JP2009137541A - 重荷重用タイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】スチールコードをコーティングゴムで被覆してなる少なくとも一枚のカーカスプライで形成したカーカスを具え、該スチールコードと該コーティングゴムとの接着耐久性と耐破壊性能とが向上されている重荷重用タイヤを提供する。
【解決手段】重荷重用タイヤは、スチールコードをコーティングゴムで被覆してなる一枚以上のカーカスプライからなるカーカスを具える重荷重用タイヤにおいて、前記コーティングゴムにジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部に対してアミン化合物を0.8〜3.0質量部配合してなるゴム組成物を用いたことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、スチールコードをコーティングゴムで被覆してなる少なくとも一枚のカーカスプライで形成したカーカスを具え、該スチールコードと該コーティングゴムとの接着耐久性と耐破壊性能とが高いレベルで両立されている重荷重用タイヤに関するものである。
1940年代後半にミシュラン社によってスチールラジアルタイヤが開発されて以来、カーカスの補強材料としてスチールコードを用いたスチールコード補強タイヤは、順調にシェアを伸ばしている。特に近年、ベルテッドバイアスタイヤ、ラジアルタイヤへの移行に伴い、該スチールコード補強タイヤは、著しくシェアを伸ばしており、トラック用にも急激にシェアを伸ばしている。
一方、近年、自動車用タイヤに要求される性能は益々厳しくなってきており、タイヤの耐久性の更なる改良が望まれている。上記スチールコード補強タイヤにおいては、スチールコードと該スチールコードを被覆するコーティングゴムとの接着性を確保することが重要であり、この接着性が低下するとカーカス及びベルトの少なくとも一方の耐久性が低下し、ひいてはタイヤの耐久性に問題が生じることが知られている。そのため、これまでスチールコードとコーティングゴムとの接着性を改良して、タイヤを長寿命化する必要があった。
特に、ショルダー部のゲージの厚さが100mm以上の大型のタイヤは、ゲージの厚い部分の最深部を加硫するために加硫時間が長くなり、その結果、表面近くのプライコーティングゴムは新品時からすでに多大な熱履歴を受けている。このような加硫条件の場合、加硫中のゴムは加硫戻りと言われる現象により、加硫熱履歴が大きいほど耐破壊性能が低くなる。
また、加硫時に、カーカスコード表面では架橋反応と接着反応の競合が起きている。これら2つの反応の速度のバランスが崩れて架橋反応が早くなりすぎると、接着反応に消費されるべき硫黄が架橋反応に消費されるため接着層が脆弱になる。また、接着反応が速くなりすぎると接着層近傍の網目が弱くなり、十分な補強効果を得られない。特に、ゴム部材のゲージの厚い大型タイヤにおいては、熱伝導の関係から、目的とする加硫温度に達するのに時間がかかり、低温の状態が長くなる。加硫温度が低いと、加硫速度が接着速度を上回るため、低温状態が長く続くような加硫条件では接着層が脆弱になる。
こうした問題を解決するために、周面にブラスめっき層を有し、該ブラスめっき層中のリンの含有量が特定の範囲にあるスチールワイヤからなるスチールコードを用いる方法がある(特許文献1)。しかしながら、ワイヤ表層領域におけるリンの含有量を制限すると、スチールコードの接着性は向上するものの、スチールコードをコーティングゴムで被覆して放置(トリート放置)しておくとスチールコードの表面にCuS層が形成され、該CuS層は接着反応を阻害する作用があるため、コーティングゴムとスチールコードの接着耐久性が不十分となる可能性がある。
また、こうした問題を解決するために、コーティングゴムへの硫黄の配合量を増やす方法がある。しかしながら、コーティングゴムへの硫黄の配合量を増やすと、低温で長時間加硫を行っても接着反応に十分な硫黄を供給できるものの、コーティングゴムの加硫戻りが大きくなるためビード背面部等においてスチールコードとそのコーティングゴムがセパレーションを起こしやすい。また、コーティングゴムへのコバルト塩の配合量を増やす方法があるが、コーティングゴムへのコバルト塩の配合量を増やすと、接着反応が促進されるため低温で加硫を行っても加硫速度に対する接着速度の低下を抑えられるものの、加硫戻りが大きくなるため走行時の物性低下の速度が速くなるためビード背面部等においてスチールコードとそのコーティングゴムがセパレーションを起こしやすい。これらのことから、スチールコードとコーティングゴムとの接着耐久性等に関して更に改良する必要がある。
