JP2009119413A - 結晶性ポリマー微孔性膜及びその製造方法、並びに濾過用フィルタ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一方の面の平均孔径が、他方の面の平均孔径よりも大きく、かつ前記一方の面から前記他方の面に向かって平均孔径が連続的に減少し、かつ前記他方の面の平均孔径が0.05μm〜10μmであることを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜である。
【選択図】図1
Description
これらの微孔性膜は、電子工業用洗浄水、医薬用水、医薬製造工程用水、食品水等の濾過、滅菌に用いられ、近年、その用途及び使用量が拡大しており、粒子捕捉の点から信頼性の高い微孔性膜が注目されている。これらの中でも、結晶性ポリマーによる微孔性膜は耐薬品性に優れており、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を原料とした微孔性膜は、耐熱性及び耐薬品性に優れているため、その需要の伸びが著しい。
また、小孔径を有する濾過層と、該濾過層より孔径が大きい支持層とからなるポリテトラフルオロエチレン複層多孔膜(特許文献22参照)、ポリテトラフルオロエチレンシート上にポリテトラフルオロエチレン乳化分散液を塗布し、延伸したもの(特許文献23参照)、などが提案されている。
また、前記特許文献22及び23によれば、前記特許文献20及び21における問題は低減できるが、その一方で、塗布し、乾燥させた際に、膜にクラックや欠陥が発生しやすいという問題がある。更に、表面のみが小孔径になっているため、十分な濾過寿命が得られないという問題がある。
<1> 一方の面の平均孔径が、他方の面の平均孔径よりも大きく、かつ前記一方の面から前記他方の面に向かって平均孔径が連続的に減少し、かつ前記他方の面の平均孔径が0.05μm〜10μmであることを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜である。
<2> 横軸に一方の面からの厚み方向の距離をとり、縦軸に平均孔径をとったグラフが、傾きの異なる2つの連続線で描かれる前記<1>に記載の結晶性ポリマー微孔性膜である。
<3> 結晶性ポリマーからなるフィルムの他方の面を加熱して、該フィルムの厚み方向に温度勾配を形成した半焼成フィルムを延伸した後、更に前記他方の面を加熱して緻密層を形成してなる前記<1>から<2>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜である。
<4> 他方の面である加熱面の平均孔径が、その反対側の非加熱面の平均孔径よりも小さく、かつ前記非加熱面から前記加熱面に向かって平均孔径が連続的に減少している前記<3>に記載の結晶性ポリマー微孔性膜である。
<5> 緻密層の厚みが0.1μm〜20μmである前記<3>から<4>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜である。
<6> 結晶性ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレンである前記<1>から<5>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜である。
<7> 結晶性ポリマーからなるフィルムの一方の面を加熱して、該フィルムの厚み方向に温度勾配を形成した半焼成フィルムを形成する非対称加熱工程と、
前記半焼成フィルムを延伸する延伸工程と、
延伸後のフィルムの前記一方の面を更に加熱して緻密層を形成する緻密層形成工程と、を含むことを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<8> 結晶性ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレンである前記<7>に記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<9> 緻密層形成工程における加熱が、温度350℃以上で10秒間以上である前記<7>から<8>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<10> 延伸工程が、半焼成フィルムを一軸方向に延伸する前記<7>から<9>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<11> 延伸工程が、半焼成フィルムを二軸方向に延伸する前記<7>から<9>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<12> 前記<1>から<6>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜を用いたことを特徴とする濾過用フィルタである。
