図1は、本発明が使用されるリール装置の一例を示す側面図であり、1は可撓性長尺材2を巻取るリール、3は減速機4を介してリール1を駆動する電動機、5はリール1及び減速機4を回転可能に支持する回転軸、6は電動機3の回転速度または回転数(以下これらをまとめて回転速度とも言う)を検出する速度検出器、7は電動機3の回転速度を制御する駆動制御装置、8は駆動制御装置7によって制御された電力をPWM生成回路15を介して電動機3に供給する給電線、9はこの給電線8に取付けられ電流検出器であり、リール装置10はこれらのリール1、可撓性長尺材2、電動機3、減速機4等によって構成され、リール装置10を構成する各機器は従来から使用されている機器を使用することもできる。11はこのようなリール装置10の可撓性長尺材2を介して動力源等から、動力源となる電力や水等の資材の供給を受ける移動機器である。
なお、速度検出器6の取付に関して、電動機3とリール1とは減速機4を介して回転が直接に伝達されており、本発明の制御に関する回転速度は、電動機3に限らず、リール1、減速機4のいずれで検出しても同じデータとして扱えるので、回転速度の検出は、電動機3、減速機4、リール1のいずれの場所で検出しても良い。図1では速度検出器6にエンコーダを用いているが、電動機やリール等から回転速度が検出できる装置であれば、その他の速度検出装置であっても本発明に使用することができる。また、電動機の駆動方法は、此の種の電動機制御において広く使用されているPWM生成回路15を用いたインバータ制御が用いられ、PWM生成回路15の制御には本発明の駆動制御方法が使用される。
図2は、このリール装置10を駆動する駆動制御装置の一例を示すブロック図であり、図1で示した機器には、同じ図番が使用されている。
図2において、13は電流検出器9からの出力電流iu、iwをdq変換し電動機3の磁束に寄与する電流成分Idと電動機3のトルクに寄与する電流成分Iqを出力するdq変換回路、14は例えば、エンコーダ等の速度検出器6で検出された電動機3の回転速度信号を速度検出値ωrとして出力する速度検出回路、15はリール装置10を所期の制御条件で駆動するために、dq変換回路13及び速度検出回路14から得られた信号を基に生成された電力を所定の周波数で電動機3に供給するPWM生成回路15、16は速度検出回路14から出力された速度検出値ωr等を基にd軸電流設定回路17で演算された電動機3の磁束に寄与する電流成分の指令値Id*とdq変換回路13から出力された磁束に寄与するd軸電流成分Idとから電動機3の磁束に寄与する電圧成分Vdを演算してPWM生成回路15に供給するd軸電流制御回路、18は前記速度検出値ωr等を基に速度制御回路19で演算された電動機3のトルクに寄与するq軸電流成分の指令値Iq*とdq変換回路13から供給されたトルクに寄与するq軸電流成分Iqとから電動機3のトルクに寄与する電圧成分Vqを演算してPWM生成回路15に供給するq軸電流制御回路、20は、外部から設定値として入力された周波数指令(ωr*)と前記速度検出値ωrとを基に速度制御回路19で演算して速度制御回路19で演算された電動機3のトルクに寄与するq軸電流成分の指令値Iq*と速度検出回路14から得られた速度検出値ωrとから電動機3の運転周波数ω1を演算してPWM生成回路15に指令する周波数制御回路である。
PWM生成回路15はこれらd軸電流制御回路16から供給された電圧指令Vd、q軸電流制御回路18から供給された電圧指令Vq、周波数制御回路20から供給された周波数指令ω1に基づいて三相交流を生成し、電動機3に供給する。このときの電動機3の運転トルクは、電動機3の回転速度に対応して定められた巻取・引出しトルク(設定トルクともいう)がリール1に与えられるように当該移動機器11に使用されるリール装置10について予め定められた固有の回転速度に対するリール駆動トルクの制御関係式(以下動作パターンともいう)が速度制御回路19に予め入力されている。駆動制御装置7は、速度検出器6から間断なくリールの回転速度のデータを受信し、この動作パターンに従い、受信した回転速度に対応する駆動トルクを演算し、この演算結果によって、リール1を駆動する電動機3の回転は制御される。
