以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態にかかる蒸気生成システムS1を示す概略図である。図1において、蒸気生成システムS1は、作動流体(作動媒体、第1流体)が流れるヒートポンプ10(第1ユニット)と、被加熱流体(被加熱媒体、第2流体)の供給ユニット20(第2ユニット)と、制御装置70とを備える。本実施形態において、被加熱流体は水である。制御装置70は、システム全体を統括的に制御する。蒸気生成システムS1の構成は、蒸気生成システムS1の設計要求に応じて様々に変更可能である。
ヒートポンプ10は、蒸発、圧縮、凝縮、及び膨張の各工程からなるサイクルにより、低温の物体から熱を汲み上げ、高温の物体に熱を与える装置である。ヒートポンプは一般に、エネルギー効率が比較的高く、結果として、二酸化炭素等の排出量が比較的少ないという利点を有する。
本実施形態において、ヒートポンプ10は、吸熱部11、圧縮部12、放熱部(第1放熱部13A、第2放熱部13B)、及び膨張部14を有し、これらは導管を介して接続されている。
吸熱部11では、主経路15内を流れる作動流体がサイクル外の熱源の熱を吸収する。本実施形態において、ヒートポンプ10の吸熱部11は、大気の熱を吸収する。ヒートポンプ10の吸熱部11が外部の装置からの熱(排熱など)を吸収する構成とすることもできる。
圧縮部12は、圧縮機等によって作動流体を圧縮する。この際、通常、作動流体の温度が上がる。圧縮部12は、作動流体を単段又は複数段に圧縮する構造を有する。圧縮の段数は、蒸気生成システムS1の仕様に応じて設定され、1、2、3、4、5、6、7、8、9、あるいは10以上である。圧縮部12は、軸流圧縮機、遠心圧縮機、レシプロ式圧縮機、ロータリー式圧縮機などの様々な圧縮機のうち、作動流体の圧縮に適するものが適用される。圧縮機には動力が供給される。圧縮部12の圧縮比(圧力比)は、蒸気生成システムS1の仕様に応じて設定される。
放熱部13A,13Bは、圧縮部12で圧縮された作動流体が流れる導管を有し、主経路15内を流れる作動流体の熱をサイクル外の熱源に与える。本実施形態において、作動流体の流れ方向に沿って、第1放熱部13A、及び第2放熱部13Bがその順に並んでいる。放熱部の数は、蒸気生成システムS1の仕様に応じて設定され、2、3、4、5、6、7、8、9、10、あるいは11以上である。
膨張部14は、減圧弁またはタービン等によって作動流体を膨張させる。この際、通常、作動流体の温度が下がる。タービンを使用した場合には膨張部14から動力を取り出すことができ、その動力を例えば圧縮部12に供給してもよい。ヒートポンプ10に使用される作動流体として、フロン系媒体、アンモニア、水、二酸化炭素、空気などの公知の様々な熱媒体が、蒸気生成システムS1の仕様及び熱バランスなどに応じて用いられる。
供給ユニット20は、加温部21と、蒸発ユニット22と、圧縮機30とを有する。
加温部21は、ヒートポンプ10の第2放熱部13Bに熱的に接続されかつ供給源(不図示)からの水が流れる導管を含む。例えば、加温部21の導管が第2放熱部13Bの導管に接触あるいは隣接して配置される。加温部21と第2放熱部13Bとを含んで第1熱交換器41が構成される。第1熱交換器41は、低温の流体(供給ユニット20内の水)と高温の流体(ヒートポンプ10内の作動流体)とが対向して流れる向流型の熱交換方式を有することができる。あるいは、第1熱交換器41は、高温流体と低温流体とが並行して流れる並行流型の熱交換方式を有してもよい。本実施形態において、ヒートポンプ10の第2放熱部13Bの導管の内部に、加温部21の導管が配設されている。加温部21において、ヒートポンプ10の第2放熱部13Bからの伝達熱によって、供給ユニット20内の水が温度上昇する。なお、他の実施形態において、第1熱交換器41は、別の熱交換構造を採用することができる。例えば、第2放熱部13Bの導管を、加温部21の導管の外周面に配設することができる。
蒸発ユニット22は、被加熱媒体としての水を貯溜するタンク47と、加温部21からの水をタンク47に導く経路25とを有する。経路25には、必要に応じて、制御弁やポンプ(不図示)などの機器が配置される。なお、脱気装置を、例えば加温部21とタンク47との間に設けてもよい。タンク47には、経路25が流体的に接続される水の供給口(不図示)と、ダクト23が流体的に接続される蒸気の排出口(不図示)とが設けられる。また、タンク47は、必要に応じて、液面を計測するレベルセンサ(不図示)と、内部の水(蒸気)の温度に相当する情報を計測するセンサ(不図示)と、必要に応じて気液分離器(不図示)とを有する。レベルセンサ、及びセンサからの情報は、制御装置70に送られる。タンク47には、ヒートポンプ10の第1放熱部13Aが配設される。ヒートポンプ10の第1放熱部13Aからの熱は、タンク47内の水に伝わる。
蒸発ユニット22において、加温部21で温度上昇した水が経路25及び供給口を介してタンク47に供給される。タンク47内の液面が所定範囲内になるように、タンク47への水の供給量が制御される。例えば、タンク47内の液面を計測するレベルセンサ(不図示)の計測結果に基づいて、水の供給量が制御される。タンク47に水が貯溜され、また、ヒートポンプ10の第1放熱部13Aによってタンク47内の水が加熱される。タンク47の内部空間は、タンク47の排出口及びダクト23を介して圧縮機30によって吸引される。タンク47内で発生した蒸気は、ダクト23を介して圧縮機30に導かれる。
