示されている磁性弁体156のように、磁性弁体156の作動方向上端において、下磁極フランジ部114と中央磁極金具84が所定の隙間:δだけ離隔して位置せしめられるようになっていても良い。これによれば、製造時の寸法誤差等に起因して、磁性弁体106が作動方向上端に位置する状態において、下磁極フランジ部114が中央磁極金具84に当接せしめられると共に、上磁極フランジ部116が上磁極金具94から離隔せしめられた状態となるのを回避して、上磁極フランジ部116と上磁極金具94をより確実に当接せしめることが出来る。従って、第二のオリフィス通路104の遮断状態を安定して実現することが出来る。
また、前記第一,第二の実施形態において示されたエンジンマウント10,118の具体的な構造は、あくまでも例示であって、本発明に係る流体封入式防振装置の構造は、それら第一,第二の実施形態に示された具体的な構造によって何等限定的に解釈されるものではない。具体的には、例えば、流体流路は、必ずしも2つのオリフィス通路によって構成されていなくても良く、3つ以上のオリフィス通路によって構成されていても良い。また、受圧室70内の液圧を平衡室72側に伝達する可動膜構造や可動板構造を設けることも出来る。更に、コイル80は、必ずしも仕切部材48に内蔵されていなくても良く、非圧縮性流体が封入された流体室の外側に配設されている等しても良い。
また、本発明に係る流体封入式防振装置は、必ずしもエンジンマウントとしてのみ採用されるものではなく、例えば、ボデーマウントやメンバマウント等、エンジン以外のマウントとしても採用可能であると共に、マウント以外の各種用途の防振装置にも本発明を適用することが出来得る。
さらに、本発明に係る流体封入式防振装置は、必ずしも自動車用の流体封入式防振装置にのみ適用されるものではなく、例えば、列車用のエンジンマウントやメンバマウント等に適用可能であると共に、その他各種用途の流体封入式防振装置としても好適に採用され得る。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウントを示す図2のI−I断面図。 図1のII−II断面図。 同エンジンマウントの仕切部材を示す平面図。 図3のIV−IV断面図。 同エンジンマウントにおける磁性弁体の作動を説明するモデル図。 同磁性弁体の作動を説明するモデル図。 同磁性弁体の作動を説明するモデル図。 同磁性弁体の作動を説明するモデル図。 上記エンジンマウントにおける第二のオリフィス通路の連通状態を示す断面図。 本発明の第二の実施形態としてのエンジンマウントを示す断面図。 本発明に係る別の一実施形態としてのエンジンマウントの要部を示す断面図。 本発明に係る別の一実施形態としてのエンジンマウントの要部を示す断面図。 本発明に係る別の一実施形態としてのエンジンマウントの要部を示す断面図。 本発明に係る別の一実施形態としてのエンジンマウントの要部を示す断面図。 本発明に係る別の一実施形態としてのエンジンマウントの要部を示す断面図。 本発明に係る別の一実施形態としてのエンジンマウントの要部を示す断面図。 本発明に係る別の一実施形態としてのエンジンマウントの要部を示す断面図。
符号の説明
10:エンジンマウント,12:第一の取付金具,14:第二の取付金具,16:本体ゴム弾性体,70:受圧室,72:平衡室,78:第一のオリフィス通路,80:コイル,84:中央磁極金具,88:磁極形成部,92:磁路金具,94:上磁極金具,96:下磁極金具,97:ヨーク金具,98:収容領域,104:第二のオリフィス通路,106:磁性弁体,112:柱状連結部,114:下磁極フランジ部,116:上磁極フランジ部

Claims (10)

  1. 第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室と、可撓性膜で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された平衡室を形成して、それら受圧室と平衡室を流体流路によって相互に連通した流体封入式防振装置において、
    通電によって磁界を形成するコイルが配設されていると共に、該コイルにヨーク部材が組み付けられており、該コイルへの直流電流の通電によって各一方の磁極が生ぜしめられる第一の磁極部および第二の磁極部が該ヨーク部材において互いに離隔位置して設けられている一方、それら第一の磁極部と第二の磁極部の間には永久磁石を有する可動弁体が配設されており、該コイルにおける直流電流の通電方向を切り換えることによって該可動弁体が該第一の磁極部および該第二の磁極部と該可動弁体の間に作用する磁力の吸引力と反発力を利用して駆動変位せしめられて、前記流体流路が該可動弁体によって連通状態と遮断状態に切り換えられるようになっていることを特徴とする流体封入式防振装置。
  2. 前記可動弁体が柱状連結部を有していると共に、該柱状連結部が軸方向両端部に作用フランジ部を有しており、それら作用フランジ部が永久磁石の一対の磁極とされている請求項1に記載の流体封入式防振装置。
  3. 前記第一の磁極部と前記第二の磁極部が所定距離を隔てて対向位置するように一対形成されて、前記可動弁体における前記作用フランジ部の何れか一方がそれら第一の磁極部と第二の磁極部の対向間に位置せしめられていると共に、該作用フランジ部の何れか他方がそれら第一の磁極部と第二の磁極部の対向間を外れて外側に位置せしめられており、更に、該第一の磁極部と該第二の磁極部の何れか一方を貫通して前記柱状連結部が位置せしめられている請求項2に記載の流体封入式防振装置。
  4. 前記受圧室と前記平衡室が前記第二の取付部材によって支持された仕切部材を隔てた両側に形成されていると共に、前記流体流路が該仕切部材に形成された第一のオリフィス通路と該仕切部材に形成されて該第一のオリフィス通路よりも高周波数にチューニングされた第二のオリフィス通路を含んで構成されており、該第二のオリフィス通路が前記可動弁体によって連通状態と遮断状態に切換え可能とされている請求項1乃至3の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
  5. 前記仕切部材に対して前記コイルおよび前記ヨーク部材が組み付けられている請求項4に記載の流体封入式防振装置。
  6. 前記可動弁体には、前記連通状態と前記遮断状態とにおける少なくとも一方の位置において、前記ヨーク部材における前記第一の磁極部又は前記第二の磁極部に対して当接せしめられる部分に、前記永久磁石による磁極が形成されている請求項1乃至5の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
  7. 前記ヨーク部材における前記第一の磁極部又は前記第二の磁極部に対して流体連通孔が形成されており、該流体連通孔を含んで前記流体流路が形成されていると共に、該第一の磁極部又は該第二の磁極部における該流体連通孔の形成部位に前記可動弁体が磁気吸引されて当接せしめられることにより、該流体連通孔が該可動弁体で閉塞されて該流体流路が遮断状態とされるようになっている請求項6に記載の流体封入式防振装置。
  8. 前記可動弁体において、前記流体流路を前記連通状態とする方の変位端と、該流体流路を前記遮断状態とする方の変位端との、少なくとも一方の変位端が、前記第一の磁極部又は前記第二の磁極部に対する該可動弁体の当接によって規定されるようになっていると共に、該可動弁体と該第一の磁極部又は該第二の磁極部との当接部分が弾性の緩衝材で形成されている請求項1乃至7の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
  9. 永久磁石によって構成された弁本体に対して、該弁本体よりも軟質の強磁性材によって前記緩衝材が一体的に形成されてなる複合構造体によって前記可動弁体が構成されている請求項8に記載の流体封入式防振装置。
  10. 前記緩衝材に対して着磁されることにより、複合構造体である前記可動弁体の全体が磁石とされている請求項9に記載の流体封入式防振装置。
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