JP2009133205A - 内燃機関の排気装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】排気浄化性能を向上することができる内燃機関の排気装置を提供する。
【解決手段】内燃機関100から排出される排気ガスを浄化する触媒41bを有する浄化手段4が設けられた排気通路3と、排気ガスの排気方向に対して浄化手段4より上流側に触媒41bの浄化能力を回復させるための添加剤を添加する添加手段6と、排気ガスの排気方向に対して浄化手段4より上流側の排気ガスの温度を検出する温度検出手段8と、温度検出手段8により検出した排気ガスの温度が予め設定される所定温度以下である場合に、添加手段6による添加剤の添加と対応させて該添加剤の添加前に排気方向に対して浄化手段4より上流側に燃料をポスト噴射する噴射手段135を備えることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、内燃機関の排気装置に関し、特に、排気通路において触媒より上流に添加弁が設けられる内燃機関の排気装置に関するものである。
従来、ディーゼル式の内燃機関は、一般的に、気筒から排出された排気ガス中の窒素酸化物(NOx)などの有害成分や粒子状物質(PM:Particulate Matter)を処理する触媒などの浄化装置を有する排気装置が設けられたものがある。浄化装置は、例えば、NOxなどの排気ガス中の有害成分を触媒反応により浄化する排気浄化触媒や、排気ガス中のPMを捕集するパティキュレートフィルタ等を有して構成される。
排気浄化触媒には、例えば、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を吸蔵し、窒素に還元するNOx吸蔵還元型触媒等がある。NOx吸蔵還元型触媒は、還元剤としての炭化水素が供給されることで、吸蔵された窒素酸化物が炭化水素と反応して窒素に還元される。一方、パティキュレートフィルタは、例えば、PMを捕集し、捕集したPMを燃焼させて二酸化炭素として放出することでフィルタを再生するディーゼル・パティキュレート・フィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)等がある。パティキュレートフィルタが捕集したPMを燃焼させる方法としては、電気ヒータによりフィルタを加熱する方法や、フィルタを流れる排気ガスの温度を上昇させる方法があり、排気ガスの温度を上昇させるには、酸素を多く含んだ排気ガス中に燃料となる炭化水素を添加して昇温させる方法がある。
このように、排気浄化触媒を備えたディーゼル式の内燃機関においては、いわゆるリッチスパイクなど、還元剤としての炭化水素を供給するため、排気浄化触媒に向けて流れる排気ガス中に燃料などの添加剤を添加することがある。一方、パティキュレートフィルタを備えたディーゼル式の内燃機関においては、排気ガスの温度を上昇させてフィルタを再生するために、パティキュレートフィルタに向けて流れる排気ガス中に燃料などの添加剤を添加することがある。 そして、排気ガス中に燃料などの添加剤を添加するため、ディーゼル式の内燃機関においては、気筒内に燃料を供給する燃料噴射装置とは別に、排気通路のうち排気浄化触媒やパティキュレートフィルタなどの浄化装置より上流側において添加剤を添加する排気添加弁が設けられたものがある。また、例えば、特許文献1に記載されている排気浄化装置のように、燃料噴射装置によりメイン噴射に続いて圧縮上死点より遅い非着火のタイミングでポスト噴射を行うことで、添加剤を設けずに排気ガス中に未燃の燃料を添加するものもある。
特開2005−2925号公報
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている排気浄化装置では、例えば、添加剤としての燃料を添加する際に排気ガス温度が低いと添加された添加剤が十分に熱分解されずに、より重質、かつ、ノルマルパラフィン成分の多い還元剤として供給され、このため、例えば、NOx吸蔵還元型触媒に吸蔵された窒素酸化物を十分に窒素に還元できないおそれがあり、この結果、十分な浄化性能を発揮することができないおそれがあった。
そこで本発明は、排気浄化性能を向上することができる内燃機関の排気装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明による内燃機関の排気装置は、内燃機関から排出される排気ガスを浄化する触媒を有する浄化手段が設けられた排気通路と、前記排気ガスの排気方向に対して前記浄化手段より上流側に前記触媒の浄化能力を回復させるための添加剤を添加する添加手段と、前記排気方向に対して前記浄化手段より上流側の前記排気ガスの温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段により検出した前記排気ガスの温度が予め設定される所定温度以下である場合に、前記添加手段による前記添加剤の添加と対応させて該添加剤の添加前に前記排気方向に対して前記浄化手段より上流側に燃料をポスト噴射する噴射手段を備えることを特徴とする。
請求項2に係る発明による内燃機関の排気装置では、前記所定温度は、前記触媒の活性化温度より高温のオレフィン生成温度に応じて設定されることを特徴とする。
請求項3に係る発明による内燃機関の排気装置では、前記噴射手段は、前記内燃機関の出力を発生させるための主たる燃料の噴射であるメイン噴射と前記ポスト噴射とにより前記燃料を噴射可能であることを特徴とする。
請求項4に係る発明による内燃機関の排気装置では、前記温度検出手段により検出された前記排気ガスの温度に基づいて、前記噴射手段による前記燃料のポスト噴射量を設定するポスト噴射量設定手段を備え、前記ポスト噴射量設定手段は、前記排気ガスの温度が低温側での前記ポスト噴射量を高温側での前記ポスト噴射量より多く設定することを特徴とする。
請求項5に係る発明による内燃機関の排気装置では、前記温度検出手段により検出された前記排気ガスの温度に基づいて、前記噴射手段による前記燃料のポスト噴射時期を設定するポスト噴射時期設定手段を備え、前記ポスト噴射時期設定手段は、前記排気ガスの温度が低温側での前記ポスト噴射時期を高温側での前記ポスト噴射時期より早い時期に設定することを特徴とする。
請求項6に係る発明による内燃機関の排気装置では、前記ポスト噴射時期設定手段は、前記内燃機関のピストンが上死点に位置する時期以降で前記添加手段による前記添加剤の添加時期以前の時期に前記ポスト噴射時期を設定することを特徴とする。
