JP2009113756A - 車両のステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 車載電気負荷に電源供給する車載バッテリの電力消費を抑えて、ステアリングロックの解除を補助する、あるいは、ステアリングロックを解除する。
【解決手段】 イグニッションキーがロック位置からアクセサリ位置に回るまでの間にオンする補助開始スイッチ77を設け、補助開始スイッチ77がオンしたときにロック解除補助用リレー110に通電して主電源装置100からステアリングECU60に電源供給する。ステアリングECU60は、主電源リレー106をオフ状態のまま操舵アシストモータ20を駆動制御して、ステアリングロック機構に加わる捩れトルクを減少させてステアリングロック解除を補助する。この場合、副電源装置50から操舵アシストモータ20に電流が流れることとなり、主バッテリ101の電力消費を抑制することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ハンドルの操舵操作を電動モータの回転によりアシストする車両のステアリング装置に関する。
従来から、例えば特許文献1に示されるような盗難防止用のステアリングロック装置が知られている。このステアリングロック装置は、図10に示すように、ステアリングシャフト200の外周面にロックホルダ201を固定して備えている。ロックホルダ201には、ロック溝202が形成されている。ステアリングシャフト200の外側には、ロックホルダ201の外周面と向かい合い、バネ203によりステアリングシャフト200の径方向内側に付勢されたロックストッパ204が設けられる。ロックストッパ204は、図示しないケーシング内でステアリングシャフト200の径方向(以下、シャフト径方向と呼ぶ)にスライド移動可能となっており、その先端に、ロック溝202に挿入可能なロックバー205が形成されている。
ロックストッパ204は、枠体状であって、その枠体内にカム206を先端に備えたカムシャフト(図示略)が挿入されている。カムシャフトは、イグニッションキーIGKで操作されるキーシリンダKCによって回転するようになっている。カム206は、半円状の板体であって、ロックストッパ204の枠内面に当接し、イグニッションキーIGKの回転位置に応じてロックストッパ204をシャフト径方向に移動させる。
イグニッションキーIGKがロック位置にあるときには、カム206がロックストッパ204のシャフト径方向内側への変位を許容するため、バネ203がロックストッパ204をロックホルダ201外周面に押しつける。従って、この状態でステアリングシャフト200がロック溝202とロックバー205とが対向する位置にまで回転すると、図10(a)に示すように、ロックバー205がロック溝202に侵入して、ハンドルの回転操作を禁止する。
一方、運転者がイグニッションキーIGKをオン位置方向へ回転させると、その回転操作力によりカムシャフトが回転し、カム206がバネ203に抗してロックストッパ204をシャフト径方向外側に持ち上げる。これにより、図10(b)に示すように、ロックバー205がロック溝202から脱出して、ハンドルの回転操作を許容する。
ところで、ステアリングロック装置がロック状態にあるときに、運転者がイグニッションキーIGKをキーシリンダKCに挿入して回そうとしても、イグニッションキーIGKの回転操作をスムーズに行えない場合がある。例えば、タイヤの片側が縁石に乗り上げている場合やタイヤの捩れが生じている場合等においては、タイヤからステアリングシャフト200を回そうとする力(いわゆる反力)が働く。このため、図10(c)に示すように、ロックバー205の外周面とロック溝202の内周面とが周方向に強く当接し、その接触摩擦によりロックバー205をロック溝202から引き抜くために必要な力が増大する。従って、イグニッションキーIGKの回転操作が重くなり、場合によってはスタート位置にまで回すことができなくなる。
こうした課題に対して、特許文献2に示された電動パワーステアリング装置においては、イグニッションキーの回転操作によるロック解除(ロックバーをロック溝から引き抜く動作)を補助するために、操舵アシスト用の電動モータを駆動して、ロック状態におけるロックバーとロック溝との接触を解くようにしている。具体的には、イグニッションキーがキーシリンダに挿入されているときにオンするスイッチを設け、このスイッチがオンしたときにステアリングシャフトに働く捩りトルクの有無を判断する。そして、ステアリングシャフトに捩りトルクが働いている場合には、電動モータを駆動してステアリングシャフトを回転させる。これにより、ロックバーがロック溝から引き抜きやすくなりロック解除を補助する。
特開平11−43017 特開2001−171534
ステアリングロックの解除は、エンジンを始動する前に行うことが好ましい。このため、特許文献2に示されたロック解除を補助する技術を用いる場合、オルタネータが発電していない状態で車載バッテリから電動モータに電源供給することとなる。従って、エンジン始動前に車載バッテリの保有電力を消費する。特に、運転者がイグニッションキーをキーシリンダに挿入しただけでオン位置まで回転させないケースでは、例えば、タイヤの縁石乗り上げ等によりステアリングシャフトにタイヤからの反力が加わっているような場合、その反力を打ち消す方向に電動モータが継続して駆動される。このため、車載バッテリの電力消費量が多くなってしまう。従って、バッテリ上がりによりエンジン始動が不能になるおそれもある。
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、種々の車載電気負荷に電源供給する車載バッテリの電力消費を抑えて、ステアリングロックの解除を補助する、あるいはステアリングロックを解除することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、車載電気負荷に電源供給する主電源装置と、上記主電源装置の電力を蓄電する副電源装置と、上記主電源装置と上記副電源装置とを並列接続した電源供給回路から電源供給され、操舵ハンドルの回転操作をアシストするための電動モータと、ロック状態にて上記操舵ハンドルの回転操作を不能にするとともにロック解除状態にて上記操舵ハンドルの回転操作を許容するステアリングロック機構と、上記副電源装置に蓄電された電力を用いて、上記ステアリングロック機構のロック解除あるいはロック解除の補助を行うロック解除制御手段とを備えたことにある。
この発明においては、主電源装置と副電源装置とを並列接続した電源供給回路から電動モータに電源供給して操舵ハンドルの回転操作をアシストする。主電源装置は、例えば、エンジン作動時に発電するオルタネータと、オルタネータの発電した電力を蓄電可能なバッテリとを有し、各種の車載電気負荷に電源供給する電源装置であり、副電源装置は、主電源装置の電力を蓄電する蓄電装置である。電動モータにより操舵アシストを行うステアリング装置においては、瞬時的に大電力を必要とする場合が発生するが、こうした場合には主電源装置で不足する電力を副電源装置で補うことができる。このため、主電源装置の大容量化を図らなくても、電動モータを良好に駆動することが可能となる。
