JP2009119336A - 中空糸膜モジュールおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】中空糸膜12の中空糸膜束14がハウジング16内に収納され、中空糸膜束14の端部がポッティング部18によってハウジング16に固定され、ポッティング部18に空隙20が形成され、かつ空隙20がハウジング16の内部に面した端面22側に偏在している中空糸膜モジュール10を、(a)中空糸膜束14の端部を、気体によって流動状態にある熱可塑性樹脂微粒子と接触させ、中空糸膜束14の端部に熱可塑性樹脂微粒子付着部を形成する工程と、(b)中空糸膜12の軸方向の末端側から熱可塑性樹脂微粒子付着部を熱可塑性樹脂の融点以上に加熱し、ポッティング部18を形成する工程とを有する方法で製造する。
【選択図】図1
Description
(1)布帛状に形成した中空糸膜のポッティング部分に熱溶融熱可塑性樹脂を流し、巻き取り、中空糸膜を集束固定する方法(特許文献1)。
(2)熱可塑性樹脂微粒子に液体を加え高濃度懸濁液とし、該高濃度懸濁液に中空糸膜束の端部を浸漬することで、中空糸膜束の端部に高濃度懸濁液を付着させた後、熱可塑性樹脂微粒子を加熱溶融して中空糸膜を集束固定する方法(特許文献2、3)。
(3)中空糸膜の付け根部分に、中空糸膜の揺れを抑制する多数の粒体を配設する方法(特許文献4)。
また、本発明は、ポッティング部に用いる熱可塑性樹脂の種類の制限が少ない、中空糸膜モジュールの製造方法を提供する。
さらに、本発明は、ポッティング部の形成時に液体を使用する必要がない上に、ポッティング部の形成時に過剰な熱や力をかける必要がなく、ポッティング部への中空糸膜の付け根部分の破損が抑制された、中空糸膜モジュールの製造方法を提供する。
(a)中空糸膜束の少なくとも一方の端部を、気体によって流動状態にある熱可塑性樹脂微粒子と接触させ、該中空糸膜束の端部に熱可塑性樹脂微粒子付着部を形成する工程。
(b)前記(a)工程の後、中空糸膜の軸方向の末端側から熱可塑性樹脂微粒子付着部を熱可塑性樹脂の融点以上に加熱し、ポッティング部を形成する工程。
また、本発明の中空糸膜モジュールの製造方法によれば、ポッティング部への中空糸膜の付け根部分の破損が抑制された中空糸膜モジュールを製造でき、しかも、ポッティング部に用いる熱可塑性樹脂の種類の制限が少なく、ポッティング部の形成時に過剰な熱や力をかける必要がなく、かつポッティング部の形成時に液体を使用する必要がない。
図1は、本発明の中空糸膜モジュールのポッティング部付近の断面を示す図である。中空糸膜モジュール10は、複数本の中空糸膜12からなる中空糸膜束14がハウジング16内に収納されるとともに、中空糸膜束14の端部がポッティング部18によって中空糸膜12の端部の開口状態を保ったままハウジング16に固定されたものである。
中空糸膜12の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
また、空隙20が、ハウジング16の内部に面したポッティング部18の端面22側に偏在し、ハウジング16の外部に面したポッティング部18の端面24側に存在しないため、中空糸膜12同士および中空糸膜12とハウジング16との間は液密に封止される。
また、ポッティング部18のバルク体積が少ないため、残留応力、応力集中が少なく、長期安定性に優れる等の効果も発揮される。
中空糸膜モジュール10は、例えば、下記の方法によって製造される。
(i)ポッティング材として熱硬化性樹脂であるポリウレタンを用いる場合、硬化前のウレタンに水を添加し、反応により発生する炭酸ガスを中空糸膜束14の端部に封入した状態でウレタンを硬化させる方法。
(ii)ポッティング材として熱可塑性樹脂を用いる場合、熱可塑性樹脂微粒子を中空糸膜束14の端部に付着させた後、中空糸膜12の軸方向の末端側から熱可塑性樹脂微粒子を加熱することにより、中空糸膜12の末端近傍のみを溶融封止する方法。なお、ここでいう中空糸膜12の軸方向とは、ラッセル編地の折り返し部分を除く部分の中空糸膜12の軸方向である。
以下、(ii)の方法について具体的に説明する。