請求項7に係る発明による内燃機関の排気装置では、前記排気方向に対して前記浄化手段の上流側にタービンを有する過給手段を備え、前記温度検出手段は、前記タービンと前記浄化手段との間の前記排気ガスの温度を検出することを特徴とする。
請求項8に係る発明による内燃機関の排気装置では、前記浄化手段は、前記排気ガス中の窒素酸化物を吸蔵し、窒素に還元する窒素酸化物吸蔵還元型触媒を有することを特徴とする。
本発明に係る内燃機関の排気装置によれば、排気ガスの温度が予め設定される所定温度以下である場合に、添加手段による添加剤の添加と対応させて、この添加剤の添加前に浄化手段より上流側に噴射手段によって燃料をポスト噴射することから、燃料中のオレフィン成分の生成が促進され、添加剤添加時のNOx還元性能を向上することができるので、排気浄化性能を向上することができる。
以下に、本発明に係る内燃機関の排気装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本発明の実施例に係る内燃機関の排気装置が適用されたエンジンを示す概略構成図、図2は、本発明の実施例に係る内燃機関の排気装置における排気ガス温度と添加剤添加量、ポスト噴射量及びポスト噴射時期との関係を示す線図、図3は、本発明の実施例に係る内燃機関の排気装置のオレフィン生成制御を説明するフロー図、図4は、本発明の実施例に係る内燃機関の排気装置と比較例に係る内燃機関の排気装置とのオレフィン生成割合を比較する線図である。
図1に示すように、排気装置1は、排気ガスを浄化する触媒を有する浄化手段としての浄化装置4が設けられた排気通路3と、浄化装置4の浄化能力を回復させるための添加剤を添加する添加手段としての添加弁6とを備える。本実施例では、本発明に係る内燃機関の排気装置1を内燃機関としてのエンジン100に適用して説明する。このエンジン100は、乗用車、トラックなどの車両に搭載されるディーゼルエンジン100(以下、特に断りのない限り「エンジン100」と略記する。)である。 そして、このエンジン100の排気装置1は、上述した排気通路3と、浄化装置4と、添加弁6とを備え、さらに、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit、以下、特に断りのない限り「ECU5」と略記する。)5を備える。
エンジン100は、コモンレール式直列四気筒型ディーゼルエンジンとされており、基本的には、吸気系から供給される空気と燃料供給系から噴射される燃料とを適宜の空燃比で混合し、この空気と燃料との混合気を燃焼室102にて燃焼させた後、複数の燃焼室102内の排気ガスを排気系から大気放出させるようになっている。
エンジン100の吸気系は、複数の吸気ポート103に接続される吸気マニホールド121と、吸気マニホールド121に接続される吸気管122とを有する吸気通路120からなる。複数の吸気ポート103は、シリンダヘッド101に形成され複数の燃焼室102にそれぞれ開口する。吸気通路120の吸気管122には、吸気方向の上流側から順にエアクリーナ123、エアフローメータ124、スロットルバルブ125が配置される。エアフローメータ124は、エアクリーナ123を介して吸気管122に流入する空気量に応じた電気信号を出力する。
エンジン100の燃料供給系は、燃料供給路131に、燃料供給方向の上流側から順に燃料タンク132、サプライポンプ133、コモンレール134、複数のインジェクタ135が配置される。複数のインジェクタ135は、高圧燃料を蓄圧するコモンレール134に接続されている。コモンレール134は、サプライポンプ133に接続されている。サプライポンプ133は、燃料タンク132内の燃料を吸入するとともにコモンレール134に高圧燃料を供給する。燃料タンク132内の燃料は、サプライポンプ133により吸い出されて高圧燃料としてコモンレール134に供給され、コモンレール134からインジェクタ135を経て燃焼室102に噴射される。サプライポンプ133は、エンジン100の図示しないクランクシャフトによって駆動される。
エンジン100の排気系は、複数の排気ポート2に接続される排気マニホールド31と、排気マニホールド31に接続される排気管32とを有する排気通路3からなる。複数の排気ポート2は、シリンダヘッド101に形成され複数の燃焼室102にそれぞれ開口する。排気通路3の排気管32には、浄化装置4が設けられている。この浄化装置4については、後述で詳細に説明する。
また、このエンジン100は、さらに、過給手段としてのターボチャージャ104、インタークーラ105、排気再循環装置としてのEGR装置106を備えている。
ターボチャージャ104は、排気ガスを利用して吸入空気を昇圧するものであり、コンプレッサ104aとタービン104bを備えている。コンプレッサ104aは、吸気管122におけるエアフローメータ124の下流に配置されており、タービン104bは、排気マニホールド31の集合部と排気管32との間に配置されている。
インタークーラ105は、ターボチャージャ104のコンプレッサ104aで昇圧した吸入空気を冷却するものであり、ターボチャージャ104のコンプレッサ104aとスロットルバルブ125との間に配置されている。
EGR装置106は、排気の一部(EGRガス)を吸気系に戻して燃焼室102へ再度供給することによりNOxを低減させるものである。EGR装置106は、EGR通路106aを備え、このEGR通路106aに、その上流からEGR触媒コンバータ106b、EGRクーラ106c、EGRバルブ106dが配置されている。
EGR通路106aは、排気系から吸気系へ燃焼室102をバイパスして連接するバイパス通路からなる。EGR触媒コンバータ106bは、EGR通路106aに流入した排気ガスに含まれる未燃焼ガスを除去してEGRクーラ106cの詰まりを防止するものである。EGRクーラ106cは、例えばEGRガスとエンジン100の冷却液との間で熱交換を行うことによりEGRガスの温度を下げる熱交換器からなる。EGRバルブ106dは、EGR通路106a内を排気系側から吸気系側に流れる排気ガスの量を制御するものである。
浄化装置4は、排気通路3を構成する排気管32に設けられており、エンジン100から排気ポート2に排出される排気ガスを浄化するものである。浄化装置4は、排気ガスの排気方向に対してタービン104bの下流側に設けられる。
