本発明は、不純物を簡便かつ高感度に検出する方法及び装置に関する。特に、プローブ顕微鏡、または不純物検査装置に関する。
近年、半導体集積回路装置の多機能化が進行し、1個の半導体チップ(以下、単にチップと記す)に複数の回路を作りこむことが進められている。また、半導体集積回路装置の製造コストを低減するために、半導体素子および配線を微細化して、半導体チップの面積を小さくし、半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)1枚当たりの取得チップ数を増加することが進められている。こうした微細配線の信頼性を向上させるためには、数百ミクロン以下の配線幅に対しても不純物が存在する場合には、確実に不純物を捕獲する、あるいは検出する不純物測定装置の確立が不可欠である。
特開平9−159649号公報(特許文献1)には、資料の表面に溶液を接触させ、試料中または試料表面に存在する不純物を試料とともに溶解させ、溶液中に電極を挿入して不純物を分離する不純物測定方法が開示されている。
特開平11−297780号公報(特許文献2)には、基板の絶縁膜の表面に付着不純物が付着した状態で所定の電気特性を測定し、次に付着不純物を光の照射によりイオン化し、同様に電気特性を測定して付着不純物量を測定する方法について開示されている。
特開平9−159649号公報
特開平11−297780号公報
本発明は、上記の従来の技術を踏まえ、微細配線を備えたチップもしくはウエハなどのデバイス上に存在する不純物を、さらに簡便に高感度で検出する方法及び装置を提供することを目的とする。
解決する手段は、試料と探針との距離を試料表面の微小な構造を観察できない距離まで一定間隔離して所定の範囲を走査させながら、試料より拡散される物質を検知して、検知した値を走査範囲に対して三次元画像化するプローブ顕微鏡にある。本発明では、液中で試料より拡散される物質を検知する機能を有し、該探針を該試料上の所定の範囲を走査した後、該試料と該探針との距離を該試料表面の微小な構造を観察できない距離まで一定間隔離して所定の範囲を走査させながら、試料より拡散される物質を検知する。さらに、スキャナ制御ユニットにより該試料と該探針との距離を一定間隔で変化させて液中を三次元走査させる。その結果、探針で検知した信号を走査範囲に対して三次元画像化することを特徴とするプローブ顕微鏡である。
液中の走査時の信号検知は、前記プローブ,前記試料,対極、及び、参照極により行う。参照極に対する試料の電位は制御しない状態で、前記参照極に対するプローブの電位のみを可変制御することによりプローブに流れる電流を電気化学計測する。試料とプローブとの距離を連続的に変化させながら、同様の測定を繰り返すことにより、液中の三次元の位置それぞれにおける信号を取得し、電流値を試料より液中に拡散した物質の濃度の関数として認識できるため、結果を画像処理ユニットにより画像表示できる。また、探針に特異的に電流が流れた場合の参照極に対する探針の電位を検出することにより、試料から液中に拡散した物質の元素を同定できる。また、それぞれの結果は、画像表示ユニットで画像表示処理が可能である。
走査型トンネル顕微鏡(STM)や、原子間力顕微鏡(AFM)を液中に浸した試料に対し用いることにより、本発明の不純物検査装置とすることができる。この場合、探針を三次元に走査するための探針制御装置を設ける必要がある。また、探針の走査により得られる測定結果から試料上または試料中の不純物の成分、濃度や量を特定する検査処理装置や、測定結果を三次元画像化する画像処理装置を有することが好ましい。本発明の走査型プローブ顕微鏡は、液中で試料より拡散される物質を検知する機能を有する。試料と探針との距離を一定間隔以上離して配置し、試料表面の微小な構造を観察できない距離で試料上の所定の範囲を走査させながら、試料より拡散される物質を検知し、検知した値を走査範囲に対して三次元画像化する。探針は、液中で試料より拡散される物質を検知する機能を有する。試料上の所定の範囲を探針で二次元走査した後、試料と探針との距離を一定間隔で変化させて、さらに二次元走査し、結果的に液中を三次元走査させて、そのデータを用いて三次元画像とすることができる。そのため、本発明のプローブ顕微鏡は、試料と探針との距離を変化させて液中を三次元走査させるためのスキャナ制御ユニットを備える。
試料の検査の工程としては、試料表面や液中に存在する不純物,溶出物等の化合物を検知する工程と、試料の表面の幾何学的形状を検出する工程がある。試料の表面形状は、化合物を検知した部分のみを観察してもよいし、化合物の検知に関わらず試料の所定の範囲を観察してもよい。
化合物を検知する工程は、不純物・欠陥の存在位置を検出する工程,化合物の濃度を検出する工程,化合物の種類を検出する工程を適宜組み合わせることができる。化合物を検知した領域について、溶液厚みに対して前記試料表面から化合物の濃度を連続的に検出することで、拡散の状況を検知することができる。化合物を検知した結果は、三次元空間座標で認識される探針の位置と、その座標上で検出された電流値,電圧値の信号を画像処理ユニットにより三次元画像表示する。その結果、欠陥や不純物の存在を可視化し、精度よく検査可能である。