このような出力トルクの制御において、一般に、移動機器11が使用されている作業現場では、作業の間中、移動機器11は移動と停止を繰返している。これに伴い、動力源等12と移動機器11との間を接続する可撓性長尺材2もその繰出し長さの伸縮を繰返し、リール装置10はコイル状に巻取られている可撓性長尺材2の巻取りと引出しを連続的に行ないつつ、可撓性長尺材2の巻取りと引出しによってリール1の巻取り径を変化による可撓性長尺材2の重量負荷の変化を受けながらリールの駆動をしている。
移動機器11の移動に伴いリール1の巻取り径やリール1にかかる可撓性長尺材2の重量負荷が変化する運転条件下では、リール1を駆動する電動機3のトルクと回転速度とを設定値のままで運転されるよりも、リール1の回転速度の変化に瞬時に対応して電動機3の駆動制御がおこなわれるのが好ましい。
本発明の駆動制御においては、リール装置10の駆動制御装置7が電動機3に指令した駆動制御の結果である電動機の回転速度データを間断なく駆動制御装置7にフィードバックさせ、駆動制御装置7は、駆動制御の指令を電動機3に出す際に、この回転速度データに移動機器11の移動に伴うリール1の回転速度の変化及び可撓性長尺材2の巻取り・引出しによって生じるリール1の回転速度の変化を加味してリール1にかかる負荷を動作パターンに従って演算し、この演算結果に対応したトルク指令をPWM生成回路15を介して電動機3に逐一出力し、速度検出器6から間断なく送信されてくる回転速度データに最適なトルク出力で電動機が駆動されるように制御している。
速度検出器6は、新たに出力されたトルク指令で駆動された電動機3(リール1)の回転速度を、再び駆動制御装置7にフィードバックし、駆動制御装置7は、フィードバックされた回転速度に対応した次の制御指令を電動機3に出力してリール1の駆動を行なう演算と制御のルーチンを移動機器11による作業の間中、継続して行ない、回転速度が動作パターンによって定まる巻取り・引出しトルクになるように制御するものである。
この関係を、本発明によるリール装置の駆動制御の一例をモデル的に示す図3及び図4に従い説明する。図3はリール装置の一つの設置状態を示す模式図、図4は図3の設置状態におけるリール装置の回転速度と制御トルクとの関係(動作パターン)を模式化して示したグラフである。
図3のようなリール装置の使用は、例えば、地上の移動クレーンに用いる場合であり、可撓性長尺材2の一端は固定設備である動力源等12に接続され、可撓性長尺材2の他端はリール装置10を介して移動機器11に接続されている。リール装置10は、移動機器11に取り付けられて移動機器11と共に移動し、動力源等12と移動機器11との間をつなぐ可撓性長尺材2の移送と巻取り・引出しをする。
例えば、移動機器11が動力源等12から離れるよう(図3の右方向)に移動するとき、リール装置10からは可撓性長尺材2が引出され、移動機器11が動力源等12に近づくよう(図3の左方向)に移動するとき、可撓性長尺材2はリール1に巻取られる。
図3の設置状態においては、巻取りや引出し時のリールの回転速度(または回転数)は、コイル状に巻かれた可撓性長尺材2の影響を受け、移動機器11が同様な移動をしていても、移動機器11と動力源等12との離間距離が大きい(図3の右方向)ほどリール1による可撓性長尺材2の巻取り半径が小さくなるのでリールの回転速度は速くなる。
一方、可撓性長尺材2の移送及びリールによる巻取・引出しトルクは、図3の右方向に行く程、巻取り半径が小さくなり、かつ、可撓性長尺材2をリール1に持ち上げる高さが低くなって持上げ力(ケーブル移送の張力)が減少するので小さなトルクで良いことになる。さらに、リール1に巻取られた可撓性長尺材2の量も、右方向に行く程、少なくなるので電動機3にかかる回転モーメント負荷も図3の右方向に行くほど小さく、電動機3は、移動機器11が同様な移動をしていても、移動機器11と動力源等12との離間距離が大きい(図3の右方向)ほど、少ない出力でリール1を動かすことができることになる。
