JP2009132589A - チョクラルスキー結晶成長装置およびこれを利用した塩廃棄物の精製方法 - Google Patents

チョクラルスキー結晶成長装置およびこれを利用した塩廃棄物の精製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】種結晶の必要がなく、引出し棒の固着ネジに固着ネジ山を形成して結晶が成長する時の荷重による結晶の脱離を防止することができるチョクラルスキー結晶成長装置およびチョクラルスキー結晶成長法を利用して廃溶融塩から効率的に不純物を分離する方法によって、吸着媒質を使用することによる2次廃棄物の発生を防止するとともに、連続工程を可能にする塩廃棄物の精製方法を提供する。
【解決手段】制御された温度で原料塩10を溶解させるための発熱部20を含むるつぼ60と、るつぼ60の上端中央部に装着している、不純物を含む原料溶融塩10から目的とする純粋な塩結晶30を引出すための引出し棒50と、回転可能に引出し棒50の下端部に設置されて、不純物を含む原料溶融塩10と接触する複数個の塩結晶固着ネジと、塩結晶固着ネジの外周面に形成される塩結晶固着ネジ山とを具備するチョクラルスキー結晶成長装置。
【選択図】図2

Description

本発明は、チョクラルスキー結晶成長装置およびこれを利用した塩廃棄物の精製方法に関する。より詳細には、種(たね)結晶の必要がなく、引出し棒に固着ネジとネジ山を形成して結晶が成長する時の荷重による結晶の脱離を防止することのできるチョクラルスキー(Czochralski)結晶成長装置およびチョクラルスキー結晶成長法を利用して廃溶融塩から不純物を分離することによって、吸着媒質を全く使用することなしに、2次廃棄物の発生を防止するとともに、連続工程を可能にする塩廃棄物の精製方法に関する。
酸化物を使用した後の核燃料の電解還元工程は、LiCl溶融塩槽において、成分元素を金属化させる工程であって、アルカリ金属、アルカリ土類金属および一部希土類元素を除く全ての核分裂生成物とウラニウムおよびプルトニウムは金属に転換される。
前記の工程中に、LiCl溶融塩内に溶解された高放熱性CsおよびSrなどの塩化物は、標準生成自由エネルギーと還元電位が大きいので、化学的および電気分解などによる分離が不可能である。
したがって、前記塩をリサイクルするためには、ゼオライト(Zeolite)のような吸着媒質を使用してCsおよびSrを分離する工程を考慮している。前記ゼオライトによるCsおよびSrの吸着技術は、非特許文献1および非特許文献2などによって報告されており、現在、使用済み核燃料の処理過程中に発生する廃溶融塩の処理またはリサイクル工程のうち、最も現実的な工法とされている。
しかし、前記の方法は、核分裂生成物の吸着量に制限があるため、吸着工程の後、多量の吸着媒質の廃棄物が発生する問題がある。
チョクラルスキー(Czochralski)工程は、半導体産業分野における結晶成長装置に汎用的に利用されるものであり、主にシリコン単結晶がこの工程によって生産されている。LiClをチョクラルスキー工程によって処理した例としては、下記非特許文献3の報告例があるが、Fe、Co、Ni、Caなどをゾーン精製法(zone refining)によって除去した後、LiCl単結晶の生産に利用しているので、多結晶LiClを生産しながら、使用済み核燃料の処理過程中に発生するLiClに含まれたCsClおよびSrCl2を除去することができる方法の開発が要求されてきた。
Pereira C (Mater Res Soc Proc. 1999, vol 556, pp. 115-120) Lexa D (Metallurgical and Materials Transactions B. 2001; 32B : 429-435) Hinks et al (Materials Research Bulletin, 1974, Vol 9, pp. 53-64)