特開2004−83766号公報
そこで、本発明の目的は、スチールコードをコーティングゴムで被覆してなる少なくとも一枚のカーカスプライで形成したカーカスを具え、該スチールコードと該コーティングゴムとの接着耐久性と耐破壊性能とが高いレベルで両立されている重荷重用タイヤを提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、スチールコードをコーティングゴムで被覆してなる一枚以上のカーカスプライからなるカーカスを具える重荷重用タイヤにおいて、前記コーティングゴムにアミン化合物を特定量配合してなるゴム組成物を用いることにより、該スチールコードと該コーティングゴムとの接着耐久性と耐破壊性能を高いレベルで両立し、ショルダー部の故障を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の重荷重用タイヤは、スチールコードをコーティングゴムで被覆してなる一枚以上のカーカスプライからなるカーカスを具える重荷重用タイヤにおいて、
前記コーティングゴムにジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部に対してアミン化合物を0.8〜3.0質量部配合してなるゴム組成物を用いることを特徴とする。
また、本発明の重荷重用タイヤは、前記スチールコードに、周面にブラスめっき層を有し、該ブラスめっき層の表面からワイヤ半径方向内方に深さ5nmまでのワイヤ表層領域における酸化物として含まれるリンの含有量が1.5原子%以下であるスチールワイヤの単線、または該スチールワイヤの複数本を撚り合わせてなるスチールコードを用いることが好ましい。
本発明の重荷重用タイヤの他の好適例においては、前記コーティングゴムに用いるゴム組成物が、更に硫黄を前記ゴム成分100質量部に対して5.0〜6.0質量部含む。
本発明の重荷重用タイヤの他の好適例においては、前記コーティングゴムに用いるゴム組成物が、更に亜鉛華を前記ゴム成分100質量部に対して7.0〜11.0質量部含む。
本発明の重荷重用タイヤの他の好適例においては、前記コーティングゴムに用いるゴム組成物が、更に脂肪酸コバルト塩を前記ゴム成分100質量部に対してコバルト量で0.05〜0.3質量部含む。
また、本発明の重荷重用タイヤは、ショルダー部の最大厚さが100mm以上であることが好ましい。
本発明の重荷重用タイヤはオフザロードタイヤであることが好適である。
本発明によれば、スチールコードをコーティングゴムで被覆してなる少なくとも一枚のカーカスプライで形成したカーカスを具え、該スチールコードと該コーティングゴムとの接着耐久性と耐破壊性能とが高いレベルで両立されている重荷重用タイヤが提供できる。
以下に、図を参照しながら本発明を詳細に説明する。図1は本発明の重荷重用タイヤの一例の断面図であり、図中、1はトレッド部を、2はトレッド部1の側部から半径方向内方へ延びる一対のサイドウォール部を、そして3はサイドウォール部2の半径方向内端に連なるビード部をそれぞれ示す。
ここでは、タイヤの骨格構造をなし、タイヤの上記各部1、2、3を補強するカーカス4を、一枚以上のカーカスプライにて構成するとともに、それぞれのビード部3に配設したそれぞれのビードコア5間にトロイダルに延びる本体部と、各ビードコア5の周りで、タイヤ幅方向の内側から外側に向けて半径方向外方に巻上げた折り返し部を有するものとする。図中のカーカス4は、一枚のカーカスプライよりなるが、本発明のタイヤにおいては、カーカスプライの枚数は複数であってもよい。
また、図中6はベルトを示し、ベルト6は、カーカス4のクラウン部のタイヤ半径方向外側に配設した一枚以上のベルト層からなる。図中のベルト6は、二枚のベルト層よりなるが、本発明のタイヤにおいては、ベルト層の枚数はこれに限られるものではない。