浄化装置4は、NOx浄化装置41と、粒子状物質捕集装置(以下、「PM捕集装置」という。)42とを有する。NOx浄化装置41とPM捕集装置42とは、排気通路3における排気ガスの排気方向に対してNOx浄化装置41が上流側、PM捕集装置42が下流側に設けられている。
NOx浄化装置41は、ケーシング41aの中に排気ガス中のNOxを浄化する窒素酸化物吸蔵還元型触媒としてのNOx浄化用触媒41bが収容されている。NOx浄化用触媒41bは、排気ガス中の窒素酸化物を吸蔵し、窒素に還元する。NOx浄化用触媒41bは、排気空燃比がリーンのときに排気ガス中のNOxを吸蔵し、排気ガス中の排気空燃比がリッチのときに添加される還元剤としてのHC、CO等により吸蔵されたNOxを還元・放出するものである。 NOx浄化用触媒41bとして、具体的には、NSR(NOx Storage Reduction)やDPNR(Diesel Particulate−NOx Reduction System)が知られている。NSRとは、リーン運転モードでの運転中にNOxを硝酸塩の形で触媒中に吸蔵し、その硝酸塩を酸素濃度の低下した還元雰囲気でNに還元するNOx吸蔵還元型触媒のことである。また、DPNRとは、粒子状物質(PM)とNOxを同時に連続して浄化させることが可能なシステムのことであり、例えば、PM捕集装置であるDPF(Diesel Particulate Filter)にNOx吸蔵還元型触媒を担持させたものである。本実施例においては、NOx浄化用触媒41bとして、NOx吸蔵還元型触媒(NSR)を適用する。
PM捕集装置42は、ケーシング42aの中に排気ガス中の粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集するパティキュレートフィルタとしてのPMフィルタ42bが収容されている。PMフィルタ42bとして、例えば、上述のDPFがある。PMフィルタ42bは、捕集したPMを燃焼させて二酸化炭素として放出することでフィルタを再生する。本実施例においては、PMフィルタ42bとして、DPFを適用する。
ここでは、エンジン100は、PM捕集装置42をNOX浄化装置41よりも排気ガス流動方向下流に配置することで、NOx浄化用触媒41bにおいてNOxを吸蔵し、排気ガス中のPM等をPMフィルタ42bで捕集し、排気している。また、NOx浄化用触媒41bやPMフィルタ42bが活性状態にあるか否かについては、その夫々の触媒床温、フィルタ床温を検出することで判断してもよい。また、NOx浄化装置41の下流側に排気ガス中の有害成分を浄化する排気浄化用触媒として排気ガスを浄化する酸化触媒が収容されている酸化触媒装置を備えるようにしてもよい。
添加弁6は、排気ガスの排気方向に対して浄化装置4より上流側にNOx浄化用触媒41b、PMフィルタ42bの浄化能力を回復させるための添加剤を添加するものである。添加弁6は、排気通路3のうち排気マニホールド31に設けられている。この添加弁6は、エンジン100の排気系に添加剤(例えばディーゼルエンジン用燃料である軽油)を供給することにより、浄化装置4の浄化能力を回復させる。添加弁6は、排気マニホールド31の排気管32側の集合部分へ向けて添加剤を供給するように排気マニホールド31に取り付けられる。
この添加弁6は、排気ポート2にそれぞれ連通する排気マニホールド31の4つの集合通路部のうち図1中の左端に位置する集合通路部に配置されている一方、4つの集合通路部のうち図1中の右端に位置する集合通路部に上述したEGR装置106のEGR通路106aが設けられている。つまり、添加弁6は、EGR装置106において、排気通路3内の排気ガスを再循環させるEGR通路106aから最も離れた位置に配置される。また、添加弁6は、添加剤供給路7を介してサプライポンプ133に接続され、低圧用のインジェクタが用いられる。なお、この添加弁6、添加剤供給路7、サプライポンプ133、ECU5は、添加剤供給装置を構成しており、この添加剤供給装置による添加剤の供給タイミングや供給量は、ECU5により制御される。
さらに、エンジン100の排気装置1は、排気ガスの温度を検出する温度検出手段としての排気温度センサ8を備える。排気温度センサ8は、添加弁6と浄化装置4との間の排気ガスの温度を検出する。具体的には、排気温度センサ8は、排気管32においてタービン104bと浄化装置4との間に設けられ、このタービン104bと浄化装置4との間の排気ガスの温度を検出する。これにより、エンジン100は、排気温度センサ8によりタービン104bと浄化装置4との間の排気ガスの温度を検出することから、排気通路3において浄化装置4より上流側で排気ガス温度が相対的に低くなる位置の排気ガス温度を検出することができる。
上記のように構成されるエンジン100の排気装置1は、通常、ディーゼルエンジンの場合、ストイキ(理論空燃比)よりもリーン域で燃焼を行うので、排気ガス中のNOxは浄化装置4をなすNOx浄化装置41のNOx浄化用触媒41bに吸収され、浄化装置4からのNOx排出量は極めて少なくなる。しかしながら、エンジン100の運転時間の累積に伴い、浄化装置4によるNOx吸収能力が飽和する。そこで、ECU5は、エンジン100の運転累積時間や運転状態の履歴情報に基づいてNOx浄化装置41のNOx浄化用触媒41bが吸収していたNOx量を推定し、その推定NOx量が予め設定しておいた所定値(浄化装置4のNOx吸収能力が飽和する前の適宜値)を越えたときに、排気ガス中に添加弁6から所定時間だけ所定量の添加剤を噴射させるようにする。つまり、いわゆるリッチスパイクなど、還元剤としての炭化水素を供給するために、浄化装置4に向けて流れる排気ガス中に添加弁6から添加剤を添加する。この添加弁6から噴射される添加剤としての燃料(軽油)は、排気ポート2から排出される排気ガスとともに排気マニホールド31の集合部へ向かい、ターボチャージャ104のタービン104bによってさらに霧状とされる。この霧状の燃料は、浄化装置4の上流側にて高温の排気ガス中で熱分解されて、多量の炭化水素を生成するとともに、排気ガス中の酸素濃度を低下させるので、NOx浄化装置41のNOx浄化用触媒41bに吸収されていたNOxを放出させ、Nに還元する。これにより、浄化装置4の浄化能力を回復することができる。
また、PM捕集装置42のPMフィルタ42bは、添加弁6から添加剤が噴射されることで、PMフィルタ42bの上流側にて、排気ガス中でこの添加剤が熱分解されて多量の炭化水素が生成されるので、この炭化水素がPM捕集装置42内で反応して、その反応熱により排気ガス温度やPMフィルタ42bの温度が上昇する。これにより、PM捕集装置42内のPMフィルタ42bに既に捕捉されているPMが焼却されることになり、浄化装置4の浄化能力を回復することができる。
