JP2009138265A - 時効硬化型ステンレス鋼の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 靭性に優れた時効硬化型ステンレス鋼の製造方法を提供する。
【解決手段】 質量%で、C:0.05%以下、Si:0.6〜3.5%未満、Mn:3.0%以下、Cr:6.0〜14.0%、Ni:4.0〜10.0%、Co:20.0%以下、Cu:6.0%以下、Ti:0.5〜3.5%、Al:2.0%以下(0%を含む)を含有してなる鋼の製造方法において、
前記の鋼に、1000℃以上の保持温度で60分を超える保持時間の固溶化処理を行った後、前記保持温度からの冷却過程で、加工終了温度を鋼の表面温度で700℃以上とする塑性加工を行い、次いで時効処理を行う、時効硬化型ステンレス鋼の製造方法である。また、固溶化処理の前には均質化処理を行ってもよい。時効処理は400〜550℃で行うことが望ましく、例えば58HRC以上の硬さに調質するものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、高硬度で十分な靭性を維持した、時効硬化型ステンレス鋼の製造方法に関するものである。
従来、CD、DVDメディア等の光ディスク樹脂成形の分野、光学レンズ用樹脂又はガラス成形の分野、液晶導光板等の光学部品用樹脂成形の分野には、JIS鋼種のSUS420J2又はそれに類似するステンレス鋼を切削加工及び研削加工した金型が用いられていた。一方、耐食性と硬度を両立させる材料としては、SKD11系やSUS440C系がある。
上述の背景において、本出願人は、高硬度で十分な耐食性を維持した時効硬化型ステンレス鋼として、C:0.05質量%(以下、単に%と記す)以下、Si:1.5〜3.5%未満、Mn:3.0%以下、Cr:6.0〜12.0%、Ni:4.0〜10.0%、Co:10.0%以下、Cu:6.0%以下、Ti:0.5〜3.0%、Al:2.0%以下(0%を含む)を含有し、Moは1.0%以下に、Nは0.01%以下に規制され、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼を提案した(特許文献1)。
また、これに加えては、本出願人は、質量%で、C:0.05%以下、Si:0.6〜1.5%未満、Mn:3.0%以下、Cr:6.0〜14.0%、Ni:4.0〜10.0%、Co:20.0%以下、Cu:6.0%以下、Ti:1.0〜3.5%、Al:2.0%以下(0%を含む)を含有し、Moは1.0%以下に、Nは0.01%以下に規制され、残部はFeおよび不可避的不純物からなる、靭性に優れた高硬度析出硬化型ステンレス鋼も提案している(特願2007−232081)。
特開2007−146273号公報
上記の、本出願人が提案した時効硬化型ステンレス鋼(以下、当該鋼と記す)は、靭性と高硬度の点で非常に優れた特性を示している。そして、当該鋼は、たとえば熱間塑性加工した鋼材を準備して、これに固溶化処理と、時効処理を行うことで達成できるが、この製造工程例によれば、その熱間塑性加工前には、当然に該加工のための1000℃以上の加熱工程が必要となる。そして、該加工後には、固溶化処理のための、改めての1000℃近く、もしくはそれ以上にもなる高温加熱による熱処理を施す必要がある。そこで、この熱処理工程の工数を低減することが出来れば、非常に優れた特性を持つ当該鋼を、より効率良く製造することが出来る。
本発明の目的は、靭性と高硬度の点で非常に優れた特性を持つ析出硬化型ステンレス鋼を、より効率良く製造する方法を提供することである。
本発明者は、上記の課題を検討した結果、上記の塑性加工前の熱処理条件を適切に選択することで、同加工後の熱処理を省略でき、さらには当該鋼の成分を換えずに、靭性と高硬度の点で非常に優れた特性を持つ析出硬化型ステンレス鋼を製造する方法を見いだし、本発明に到達した。
すなわち本発明は、質量%で、C:0.05%以下、Si:0.6〜3.5%未満、Mn:3.0%以下、Cr:6.0〜14.0%、Ni:4.0〜10.0%、Co:20.0%以下、Cu:6.0%以下、Ti:0.5〜3.5%、Al:2.0%以下(0%を含む)を含有してなる鋼の製造方法において、
前記の鋼に、1000℃以上の保持温度で60分を超える保持時間の固溶化処理を行った後、前記保持温度からの冷却過程で、加工終了温度を鋼の表面温度で700℃以上とする塑性加工を行い、次いで時効処理を行うことを特徴とする時効硬化型ステンレス鋼の製造方法である。