本発明の重荷重用タイヤにおいては、カーカス4がスチールコードをコーティングゴムで被覆してなる一枚以上のカーカスプライを含み、前記コーティングゴムにジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部に対してアミン化合物を0.8〜3.0質量部配合してなるゴム組成物を用いる。ここで、前記ゴム組成物がアミン化合物を0.8質量部以上含むことにより(1)コーティングゴムの耐破壊性能を新品時及び走行後共に向上させることができ(2)アミン化合物は、スチールコードをコーティングゴムで被覆して放置(トリート放置)した際にスチールコード表面のCuSの層形成を防ぐことができるため、接着反応が安定化し加硫後の接着耐久性をより向上させることができる。また、(3)アミン化合物はスチールコードに対する防蝕作用を有するのでスチールコードの腐食を防止することができる。ここで、前記ゴム組成物へのアミン化合物の配合量が3.0質量部を超えると、未加硫時にアミン化合物がスチールコード表面にブルームし、部材間剥離を起こす。
また、めっき層等のリンの定量は、X線光電子分光法を用いて、ワイヤの曲率の影響を受けないように20〜30μmφの分析面積にて、ワイヤのめっき表層領域に存在する原子、つまりC、Cu、Zn、O、P及びNの原子数を測定し、C、Cu、Zn、O、P及びNの合計原子数を100としたときの、Pの原子数の比率を求めた。各原子の原子数は、C:C1S、O:O1S、P:2P、Cu:Cu2P3/2、Zn:Zn2P3/2、及びN:N1S、の光電子のカウント数を用いて、それぞれの感度係数で補正して求めた。
例えば、リンの検出原子数[P]は下式にて求めることができる。
[P]=F(P2Pの感度係数)×(一定時間当たりのP2P光電子のカウント)
そして、他の原子についても同様に検出原子数を求めれば、それらの結果からリンの相対原子%を次式
P%={[P]/([Cu]+[Zn]+[C]+[O]+[N]+[P])}×100
に従って求めることができる。
本発明の重荷重用タイヤにおいて使用する前記アミン化合物としては、特に制限はなく、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、ジフェニルアミンとアセトンとの反応物等のアミン−ケトン系化合物;フェニル−1−ナフチルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン等の芳香族第二級アミン系化合物等のモノフェノール系化合物等が挙げられる。これらアミン化合物は防錆効果と老防効果があるため効果的である。これらのアミン化合物は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
前記ゴム組成物のゴム成分としては、天然ゴムやイソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム及びこれらの混合物等のジエン系ゴムが挙げられる。スチールコードのコーティングゴムには耐破壊性が要求されるため、前記ゴム組成物は天然ゴムを含むことが好ましい。
本発明の重荷重用タイヤで使用するスチールコードにおいては、前記スチールコードに、周面にブラスめっき層を有し、該ブラスめっき層の表面からワイヤ半径方向内方に深さ5nmまでのワイヤ表層領域における酸化物として含まれるリンの含有量が1.5原子%以下であるスチールワイヤの単線、または該スチールワイヤの複数本を撚り合わせてなるスチールコードを用いることが好ましい。スチールワイヤに酸化物として含まれるリンの含有量が1.5原子%を超えて増加すると、それにつれてスチールコードとゴムとの接着速度が遅くなり、所望のゴム接着性を確保するためにはゴム配合を厳密に規制する等の難しい操作が必要になるとともに、ゴム中の水分率の影響が大きくなって、かかる水分率が低下する冬期の製造においてはゴムの接着性が確保できなくなる。リンの量を1.5原子%以下とすることにより、ゴム中の水分率にかかわらず優れたゴム接着性を安定して得ることが可能になる。
スチールワイヤの上記表層領域において酸化物として含まれるリンの含有量は、X線光電子分光法に従って計測することができる。即ち、X線光電子分光法に従って計測される光電子の脱出深さ領域において、全元素の原子数と酸化物中のリンの原子数とを検出し、全元素の原子数を100としたときの酸化物中のリンの原子数を指数で表示したものを、当該領域における酸化物に含まれるリンの原子%とした。なお、酸化物としてのリンと他のリンとの判別は、リン原子のX線光電子スペクトルで測定されるP=p光電子の結合エネルギーの化学シフトに基づいて行うことができる。また、5nmの深さまでの表層領域は、固体の光電子分光に関する一般的な文献にて示される、電子の運動エネルギーと脱出深度とによって認識することができる。
