この発明に係る保持治具の洗浄方法及びこの発明に係る保持治具の洗浄装置によって洗浄される保持治具は、複数の保持孔を有する弾性部材を備えて成る保持治具である。このような保持治具の一例として、図8及び図9に示されるように、被保持物を保持する複数の保持孔68が貫通形成されて成る平板状の弾性部材61と、前記弾性部材61に埋設された平板状の補強部材60とを備えて成る保持治具50が挙げられる。
前記補強部材60は、弾性部材61に埋設され、弾性部材61を平坦に維持する。補強部材60は、図9に示されるように、複数の貫通孔67が形成された矩形の平坦部65と、平坦部65の周囲に平坦部65の上面方向及び下面方向に突出した鍔部66換言するとフランジ部とを備えている。この鍔部66は、平坦部65を囲繞するように形成され、平坦部65を補強し、また、保持治具50の取扱性を確保する。前記平坦部65に貫通形成される貫通孔67は、通常、後述する保持孔68が配列されるパターンと同一のパターンで保持孔68と同数形成される。貫通孔67を水平面で切断したときの断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形、多角形等の形状とされ、この例においては略円形とされている。貫通孔67は、被保持物及び保持孔68の大きさ等に応じてその寸法が調整され、好ましくは保持孔68の内径よりも大きくされる。
補強部材60は、被保持物等の生産性及び被保持物等の長さ等を考慮して、鍔部66及び平坦部65の大きさ及び厚さが調整される。補強部材60は、弾性部材61を平坦な形状に維持することのできる材料で形成されていればよく、このような材料として、ステンレス鋼及びアルミニウム合金等の金属、又は、ポリフェニレンスルフィド樹脂等の樹脂等が挙げられる。
前記弾性部材61は、図8及び図9に示されるように、複数の保持孔68が貫通形成された平板状を成している。より具体的には、弾性部材61は、図9に示されるように、前記補強部材60具体的には平坦部65を埋設し、換言すると、補強部材60の平坦部65の両面を被覆すると共に、補強部材60の貫通孔67に貫入し、補強部材60の鍔部66と面一になるように、形成されている。すなわち、弾性部材61は、前記補強部材60の両面に配設されると共に、補強部材60の貫通孔67に貫入することによって、両面に配設された弾性部材61が一体に成っている。したがって、弾性部材61は鍔部66によって囲繞されている。
弾性部材61は、図8及び図9に示されるように、被保持物等を挿入保持する複数の保持孔68を有し、保持孔68に挿入又は貫入された被保持物等を弾発的に及び/又は粘着力で保持する。弾性部材61は、保持孔68を複数、例えば、約2000個以上、好ましくは、少なくとも約3000個以上、より好ましくは、少なくとも約3500個以上、有している。保持孔68が配列されるパターンは特に限定されず、この例では、保持孔68は縦横に所定の間隔をおいて碁盤目状に配列されている。保持孔68を水平面で切断したときの断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形、多角形等の形状とされ、この例においては略円形とされている。保持孔68は、被保持物等の大きさ等に応じてその寸法が調整され、具体的には、保持孔68の内径は、0.4〜2.0mmであり、近年の小型化された被保持物を保持する場合には0.2〜0.5mmに調整される。
弾性部材61の表面は、平滑であるのが好ましい。弾性部材61の表面を平滑にするには、成形後の表面を常法に従って研磨処理又は研削処理する方法等を選択することができる。弾性部材61(すなわち、保持治具50)は、被保持物等の生産性及び被保持物等の長さ等を考慮して、通常、前記鍔部66と面一になるように、その大きさ及び厚さが調整される。弾性部材61は、弾性変形し、電子部品又は電子部品用部材を挿入保持することのできる材料で形成されていればよく、このような材料として、シリコーンゴム等のゴム、及び、エラストマー等が挙げられる。
このような保持治具50は、例えば、弾性部材61に形成される保持孔68の位置に対応した位置に複数の成形ピンが形成された金型に、被保持物の断面寸法よりも大きい径を有する複数の貫通孔67が配列されて成る補強部材60を、前記貫通孔67内に前記成形ピンが位置するように、挿入し、次いで、この金型と補強部材60とで形成される間隙に弾性材料を注入して、成形する製造方法によって、製造される。
この発明に係る保持治具の洗浄方法及びこの発明に係る保持治具の洗浄装置によって洗浄される保持治具は、前記構成を有する保持治具であればよいが、保持孔68の内表面に異物が付着した保持治具であるのがこの発明の目的をよく達成することができる。このような保持治具として、例えば、補強部材60に成形された弾性部材61を研磨又は研削して製造された保持治具、被保持物の製造工程等に使用された保持治具等が挙げられる。