本発明においては、該ステンレス鋼の成分組成は、Moを1.0%以下に、Nを0.01%以下に規制することが好ましい。また、固溶化処理の前には、均質化処理(均熱処理、ソーキングとも言う)を行ってもよい。そして、時効処理は、400〜550℃で行うことが望ましく、例えば58HRC以上の硬さに調質するものである。
本発明によれば、熱間塑性加工後の熱処理の省略によって、製造効率を飛躍的に改善させることから、当該鋼を製造する上で非常に有効な技術となる。
本発明の重要な特徴は、成分調整によって、靭性と高硬度の点で、優れた特性を達成している当該鋼に関しては、さらに製造方法を検討した結果、この成分の変更なしに、熱処理方法を変えることのみで、上述した特性を達成することが出来たところにある。
最初に、本発明の基とした、高硬度、高耐食性、超鏡面仕上げ性に加えては、十分な靱性をも兼備するステンレス鋼とは、本出願人が既に提案済みの特許文献1(特開2007−146273号公報)の「鏡面仕上性に優れた高硬度ステンレス鋼」および、特願2007−232081の「靭性に優れた高硬度析出硬化型ステンレス鋼」の成分組成をも含むものである。
この提案済みの当該ステンレス鋼は、Cr、Ni、Co、Ti、SiをG相として析出させることで高硬度を達成しているが、TiやSiは、G相以外にも、ラーベス相へも濃化する。そのため、ラーベス相の過度の析出は、G相の析出不足を招くため、高硬度を達成するためには、ラーベス相を析出させない方が好ましい。しかし一方では、ラーベス相は結晶粒粗大化の抑制効果を持つため、ラーベス相が全く析出しないと、場合によっては結晶粒の粗大化を招く。その結果、靭性が低下するため、工業的な使用が困難になる。以上のことから、十分な高硬度を達成し、かつ工業的な使用を満足するためには、ラーベス相の析出を制御する必要がある。
つまり、高硬度を達成するためには、まずラーベス相に濃化しているG相の成分であるSiやTiを母相中に固溶させる必要があるところ、当該鋼の成分組成においては、ラーベス相の固溶は約1000℃から生じ、1200℃では完全に固溶する。よって、当該鋼の製造工程中においては、一旦、1000℃以上の温度域に素材を加熱保持する必要がある。
そこで、特許文献1および特願2007−232081では、ラーベス相を固溶させるために、熱間塑性加工後の準備鋼材に固溶化処理を行っている。しかしながら、この製造工程では、上記加工後の固溶化処理をすることで、場合によっては、ラーベス相の固溶に伴う結晶粒の粗大化が生じたり、固溶しきれなかったラーベス相が逆に粗大化したりするため、これが靭性の低下や硬さの低下を招くのである。そこで、本発明では、結晶粒の粗大化や、ラーベス相の粗大化を防ぐために、ラーベス相の固溶温度域や、その固溶させる時期に着目して製造工程の見直しを行った。
まず、上記の従来の製造工程に従ったヒートパターンを模式的に例示すると、それは図2の通りである。そして、図2から、ラーベス相が固溶する温度域(1000℃以上)では、均質化処理、加工前加熱処理、そして固溶化処理が行われていることが分かる。以下に、各処理の役割について説明する。
図2の均質化処理は、凝固時の組織中に析出したラーベス相、特に粗大なものを固溶させることを目的としている。この均質化処理が不十分であった場合、未固溶のラーベス相が、次工程の熱間塑性加工中に伸展したり、該加工中に粗大化したりするため、靭性の低下を招く。さらには、TiやSiといったG相の成分がラーベス相に濃化するため、高硬度を得ることが出来なくなる。以上のことから、図2の均質化処理は十分に行う必要がある。
図2の加工前加熱処理は、熱間塑性加工をしやすくするために必要である。また、前工程の均質化処理が不十分でラーベス相が溶け残った場合も、この加工前加熱処理でラーベス相を固溶させることが出来る。
そして、図2の固溶化処理は、歪の除去やラーベス相の固溶、そしてG相の固溶の役目をしている。ただし、ラーベス相が完全に固溶するような固溶化処理を行うと結晶粒の粗大化を招く恐れがあるのは、上述の通りである。そして、最後には、時効処理を行うことで、G相の析出による硬化が達成される。
つまり、G相を析出させるための時効処理の直前状態では、ラーベス相の固溶促進が重要であるものの、このラーベス相の固溶が結晶粒の粗大化要因となっている従来の課題に対しては、上述の通りラーベス相の固溶工程を省けない以上、如何にして、どのような結晶粒の微細化作用(粗大化防止作用)を導入するかが鍵となる。そこで、本発明者は、課題解決の観点がラーベス相の制御にあった背景においては、熱間塑性加工による結晶粒微細化の作用効果が有効に利用でき、この導入タイミングこそが重要であることに、着目した。