ロック解除制御手段は、副電源装置に蓄電された電力を用いてステアリングロック機構のロック解除あるいはロック解除の補助を行う。ステアリングロックの解除は、エンジン始動前に行う必要があるが、副電源装置に蓄電された電力を用いてロック解除あるいはロック解除の補助を行うため、主電源装置の電力消費を抑えることができる。このため、エンジン始動が不能になったり、他の車載電気負荷への電力供給が不足するといった不具合の発生を抑制することができる。
本発明の他の特徴は、上記ロック解除制御手段は、上記主電源装置からの電源供給を遮断した状態で上記副電源装置から上記電動モータに電源供給し、上記電動モータを駆動制御することにより上記ステアリングロック機構のロック解除の補助を行うことにある。
この発明においては、ロック解除制御手段が、主電源装置から電源供給を遮断した状態で副電源装置から電動モータに電源供給して電動モータを駆動制御する。これにより、ステアリングロック機構が車輪からの反力等により接触摩擦力が増大してロック解除しにくい状態となっていても、主電源装置の電力消費を抑えつつ、接触摩擦力を低下させてロック解除の補助を行うことができる。
本発明の他の特徴は、上記ステアリングロック機構は、ステアリングシャフトの外周に設けられたロック溝と、上記ステアリングシャフトの上記ロック溝が設けられた軸方向位置にてバネにより上記ステアリングシャフトの径方向内側に付勢されたロックバーと、イグニッションキーの回転操作に連動して回転し、上記イグニッションキーのロック位置において上記ロックバーを上記ロック溝に挿入可能な位置に配置し、上記イグニッションキーのオン位置において上記ロックバーを上記ロック溝に挿入不能な位置にまで退避させるとともに、上記イグニッションキーがロック位置からオン位置方向に所定角度回転するまでは上記ロック溝に挿入されたロックバーに退避作動力を伝達しないように不作動回転域を設けたカムとを備え、上記ロック解除制御手段は、上記イグニッションキーが上記ロック位置から上記不作動回転域内における所定位置にまで回転したときに作動するスイッチを備え、上記スイッチが作動したときに上記副電源装置から上記電動モータに電源供給して、上記電動モータの駆動制御を開始することにある。
この発明においては、イグニッションキーの回転操作に連動して回転するカムを使って、ロック位置でロックバーをロック溝に挿入可能な位置に配置し、オン位置でロックバーをロック溝に挿入不能な位置にまで退避させる。このカムは、イグニッションキーがロック位置からオン位置方向に所定角度回転するまではロック溝に挿入されたロックバーに退避作動力を伝達しないように不作動回転域が設けられている。従って、運転者は、イグニッションキーを使ってエンジンを起動するとき、ロックバーのロック溝との当接状態にかかわらず、所定角度まではイグニッションキーをスムーズに回転操作することができる。
イグニッションキーが不作動回転域内における所定位置にまで回転操作されるとスイッチが作動する。「スイッチが作動する」とは、スイッチの状態が変化すること、つまり、オン状態からオフ状態、あるいは、オフ状態からオン状態に変化することをいう。ロック解除制御手段は、このスイッチが作動したときに副電源装置から電動モータに電源供給して電動モータの駆動制御を開始する。運転者がイグニッションキーをさらにオン位置方向に回転操作してその回転位置が不作動回転域を超えると、その回転操作力によりカムがロックバーをロック溝から離れる方向に引く。車輪からの反力等によりロックバーとロック溝とが周方向に強く当接した状態になっていると、両者間の接触摩擦力によりロックバーをロック溝から引き抜きにくく、イグニッションキーをスムーズに回すことができない。しかし、本発明においては、ロックバーをロック溝から引き抜き開始するときには、すでにスイッチが作動している。このスイッチが作動すると、電動モータは、副電源装置から電源供給されてロックバーとロック溝との当接状態を弱める。これにより運転者がイグニッションキーをオン位置にまで回すときに、ロックバーとロック溝との接触摩擦力が弱められ、ステアリングロックがスムーズに解除される。
この場合、イグニッションキーがロック位置を超えて所定位置にまで回転したときにスイッチを作動させて電動モータへ電源供給するようにしているため、ロック解除を補助するための副電源装置の電力消費をも抑えることができる。ここで、イグニッションキーをキーシリンダに挿入した直後からロック解除の補助を開始する従来装置と比較する。従来装置においては、運転者がイグニッションキーをキーシリンダに挿入しただけでエンジンを起動させない場合、電動モータによるロック解除補助が継続されてしまうことがある。例えば、停止車両の片側車輪が縁石に乗り上げているようなケースでは、車輪の向きを変えようとする力が働くため、その力を打ち消す方向に電動モータが継続して駆動される。従って、バッテリの電力消費が大きくなってしまう。
これに対して、本発明においては、運転者がエンジンを起動しようとしたとき、つまり、実際に運転者がイグニッションキーを回してロック解除操作が行われるときにロック解除補助を行うようにしているため、電力消費期間が短く、主電源装置だけでなく副電源装置の電力消費をも抑えることができる。
本発明の他の特徴は、上記ロック解除制御手段は、上記ステアリングシャフトに入力されるトルクを検出するトルク検出手段を備え、上記検出されたトルクの大きさが予め設定したゼロより大きな規定値を超える場合に、上記トルクを減らす方向に上記電動モータを駆動制御することにある。
ロックバーとロック溝とが周方向に当接している場合、ステアリングシャフトに軸線回りのトルクが働く。そこで、本発明においては、トルク検出手段によりステアリングシャフトに入力されるトルクを検出することで、こうした当接状態を把握することができる。ロックバーとロック溝との当接力が強いほど、入力されるトルクの大きさは大きくなる。また、トルクの働く方向から当接方向も把握することができる。そこで、ロック解除制御手段は、検出されたトルクの大きさが規定値を超える場合には、トルクを減らす方向に電動モータを駆動制御する。これにより、ロックバーとロック溝との当接状態が弱められ、運転者は、キー操作によるロック解除を容易に行うことができる。また、規定値をゼロより大きな値に設定しているため、必要以上に電動モータを作動させることもなく、副電源装置の電力消費を一層抑えることができる。また、ロック解除補助動作により操舵ハンドルが回ってしまい運転者に違和感を与えることもない。
本発明の他の特徴は、上記ステアリングロック機構は、ステアリングシャフトの外周に設けられたロック溝と、上記ステアリングシャフトの上記ロック溝が設けられた軸方向位置にて、バネにより上記ステアリングシャフトの径方向内側に付勢されたロックバーと、上記ロックバーを上記ロック溝に挿入可能な位置と挿入不能な位置とに切り替えるロック切替電気アクチュエータとを備え、上記ロック解除制御手段は、ロック解除指令の入力に基づいて上記主電源装置からの電源供給を遮断した状態で上記副電源装置から上記ロック切替電気アクチュエータに電源供給して上記ステアリングロック機構のロック解除を行うことにある。