<13> プリーツ状に加工成形してなる前記<12>に記載の濾過用フィルタである。
<14> 結晶性ポリマー微孔性膜の平均孔径の大きな面側をフィルタの濾過面に使用する前記<12>から<13>のいずれかに記載の濾過用フィルタである。
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜においては、一方の面の平均孔径が、他方の面の平均孔径よりも大きく、かつ前記一方の面から前記他方の面に向かって平均孔径が連続的に変化している構造と、平均孔径が0.05μm〜10μmである緻密層とを備えていることにより、微粒子を効率良く捕捉することができ、濾過寿命が長く、高流量化により大設備に用いることができ、耐熱性及び耐薬品性に優れているため、これまでの濾過用フィルタでは対応できなかった高温濾過や反応性薬品の濾過にも適用できる。
前記半焼成フィルムを延伸する延伸工程と、
延伸後のフィルムの加熱側の前記一方の面を更に加熱して緻密層を形成する緻密層形成工程と、を含む。
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法においては、本発明の前記結晶性ポリマー微孔性膜を効率よく製造することができる。
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、一方の面の平均孔径が、他方の面の平均孔径よりも大きく、かつ前記一方の面から前記他方の面に向かって平均孔径が連続的に減少し、かつ前記他方の面の平均孔径が0.05μm〜10μmである。
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法は、非対称加熱工程と、延伸工程と、緻密層形成工程とを含み、結晶性ポリマーフィルム作製工程、親水化工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
以下、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜及び結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法について詳細に説明する。
ここで、図1に示すように、横軸に膜厚t(膜の厚み方向の距離)をとり、縦軸に膜の平均孔径Dをとったときに、グラフが、傾き(dD/dt)の異なる2つの連続線101と102とで描かれることが好ましい。前記傾き(dD/dt)はプラス及びマイナスのいずれであってもよく、二次曲線の接線の傾きの平均値を意味する。
図1中、Aで表される領域が最小孔径部位(緻密層101)であり、Bで表される領域が連続減少部位102である。
前記他方の面の平均孔径が0.05μm未満であると、孔径が小さすぎるため流量が小さくなりすぎてしまうことがあり、10μmを超えると、孔径が大きすぎるため粒子捕捉能が不足してしまうことがある。
前記緻密層の厚みは、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜15μmがより好ましく、1μm〜10μmが更に好ましい。前記厚みが0.1μm未満であると、容易に緻密層が破壊されてしまい耐久性が劣ることがあり、20μmを超えると、緻密層が厚すぎるため流量が小さくなりすぎたり、詰まり易くなってしまうことがある。なお、前記緻密層の形成方法については、後述する。
前記連続減少部位における非加熱面側の平均孔径は、2μm〜50μmが好ましく、3μm〜20μmがより好ましく、5μm〜10μmが更に好ましい。一方、加熱面側の平均孔径は、0.1μm〜10μmが好ましく、0.5μm〜5μmがより好ましく、1μm〜3μmが更に好ましい。
この場合、前記他方の面である加熱面の平均孔径が、その反対側の非加熱面の平均孔径よりも小さく、かつ前記非加熱面から前記加熱面に向かって平均孔径が連続的に減少していることがより好ましい。
以下においては、平均孔径が大きい側の面を「非加熱面」とし、平均孔径が小さい側の面を「加熱面」として説明する。これは本発明の説明をわかりやすくするために便宜的につけた呼称に過ぎない。したがって、未焼成の結晶性ポリマーフィルムのいずれの面を加熱して半焼成後に「加熱面」にしても構わない。
前記結晶性ポリマー微孔性膜は、膜厚みを「10」とし、非加熱面から深さ方向「1」の厚み部分における平均孔径をP1とし、「9」の厚み部分における平均孔径をP2としたとき、P1/P2が2〜10,000が好ましく、3〜100がより好ましい。
また、前記結晶性ポリマー微孔性膜は、非加熱面と加熱面の平均孔径の比(非加熱面/加熱面比)が5倍〜30倍が好ましく、10倍〜25倍がより好ましく、15倍〜20倍が更に好ましい。