なお、ECU5は、図示していないアクセル開度センサの出力信号(スロットルバルブ125の開度に比例した出力電圧)に基づいてエンジン100の負荷を演算し、また、図示していないクランク角センサ(クランクシャフトが一定角度回転する毎にパルスを出力するもの)からの出力パルスに基づいてエンジン100の回転数を演算し、これら負荷と回転数によってエンジン100の運転状態を判別する。
具体的には、排気管32において浄化装置4の上流側には、上述したように、排気温度センサ8が設けられており、この排気温度センサ8は、浄化装置4に流入する排気ガスの温度に対応した電気信号をECU5に出力する。ECU5は、排気温度センサ8からの出力に基づき、浄化装置4の上流の雰囲気温度を認識し、浄化装置4の触媒床温度を推定することにより、浄化装置4が所期の浄化能力を発揮するか否かを判断する。
一般的に、エンジン100の冷間運転、始動運転あるいは低速低負荷運転等のように、燃焼室102の温度および排気ガス温度が低い運転条件になると、浄化装置4の触媒床温度およびその上流の雰囲気温度は低くなるので、浄化装置4の浄化能力が低下する傾向となる。ここで、ECU5は、排気温度センサ8の出力に基づき、浄化装置4の触媒床温度が所定の基準値よりも低いと判断すると、添加弁6を動作させることにより添加剤供給路7を通じて供給されるサプライポンプ133内の高圧燃料を排気マニホールド31内に噴射させる。そして、上述したように、この添加弁6から噴射される添加剤としての燃料は、排気ポート2から排出される排気ガスとともに排気マニホールド31の集合部へ向かい、ターボチャージャ104のタービン104bによってさらに霧状とされる。この霧状の燃料は、浄化装置4の上流側にて高温の排気ガス中で熱分解されて、多量の炭化水素を生成するので、この炭化水素が浄化装置4内で反応され、その反応熱で浄化装置4が昇温されるようになる。これにより、浄化装置4の浄化能力が向上することになる。
このとき、添加弁6は、排気マニホールド31にて、排気マニホールド31内の排気ガスを再循環させるEGR通路106aから最も離れた位置に配置されることから、添加弁6から添加された添加剤がEGR装置106によってエンジン100の吸気系へ回り込むことを抑制または防止できるので、添加剤を浄化装置4の浄化能力回復に有効利用できるようになる。また、添加弁6は、ターボチャージャ104のタービン104bよりも上流に配置されることから、排気通路3に添加された添加剤が、ターボチャージャ104のタービン104bによる攪拌作用などによって霧状にされやすくなり微粒化が促進される。
ところで、上記のようなエンジン100の排気装置1は、例えば、添加弁6により添加剤としての燃料を添加する際に排気ガス温度が低いと添加された添加剤が十分に熱分解されずに、より重質、かつ、ノルマルパラフィン成分の多い還元剤として供給されるおそれがある。このため、添加剤が十分に熱分解されずに、より重質、かつ、ノルマルパラフィン成分の多い還元剤として供給されると、例えば、NOx浄化用触媒41bに吸蔵された窒素酸化物を十分に窒素に還元できないおそれがあり、この結果、十分な浄化性能を発揮することができないおそれがあった。
そこで、本実施例のエンジン100の排気装置1は、排気ガスの温度が予め設定される所定温度以下である場合に、添加弁6による添加剤の添加と対応させてこの添加剤の添加前に浄化装置4より上流側にインジェクタ135によって燃料をポスト噴射することで、燃料中のオレフィン成分の生成を促進し、これにより、添加剤添加時のNOx還元性能を向上し、排気浄化性能を向上している。
具体的には、この噴射手段としてのインジェクタ135は、メイン噴射とポスト噴射とにより燃料を噴射可能であり、燃料の多段階噴射が可能なものである。インジェクタ135は、排気温度センサ8により検出される排気ガスの温度が予め設定される所定温度以下である場合に、ポスト噴射を行う。インジェクタ135は、添加弁6による添加剤の添加と対応させてこの添加剤の添加前に排気方向に対して浄化装置4より上流側に、ここでは燃焼室102に燃料をポスト噴射する。
ここで、予め設定される所定温度は、NOx浄化用触媒41bの活性化温度より高温のオレフィン生成温度に応じて設定される。つまり、予め設定される所定温度は、添加弁6による添加剤の添加時に燃料中におけるオレフィン成分(燃料中の脂肪族炭化水素の熱分解物、特に軟質化したもの)の生成が促進される温度、オレフィンの生成効率が良好な温度に設定される。そして、インジェクタ135は、浄化装置4より上流側の排気ガス温度がこのオレフィン成分の生成が促進される所定温度以下である場合に、ポスト噴射を実行することで排気ガス温度を上昇させ、添加剤の添加時における燃料中のオレフィン成分の生成を促進する。
この燃料中のオレフィン成分は、強い酸化反応性を有する。このため、添加弁6により添加剤を添加することでNOx浄化用触媒41bに吸蔵されたNOxを還元する際に、排気ガス温度をオレフィン生成が促進される所定温度より上昇させておくことで、酸化反応性の高いHCをNOx浄化用触媒41bに供給するこができる。すなわち、添加弁6によって排気ガス中に添加される添加剤としての燃料は、所定温度より高温の排気ガスにさらされることで、熱反応が促進されオレフィン成分の生成が促進される。つまり、添加弁6により排気ガス中に添加剤を添加する前に、インジェクタ135によりポスト噴射として燃料を噴射し排気ガス温度を上昇させておくことで、添加剤添加時の燃料中のオレフィン成分の生成率が高くなり、高い酸化反応性を有するオレフィン成分の割合が高い還元剤を効率良くNOx浄化用触媒41bに供給することができる。この結果、この排気装置1は、この燃料中のオレフィン成分が有効な還元剤として作用することで、添加弁6による添加剤添加時におけるNOx浄化用触媒41bのNOx還元性能を向上し高効率化することができる。また、この排気装置1は、インジェクタ135によるポスト噴射によりNOx浄化性能を向上することができると共に、空燃比のリッチ寄せにより添加剤としての燃料の添加量を減少させることができ、燃費悪化を抑制することもできる。