この発明においては、ロックバーをロック溝に挿入可能な位置(ロック位置)と挿入不能な位置(ロック解除位置)とに切り替えるためのロック切替電気アクチュエータを備えている。つまり、運転者の操作力を使わずにロック状態を解除するロック切替電気アクチュエータを備えている。ロック切替電気アクチュエータとしては、例えば、電動モータやソレノイド等を使用することができる。
ロック解除制御手段は、ロック解除指令の入力に基づいて主電源装置からの電源供給を遮断した状態で副電源装置からロック切替電動アクチュエータに電源供給してロックバーをロック溝に挿入不能な位置に移動させてステアリングロック機構のロック解除を行う。ロック解除指令は、例えば、エンジン始動用操作スイッチ等の操作器の操作により入力される。そして、ステアリングロックの解除が確認されると、エンジン始動が許可される。この場合、ロック切替電動アクチュエータは、エンジン始動前に駆動されることになるが、副電源装置に蓄電された電力を用いて動作するため、主電源装置の電力消費を抑えることができる。
本発明の他の特徴は、上記電源供給回路は、上記主電源装置の出力電圧を昇圧する昇圧回路を備え、上記昇圧回路の出力側に上記副電源装置を並列接続して構成したことにある。
この発明においては、主電源装置の出力電圧が昇圧回路により昇圧され、この昇圧された電力が副電源装置に蓄電される。電源供給回路は、昇圧回路の出力側に副電源装置を並列接続して構成される。従って、操舵アシスト用の電動モータに供給される電源の電圧は昇圧後の電圧となる。このため、操舵アシスト用の電動モータを効率よく駆動することができる。
また、ハンドルロックの解除を補助するために操舵アシスト用の電動モータを駆動する場合には、副電源装置から高電圧の電源を供給できるため、適正に電動モータを駆動することができ、確実なロック解除補助を得ることができる。また、ハンドルロックの解除を行うロック切替電気アクチュエータを駆動する場合には、副電源装置から高電圧の電源を供給できるため、ロックバーをロック溝から引き抜く力を大きくすることができる。このため、確実なロック解除動作を得ることができる。
以下、本発明の一実施形態に係る車両のステアリング装置について図面を用いて説明する。図1は、第1実施形態として車両の電動パワーステアリング装置の概略構成を表している。
本実施形態の車両の電動パワーステアリング装置は、操舵ハンドル11の操舵操作により転舵輪を転舵するステアリング機構10と、ステアリング機構10に組み付けられ操舵アシストトルクを発生する電動モータ20(以下、操舵アシストモータ20と呼ぶ)と、操舵アシストモータ20を駆動するためのアシストモータ駆動回路30と、各種の車載電気負荷に電源を供給する主電源装置100と、主電源装置100の出力電圧を昇圧してアシストモータ駆動回路30に電源供給する昇圧回路40と、昇圧回路40とアシストモータ駆動回路30との間の電源供給回路に並列接続される副電源装置50と、操舵アシストモータ20および昇圧回路40の作動を制御するステアリング制御装置60(以下、ステアリングECU60と呼ぶ)と、操舵ハンドル11の回転操作を不能にするステアリングロック機構70とを主要部として備えている。尚、主電源装置100は、電動パワーステアリング装置以外の他の車載負荷にも電源供給する車載電源であって専用電源ではない。
ステアリング機構10は、操舵ハンドル11の回転操作により左右前輪FWL,FWR(以下、これらを総称する場合には車輪Wと呼ぶ)を転舵するための機構で、操舵ハンドル11を上端に一体回転するように接続したステアリングシャフト12を備える。このステアリングシャフト12の下端には、ピニオンギヤ13が一体回転するように接続されている。ピニオンギヤ13は、ラックバー14に形成されたラック歯と噛み合って、ラックバー14とともにラックアンドピニオン機構を構成する。ラックバー14の両端には、タイロッド15L,15Rを介して左右前輪FWL,FWRのナックル(図示略)が操舵可能に接続されている。左右前輪FWL,FWRは、ステアリングシャフト12の軸線回りの回転に伴うラックバー14の軸線方向の変位に応じて左右に操舵される。
ステアリングシャフト12は、操舵ハンドル11が先端に固定される入力シャフト12aと、ピニオンギヤ13が先端に固定される出力シャフト12bと、入力シャフト12aと出力シャフト12bとを連結するトーションバー12cとから構成される。トーションバー12cは、弾性捩れ部材であって、その外周に操舵トルクセンサ21が設けられる。操舵トルクセンサ21は、トーションバー12cの両端部間の回転変位位置の差を検出して、同差に比例した信号を操舵トルクThを表す信号としてステアリングECU60に出力する。この操舵トルクThは、操舵ハンドル11の回転操作に対する反力に対応するもので、回転方向に応じて操舵トルクThを正負により表している。従って、操舵トルクThの大きさは、その絶対値として表される。
ステアリングシャフト12の出力シャフト12bには、操舵アシストモータ20が組み付けられている。操舵アシストモータ20の回転軸は、ウォーム・ホイール減速ギヤ22を介して出力シャフト12bに動力伝達可能に接続されていて、その回転により左右前輪FWL,FWRの操舵をアシストする。
次に、ステアリングロック機構70について図2を用いて説明する。図2の上段はステアリングロック機構70の概略構成図であり、下段は、その作動位置に対応するイグニッションキーIGKの回転位置を表す。ステアリングロック機構70は、ロックバー71とロック溝72との係合により操舵ハンドル11の回転操作を禁止するもので、ロック溝72が形成された円筒状のロックホルダ73を入力シャフト12aに固定して備えている。ロック溝72は、ロックホルダ73の外周面上に、周方向に沿って2箇所設けられているが、1箇所または3箇所以上設けたものであってもよい。また、ロック溝72は、入力シャフト12aに直接形成されたものであってもよい。
ロックバー71は、ロックストッパ74の先端に一体形成されている。ロックストッパ74は、車体に固定されたケーシング(図示略)内でステアリングシャフト12の径方向にスライド移動可能に設けられ、圧縮されたバネ75によりステアリングシャフト12の径方向内側に付勢されている。ロックストッパ74は、ステアリングシャフト12のロック溝72が形成された軸方向位置においてロックバー71がロックホルダ73外周面と対向するように配設される。以下の説明にあたっては、ステアリングシャフト12の径方向をシャフト径方向と呼ぶ。
ロックストッパ74は枠体状に形成され、その枠体内に、カム76を先端に備えたカムシャフト(図示略)が挿入されている。カムシャフトは、イグニッションキーIGKで操作されるキーシリンダKCによって回転するようになっている。カム76は、扇状の板体であって、ロックストッパ74の枠内におけるシャフト径方向外側面となる枠内平面74aに当接し、ロックストッパ74のシャフト径方向内側への変位を規制する。ロックストッパ74の規制位置は、イグニッションキーIGKの回転位置、つまり、カム76の回転位置に応じてシャフト径方向に変化する。