逆に、上記の離間距離が小さい(図3の左方向)ほど回転速度は遅く、可撓性長尺材2を移送し、巻取り・引出しする時に必要とされるトルクは大きく、リール1を駆動するときの電動機3の負荷は大きくなる。
図4はこのような関係を模式化して示したものであり、横軸は電動機3(リール1)の回転速度、縦軸はリール1の巻取・引出し時のトルクを示し、設定トルクの線は、電動機3(又はリール1)が等速回転している時の回転速度に対応して制御される電動機3(又はリール1)の巻取・引出しトルクの値、換言すれば、各回転速度に対応してリール1の巻取・引出しを過不足無く維持するために必要なトルクを示している。
すなわち、回転速度ωxで等速回転しているときにトルクがτxより大きければ必要以上の引張力が可撓性長尺材2にかかった状態で電動機が駆動され、逆に、τxより小さければ、可撓性長尺材2がリール1に巻取る力が弱く、可撓性長尺材2が弛みを伴いながら、リールに巻取られるような事態が生じることになる。
例えば、図3のようなリール装置の設置状態において、駆動制御装置7が速度検出器6から得られた速度データを基に演算した結果、リールが回転速度ωxで等速回転しているとなったときは、巻取・引出しトルクはτxとなるように電動機の駆動出力を制御する。
仮に、移動機器の移動及び可撓性長尺材2の巻取り量等によって、リールの回転速度が可撓性長尺材2の巻取り量に比較して減少傾向にあるという演算結果であれば、駆動制御装置7は、制御するトルクをτxからτ方向に増大させるために、動作パターンに従い、設定された巻取りトルクを上げ、かつ、必要であれば、これに加えて加速トルク(図4参照)を電動機3に与える制御を行なう。
このような制御による、回転速度の変化は、速度検出器6から、逐一駆動制御装置7にフィードバックされ、駆動制御装置7は、フィードバックされた回転速度の変化を基に再び演算し、その結果に従った駆動トルクを電動機3に指令し、この駆動制御に応じてフィードバックされてくる回転速度の変化に対応した駆動トルクを再び電動機3に与える制御を繰返すことにより、回転速度に応じたトルク制御が実現される。
このようにして、移動機器11が移動をしている間、間断なく繰返えされる演算と制御の結果、リールの回転速度が、移動機器11の移動に対応した回転速度ωで等速回転になると、駆動制御装置7は、速度変化に対応して生成させていた加速トルクの発生を停止し、動作パターンの設定トルクに従い、速度ωに対応したトルクτでリール1を駆動するように電動機3を制御する。(図4参照。)
逆に実際の回転速度がωxより大きな回転速度ωyになっているという入力が速度検出器6からあったときは、駆動制御装置7は、前記動作パターンに従った演算結果から、入力された速度に対応した出力トルクτyで電動機3が駆動されるように、自動的にτxから加速トルクを減じたトルクで電動機3は増速方向に制御され、制御された後の回転速度は、速度検出器6から、制御装置に再びフィードバックされ、上述の減速時と同様なフィードバックと制御指令が繰返される。
このような制御を経た後、電動機3の回転速度が例えば、ωyで等速になると、駆動制御装置7は、加速トルクの発生を停止し、予め当該移動機器11の制御値として設定され入力されている動作パターンの設定トルクに従い、速度ωyに対応した駆動トルクτyで電動機3を制御することにより、回転速度に応じたトルク制御が実現される。
駆動制御装置7による上述の演算と電動機3の制御は、リール1の正転(巻取り)方向の回転を中心に説明をしたが、可撓性長尺材2をリール1から引出す場合も、全く同様にして、演算、制御される。可撓性長尺材2の引出しの場合は、図4の左側の象限に直線で示すような設定トルクに従って演算される。