上記課題を解決する本願発明の特徴は、試料表面の幾何学的形状を検出する工程と、試料表面を液中に浸し、液中を電位,電流や電圧信号を測定する探針で走査する工程と、液中の探針の位置情報と探針の測定値に基づき不純物の存在位置を検出する方法にある。不純物の検出は、探針を試料からの距離を変化させる方向に動かして行う。たとえば、略平面の表面形状を有する試料の表面に存在する不純物を検出する場合には、試料上に探針を配置し、試料表面の法線方向(溶液の厚み方向)に探針を動かして探針と試料との距離を変化させる走査を行う。
また、先に溶液中を探針で走査して所定の信号を計測し、不純物の信号を検出した領域の溶液に対応する試料表面について幾何学的形状を検出してもよい。探針の位置を溶液中の三次元空間座標で制御し、各測定座標上で探針により電流や電圧信号を計測し、計測された測定データを三次元画像で表示させてもよい。
走査型プローブ顕微鏡は、微少な探針を試料表面に対して平行に走査させ、同時に、該試料表面の凹凸に沿うように該探針を該試料表面に対し垂直方向に移動させ、試料表面の微小な構造を観察する。探針には、液中で試料より拡散される物質を検知する機能を付与し、該試料表面の微小な構造を観察できない距離まで探針を一定間隔離して、隔離した所定の範囲で探針を走査させ、さらに、試料と探針との距離を変化させて走査させ、探針で検知した試料より拡散される物質を三次元画像化する。不純物が検知された領域の試料表面の幾何学的形状を確認することにより、不純物の存在位置を検出することができる。また、走査の結果に基づき試料表面や液中に存在する不純物を検知することができる。不純物の濃度に相当する変位を試料表面からの溶液厚みに対して連続的に検出するとよい。
不純物の検出は、対極と参照極と探針とを用いて行う。試料,対極,参照極の電位・位置は変えず、探針の位置と電位とを変化させて探針に流れる電流を測定する。測定された電流値を関数により不純物の濃度に換算したり、探針と参照極との電位を用いて、不純物の種類(元素)を同定する。また、換算された不純物の濃度や、同定した不純物の種類を画像表示する。
本発明のプローブ顕微鏡は、溶出した不純物の液中での存在位置が計測できることを特徴としている。詳しくは、本発明のプローブ顕微鏡は、試料表面から液の沖合方向までを連続的に計測して、不純物が液中のどの位置に存在しているかを三次元空間で表記することにより確認できる。従来技術は、試料表面から液の沖合方向までのどの位置に不純物が存在しているかを特定することができなかった点で本発明と大きく異なっている。
また、本発明のプローブ顕微鏡は、試料を様々な組成の液中に浸漬させることによって、試料表面に存在する不純物を溶出させる。従って、従来技術のように、試料表面に電気化学反応を進行させる必要がない。即ち、外部回路を用いて恣意的に発生させた酸化還元反応を受けて試料が変質することがない。また、試料と液体との組み合わせを選択することにより、液体による試料の腐食の進行の観察をすることができる。
従って、本発明によれば、特定領域に存在する不純物を捕集し、簡便かつ高感度で不純物の種類,濃度、及び拡散層厚を検出し得る方法、それに用いるデバイス、およびそれを備えた装置を提供でき、微細配線の信頼性向上を図ることができる。本発明は、微細配線を備えたチップ、もしくはウエハ上の不純物を簡便かつ高感度で検出する不純物測定方法を提供する。さらに、それに用いるデバイス、およびそれを備えた装置、並びにこれらの検査方法を提案する。
本発明によれば、微細配線を備えたチップやウエハなどのデバイス上に存在する不純物を、簡便に高感度で検出できる。また、不純物を簡便に高感度で検出できる不純物検査装置を提供できる。
本願発明者らは、試料を液中に浸し、溶出する試料中の不純物を観測することを検討した。特に、液中の不純物を簡便かつ高感度に検出する装置によれば、液中に試料由来の不純物が存在するか否かを特異的に検出したり、試料の腐食挙動を調べることにより、試料の詳細な特性を知ることが可能である。その結果、例えば半導体チップの検査方法、解析ツールとして使用でき、またその結果、更なるデバイスの高密度の集積化に貢献できる。本願発明者らは、走査型プローブ顕微鏡に着目した。
近年、走査型プローブ顕微鏡(走査型トンネル顕微鏡(STM)および原子間力顕微鏡(AFM))の技術を用いて原子・分子レベルで物質が観察されている。STM,AFMの技術は、大気中、超高真空中ばかりでなく、液中においても適用が可能である。液中では溶媒に様々な反応物質を溶解させることができるため、こうした液中に設置された電極の表面は化学反応の場として非常に重要である。液中での電気化学反応は、真空装置のような大がかりな装置を特に必要としないため、工業的にもエッチング,メッキ等の湿式プロセス,センサー,電池等、古くから広範囲に応用がなされている。以下に、液中でのSTM,AFMおよびその関連技術により局所的な反応もしくは加工を行った例の中からいくつか説明する。
Acc.Chem.Res.,23,357(1990)には、微小電極からなる探針に用いたScanning Electrochemical Microscopy(SECM)により、試料電極上への金属の電析,金属および半導体電極表面のエッチングを局所的に行うことについて記載されている(Bard et al.)。探針上で生成したイオン種の濃度が、探針直下で局所的に高くなることを利用して、基板表面で電気化学反応を起こさせている。この方法では、探針と試料間の距離は常に一定である。