カム76は、その外周に第1平面76aと、第2平面76bと、両平面76a,76bとの間に形成される円弧面76cとを有する。第1平面76aと第2平面76bとのなす角度(中心角)は、180°よりも所定角度だけ小さな角度に設定されている。
イグニッションキーIGKがロック位置にあるときには、ロックバー71がロック溝72内に侵入可能な位置にまでロックストッパ74のシャフト径方向内側への変位が許容され、バネ75がロックストッパ74をロックホルダ73外周面に押しつける。従って、この状態でステアリングシャフト12がロック溝72とロックバー71とが対向する位置にまで回転すると、図2(a)に示すように、ロックバー71がロック溝72に侵入して、操舵ハンドル11の回転を禁止する。この状態においては、第1平面76aがロックストッパ74の枠内平面74aと当接する。従って、第2平面76bと枠内平面74aとの間に扇形の隙間が形成される。以下、この扇形の隙間の中心角度を不作動角度と呼ぶ。
イグニッションキーIGKがロック位置(イグニッションキーIGKをキーシリンダKCに挿入した位置)からオン位置方向に回されると、カム76も図中において時計方向に回転する。カム76は、回転初期においては、ロックバー71をロック溝72からシャフト径方向外側に引き出す力(退避作動力)を付与しない。つまり、カム76がロック位置から時計方向に回転し始めると、第1平面76aが枠内平面74aから離れ、第2平面76bと第1平面76aとの境界で回転中心となる頂点部76dによりロックストッパ74を支える。カム76がロック位置から不作動角度回転するまでは、この状態が継続し、不作動角度回転したところで、図2(b)に示すように、第2平面76bが枠内平面74aと当接する。従って、この間においては、カム76はロックストッパ74に対して退避作動力を付与しない。以下、カム76がロック位置を超えて不作動角度回転するまでの範囲を不作動回転域と呼ぶ。尚、不作動回転域にはロック位置を含まない。
イグニッションキーIGKが不作動角度以上回転操作されると、カム76がバネ75に抗してロックストッパ74の枠内平面74aをシャフト径方向外側に押し上げ、ロックバー71をロック溝72から引き出す力(退避作動力)を付与する。そして、イグニッションキーIGKがオン位置にまで回転したときに、図2(c)に示すように、カム76がロックバー71をロック溝72から完全に引き出した位置まで移動させる。つまり、ロックバー71をロック溝72に挿入不能な位置にまで退避させる。これにより、操舵ハンドル11の回転操作が許容される。
ステアリングロック機構70は、イグニッションキーIGKが不作動回転域内であってオフ位置からオン位置方向に所定角度回転したときに電気接点が閉じるスイッチ77を備えている。以下、このスイッチ77を補助開始スイッチ77と呼び、補助開始スイッチ77がオン作動するイグニッションキーIGKの回転位置を補助開始位置aと呼ぶ。この補助開始位置aは、本発明の所定位置に相当する。本実施形態における補助開始位置aは、図2(b)に示すように、ロック位置とアクセサリ位置(アクセサリ装置に電源供給される位置)との間に設定されている。また、補助開始スイッチ77がオン状態となる期間は、イグニッションキーIGKが補助開始位置aからスタート位置(スタータ始動位置)までのあいだに位置する期間である。
車輪Wから受ける反力等によりロックバー71とロック溝72とが周方向に強く当接した状態になっていると、両者間の接触摩擦力によりロックバー71をロック溝72から引き出しにくくなっている。つまり、イグニッションキーIGKの回し操作によりステアリングロックを解除しにくい。しかし、本実施形態においては、そうしたケースにおいても、不作動回転域内であればイグニッションキーIGKをスムーズに回すことができる。このため、ロックバー71とロック溝72との当接状態にかかわらず、補助開始スイッチ77がオンする位置にまではイグニッションキーIGKを容易に回すことができる。従って、後述するように補助開始スイッチ77のオン作動に基づいてロック解除アシスト制御を開始させることができる。このロック解除アシスト制御については後述する。
次に、電動パワーステアリング装置のアシストモータ駆動回路30について説明する。
アシストモータ駆動回路30は、MOSFETからなる6個のスイッチング素子31〜36により3相インバータ回路を構成したものである。具体的には、第1スイッチング素子31と第2スイッチング素子32とを直列接続した回路と、第3スイッチング素子33と第4スイッチング素子34とを直列接続した回路と、第5スイッチング素子35と第6スイッチング素子36とを直列接続した回路とを並列接続し、各直列回路における2つのスイッチング素子間(31−32,33−34,35−36)から操舵アシストモータ20への電源供給ライン37を引き出した構成を採用している。
第1スイッチング素子31,第3スイッチング素子33,第5スイッチング素子35のドレインは、それぞれ後述する昇圧駆動ライン118に接続され、第2スイッチング素子32,第4スイッチング素子34,第6スイッチング素子36のソースは、それぞれ接地ライン116に接続される。アシストモータ駆動回路30から操舵アシストモータ20への電源供給ライン37には、電流センサ38が設けられる。この電流センサ38は、各相ごとに流れる電流をそれぞれ検出し、その検出した電流値に対応した検出信号をステアリングECU60に出力する。以下、この測定された電流値を、モータ電流iuvwと呼ぶ。
各スイッチング素子31〜36は、それぞれゲートがステアリングECU60に接続され、ステアリングECU60からのPWM制御信号によりデューティ比が制御される。これにより操舵アシストモータ20の駆動電圧が目標電圧に調整される。尚、図中に回路記号で示すように、スイッチング素子31〜36を構成するMOSFETには、構造上ダイオードが寄生している。
次に、電動パワーステアリング装置の電源供給系統について説明する。
電動パワーステアリング装置は、主バッテリ101と、エンジンの回転により発電するオルタネータ102とを並列接続して構成した主電源装置100を備えている。主バッテリ101としては、定格出力電圧が12Vの一般の車載バッテリが用いられる。この主電源装置100は、電動パワーステアリング装置だけでなくエンジン始動装置(図示略)を含めた他の車載電気負荷への電源供給も共通して行う車載電源であるが、この明細書においては、電動パワーステアリング装置の構成要素の一つとして説明する。
主バッテリ101の電源端子(+端子)に接続される電源供給元ライン103は、制御系電源ライン104と駆動系電源ライン105とに分岐する。駆動系電源ライン105は、主電源リレー106を介して昇圧回路40に接続される。この主電源リレー106は、ステアリングECU60内に設けられたリレー制御回路(図示略)からの通電により接点がオン状態に維持され、電動パワーステアリング装置内のモータ駆動系および副電源装置50への電源供給回路を形成する。