本発明において、前記「結晶性ポリマー」とは、分子構造の中に長い鎖状の分子が規則的に並んだ結晶性領域と、規則的に並んでいない非結晶領域が混在したポリマーを意味し、このようなポリマーは物理的な処理により、結晶性が発現する。例えば、ポリエチレンフィルムを外力により延伸すると、始めは透明なフィルムが白濁する現象が認められる。これは外力によりポリマー内の分子配列が一つの方向に揃えられることによって、結晶性が発現したことに由来する。
これらの中でも、耐薬品性と扱い性の観点から、ポリアルキレン(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)が好ましく、ポリアルキレンにおけるアルキレン基の水素原子がフッ素原子によって一部又は全部が置換されたフッ素系ポリアルキレンがより好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく使用される。
前記ポリエチレンは、その分岐度により密度が変化し、分岐度が多く、結晶化度が低いものが低密度ポリエチレン(LDPE)、分岐度が少なく、結晶化度の高いものが高密度ポリエチレン(HDPE)と分類され、いずれも用いることができる。これらの中でも、結晶性コントロールの点から、HDPEが特に好ましい。
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法は、非対称加熱工程、延伸工程、及び緻密層形成工程を少なくとも含み、結晶性ポリマーフィルム作製工程、親水化工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
結晶性ポリマーからなる未焼成の結晶性フィルムを製造する際に用いる結晶性ポリマー原料の種類としては、特に制限はなく、上述した結晶性ポリマーを好ましく用いることができる。これらの中でも、ポリエチレン又はその水素原子がフッ素原子に置換された結晶性ポリマーが使用され、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が特に好ましい。
原料として使用する結晶性ポリマーは、数平均分子量500〜50,000,000のものが好ましく、1,000〜10,000,000のものがより好ましい。
原料として使用する結晶性ポリマーとしては、ポリエチレンが好ましく、例えば、ポリテトラフルオロエチレンを用いることができる。ポリテトラフルオロエチレンは、通常、乳化重合法により製造されたポリテトラフルオロエチレンを用いることができ、好ましくは乳化重合により得られた水性分散体を凝析することにより取得した微粉末状のポリテトラフルオロエチレンを使用する。
原料として使用するポリテトラフルオロエチレンの数平均分子量は、250万〜1000万が好ましく、300万〜800万がより好ましい。
前記ポリテトラフルオロエチレン原料としては、特に制限はなく、市場で販売されているポリテトラフルオロエチレン原料を適宜選択して使用してもよい。例えば、ダイキン工業株式会社製「ポリフロン・ファインパウダーF104U」などが好適に挙げられる。
なお、結晶性ポリマー未焼成フィルムの製造に際しては、「ポリフロンハンドブック」(ダイキン工業株式会社発行、1983年改訂版)に記載されている事項を適宜採用することができる。
前記非対称加熱工程は、結晶性ポリマーからなるフィルムの一方の表面を加熱して、該フィルムの厚み方向に温度勾配を形成した半焼成フィルムを形成する工程である。
ここで、前記半焼成とは、結晶性ポリマーをその焼成体の融点以上であり、かつ、その未焼成体の融点+15℃以下の温度で加熱処理することを意味する。
また、本発明において、結晶性ポリマーの未焼成体とは、焼成の加熱処理をしていないものを意味する。また、結晶性ポリマーの融点とは、結晶性ポリマー未焼成体を示差走査熱量計により測定した際に現れる吸熱カーブのピークの温度を意味する。前記焼成体の融点及び未焼成体の融点は、結晶性ポリマーの種類や平均分子量等により変化するが、50℃〜450℃が好ましく、80℃〜400℃がより好ましい。
このような温度は、以下のように考えることができる。例えば、結晶性ポリマーがポリテトラフルオロエチレンである場合には、焼成体の融点が約324℃で未焼成体の融点が約345℃である。従って、半焼成体にするには、ポリテトラフルオロエチレンフィルムの場合、327℃〜360℃が好ましく、335℃〜350℃がより好ましく、例えば345℃の温度に加熱する。半焼成体は、融点約324℃のものと融点約345℃のものが混在している状態である。
また、結晶性ポリマーからなるフィルムの厚み方向の温度勾配としては、非加熱面と加熱面の温度差は30℃以上が好ましく、50℃以上であることがより好ましい。
前記赤外線の一般的な定義は「実用赤外線」(人間と歴史社、1992年発行)を参考にすることができる。本発明において、前記赤外線とは、波長が0.74μm〜1,000μmの電磁波を意味し、そのうち波長が0.74μm〜3μmの範囲を近赤外線とし、波長が3μm〜1,000μmの範囲を遠赤外線とする。