このように本発明による駆動制御は、電動機3(リール1)の回転速度データを間断なく駆動制御装置7に入力し、駆動制御装置7は、入力された速度データを当該移動機器11に対応して入力されている動作パターンに従って、逐一演算して出力して電動機3の制御をするものであり、駆動制御装置7による駆動トルクの演算は、電動機3(またはリール1)の各回転速度(回転数)に対応してリール1の巻取・引出しを過不足無く維持するために必要十分なトルク(設定トルク)を駆動装置内で自動的に演算して電動機の駆動トルクの制限値にする一方、移動機器の移動などで可撓性長尺材2に負荷がかかってリール1の回転速度が下がってくるときは、自動的にトルクが上がり、リール1の回転速度が定速度に戻るとその回転速度に適したトルク(設定トルク)になるように自動的に電動機3を制御することができるものであり、これにより、可撓性長尺材2の移送に弛みを生じさせることなく、かつ、可撓性長尺材2の移送や巻取り・引出し時に作用する過剰な張力を減じた移送、巻取り・引出しの制御及びケーブルまたはホースに優しいリール装置の提供が可能となる。
図5乃至図6は、本発明によるリール装置の駆動制御装置による制御を図3とは異なる態様の移動機器に用いた事例をモデル的に示す図であり、図5はリール装置の一つの設置状態を示す模式図、図6はリール装置の他の設置状態を示す模式図、図7は図5乃至図6の設置状態におけるリール装置の回転速度と制御トルクとの関係(動作パターン)を模式化して示したグラフである。
図5のようなリール装置10の使用は、例えば、ごみ処理場のバケットクレーンやビルの窓拭き用ゴンドラなどの移動機器に用いる場合であり、図5(a)は、移動機器11とリール装置10とが近接した状態、図5(b)は移動機器11とリール装置10とが離間した状態を示している。
リール装置10は、移動機器11と動力源等12との間に設置され、移動機器11の移動に従って、移動機器11と動力源等12との間をつなぐ可撓性長尺材2の長さを調整するために、可撓性長尺材2の巻取り・引出しをする。
例えば、図5(a)のように移動機器が動力源等に近接した状態(図の上方向)で移動するとき、可撓性長尺材2の多くはリール1に巻取られた状態にあり、図5(b)のように、移動機器11が動力源等12から離れて(図の下方向)移動するときは可撓性長尺材2の多くの部分がリール装置10から引出されている。
図6の設置状態のときも、図5と同様、リール装置10は、移動機器11と動力源等12との間に設置され、移動機器11の移動に従って、移動機器11と動力源等12との間をつなぐ可撓性長尺材2の長さを調整するために、可撓性長尺材2の移送、巻取り・引出しをする。
図5及び図6の設置状態におけるリール1の回転速度(回転数)は、移動機器11と動力源等12との離間距離が大きい(図5の(b)、図6の実線図示)状態ほどリール1による可撓性長尺材2の巻取り半径が小さくなって速い回転になる。一方、この状態における駆動トルクは、リール1から可撓性長尺材2の引出し量が増えた分の引張り負荷が巻取り負荷に加わるので、移動機器11がリール装置10から離れるように移動して離間距離が大きくなるほど増大することになる。
この場合に駆動トルクの要素となる回転半径、すなわち、リールにコイル状に巻かれた可撓性長尺材2の増減によるトルクの増減量は、このときの可撓性長尺材2の引張り負荷の増減に比較して些少なので、制御される駆動トルクは、上述した離間距離を主な要素にして変化することになる。逆に、移動機器11がリール装置10に近づく(図5(a)状態、図6の仮想線図示状態)のときは、上記の離間距離が小さいほど可撓性長尺材2を単位長さ巻取り・引出す時の回転速度(回転数)は遅くなり、巻取り、引出し時に必要とされる駆動トルクは小さくても良いことになる。
図7は、図5及び図6のようなリール装置の設置状態におけるリール駆動装置の回転速度とトルク制御の関係を模式化して示したものであり、横軸は電動機3(リール1)の回転速度、縦軸はリール1の巻取・引出し時のトルクを示し、設定トルクの線は、図4とは異なる傾きの線であるが、図5及び図6に示すようなリール装置の設置状態に固有の動作パターンである。
この設定トルクの線は、電動機3(又はリール1)が等速回転している時の回転速度に対応して制御される電動機3(又はリール1)の巻取・引出しトルクの値、換言すれば、各回転速度に対応してリール1の巻取・引出しを過不足無く維持するために必要なトルクを示している。