(a)中空糸膜束の少なくとも一方の端部を、気体によって流動状態にある熱可塑性樹脂微粒子と接触させ、該中空糸膜束の端部に熱可塑性樹脂微粒子付着部を形成する工程。
(b)前記(a)工程の後、中空糸膜の軸方向の末端側から熱可塑性樹脂微粒子付着部を熱可塑性樹脂の融点以上に加熱し、ポッティング部を形成する工程。
(c)必要に応じて、前記(b)工程の後、中空糸膜束の末端側のポッティング部の端面近傍を中空糸膜束とともに切断して、中空糸膜の端部を開口させる工程。
中空糸膜束としては、中空糸膜を単にひき揃えたバンドル;中空糸膜を緯糸として用いた編地;該編地を数枚積層した積層体等が挙げられる。
編地としては、図2に示すようなラッセル編地の中空糸膜束14が挙げられる。該中空糸膜束14は、複数の中空糸膜12を、中空糸膜束14の幅の長さに複数回折り返し、この折り返し部分を、中空糸膜束14の長手方向に延びるチェーンステッチの拘束糸条26にて結束させたものである。
中空糸膜束における中空糸膜の本数は、中空糸膜の間に確実に熱可塑性樹脂微粒子を保持させる点から、10〜50本が好ましい。
熱可塑性樹脂微粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。該組み合わせとしては、粒径の異なる熱可塑性樹脂微粒子の組み合わせ、材質(密度、融点等。)の異なる熱可塑性樹脂微粒子の組み合わせ等が挙げられる。
該組み合わせの場合、粒径を同じにすることにより、流動床としたときに密度の大きいテトラフルオロエチレン微粒子は流動床の下層部に溜まり、密度の小さいポリエチレン微粒子は流動床の上層部に溜まる。該状態で中空糸膜束を流動床に浸漬すると、中空糸膜束の端部にテトラフルオロエチレン微粒子が付着、保持され、中空糸膜のポッティング部への付け根付近にはポリエチレン微粒子が付着、保持される。該状態で、後述の(b)工程にて熱可塑性樹脂微粒子付着部を中空糸膜の軸方向の末端側から加熱すると、ハウジングの外部に面したポッティング部の端面付近には耐溶剤性が高いテトラフルオロエチレンが配置され、ハウジングの内部に面したポッティング部の端面付近には柔軟性の高いポリエチレンが配置される。加熱は、中空糸膜の軸方向の末端側からのみのため、ハウジングの外部に面したポッティング部の端面付近にテトラフルオロエチレンを溶融するために充分な加熱を行っても、ハウジングの内部に面したポッティング部の端面付近には過剰な熱が加わることなく、ポッティング部への付け根付近の中空糸膜に熱による負荷を与えることがなく、耐溶剤性の高い中空糸膜モジュールを製造できる。
(a1)熱可塑性樹脂微粒子を収容する容器を振動させることで流動床とし(特開2003−290691号公報)、該流動床に中空糸膜束の端部を浸漬し、引き上げる方法。
(a2)熱可塑性樹脂微粒子を収容する容器の下方から気体を供給することで流動床とし(特開平9−253790号公報)、該流動床に中空糸膜束の端部を浸漬し、引き上げる方法。
(a3)塗装ガンによる吹き付け(特開平8−57361号公報)によって、熱可塑性樹脂微粒子を中空糸膜束の端部に付着させる方法。
中空糸膜の間に確実に熱可塑性樹脂微粒子を付着、保持させ、生産性、製品安定性を向上させるために、中空糸膜束を開繊する工程を取り入れてもよい。開繊方法としては、例えば、特開平11−200136号公報に記載の方法が挙げられる。
この際、流動床に浸漬していない部分の中空糸膜束14にエアガン34から気体を吹き付け、開繊してもよい。
ポッティング部を形成し、該ポッティング部によって中空糸膜束の端部をハウジングに固定する方法としては、例えば、下記の方法が挙げられる。
(b1)前記(a)工程の後、中空糸膜束をハウジング内に収納し、中空糸膜の軸方向の末端側から熱可塑性樹脂微粒子付着部を熱可塑性樹脂の融点以上に加熱し、ポッティング部を形成する方法。
(b2)前記(a)工程の後、中空糸膜束をハウジング内に収納することなく、中空糸膜の軸方向の末端側から熱可塑性樹脂微粒子付着部を熱可塑性樹脂の融点以上に加熱し、ポッティング部を形成する方法。
加熱時間は、形成されるポッティング部の大きさ等に応じて、ハウジングの内部に面したポッティング部の端面側、すなわち中空糸膜のポッティング部への付け根部分に空隙が偏在する程度に熱可塑性樹脂微粒子が溶融される時間とする。