圧縮機30は、ダクト23及びタンク47の排出口を介してタンク47の気相空間に流体的に接続されている。圧縮機30としては、軸流圧縮機、遠心圧縮機、レシプロ式圧縮機、ロータリー式圧縮機などの様々な圧縮機が適用され、蒸気圧縮に適するものが用いられる。圧縮機30は、タンク47からの蒸気を圧縮し、昇圧した蒸気を下流に流す。
圧縮機30による吸引作用により、タンク47の内部空間が減圧される。タンク47の内部圧力が大気圧に比べて低い負圧(陰圧)となるように、経路25上の制御弁(流量制御弁など。不図示)や圧縮機30が制御される。この制御は、例えば、タンク47の内部圧力を計測するセンサ(不図示)の計測結果に基づいて行われる。
圧縮機30及び/又は供給ユニット20には、蒸気に対して水(温水)を供給するノズル35が、必要に応じて配設される。ノズル35の配設位置は、例えば、圧縮機30の入口及び/又は出口である。圧縮機30が多段式である場合には、ノズル35を圧縮機30の段間に配設することができる。圧縮機30の多段圧縮構造は、蒸気の高温・高圧化に有利である。圧縮機30は、多段の各圧縮部に対応する回転数が個々に制御される多軸圧縮構造を有することができる。あるいは、圧縮機30は、同軸の多段圧縮構造を有することができる。各圧縮部の圧縮比(圧力比)は、蒸気生成システムS1の仕様に応じて設定される。本実施形態において、ノズル35と分岐経路25Aとを導管36を介して流体的に接続することができる。この導管構成では、ポンプ26で加圧された比較的高温度を有する分岐経路25A内の液体がノズル35への供給に有効利用される。ノズル35からの液体の排出には、ポンプなどの動力源を用いてもよく、導管36の入口と出口との圧力差を利用してもよい。
本実施形態において、供給ユニット20は、圧縮機30からの蒸気の一部を抽出して蒸発ユニット22のタンク47に導く補経路38をさらに有する。補経路38の一端は、圧縮機30の出口及び/又は段間経路に流体的に接続される。補経路38の他端は、タンク47内の液相位置(底部など)に流体的に接続される。圧縮機30から抽出された蒸気が補経路38を介してタンク47内の液相に導かれる。後述するように、抽気された蒸気は、タンク47内における蒸発を促進させるために用いられる。
このような蒸気生成システムS1において、供給源からの水が第1熱交換器41でヒートポンプ10の第2放熱部13Bからの熱によって沸点近くまで温度上昇する。その温水はタンク47に供給される。タンク47において、ヒートポンプ10の第1放熱部13Aからの熱によって水が相変化して蒸発する。
タンク47及びヒートポンプ10は、タンク47の内部空間が負圧状態において、水が蒸発するように設計(容量設計、能力設計など)されている。ボイラのエネルギー効率が一般に約0.7〜0.8(70〜80%)であるのに対して、ヒートポンプのエネルギー効率としての成績係数(COP:coefficient of performance)は一般に2.5〜5.0である。ヒートポンプの成績係数は、被加熱媒体(水)の入出力温度差に応じて変化し、その温度差が過度に大きいと成績係数(COP)が低下する場合がある。本実施形態において、第2蒸発部22Bの内部空間が負圧状態である点、及び被加熱媒体及び作動流体の状態に応じて、ヒートポンプが個別の加熱部(放熱部)を有する点などにより、入出力温度差を抑え、ボイラに比べて高いエネルギー効率で蒸気を発生させることができる。加温部21への水の供給温度は例えば約20℃であり、加温部21からの水の出口温度(タンク47への水の入口温度)は例えば約90℃である。上記数値は理解のための一例であって本発明はこれに限定されない。
また、本実施形態において、供給源からの水が、ヒートポンプ10(放熱部13A,13B)による加熱で比較的低圧力かつ低温度の蒸気となり、圧縮機30による圧縮で比較的高圧力かつ高温度の蒸気となる。すなわち、ヒートポンプ10で加熱された水が、圧縮機30による圧縮によってさらに加熱され、これにより、100℃以上の高温蒸気が発生する。
図2は、図1に示す蒸発ユニット22及び圧縮機30における水の状態変化の一例を示す T-s 線図である。図2に示すように、水は、沸点近くまで温度上昇した後、温度一定のまま相変化する。このとき、大気圧(P1=1atm=約0.1MPa)に比べて低い負圧P0の状態において、飽和蒸気d0が発生する。飽和蒸気d0の温度は標準沸点よりも低い、例えば約90℃である。
次に、その飽和蒸気d0は、圧縮機30(図1参照)による圧縮で比較的高圧力かつ高温の蒸気(過熱蒸気e2)になる。すなわち、その圧縮に伴って、蒸気が温度上昇する。過熱蒸気e2の圧力P2は大気圧よりも高い、例えば0.8MPaである。
0.8MPaの過熱蒸気e2を定圧下で冷却することにより、約160℃の飽和蒸気を得ることができる(図2の破線a)。同様に、大気圧(約0.1MPa)の過熱蒸気を定圧下で冷却することにより、約100℃の飽和蒸気d1を得ることができる。上記数値は理解のための一例であって本発明はこれに限定されない。
過熱蒸気から飽和蒸気への冷却に、液状の水または温水を直接混入することにより、蒸気のボリュームが増加する。この場合、例えば、圧縮機30の出口において蒸気に対して水または温水が供給される。