ここで、インジェクタ135によるメイン噴射とは、エンジン100の出力を発生させるための主たる燃料の噴射である。さらに言えば、インジェクタ135によるメイン噴射は、圧縮上死点近傍で実行され、機関負荷にほぼ対応した燃料量を噴射する。これに対して、インジェクタ135によるポスト噴射とは、排気ガスの昇温や、排気浄化触媒における還元雰囲気の形成を主目的とし、ここでは、添加弁6による添加剤の添加と対応させた添加剤添加前の燃料噴射であり、メイン噴射とは異なる時期での燃料噴射である。さらに言えば、インジェクタ135によるポスト噴射は、メイン噴射から遅角した時期で圧縮上死点より遅い非着火のタイミングで実行される。そして、このインジェクタ135によるポスト噴射は、排気ガス温度が所定温度以下である場合に、添加弁6による添加剤添加前に、この添加剤の添加と対応して少なくとも1回は実行される。
そして、この噴射手段としてのインジェクタ135は、ECU5によりその駆動が制御されている。さらに具体的には、ECU5は、ポスト噴射量設定手段としてのポスト噴射量設定部51と、ポスト噴射時期設定手段としてのポスト噴射時期設定部52とを有する。
ここで、このECU5は、マイクロコンピュータを中心として構成され処理部、記憶部及び入出力部を有し、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。入出力部にはエンジン100の排気装置1を含む各部を駆動する不図示の駆動回路、上述した各種センサが接続されており、この入出力部は、これらのセンサ等との間で信号の入出力を行なう。また、記憶部には、エンジン100の排気装置1を含む各部を制御するコンピュータプログラムが格納されている。この記憶部は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、またはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。処理部は、不図示のメモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されており、上述のポスト噴射量設定部51、ポスト噴射時期設定部52を有している。図3で説明するエンジン100の排気装置1のオレフィン生成制御は、各部に設けられたセンサによる検出結果に基づいて、処理部が前記コンピュータプログラムを当該処理部に組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算の結果に応じて制御信号を送ることにより実行される。その際に処理部は、適宜記憶部へ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。なお、このエンジン100、排気装置1を制御する場合には、前記コンピュータプログラムの代わりに、ECU5とは異なる専用のハードウェアによって制御してもよい。
そして、ポスト噴射量設定部51は、排気温度センサ8により検出された排気ガスの温度に基づいて、インジェクタ135による燃料のポスト噴射量を設定する。ポスト噴射時期設定部52は、排気温度センサ8により検出された排気ガスの温度に基づいて、インジェクタ135による燃料のポスト噴射時期を設定する。
ここで、図2は、排気温度センサ8が検出する排気ガス温度Toutと添加弁6による添加剤添加量Qadd、インジェクタ135によるポスト噴射量Qpost及びポスト噴射時期INJpostとの関係を表す線図である。
添加弁6による添加剤添加量Qaddは、エンジン100の運転状態、言い換えれば、NOx排出量に応じてECU5により設定される。ECU5は、排気温度センサ8により検出された排気ガス温度Toutが高温側での添加剤添加量Qaddを低温側での添加剤添加量Qaddより多く設定する。つまり、ECU5は、高負荷(高NOx排出)側での添加剤添加量Qaddを低負荷(低NOx排出)側での添加剤添加量Qaddより多く設定する。なお、ここでは、ECU5は、添加弁6による添加剤の添加時期INJaddをエンジン100の排気行程の期間に固定的(予め設定される所定のインターバル)に設定している。
一方、ポスト噴射量設定部51は、排気温度センサ8により検出された排気ガス温度Toutが低温側でのポスト噴射量Qpostを高温側でのポスト噴射量Qpostより多く設定する。つまり、ポスト噴射量設定部51は、排気ガス温度Toutをオレフィン生成温度に応じて定まる所定温度Tcatまで上昇させることができる熱量に対応した燃料量をインジェクタ135によるポスト噴射量に設定する。これにより、現在の排気ガス温度Toutと所定温度Tcatとの温度差に応じた燃料量をポスト噴射量Qpostに設定することができ、排気ガス温度Toutが所定温度(オレフィン生成温度)Tcatより高温になるまで上昇するために必要な熱量を確保することができる。
ポスト噴射時期設定部52は、排気温度センサ8により検出された排気ガス温度Toutが低温側でのポスト噴射時期INJpostを高温側でのポスト噴射時期INJpostより早い時期に設定する。これにより、ポスト噴射量Qpostが相対的に多くなる排気ガス温度Toutの低温側にて、ポスト噴射時期INJpostをより早い時期に設定することから、インジェクタ135によるポスト噴射によって相対的に多くの燃料を噴射しても、筒内温度が比較的高い圧縮行程上死点側(進角側)の時期に燃料をポスト噴射することができるので、燃料の燃え残りが発生することを防止することができる。この結果、燃え残り燃料(過剰燃料)の噴霧がエンジン100のシリンダボアなどに付着することを防止することができ、例えば、エンジン100下部のオイルパンに貯留されているオイルに燃料が混入し、このオイルが希釈されてしまうことを防止することができる。
なお、ここで、添加弁6により添加される添加剤としての燃料は、NOx浄化用触媒41bに吸収されていたNOxを還元するための炭化水素を供給するために排気ガス中に添加されるものであることから、添加弁6からNOx浄化用触媒41bに至るまでに十分な量の炭化水素が残留している必要がある。一方、インジェクタ135からポスト噴射される燃料は、添加剤添加時に燃料中のオレフィン成分生成率を向上させるために添加剤添加前に排気ガス温度を上昇させるためのものであることから、ポスト噴射された全ての燃料が燃焼し熱量となり排気ガス温度を効率的に上昇させることがより好ましい。