このような保持治具50に保持される被保持物は、特に限定されないが、例えば、インダクタ、コンデンサ、抵抗器等の電子部品、及び、これらの電子部品を形成する前駆体である電子部品形成用部材が挙げられる。これらの電子部品及び電子部品形成用部材は近年急速に小型化され、その一例として、例えば、縦0.3mm×横0.3mm×高さ0.6mmの長方体をなす電子部品及び電子部品形成用部材が挙げられる。
この保持治具50は、電子部品の製造方法、例えば、電子部品用部材をめっきする工程等の製造工程、電子部品用部材又は電子部品(この発明において、電子部品用部材には電子部品を含み、以下、電子部品用部材等と称することがある。)を保持して、搬送する工程、電子部品用部材等を保持して保存する工程等に好適に使用される。特に、この保持治具50は、電子部品用部材等の製造工程に有利に使用される。
この発明に係る保持治具の洗浄装置を、図面を参照して、説明する。この発明に係る保持治具の洗浄装置の一実施例である保持治具の洗浄装置1(以下、単に、洗浄装置1と称することがある。)は、図1及び図2に示されるように、前記保持治具例えば保持治具50を支持する支持部10と、保持治具50の保持孔68における一方の開口部52から他方の開口部54へと洗浄水を保持孔68内に噴射する第1の噴射ノズル20と、前記保持孔68における他方の開口部54から一方の開口部52へと洗浄水を前記保持孔68内に噴射する第2の噴射ノズル25とを備えて成る。
図1に示されるように、支持部10は、保持治具50を支持することができればよく、例えば、クランプ等の挟持具、ボルト及びナット等の締結具等を特に制限されることなく、選択される。支持部10は、図1に示されるように、保持治具50を略垂直な起立状態(保持孔の軸線を略水平)に支持してもよく、また、保持治具50を略水平な伏臥状態(保持孔の軸線を略垂直)に支持してもよく、さらに、保持治具50を斜めに支持してもよい。洗浄装置1において、支持部10は、保持治具50を略垂直な起立状態に支持固定する挟持具とされ、図示しない洗浄装置筐体に固定されている。
図1及び図2に示されるように、第1の噴射ノズル20は、保持孔68における一方の開口部52から他方の開口部54へと洗浄水を保持孔68内に噴射することができればよく、従来の噴射ノズルを使用することができる。洗浄装置1において、第1の噴射ノズル20は、噴射口(図示しない。)を有するノズル先端部31と、ノズル先端部31を所定の位置に配置する支柱33と備えて成り、ノズル先端部31に洗浄水を移送する移送路(図示しない。)が接続されている。第1の噴射ノズル20は、保持治具50の洗浄効率を考慮して、八行に配列されたすべての保持孔68に洗浄水を洗浄することができるように、八行に配列された複数の保持孔68の配列長さよりも長い噴射口(図示しない)が形成されたノズル先端部31を1つ備えている。すなわち、第1の噴射ノズル20は、八行に配列されたすべての保持孔68に対向する1つの噴射口(図示しない)が1つのノズル先端部31に設けられている。このように、洗浄装置1が八行に配列されたすべての保持孔68に一挙に洗浄水を噴射することのできる第1の噴射ノズル20を備えていると、高い洗浄効率を実現することができる。第2の噴射ノズル25は、保持孔68における他方の開口部54から一方の開口部52へと洗浄水を保持孔68内に噴射することができればよく、図1に示されるように、第1の噴射ノズル20と基本的に同様に構成されている。
第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25における噴射口の口径は、保持孔68の配列長さ、保持孔38の内径、噴射される洗浄水の噴射圧等に応じて、洗浄水が保持孔68内を流通することのできる口径に適宜調整される。噴射口の口径は、特に制限されず、後述するように、ノズル先端部31を弾性部材61に当接又は圧接して洗浄水を噴射する場合には、保持孔68の内径よりも大きいのが好ましい。例えば、洗浄される保持治具として、複数の保持孔68が一行に配列された(列方向の)長さが145mm、行間隔が2.1mmの保持治具50において、八行に配列されたすべての保持孔68に洗浄水を一度に噴射することを想定するのであれば、噴射口の口径は17×150(mm)に調整されることができる。また、第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25における洗浄水の加圧力は、保持孔68の内表面に付着した異物の数等に応じて適宜調整される。例えば、洗浄水の加圧力として、2.0〜3.0MPaの噴射圧(ノズル先端部の噴射口から噴射される洗浄水の噴射圧)に調整される。