水または温水の供給量及びタイミングの最適化により、比較的低圧力かつ低温度の飽和蒸気d0から比較的高圧力かつ高温度の飽和蒸気d2への変化を、より直接的にできる。例えば、圧縮機30の入口で適量の水または温水が蒸気に供給されることにより、圧縮機30の入口での飽和蒸気d0が、圧縮機30の出口で飽和蒸気d2に変化する(図2の破線c1(スプレー)及びc2(圧縮))。または、圧縮機30の中間で圧縮機30の段落ごとに適量の水または温水が蒸気に供給されることにより、圧縮機30の入口での飽和蒸気d0が、圧縮機30の出口で飽和蒸気d2に変化する(図2の破線b)。すなわち、圧縮機30による圧縮と水または温水による冷却との組み合わせの最適化により、効率良く圧縮機30から飽和状態に近い蒸気を排出することができる。
このように、本実施形態では、ヒートポンプ10及び圧縮機30による順次加熱により、飽和蒸気及び過熱蒸気のいずれも容易に発生させることができる。つまり、蒸気生成システムS1は、蒸気仕様に対する柔軟性が高い。蒸気生成システムS1からの蒸気は、外部の所定施設、例えば製造プラント、調理施設、空調設備、発電プラントなどに供給される。
また、本実施形態において、圧縮機30から抽出された蒸気がタンク47内の液相に導入されることにより、タンク47内における蒸発が促進される。
ここで、本実施形態において、タンク47における水の飽和温度(沸騰温度)と熱源である第1放熱部13Aとの温度差(以下、「表面過熱度」という)は、比較的小さく、例えば約5℃〜15℃、約15℃〜25℃、約25℃〜35℃、約35℃〜45℃、約45℃〜55℃、約55℃〜約65℃、約65℃〜約75℃、約75℃〜約85℃、約85℃〜約95℃、又は約95℃以上である。表面過熱度が比較的小さい場合は、サブクール沸騰(sub-cooled boiling、表面沸騰ともいう)の領域に属する可能性がある。表面過熱度が比較的高い核沸騰(nucleate boiling)の領域では、激しい熱伝達が生じ、気泡が繰り返し発生する。本実施形態において、タンク47内の液相に圧縮機30からの蒸気を導入することにより、その蒸気から発生した気泡(バブル)が液相の強制対流を生じさせ、熱伝達を向上させることができる。こうしたバブリングにより、タンク47内の蒸発が促進される。
また、前述したように、本実施形態において、圧縮機30からは飽和蒸気及び/又は過熱蒸気を取り出すことができる。過熱蒸気の導入は、タンク47内の攪拌、タンク47内における気泡の消滅の抑制、伝熱面積の増大などに有利である。その結果、タンク47内の蒸発が促進される。
図3A及び図3Bは、タンク47における補経路38からの蒸気の出口構造の一例を模式的に示す図である。
補経路38は、図3Aに示すように、第1放熱部13Aの導管に隣接して配置される排出ポート61を有することができる。この構造において、補経路38からの蒸気が第1放熱部13Aの導管の表面近くに供給される。また、補経路38は、図3Bに示すように、複数の排出ポート61を有するヘッド62を有することができる。ヘッド62は、例えばタンク47内において第1放熱部13Aの下方位置に配置される。この構造において、タンク47内の広範囲にわたり、タンク47内に蒸気を供給することができる。他の構造において、タンク47の壁(底部など)に補経路38の排出ポートを設けることも可能である。
本実施形態において、水の顕熱加熱が主に第1熱交換器41(加温部21)で行われ、水の潜熱加熱が主にタンク47で行われる。そのため、第2放熱部13Bを含む第1熱交換器41が顕熱交換に適した形態であり、第1放熱部13A、タンク47、補経路38などを含む熱交換ユニットが潜熱交換に適した形態であるといった、装置構成の最適化が図られ、これに応じて、好ましい加熱プロセスを経て蒸気が発生する。
また、本実施形態において、蒸気発生のための加熱過程の一部を圧縮機30が補うから、高いCOPでヒートポンプ10が使用される。したがって、蒸気生成システムS1は、全体としての一次エネルギーの節減が期待される。
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。
図4は、第2実施形態にかかる蒸気生成システムS2を示す概略図である。以下の説明では、上記実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
図4において、蒸気生成システムS2は、作動流体(作動媒体、第1流体)が流れるヒートポンプ10(第1ユニット)と、被加熱流体(被加熱媒体、第2流体)の供給ユニット20(第2ユニット)と、制御装置70とを備える。本実施形態において、被加熱流体は水である。制御装置70は、システム全体を統括的に制御する。蒸気生成システムS2の構成は、蒸気生成システムS2の設計要求に応じて様々に変更可能である。
本実施形態において、ヒートポンプ10は、吸熱部11、圧縮部12、放熱部(第1放熱部13A、第2放熱部13B、第3放熱部13C)、及び膨張部14を有し、これらは導管を介して接続されている。
本実施形態において、ヒートポンプ10の吸熱部11は、冷熱供給装置90の放熱管91に熱的に接続されている。冷熱供給装置90において、放熱管91を流れる媒体(冷媒など)の熱(温排熱)がヒートポンプ10の吸熱部11に吸収される。冷却された媒体が冷熱供給装置90から所定の設備に供給される。ヒートポンプ10の吸熱部11が大気など他の熱源の熱を吸収する構成とすることもできる。
本実施形態において、放熱部13A、13B、13Cは、圧縮部12で圧縮された作動流体が流れる導管を有し、主経路15内を流れる作動流体の熱をサイクル外の熱源に与える。本実施形態において、作動流体の流れ方向に沿って、第1放熱部13A、第2放熱部13B、及び第3放熱部13Cがその順に並んでいる。放熱部の数は、蒸気生成システムS2の仕様に応じて設定され、2、3、4、5、6、7、8、9、10、あるいは11以上である。