制御系電源ライン104は、第1制御系電源ライン107と第2制御系電源ライン108とに分岐する。第1制御系電源ライン107は、イグニッションスイッチ109とロック解除補助用リレー110との並列回路を介してステアリングECU60の電源+端子に接続される。第2制御系電源ライン108は、補助開始スイッチ77を介してリレー制御回路111の電源+端子に接続される。イグニッションスイッチ109とロック解除補助用リレー110との並列回路においては、それぞれイグニッションスイッチ109のステアリングECU60側とロック解除補助用リレー110のステアリングECU60側にダイオード112,113が設けられる。各ダイオード112,113は、いずれもカソードをステアリングECU60側にアノードを主電源装置100側に向けて設けられる。イグニッションスイッチ109は、イグニッションキーIGKがオン位置にまで回されるとオンするスイッチである。
リレー制御回路111は、補助開始スイッチ77がオンしたときに主電源装置100から電源供給され、ロック解除補助用リレー110のコイルに通電してロック解除補助用リレー110をオン状態にする。また、リレー制御回路111は、ステアリングECU60に接続され、ステアリングECU60から出力されたリレーオフ指令を入力したとき、ロック解除補助用リレー110のコイルへの通電を停止してロック解除補助用リレー110をオフ状態にする。
駆動系電源ライン105には、主電源リレー106と昇圧回路40との間から連結ライン114が分岐して設けられる。この連結ライン114は、イグニッションスイッチ109とロック解除補助用リレー110との並列回路の2次側の第1制御系電源ライン104に接続される。連結ライン114には、ダイオード115が接続される。このダイオード115は、カソードを第1制御系電源ライン104側に向け、アノードを駆動系電源ライン105側に向けて設けられる。従って、ステアリングECU60は、主電源リレー106、イグニッションスイッチ109、ロック解除補助用リレー110の少なくとも1つがオン状態になっているときに主電源装置100から電源供給されるように構成されている。また、制御系電源ライン104からは、モータ駆動系および副電源装置50へ電源供給できないように構成されている。
昇圧回路40は、駆動系電源ライン105と接地ライン116との間に設けられるコンデンサ41と、コンデンサ41の接続点より負荷側の駆動系電源ライン105に直列に設けられる昇圧用コイル42と、昇圧用コイル42の負荷側の駆動系電源ライン105と接地ライン116との間に設けられる第1昇圧用スイッチング素子43と、第1昇圧用スイッチング素子43の接続点より負荷側の駆動系電源ライン105に直列に設けられる第2昇圧用スイッチング素子44と、第2昇圧用スイッチング素子44の負荷側の駆動系電源ライン105と接地ライン116との間に設けられるコンデンサ45とから構成される。昇圧回路40の二次側には、昇圧電源ライン117が接続される。
本実施形態においては、この昇圧用スイッチング素子43,44としてMOSFETを用いるが,他のスイッチング素子を用いることも可能である。また、図中に回路記号で示すように、昇圧用スイッチング素子43,44を構成するMOSFETには、構造上ダイオードが寄生している。
昇圧回路40は、ステアリングECU60により昇圧制御される。ステアリングECU60は、第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44のゲートに所定周期のパルス信号を出力して両スイッチング素子43,44をオン・オフし、主電源装置100から供給された電源を昇圧して昇圧電源ライン117に所定の出力電圧を発生させる。この場合、第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44は、互いにオン・オフ動作が逆になるように制御される。昇圧回路40は、第1昇圧用スイッチング素子43をオン、第2昇圧用スイッチング素子44をオフにして昇圧用コイル42に短時間だけ電流を流して昇圧用コイル42に電力をため、その直後に、第1昇圧用スイッチング素子43をオフ、第2昇圧用スイッチング素子44をオンにして昇圧用コイル42にたまった電力を出力するように動作する。
第2昇圧用スイッチング素子44の出力電圧は、コンデンサ45により平滑される。従って、安定した昇圧電源が昇圧電源ライン117から出力される。この場合、周波数特性の異なる複数のコンデンサを並列に接続して平滑特性を向上させるようにしてもよい。また、昇圧回路40の入力側に設けたコンデンサ41により、主電源装置100側へのノイズが除去される。
昇圧回路40の出力電圧(昇圧電圧)は、第1、第2昇圧用スイッチング素子43,44のデューティ比制御により調整可能となっており、第1昇圧用スイッチング素子43のオンデューティ比が高いほど昇圧電圧は高くなる。本実施形態における昇圧回路40は、例えば、20V〜50Vの範囲で昇圧電圧を調整できるように構成される。尚、昇圧回路40として、汎用のDC−DCコンバータを使用することもできる。
昇圧回路40の出力側となる昇圧電源ライン117には、電圧センサ47が設けられる。この電圧センサ47は、ステアリングECU60に接続され、測定値である電圧voutを表す信号を出力する。
昇圧電源ライン117は、昇圧駆動ライン118と充放電ライン119とに分岐する。昇圧駆動ライン118は、アシストモータ駆動回路30の電源入力部に接続される。充放電ライン119は、副電源装置50のプラス端子に接続される。副電源装置50の接地端子は、接地ライン116に接続される。
副電源装置50は、昇圧回路40から出力される電力を充電(蓄電)する高圧蓄電装置であって、昇圧回路40の出力電圧相当の電圧を維持できるように複数の蓄電セルを直列に接続して構成される。副電源装置50は、その出力電圧(端子間電圧)が昇圧回路40の出力電圧より低くなっている期間においては、昇圧回路40から出力される電力が充電される。副電源装置50として、例えば、キャパシタや蓄電バッテリが使用される。
このように構成された本実施形態の電動パワーステアリング装置においては、操舵アシストモータ20の駆動用電源として、主電源装置100と副電源装置50とを並列接続した電源供給回路を備えている。この電源供給回路においては、主電源装置100の電力が昇圧回路40により昇圧されてアシストモータ駆動回路30に供給されるが、アシストモータ駆動回路30で大電力を消費したときには、昇圧回路40の出力電圧が低下して副電源装置50の出力電圧を下回るため、副電源装置50によりアシストモータ駆動回路30への電源供給が補助される。また、副電源装置50の蓄電量が少なくなっている状況においては、主電源装置100の電力余剰分で副電源装置50が充電される。