第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25は、洗浄装置1内のいずれの位置に配置されていてもよいが、特に洗浄水を噴射する直前及び/又は洗浄水を噴射している間には、図2に示されるように、第1の噴射ノズル20は、その軸線Cnが保持孔68の軸線Chと略並行となるように、保持治具50における一方の表面51側にノズル先端部31(噴射口)が配置され、一方、第2の噴射ノズル25は、その軸線Cnが保持孔68の軸線Chと略並行となるように、保持治具50における他方の表面53側にノズル先端部35(噴射口)が配置されるのが好ましい。換言すると、第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25は、保持治具50を介してノズル先端部31及びノズル先端部35が相対向するように、好ましくは、保持孔68の軸線Ch、ノズル先端部31の軸線Cn及びノズル先端部35の軸線Cnが略並行となるように、配置されるのが好ましい。
この洗浄装置1においては、第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25それぞれは、前記配置関係を維持した状態で、洗浄水を噴射する際に保持治具50の弾性部材61に当接又は圧接されるように、支持部10で支持された保持治具50における保持孔68の軸線方向に独立に前後進可能に構成されている。第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25がこのように構成されていると、第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25に形成された噴射口が1つであっても、第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25から噴射される洗浄水を保持孔68内に均一に流通させることができる。このような構成は、例えば、モータ等の駆動部(図示しない。)を適宜採用することができる。
第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25それぞれには、洗浄水をノズル先端部31及び35に移送する移送路(図示しない。)が、例えば支柱33及び37の内部を経由して接続されている。移送路は金属管又は樹脂管等で構成され、ノズル先端部31又は35と洗浄水貯留槽又は洗浄液回収経路(共に図示しない。)とに接続されている。洗浄水貯留槽は洗浄液を貯留することができる容器であればよく、洗浄液回収経路は例えば支持部10の下方に形成された洗浄液回収部又は洗浄液回収部から延在する移送路等であればよい。この移送路には加圧機構及び移送手段(共に図示しない。)が介装されている。加圧機構は、洗浄水を加圧することができればよく、例えば、コンプレッサ、圧縮ポンプ等が挙げられる。移送手段は、洗浄水をノズル先端部31に強制的に移送することができればよく、例えば、各種ポンプが挙げられる。なお、この移送手段は、介装されていなくてもよい。前記移送路は、洗浄水貯留槽又は洗浄後の洗浄液回収経路に接続されている。
第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25それぞれから噴射される洗浄水は、水道水、精製水、蒸留水等であり、研磨剤等の成分は含んでいない。なお、噴射された洗浄水は、移送路又は洗浄液回収経路等に設けられたろ過装置等によって異物を除去した後、再度、第1の噴射ノズル20又は第2の噴射ノズル25に移送されてもよい。
洗浄装置1は、第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25からの洗浄水の噴射を制御する制御装置(図示しない。)を備えている。この制御装置は、また、第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25の前記軸線方向への前後進及び垂直方向への前後進も制御する。このような制御手段は、コンピュータ等の自動制御でもよく、また、操作者による手動制御等でもよい。洗浄装置1は、支持部10、第1の噴射ノズル20、第2の噴射ノズル25、支持部10に固定された保持治具50が筐体(図示しない。)に収容されている。