Appl.Phys.Lett.,57,270(1990)には、HFを含む溶液中で、STM走査することにより、SiおよびGaAsの基板を数10nmの線幅でエッチングすることが開示されている(Nagahara et al.)この現象は、STM探針と基板との間の強い電場により、試料表面が陽極酸化されるためと説明されている。
J.Vac.Sci.Technol.,A8,3537(1990)には、STM観察中にNaOH溶液中で試料基板のTa表面が平坦化されることが開示されている(Thundat et al.)。この現象は、探針と試料基板間の強い電場のために溶液中のOH-イオンが基板表面に吸着し、表面の酸化が進むためであると考えられる。
Jpn.J.Appl.Phys.,32,L863(1993)には、ピロールを含む溶液中で、STM探針により、HOPG基板上にポリピロールを局所的に析出させることが開示されている(Sasano et al.)。具体的には、試料基板の電位をポリピロールの析出が起こる直前の電位に設定し、探針をその電位より高く設定してHOPG基板表面を走査することによりポリピロールの局所的な析出を実現している。この反応の機構は以下のように考察されている。まず、STM探針上でピロールモノマーが酸化される。ピロールは探針よりもHOPG上に吸着しやすいため、HOPG上でその後の重合反応が進む。この方法も、前述のBardらの方法と同様、探針と試料間の距離は一定である。
特願平7−305963号公報には、液中に、電気化学反応の場となる試料として用いられる第1の作用電極と、第1の作用電極に対して局所的に対向する第2の作用電極(探針)とを設置し、第1および第2の作用電極の電位をそれぞれ一定に設定し、2つの作用電極の表面間距離Dをその液中での電気二重層の厚み以内に一定に設定した後、前記第2の作用電極の電位を変化させるか、または前記表面間距離Dを変化させることにより、第1の作用電極上における電気化学反応を制御することで、液中での局所的な電気化学反応を制御する方法が開示されている。2つの作用電極の電位をそれぞれに制御することによって、試料電極上における電気化学反応を制御することを目的としている。即ち、試料表面での溶解(エッチング)や析出反応を制御する方法である。
本発明の不純物,欠陥の計測方法は、液中に浸した試料の参照電位を測定し、液中で試料の形状を計測し、試料より溶出した液中の化合物を検出し、再度試料の参照電位を測定する。液中の化合物は、電位を変化させた場合の電流を測定し、検出した電流値を画像化する。画像化した電流値よりピークを検出し、ピーク検出時の電位を確認する。ピーク電位は化合物の種類や量により変化するため、溶出した化合物を特定可能である。試料中に不純物が混入している場合には、不純物由来のピークとなる。また、試料中に欠陥や腐食が存在すると、例えば銅配線の断線等があるとその部分より銅の溶出が生じやすくなるため、配線材料に由来するピークが検出される。本発明では、一般に知られている電気化学計測法はすべて適用できる。計測方法は先の電位のみの可変制御に係わらず、定電位法,定電流法,サイクリックボルタモグラム,クロノポテンショメトリなど、様々の計測方法が適用できる。
本願発明のように、走査型プローブ顕微鏡により、探針と試料間の距離を溶液の厚み方向に対して連続的に変化させ、試料を浸した液中を三次元的に走査し、液中の成分の分布を観測することで、液組成と試料表面との相互作用、即ち反応性,溶解性,腐食性などの大きさが判断可能となる。
二次元走査では、物質の種類、あるいは液の組成によって、液中での物質の溶解性や拡散性が変わるため、溶解した全物質の総量、並びに、複数の物質が存在する場合には、個々の物質の溶解量の大小を把握することが困難であった。これに対し、三次元で計測することにより、溶け出した物質の全量が把握できるとともに、液組成による検出された物質の溶解性や拡散性を具体的に数値化することができる。
また、三次元的に走査させることにより、半導体チップやウエハなどの微細配線上から液中に溶解した不純物が存在するか否かを特異的に検出することができる。不純物の検査装置としてのみではなく、腐食挙動を調べる解析ツールとして使用できる。
本発明の走査型プローブ顕微鏡は、液中に探針,試料,対極、及び、参照極が配置されたプローブ顕微鏡であり、参照極に対する試料の電位を制御しない状態で、試料と探針との距離を連続的に変化させながら、参照極に対する探針の電位のみを可変制御する。その結果、探針に流れる電流を計測すると、試料に電気化学的な変化を与えない状態で、液中に溶解した物質が測定できる。
また、液中の探針の位置を三次元の空間座標で認識し、その座標上で検出される電流や電圧の信号を三次元画像で表示させる画像処理ユニットを備える。探針に流れる電流値を、試料より液中に拡散した物質の濃度の関数として画像表示する画像処理ユニットを有すると、液中に溶解した物質の量、並びに存在位置の解析が可能となる。
また、探針に電流が流れる参照極に対する探針の電位を検出し、その探針の電位を、試料より液中に拡散した物質の元素を同定するための指標として画像表示する画像処理ユニットを有すると、液中に溶解した物質の種類の解析が可能となる。