また、ポスト噴射時期設定部52は、好ましくは、エンジン100のピストンが圧縮行程上死点に位置する時期以降で添加弁6による添加剤の添加時期以前の時期にポスト噴射時期INJpostを設定する。これにより、インジェクタ135によるポスト噴射時期INJpostが圧縮行程上死点時期以前の時期設定されることが防止されることから、ポスト噴射とメイン噴射とが一体になってしまうことを防止することができ、インジェクタ135によるポスト噴射が添加弁6による添加剤の添加と対応しなくなってしまうことを防止することができる。また、インジェクタ135によるポスト噴射時期INJpostが添加弁6による添加剤の添加時期以降の時期に設定されることが防止されることから、確実に添加剤添加前にポスト噴射により排気ガス温度を上昇させることができる。この結果、この排気装置1は、ポスト噴射による排気ガス温度の上昇に同期して排気ガス中に添加剤を添加することができ、添加剤としての燃料を確実に所定温度より高温の排気ガスにさらすことができ、よって、熱反応を促進しオレフィン成分の生成を促進することができる。
また、ポスト噴射時期設定部52により、ポスト噴射時期INJpostをエンジン100のピストンが圧縮行程上死点に位置する時期以降で添加弁6による添加剤の添加時期以前の時期に設定することで、インジェクタ135によるポスト噴射時期INJpostの限界時期が定まり、ポスト噴射量Qpostの限界量が定まる。例えば、ポスト噴射時期INJpostの進角側の限界時期を圧縮行程上死点時期以降で、この圧縮行程上死点時期近傍の時期に設定し、この場合に燃料の燃え残りが発生しないようにポスト噴射量Qpostの限界量として最大噴射量を設定する。また、ポスト噴射時期INJpostの遅角側の限界時期を添加弁6による添加剤の添加時期以前で、この添加時期近傍の時期に設定し、この場合に燃料の燃え残りが発生しないようにポスト噴射量Qpostの限界量として最大噴射量を設定する。これにより、ポスト噴射により噴射された燃料の燃え残りを適正に回避することができる。
次に、図3のフローチャートを参照して、本実施例に係るエンジン100の排気装置1のオレフィン生成制御を説明する。
イグニッション(IG)がONされ、エンジン100が始動すると、まず、ECU5は、各種センサからエンジン冷却水温、エンジン回転数などの現在のエンジン100の運転状態に関する種々のパラメータを取得し(S100)、排気温度センサ8により排気ガス温度Toutを測定する(S102)。
次に、ECU5は、排気温度センサ8により検出された排気ガス温度Toutがオレフィン生成温度に応じて定まる所定温度Tcat以下であるか否かを判定する(S104)。排気ガス温度Toutが所定温度Tcatより高温であると判定された場合(S104:No)、添加剤添加時にNOx還元に有効なオレフィン成分が十分に生成されていることから、ECU5は、次の制御周期に移行する。
排気ガス温度Toutが所定温度Tcat以下であると判定された場合(S104:Yes)、ECU5のポスト噴射量設定部51は、排気温度センサ8により検出された排気ガス温度Toutに基づいて、インジェクタ135による燃料のポスト噴射量Qpostを設定し、ECU5のポスト噴射時期設定部52は、排気温度センサ8により検出された排気ガス温度Toutに基づいて、インジェクタ135による燃料のポスト噴射時期INJpostを設定する(S106)。ECU5は、例えば、図2に示すような排気ガス温度Toutとポスト噴射量Qpost、ポスト噴射時期INJpostとのマップを不図示の記憶部に記憶しており、ポスト噴射量設定部51、ポスト噴射時期設定部52は、このポスト噴射量マップ及びポスト噴射時期マップを用いて排気ガス温度Toutに基づいたポスト噴射量Qpost、ポスト噴射時期INJpostを設定する。
次に、ECU5は、排気温度センサ8により検出された排気ガス温度Toutに基づいて、添加弁6による添加剤添加量Qaddを設定し(S108)、添加時期INJaddを設定する(S110)。ECU5は、例えば、図2に示すような排気ガス温度Toutと添加剤添加量Qaddとのマップを不図示の記憶部に記憶しており、添加剤添加量マップを用いて排気ガス温度Toutに基づいた添加剤添加量Qaddを設定する。ECU5は、添加弁6による添加剤の添加時期INJaddをエンジン100の排気行程の期間に固定的(予め設定される所定のインターバル)に設定する。
次に、ECU5は、設定されたポスト噴射量Qpost、ポスト噴射時期INJpostに基づいて添加剤の添加前にインジェクタ135によるポスト噴射を実行し、添加剤添加量Qadd、添加時期INJaddに基づいて添加弁6による添加剤の添加を実行し、NOxの還元を開始し(S112)、次の制御周期に移行する。
図4は、上記のように構成されるエンジン100の排気装置1と比較例に係る内燃機関の排気装置とのオレフィン生成割合の一例を比較する線図である。比較例の内燃機関の排気装置は、添加剤添加前にポスト噴射を実行せず、排気ガス温度Toutが、例えば、330℃(オレフィン生成温度に応じて定まる所定温度Tcat以下の温度)であるときに添加剤を添加する一方、実施例のエンジン100の排気装置1は、添加剤添加前にポスト噴射を実行し、排気ガス温度Toutが、例えば、460℃(オレフィン生成温度に応じて定まる所定温度Tcatより高温)であるときに添加剤を添加する。本図に示す燃料中の成分混合割合から明らかなように、実施例のエンジン100の排気装置1は、添加剤添加前にポスト噴射を実行し排気ガス温度Toutをオレフィン生成温度に応じて定まる所定温度Tcatより高温にすることから、添加弁6により添加剤として添加される燃料が高温の排気ガスにさらされ、十分に熱分解されオレフィン成分の多い還元剤としてNOx浄化用触媒41bに供給され、高い酸化反応性を有するオレフィン成分の割合が高い還元剤を効率良くNOx浄化用触媒41bに供給することができる。この結果、この排気装置1は、この燃料中のオレフィン成分が有効な還元剤として作用することで、添加弁6による添加剤添加時におけるNOx浄化用触媒41bのNOx還元性能を向上し高効率化することができるので、排気浄化性能を向上することができる。
以上で説明した本発明の実施例に係るエンジン100の排気装置1によれば、エンジン100から排出される排気ガスを浄化するNOx浄化用触媒41bを有する浄化装置4が設けられた排気通路3と、排気ガスの排気方向に対して浄化装置4より上流側にNOx浄化用触媒41bの浄化能力を回復させるための添加剤を添加する添加弁6と、排気ガスの排気方向に対して浄化装置4より上流側の排気ガスの温度を検出する排気温度センサ8と、排気温度センサ8により検出した排気ガスの温度が予め設定される所定温度以下である場合に、添加弁6による添加剤の添加と対応させてこの添加剤の添加前に排気方向に対して浄化装置4より上流側に燃料をポスト噴射するインジェクタ135を備える。