この発明に係る保持治具の洗浄装置の別の一実施例である保持治具の洗浄装置2(以下、単に、洗浄装置2と称することがある。)は、図3に示されるように、第1の噴射ノズル21におけるノズル先端部32及び第2の噴射ノズル26におけるノズル先端部36が異なる以外は、前記洗浄装置1と基本的に同様に構成されている。すなわち、図3に示されるように、第1の噴射ノズル21は、八行に配列された保持孔68の配列間隔及び配列数と同じ配列間隔及び配列数で八行に配列されたノズル先端部32を備えている以外は前記第1の噴射ノズル20と基本的に同様に構成され、また、第2の噴射ノズル26は、八行に配列された保持孔68の配列間隔及び配列数と同じ配列間隔及び配列数で八行に配列されたノズル先端部36を備えている以外は前記第2の噴射ノズル25と基本的に同様に構成されている。そして、ノズル先端部32及びノズル先端部36に形成される噴射口(図示しない。)の口径は、特に制限されず、例えば、1.0mm程度である。このように、ノズル先端部32及びノズル先端部36が八行に配列された複数の保持孔68それぞれに対向するように配列されていると、高い洗浄効率を維持したまま、保持孔68それぞれに洗浄水をより確実に噴射して洗浄することができる。
この発明に係る保持治具の洗浄装置のまた別の一実施例である保持治具の洗浄装置3(以下、単に、洗浄装置3と称することがある。)は、図4(a)に示されるように、第1の噴射ノズル22におけるノズル先端部34及び第2の噴射ノズル27におけるノズル先端部38が異なる以外は、前記洗浄装置1と基本的に同様に構成されている。すなわち、図4(a)に示されるように、第1の噴射ノズル22は、一行に配列されたノズル先端部34を備えている以外は前記第1の噴射ノズル20と基本的に同様に構成され、また、第2の噴射ノズル26は、一行に配列されたノズル先端部38を備えている以外は前記第2の噴射ノズル25と基本的に同様に構成されている。このように、ノズル先端部34及びノズル先端部38が一行に配列されていると、保持治具50の一行に配列された保持孔68をより確実に洗浄することができる。
この発明に係る保持治具の洗浄装置のさらにまた別の一実施例である保持治具の洗浄装置4(以下、単に、洗浄装置4と称することがある。)は、ノズル先端部31及びノズル先端部35を囲繞するカバー39及びカバー40を備えている以外は、前記洗浄装置1と基本的に同様に構成されている。すなわち、図4(b)に示されるように、第1の噴射ノズル23は、ノズル先端部31を囲繞し、ノズル先端部31よりも長い円筒状のカバー39を備えている以外は前記第1の噴射ノズル20と基本的に同様に構成され、また、第2の噴射ノズル28は、ノズル先端部35を囲繞し、ノズル先端部35よりも長い円筒状のカバー40を備えている以外は前記第2の噴射ノズル25と基本的に同様に構成されている。このように、第1の噴射ノズル23及び第2の噴射ノズル28がノズル先端部31及びノズル先端部35を囲繞するカバー39及びカバー40を備えていると、ノズル先端部31及び35を保持治具50の弾性部材61に当接又は圧接したときに、カバー39及び40が弾性部材61に当接又は圧接し、弾性部材61とカバー39及び40とで形成される空間に洗浄水15が噴射され、その結果、噴射された洗浄水15は前記空間内に一旦充満して、均一な噴射圧で保持孔68内を流通する。したがって、洗浄装置4によれば、保持孔68の内表面のいかなる位置に異物が付着していても、この異物をより一層容易かつ速やかに除去することができる。
この発明に係る洗浄装置1〜4は、この発明に係る保持治具の洗浄方法を容易に実施することができる。したがって、この発明に係る洗浄装置によれば、保持治具の保持孔に複数の異物が付着していても、これらの異物を高い除去率で容易かつ速やかに除去することができる。
この発明に係る保持治具の洗浄装置は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、洗浄装置1〜4によれば、各ノズル先端部31、32、34、35、36、38は、上下方向に一行又は八行に配列されているが、この発明において、ノズル先端部は、上下方向に、二行に配列されても三行に配列されてもよく、また、保持治具における保持孔の配列数と同じ配列数に配列されてもよい。さらに、各ノズル先端部31、32、34、35、36、38は、一行に配列されたすべての保持孔68に一挙に洗浄水を噴射することができるような噴射口、又は、一行に配列された各保持孔68それぞれに洗浄水を噴射することができるような噴射口を有しているが、この発明において、ノズル先端部に設けられる噴射口の口径は洗浄水を一挙に噴射する保持孔の数等に応じて適宜調整することができる。
また、洗浄装置1〜4は、いずれも、各ノズル先端部31、32、34、35、36、38は、上下方向に一行又は八行に配列されているが、この発明において、ノズル先端部は、縦方向に一列又は二列以上に配列され、一列に配列されるすべての保持孔を洗浄可能に構成されてもよい。
さらに、洗浄装置1〜4は、いずれも、支持部10が固定され、各噴射ノズル20〜22及び25〜27がその軸線方向に前後進可能になっているが、この発明においては、各噴射ノズルが固定され、支持部が噴射ノズルの軸線方向に前後進可能になっていてもよく、また、各噴射ノズル及び支持部それぞれが前記軸線方向に前後進可能になっていてもよい。