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するために案出されたものであって、本発明の目的は、種結晶の必要がなく、引出し棒に固着ネジとネジ山を形成して結晶が成長する時の荷重による結晶の脱離を防止することができる構造を有するチョクラルスキー結晶成長装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、吸着媒質を全く使用することなしに、2次廃棄物の発生を防止するとともに、連続工程を可能にする塩廃棄物の精製方法を提供することにある。
すなわち、本発明は、
制御された温度で原料塩を溶解させるための発熱部を含むるつぼと、
前記るつぼの下端中央部に装着している前記るつぼを上昇または下降させるための上昇・下降装置と、
前記るつぼの上端中央部に装着している、不純物を含む原料溶融塩から目的とする純粋な塩結晶を引出すための引出し棒と、
回転可能に前記引出し棒の下端部に設置されて、不純物を含む原料溶融塩と接触する複数個の塩結晶固着ネジと、前記塩結晶固着ネジの外周面に形成される塩結晶固着ネジ山と、前記引出し棒の下端部と前記塩結晶固着ネジの上端部に位置して、前記複数個の塩結晶固着ネジの間に前記原料溶融塩が容易に浸透されるようにする排気口とによって構成される塩結晶固着ネジ部とを具備するチョクラルスキー結晶成長装置を提供するものである。
また、本発明は、
制御された温度で原料塩を溶解させるための発熱部を含むるつぼと、
前記るつぼの上端中央部に装着している、不純物を含む原料溶融塩から目的とする純粋な塩結晶を引出すための引出し棒と、
前記引出し棒の上端中央部に装着している、前記引出し棒を上昇または下降させるための上昇・下降装置と、
回転可能に前記引出し棒の下端部に設置されて、不純物を含む原料溶融塩と接触する複数個の塩結晶固着ネジと、前記塩結晶固着ネジの外周面に形成される塩結晶固着ネジ山と、前記引出し棒の下端中央部と前記塩結晶固着ネジの上端部に位置して、前記複数個の塩結晶固着ネジの間に前記原料溶融塩が容易に浸透されるようにする排気口とによって構成される塩結晶固着ネジ部とを具備するチョクラルスキー結晶成長装置を提供するものである。
本発明は、また、酸化物を使用した後の核燃料の電解還元工程から生成される塩廃棄物のリサイクル工程において、チョクラルスキー結晶成長法を利用して不純物を含む廃溶融塩から目的とする純粋な塩結晶を回収することを特徴とするチョクラルスキー結晶成長法による塩廃棄物の精製方法を提供するものである。
従来のチョクラルスキー結晶成長装置は、主に単結晶成長に利用されるので、対象材料の種(たね)結晶から成長させる構造を含めているが、前記のように、本発明による精製方法は、種結晶の必要がなく、引出し棒に固着ネジとネジ山を形成して結晶が成長する時の荷重による結晶の脱離を防止することができる特徴を有する。
また、本発明による塩廃棄物の精製方法は、チョクラルスキー結晶成長工程を利用して廃溶融塩から不純物を分離することによって、吸着媒質を全く使用することなしに、2次廃棄物の発生を防止するとともに、連続工程を可能にするメリットを有する。
かつ、本発明による塩廃棄物の精製方法は、廃溶融塩に対する不純物の溶融状態および固相溶解度の差異によって生成される偏析原理を応用して純粋な塩結晶を回収することによって、目的とする塩のリサイクルが可能になるので、乾式核燃料の処理費用の中、塩廃棄物の処理費用を大幅に減らすことのできる経済性も向上させることができる。
本願の第1発明は、
制御された温度で原料塩を溶解させるための発熱部を含むるつぼ(crucible)と、
前記るつぼの下端中央部に装着している、前記るつぼを上昇・下降させるための上昇・下降装置と、
前記るつぼの上端中央部に装着している、不純物を含む原料溶融塩から目的とする純粋な塩結晶を引出すための引出し棒と、
回転可能に前記引出し棒の下端部に設置されて、不純物を含む原料溶融塩と接触する複数個の塩結晶固着ネジと、前記塩結晶固着ネジの外周面に形成される塩結晶固着ネジ山と、前記引出し棒の下端部と前記塩結晶固着ネジの上端部に位置して、前記複数個の塩結晶固着ネジの間に前記原料溶融塩が容易に浸透されるようにする排気口によって構成される塩結晶固着ネジ部とを具備するチョクラルスキー(Czochralski)結晶成長装置に関する。