すなわち、まず熱間塑性加工前の加熱処理によってラーベス相を完全に固溶させることが出来るのであれば、その際に結晶粒が粗大化したとしても、これは熱間塑性加工中に生じる再結晶によって、再び微細に戻すことができる。つまり、従来の図2のヒートパターンに対しては、その加工前の加熱処理に固溶化処理の作用効果を担わせることで、熱間塑性加工後に行っている固溶化処理を省略する手法である。
なお、この場合、熱間塑性加工後の冷却過程であっても、少なからずラーベス相が析出することが考えられる。しかしそれは、ラーベス相が完全に固溶した状態からの析出であることに加えては、熱間塑性加工により転位や再結晶粒界といったラーベス相の析出核も次々導入されることから、ラーベス相の急激な成長は生じ難い。つまり、熱間塑性加工後に固溶化処理を行った従来の場合に懸念されたような、ラーベス相の粗大化の問題も解決される。
次には、加工後の固溶化処理を省略しても、従来の図2と同等な効果を得ることができる、ラーベス相の固溶に十分な加工前加熱処理の条件を確立する必要がある。そして、その検討の結果、1000℃以上の保持温度で最低でも60分を越える保持が必要であることを突きとめた。ここで、保持温度は、1100℃以上が好ましいが、逆に1200℃を超えると、SiやTiが濃化したδフェライトや液相が少なからず出現し、加工中の温度降下に伴い、粗大なラーベス相として析出し易くなる。そのため、保持温度は1200℃以下が好ましい。また保持時間に関しては、好ましくは90分以上、さらに好ましくは100分以上である。本発明においては、この加工前加熱処理を、新たな「固溶化処理」と呼び、表記している。
そして、熱間塑性加工前にはラーベス相が十分に固溶した組織状態を達成している本発明の場合、続く同加工においては、従来の図2では考慮が必要であったラーベス相の粗大化の問題も解消できることから、加工温度の決定は、もっぱら塑性変形能のみを勘定して行うことができる。つまり、本発明の塑性加工温度は、加工前の保持温度(つまり、ラーベス相の固溶温度域)であってもよいことに加えては、前記保持温度からの冷却過程であっても、その加工終了温度を被加工材である鋼の表面温度で700℃以上とすることができる。好ましくは800℃以上であり、さらに好ましくは850℃以上である。870℃以上であれば、なお好ましい。
以上によって定義された、本発明のヒートパターンの一例を図1に示しておく。本発明においては、図1の均質化処理は行った方が好ましいが、省略してもよいし、および/または、その作用効果を熱間加工前の固溶化処理に含めてもよい。なお、均質化処理を行うとなれば、それは1000℃以上の温度域では、特に1100℃以上、更には1150〜1200℃の高温域で行うのが、より好ましい。1180℃以上であれば十分であり、および/または、保持時間は20時間以上が望ましい。
固溶化処理の保持温度からの冷却過程では、熱間塑性加工を行った後には、サブゼロ処理を導入してもよい。また、時効処理においては、58HRC以上、望ましくは59HRC以上の硬さが得られやすい温度域として、析出硬化相が十分に析出する400℃以上が望ましい。より望ましくは500℃以上であり、520℃以上であれば最適である。そして過時効による硬さ低下を防ぐ550℃以下が望ましい。
なお、製造効率にも優れる本発明の製造方法においては、時効処理前に行う上記の「熱間塑性加工前の固溶化処理」と「熱間塑性加工」の組合わせ処理は、その一回の処理で済ませることが好ましいが、当然に繰り返し行ってもよい。ただし、この場合、二回目以降の前記組合わせ処理では、その固溶化処理の保持時間は60分を超えること、あるいはその保持の有無自体も問わないが、熱間塑性加工の終了温度は、鋼の表面温度で700℃以上とする。好ましくは800℃以上、さらに好ましくは850℃以上である。870℃以上であれば、なお好ましい。
次に、本発明に供する鋼の成分組成(質量%)について説明しておく。つまり、本発明に供する鋼は、その成分組成としては下記範囲の元素種を含有してなる6.0〜14.0%Crステンレス鋼であればよい。例えば、下記範囲の元素種を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなるステンレス鋼である。
C:0.05%以下