したがって、排気ガスの温度が予め設定される所定温度以下である場合に、添加弁6による添加剤の添加と対応させてこの添加剤の添加前に浄化装置4より上流側にインジェクタ135によって燃料をポスト噴射することから、排気ガスの温度を上昇させることができ、燃料中のオレフィン成分の生成が促進され、添加剤添加時のNOx還元性能を向上することができるので、排気浄化性能を向上することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るエンジン100の排気装置1によれば、上述の所定温度は、NOx浄化用触媒41bの活性化温度より高温のオレフィン生成温度に応じて設定される。したがって、インジェクタ135は、排気ガスの温度がオレフィン生成温度に応じて設定される所定温度以下である場合に添加弁6による添加剤の添加前にポスト噴射することから、添加剤添加前に排気ガス温度をオレフィンの生成効率が良好な温度より上昇させることができ、添加剤としての燃料を確実に所定温度より高温の排気ガスにさらすことができ、よって、熱反応を促進しオレフィン成分の生成を促進することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るエンジン100の排気装置1によれば、インジェクタ135は、エンジン100の出力を発生させるための主たる燃料の噴射であるメイン噴射とポスト噴射とにより燃料を噴射可能である。したがって、メイン噴射を行う噴射手段と、ポスト噴射を行う噴射手段とを兼用することから、排気装置1を構成する部品点数が増加することを防止することができ、排気装置1をコンパクトな構成にすることができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るエンジン100の排気装置1によれば、排気温度センサ8により検出された排気ガスの温度に基づいて、インジェクタ135による燃料のポスト噴射量を設定するポスト噴射量設定部51を備え、ポスト噴射量設定部51は、排気ガスの温度が低温側でのポスト噴射量を高温側でのポスト噴射量より多く設定する。したがって、現在の排気ガス温度と所定温度との温度差に応じた燃料量をポスト噴射量に設定することができ、排気ガス温度が所定温度(オレフィン生成温度)より高温になるまで上昇するために必要な熱量を確保することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るエンジン100の排気装置1によれば、排気温度センサ8により検出された排気ガスの温度に基づいて、インジェクタ135による燃料のポスト噴射時期を設定するポスト噴射時期設定部52を備え、ポスト噴射時期設定部52は、排気ガスの温度が低温側でのポスト噴射時期を高温側でのポスト噴射時期より早い時期に設定する。したがって、ポスト噴射量が相対的に多くなる排気ガス温度の低温側にて、ポスト噴射時期をより早い時期に設定することから、インジェクタ135によるポスト噴射によって相対的に多くの燃料を噴射しても、筒内温度が比較的高い時期に燃料をポスト噴射することができるので、燃料の燃え残りが発生することを防止することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るエンジン100の排気装置1によれば、ポスト噴射時期設定部52は、エンジン100のピストンが上死点に位置する時期以降で添加弁6による添加剤の添加時期以前の時期にポスト噴射時期を設定する。したがって、ポスト噴射とメイン噴射とが一体になってしまうことを防止することができ、インジェクタ135によるポスト噴射が添加弁6による添加剤の添加と対応しなくなってしまうことを防止することができると共に、確実に添加剤添加前にポスト噴射により排気ガス温度を上昇させることができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るエンジン100の排気装置1によれば、排気方向に対して浄化装置4の上流側にタービン104bを有するターボチャージャ104を備え、排気温度センサ8は、タービン104bと浄化装置4との間の排気ガスの温度を検出する。したがって、エンジン100は、排気温度センサ8によりタービン104bと浄化装置4との間の排気ガスの温度を検出することから、排気通路3において浄化装置4より上流側で排気ガス温度が相対的に低くなる位置の排気ガス温度を検出することができる。この結果、排気温度センサ8により検出される排気ガス温度が相対的に低いタービン104bと浄化装置4との間の排気ガスの温度に基づいて排気温度センサ8より上流側、ここでは、排気ガス温度が相対的に高いタービン104bより上流側で添加剤を添加することで、より高い割合で燃料中にオレフィン成分を生成することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るエンジン100の排気装置1によれば、浄化装置4は、排気ガス中の窒素酸化物を吸蔵し、窒素に還元するNOx浄化用触媒41bを有する。したがって、添加弁6から噴射される添加剤としての燃料(軽油)が浄化装置4の上流側にて高温の排気ガス中で熱分解されて、多量の炭化水素を生成するとともに、排気ガス中の酸素濃度を低下させるので、NOx浄化装置41のNOx浄化用触媒41bに吸収されていたNOxを放出させ、Nに還元することができ、浄化装置4の浄化能力を回復することができる。このとき、ポスト噴射による排気ガス温度の上昇に同期して排気ガス中に添加剤を添加することができ、添加剤としての燃料を確実に所定温度より高温の排気ガスにさらすることができ、よって、熱反応を促進しオレフィン成分の生成が促進されるので、この強い酸化反応性を有するオレフィン成分によって、より高効率でNOxを還元することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るエンジン100の排気装置1によれば、添加弁6は、排気通路3のうちエンジン100の複数の排気ポート2に接続される排気マニホールド31に設けられる。したがって、添加弁6が排気マニホールド31に設けられることから、添加弁6から排気通路3の排気マニホールド31に添加される添加剤が浄化装置4に到達するまでに排気ガスにさらされている期間が相対的に長くなるので、この添加剤の微粒化やオレフィン成分の生成を促進することができる。また、添加弁6は、ターボチャージャ104のタービン104bよりも上流に配置されることから、排気通路3に添加された添加剤が、ターボチャージャ104のタービン104bによる攪拌作用などによって霧状にされやすくなり微粒化が促進されるので、浄化装置4に対する浄化能力回復作用をさらに向上することができる。