上記スチールワイヤは、例えば、径が5mm程度の線材に伸線加工を施して製造される。なお、該伸線加工のパススケジュール、ダイスのエントランスやアプローチの形状並びに角度、ダイスの材質及び潤滑剤組成等の調整を単独又は適宜組み合わせて行うことによって、上記表層領域における酸化物に含まれるリンの量を1.5原子%以下に抑制することができる。とりわけ、最終伸線工程において、極圧添加剤を含む潤滑剤を通常と同様に用いて、最終伸線工程のダイスのうち最終パス又は最終パスを含む後段数パス程度に、優れた自己潤滑性に併せて優れた切削性を有する材質からなるダイス、例えば、焼結ダイヤモンドダイスを適用して伸線加工を行うことが、極めて有効である。こうして得られたスチールワイヤを複数本撚り合わせることによって、本発明のタイヤのカーカスに用いるスチールコードが得られる。なお、該スチールコードのサイズ、撚り数、撚り条件等は、タイヤの要求性能に応じて適宜選択される。
本発明の重荷重用タイヤにおいて、前記コーティングゴムに用いるゴム組成物は、更に硫黄を前記ゴム成分100質量部に対して5.0〜6.0質量部含むことが好適である。ここで、前記コーティングゴムに用いるゴム組成物が、更に硫黄を前記ゴム成分100質量部に対して5.0質量部以上含むことにより、低温状態が長いような加硫条件でも、接着反応に十分な硫黄を供給できるが、6.0質量部を超えると加硫戻りが大きくビード背面部においてカーカスプライがセパレーションを起こしやすくなる。
本発明の重荷重用タイヤにおいて、前記コーティングゴムに用いるゴム組成物が、更に亜鉛華を前記ゴム成分100質量部に対して7.0〜11.0質量部含むことが好ましい。前記コーティングゴムに用いるゴム組成物が、更に亜鉛華を前記ゴム成分100質量部に対して7.0質量部未満であると接着反応が不十分になり、11.0質量部を超えると亜鉛華のゴム組成物中での不分散により耐破壊性能も低下して、ビード背面部においてカーカスプライがセパレーションを起こしやすくなる。
本発明の重荷重用タイヤにおいて、前記コーティングゴムに用いるゴム組成物が、更に脂肪酸コバルト塩を前記ゴム成分100質量部に対してコバルト量で0.05〜0.3質量部含むことが好適である。前記コーティングゴムに用いるゴム組成物が、更に脂肪酸コバルト塩を前記ゴム成分100質量部に対してコバルト量で0.05質量部以上含むことにより、接着反応が促進され加硫温度が低い状態でも加硫速度に対する接着速度の低下を抑えることが可能になるが、0.3質量部を超えると加硫戻りが大きくなり、走行時の物性低下等により、カーカスプライがビード背面部においてセパレーションを起こしやすくなる。
本発明の重荷重用タイヤで使用する脂肪酸コバルト塩としては、飽和、不飽和、又は直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば、ステアリン酸コバルト、バーサチック酸コバルト、オレイン酸コバルト、リノール酸コバルト、リノレイン酸コバルト、アビエチン酸コバルト、カブリル酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルト、オクチル酸コバルト、ビバリン酸コバルト、n−ヘプタン酸コバルト、2,2−ジメチルペンタン酸コバルト、2−エチルペンタン酸コバルト、4,4−ジメチルペンタン酸コバルト、n−オクタン酸コバルト、2,2−ジメチルヘキサン酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルト、4,4−ジメチルヘキサン酸コバルト、2,4,4−トリメチルペンタン酸コバルト、n−ノナン酸コバルト、2,2−ジメチルヘプタン酸コバルト、6,6−ジメチルペプタン酸コバルト、3,5,5−トリメチルヘキサン酸コバルト、n−デカン酸コバルト、2,2−ジメチルオクタン酸コバルト、7,7−ジメチルオクタン酸コバルト、n−ウンデカン酸コバルト等が挙げられ、ステアリン酸コバルトが好ましい。