本実施形態において、ヒートポンプ10はさらに、バイパス経路17と、再生器18とを有する。バイパス経路17の入口端がヒートポンプ10の主経路15における放熱部13A,13Bと第3放熱部13Cとの間の導管に流体的に接続される。バイパス経路17の出口端が主経路15における第3放熱部13Cと膨張部14との間の導管に流体的に接続される。バイパス経路17の入口に、作動流体のバイパス流量を制御する流量制御弁を設けることができる。バイパス経路17において、第1及び第2放熱部13A,13Bからの作動流体の一部が、第3放熱部13Cを迂回し、膨張部14の手前で第3放熱部13Cからの作動流体と合流する。第1及び第2放熱部13A,13Bからの残りの作動流体は、第3放熱部13Cを流れ、第3放熱部13Cからの熱が供給ユニット20内の水に伝わる。
再生器18は、バイパス経路17の導管の一部と、ヒートポンプ10の主経路15の導管(吸熱部11と圧縮部12との間の導管)の一部とが熱的に接続された構成を有する。例えば、両導管が互いに接触あるいは隣接して配置される。ヒートポンプ10において、吸熱部11からの作動流体に比べて、第1及び第2放熱部13A,13Bからの作動流体は高温である。再生器18において、バイパス経路17を流れる第1及び第2放熱部13A,13Bからの作動流体と、ヒートポンプ10の主経路15を流れる吸熱部11からの作動流体とが熱交換する。この熱交換により、バイパス経路17内の作動流体の温度が降下し、主経路15内の作動流体の温度が上昇する。再生器18は、低温の流体(主経路15内の作動流体)と高温の流体(バイパス経路17内の作動流体)とが対向して流れる向流型の熱交換構造を有することができる。あるいは、再生器18は、高温流体と低温流体とが並行して流れる並行流型の熱交換構造を有してもよい。
供給ユニット20は、加温部21と、蒸発ユニット22と、圧縮機30とを有する。
本実施形態において、加温部21は、ヒートポンプ10の第3放熱部13Cに熱的に接続されかつ供給源(不図示)からの水が流れる導管を含む。例えば、加温部21の導管が第3放熱部13Cの導管に接触あるいは隣接して配置される。加温部21と第3放熱部13Cとを含んで第1熱交換器41が構成される。本実施形態において、ヒートポンプ10の第3放熱部13Cの導管の内部に、加温部21の導管が配設されている。加温部21において、ヒートポンプ10の第3放熱部13Cからの伝達熱によって、供給ユニット20内の水が温度上昇する。
本実施形態において、蒸発ユニット22は、加温部21からの水(温水)がそれぞれ蒸発する第1蒸発部22A及び第2蒸発部22Bと、加温部21からの水を分ける分岐部24と、分岐部24からの水を第1蒸発部22Aに導く分岐経路25Aと、分岐部24からの水を第2蒸発部22Bに導く分岐経路25Bと、分岐経路25A上に配設されるポンプ26と、分岐経路25B上に必要に応じて配設される減圧弁27とを有する。なお、脱気装置を、例えば加温部21と第1及び第2蒸発部22A,22Bとの間に設けてもよい。蒸発部の数は、蒸気生成システムS2の仕様に応じて設定され、2、3、4、5、6、7、8、9、あるいは10以上である。
第1及び第2蒸発部22A,22Bは、被加熱媒体としての水を貯溜する容器構造を有する。第1及び第2蒸発部22A,22Bには、水の供給口(不図示)と、蒸気の排出口(不図示)とが設けられる。第1蒸発部22Aの供給口には、分岐経路25Aが流体的に接続され、第2蒸発部22Bの排出口には、ダクト29Aが流体的に接続される。第2蒸発部22Bの供給口には、分岐経路25Bが流体的に接続され、第2蒸発部22Bの排出口には、ダクト29Bが流体的に接続される。各蒸発部22A,22Bは、必要に応じて、液面を計測するレベルセンサ(不図示)と、内部の水(蒸気)の温度に相当する情報を計測するセンサ(不図示)と、必要に応じて気液分離器(不図示)とを有する。レベルセンサ、及びセンサからの情報は、制御装置70に送られる。
第1蒸発部22Aには、ヒートポンプ10の第1放熱部13Aが配設される。第2蒸発部22Bには、ヒートポンプ10の第2放熱部13Bが配設される。ヒートポンプ10の各放熱部13A,13Bからの熱は、各蒸発部22A,22B内の水に伝わる。第1蒸発部22Aと第1放熱部13Aとを含んで第2熱交換器42が構成される。第2蒸発部22Bと第2放熱部13Bとを含んで第3熱交換器43が構成される。第2及び第3熱交換器42,43は、低温の流体(供給ユニット20内の水)と高温の流体(ヒートポンプ10内の作動流体)とが対向して流れる向流型の熱交換方式を有することができる。あるいは、第2及び第3熱交換器42,43は、高温流体と低温流体とが並行して流れる並行流型の熱交換方式を有してもよい。
本実施形態において、第1蒸発部22Aと第2蒸発部22Bとは、供給ユニット20に対して実質的に並列に配置される。一方、ヒートポンプ10において、作動流体の流れ方向に沿って、第1蒸発部22Aとの熱交換位置は上流側であり、第2蒸発部22Bとの熱交換位置は下流側である。