本願の第2発明は、
制御された温度で原料塩を溶解させるための発熱部を含むるつぼと、
前記るつぼの上端中央部に装着している、不純物を含む原料溶融塩から目的とする純粋な塩結晶を引出すための引出し棒と、
前記引出し棒の上端中央部に装着している、前記引出し棒を引上げ・引き下げるための上昇・下降装置と、
回転可能に前記引出し棒の下端部に設置されて、不純物を含む原料溶融塩と接触する複数個の塩結晶固着ネジと、前記塩結晶固着ネジの外周面に形成される塩結晶固着ネジ山と、前記引出し棒の下端中央部と前記塩結晶固着ネジの上端部に位置して前記複数個の塩結晶固着ネジの間に前記原料溶融塩が容易に浸透されるようにする排気口によって構成される塩結晶固着ネジ部とを具備するチョクラルスキー結晶成長装置に関する。
本発明による前記チョクラルスキー結晶成長装置には、前記塩結晶固着ネジ部を1つ以上設置することができる。これは、結晶の成長にしたがって増大する荷重に耐えるように固着ネジと塩結晶との接着強度を高めるために好ましい。したがって、前記塩結晶固着ネジ部を1つ以上、より好ましくは2つ以上を設けて、前記各塩結晶固着ネジ部との間に間隔を形成することが好ましい。しかし、このように限定する必要はなく他の変形も可能である。
本発明による前記チョクラルスキー結晶成長装置において、前記引出し棒の素材は金属材料であることを特徴としているが、前記金属材料としては例えば、ステンレス、銅、ニッケル基超合金などを挙げることができる。しかし、必ずしもこれに限定する必要はない。
本発明による前記チョクラルスキー結晶成長装置において、前記不純物は例えば、Cs塩、Sr塩またはこれらの混合物を挙げることができるが、互に固溶度を有しない特性のある塩であれば、フッ化物塩なども制限なしにこれに含めることができる。
前記塩としては、塩酸塩であることが好ましいが、互に固溶度を有しない特性のある塩であれば、制限なしにこれに含めることができる。
また、前記目的とする塩結晶としては、Li塩結晶が好ましいが、互に固溶度を有しない特性のある塩結晶であれば、制限なしにこれに含めることができる。
前記塩結晶の塩としては、塩酸塩であることが好ましいが、互に固溶度を有しない特性のある塩であれば、制限なしにこれに含めることができる。
以下、添付の図面を参照しながら本発明によるチョクラルスキー結晶成長装置をより詳細に説明する。
図1は、本発明によるチョクラルスキー結晶成長装置の1実施例を示す模式図である。前記図1に図示されているチョクラルスキー結晶成長装置は、制御された温度によって原料塩を溶解させるための発熱部20と、るつぼ60を上昇または下降させるための上昇・下降装置40および溶融状態の塩10から目的とする純粋な塩結晶30を引出すための引出し棒50によって構成される。
図2は、本発明によるチョクラルスキー結晶成長装置の他の実施例を示す模式図である。図2に図示されているチョクラルスキー結晶成長装置は、制御された温度で原料塩を溶解させるための発熱部20と溶融状態の塩10から目的とする純粋な塩結晶30を引出すための引出し棒50および前記引出し棒を引上げ・引き下げるための上昇・下降装置 41によって構成される。
ここで、本発明のチョクラルスキー結晶成長装置によれば、従来の単結晶成長用チョクラルスキー装置とは異なり、金属素材の引出し棒50が種結晶の役割をなすので、引出し棒50と溶融されている塩結晶30との間の界面結合力は、結晶の成長に従って増大する荷重に耐えることができない。
したがって、引出し棒の末端を図3のように変形する必要があり、図3は、図1または図2に図示された引出し棒50を拡大してより詳細に示したものである。
図3の拡大図のように、初期の溶融塩10に接触する引出し棒の末端部位を、塩結晶固着ネジ70とし、この塩結晶固着ネジ70の全体を直接溶融塩10内へ浸漬させると、前記ネジ70に形成されている各ネジ山80が溶融塩10の中に浸漬されることによって、引出し棒50と凝固された溶融塩10は堅固に噛み合って結合する。このとき、各塩結晶固着ネジ70の間に溶融塩10を容易に浸透させるために、排気口90を塩結晶固着ネジ70の上端部に位置させる。