本発明の重荷重用タイヤは、ゴムの耐熱接着性と耐熱老化性能を両立し、重荷重時及び高速走行時等のクラウン部からショルダー部にかけて高温で使用される条件下においてもカーカスコードとコーティングゴムとの接着力が低下しにくく、ゴム物性の低下も小さいため、ショルダー部の故障が抑制できる。従って、本発明の重荷重用タイヤは、ゴム部材のゲージが厚く加硫時間が長くなるため耐破壊性能が低くなる傾向にあるショルダー部の最大厚さが100mm以上であるタイヤとして好適であり、建設車両用タイヤ等のオフザロードタイヤとして更に好適である。
前記ゴム組成物には、上記ゴム成分、アミン化合物、硫黄、亜鉛華、脂肪酸コバルト塩の他、カーボンブラック及びシリカ等の充填剤、シリカ用のシランカップリング剤、加硫促進剤、軟化剤、ステアリン酸、オゾン劣化防止剤等のゴム業界で通常使用される配合剤を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
上記コーティングゴムに用いるゴム組成物の調製方法に特に制限はなく、例えば、バンバリーミキサーやロール等を用いて、ゴム成分に、上記アミン化合物、硫黄、亜鉛華、有機酸コバルト塩及び各種配合剤を練りこんで調製することができる。混練りされたゴム組成物は、シート状に加工され、更に加工されたゴムシート2枚がスチールコードを挟んだ状態に成形加工されて、カーカスプライが形成される。本発明のタイヤのトレッド踏面部、サイドウォール部及びビード部等には、通常のタイヤのそれらの部分に使用される材料、形状、配置を適宜採用することができる。
下記表1及び2に記載の配合処方に従い各コーティング用ゴム組成物を調製し、該ゴム組成物でスチールコードを被覆してカーカスプライを構成し、カーカスに該カーカスプライを1枚用いてサイズ:18.00R25の供試タイヤを製造した。ここで、スチールコードとして、下記方法で製造したスチールコードA(ブラスめっき層の表面からワイヤ半径方向内方に深さ5nmまでのワイヤ表層領域における酸化物として含まれるリンの量:2.0原子%)及びスチールコードB(ブラスめっき層の表面からワイヤ半径方向内方に深さ5nmまでのワイヤ表層領域における酸化物として含まれるリンの量:0.61原子%)を用いた。該供試タイヤをドラム上で時速20km/h、荷重はステップロードの(荷重:TRA規格100%(荷重10tonで内圧800kPa)、72時間ごとに荷重を20%ずつアップする)条件で走行させた。320時間走行後停止し、ショルダー部の最大ゲージ部を中心に10cmの領域におけるスチールコードのゴム被覆率(%)を求めた。また、ドラム走行したタイヤのショルダー部の最大ゲージ部からコーティングゴムを2mm厚のシートとして切り出し、該シートについてJIS K6301に準拠して破断強力(MPa)を測定した。各破断強力値は実施例1の値を100として指数化し、表3及び4に示す。
(スチールコードの作製方法)
伸線加工のパススケジュール、ダイスのエントランスやアプローチの形状並びに角度、ダイスの材質及び潤滑剤組成を制御して伸線加工を行い、表層領域における酸化物に含まれるリンの量を制御したスチールワイヤを作製した。次に、得られたスチールワイヤを
27本撚り合わせて、(3+9+15+1)構造、素線径0.23mm、黄銅めっき(Cu:63質量%、Zn:37質量%)、スパイラル0.15mm付きのスチールコードを製造した。
Figure 2009137541
Figure 2009137541
*1 RSS3号
*2 N326
*3 大内新興化学工業(株)製、 Nocrac 6C
*4 大内新興化学工業(株)製、 Nocrac DP
*5 大内新興化学工業(株)製、 Nocrac 224−S
*6 大内新興化学工業(株)製、 Nocrac CD
*7 大内新興化学工業(株)製、 Nocrac 810NA
*8 ステアリン酸コバルト(コバルト含有量9.5%)
*9 大内新興化学製、ノクセラーDZ−G、N,N−ジシクロヘキシル−2−べンゾチアゾリルスルフェンアミド
Figure 2009137541
Figure 2009137541
表3及び4から、コーティングゴムにジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部に対してアミン化合物を0.8〜3.0質量部配合したゴム組成物を用いた実施例1〜34は、アミン化合物を前記規定外で配合した比較例1〜4に対してゴム被覆率及び破断強度とも向上することが分かる。そのため、コーティングゴムにジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部に対してアミン化合物を0.8〜3.0質量部配合することが好ましい。