このような測定では、試料表面の形状と対比させて解析できる特徴を有する。即ち、形状を測定して、欠陥や凹凸などの形状の変化が見つかった場合、このような形状に変化のある部分において、液中に溶解した物質が検出されるかどうかを解析することができる。これにより、形状と溶解した物質との因果関係を明確にすることができる。また、時間的な変化を追跡することによって、溶解物質の濃度の時間に対する変化を解析することができる。
このような不純物検査装置は、試料表面や試料を浸した液中に存在する不純物を検知する工程,不純物が検知された領域の試料表面の幾何学的形状を検出する工程,不純物の存在位置を検出する工程,不純物の濃度に相当する変位を試料表面からの溶液厚みに対して連続的に検出する工程、により不純物を検査する。このように試料を検査できるので、半導体チップやウエハなどの微細配線の信頼性が向上する。走査型プローブ顕微鏡は、走査型トンネル顕微鏡,原子間力顕微鏡のいずれかの構成を主とするものが簡便でよい。以下、図面を用いた実施例により、さらに詳細に説明する。
実施例1では、走査型トンネル顕微鏡(STM)の機構を主として用い、液中の試料を観察する検査装置の第一の実施形態を説明する。走査型トンネル顕微鏡は、走査型プローブ顕微鏡のひとつであり、探針を、導電性を有する試料に接近させた際に流れるトンネル電流により、表面の構造や状態を観察する装置である。図1は、本例を示す図である。
本実施例の検査装置は、試験セル3と、試験セル3の位置を移動させる移動機構とを有し、探針5,対極6,参照極7が試験セル3内で少なくとも一部液2に浸された状態となるよう設けられる。移動機構は、試験セルの位置を大きく変化させる粗動と、微調整する微動の両方が可能である。
不純物検査の対象物である試料1は、液2で満たされた試験セル3内に収められている。試料1はポテンショスタット・ガルバノスタット4に、導通部を介して接続させている(図示せず)。導通部は試験セル3でもよい。O−リング等によって試験セル3に固定し接続できる。バイポテンショ・ガルバノスタットは、電位,電流のいずれかを変化させた場合の他方の追随を検出する装置であり、計測モードを切り替える制御をする計測モード選択部13−1により形状計測モード,不純物計測モードの切り替えを行い、形状計測と不純物計測の両方を実施することができる。
本装置には、形状や不純物の計測の前後に適宜試料の電位のモニタを行う参照極−試料間電位計測器14を備える。参照極−試料間電位計測器14とポテンショスタット・ガルバノスタット4との切り替え制御はスイッチング回路13−2で行う。
試験セル3は微動/粗動機構8上に配置する。本実施例の微動/粗動機構8は、試料1と探針5の間が離れた状態から探針を試料にアプローチさせるためのZ軸方向の粗動機構と、試料1と探針5との水平(XY)、垂直(Z)方向の微細な相対移動が可能なXYZ微動機構とを備える。微動/粗動機構8は、外部からの振動を除去するための高精密除振台9上に配置する。
形状計測モードでは、微動/粗動機構8で試験セル3を動かし、探針5と試料1とをトンネル領域まで接近させる。試料−探針間電圧制御部により試料1と探針5の間に電圧をかけ、トンネル電流検出部で試料1と探針5の間のトンネル電流を検出する。本実施例ではポテンショスタット・ガルバノスタット4を用いてトンネル電流を検出する。トンネル電流検出部10で検出されたトンネル電流の情報はフィードバック回路/制御ユニット11へ出力される。フィードバック回路/制御ユニット11は、トンネル電流が一定になるように探針5と試料1との距離を制御する。距離の制御には、微動/粗動機構8を使用する。トンネル電流検出部10からのトンネル電流信号とフィードバック回路/制御ユニット11からの制御信号は、トンネル顕微鏡画像処理部12で、データ処理され、トンネル顕微鏡の形状像となる。
不純物計測モードでは、ポテンショスタット・ガルバノスタット4を切り替え、参照極と探針間の電位を制御する参照極−探針間電位制御部と、探針に流れる電流を検出するための対極−探針間電流検出部で計測する。参照極と探針間の電位を制御し、対極−探針間に流れる電流を走査,検出する。探針位置制御ユニットにより、試料を浸した液中を探針で三次元に走査する。探針位置の制御には、微動/粗動機構8を使用する。試料の特定の基準位置よりXYZ軸方向に適宜探針を走査させてもよいし、試料の表面形状に沿って走査させてもよい。各位置より検出されたピーク電流・電位を取得し、電位より検出した元素を特定し、電流値より検出化合物の定量化が可能である。得られた不純物情報は、電流の検出位置ごとに三次元画像処理部でデータ処理され、不純物・欠陥を表示する検査画像を得られる。従って、本不純物計測モードでは、試料より拡散した物質を権利し、定量化することが可能であり、溶液中の各部の定量値を画像化することができる。
装置の使用方法は下記の通りである。
(1)まず、参照極−試料間電位計測器14により参照極と試料間の開回路での参照電位を計測する。また、電位が計測できていることを確認する。
(2)スイッチング回路13−2により、参照極−試料間電位計測器14からポテンショスタット・ガルバノスタット4に切り替える。
(3)計測モード選択部13−1により、ポテンショスタット・ガルバノスタット4を形状計測モードとし、従来手法によりプローブ顕微鏡像を取得する。