第1及び第2蒸発部22A,22Bは、ヒートポンプ10の放熱部における作動流体の温度変化に応じて設定された互いに異なる内部圧力を有する。本実施形態において、第1蒸発部22Aには、加温部21からの水が供給される。一方、第2蒸発部22B内のガス(蒸気)が圧縮機30によって吸引される。その結果、第2蒸発部22Bは、第1蒸発部22Aに比べて低い内部圧力を有する。本実施形態において、第1蒸発部22Aの内部圧力は、大気圧(1atm=約0.1MPa)に比べて同等もしくは高く、第2蒸発部22Bの内部圧力は、大気圧に比べて低い。例えば、第1蒸発部22Aの内部圧力は1.4気圧(約0.14MPa)であり、第2蒸発部22Bの内部圧力は0.7気圧(約0.07MPa)である。なお、上記数値は理解のための一例であり本発明はこれに限定されない。第1及び第2蒸発部22A,22Bの内部圧力の設定のために、例えば、供給ユニット20上の制御弁(流量制御弁など。不図示)、ポンプ26、及び圧縮機30等が制御される。この制御は、例えば、第1及び第2蒸発部22A,22Bの内部圧力を計測するセンサ(不図示)の計測結果に基づいて制御装置70によって行われる。
図5、図6、図7、及び図8は、ヒートポンプ10の放熱部(第1放熱部13A、第2放熱部13B、及び第3放熱部13C)を流れる作動流体の温度変化を模式的に示している。前述したように、作動流体は、第1放熱部13A、第2放熱部13B、及び第3放熱部13Cの順に流れる。
図5〜図8に示すように、本実施形態において、放熱部(第1放熱部13A、第2放熱部13B、及び第3放熱部13C(図4参照))を流れる作動流体は、その流れ方向に沿って温度が低下する。すなわち、第1放熱部13Aにおいて、作動流体の入口温度t1に比べて出口温度t2が低い。第2放熱部13Bにおいて、作動流体の入口温度t3に比べて出口温度t4が低い。第3放熱部13Cにおいて、作動流体の入口温度t5に比べて出口温度t6が低い。また、第1放熱部13Aにおける作動流体の入口温度t1に比べて、第2放熱部13Bにおける作動流体の入口温度t3が低く、第2放熱部13Bにおける作動流体の入口温度t3に比べて第3放熱部13Cにおける作動流体の入口温度t5が低い。ヒートポンプ10の放熱部において、作動流体の相変化が実質的に小さい場合には、放熱に伴って、作動流体の温度が低下する傾向にある。例えば、ヒートポンプ10の放熱部を流れる作動流体の少なくとも一部が超臨界流体、もしくは気体である場合には、放熱に伴って作動流体の温度が比較的漸次的に低下する。
図9は、供給ユニット20(図4参照)における被加熱媒体としての水の温度変化を、ヒートポンプ10(図4参照)における作動流体の温度に対応付けて模式的に示している。
図9に示すように、加温部21(図4参照)において、作動流体との熱交換により、供給源からの水の温度が上昇する(図9の矢印m1)。分岐経路25B(図4参照)を介して第2蒸発部22Bに流入した加温部21からの水は、減圧雰囲気(例えば負圧環境)下にある。比較的低い内部圧力を有する第2蒸発部22Bにおいて、作動流体との熱交換により、第1沸点近くの温度で、水が液体から蒸気に相変化する(矢印m2)。一方、分岐経路25A(図4参照)を介して第1蒸発部22Aに流入する加温部21からの水は、ポンプ26によって加圧されて温度上昇する(図9の矢印m3)。比較的高い内部圧力を有する第1蒸発部22Aにおいて、作動流体との熱交換により、第1沸点よりも高い第2沸点近くの温度で、水が液体から蒸気に相変化する(矢印m4)。
本実施形態において、第2蒸発部22B(図4参照)における沸点(第1沸点)は例えば約90℃であり、第1蒸発部22Aにおける沸点(第2沸点)は例えば約110℃である。また、ヒートポンプ10(図4参照)において、第1放熱部13Aでの作動流体の入口温度は例えば約140℃、第2放熱部13Bでの作動流体の入口温度は例えば約115℃である。なお、上記数値は理解のための一例であって本発明はこれに限定されない。
本実施形態によれば、ヒートポンプ10の放熱部における作動流体の温度変化に応じて、異なる内部圧力を有する2つの蒸発部22A,22Bを供給ユニット20が有することにより、作動流体と水との間の熱バランスが適性化される。例えば、ヒートポンプ10の放熱部の全体にわたって熱交換時の作動流体と水との間の過度の温度差が回避される。その結果、熱交換効率が高まる。
本実施形態において、第1実施形態と同様に、被加熱媒体及び作動流体の状態に応じて、ヒートポンプが個別の加熱部(放熱部)を有することにより、入出力温度差を抑え、ボイラに比べて高いエネルギー効率で蒸気を発生させることができる。第2蒸発部22Bの内部空間が負圧状態であるという条件により、加熱温度領域(入出力温度差)を比較的狭く設定し、高いCOPでのヒートポンプ10の使用が可能である。例えば、加温部21への水の供給温度は約80℃であり、加温部21からの水の出口温度(第1蒸発部22Aへの水の入口温度)は約90℃である。上記数値は理解のための一例であって本発明はこれに限定されない。
なお、ヒートポンプ10の放熱部及び供給ユニット20の蒸発部の数は、2つに限らず、作動流体の特性に応じて適宜設定される。また、供給源からの水の供給温度が比較的高い場合など、加温部21(第3放熱部13C)を省略することも可能である。
本実施形態において、バイパス経路17を介して作動流体の一部が第1熱交換器41を迂回することにより、第1熱交換器41への作動流体の流入量が制御される。バイパス経路17を流れる作動流体は、再生器18において、ヒートポンプ10の主経路15を流れる吸熱部11からの作動流体と熱交換する。この熱交換により、バイパス経路17内の作動流体の温度が降下し(例えば約20℃)、ヒートポンプ10の主経路15内の作動流体の温度が上昇する(例えば約95℃)。圧縮部12に対する作動流体の入力温度の上昇により、圧縮部12の動力の低減が図られる。なお、作動流体のバイパス量は、被加熱流体及び作動流体の各物性値(比熱など)に応じて定められる。