ステアリングECU60は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータを主要部と備え、その機能面から着目すると、モータ制御部61と昇圧制御部62とに大別される。モータ制御部61と昇圧制御部62とは、互いに制御指令や制御データ等の授受が可能に設けられる。
モータ制御部61は、操舵トルクセンサ21、電流センサ38、および車速を検出する車速センサ23を接続し、操舵トルクTh、モータ電流iuvw、車速Vxを表すセンサ信号を入力する。モータ制御部61は、これらのセンサ信号に基づいて、アシストモータ駆動回路30にPWM制御信号を出力して操舵アシストモータ20を駆動制御し、運転者のハンドル操作をアシストする。また、モータ制御部61は、図示しないが、イグニッションスイッチ109とダイオード112との間の電位を検出して、イグニッションスイッチ109の状態(オンまたはオフ)を検知できるようになっている。さらに、モータ制御部61は、リレー制御回路111を接続しており、イグニッションスイッチ109がオンしたときに、リレー制御回路111に対してロック解除補助用リレー110への通電を停止させるための通電停止指令を出力する。
昇圧制御部62は、電圧センサ47を接続し、出力電圧voutを表すセンサ信号を入力する。昇圧制御部62は、検出した出力電圧voutに基づいて目標昇圧電圧(例えば、40V)が得られるように昇圧回路40にPWM制御信号を出力する。昇圧回路40は、入力したPWM制御信号にしたがって第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44のデューティ比を制御することにより、その昇圧電圧を目標電圧に制御する。こうした昇圧制御は、モータ制御部61の行う操舵アシスト制御中において実行される。
次に、ステアリングECU60のモータ制御部61が行うロック解除アシスト制御について説明する。車両を発進させるために、運転者がイグニッションキーIGKをキーシリンダKCに挿入してイグニッション・オン方向に回転操作すると、イグニッションキーIGKが補助開始位置aにまで回転した時点で補助開始スイッチ77がオンする。これにより、リレー制御回路111は、主電源装置100から電源が供給され、ロック解除補助用リレー110のコイルに通電してロック解除補助用リレー110をオン状態にする。こうして主電源装置100からステアリングECU60に電源が供給される。
尚、補助開始スイッチ77は、カム76がロックストッパ74に対して退避作動力を付与しない不作動回転域内においてオンする。従って、運転者は、ロックバー71とロック溝72との当接状態にかかわらず、補助開始スイッチ77がオンする位置にまではイグニッションキーIGKを容易に回すことができる。
ステアリングECU60は、主電源装置100から電源供給されると各種センサ類に電源供給するとともにシステム全体の初期診断を行い正常であれば、モータ制御部61によるロック解除アシスト制御ルーチンを開始する。図3は、ロック解除アシスト制御ルーチンを表すフローチャートである。このロック解除アシスト制御ルーチンは、ステアリングECU60のROM内に制御プログラムとして記憶されている。
ロック解除アシスト制御ルーチンが起動すると、モータ制御部61は、ステップS11において、操舵トルクセンサ21により検出される操舵トルクThを読み込む。続いて、ステップS12において、操舵トルクThの大きさ(絶対値)が予め設定した規定値Th0以下であるか否かを判断する。このステップS12の判断処理は、ステアリングロック機構70においてロックバー71がロック溝72の内周面に強く当接してトーションバー12cに大きな捩れトルクが作用しているか、つまり、ロックバー71をロック溝72から引き抜くために大きな力が必要か否かを判断するものである。この規定値Th0は、ゼロより大きな値であって、運転者がイグニッションキーIGKを回転させてロックバー71をロック溝72から容易に引き抜くことができる程度の値に設定されている。
操舵トルクThの大きさが規定値Th0以下であれば、イグニッションキーIGKの回転操作によりロックバー71をロック溝72から容易に引き抜くことができる、すなわち、ロック解除のアシストを行う必要がないと判断して、その処理をステップS13に進め、目標電流値i*をゼロに設定する(i*=0)。一方、ステップS12において、操舵トルクThの大きさが規定値Th0を超えると判断した場合には、ステップS14において、操舵トルクThの働く向きを操舵トルクThの正負の値により判断する。操舵トルクThが正の値であれば(S14:YES)、ステップS15において、目標電流値i*を予め設定された正の所定電流値isに設定し(i*=is)、操舵トルクThが負の値であれば(S14:NO)、ステップS16において、目標電流値i*を予め設定された負の所定電流値−isに設定する(i*=−is)。
ここで、ステアリングシャフト12に付与されている捩れトルクの方向と操舵トルクセンサ21により検出される操舵トルクThの正負の関係、及び操舵アシストモータ20により駆動されるステアリングシャフト12の回転方向と目標電流値i*の正負の関係について説明する。まず、操舵ハンドル11の通常回転操作時について考えると、左右前輪FWL,FWRを右方向(又は左方向)に操舵するために操舵ハンドル11を右方向(又は左方向)に回転操作する場合にステアリングシャフト12に発生する操舵トルクThを正(又は負)に定義するとともに、この操舵ハンドル11の回転操作をアシストする目標電流値i*を正(又は負)に定義すると、操舵アシストモータ20は正(又は負)の目標電流値i*に対して操舵ハンドル11を右回転(又は左回転)させるようにステアリングシャフト12を回転させる方向に回転することになり、この操舵アシストモータ20の回転方向を正(又は負)とする。
一方、ステアリングロック機構70におけるロックバー71とロック溝72との係合により操舵ハンドル11がロックされている状態において、操舵トルクセンサ21によって検出されている操舵トルクThが正(又は負)であるということは、車輪Wを左方向に転舵するような力が外部から車輪Wに加わっている状態と考えられる。従って、操舵アシストモータ20によりステアリングシャフト12の出力シャフト12bを右方向(又は左方向)、すなわち操舵トルクThが減少する方向に回転させれば、ロックバー71とロック溝72との係合(周方向の当接圧力)は緩められることになる。
このような説明からも理解できるように、ステップS14〜S16の処理により決定される目標電流値i*は、ステアリングロック機構70におけるロックバー71とロック溝72との係合を緩める方向に操舵アシストモータ20を回転制御するためのものである。
こうして目標電流値i*が設定されると、モータ制御部61は、ステップS17において、電流センサ38により検出される実電流値iuvwを読み込み、実電流値iuvwが目標電流値i*になるようなPWM制御信号をアシストモータ駆動回路30に出力する。従って、アシストモータ駆動回路30の各スイッチング素子31〜36は、PWM制御信号に応じたデューティ比でオン・オフする。これにより、操舵アシストモータ20は、ロックバー71とロック溝72との当接が緩む方向に所定の回転トルクを発生する。