本発明においては、半焼成フィルムの非加熱面と加熱面での温度差がある方が好ましいため、表層の加熱に有利な遠赤外線が好ましく使用される。
前記赤外線の装置の種類としては、目的の波長の赤外線が照射できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一般的に、近赤外線は電球(ハロゲンランプ)、遠赤外線はセラミック、石英、金属酸化面などの発熱体を用いることができる。
また、赤外線照射であれば、工業的に流れ作業で連続的に半焼成を行うことができ、しかも温度制御や装置のメンテナンスも容易である。また非接触であるため、クリーン、かつ毛羽立ちのような欠陥が生じることがない。
前記赤外線照射によるフィルム表面温度は、赤外線照射装置の出力、赤外線照射装置とフィルム表面の距離、照射時間(搬送速度)、雰囲気温度で制御でき、上記の半焼成体にする際の温度に設定することができるが、327℃〜380℃が好ましく、335℃〜360℃がより好ましい。前記表面温度が、327℃未満であると、結晶状態が変化せず、孔径制御ができなくなることがあり、380℃を超えると、フィルム全体が溶融することにより過度に形状が変形したり、ポリマーの熱分解が生じることがある。
前記赤外線の照射時間は、特に制限はなく、目的とする半焼成が十分に進行するのに必要な時間であり、30秒間〜120秒間が好ましく、45秒間〜90秒間がより好ましく、60秒間〜80秒間が更に好ましい。
連続的にフィルムの加熱面を加熱する場合には、フィルムの加熱面と非加熱面とで温度勾配を保持するため、加熱面の加熱と同時に非加熱面を冷却することが好ましい。
前記非加熱面を冷却する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば冷風を吹き付ける方法、冷媒に接触させる方法、冷却した材料に接触させる方法、放冷による冷却等の種々の方法が使用でき、好ましくは、フィルムの非加熱面に冷却物を接触させることにより行う。冷却物としては、冷却物としては、冷却ロールを選択することが特に好ましい。冷却ロールであれば、加熱面の加熱と同様に、工業的に流れ作業で連続的に半焼成を行うことができ、しかも温度制御や装置のメンテナンスも容易である。冷却ロールの温度は、上記の半焼成体にする際の温度と差を生じさせるように設定することができる。冷却ロールにフィルムを接触させる時間は、目的とする半焼成が十分に進行するのに必要な時間であり、加熱工程と同時進行で行うことを前提とすると、通常30秒間〜120秒間であり、好ましくは45秒間〜90秒間であり、より好ましくは60秒間〜80秒間である。
加熱ロール及び冷却ロールの表面材質は、一般に耐久性に優れるステンレス鋼とすることができ、特にSUS316を挙げることができる。本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法では、フィルムの非加熱面を加熱及び冷却ロールに接触させることが好ましいが、該加熱及び冷却ロールよりも低い温度に設定されたローラーをフィルムの加熱面に接触させても構わない。例えば、常温に維持されたローラーをフィルムの加熱面から圧接させて、フィルムを加熱ロールにフィットさせるようにしてもよい。また、加熱ロールに接触させる前又は後において、フィルムの加熱面をガイドロールに接触させても構わない。
また、前記非対称加熱工程を間欠的に行う場合にも、フィルムの加熱面を間欠的に加熱及び非加熱面を冷却して、非加熱面の温度上昇を抑制することが好ましい。
半焼成したフィルムは、次いで延伸することが好ましい。延伸は、長手方向と幅方向の両方について行うことが好ましい。長手方向と幅方向について、それぞれ逐次延伸を行ってもよいし、同時に二軸延伸を行ってもよい。
長手方向と幅方向について、それぞれ逐次延伸を行う場合には、まず、長手方向の延伸を行ってから幅方向の延伸を行うことが好ましい。
前記長手方向の延伸倍率は、4倍〜100倍が好ましく、8倍〜90倍がより好ましく、10倍〜80倍が更に好ましい。長手方向の延伸温度は、100℃〜300℃が好ましく、200℃〜290℃がより好ましく、250℃〜280℃が特に好ましい。
前記幅方向の延伸倍率は、10倍〜100倍が好ましく、12倍〜90倍がより好ましく、15倍〜70倍が更に好ましく、20倍〜40倍が特に好ましい。幅方向の延伸温度は、100℃〜300℃が好ましく、200℃〜290℃がより好ましく、250℃〜280℃が特に好ましい。
面積延伸倍率は、50倍〜300倍が好ましく、75倍〜280倍がより好ましく、100倍〜260倍が更に好ましい。延伸を行う際には、予め延伸温度以下の温度にフィルムを予備加熱しておいてもよい。
前記緻密層形成工程は、延伸後のフィルムの前記一方の面(加熱面)を更に加熱して緻密層を形成する工程である。
前記加熱方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、非対称加熱工程と同様の方法を用いることができるが、フィルムの表面に加熱物を接触させる方法、赤外線照射が特に好ましい。