保温材としては、グラスウール、発泡ゴムシート等が挙げられる。
(b1)の具体的な方法としては、例えば図4に示すように、端部に熱可塑性樹脂微粒子付着部36が形成された中空糸膜束14をハウジング16内に収納し、該ハウジング16の外周を保温材38で囲んだ状態で、ハウジング16の外部に面した熱可塑性樹脂微粒子付着部36の端面40をヒータ42等の発熱体に接触させ、該熱可塑性樹脂微粒子付着部36の端面40側、すなわち中空糸膜12の軸方向の末端から、熱可塑性樹脂微粒子付着部36を熱可塑性樹脂の融点以上に加熱する方法が挙げられる。
加熱時に中空糸膜束14に荷重をかけておくと、中空糸膜12が縮み上がり、中空糸膜束の末端とヒータ42との間に空間が形成され、溶融したポッティング材が中空糸膜12の間から流れ落ちることを抑制できる。
中空糸膜束の両端部をポッティング部により封止する場合、それぞれの端部に、中空糸膜の収縮分の隙間をあけてハウジングを取り付け、両端部にポッティング部を形成した後、ハウジング同士を接着してもよい。また、中空糸膜の収縮分だけハウジングも収縮させ、両端部をポッティング部により封止した中空糸膜束モジュールを製造してもよい。
また、得られた中空糸膜モジュールからハウジングを取り外した後、端部にポッティング部が形成された中空糸膜を別のハウジングに収納してもよい。
中空糸膜束をハウジング内に収納することなく、熱可塑性樹脂微粒子付着部を加熱し、中空糸膜束の端部にポッティング部を形成した後、中空糸膜束をハウジングに収納し、ポッティング部をハウジングに固定する。
端部にポッティング部が形成された中空糸膜束をハウジングに収納する前に、該中空糸膜束の複数を収束または積層し、中空糸膜束の集束率を上げてもよい。
また、端部にポッティング部が形成された中空糸膜束をハウジングに収納する前に、後述の(c)工程にて、ポッティング部の端面近傍を中空糸膜束とともに切断して、中空糸膜の端部を開口させてもよい。
ポッティング部を前記(b1)方法にて形成した場合は、前記(b)工程の後、ポッティング部を冷却して、ポッティング材の流動性がなくなったところで、ハウジングの外部に面したポッティング部の端面近傍を、中空糸膜束およびハウジングとともに切断して、中空糸膜の端部を開口させる。
また、熱可塑性樹脂微粒子を流動状態にする分散媒として気体を用いているため、ポッティング部の形成時に液体を使用する必要がない。そのため、ポッティング部に亀裂が入りにくい。また、ポッティング部の汚染、熱可塑性樹脂微粒子に含まれる添加剤等の抽出、濃縮を抑制できる。
(中空糸膜モジュールの漏れ)
中空糸膜モジュール10の中空糸膜12の外表面に水圧0.3MPaで水を供給し、ハウジング16の外部に面したポッティング部18の端面24を目視にて観察し、水漏れの有無を確認した。
図2に示すように、中空糸膜12(三菱レイヨン・エンジニアリング(株)製、EHF270T、ポリエチレン製の多孔質中空糸膜。)を16本束ねたものを、さらに300mm幅で折り返し、折り返し部分をチェーンステッチの拘束糸条26で結束して、ラッセル編地からなる中空糸膜束14を作製した。
端部に熱可塑性樹脂微粒子付着部36が形成された中空糸膜束14を流動床から取り出し、巻き取りって巻回体とした。
ポッティング部18の断面を観察したところ、図1に示すように、ハウジング16の外部に面したポッティング部18の端面24側では液密に封止され、ハウジング16の内部に面したポッティング部18の端面22側では熱可塑性樹脂微粒子32は空隙20を保ったまま中空糸膜12の間に保持されている状態であった。中空糸膜12を、中空糸膜12の軸方向に直交する方向に引っ張ったところ、熱可塑性樹脂微粒子32がクッションになり、中空糸膜12がポッティング部18への付け根部分で鋭角に折れ曲がることはなかった。
漏れが確認された中空糸膜モジュール10の漏れ部分を観察したところ、図5に示すように、数本の中空糸膜12で構成される微小な隙間46から水が漏れていた。
実施例1で用いた熱可塑性樹脂微粒子32とエタノールとを、質量比=1:1で混合し、熱可塑性樹脂ペーストを作製した。
ついで、実施例1で用いたラッセル編地の中空糸膜束14の折り返し部分から50mmの幅で前記熱可塑性樹脂ペーストを塗り込み、中空糸膜12の間に熱可塑性樹脂微粒子32を保持させた。