また、本実施形態において、再生器18で温度降下したバイパス経路17内の作動流体(例えば約20℃)は、膨張部14の手前で、ヒートポンプ10の主経路15を流れる第1熱交換器41(第3放熱部13C)からの作動流体と合流する。前述したように、第1熱交換器41からの作動流体の出力温度は比較的低く設定される(例えば約30℃)。膨張部14に対する作動流体の入力温度の降下により、作動流体の液ガス比の最適化が図られ、その結果、吸熱部11においてサイクル外の熱源(冷熱供給装置90の放熱管91を流れる媒体)から有効に熱が吸収される。
このように、本実施形態において、水の蒸発に用いた後の作動流体が水の加温と作動流体の再生とに用いられることにより、熱の有効利用が図られる。
図4に戻り、第1蒸発部22Aは、ダクト29Aを介して圧縮機30の出口ポートに接続されたダクト37に接続されている。第1蒸発部22Aからの蒸気は、ダクト29Aによって圧縮機30の下流位置に導かれる。第2蒸発部22Bは、ダクト29Bを介して圧縮機30の入口ポートに流体的に接続されている。前述したように、第2蒸発部22Bの内部空間は、ダクト29Bを介して圧縮機30によって吸引される。第2蒸発部22B内の蒸気は、ダクト29B内を介して圧縮機30に導かれる。
本実施形態において、圧縮機30は、第1蒸発部22Aからの蒸気を圧縮し、昇圧した蒸気を下流に流す。
本実施形態において、供給ユニット20は、圧縮機30からの蒸気の一部を抽出して第1蒸発部22A,第2蒸発部22Bにそれぞれ導く第1補経路38A,第2補経路38Bをさらに有する。第1及び第2補経路38A,38Bの一端は、圧縮機30の出口及び/又は段間経路に流体的に接続される。第1及び第2補経路38A,38Bの他端は、第1及び第2蒸発部22A,22B内の液相位置(底部など)に流体的に接続される。圧縮機30から抽出された蒸気が第1蒸発部22A内の液相に導かれる。同様に、圧縮機30から抽出された蒸気が第2蒸発部22B内の液相に導かれる。本実施形態において、第1実施形態と同様に、圧縮機30から抽出された蒸気を用いたバブリングにより、第1蒸発部22A及び第2蒸発部22Bにおける蒸発が促進される。
また、本実施形態において、第1及び第2蒸発部22A,22B内には、スプレイノズル45を有する散液管48A,48Bが配設される。散液管48Aには、分岐経路25Aが流体的に接続され、第1蒸発部22Aに設けられた排出口(不図示)に、ダクト29Aが流体的に接続される。散液管48Bには、分岐経路25Bが流体的に接続され、第2蒸発部22Bに設けられた排出口(不図示)に、ダクト29Bが流体的に接続される。
また、本実施形態において、第1及び第2蒸発部22A,22B内には、ノズル45からの水が付着する蒸発促進部材46が配置される。蒸発促進部材46は、網状、平板状、波板状、板状部材に複数の孔が設けられた穴あき板状、板状部材に布が取り付けられた布板状、複数の板状部材からなる形状、巻状、格子状などの様々な形状を有することができる。蒸発促進部材46は、ラッシヒリングを有することができる。蒸発促進部材46として、第1及び第2蒸発部22A,22B内に、多数の筒状部材がランダムに配置されてもよく、あるいは、多数の金属個片や樹脂個片が配置された網状部材が配置されてもよい。
本実施形態において、散液管48A,48Bの各スプレイノズル45から水が散液される。ノズル45の散液パターンは、蒸気生成システムS2の仕様に応じて適宜設定される。各蒸発部22A,22B内で散液された水は、蒸発促進部材46及び各放熱部13A,13Bの導管(チューブ)の表面(外面)に付着する。導管内の作動流体の熱が、その付着した水に速やかに伝わり、水が各蒸発部22A,22B内で蒸発する。ノズル45からの散水、及び蒸発促進部材46の設置により、気液界面(伝熱面、蒸発面積)の拡大が図られ、第1及び第2蒸発部22A,22B内における水の蒸発が促進される。
次に、本発明の第3実施形態について図面を参照して説明する。
図10は、第3実施形態にかかる蒸気生成システムS3を示す概略図である。以下の説明では、上記実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
図10に示すように、蒸気生成システムS3において、供給ユニット20の第1及び第2蒸発部22A,22Bは、被加熱媒体としての水を貯溜するタンク47A,47Bをそれぞれ有する。本実施形態において、第1及び第2蒸発部22A,22Bはさらに、各タンク47A,47Bに流体的に接続された循環配管49A,49Bをそれぞれ有する。各タンク47A,47Bには、水の供給口(不図示)と、蒸気の排出口(不図示)とが設けられる。タンク47Aの供給口には、分岐経路25Aが流体的に接続され、タンク47Aの排出口には、ダクト29Aが流体的に接続される。タンク47Bの供給口には、分岐経路25Bが流体的に接続され、タンク47Bの排出口には、ダクト29Bが流体的に接続される。各タンク47A,47Bは、必要に応じて、液面を計測するレベルセンサ(不図示)と、内部の水(蒸気)の温度に相当する情報を計測するセンサ(不図示)と、必要に応じて気液分離器(不図示)とを有する。レベルセンサ、及びセンサからの情報は、制御装置70に送られる。タンクの数は、蒸気生成システムS3の仕様に応じて設定され、2、3、4、5、6、7、8、9、あるいは10以上である。