次いで、引出し棒50を回転させながら引出し棒50の下端まで溶融塩10に浸漬させると、塩結晶固着ネジ70の上端まで溶融塩に浸漬し目的とする純粋な塩結晶30が生成することになる。
本願の第3発明は、酸化物を使用した後の核燃料の電解還元工程から生成される塩廃棄物のリサイクル工程において、チョクラルスキー結晶成長法を利用して不純物を含む廃溶融塩から目的とする純粋な塩結晶を回収することを特徴とするチョクラルスキー結晶成長法による塩廃棄物の精製方法に関する。
本発明による前記塩廃棄物の精製方法は、従来の単結晶成長法を利用して汎用的に利用されているチョクラルスキー結晶成長装置を改良した前記本発明の装置を利用して、廃溶融塩に含有されている目的の塩結晶(例えば、LiCl)に対する不純物(例えば、CsClおよびSrCl2)の溶融状態および固相溶解度の差異によって生成される偏析の原理を応用して不純物が混合されている廃溶融塩から目的とする純粋な塩を回収する方法である。
本発明による塩廃棄物の精製方法において、前記チョクラルスキー結晶成長法は、(a)前記のチョクラルスキー結晶成長装置において、引出し棒50を固定させて上昇・下降装置40によって、るつぼ60を上昇させるとともに、回転する引出し棒50を不純物が含まれている廃溶融塩の中に浸漬させることによって前記引出し棒50の周囲にメニスカス(meniscus)を形成させる段階と、(b)前記の段階で形成されたメニスカスが所定の直径に生成されるときるつぼ60の上昇を止めるとともに、前記るつぼ60の高さを一定のレベルに維持させることによって所定の直径を有するメニスカスを生成させる段階と、(c)前記(b)段階において所定の直径を有するメニスカスが生成された後、前記るつぼ60をさらに下降させて目的とする純粋な塩を引出す工程を開始する段階と、(d)前記るつぼ60の下降速度を一定の速度に維持させることによって目的の純粋塩結晶を成長させる段階とを含めてなることを特徴とする。
一方、本発明による塩廃棄物の精製方法において、前記チョクラルスキー結晶成長法は、(a)前記チョクラルスキー結晶成長装置において、るつぼ60を固定させて、引出し棒を下降させるとともに、回転する引出し棒を不純物が含まれている廃溶融塩の中に浸漬させることによって前記引出し棒50の周囲にメニスカスを形成させる段階と、(b)前記の段階で形成されたメニスカスが所定の直径に生成されるとき引出し棒50の下降を止めるとともに、前記引出し棒50の高さを一定のレベルに維持させることによって所定の直径を有するメニスカスを生成させる段階と、(c)前記(b)段階において、所定の直径を有するメニスカスが生成された後、前記引出し棒50をさらに引上げて目的とする純粋な塩を引出す工程を開始する段階と、(d)前記引出し棒50の引上げの速度を一定の速度に維持させることによって目的の純粋塩結晶に成長させる段階とを含めてなることを特徴とする。
また、本発明による前記塩廃棄物の精製方法において、前記不純物は、例えば、Cs塩、Sr塩またはこれらの混合物を挙げることができるが、互に固溶度を有しない特性を有している塩であれば、制限なしにこれに含めることができる。
前記Cs塩またはSr塩の塩としては、塩酸塩であることが好ましいが、互に固溶度を有しない特性を有している塩であれば、制限なしにこれに含めることができる。
前記目的とする塩結晶としては、Li塩の結晶が好ましいが、互に固溶度を有しない特性を有している塩結晶であれば、制限なしにこれに含めることができる。
前記Li塩の塩としては、塩酸塩であることが好ましいが、互に固溶度を有しない特性を有している塩であれば、制限なしにこれに含めることができる。
本発明による前記塩廃棄物の精製方法において、前記引出し棒50の回転速度は、溶融塩成分を均一に混合するとともに乱流を防止する側面で5〜120rpm、好ましくは10〜100rpm、より好ましくは25〜35rpmであることが好ましい。しかし、前記回転速度は塩廃棄物の組成成分の如何によってその最適条件は異なることがある。