なお、上述した本発明の実施例に係る内燃機関の排気装置1は、上述した実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。以上の説明では、温度検出手段は、タービン104bと浄化装置4との間の排気ガスの温度を検出するものとして説明したが、これに限らず、添加手段と浄化手段との間の排気ガスの温度、さらにいえば、排気方向に対して浄化手段より上流側の排気ガスの温度を検出する構成であれば、例えば、添加弁6とタービン104bとの間の排気ガスの温度を検出する構成であってもよい。
また、以上の説明では、添加弁6は、排気通路3のうち排気マニホールド31に設けられるものとして説明したが、添加弁6は、排気管32のタービン104bより下流側、浄化装置4より上流側に設けられてもよい。この場合、タービン104bなどに添加剤が付着することを防止することができ、この結果、デポジットなどを抑制することができる。また、以上の説明では、添加剤は、炭化水素(HC)成分を含むものが好ましく、例えば対象となるエンジン100で使用する種類の燃料(軽油、ガソリン等)あるいはその他の異種の燃料等、さらには灯油等とすることができる。
また、以上の説明では、ターボチャージャ104およびEGR装置106を備えるものとして説明したが、いずれか一方または両方を備えない構成であっても本発明を適用できる。
また、以上の説明では、ポスト噴射を実行する噴射手段は、メイン噴射を実行するインジェクタ135により兼用されるものとして説明したが、これに限らず、ポスト噴射を実行する噴射手段とメイン噴射を実行する噴射手段とをそれぞれ別体に設けてもよい。
以上のように、本発明に係る内燃機関の排気装置は、排気浄化性能を向上するものであり、触媒より上流に添加剤を添加する種々の内燃機関の排気装置に適用して好適である。
本発明の実施例に係る内燃機関の排気装置が適用されたエンジンを示す概略構成図である。 本発明の実施例に係る内燃機関の排気装置における排気ガス温度と添加剤添加量、ポスト噴射量及びポスト噴射時期との関係を示す線図である。 本発明の実施例に係る内燃機関の排気装置のオレフィン生成制御を説明するフロー図である。 本発明の実施例に係る内燃機関の排気装置と比較例に係る内燃機関の排気装置とのオレフィン生成割合を比較する線図である。
符号の説明
1 排気装置
2 排気ポート
3 排気通路
4 浄化装置(浄化手段)
5 ECU
6 添加弁(添加手段)
7 添加剤供給路
8 排気温度センサ(温度検出手段)
31 排気マニホールド
32 排気管
41 NOx浄化装置
41b NOx浄化用触媒(窒素酸化物吸蔵還元型触媒)
42 PM捕集装置
42b PMフィルタ
51 ポスト噴射量設定部(ポスト噴射量設定手段)
52 ポスト噴射時期設定部(ポスト噴射時期設定手段)
100 エンジン(内燃機関)
104 ターボチャージャ(過給手段)
104b タービン
135 インジェクタ(噴射手段)

Claims (8)

  1. 内燃機関から排出される排気ガスを浄化する触媒を有する浄化手段が設けられた排気通路と、
    前記排気ガスの排気方向に対して前記浄化手段より上流側に前記触媒の浄化能力を回復させるための添加剤を添加する添加手段と、
    前記排気方向に対して前記浄化手段より上流側の前記排気ガスの温度を検出する温度検出手段と、
    前記温度検出手段により検出した前記排気ガスの温度が予め設定される所定温度以下である場合に、前記添加手段による前記添加剤の添加と対応させて該添加剤の添加前に前記排気方向に対して前記浄化手段より上流側に燃料をポスト噴射する噴射手段を備えることを特徴とする、
    内燃機関の排気装置。
  2. 前記所定温度は、前記触媒の活性化温度より高温のオレフィン生成温度に応じて設定されることを特徴とする、
    請求項1に記載の内燃機関の排気装置。
  3. 前記噴射手段は、前記内燃機関の出力を発生させるための主たる燃料の噴射であるメイン噴射と前記ポスト噴射とにより前記燃料を噴射可能であることを特徴とする、
    請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の排気装置。
  4. 前記温度検出手段により検出された前記排気ガスの温度に基づいて、前記噴射手段による前記燃料のポスト噴射量を設定するポスト噴射量設定手段を備え、
    前記ポスト噴射量設定手段は、前記排気ガスの温度が低温側での前記ポスト噴射量を高温側での前記ポスト噴射量より多く設定することを特徴とする、
    請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の内燃機関の排気装置。
  5. 前記温度検出手段により検出された前記排気ガスの温度に基づいて、前記噴射手段による前記燃料のポスト噴射時期を設定するポスト噴射時期設定手段を備え、
    前記ポスト噴射時期設定手段は、前記排気ガスの温度が低温側での前記ポスト噴射時期を高温側での前記ポスト噴射時期より早い時期に設定することを特徴とする、
    請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の内燃機関の排気装置。
  6. 前記ポスト噴射時期設定手段は、前記内燃機関のピストンが上死点に位置する時期以降で前記添加手段による前記添加剤の添加時期以前の時期に前記ポスト噴射時期を設定することを特徴とする、
    請求項5に記載の内燃機関の排気装置。
  7. 前記排気方向に対して前記浄化手段の上流側にタービンを有する過給手段を備え、
    前記温度検出手段は、前記タービンと前記浄化手段との間の前記排気ガスの温度を検出することを特徴とする、
    請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の内燃機関の排気装置。
  8. 前記浄化手段は、前記排気ガス中の窒素酸化物を吸蔵し、窒素に還元する窒素酸化物吸蔵還元型触媒を有することを特徴とする、
    請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の内燃機関の排気装置。
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