本実施形態において、循環配管49A,49Bの各入口端と各出口端とがタンク47A,47Bに流体的にそれぞれ接続される。循環配管の数は、蒸気生成システムS3の仕様に応じて設定され、2、3、4、5、6、7、8、9、あるいは10以上である。循環配管49Aは、ヒートポンプ10の第1放熱部13Aに熱的に接続される蒸発管51Aと、ポンプ52Aと、必要に応じてバルブ53Aとを有する。同様に、循環配管49Bは、ヒートポンプ10の第2放熱部13Bに熱的に接続される蒸発管51Bと、ポンプ52Bと、必要に応じてバルブ53Bとを有する。バルブ53A,53Bは、例えばレギュレータ、流量制御弁、又は開閉バルブである。本実施形態において、蒸発管51A,51Bは、個々に独立してタンク47A又はタンク47Bに流体的に接続される。また、蒸発管51A,51Bは、供給ユニット20に対して並列に配置される。被加熱媒体(水)の熱対流及び/又は外部との差圧などを利用してポンプ52A,52Bの少なくとも1つを省いてもよい。
蒸発管51Aと第1放熱部13Aとを含んで第2熱交換器42が構成される。同様に、蒸発管51Bと第2放熱部13Bとを含んで第3熱交換器43が構成される。第2及び第3熱交換器42,43は、低温の流体(蒸発管51A,51B内の水)と高温の流体(ヒートポンプ10内の作動流体)とが対向して流れる向流型の熱交換方式を有することができる。あるいは、第2及び第3熱交換器42,43は、高温流体と低温流体とが並行して流れる並行流型の熱交換方式を有してもよい。第2及び第3熱交換器42,43の熱交換構造として、公知の様々なものを採用することができる。
図11は、蒸発管51Aにおける水の流量を制御する構成の一例を示す。ヒートポンプ10において、蒸発管51Aに対応する放熱部13Aの出口温度を計測するセンサ71が設けられている。制御装置70は、センサ71の計測結果に基づいて、蒸発管51A用のポンプ52Aを介して蒸発管51Aを流れる単位時間あたりの水の流量を制御する。これにより、放熱部13Aにおける作動流体の出口温度を目標値に設定することができる。放熱部13Aの入口温度を計測するセンサ72を用いてもよい。図10に示す蒸発管51B及び対応する放熱部13Bもこれと同様の構成を採用することができる。
図10に戻り、ヒートポンプ10の放熱部13Aからの熱伝達によって蒸発管51A内の水が加熱され、その水の少なくとも一部が蒸発する。同様に、ヒートポンプ10の放熱部13Bからの熱伝達によって蒸発管51B内の水が加熱され、その水の少なくとも一部が蒸発する。
本実施形態においても、第1及び第2蒸発部22A,22Bは、ヒートポンプ10の放熱部における作動流体の温度変化に応じて設定された互いに異なる内部圧力を有する。すなわち、タンク47Aの内部圧力に比べて、タンク47Bの内部圧力が低い。本実施形態において、第1蒸発部22Aの内部圧力は、大気圧(1atm=約0.1MPa)に比べて同等もしくは高く、第2蒸発部22Bの内部圧力は、大気圧に比べて低い。ヒートポンプ10の放熱部における作動流体の温度変化に応じて、異なる内部圧力を有する2つの蒸発部22A,22Bを供給ユニット20が有することにより、作動流体と水との間の熱バランスが適性化される。例えば、ヒートポンプ10の放熱部の全体にわたって熱交換時の作動流体と水との間の過度の温度差が回避される。その結果、熱交換効率が高まる。
また、本実施形態において、供給ユニット20は、圧縮機30からの蒸気の一部を抽出して第1蒸発部22A(第1タンク47A),第2蒸発部22B(第2タンク47B)にそれぞれ導く第1補経路38A,第2補経路38Bをさらに有する。第1及び第2補経路38A,38Bの一端は、圧縮機30の出口及び/又は段間経路に流体的に接続される。第1及び第2補経路38A,38Bの他端は、第1及び第2タンク47A,47B内の液相位置(底部など)に流体的に接続される。圧縮機30から抽出された蒸気が第1タンク47A内の液相に導かれる。同様に、圧縮機30から抽出された蒸気が第2タンク47A内の液相に導かれる。本実施形態において、上記各実施形態と同様に、圧縮機30から抽出された蒸気を用いたバブリングにより、第1蒸発部22A(第1タンク47A)及び第2蒸発部22B(第2タンク47B)における蒸発が促進される。
また、本実施形態において、蒸発管51A,51B内に、蒸発促進部材46が配置される。蒸発促進部材46は、網状、平板状、波板状、板状部材に複数の孔が設けられた穴あき板状、板状部材に布が取り付けられた布板状、複数の板状部材からなる形状、巻状、格子状などの様々な形状を有することができる。蒸発促進部材46は、ラッシヒリングを有することができる。蒸発促進部材46として、第1及び第2蒸発部22A,22B内に、多数の筒状部材がランダムに配置されてもよく、あるいは、多数の金属個片や樹脂個片が配置された網状部材が配置されてもよい。
本実施形態において、蒸発促進部材46によって蒸発管51A,51B内の水(温水)の流れが乱れ、熱伝達が向上する。また、蒸発促進部材46の設置により、気液界面(伝熱面、蒸発面積)の拡大が図られる。その結果、第1及び第2蒸発部22A,22B内における水の蒸発が促進される。
次に、本発明の第4実施形態について図面を参照して説明する。
図12は、第4実施形態にかかる蒸気生成システムS4を示す概略図である。以下の説明では、上記実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