(4)計測モード選択部13−1により、ポテンショスタット・ガルバノスタット4を不純物計測モードとし、参照極−探針間電位制御部により参照極と探針間の電位を制御する。電位制御方法は従来法を適宜使用することができ、例としては電位を一定の状態に保持し続けるクロノアンペロメトリ法(定電位法とも言う)や、電位を一定の速度で走査するサイクリックボルタンメトリ法が挙げられる。また、対極−探針間電流検出部により対極−探針間に流れる電流を検出する。参照極と探針間の電位の制御、及び対極−探針間に流れる電流の検出は、各検出位置で実施される。
(5)液厚み三次元空間探針位置計測/制御ユニット16は、試料表面から液面に近い液の沖合までの三次元空間内で、探針5の水平(X軸,Y軸)および垂直(Z軸)の正確な座標点を計測する。また、試料表面から液の沖合側まで三次元空間全体を洩れなく走査させるため、探針のXYZ座標を制御させる。測定の都度、液厚み三次元空間探針位置計測/制御ユニット16は、探針のXYZ座標の信号を微動機構に送り、探針を走査させる。
(6)各座標点における対極−探針間電流は、電流検出位置三次元画像処理部17によりデータ処理され、三次元不純物画像として画像化される。
図1の走査型トンネル顕微鏡を用いて、試料としてCuの75ミクロン幅の配線を有する半導体チップを観察した。
図11に使用した試験セルの断面及び上部より見た図を示す。本実施例の検査装置は、試験セル3へ液を導入するため、探針の近傍に液体を注入・排出するチューブを有する。液体外での試料の表面形状の観察と、液中での試料の不純物計測をする際、液の出し入れで探針と試料との位置関係がずれることを防止できる。試験セルの上部には、探針を支持するためのSTMホルダが配置される。上記のチューブは、ホルダに穴を開け、その穴にチューブを通して設けた。このようにすることにより、ホルダを外さないで液の注入が可能となるため、ホルダの移動により測定する領域がずれることを防止できる。液体の注入・排出は、それぞれ専用のマイクロチューブポンプを用いる。これにより、液体の注入速度,排出速度を制御することができる。その結果として、探針と試料との位置ずれを確実に回避でき、探針で試料表面の形状観察をしながら、液体の注入・排出が可能となる。
図8は微少な探針を試料表面に対して平行に走査させると同時に、該試料表面の凹凸に沿うように該探針を該試料表面に対し垂直方向に移動させることによって、試料表面の微小な構造を観察した形状像である。対極と参照極に白金を、探針に白金−イリジウムを使用した。液には過酸化水素0.2wt%水溶液を使用した。
不純物計測モードでは、この試料表面位置より液の沖合側(液面側)10ミクロンの位置に探針を移動させ、サイクリックボルタモグラムを測定した。また、その後試料表面位置より100ミクロンの位置に探針を移動して同様にサイクリックボルタモグラムを測定した。図9がそれぞれのサイクリックボルタモグラムである。サイクリックボルタモグラムの測定は、参照極に対する探針電位を0.5Vから−1.2Vまで100mV/秒の電位走査速度で走査させながら、対極−探針間に流れる電流値を測定した。
図9のサイクリックボルタモグラムの測定位置(分極測定位置)Aは配線表面より100ミクロン離れたはるか沖合いの位置である。位置Bは配線表面が平坦な正常部分の表面より10ミクロン離れた位置である。位置Cは配線表面に欠陥(くぼんだ箇所)が存在する異常部分の表面より10ミクロン離れた位置である。位置AやBに比べて、位置CではCuが析出する電位(ここでは−0.8V)において電流が還元側に大きく流れている。位置Cは位置AやBに比べ、この電位において絶対値で最大の電流値を検出した。同様にA〜Cの位置を含め、液中を探針で走査し、電流値を測定した。測定範囲はX軸座標点0〜10ミクロン,Y軸座標点0〜10ミクロン,Z軸(試料−探針間距離)座標点10〜100ミクロンとした。この範囲の電流値を測定しながら移動させ、等間隔の各座標点においてデータを得た。
図10はCuが析出する電位(ここでは−0.8V)における電流値で、且つ、同じ試料−探針間距離内で還元電流の最大値を三次元空間で測定し、三次元マッピング化した結果である。三次元空間で測定すると特定の領域の座標上でCuの還元電流が流れる部分が存在している。このように、Cuの75ミクロン幅の配線を有する半導体チップ上にCuの溶解を検知することができた。
本実施例では、実施例1の液中観察用の走査型トンネル顕微鏡の変形例を説明する。図2は、本実施例を示す模式図である。本実施例では、対極−探針間の電流を制御し、参照極−探針間の電位を測定して不純物の分布を測定する点が特徴となる。
実施例1と同様に、試料1は液2で満たされた試験セル3内に収められ、ポテンショスタット・ガルバノスタット4に導通部を介して接続させている。また、探針5と対極6と参照極7とが液2に浸された状態で試験セル3に収められている。