また、洗浄装置1〜4は、各噴射ノズル20〜23及び25〜28が弾性部材61に当接又は圧接した状態で洗浄水15を噴射するが、この発明において、噴射ノズルは、噴射した洗浄水が保持孔内を流通することのできる間隔をあけた状態で洗浄水を噴射してもよい。前記間隔は、噴射ノズルに設けられた噴射口の口径、噴射角等に応じて適宜調整され、例えば、1.0〜5.0mmに調整される。
さらに、洗浄装置1〜4は、各噴射ノズル20〜23及び25〜28がその軸線方向に前後進可能になっているが、この発明において、噴射ノズルは、前記軸線方向に前後進可能であると共に、上下方向(垂直方向)に前後進可能になっていてもよい。
また、洗浄装置1〜4は、第1の噴射ノズル20〜23及び第2の噴射ノズル25〜27を備えているが、この発明においては、第1の噴射ノズルと第2の噴射ノズルとを備えている必要はなく、噴射ノズルに対向する面を保持治具における一方の表面と他方の表面とに適宜に設定することのできる回転可能な支持部と、第1の噴射ノズルとを備えていてもよい。
この発明に係る保持治具の洗浄方法は、保持孔における一方の開口部から他方の開口部へと洗浄水を保持孔内に噴射する第1の工程と、保持孔における他方の開口部から一方の開口部へと洗浄水を保持孔内に噴射する第2の工程とを実施することを特徴の1つとする。この特徴を有する、この発明に係る保持治具の洗浄方法の一実施例(以下、この発明に係る洗浄方法と称する。)を、洗浄装置1を用いて、説明する。
この発明に係る洗浄方法を実施するには、図5(a)に示されるように、第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25の間の下方に設置された支持部10に洗浄すべき保持治具50を支持固定する。洗浄装置1においては、図5(a)及び図5(b)に示されるように、保持治具50における保持孔68の軸線Chが略水平となるように、保持治具50を略垂直な起立状態に支持固定する。この保持治具50は、保持孔68の内表面に異物69例えば研磨カスが付着している。異物69は、保持孔68の内表面に付着することのできるサイズであれば特に限定されず、例えば、0.005〜0.3mm程度のサイズを有している。特に、保持孔68が小径化されている場合に付着する異物69のサイズは、0.005〜0.05mm程度である。
次いで、第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25それぞれは、垂直方向(図5において上下方向)に移動され、図5(b)に示されるように、ノズル先端部31の軸線Cn及びノズル先端部35の軸線Cnが保持孔68の軸線Chと略並行となり、洗浄予定の保持孔68に洗浄水が噴射される位置に配置される。
次いで、図6に示されるように、第1の噴射ノズル20が保持孔68の軸線方向であって保持治具50に近接する方向に前進され、ノズル先端部31が保持治具50の弾性部材61に当接又は圧接される。この状態を維持したまま、第1の工程が実施され、保持孔68における一方の開口部52から他方の開口部54へと第1の噴射ノズル20から洗浄水15が前記噴射圧で噴射される。そうすると、図6に示されるように、洗浄水15は異物69をその噴射圧で第2の噴射ノズル25に向かって押し流しながら保持孔68を流通し、第2の噴射ノズル25に向かって保持孔68から放出される。洗浄水15を噴射する時間は異物69を押し流すことができる時間であればよく、噴射圧等に応じて適宜調整される。例えば、第1の噴射ノズル20からの洗浄水15の噴射時間は、1回の噴射につき0.5秒以上であるのがよく、その上限は特に制限されないが、洗浄効率を考慮すれば、例えば、10秒程度である。このようにして、噴射された洗浄水15の噴射圧で保持孔68の内表面に付着した異物69を押し流すことができ、理想的には除去することができる。
この発明に係る洗浄方法においては、次いで、図7に示されるように、第1の噴射ノズル20が保持孔68の軸線方向であって保持治具50から離れる方向に後進し、初期位置に復帰すると共に、第2の噴射ノズル25が保持孔68の軸線方向であって保持治具50に近接する方向に前進し、ノズル先端部35が保持治具50の弾性部材61に当接又は圧接される。この状態を維持したまま、第2の工程が実施され、保持孔68における他方の開口部54から一方の開口部52へと第2の噴射ノズル25から洗浄水15が前記噴射圧で噴射される。そうすると、図7に示されるように、洗浄水15は保持孔68内に残存する異物69を今度はその噴射圧で第1の噴射ノズル20に向かって逆方向に押し流しながら保持孔68を流通し、第1の噴射ノズル20に向かって保持孔68から放出される。洗浄水15を噴射する時間は前記第1の噴射ノズル20と同じ時間に調整されるのがよい。このようにして、噴射された洗浄水15の噴射圧で保持孔68の内表面に付着した異物69を逆方向に押し流すことができ、場合によっては除去することができる。