Cは、0.05%以下に管理することによって、組織中の硬質炭化物を低減しかつ、析出サイズをサブミクロンオーダーに抑え、超鏡面仕上げ性を実現する。好ましくは0.02%以下、更に好ましくは0.01%未満である。
Si:0.6〜3.5%未満
Siは、G相を形成するという析出強化機構に寄与して、強度に併せ、優れた鏡面仕上げ性を得るものである。また、マトリックスに固溶したSiは、耐食性(特に耐硫酸)を高める効果もある。しかし、多量に含有すると、数十ミクロンオーダーの大きなラーベス相が多く析出して、それ自体が鏡面仕上げ性を劣化させると共に、Siや他の強化元素もラーベス相にとられるため、過剰に添加しても効果はない。よって、本発明では0.6〜3.5%未満と規定した。好ましくは1.0〜3.0%である。
Mn:3.0%以下
Mnは、鋼の脱酸剤として働き、0.05%以上の含有が好ましいが、多すぎると組織中のオーステナイト量が増加しすぎて、所定の硬度が得られにくくなる。よって、Mnは3.0%以下とする。好ましくは0.8%以下である。
Cr:6.0〜14.0%
Crは、ステンレス鋼の耐食性を確保するための不可欠な成分であって、本発明の金型用途をも考慮すれば、6.0%未満では耐食性が不十分である。また、G相を形成し、析出強化に寄与する。しかし、14.0%を超えると所定の硬度、望ましくは58HRC以上の硬度が得られ難くなるため為、6.0〜14.0%とした。
Ni:4.0〜10.0%
Niは、鋼に耐食性を付与するとともに、Crとのバランスで鋼の相変態を望ましい形態に、すなわち加工後の冷却時にオーステナイト単相から低炭素マルテンサイト単相へと変態させる作用を有する元素である。そして、G相を形成し、析出強化に寄与する。しかし、多過ぎるとオーステナイト量が増大しすぎて、所定の硬度が得られにくくなる。よって、本発明のNiは、4.0〜10.0%とする。
Co:20.0%以下
Coは、耐食性の改善に加えて、G相を形成し、析出強化に寄与する元素である。しかし、過多の含有は機械加工性を損なうので、20.0%以下とする。好ましくは15.0以下である。
Cu:6.0%以下
Cuは、時効処理の際には、析出硬化に寄与すると共に、耐食性も向上させる。しかしながら、多くの含有は熱間加工性を損なうので、規制管理の重要な元素でもある。本発明では6.0%以下とするが、実金型に要する素材寸法に対応し得るためにも、望ましくは2.0%以下である。
Ti:0.5〜3.5%
Tiは、時効処理の際にG相を形成して、析出強化に寄与する重要な元素である。しかし、多く含有すると靭性を低下させ、更に、数十ミクロンオーダーの大きなラーベス相が多くなり、それ自体が鏡面仕上げ性を劣化させると共に、Tiや他の強化元素もラーベス相にとられるため、過剰に添加しても効果はない。さらに、過剰のTiは炭化物や窒化物等を形成し、鏡面仕上げ性に悪影響を及ぼす。よって、本発明では0.5〜3.5%とする。望ましくは1.0〜2.5%である。
Al:2.0%以下(0%を含む)
Alは、鋼の脱酸剤として働く元素である。すなわち、炭化物は低減が好ましいことからCを規制する本発明にとっては、Cによる脱酸が行えないため、Alによる脱酸は有効である。しかし、多くのAl含有は靭性を低下させるので、2.0%以下とする。望ましくは0.5%以下である。加えて、Alは、一方では、AlやAl/Mg複合酸化物の形成により鋼としての鏡面仕上げ性を劣化させることが懸念されるので、例えば脱酸後には、溶湯からは極力除去することが望ましい。または、消耗電極式再溶解法を積極的に導入することで、Al脱酸自体を省略することもできる。
Mo:1.0%以下に規制
Moは、耐食性を向上させると同時に、時効硬化に寄与するものとして、従来添加のされてきた元素である。しかし、Moの添加に伴って、数十ミクロンオーダーの大きなラーベス相が多くなり、これは鏡面仕上げ性を劣化させる。そして、Moに加え、他の強化元素もラーベス相にとられることから、これは高硬度化に悪影響を及ぼすこととなる。よって、本発明では、Moは1.0%以下に規制することが望ましい。より望ましくは0.5%以下、さらに望ましくは0.4%未満に規制する。
N:0.01%以下に規制
Nは、Ti等と窒化物、炭窒化物を形成し、鏡面仕上げ性に悪影響を及ぼすことから、0.01%以下に規制することが望ましい。より望ましくは0.005%以下、さらに望ましくは0.003%以下に規制する。