ポテンショスタット・ガルバノスタット4は、対極と探針間に流れる電流を制御する対極−探針間電流制御部と、参照極と探針間の電位を検出するための参照極−探針間電位検出部18を備える。対極−探針間電流制御部の電流の制御方法は、電流を一定の状態に保持し続けるクロノポテンショメトリ法(定電流法とも言う)などの制御方法である。このときの参照極と探針間の電位の時間変化を検出する。対極と探針との間の電流の制御、及び参照極と探針との間の電位の検出は、各検出位置で実施される。液厚み三次元空間探針位置計測/制御ユニット16は、試料表面から液面に近い液の沖合までの三次元空間内で、探針5の水平(X軸,Y軸)および垂直(Z軸)の正確な座標点を計測する。また、試料表面から液の沖合まで三次元空間全体を洩れなく走査させるため、探針のXYZ座標を微動/粗動機構8により制御させる。測定の都度、液厚み三次元空間探針位置計測/制御ユニット16は、探針のXYZ座標の信号を微動機構に送り、探針を走査させる。電位検出位置三次元画像処理部19では、各座標点における参照極−探針間電位がデータ処理され、三次元不純物画像として画像化される。
図2の走査型トンネル顕微鏡を用いて、実施例1と同様に試料としてCuの75ミクロン幅の配線を有する半導体チップを観察した。対極と参照極に白金を、探針に白金−イリジウムを使用した。液には過酸化水素0.2wt%水溶液を使用した。
対極−探針間に流れる電流を一定の10pAに制御し、参照極に対する探針電位を測定した。測定範囲はX軸座標点0〜10ミクロン,Y軸座標点0〜10ミクロン,Z軸(試料−探針間距離)座標点10〜100ミクロンとした。Z軸方向には、探針を10ミクロン間隔で移動させた。各座標点において探針の電位を測定した。
表1〜表6は10秒目の電位を三次元空間で測定した結果である。三次元空間で測定すると特定の領域の座標上でFeの還元電位(ここでは−0.3V)が現れる部分が存在している。このように、Cuの75ミクロン幅の配線を有する半導体チップ上にFe不純物を捕獲することができた。表1〜表6のデータを用いれば、Feの捕獲位置を三次元マッピング化することができる。
〔比較例1〕
図3は、従来の液中観察用走査型トンネル顕微鏡を示す模試図(比較例1)である。実施例1,2と同様に、試験セル3,探針5,対極6,参照極7,微動/粗動機構8,高精密除振台9を備える。
図3に示すような従来のトンネル顕微鏡は、試料1と探針5間に電圧をかけ、トンネル電流を検出し、トンネル電流が一定になるようにフィードバック回路/制御ユニット11で微動/粗動機構8をフィードバック制御することができる。トンネル電流検出部10からのトンネル電流信号とフィードバック回路/制御ユニット11からの制御信号は、トンネル顕微鏡画像処理部12で、データ処理され、トンネル顕微鏡の形状像を得られる。但し、従来の液中観察用走査型トンネル顕微鏡では三次元で探針を制御する機構を有しておらず、本発明の三次元不純物像は得られない。
〔比較例2〕
次に、比較例2の液中観察用の走査型トンネル顕微鏡の形態を図4に示す。比較例2は、比較例1に計測モード選択部13−1と、参照極−探針間電位制御部、および対極−探針間電流検出部15を設けた点に特徴を有する。比較例1のトンネル顕微鏡と同様に、トンネル顕微鏡の形状像を得ることができる。
さらに、ポテンショスタット・ガルバノスタット4は、参照極と試料間の電位を制御する参照極−試料間電位制御部と、試料に流れる電流を検出するための対極−試料間電流検出部を備える。この場合、試料―探針間距離を可変して、変化を見る必要がない。従って、液中を液面に向かう方向に探針を走査する機構を持ち合わせておらず、三次元空間で探針を移動させることができない。またその結果を画像化することができないため、不純物像を三次元で観察することができない。
第三の実施例として、液中観察用の走査型原子間力顕微鏡を基本構造として使用した不純物検査装置について図5を用いて説明する。走査型原子間力顕微鏡は、上述の実施例1の走査型トンネル顕微鏡と同様に試料上を走査する走査型プローブ顕微鏡の一種である。走査型原子間力顕微鏡は、探針を試料の表面に接触させたり、一定の間隔を保ち走査させることにより、探針と試料との原子間の相互作用を探針の変位により検出する点が走査型トンネル顕微鏡と異なる。原子間力顕微鏡によれば、絶縁性を有する試料表面の形状も観測できる。
走査型原子間力顕微鏡は、上記の機構を有するため、探針変位検出光学系21を備える。探針変位検出光学系21は、光源と光検出器で構成され、光源から発生する検出光の光軸が探針5の先端部または探針5の変位に追従する部分に当てられ、反射光を光検出器で検出する構成を有している。微動/粗動機構8により、探針5と試料とが相互作用する領域まで探針を試料1に接近させ、探針変位検出光学系21により検出される反射光より探針変位信号がフィードバック回路/制御ユニット11へ出力される。フィードバック回路/制御ユニット11は、探針変位信号が一定になるように探針5と試料1との距離を微動/粗動機構8により制御する。探針変位検出光学系21からの探針変位信号とフィードバック回路/制御ユニット11からの制御信号は、原子間力顕微鏡画像処理部22で、データ処理され、原子間力顕微鏡の形状像となる。