本発明による前記塩廃棄物の精製方法の前記の各(d)段階において、塩結晶を成長させるための、るつぼ60の下降速度または引出し棒50の引上げ速度は、塩の結晶を十分に成長させるために、0.1〜50cm/h、好ましくは0.5〜30cm/h、より好ましくは0.5〜5cm/hである。しかし、前記るつぼの下降速度または引出し棒の引上げ速度は、塩廃棄物の組成成分の如何によってその最適条件は異なることがある。
本発明による前記塩廃棄物の精製方法において、前記各(a)段階における廃溶融塩の表面温度は、塩の結晶を円滑に成長させるために、不純物の濃度に従って液相線より0.1〜50℃、好ましくは0.1〜20℃、より好ましくは5〜10℃の範囲内で調節されることを特徴とする。
前記の液相線に比べて低い加熱温度の場合は、結晶成長の速度が速すぎるので、塩結晶の直径が過度に大きくなるとともに、不純物の分離が十分にならない。一方、加熱温度が液相線より高すぎる場合、結晶の成長が不可能になる。
以下、添付の図面を参照しながら本発明によるチョクラルスキー結晶成長法による塩廃棄物の精製方法をより詳細に説明する。
LiClの結晶成長過程において溶融塩が精製される原理を、図4〜図6によって説明する。
図4、図5および図6は、LiCl、CsClおよびSrCl2系溶融塩の相平衡を常用の熱力学データベースであるFactSageを利用して構成した2元系状態図(pseudo binary phase diagram)であり、図4は前記のFactSageによって計算されたLiCl-(Owt%)SrCl2-CsClの2元系状態図であり、図5は同じくFactSageによって計算されたLiCl-SrCl2-(Owt%)CsClの2元系状態図であり、図6は同じくFactSageによって計算されたLiCl-SrCl2-CsClの2元系状態図を示したものである。
先ず、図4を参照すると、LiCl-CsCl系溶融塩の場合、約325℃の共融温度を有し、このときのCsClの量は74重量%である。すなわち、初期濃度10重量%のCsClを包含したLiCl溶融塩内のCsClを分離するために、600℃の非常に低い凝固速度によって結晶を成長させる場合、LiCl結晶を生成し、CsClを包含している液相は固相のLiClに固溶されないので、LiCl結晶の外に押し出される偏析が発生することになる。このとき、成長された純粋LiClは、混合溶融塩より高い融点を有するため、制限された時間内においては再溶解されることがなく、連続的に結晶の成長が進行する。
したがって、前記LiCl溶融塩内においては、LiCl結晶の成長が進行することによってCsClが濃縮されるとともに、溶融塩の温度は液相線に従って低下し、最低共晶温度である325℃まで低下する。
図5に示すLiCl−SrCl2系の場合も、溶融塩の共晶組成であるSrCl2が68重量%に濃縮されるまで純粋LiClを成長させることができる。一方、LiClにCsClとSrCl2が混合されている場合は、図6に示すような2元系状態図が理論的に可能であるが、SrCl2が3.2%含まれていると仮定する場合、72重量%のCsClで322℃の共晶温度を有する。しかし、491℃で固相のSrCl2が形成されるので、CsClが53重量%になるまで純粋LiClを回収することができる。
したがって、本発明は理論的に可能な濃度範囲内において、不純物が含まれている溶融塩から目的とする純粋な塩を回収する共晶条件を確立することができる。
本発明による前記精製方法は、非特許文献1および非特許文献2などによって報告されたゼオライトによるCsおよびSrの吸着技術とは異なり、化学的な吸着剤を全然必要としないことと、非特許文献3のゾーン精製法(zone refining)によるFe、Co、Ni、Caなどの元素分離とは異なり、Srおよびアルカリ金属であるCsまで分離することができるメリットを有する。
以下、本発明の内容を実施例を通じて具体的に説明する。ただ、これらは本発明をより詳細に説明するためのものであって、本発明の権利範囲がこれらによって限定されるものではない。