続いて、モータ制御部61は、ステップS18において、イグニッションスイッチ109がオンしたか否かを判断する。イグニッションスイッチ109がオンしていない場合には、その処理をステップS11に戻す。つまり、イグニッションスイッチ109がオンするまでのあいだ、上述したステップS11〜S18までの処理を繰り返す。従って、操舵アシストモータ20の駆動によりロックバー71とロック溝72との間に作用している摩擦力が低減され、運転者は小さな力でイグニッションキーIGKをイグニッションスイッチ109がオンする方向に回転操作することができるとともに、この回転操作によりロックバー71がロック溝72から引き抜かれてステアリングロック機構70による操舵ハンドル11のロック状態を解除できる。
ところで、こうした操舵アシストモータ20によりロック解除のアシストを行う場合、副電源装置50に蓄電された電力が操舵アシストモータ20に供給される。つまり、操舵アシストモータ20への電源供給回路は、主電源装置100と副電源装置50とから構成されているものの、ロック解除アシスト制御を行うときには、主電源リレー106がオフ状態に維持されているため、主電源装置100から操舵アシストモータ20への電源供給が禁止された状態となっている。従って、モータ制御部61によりアシストモータ駆動回路30のスイッチング素子31〜36をオン・オフした場合には、副電源装置50のみから操舵アシストモータ20に電源供給されることとなる。
イグニッションスイッチ109がオンするまでの期間においては、エンジンが始動していないためオルタネータ102による発電が行われていない。従って、この期間に主バッテリ101の保有する電力を消費しすぎるとエンジン起動に悪影響を及ぼす。そこで、本実施形態においては、電力消費量の大きな操舵アシストモータ20の駆動電源を副電源装置50から供給するようにし、主バッテリ101からは消費電力の少ない制御系負荷(主にステアリングECU60)のみに電源供給する構成を採用している。
図3のロック解除補助制御ルーチンの説明に戻る。イグニッションキーIGKがオン位置にまで回されるとイグニッションスイッチ109がオンする。このオン位置においては、ロックバー71の引き抜きが完了しているため、操舵アシストモータ20によるロック解除のアシストは必要なくなる。そこで、モータ制御部61は、ステップS18において、イグニッションスイッチ109がオンしたことを検出すると、操舵アシストモータ20の駆動制御を終了し、その処理をステップS19に進める。尚、イグニッションキーIGKが更にスタート位置にまで回されると、図示しないエンジン制御装置がエンジンを始動する。これによりオルタネータ102の発電が開始される。
モータ制御部61は、ステップS19において、リレー制御回路111に対してリレーオフ指令を出力する。これによりリレー制御回路111は、ロック解除補助用リレー110のコイルへの通電を停止しロック解除補助用リレー110をオフ状態に切り替える。従って、ステアリングECU60への電源供給は、ロック解除補助用リレー110を経由した電源供給からイグニッションスイッチ109を経由した電源供給に切り替わる。
続いて、モータ制御部61は、ステップS20において、主電源リレー106のコイルに通電して主電源リレー106をオン状態にする。これにより、主電源装置100から操舵アシストモータ20および副電源装置50への電源供給回路が形成される。同時に、駆動系電源ライン105を経由した主電源装置100からステアリングECU60への電源供給回路も形成される。
次に、モータ制御部61は、ステップS21において、昇圧制御の開始を許可する。昇圧制御の開始が許可された場合、昇圧制御部62は、図示しないエンジンが起動したことを確認して昇圧回路40の昇圧制御を開始する。つまり、エンジンが起動したことを条件として、電圧センサ47により検出される昇圧回路40の出力電圧voutが目標電圧になるように第1、第2昇圧用スイッチング素子43,44のデューティ比を制御する。この昇圧回路40の昇圧作動により主電源装置100の出力が昇圧される。
副電源装置50の蓄電量が不足している場合には、副電源装置50の出力電圧が昇圧回路40の出力電圧よりも低くなり、主電源装置100の電力が昇圧回路40を経由して副電源装置50に充電される。副電源装置50は、その出力電圧が昇圧回路40の出力電圧と等しくなるまで充電されると充電が停止される。この副電源装置50の充電および放電(操舵アシストモータ20への電源供給)は、後述する操舵アシスト制御中において継続される。
続いて、モータ制御部61は、ステップS22において、操舵アシスト制御開始を許可し、本ロック解除アシスト制御ルーチンを終了する。モータ制御部61は、ロック解除アシスト制御ルーチンを終了すると、図示しないエンジンが起動したことを確認して操舵アシスト制御ルーチンを開始する。
図4は、モータ制御部61により実施される操舵アシスト制御ルーチンを表すフローチャートである。操舵アシスト制御ルーチンは、ステアリングECU60のROM内に制御プログラムとして記憶され、所定の短い周期で繰り返し実行される。
本制御ルーチンが起動すると、モータ制御部61は、まず、ステップS31において、車速センサ23によって検出した車速Vxと、操舵トルクセンサ21によって検出した操舵トルクThとを読み込む。
続いて、ステップS32において、図5に示すアシストトルクテーブルを参照して、入力した車速Vxおよび操舵トルクThに応じて設定される目標アシストトルクT*を計算する。アシストトルクテーブルは、ステアリングECU60のROM内に記憶されるもので、操舵トルクThの増加にしたがって目標アシストトルクT*も増加し、しかも、車速Vxが低くなるほど大きな値となるように設定される。尚、図5のアシストトルクテーブルは、右方向の操舵トルクThに対する目標アシストトルクT*の特性を表すが、左方向の特性については方向が反対になるだけで絶対値でみれば同じである。
次に、ステアリングECU60は、ステップS33において、目標アシストトルクT*に比例した目標電流i*を計算する。目標電流i*は、目標アシストトルクT*をトルク定数で除算することにより求められる。
続いて、モータ制御部61は、ステップS34において、操舵アシストモータ20に流れるモータ電流iuvwを電流センサ38から読み込む。続いて、ステップS35において、このモータ電流iuvwと先に計算した目標電流i*との偏差Δiを計算し、この偏差Δiに基づくPI制御(比例積分制御)により目標指令電圧v*を計算する。
そして、モータ制御部61は、ステップS36において、目標指令電圧v*に応じたPWM制御信号をアシストモータ駆動回路30に出力して本制御ルーチンを一旦終了する。本制御ルーチンは、イグニッションスイッチ109がオンしているあいだ、所定の速い周期で繰り返し実行される。従って、本制御ルーチンの実行により、アシストモータ駆動回路30のスイッチング素子31〜36のデューティ比が制御されて、運転者の操舵操作に応じた所望のアシストトルクが得られる。