前記緻密層形成工程における加熱は、例えば温度350℃以上で10秒間以上であることが好ましく、355℃〜380℃で10秒間〜20秒間がより好ましい。
なお、前記加熱面の加熱と同時に非加熱面を冷却することが好ましい。
前記親水化工程は、延伸後のフィルムを親水化処理する工程である。
前記親水化処理としては、(1)延伸後のフィルムに過酸化水素水又は水溶性有機溶剤の水溶液を含浸させた後、紫外線レーザーを照射する処理、(2)化学的エッチング処理、などが挙げられる。
これらの中でもケトン類が好ましく、アセトン、メチルエチルケトンがより好ましく、アセトンが特に好ましい。結晶性ポリマー微孔性膜に含浸する段階での過酸化水素水又は水溶性有機溶剤の水溶液の濃度は結晶性ポリマー微孔性膜の材質及び細孔の大きさによって若干変動するが、アセトン及びメチルエチルケトンの場合、85質量%〜100質量%が好ましい。また、紫外レーザー光照射時の結晶性ポリマー微孔性膜内部の過酸化水素水又は水溶性有機溶剤の水溶液の濃度は、使用する紫外レーザー光の波長における吸光度として0.1〜10が好ましい。例えばこれはアセトンの場合、光源としてKrFを使用する場合は、0.05質量%〜5質量%に相当する。吸光度としては0.1〜6が好ましく、0.5〜5がより好ましい。この濃度範囲に調整された過酸化水素水又は水溶性有機溶剤の水溶液を含んだ結晶性ポリマー微孔性膜に紫外レーザー光を照射する場合には、従来よりもかなり低い照射量で満足できる親水化効果が得られる。
結晶性ポリマー微孔性膜中の水溶性有機溶剤の水溶液の濃度を調整するために水を含浸させる方法としては、同じ水溶性有機溶剤のごく低濃度の水溶液中に浸漬するのが好ましい。
吸光度≡log10(I0/I)=εcd
ただし、εは水溶性有機溶剤の吸光係数、cは水溶性有機溶剤の水溶液の濃度(モル/dm3)、dは透過光路長さ(cm)、I0は溶媒単独の光透過強度、Iはその溶液の光透過強度を表す。本発明においては、吸光度がxとなる濃度とは、dが1cmの測定セルで測定した場合に吸光度がxとなるような濃度を意味する。ただし、dが1cmでは透過光量が少なすぎて吸光度の測定が困難であるような高い濃度の場合は、dが0.2cmの測定セルを使用して得られた吸光度を5倍したものを吸光度とした。
前記過酸化水素水又は水溶性有機溶剤の水溶液の含浸温度は、結晶性ポリマー微孔性膜の微孔内への水溶液の拡散速度の観点からは10℃〜40℃が好ましい。含浸温度が10℃よりも低い場合には、微孔内部へ水溶液を十分に拡散させるのに比較的長い時間が必要となり、また、40℃よりも高くなると、水溶性有機溶剤の蒸発速度が高くなり、好ましくない。
紫外レーザー光としては、波長が190nm〜400nm以下のものが好ましく、アルゴンイオンレーザー光、クリプトンイオンレーザー光、N2レーザー光、色素レーザー光、及びエキシマレーザー光等が例示されるが、エキシマレーザー光が好適である。これらの中でも、高出力が長時間にわたって安定して得られるKrFエキシマレーザー光(波長:248nm)、ArFエキシマレーザー光(波長:193nm)及びXeClエキシマレーザー光(308nm)が特に好ましい。
前記エキシマレーザー光照射は、通常、室温、大気中で行うが、窒素雰囲気中で行うのが好ましい。また、エキシマレーザー光の照射条件は、フッ素樹脂の種類及び所望の表面改質の程度によって左右されるが、一般的な照射条件は次の通りである。
・フルエンス:10mJ/cm2/パルス以上
・入射エネルギー:0.1J/cm2以上
・KrFフルエンス:50〜500mJ/cm2/パルス入射エネルギー:0.25〜10.0J/cm2
・ArFフルエンス:10〜500mJ/cm2/パルス入射エネルギー:0.1〜10.0J/cm2
・XeClフルエンス:50〜600mJ/cm2/パルス入射エネルギー:3.0〜100J/cm2
前記酸化分解処理は、例えば、有機アルカリ金属溶液を用いて行われる。結晶性ポリマー微孔性膜に、有機アルカリ金属溶液により化学的エッチング処理を施すと、表面は変性され親水性が付与されるとともに、褐色化した層(褐色層)が形成される。この褐色層は、フッ化ナトリウム、炭素−炭素二重結合を有するフッ素樹脂の分解物、これらとナフタレン、アントラセンとの重合物等からなるが、これらは、脱落、分解、溶出等により濾過液に混入する場合があるので、除去することが好ましい。これらの除去は、過酸化水素や次亜塩素酸ソーダ、オゾン等による酸化分解によりすることができる。
前記化学的エッチング処理に用いられる有機アルカリ金属溶液としては、例えばメチルリチウム、金属ナトリウム−ナフタレン錯体、金属ナトリウム−アントラセン錯体のテトラヒドロフラン等の有機溶剤溶液、金属ナトリウム−液体アンモニアの溶液等が挙げられる。これらの中でも、ナフタレンを芳香族アニオンラジカルとした金属ナトリウムとの錯体の溶液が一般に広く用いられているが、結晶性ポリマー微孔性膜の内部まで化学的エッチング処理を施こすためには、ベンゾフェノン、アントラセン、ビフェニルを芳香族アニオンラジカルとして用いることが好ましい。