例えば、リール1が電動機3によって設定された回転速度ωx、トルクτxで等速駆動されているときに、移動機器11がリール装置10から離れる方向に移動してリール1の回転速度が増加(ωy方向)すれば、それに応じて駆動トルクを上げ(τy方向)、移動機器11がリール装置10方向に移動する等してリール1の回転速度が減少(ωz方向)すれば、それに応じて駆動トルクを下げる(τz方向)ように電動機3を制御することを示している。
すなわち、図5、図6のような使用条件の場合は、駆動制御装置7による電動機3の駆動トルクの制限値の演算として、低速回転時は弱いトルク、高速回転時には強いトルクを出力するようにすると、リール1の巻き径が大きい時は回転数が低くケーブル又はホースの持ち上げ長さが大きいが引張る長さが短いため弱いトルクでも可撓性長尺材2を巻取・引出しを行い、リールの巻き径が小さい時は回転数が高くケーブル又はホースの持ち上げ長さが小さいが引張る長さが長いため大きいトルクで巻取・引出しをするように電動機3を制御し、これによってリール装置10の設置状態に適したリールの駆動制御を行なうことができる、リール1と移動機器11との間にある可撓性長尺材2に作用する過剰な張力を減じ、移送時の弛みを無くすことができ、ケーブルやホースに優しいリール装置の制御が可能となる。
上述した駆動制御装置7による制御トルクの演算と電動機3の制御の説明は、リール1の正転(巻取り)方向の回転を中心に説明したが、可撓性長尺材2をリール1から引出すリール1の逆転(引出し)方向の回転も場合も、全く同様にして、演算、制御される。この引出しの場合は、図7の左側の象限にある設定トルクの直線に従って演算される。
このようにして、図5、図6に示す設置状態のリール装置10に対する本発明の駆動制御も、図4に示す制御と同様に、速度検出器6が、移動機器11の移動に従って生じる電動機3やリール1の回転速度を検出し、回転速度データとして間断なく駆動制御装置7にフィードバックし、駆動制御装置7は、固有の回転速度・トルクの設定制御値(動作パターン)として予め入力された制御の関係式に従ってリール1の駆動用電動機を制御する。
このように本発明の駆動制御は、リール1にかかる負荷に対応したトルクと回転速度の制御と併せて、移動機器11の移動と共に変化するリール1の回転速度に応じて電動機3の出力トルクの制御を行なうものであり、入力された回転速度データに応じたトルクになるように電動機3に供給する電力を制御するので、無用なトルクの発生や過度なトルク維持のための電力供給を減少し、電動機の電気エネルギの消費を少なくして可撓性長尺材2の巻取りや引出しを行なうリール装置を提供することができる。
また、電動機に過度なトルクの生成を生じないようにしてリールの回転駆動がなされるので、移動機器の移動における可撓性長尺材の弛みをなくしつつ、過剰な張力を減じた移送を実現してリールにコイル状に巻取り・引出しを行なう可撓性長尺材に優しいリールの駆動制御を実現できる。
さらに、このような制御によれば、電動機に回転指令をした後に、電動機が回転できないときや演算して出力した回転速度に達し得ないときは、速度検出器からの信号によって電動機の回転が所定の回転速度になるように設定トルクに従ったトルクに加速トルクを加えるという形でトルクの増減の指令がなされるので、電動機の回転がないままに通電を続けて電動機を焼損させる怖れがなくなり、過負荷保護機能も付与することができる。
さらにまた、上述したようなリール装置の駆動制御は、回転速度データが間断なく制御装置側に得られれば、リールの回転速度のみならずその加速や減速の判断と共に、電動機のトルク制限値の演算をしてリール装置の駆動制御をすることが可能になるので、従来の同様なトルク制御技術で必要とされた種々のデータの検出機器(センサ)の設置及び検出装置に対する振動対策、防塵、防雨対策さらには、センサと制御装置とをつなぐ電気配線が必要でなくなり、センサと駆動制御装置とを結ぶ配線センサが拾う煩雑なノイズ対策や誤動作のおそれ、作業現場の塵埃や湿気によるセンサの誤動作や故障の基になっていた問題の発生を大幅に削減することができ、センサの管理が容易になり、リール装置の使用者や管理者の負担を減らした駆動制御装置を提供することができる。