次いで、図7を参照してLiCl結晶を精製する実施例1、2の手順を説明する。
実施例1(LiCl-CsCl溶融塩からのLiCl結晶の精製)
初期CsClの濃度を6重量%に固定させて、模擬使用済みの核燃料の電解還元工程から生成されたLiCl-CsCl溶融塩10の表面温度を605℃に維持した後、るつぼ60を上昇させて30rpmで回転する引出し棒50を溶融塩内へ浸漬100させた。
このとき、引出し棒50の周囲にメニスカスが形成されることを確認することができ、20秒の後、るつぼ60を徐々に下降させることにより引出し棒の結晶の引出しを開始110した。
ここで、るつぼの下降速度を10mm/hrに維持しながら結晶を成長120させた結果、純粋LiClの結晶130に成長させることができた。これを化学分析した結果、本実施例のように精製されたLiCl結晶内におけるCsClの濃度は0.28重量%であることが確認された。
図7は、前記実施例1によってLiCl-CsCl溶融塩から純粋LiCl結晶を成長させる工程を示したものである。
実施例2(LiCl-CsCl-SrCl 2 溶融塩からのLiCl結晶の精製)
初期CsClおよびSrCl2の濃度をそれぞれ5.9重量%および3.2重量%に固定させ、模擬使用済みの核燃料の電解還元工程から生成されたLiCl-CsCl-SrCl2溶融塩の表面温度を610℃に維持した後、10rpmで回転する引出し棒を下降させて溶融塩内に浸漬させた。
このとき、引出し棒の周囲にメニスカスが形成されていることを確認することができ、20秒の後、引出し棒を引上げることによって結晶の引出しを開始した。
ここで、引出し棒の引上げ速度を各々5、20、40mm/hr別に維持して結晶を成長させた結果、それぞれ純粋LiCl結晶に成長させることができた。
前記それぞれの引上げ棒の引上げ速度別のLiCl結晶に対して化学分析した結果、LiCl結晶内におけるCsおよびSrの濃度は、5mm/hrの場合、それぞれ0.047重量%および0.047重量%であり、20mm/hrの場合、それぞれ0.4054重量%および0.2474重量%であり、40mm/hrの場合、それぞれ0.9247重量%および0.4658重量%であった。
したがって、成長されたLiCl結晶における不純物の含量比は、引上げの速度が低速であるほど低くなるので、高純度のLiClを回収するためには低い引上げ速度が必要であることが確認された。
以上、本発明の好ましい実施例は本発明を限定するものではなく、当該技術分野の当業者であれば、特許請求範囲に記載されている本発明の思想およびカテゴリーの範囲内で本発明を多様に修正および変更することができる。
本発明によると、廃溶融塩内に含まれているCsCl、SrCl2などのような高放熱性核種を除去してLiCl塩などのような塩をリサイクルすることができ、高準位の廃棄物量を画期的に減少せしめて廃棄物処分費用を減らすことができるので、塩廃棄物の処理分野で有用に活用することができる。
本発明の好適な1実施形態として示す溶融塩チョクラルスキー結晶成長装置(引出し棒固定‐るつぼ上下)の模式図である。 本発明の他の実施形態として示す溶融塩チョクラルスキー結晶成長装置(るつぼ固定‐引出し棒上下)の模式図である。 本発明の1実施形態による溶融塩結晶を引上げるための引出し棒を示した部分拡大図面である。 FactSageによって計算されたLiCl-(Owt%)SrCl2-CsClの二元系の状態図である。 FactSageによって計算されたLiCl-SrCl2-(Owt%)CsClの二元系の状態図である。 FactSageによって計算されたLiCl-SrCl2-CsClの二元系の状態図である。 本発明の実施例によってLiCl-CsCl溶融塩から純粋LiCl結晶を成長させる工程を示した図面である。
符号の説明
10:溶融塩
20:発熱部
30:塩結晶
40:上昇・下降装置
41:引上げ・引下げ装置
50:引出し棒
60:るつぼ
70:塩結晶固着ネジ
80:塩結晶固着ネジ山
90:排気口
100:引出し棒の浸漬とメニスカスの形成
110:引出しの開始