本発明の濾過用フィルタは、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜を用いることを特徴とする。
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜を濾過用フィルタとして用いるときは、その非加熱面(平均孔径が大きい面)をインレット側として濾過を行う。即ち、ポアサイズの大きな表面側をフィルタの濾過面に使用する。このように、平均孔径が大きい面(非加熱面)をインレット側として濾過を行うことにより、効率よく微粒子を捕捉することができる。
また、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は比表面積が大きいため、その表面から導入された微細粒子が最小孔径部分に到達する以前に吸着又は付着によって除かれる。したがって、目詰まりを起こしにくく、長期間にわたって高い濾過効率を維持することができる。
本発明の濾過用フィルタの形状としては、ろ過膜をひだ折りするプリーツ型、ろ過膜をのり巻き状にするスパイラル型、円板状のろ過膜を積層させるフレーム・アンド・プレート型、ろ過膜を管状にするチューブ型などがある。これらの中でも、カートリッジあたりのフィルタのろ過に使用する有効表面積を増大させることができる点から、プリーツ型が特に好ましい。
また、劣化したろ過膜を取り換える際にフィルターエレメントのみを取り換えるエレメント交換式フィルターカートリッジと、フィルターエレメントをろ過ハウジングと一体に加工しハウジングごと使い捨てのタイプにしたカプセル式のフィルターカートリッジとに分類される。
図3はカプセル式フィルターカートリッジのハウジングに組込まれる前の精密ろ過膜フィルターエレメントの全体構造を示す展開図である。精密ろ過膜2は2枚のサポート1、3によってサンドイッチされた状態でひだ折りされ、集液口を多数有するフィルターエレメントコア7の廻りに巻き付けられている。その外側にはフィルターエレメントカバー6があり、精密ろ過膜を保護している。円筒の両端には上部エンドプレート4、下部エンドプレート5により、精密ろ過膜がシールされている。
図4は、フィルターエレメントがハウジングに組込まれて一体化されたカプセル式のプリーツフィルターカートリッジの構造を示す。フィルターエレメント10はハウジングベースとハウジングカバーよりなるハウジング内に組込まれている。下部エンドプレートはOリング8を介してハウジングベース中心部にある集水管(不図示)にシールされている。液体は液入口ノズルからハウジング内に入り、フィルターメディア9を通過し、フィルターエレメントコア7の集液口から集められ、液出口ノズル14から排出される。ハウジングベースとハウジングカバーは通常溶着部17で液密に熱融着される。
<ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製>
−半焼成フィルムの作製−
数平均分子量が620万のポリテトラフルオロエチレンファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、「ポリフロン・ファインパウダーF104U」)100質量部に、押出助剤として炭化水素油(エッソ石油株式会社製、「アイソパーH」)27質量部を加え、丸棒状にペースト押出しを行った。これを、70℃に加熱したカレンダーロールにより50m/分の速度でカレンダー掛けして、ポリテトラフルオロエチレンフィルムを作製した。このフィルムを250℃の熱風乾燥炉に通して押出助剤を乾燥除去し、平均厚み100μm、平均幅150mm、比重1.55のポリテトラフルオロエチレン未焼成フィルムを作製した。
得られたポリテトラフルオロエチレン未焼成フィルムの一方の面(加熱面)を345℃に加熱したロール(表面材質:SUS316)で1分間加熱して、半焼成フィルムを作製した。
得られた延伸フィルムを、ロールと反対側の非加熱面から0℃の冷却風を500L/分の流量で送風し、冷却しながら350℃のロール(表面材質SUS316)で5秒間接触させて緻密層を形成した。以上により、実施例1のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
−ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製−
片面緻密化処理において、350℃のロールへの接触時間を10秒にし、冷却風の温度を−10℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、緻密層を形成し、実施例2のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
−ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製−
半焼成フィルムの長手方向及び幅方向への延伸において、温度をそれぞれ290℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、緻密層を形成し、実施例3のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
−ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製−
片面緻密化処理において、ロールの代わりにタングステンフィラメント内蔵のハロゲンヒーターで近赤外線を用いた以外は、実施例2と同様にして、緻密層を形成し、実施例4のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。なお、温度設定は、該ハロゲンヒーターで、フィルム表面温度が350℃となる条件を事前に設定し、同じ条件で10秒間加熱した。
−ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製−
延伸前の半焼成処理を行わない以外は、実施例1と同様にして、比較例1のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
−ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製−
片面緻密化処理を行わない以外は、実施例1と同様にして、比較例2のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
作製した実施例1〜4及び比較例1〜2の各ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の膜厚をダイヤル式厚さゲージ(アンリツ株式会社製、K402B)により測定した。なお、任意の3箇所を測定し、その平均値を求めた。結果を表1に示す。
実施例1〜4及び比較例1〜2の各ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜について、微孔性膜の膜厚を20とし、非加熱面から厚み方向に0(即ち、表層)の部分における平均孔径をP0、厚み方向に1の部分における平均孔径をP1、・・・、厚み方向に20の部分における平均孔径をP20とし、P0〜P20をそれぞれフィルム断面のSEM写真から求めた。ここで、SEM写真は走査型電子顕微鏡(日立S−4000型、蒸着は日立E1030型、いずれも日立製作所製)で倍率1,000倍〜5,000倍)をとり、得られた写真を画像処理装置(本体名:日本アビオニクス株式会社製、TVイメージプロセッサTVIP−4100II、制御ソフト名:ラトックシステムエンジニアリング株式会社製、TVイメージプロセッサイメージコマンド4198)に取り込んでポリテトラフルオロエチレン繊維のみからなる像を得、その像を演算処理することにより平均孔径を求めた。
上記のように求めたP0〜P20の値を基に、非加熱面からの厚み方向の距離(μm)における平均孔径(μm)をプロットした。結果を図5〜図10に示す。
図5〜図10の結果から、実施例1の緻密層の厚みは5μm、緻密層表面の平均孔径は0.5μm、実施例2の緻密層の厚みは5μm、緻密層表面の平均孔径は0.2μm、実施例3の緻密層の厚みは5μm、緻密層表面の平均孔径は0.8μm、実施例4の緻密層の厚みは2.5μm、緻密層表面の平均孔径は0.3μm、比較例1の緻密層の厚みは5μm、緻密層表面の平均孔径は0.5μmであり、比較例2では緻密層がないことが分かった。
次に、実施例1〜4及び比較例1〜2の各PTFE微孔性膜について、濾過テストを行った。まず、ポリスチレンラテックス(平均粒子サイズ0.17μm)を0.01質量%含有する水溶液を、差圧0.1kg/cm2として濾過を行った。結果を表2に示す。
これに対して実施例1〜4のPTFE微孔性膜は、平均孔径が連続減少する部位を有するため目詰まりしにくく、濾過寿命が優れる結果であった。
実施例1〜4及び比較例1〜2の各PTFE微孔性膜について、ポリスチレン微粒子(平均粒子サイズ1.0μm)を0.01質量%含有する水溶液を、差圧0.1kg/cm2として濾過を行った。粒子の漏れの有無を評価した。結果を表3に示す。
これに対して実施例1〜4のPTFE微孔性膜は、最小孔径の部位(緻密層)が十分に緻密に制御されているため、該ラテックスを十分に捕捉できる結果であった。
<親水化処理>
濃度0.03質量%の過酸化水素水中に、予めエタノールを含浸させた実施例1のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を浸漬し(液温:40℃)、20時間後に引き上げた該微孔性膜の上方から、フルエンス25mJ/cm2/パルス、照射量10J/cm2の条件下でArFエキシマレーザー光(193nm)を照射した。