この発明に係る洗浄方法においては、所望により、第2の噴射ノズル25が初期位置に復帰すると共に、第1の噴射ノズル20が保持治具50に近接する方向に前進し、ノズル先端部31が保持治具50の弾性部材61に当接又は圧接する(図6参照。)。この状態を維持したまま、前記と同様にして、第1の工程が実施される。
この発明に係る洗浄方法においては、所望により、第1の噴射ノズル20が初期位置に復帰すると共に、第2の噴射ノズル25が保持治具50に近接する方向に前進し、ノズル先端部35が保持治具50の弾性部材61に当接又は圧接する(図7参照。)。この状態を維持したまま、第2の工程が実施される。
この発明に係る洗浄方法においては、このように、第1の工程と第2の工程とが交互に繰り返し実施され、第1の噴射ノズル20と第2の噴射ノズル25とから、交互に、かつ、逆方向に、保持孔68に向けて、繰り返し、洗浄水15を噴射する。第1の工程及び第2の工程を実施する回数は、異物69の付着力、保持孔68の直径等に応じて適宜設定することができ、例えば、1回の第1の工程と1回の第2の工程とを1サイクルとして2〜50サイクルの範囲から選択される。もちろん、保持孔68が小径化されている場合、異物69が強固に保持孔68の内表面に付着している場合、多数の異物69が保持孔68の内表面に付着している場合等においては、洗浄水15の噴射回数は前記サイクル数よりも多く設定することができる。
この発明に係る洗浄方法においては、このように、第1の工程と第2の工程とが交互に繰り返し実施され、互いに逆方向に、所望により繰り返して、噴射された洗浄水15を保持孔68に流通させること、換言すると、洗浄水15を互いに逆方向に間欠的に、所望により繰り返して、噴射することによって、保持孔68の内表面に付着した異物69を逆方向に交互に押し流して、異物69と前記内表面との付着力を徐々に弱めていき、保持孔68を流通する洗浄水15の噴射圧で除去することができる。
この発明に係る洗浄方法においては、次いで、前記のようにして洗浄が終了した保持孔68の行と異なる行に配列されている保持孔68の軸線Chとノズル先端部31の軸線Cn及びノズル先端部35の軸線Cnが略並行となり、洗浄予定の保持孔68に洗浄水が噴射される位置に、第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25それぞれを、垂直方向(図5において上下方向)に移動し、配置する。そして、前記のようにして、八行に配列されたすべての保持孔68を洗浄する。
この発明に係る洗浄方法においては、異なる行に配列された保持孔68を順次洗浄し、すべての行に配列された保持孔68の洗浄を行う。このようにして、保持治具50における弾性部材61に形成されたすべての保持孔68を洗浄することができる。
この発明に係る洗浄方法においては、所望により、洗浄水15で保持孔68を洗浄した後に、保持治具50を乾燥することができる。保持治具50の乾燥方法は、加熱乾燥法、送風乾燥法、自然乾燥法等の公知の乾燥方法を特に制限されることなく選択することができる。
この発明に係る洗浄方法によれば、第1の工程と第2の工程とを所望により繰り返して実施することによって、すなわち、噴射された洗浄水15を、互いに逆方向に所望により繰り返して保持孔68に流通させることによって、保持孔68を流通する洗浄水15の噴射圧で保持孔68内の異物69を除去することができる。また、この発明に係る洗浄方法によれば、第1の噴射ノズル20と第2の噴射ノズル25とから噴射される洗浄水15は水であり、研磨材等の成分を含んでいないから、洗浄後の保持治具50特に保持孔68には洗浄水に由来する付着物(例えば研磨剤及びその乾燥物等)が存在することはない。それ故、被保持物の製造においてこれらの付着物による悪影響をなくすことができる。
すなわち、この発明に係る洗浄方法によれば、保持孔68の内表面に強大な付着力で付着した異物69であっても、また、保持治具50に形成された保持孔68がたとえ小径化されていても、その内表面に付着した異物69を高い除去率で比較的短時間で容易かつ速やかに除去することができると共に、洗浄水15に由来する付着物が洗浄後の保持孔68内に存在することはない。
また、この発明に係る洗浄方法に用いる洗浄水15は前記したように水であるから、洗浄水15を廃棄する際に特別な処理等をする必要はない。なお、洗浄水15が保持孔68から除去した異物69を多量に含んでいても、固液分離するだけで多量の異物69を容易に洗浄水15から除去することができる。したがって、この発明に係る洗浄方法によれば、洗浄水を容易かつ低コストで廃棄処分することができる。