120:結晶の成長
130:精製されたLiClの結晶

Claims (27)

  1. 制御された温度で原料塩を溶解させるための発熱部を含むるつぼと、
    前記るつぼの下端中央部に装着している、前記るつぼを上昇または下降させるための上昇・下降装置と、
    前記るつぼの上端中央部に装着している、不純物を含む原料溶融塩から目的とする純粋な塩結晶を引出すための引出し棒と、
    回転可能に前記引出し棒の下端部に設置されて、不純物を含む原料溶融塩と接触する複数個の塩結晶固着ネジと、前記塩結晶固着ネジの外周面に形成される塩結晶固着ネジ山と、前記引出し棒の下端部と前記塩結晶固着ネジの上端部に位置して、前記複数個の塩結晶固着ネジの間に前記原料溶融塩が容易に浸透されるようにする排気口とによって構成される塩結晶固着ネジ部とを具備するチョクラルスキー結晶成長装置。
  2. 前記塩結晶固着ネジ部を1つ以上設置することを特徴とする請求項1に記載のチョクラルスキー結晶成長装置。
  3. 前記塩結晶固着ネジ部を2つ以上設置するとともに、前記各塩結晶固着ネジ部の間に間隔が形成されるようにすることを特徴とする請求項1又は2に記載のチョクラルスキー結晶成長装置。
  4. 前記引出し棒の素材が金属材料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のチョクラルスキー結晶成長装置。
  5. 前記不純物がCs塩およびSr塩でなる群から選択される1種または2種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のチョクラルスキー結晶成長装置。
  6. 前記塩が塩酸塩であることを特徴とする請求項5に記載のチョクラルスキー結晶成長装置。
  7. 前記目的とする塩結晶がLi塩結晶であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のチョクラルスキー結晶成長装置。
  8. 前記塩が塩酸塩であることを特徴とする請求項7に記載のチョクラルスキー結晶成長装置。
  9. 制御された温度で原料塩を溶解させるための発熱部を含むるつぼと、
    前記るつぼの上端中央部に装着している、不純物を含む原料溶融塩から目的とする純粋な塩結晶を引出すための引出し棒と、
    前記引出し棒の上端中央部に装着している、前記引出し棒を上昇または下降させるための上昇・下降装置と、
    回転可能に前記引出し棒の下端部に設置されて、不純物を含む原料溶融塩と接触する複数個の塩結晶固着ネジと、前記塩結晶固着ネジの外周面に形成される塩結晶固着ネジ山と、前記引出し棒の下端中央部と前記塩結晶固着ネジの上端部に位置して前記複数個の塩結晶固着ネジの間に前記原料溶融塩が容易に浸透されるようにする排気口とによって構成される塩結晶固着ネジ部とを具備するチョクラルスキー結晶成長装置。
  10. 前記塩結晶固着ネジ部を1つ以上設置することを特徴とする請求項9に記載のチョクラルスキー結晶成長装置。
  11. 前記塩結晶固着ネジ部を2つ以上設置するとともに、前記各塩結晶固着ネジ部の間に間隔が形成されるようにすることを特徴とする請求項9又は10に記載のチョクラルスキー結晶成長装置。
  12. 前記引出し棒の素材が金属材料であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載のチョクラルスキー結晶成長装置。
  13. 前記不純物がCs塩およびSr塩でなる群から選択される1種または2種であることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載のチョクラルスキー結晶成長装置。
  14. 前記塩が塩酸塩であることを特徴とする請求項13に記載のチョクラルスキー結晶成長装置。
  15. 前記目的とする塩結晶がLi塩結晶であることを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載のチョクラルスキー結晶成長装置。