図8は、上述した本発明によるリール装置の駆動制御装置の一例を示す制御回路構成図である。図8において、図2と同じ図番の機器、回路は、第2図の機器、回路と実質的に同じものであるので、特に説明を要しないものは、説明を省略する。
図8において、d軸電流制御回路16は、減算器21、比例積分補償器22、リミッタ23等を備え、d軸電流設定回路17は、磁束に寄与するd軸電流成分の設定値を入力するIo設定入力部24を有している。q軸電流制御回路18は、減算器25、比例積分補償器26、リミッタ27等を備え、周波数制御回路20は、演算器28と加算器29とを備え、速度制御回路19は、周波数指令入力部30、減算器31、比例積分補償器32、トルクリミッタ回路33、トルクリミッタ制御回路34等を備えている。
d軸電流制御回路16では、速度検出回路14から出力された速度検出値ωrをIo設定入力部24から入力された設定電流値Ioを基にd軸電流設定回路17において演算して出力されるd軸電流成分の指令値Id*と、dq変換回路13から出力されたd軸電流成分Idとの偏差Iddが減算器21で演算されて出力される。出力された偏差Iddは、比例積分補償器22において、比例演算と比例演算処理が行なわれ、これらの演算結果が加算されて磁束成分電圧を生成し、リミッタ23に出力する。リミッタ23では、得られた磁束成分電圧が過度に増大して電動機3に過大な電力を与えることのないように、一定値以上の電圧については許容最大値に制限する演算処理を行ない、この電圧を電動機3の磁束に寄与する磁束成分電圧指令VdとしてPWM生成回路15に供給する。
q軸電流制御回路18では、速度制御回路19から出力されたトルク分電流指令値Iq*と、dq変換回路13から出力されたq軸電流成分Iqとから偏差Iqdが減算器25で演算されて出力される。出力された偏差Iqdは、比例積分補償器26において比例演算と比例演算処理が行なわれ、これらの演算結果が加算されてトルク成分電圧指令を生成し、リミッタ27に出力する。リミッタ27では、過度な電圧指令によって電動機3に過度な電力を供給することのないように、一定以上の値の電圧については許容最大値に制限する演算処理を行い、この電圧を電動機3のトルクに寄与するトルク成分電圧指令VqとしてPWM生成回路15に供給する。
速度制御回路19では、周波数指令入力部30から出力された設定周波数指令ωr*と速度検出回路14から出力された速度検出値ωrとの偏差ωrdを減算器31で演算し、比例積分補償器32に出力する。偏差ωrdは、比例積分補償器32において比例演算と比例演算処理が行なわれ、これらの演算結果が加算されてトルク分電流を生成し、リミッタ33に出力する。
トルクリミッタ制御回路34では、図4または図7に示す動作パターンをもとに、速度検出回路14から出力された速度検出値ωrに対応して演算されたトルクのリミット値(上限値)TLimをトルクリミッタ回路33に供給する。
リミッタ33では過度に大きなトルク分電流が出力されないように、動作パターンに従ってトルクリミッタ制御回路34から供給されたトルクのリミット値TLim以上の値のトルク分電流については上限値(TLim)に制限する処理を行なってトルク分電流指令値Iq*を生成する。このトルク分電流指令値Iq*は、q軸電流制御回路18に供給され、上述したように減算器25、比例積分補償器26等で演算された後、電動機3のトルクに寄与する電圧成分VqとしてPWM生成回路15に供給される。
一方、周波数制御回路20に供給されたトルク分電流指令値Iq*は、演算器28において、トルク分電流指令値Iq*にゲインを乗じてすべり周波数ωs*の演算を行ない、加算器29に供給する。加算器29では、速度検出回路14から出力された速度検出値ωrに演算器28から出力されたすべり周波数ωs*を加算して出力周波数ω1を出力し、PWM生成回路15に供給する。
PWM生成回路15では、PWM生成回路15に供給された電圧成分Vd、Vqと、出力周波数ω1の指令に基づき生成されたPWM生成回路15波形によって電動機3の制御を行なうことにより、上述したようなリール装置の駆動用の電動機の制御を行う。