さらに、この発明に係る洗浄方法は、八行に配列された保持孔68に一挙に洗浄水を噴射することのできる洗浄装置1を用いているから、保持治具50の多数の保持孔68を短時間で洗浄することができる。
なお、この発明に係る洗浄方法によれば、洗浄装置1に代えて洗浄装置2〜4を用いても、同様の効果が得られる。
この発明に係る保持治具の洗浄方法は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、前記洗浄方法では、第1の工程と第2の工程とを交互に実施しているが、この発明においては、第1の工程と第2の工程とをそれぞれ少なくとも1回ずつ実施すればよく、第1の工程を連続して繰り返し実施することもできるし、第2の工程を連続して繰り返し実施することもできる。例えば、第1の工程を2回以上繰り返して実施した後に、第2の工程を少なくとも1回実施してもよく、実施される第1の工程及び第2の工程の順序及び回数は任意に設定することができる。
また、前記洗浄方法では、八行に配列された保持孔68について、第1の工程及び第2の工程を実施しているが、この発明においては、保持治具に形成されたすべての保持孔について第1の工程を実施した後に、保持治具に形成されたすべての保持孔について第2の工程を実施してもよい。さらに、この発明においては、特定の行に配列された保持孔について第1の工程を実施し、これと同時に、他の行に配列された保持孔について第2の工程を実施してもよい。
さらに、前記洗浄方法では、保持孔68は八行毎に洗浄されているが、この発明において、一度に洗浄される保持孔の行は一行であっても複数行であってもよい。一度に洗浄される保持孔の行は、保持治具が有する保持孔の数、洗浄装置の大型化、洗浄水の噴射圧等に応じて適宜に調整される。また、この発明において、一度に洗浄される保持孔は、一列に配列された複数の保持孔であってもよく、一度に洗浄される保持孔の列は一列又は複数列であってもよい。
また、前記洗浄方法では、第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25をそれらの軸線方向に前後進させているが、この発明においては、支持部を噴射ノズルの軸線方向に前後進させてもよく、また、噴射ノズル及び支持部それぞれを前記軸線方向に前後進させてもよい。
さらに、前記洗浄方法では、第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25を弾性部材61に当接又は圧接させた状態で洗浄水15を噴射しているが、この発明において、第1の噴射ノズル及び第2の噴射ノズルは、噴射した洗浄水が保持孔内を流通することのできる間隔をあけた状態で洗浄水を噴射してもよい。前記間隔は前記した通りである。
前記洗浄方法では、保持孔68の洗浄と保持治具50の乾燥を実施しているが、この発明においては、前記洗浄及び前記乾燥に加えて、他の操作、例えば、弾性部材の表面に付着した付着物の除去処理等の前処理を実施してもよい。
(保持治具Iの製造)
厚さ9mmのアルミ合金(A7075)を、縦180mm、横280mmの長方形を成す板に切り出した。切り出された板の周辺部を幅約10mmの鍔部66とし、鍔部66で囲繞される領域を、厚さが6mmとなるように、切削して、縦約160mm、横約260mmの平担部111を形成した。また、この平担部111に、直径1.6mmの円形を成す貫通孔67を縦75列及び横124行のパターンで穿孔した。このようにして、補強部材60を作製した。
次いで、保持孔68に対応する成形ピンを備えた金型を準備し、この金型に作製した補強部材60を収納した。金型と補強部材60とで形成された間隙に、金型に設けられた注入口からシリコーンゴム(信越化学工業株式会社製、商品名「KE−1950−50」)を注入して、120℃で、10分間加熱し、補強部材60とシリコーンゴムとを一体成形した。このようにして、縦75列及び横124行に配列された、直径0.8mmの円形を成す保持孔68を有する弾性部材61を成形した(保持孔68は縦約160mm、横約260mmの領域に等間隔で形成されている。)。次いで、この弾性部材61を研磨して、保持治具Iを製造した。この保持治具Iにおける保持孔68は、その内表面に保持孔1個あたり平均30個の研磨カスが付着していた。
(保持治具IIの製造)
直径0.45mmの円形を成す保持孔68を形成した以外は、前記保持治具Iと同様にして、保持治具IIを製造した。この保持治具IIにおける保持孔68は、その内表面に保持孔1個あたり平均30個の研磨カスが付着していた。
(実施例1)