また、本発明に適用する上記ステンレス鋼は、必要に応じて、Nbおよび/またはTaを含んでもよい。NbおよびTaは、時効硬さを上昇させる効果があるが、過多の含有は鏡面仕上げ性を劣化させることから、添加あるいは含有するとしても、それぞれ1.0%以下、更には0.5%以下が望ましい。なお、上記の効果を得るにあたっては、0.1%以上の含有が望ましい。
あるいはさらに、本発明に適用するステンレス鋼は、必要に応じて、Zrを含んでもよい。Zrは、鏡面仕上げ時のピンホールの発生を抑制する効果があるが、過多の含有の場合、やはり鏡面仕上げ性が劣化する。よって、添加あるいは含有するとしても0.1%以下、更には0.08%以下が望ましい。なお、上記の効果を得るにあたっては、0.01%以上の含有が望ましい。
本発明が製造するステンレス鋼は、その使用環境に応じては、当然に58HRC未満の硬さで使用しても良いが、58HRC以上のものを採用することが望ましく、そしてこれを達成しているところにも重要な特徴がある。58HRC以上の硬度は鏡面磨きの粗研磨時にキズをつけ難くし、鏡面仕上げを容易にすると同時に耐摩耗性をも改善できるものである。よって、本発明によるステンレス鋼をプラスチックやガラス部品等の、極めて高い表面精度が要求される製品の成形用金型に適用すれば、該硬さに調質し、切削加工又は研削・研磨加工やラッピング加工等の機械加工を施した成形面は、優れた超超鏡面仕上げ性と成形時の耐摩耗性を有する。
真空誘導炉溶解によって、表1の化学成分を有する、残部Feおよび不可避的不純物の鋼塊(試料No.1〜7)を準備した。そして、これらの鋼塊を、表2(図1)の条件に従って加工および熱処理し、靱性評価のための試料に整えた。なお、試料No.8および9は、本出願人が提案し済みの、特許文献1(図2)に従って作製した参考鋼であり、熱間塑性加工後に固溶化処理を施した試料である。
靭性は、硬さ調整した各試料について、10mmRノッチ試験片を用いてシャルピー衝撃試験を行い、室温でのシャルピー衝撃値により評価した。なお、試験片は、熱間塑性加工後の鋼材の長手方向に試験片の長手方向がくるように採取し(すなわち、L方向から採取し)、そして、衝撃値は、1つの試料につき3回の衝撃試験を行ったうちの、その平均値を評価した。以上の結果を、調質硬さとともに、表3に示す。
以上の結果より、本出願人が先に提案した成分組成を有する時効硬化型ステンレス鋼においては、本発明の製造工程を適用した試料No.1〜7であっても、試料8および9に同様、良好な硬さと靭性のバランスを達成している。
本発明によれば、その達成されるステンレス鋼は、高度の耐食性、鏡面性、及び高硬度に加えて、十分な靱性をも有するので、光ディスクや光学レンズの成形用金型に加えて、同様の特性を必要とするガラス繊維等の強化剤を含有するPPS樹脂など、所謂スーパーエンプラの成形用金型としても適用できる。また、刃物や錠剤パンチ、精密機械部品等にも適用できる。
本発明の製造方法の一例を説明する、ヒートパターン図である。 参考となる製造方法の一例を説明する、ヒートパターン図である。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.05%以下、Si:0.6〜3.5%未満、Mn:3.0%以下、Cr:6.0〜14.0%、Ni:4.0〜10.0%、Co:20.0%以下、Cu:6.0%以下、Ti:0.5〜3.5%、Al:2.0%以下(0%を含む)を含有してなる鋼の製造方法において、
    前記の鋼に、1000℃以上の保持温度で60分を超える保持時間の固溶化処理を行った後、前記保持温度からの冷却過程で、加工終了温度を鋼の表面温度で700℃以上とする塑性加工を行い、次いで時効処理を行うことを特徴とする時効硬化型ステンレス鋼の製造方法。
  2. 質量%で、Moは1.0%以下に、Nは0.01%以下に規制された鋼であることを特徴とする請求項1に記載の時効硬化型ステンレス鋼の製造方法。
  3. 400〜550℃の時効処理を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の時効硬化型ステンレス鋼の製造方法。
  4. 固溶化処理の前には、均質化処理を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の時効硬化型ステンレス鋼の製造方法。
  5. 時効処理後の硬さを58HRC以上とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の時効硬化型ステンレス鋼の製造方法。
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