このようにリール1の回転速度が変化する時の駆動制御装置7による演算は、例えば、リールの回転速度(回転数)がゼロの時は、リールに巻かれた可撓性長尺材の量(リールの巻径)に関係なく、τmのトルク(除乗トルクともいう)を発生させるように演算してPWM生成回路に出力する。
次に移動機器11が移動を開始するに伴って、リールが回転すると、動作パターンに従い必要なトルク(設定トルク)を出力する。移動機器が移動を開始した後、等速移動をしているときは、その移動速度から算出されるリール1の回転速度ωxが一定であり、リールは、設定された巻取りトルクτxで駆動されるように演算してPWM生成回路に出力する。
一方、移動機器11が移動を開始した後、増速(又は減速)しているときは、設定された巻取りトルクτxに加えて、移動機器の移動速度に合わせてリール1の回転を加速(又は減速)させる加速トルクが必要になる。この加速分の演算は、上記リールの回転速度がゼロの時の除乗トルクとの差を加速トルクとして移用して、移動機器11の増減速に合わせてリールを加減速できるように演算してPWM生成回路に出力する。
この後、移動機器11が等速移動になり、リールの回転速度が上記の回転速度とは異なる回転速度(ωy或いはωz)で一定になると、動作パターンに従いその等速回転に必要なトルク(設定トルクτy或いはτz)となり、除乗トルクは無くさせるように演算してPWM生成回路に出力する。
すなわち、駆動制御装置7では、図8のような回路を用いて、速度検出器6から逐次入力されてくる速度データを基に、リール1の回転を維持する巻取・引出しトルク及び回転速度の増減に必要な加速トルクを図4又は図7で示すような動作パターンの関係式によって演算してPWM生成回路に出力することにより、本発明によるリール装置の駆動制御を実現するようにしている。
なお、速度データを更に間断なく高速に入力させるときは、電動機3の駆動が、その回転速度の増減に必要な加速トルクを要しているか、単にリール1の回転を維持する巻取・引出しトルクだけでリールの回転が維持できるかもフィードバックされる回転速度の変化によって演算し、推測することもでき、このような演算をさせれば、本発明が目的とするリールの制御をより正確に実施することができるものである。
また、上述した回転速度・トルクの設定制御値(動作パターン)は、リール装置10が使用される移動機器11に固有の制御関係式として予めトルクリミッタ制御回路34入力されているが、この動作パターンは、リール装置10と組み合せて使用される個々の移動機器11に固有な関係式として入力するような構造にしても良い。
このような関係式の一つの入力方法として、図示はされていないが、本発明の制御方法を実施する制御プログラムの中に、上記したような内容の動作パターンを演算するプログラムを組み込み、演算によって得られた当該移動機器11のリール装置10に固有の回転速度と駆動トルクとの関係式(動作パターン)をトルクリミッタ制御回路34に取り込むようにしても良い。
このプログラムは、例えば、移動機器11の移動によって、可撓性長尺材2が最も引出された時に、データ取得のための短時間、電動機3に巻取りトルクを発生させてリール1が回転を開始する時のトルクτhを測定し、次に、移動機器11の移動によって、可撓性長尺材2がリール1に最も巻取られた状態で、データ取得のための短時間、電動機3に巻取りトルクを発生させ、リール1が回転を開始する時のトルクτmを測定し、これら二つのトルク値τhとτmが巻取りトルクの最大値と最小値となるように、この二つの測定値τhとτmとを直線または数次の曲線で結んでリールの回転速度に対応する巻取りトルクを演算する関数にすると同時に、必要な加速トルクを加減する演算及び余裕計数を補正値として加味した演算をさせることにより、当該リール装置と組合わせて使用される移動機器に固有の動作パターンが得られ、この動作パターンに従って、リール装置の駆動制御をするようにしても良い。
また、上記説明において、電動機は、誘導電動機を前提に説明したが、PWM生成回路を用いてインバータ制御ができる電動機であれば、同期電動機、DCモータ等いずれの種類の電動機であっても本発明のリール装置に使用することができる。