漏れが確認された中空糸膜モジュール10の漏れ部分を観察したところ、図8に示すように、端面の亀裂44から水が漏れていた。
熱可塑性樹脂微粒子32として、平均粒径35μmに化学粉砕した低密度ポリエチレン(三井化学(株)製、ミラソンFL−60、融点:102℃)と、平均粒径20μmに化学粉砕した低密度ポリエチレン(三井化学(株)製、ミラソンFL−60、融点:102℃)を質量比1:1で混合したものを使用した以外は、実施例1と同様にして中空糸膜モジュール10を得た。ポッティング部18の断面近傍を観察したところ、実施例1と同等の状態が観察された。
漏れが確認された中空糸膜モジュール10の漏れ部分を観察したところ、実施例1と同様に、数本の中空糸膜で構成される微小な隙間から水が漏れていた。
熱可塑性樹脂微粒子32として、平均粒径35μmに化学粉砕した低密度ポリエチレン(三井化学(株)製、ミラソンFL−60、融点:102℃、密度:0.912)と、平均粒径35μmのテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体微粒子(日進化成(株)製、ネオフロンETFE微粒子、融点160℃、密度:1.78)を質量比1:1で混合したものを使用し、加熱温度を180℃にした以外は、実施例1と同様にして中空糸膜モジュール10を得た。ポッティング部18の断面近傍を観察したところ、実施例1と同等の状態が観察された。ハウジング16の外部に面したポッティング部18の端面24においては、大部分においてテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体から構成されていた。
漏れが確認された中空糸膜モジュール10の漏れ部分を観察したところ、実施例1と同様に、数本の中空糸膜で構成される微小な隙間から水が漏れていた。
実施例1と同様にして、中空糸膜束14に熱可塑性樹脂微粒子32を保持させ、中空糸膜束14を巻き取り、ハウジング16内に収納した。
ついで、実施例1と同様に熱可塑性樹脂微粒子付着部36を123℃で加熱しつつ、中空糸膜繊維軸方向に添って重力加速度40Gかかるように遠心を行った。
3時間後冷却し、実施例1と同様にして、中空糸膜モジュール10を得た。ポッティング部18の断面近傍を観察したところ、ハウジング16の内部に面したポッティング部18の端面22には亀裂が確認されたが、ハウジング16の外部に面したポッティング部18の端面24には亀裂は確認されなかった。
12 中空糸膜
14 中空糸膜束
16 ハウジング
18 ポッティング部
20 空隙
22 端面
32 熱可塑性樹脂微粒子
36 熱可塑性樹脂微粒子付着部
38 保温材
Claims (3)
- 複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束がハウジング内に収納されるとともに、中空糸膜束の少なくとも一方の端部がポッティング部によって中空糸膜の端部の開口状態を保ったままハウジングに固定された中空糸膜モジュールであって、
前記ポッティング部に空隙が形成され、かつ該空隙が、ハウジングの内部に面した端面側に偏在している、中空糸膜モジュール。 - 複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束がハウジング内に収納されるとともに、中空糸膜束の少なくとも一方の端部がポッティング部によって中空糸膜の端部の開口状態を保ったままハウジングに固定された中空糸膜モジュールの製造方法であって、
下記の工程を有する、中空糸膜モジュールの製造方法。
(a)中空糸膜束の少なくとも一方の端部を、気体によって流動状態にある熱可塑性樹脂微粒子と接触させ、該中空糸膜束の端部に熱可塑性樹脂微粒子付着部を形成する工程。
(b)前記(a)工程の後、中空糸膜の軸方向の末端側から熱可塑性樹脂微粒子付着部を熱可塑性樹脂の融点以上に加熱し、ポッティング部を形成する工程。 - 前記(b)工程において、熱可塑性樹脂微粒子付着部の外周を保温材で囲む、請求項2記載の中空糸膜モジュールの製造方法。
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