本発明の走査型原子間力顕微鏡はスイッチング回路13−2により、参照極−試料間電位計測器14とポテンショスタット・ガルバノスタット20との切り替え制御することができる。まず、参照極−試料間電位計測器14により参照極と試料間の開回路での電位を計測する。電位が計測できていることを確認後、スイッチング回路13−2により、参照極−試料間電位計測器14からポテンショスタット・ガルバノスタット20に切り替える。本発明のポテンショスタット・ガルバノスタット20は、参照極と探針間の電位を制御して且つ、探針に流れる電流を検出するための参照極−探針間電位制御・対極−探針間電流検出部15を備える。電位制御方法は、電位を一定の状態に保持し続けるクロノアンペロメトリ法(定電位法とも言う)でも、電位を一定の速度で走査するサイクリックボルタンメトリ法でも、その他の制御方法でも良い。探針に流れる電流は、対極−探針間に流れる電流を検出する。これらの動作を各検出位置で実施するため、液厚み三次元空間探針位置計測/制御ユニット16を用いて、XYZを微動/粗動機構8に信号を送りながら測定の都度、探針を走査させる。液厚み三次元空間探針位置計測/制御ユニット16は、試料表面から液の沖合まで三次元空間内において、水平(X軸,Y軸)および垂直(Z軸)の正確な探針5の座標点を計測し、且つ、探針のXYZ座標を微動/粗動機構8により制御させ、試料表面から液の沖合まで三次元空間全体を洩れなく走査させる。電流検出位置三次元画像処理部17では、各座標点における対極−探針間電流がデータ処理され、三次元不純物像として画像化される。
図5の走査型原子間力顕微鏡を用いて、試料としてCuの75ミクロン幅の配線を有する半導体チップを観察した。実施例1と同様に、試験セル3に探針を保持するホルダと、液体を注入・抽出するチューブを使用した。図12に使用した試験セルの断面及び上部より見た図を示す。本実施例の検査装置は、試験セル3へ液を導入するため、探針の近傍に液体を注入・排出するチューブを有する。液体外での試料の表面形状の観察と、液中での試料の不純物計測をする際、液の出し入れで探針と試料との位置関係がずれることを防止できる。試験セルの上部には、カンチレバーと呼ばれる先端に探針が取り付けられたばねを支持するためのAFMホルダが配置される。上記のチューブは、ホルダに穴を開け、その穴にチューブを通して設けた。このようにすることにより、ホルダを外さないで液の注入が可能となるため、ホルダの移動により測定する領域がずれることを防止できる。液体の注入・排出は、それぞれ専用のマイクロチューブポンプを用いる。これにより、液体の注入速度,排出速度を制御することができる。その結果として、探針と試料との位置ずれを確実に回避でき、探針を試料表面に完全に接触させた状態で、あるいは、形状観察をしながら、液体の注入・排出が可能となる。
対極と参照極に白金を、探針に白金−イリジウムを使用した。液には過酸化水素0.2wt%水溶液を使用した。参照極−探針間電位を−0.3Vに一定制御し、対極−探針間に流れる電流を測定した。測定の座標点はX軸が0から10ミクロン、Y軸が0から10ミクロンまでを1ミクロン間隔で走査し、さらに、試料−探針間距離、すなわちZ軸が10から100ミクロンまでを10ミクロン間隔で移動させた。各座標点において先の探針電位を測定した。表7〜表12は1秒目の電流を三次元空間で測定した結果である。三次元空間で測定すると特定の領域の座標上でFeの還元電流が現れる部分が存在している。このように、Cuの75ミクロン幅の配線を有する半導体チップ上にFe不純物を捕獲することができた。表7〜表12のデータを用いれば、Feの捕獲位置を三次元マッピング化することができる。
図6は、液中観察用の走査型原子間力顕微鏡の第2の実施例を示す模試図である。試料1は液2で満たされた試験セル3内に収められる。試料1はポテンショスタット・ガルバノスタット4に、図中には示していないが導通部を介して接続させている。導通部は試験セル3であっても良く、O−リング等によって試験セル3に固定させることにより接続することが望ましい。試験セル2内には、探針5と対極6と参照極7とが液2に浸された状態で収められている。試験セル3は微動/粗動機構8上に配置されている。微動/粗動機構8は、探針5との水平(XY)および垂直(Z)方向の相対移動が可能なXYZ微動機構と、試料1と探針5間が離れた状態からアプローチするためのZ軸粗動機構を備えている。また、微動/粗動機構8は、外部からの振動を除去するための高精密除振台9上に置かれている。
走査型原子間力顕微鏡は、探針変位検出光学系21を備える。これは光源と光検出器で構成され、光源から発生する検出光の光軸が探針5の先端部に当てられ、反射光を検出する構成を有している。探針5は微動/粗動機構8で探針と試料とが相互作用する領域まで試料1に接近させ、フィードバック回路/制御ユニット11へ探針変位信号が出力される。フィードバック回路/制御ユニット11は、反射光量が一定になるように探針5と試料1との距離を微動/粗動機構8によりフィードバック制御する。また探針変位検出光学系21からの探針変位信号とフィードバック回路/制御ユニット11からの制御信号は、原子間力顕微鏡画像処理部22で、データ処理され、原子間力顕微鏡の形状像となる。
本発明の走査型原子間力顕微鏡はスイッチング回路13−2により、参照極−試料間電位計測器14とポテンショスタット・ガルバノスタット20との切り替え制御することができる。