図1に示される洗浄装置1を準備した。第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25として、ノズル先端部31(噴射口の口径17×150(mm)、噴射口の噴射角90°)を有する噴射ノズルをそれぞれ準備した。また、第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25に供給される洗浄水15を加圧する加圧機構として、圧縮ポンプ(商品名「立形多段うず巻きポンプCRN」、グランドフォス株式会社製、最大圧縮圧4.5MPa)を採用した。図示しない洗浄水貯留槽と第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25それぞれとを接続し、洗浄水15を移送する移送路が設けられている。第1の噴射ノズル20、第2の噴射ノズル25、移送路、洗浄水貯留槽、支持部10を筐体内の所定の位置に固定して、図1に示される洗浄装置1を製造した。
次いで、図5に示されるように、前記支持部10に前記保持治具Iを挟持して、保持治具Iの縦方向(短辺方向)が水平となるように、保持治具Iを垂直な起立状態に支持し、ノズル先端部31の軸線Cnと、ノズル先端部35の軸線Cnと、保持治具Iにおける横方向(長辺方向)の最上行(1行目)〜8行に配列された保持孔68の軸線Chとが並行となり、前記最上行(1行目)〜8行に配列されたすべての保持孔68に洗浄水が噴射される位置に、第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25を配置した。
次いで、図6に示されるように、第1の噴射ノズル20のノズル先端部31を弾性部材61に圧接(圧接圧力約0.4MPa)し、第1の噴射ノズル20から洗浄水15を噴射圧2.5MPaで1秒間にわたって噴射した。この後、図7に示されるように、第1の噴射ノズル20を初期位置に復帰させ、第2の噴射ノズル25のノズル先端部35を弾性部材61に圧接(圧接圧力約0.4MPa)し、第2の噴射ノズル25から洗浄水15を噴射圧2.5MPaで1秒間にわたって噴射した。このような、第1の噴射ノズル20及び第2の噴射ノズル25からの洗浄水15の交互噴射サイクルを30サイクル繰り返して実施した。
次いで、洗浄した最下行(8行目)の直下行(保持治具Iにおける横方向9行目)〜16行に配列された保持孔68を、同様にして、洗浄し、引き続き同様して、洗浄した最下行の直下行から8行目までに配列された保持孔68を順次洗浄した。このようにして、最下行(保持治具Iにおける横方向124行目)に配列された保持孔68まで洗浄した。この後、エアーガンを用いて、23℃の空気を0.5MPaで3分にわたって、保持治具Iに送風し、保持治具Iを乾燥した。実施例1において、保持治具Iの洗浄及び乾燥工程に合計22分を要した。
(実施例2)
保持治具Iに代えて保持治具IIを用いた以外は、実施例1と同様にして、保持治具IIを洗浄した。実施例2において、保持治具IIの洗浄及び乾燥工程に合計22分を要した。
(比較例1)
特許文献1に記載の保持プレートの保持孔洗浄方法に従って前記保持治具Iを洗浄した。研磨剤として、ジルコニアビーズ(商品名「ジルコンビーズ FZA120」、不二製作所株式会社製、粒径(ふるい分け法)63〜125μm)を用い、このジルコニアビーズの5質量%濃度の混合水を、圧力0.3MPaで20分にわたってすべての保持孔68に通過させた。この後に、すべての保持孔68に水を6分間にわたって通過させ、次いで、エアーガンを用いて、23℃の空気を0.5MPaで3分にわたって、保持治具Iに送風した。最後に、倍率10倍のルーペで、各保持孔内部を確認し、保持孔内部に付着している異物をブラシで取り除いた(仕上げ工程)。この作業に20分を要し、保持治具Iの洗浄、乾燥工程及び仕上げ工程に合計49分を要した。
(比較例2)
保持治具Iに代えて保持治具IIを用いた以外は、比較例1と同様にして、保持治具IIを洗浄した。比較例2において、保持治具IIの洗浄、乾燥工程及び仕上げ工程に合計49分を要した。
実施例1及び2並びに比較例1及び2で洗浄した各保持治具I及び各保持治具IIにおける保持孔68を顕微鏡で観察し、各保持孔68の内表面における研磨カスの有無、及び、各保持孔68の内表面に残存する研磨カス等の数を数えた。評価対象の保持孔は、保持治具I及び保持治具IIにおける横1行目の全保持孔、横60行目の全保持孔、横124行目の全保持孔とした。評価は、保持孔の内表面に研磨カスが残存していない場合を「洗浄レベル0」、保持孔の内表面に1個又は2個の研磨カスが残存していた場合を「洗浄レベルA」、保持孔の内表面に3個又は4個の研磨カスが残存していた場合を「洗浄レベルB」、保持孔の内表面に5個以上の研磨カスが残存していた場合を「洗浄レベルC」とし、評価対象とした保持孔全数に対する前記評価レベルとしてカウントされた保持孔数の割合(%)を算出した。その結果を下記表に示す。