図12に示すように、蒸気生成システムS4において、圧縮部12が作動流体を複数段(本例では2段)で圧縮する構造を有する。本実施形態において、圧縮部12は、第1放熱部13Aの前に配置される第1圧縮部12Aと、第1放熱部と第2放熱部との間に配置される第2圧縮部12Bとを有する。圧縮の段数は、2に限定されない。蒸気発生システムの仕様に応じて圧縮の段数を設定することができ、例えば、圧縮の段数は、2、3、4、5、6、7、8、9、あるいは10以上である。圧縮部12は、各圧縮部12A,12Bに対応する回転数が個々に制御される多軸圧縮構造を有することができる。あるいは、圧縮部12は、同軸圧縮構造を有することができる。各圧縮部12A,12Bの圧縮比(圧力比)は、蒸気発生システムの仕様に応じて設定される。
放熱部13A、13B、13Cは、圧縮部12で圧縮された作動流体が流れる導管を有し、主経路15内を流れる作動流体の熱をサイクル外の熱源に与える。本実施形態において、作動流体の流れ方向に沿って、第1放熱部13A、第2放熱部13B、及び第3放熱部13Cがその順に並んでいる。放熱部の数は、蒸気生成システムS4の仕様に応じて設定され、2、3、4、5、6、7、8、9、10、あるいは11以上である。なお、供給源からの水の供給温度が比較的高い場合など、第3放熱部13C(加温部21)を省略することも可能である。
図13は、第4実施形態における、ヒートポンプ10における作動流体の温度変化と、供給ユニット20における被加熱媒体としての水の温度変化とを対応付けて模式的に示している。
図13に示すように、本実施形態において、第1放熱部13A(図12参照)における作動流体の出口温度t2に比べて第2放熱部13B(図12参照)における作動流体の入口温度t3が高い。これは、第1放熱部13A(図12参照)からの作動流体が第2圧縮部12B(図12参照)によって圧縮されるためである。なお、本実施形態において、第2実施形態と同様に、第1放熱部13Aにおいて、作動流体の入口温度t1に比べて出口温度t2が低く、第2放熱部13Bにおいて、作動流体の入口温度t3に比べて出口温度t4が低い。また、第1放熱部13Aにおける作動流体の入口温度t1に比べて、第2放熱部13Bにおける作動流体の入口温度t3が低い。
本実施形態においても、第1及び第2蒸発部22A,22Bは、ヒートポンプ10の放熱部における作動流体の温度変化に応じて設定された互いに異なる内部圧力を有する。すなわち、第1蒸発部22Aの内部圧力に比べて、第2蒸発部22Bの内部圧力が低い。本実施形態において、第1蒸発部22Aの内部圧力は、大気圧(1atm=約0.1MPa)に比べて同等もしくは高く、第2蒸発部22Bの内部圧力は、大気圧に比べて低い。ヒートポンプ10の放熱部における作動流体の温度変化に応じて、異なる内部圧力を有する2つの蒸発部22A,22Bを供給ユニット20が有することにより、作動流体と水との間の熱バランスが適性化される。例えば、ヒートポンプ10の放熱部の全体にわたって熱交換時の作動流体と水との間の過度の温度差が回避される。その結果、熱交換効率が高まる。
さらに、本実施形態において、第1放熱部13Aと第2放熱部13Bとの間に設けられた圧縮部12Bによって、作動流体の温度が上昇する。放熱部における作動流体が多段階な温度変化を有することにより、作動流体と水との間の熱バランスがさらに適性化される。例えば、図13に示すように、第2蒸発部22B(図12参照)における作動流体と水との間の温度差を比較的大きく設定することができる。その結果、蒸発部22A,22Bのそれぞれに対して比較的高温度の作動流体が供給される。これは水の蒸発促進に有利である。
また、本実施形態において、供給ユニット20は、圧縮機30からの蒸気の一部を抽出して第1蒸発部22A,第2蒸発部22Bにそれぞれ導く第1補経路38A,第2補経路38Bをさらに有する。第1及び第2補経路38A,38Bの一端は、圧縮機30の出口及び/又は段間経路に流体的に接続される。第1及び第2補経路38A,38Bの他端は、第1及び第2蒸発部22A,22B内の液相位置(底部など)に流体的に接続される。圧縮機30から抽出された蒸気が第1蒸発部22A内の液相に導かれる。同様に、圧縮機30から抽出された蒸気が第2蒸発部22B内の液相に導かれる。本実施形態において、上記各実施形態と同様に、圧縮機30から抽出された蒸気を用いたバブリングにより、第1蒸発部22A及び第2蒸発部22Bにおける蒸発が促進される。
上記説明において使用した数値は一例であって、本発明はこれに限定されない。
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。上記説明において使用した数値は一例であって、本発明はこれに限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の請求の範囲によってのみ限定される。
S1,S2,S3,S4…蒸気生成システム、10…ヒートポンプ、11…吸熱部、12…圧縮部、13A〜13C…放熱部、14…膨張部、15…主経路、17…バイパス経路、18…再生器、20…供給ユニット、21…加温部、22…蒸発部、22A…第1蒸発部、22B…第2蒸発部、30…圧縮機、38,38A,38…補経路、41〜43…熱交換器、45…ノズル、46…蒸発促進部材、47,47A,47B…タンク、48A,48B…散液管、51A,51B…蒸発管、70…制御装置。