また、スチールコードに、周面にブラスめっき層を有し、該ブラスめっき層の表面からワイヤ半径方向内方に深さ5nmまでのワイヤ表層領域における酸化物として含まれるリンの含有量が1.5原子%以下であるスチールワイヤの単線、または該スチールワイヤの複数本を撚り合わせてなるスチールコードBを用いた実施例18〜34は、前記規定外のスチールコードAを用いた実施例1〜17に対してゴム被覆率が向上した。そのため、スチールコードは、このブラスめっき層の表面からワイヤ半径方向内方に深さ5nmまでのワイヤ表層領域における酸化物として含まれるリンの含有量が1.5原子%以下であることが好ましい。
コーティングゴムに用いるゴム組成物が、硫黄を前記規定内で含む実施例1、3、18及び20は、前記規定外で含む実施例2、4、19及び21に対してそれぞれゴム被覆率が向上している。そのため、コーティングゴムに用いるゴム組成物は、硫黄をゴム成分100質量部に対して5.0〜6.0質量部含むことが好ましい。
コーティングゴムに用いるゴム組成物が、亜鉛華を前記規定内で含む実施例10及び27は、前記規定外で含む実施例9、11、26及び28に対してゴム被覆率及び破断強力の値とも向上している。そのため、コーティングゴムに用いるゴム組成物は、亜鉛華をゴム成分100質量部に対して7.0〜11.0質量部含むことが好ましい。
コーティングゴムに用いるゴム組成物が、脂肪酸コバルト塩を前記規定内で含む実施例7及び24は、前記規定外で含む実施例8及び25に対して破断強力の値が向上している。そのため、コーティングゴムに用いるゴム組成物は、脂肪酸コバルト塩をゴム成分100質量部に対してコバルト量で0.05〜0.3質量部含むことが好ましい。
本発明の重荷重用タイヤの一例の断面図である。
符号の説明
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス
5 ビードコア
6 ベルト

Claims (7)

  1. スチールコードをコーティングゴムで被覆してなる一枚以上のカーカスプライからなるカーカスを具える重荷重用タイヤにおいて、
    前記コーティングゴムにジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部に対してアミン化合物を0.8〜3.0質量部配合してなるゴム組成物を用いたことを特徴とする重荷重用タイヤ。
  2. 前記スチールコードに、周面にブラスめっき層を有し、該ブラスめっき層の表面からワイヤ半径方向内方に深さ5nmまでのワイヤ表層領域における酸化物として含まれるリンの含有量が1.5原子%以下であるスチールワイヤの単線、または該スチールワイヤの複数本を撚り合わせてなるスチールコードを用いたことを特徴とする請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
  3. 前記コーティングゴムに用いるゴム組成物が、更に硫黄を前記ゴム成分100質量部に対して5.0〜6.0質量部含むことを特徴とする請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
  4. 前記コーティングゴムに用いるゴム組成物が、更に亜鉛華を前記ゴム成分100質量部に対して7.0〜11.0質量部含むことを特徴とする請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
  5. 前記コーティングゴムに用いるゴム組成物が、更に脂肪酸コバルト塩を前記ゴム成分100質量部に対してコバルト量で0.05〜0.3質量部含むことを特徴とする請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
  6. ショルダー部の最大厚さが100mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
  7. オフザロードタイヤであることを特徴とする請求項6に記載の重荷重用タイヤ。
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