  16. 前記塩が塩酸塩であることを特徴とする請求項15に記載のチョクラルスキー結晶成長装置。
  17. 酸化物を使用した後の核燃料の電解還元工程から生成される塩廃棄物のリサイクル工程において、チョクラルスキー結晶成長法を利用して不純物を含む廃溶融塩から目的とする純粋な塩結晶を回収することを特徴とするチョクラルスキー結晶成長法による塩廃棄物の精製方法。
  18. 前記チョクラルスキー結晶成長法が、
    (a)請求項1〜8のいずれか1項に記載のチョクラルスキー結晶成長装置において、引出し棒を固定させた状態で上昇・下降装置によりるつぼを上昇させるとともに、回転する引出し棒を不純物を含む廃溶融塩の中に浸漬させることによって前記引出し棒の周囲にメニスカスを形成させる段階と、
    (b)前記の段階で形成されたメニスカスが所定の直径に生成されるときるつぼの上昇を止めるとともに、前記るつぼの高さを一定のレベルに維持させることによって所定の直径を有するメニスカスを生成させる段階と、
    (c)前記(b)段階において、所定の直径を有するメニスカスが生成された後、前記るつぼをさらに下降させることによって目的とする純粋な塩を引出す工程を開始する段階と、
    (d)前記るつぼの下降速度を一定の速度に維持させることによって、目的の純粋塩結晶に成長させる段階とを含めてなることを特徴とする請求項17に記載のチョクラルスキー結晶成長法による塩廃棄物の精製方法。
  19. 前記チョクラルスキー結晶成長法が、
    (a)請求項9〜16のいずれか1項に記載のチョクラルスキー結晶成長装置において、前記るつぼを固定させた状態で引出し棒を下降させるとともに、回転する引出し棒を不純物を含む廃溶融塩の中に浸漬させることによって前記引出し棒の周囲にメニスカスを形成させる段階と、
    (b)前記の段階で形成されたメニスカスが所定の直径に生成されるとき引出し棒の下降を止めるとともに、前記引出し棒の高さを一定のレベルに維持させることによって所定の直径を有するメニスカスを生成させる段階と、
    (c)前記(b)段階において、所定の直径を有するメニスカスが生成された後、前記引出し棒をさらに引上げて目的とする純粋な塩を引出す工程を開始する段階と、
    (d)前記引出し棒の引上げの速度を一定の速度に維持させることによって目的の純粋塩結晶に成長させる段階とを含めてなることを特徴とする請求項17に記載のチョクラルスキー結晶成長法による塩廃棄物の精製方法。
  20. 前記不純物が、Cs塩およびSr塩でなる群から選択される1種または2種であることを特徴とする請求項18又は19に記載のチョクラルスキー結晶成長法による塩廃棄物の精製方法。
  21. 前記塩が塩酸塩であることを特徴とする請求項20に記載のチョクラルスキー結晶成長法による塩廃棄物の精製方法。
  22. 前記目的とする塩結晶がLi塩の結晶であることを特徴とする請求項18〜21のいずれかに記載のチョクラルスキー結晶成長法による塩廃棄物の精製方法。
  23. 前記Li塩が塩酸塩であることを特徴とする請求項22に記載のチョクラルスキー結晶成長法による塩廃棄物の精製方法。
  24. 前記引出し棒の回転速度が5〜120rpmであることを特徴とする請求項18〜23のいずれかに記載のチョクラルスキー結晶成長法による塩廃棄物の精製方法。
  25. 前記(d)段階におけるるつぼの下降速度が0.1〜50cm/hであることを特徴とする請求項18に記載のチョクラルスキー結晶成長法による塩廃棄物の精製方法。
  26. 前記(d)段階における引出し棒の引上げ速度が0.1〜50cm/hであることを特徴とする請求項19に記載のチョクラルスキー結晶成長法による塩廃棄物の精製方法。
  27. 前記(a)段階における廃溶融塩の表面温度が不純物の濃度に従って液相線(Liquidus Line)より0.1〜50℃の範囲内で調節されることを特徴とする請求項18又は19に記載のチョクラルスキー結晶成長法による塩廃棄物の精製方法。
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