−フィルターカートリッジ化−
ポリプロピレン不織布2枚の間に、実施例1の親水化したPTFE微孔性膜を挟んで、ひだ幅10.5mmにプリーツし、その138山分のひだをとって円筒状に丸め、その合わせ目をインパルスシーラーで溶着する。円筒の両端2mmずつを切り落とし、その切断面をポリプロピレン性のエンドプレートに熱溶着してエレメント交換式のフィルターカートリッジに仕上げた。
本発明のフィルターカートリッジは、内蔵する結晶性ポリマー微孔性膜が親水性であるため、水系の処理において煩雑なプレ親水化処理が不要である。また、結晶性ポリマーを用いているため耐溶剤性に優れる。更に孔部が非対称構造を有するため、大流量かつ目詰まりを起こしにくく長寿命であった。
2 精密ろ過膜
3 二次側サポート
4 上部エンドプレート
5 下部エンドプレート
6 フィルターエレメントカバー
7 フィルターエレメントコア
8 Oリング
9 フィルターメディア
10 フィルターエレメント
11 ハウジングカバー
12 ハウジングベース
13 液入口ノズル
14 液出口ノズル
15 エアーベント
16 ドレン
17 溶着部
101 外周カバー
102 膜サポート
103 精密ろ過膜
104 膜サポート
105 コアー
106a、106b エンドプレート
107 ガスケット
108 液体出口
Claims (14)
- 一方の面の平均孔径が、他方の面の平均孔径よりも大きく、かつ前記一方の面から前記他方の面に向かって平均孔径が連続的に減少し、かつ前記他方の面の平均孔径が0.05μm〜10μmであることを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜。
- 横軸に一方の面からの厚み方向の距離をとり、縦軸に平均孔径をとったグラフが、傾きの異なる2つの連続線で描かれる請求項1に記載の結晶性ポリマー微孔性膜。
- 結晶性ポリマーからなるフィルムの他方の面を加熱して、該フィルムの厚み方向に温度勾配を形成した半焼成フィルムを延伸した後、更に前記他方の面を加熱して緻密層を形成してなる請求項1から2のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜。
- 他方の面である加熱面の平均孔径が、その反対側の非加熱面の平均孔径よりも小さく、かつ前記非加熱面から前記加熱面に向かって平均孔径が連続的に減少している請求項3に記載の結晶性ポリマー微孔性膜。
- 緻密層の厚みが0.1μm〜20μmである請求項3から4のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜。
- 結晶性ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレンである請求項1から5のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜。
- 結晶性ポリマーからなるフィルムの一方の面を加熱して、該フィルムの厚み方向に温度勾配を形成した半焼成フィルムを形成する非対称加熱工程と、
前記半焼成フィルムを延伸する延伸工程と、
延伸後のフィルムの前記一方の面を更に加熱して緻密層を形成する緻密層形成工程と、を含むことを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。 - 結晶性ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレンである請求項7に記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
- 緻密層形成工程における加熱が、温度350℃以上で10秒間以上である請求項7から8のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
- 延伸工程が、半焼成フィルムを一軸方向に延伸する請求項7から9のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
- 延伸工程が、半焼成フィルムを二軸方向に延伸する請求項7から9のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
- 請求項1から6のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜を用いたことを特徴とする濾過用フィルタ。
- プリーツ状に加工成形してなる請求項12に記載の濾過用フィルタ。
- 結晶性ポリマー微孔性膜の平均孔径の大きな面側をフィルタの濾過面に使用する請求項12から13のいずれかに記載の濾過用フィルタ。
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