本発明の不純物検査装置、並びにプローブ顕微鏡は以下の通りである。まず、参照極−試料間電位計測器14により参照極と試料間の開回路での電位を計測する。電位が計測できていることを確認後、スイッチング回路13−2により、参照極−試料間電位計測器14からポテンショスタット・ガルバノスタット20に切り替える。本発明のポテンショスタット・ガルバノスタット20は、対極と探針間に流れる電流を制御して且つ、参照極と探針間の電位を検出するための対極−探針間電流制御・参照極−探針間電位検出部18を備える。電流制御方法は、電流を一定の状態に保持し続けるクロノポテンショメトリ法(定電流法とも言う)でも、その他の制御方法でも良い。探針に流れる電流は、対極−探針間に流れる電流を制御する。このときの参照極と探針間の電位の時間変化を検出する。これらの動作を各検出位置で実施するため、液厚み三次元空間探針位置計測/制御ユニット16を用いて、XYZを微動/粗動機構8に信号を送りながら測定の都度、探針を走査させる。液厚み三次元空間探針位置計測/制御ユニット16は、試料表面から液の沖合まで三次元空間内において、水平(X軸,Y軸)および垂直(Z軸)の正確な探針5の座標点を計測し、且つ、探針のXYZ座標を微動/粗動機構8により制御させ、試料表面から液の沖合まで三次元空間全体を洩れなく走査させる。電位検出位置三次元画像処理部19では、各座標点における参照極−探針間電位がデータ処理され、三次元不純物像として画像化される。
図6の走査型原子間力顕微鏡を用いて、試料としてCuの75ミクロン幅の配線を有する半導体チップを観察した。対極と参照極に白金を、探針に白金−イリジウムを使用した。液には過酸化水素0.2wt%水溶液を使用した。対極−探針間に流れる電流を10pAに一定制御し、参照極に対する探針電位を測定した。測定の座標点はX軸が0から10ミクロン、Y軸が0から10ミクロンまでを1ミクロン間隔で走査し、さらに、試料−探針間距離、すなわちZ軸が10から100ミクロンまでを10ミクロン間隔で移動させた。各座標点において先の探針電位を測定した。表13〜表18は10秒目の電位を三次元空間で測定した結果である。三次元空間で測定すると特定の領域の座標上でFeの還元電位(ここでは−0.3V)が現れる部分が存在している。このように、Cuの75ミクロン幅の配線を有する半導体チップ上にFe不純物を捕獲することができた。表13〜表18のデータを用いれば、Feの捕獲位置を三次元マッピング化することができる。
〔比較例3〕
図7は、液中観察用の走査型原子間力顕微鏡の比較例を示す模試図である。
試料1は液2で満たされた試験セル3内に収められる。試料1はポテンショスタット・ガルバノスタット4に、図中には示していないが導通部を介して接続させている。試験セル2内には、探針5と対極6と参照極7とが液2に浸された状態で収められている。試験セル3は微動/粗動機構8上に配置されている。微動/粗動機構8は、探針5との水平(XY)および垂直(Z)方向の相対移動が可能なXYZ微動機構と、試料1と探針5間が離れた状態からアプローチするためのZ軸粗動機構を備えている。また、微動/粗動機構8は、外部からの振動を除去するための高精密除振台9上に置かれている。
走査型原子間力顕微鏡は、探針変位検出光学系21を備える。これは光源と光検出器で構成され、光源から発生する検出光の光軸が探針5の先端部に当てられ、反射光を検出する構成を有している。探針5は微動/粗動機構8で探針と試料とが相互作用する領域まで試料1に接近させ、フィードバック回路/制御ユニット11へ探針変位信号が出力される。フィードバック回路/制御ユニット11は、反射光量が一定になるように探針5と試料1との距離を微動/粗動機構8によりフィードバック制御する。また探針変位検出光学系21からの探針変位信号とフィードバック回路/制御ユニット11からの制御信号は、原子間力顕微鏡画像処理部22で、データ処理され、原子間力顕微鏡の形状像となる。
さらに、参照極−試料間電位制御23を備えたポテンショスタット・ガルバノスタット20を備える。但し、試料―探針間距離は特定の値に固定して測定するのであって、三次元空間的に探針を移動させる方法を持ち合わせていない。従って、本発明の三次元不純物像は得られない。
第1実施形態に係る走査型トンネル顕微鏡の構成説明図である。
第2実施形態に係る走査型トンネル顕微鏡の構成説明図である。
第1比較形態に係る走査型トンネル顕微鏡の構成説明図である。
第2比較形態に係る走査型トンネル顕微鏡の構成説明図である。
第3実施形態に係る走査型原子間力顕微鏡の構成説明図である。
第4実施形態に係る走査型原子間力顕微鏡の構成説明図である。
第3比較形態に係る走査型原子間力顕微鏡の構成説明図である。
実施例1に係る形状像である。
実施例1に係るサイクリックボルタモグラムである。
実施例1に係る三次元マッピング像である。
実施例に使用する試験セルを上面より見た図、及び断面図である。
実施例に使用する試験セルを上面より見た図、及び断面図である。
符号の説明
1 試料
2 液
3 試験セル
4,20 ポテンショスタット・ガルバノスタット
5 探針
6 対極
7 参照極
8 微動/粗動機構
9 高精密除振台
10 試料−探針間電圧制御・トンネル電流検出部
11 フィードバック回路/制御ユニット
12 トンネル顕微鏡画像処理部
13−1 計測モード選択部
13−2 スイッチング回路
14 参照極−試料間電位計測器
15 参照極−探針間電位制御・対極−探針間電流検出部
16 液厚み三次元空間探針位置計測/制御ユニット
17 電流検出位置三次元画像処理部
18 対極−探針間電流制御・参照極−探針間電位検出部
19 電位検出位置三次元画像処理部
21 探針変位検出光学系
22 原子間力顕微鏡画像処理部
23 参照極−試料間電位制御
24 参照極−試料間電位制御・対極−試料間電流検出部