こうした操舵アシスト制御の実行中においては、特に、低速走行時でのハンドル操作や、速いハンドル回転操作したときには大きな電力が必要とされる。しかし、一時的な大電力消費に備えて主電源装置100の大容量化を図ることは好ましくない。そこで、本実施形態の電動パワーステアリング装置においては、主電源装置100の大容量化を図らずに、一時的な大電力消費時に電源供給を補助する副電源装置50を備える。また、操舵アシストモータ20を効率的に駆動するために昇圧回路40を備え、昇圧した電力をアシストモータ駆動回路30および副電源装置50に供給するシステムを構成している。
以上説明した第1実施形態の電動パワーステアリング装置によれば以下の作用効果を奏する。
1.副電源装置50に蓄電された電力を用いて操舵アシストモータ20を駆動し、ステアリングロック機構70のロック解除のアシストを行うようにしているため、主電源装置100(主バッテリ101)の電力消費を抑えることができる。この結果、エンジン始動が不能になったり、他の車載電気負荷への電力供給が不足するといった不具合の発生を抑制することができる。
2.イグニッションキーIGKがキーシリンダKCに挿入された段階ではロック解除アシストを開始せずに、運転者がイグニッションキーIGKを回してエンジンを起動しようとしたときにロック解除アシスト動作を開始するようにしたため、操舵アシストモータ20によるロック解除アシストが継続されてしまうといった不具合がなく、副電源装置50の電力消費を抑えることができる。つまり、運転者がイグニッションキーIGKをキーシリンダKCに挿入しただけでエンジンを起動させないというケースを考えると、例えば、停止車両の片側車輪Wが縁石に乗り上げて車輪Wに転舵しようとする力が働いている場合においては、トーションバー12cに働くトルクを打ち消す方向に操舵アシストモータ20が継続して駆動されてしまう。これに対して、本実施形態においては、イグニッションキーIGKの回転操作に連動させてロック解除アシストを開始するため、運転者の操作力とモータトルクとにより瞬時にロック解除を行うことができ、副電源装置50の電力消費を抑えることができる。
3.イグニッションキーIGKがロック位置からオン位置方向に所定角度回転するまではロック溝72に挿入されたロックバー71に退避作動力を伝達しないようにカム76の不作動回転域が設けられている。従って、運転者は、イグニッションキーIGKを使ってエンジンを起動するとき、ロックバー71のロック溝72との当接状態にかかわらず、補助開始スイッチ77がオンする回転位置にまではイグニッションキーIGKをスムーズに回転操作することができる。
4.トーションバー12cに働く捩りトルクThの大きさがゼロより大きな規定値Th0を超える場合にのみロック解除アシストを行い、捩りトルクThが小さくてイグニッションキーIGKの回転操作により容易にロック解除できる状態であればロック解除アシストを行わないようにしているため、副電源装置50の電力消費を一層抑えることができる。また、トルクThが規定値Th0以下になった時点でロック解除アシストを停止するため、操舵ハンドル11が回ってしまうことがなく運転者に違和感を与えない。
5.主電源装置100の出力電圧を昇圧回路40により昇圧してアシストモータ駆動回路30に電源供給するため操舵アシストモータ20を効率良く駆動することができる。また、副電源装置50を良好に充電することができる。
6.主電源装置100の大容量化を図らずに、主電源装置100の電力を蓄電し一時的な大電力消費時に電源供給を補助する副電源装置50を備えるため、従来の車載電源構成(主電源装置100)を変更することなく、高性能な電動パワーステアリング装置を構成することができる。
尚、本実施形態におけるモータ制御部61、アシストモータ駆動回路30,リレー制御回路111、補助開始スイッチ77によりロック解除アシスト制御を行う構成が本発明のロック解除制御手段に相当する。
<第2実施形態>
次に第2実施形態にかかる車両のステアリング装置について図面を用いて説明する。図6は、第2実施形態として車両の電動パワーステアリング装置の概略構成を表している。以下、第1実施形態と同一の構成については、図面に同一符号を付して説明を省略する。
この電動パワーステアリング装置は、スマートキーシステムを採用した車両に適用される。このスマートキーシステムにおいては、運転者が所持するキー(以下、スマートキーと呼ぶ)から送信されるIDコードを照合したのち、運転者によるエンジンスイッチのプッシュ操作によりエンジンを始動させる。つまり、第1実施形態のようにイグニッションキーIGKの回転操作によりエンジンを始動させるのではなく、エンジンスイッチのプッシュ操作によりエンジンを始動できるシステムとなっている。
第2実施形態の電動パワーステアリング装置は、操舵ハンドル11の操舵操作により転舵輪を転舵するステアリング機構10と、ステアリング機構10に組み付けられ操舵アシストトルクを発生する操舵アシストモータ20と、操舵アシストモータ20を駆動するためのアシストモータ駆動回路30と、各種の車載電気負荷に電源を供給する主電源装置100と、主電源装置100の出力電圧を昇圧してアシストモータ駆動回路30に電源供給する昇圧回路40と、昇圧回路40とアシストモータ駆動回路30との間の電源供給回路に並列接続される副電源装置50と、操舵アシストモータ20および昇圧回路40の作動を制御するステアリングECU80と、操舵ハンドル11の回転操作を不能にするステアリングロック機構90と、ステアリングロック機構90の作動を電気的に制御するロック制御装置120(以下、ロックECU120と呼ぶ)と、ステアリングロック機構90に設けた電動モータ92を駆動するためのロックモータ駆動回路130とを主要部として備えている。
ステアリングロック機構90は、第1実施形態と同様に、ロックバーとロック溝との係合により操舵ハンドルの回転操作を禁止するものであるが、第1実施形態では運転者のイグニッションキーIGKを回す力によりロックバーをシャフト径方向に変位させる構成であるのに対して、第2実施形態では電動モータの回転トルクによりロックバーをシャフト径方向に変位させる点で相違する。
図7は、第2実施形態におけるステアリングロック機構90の概略構成図であり、(a)はステアリングロック状態を表し、(b)はロック解除状態を表す。ステアリングロック機構90は、ロック溝72が形成されたロックホルダ73を入力シャフト12aに固定して備えている。ロック溝72は、ロックホルダ73の外周面上に、周方向に沿って2箇所設けられているが、1箇所または3箇所以上設けたものであってもよい。また、ロック溝72は、入力シャフト12aに直接形成したものであってもよい。
ロックバー91は、ロックストッパ94の先端に一体形成されている。ロックストッパ94は、ステアリングシャフト12のロック溝72が形成された軸方向位置においてロックバー91がロックホルダ73外周面と対向するように配設される。ロックストッパ94は、枠体状に形成され、その枠体内に作動アーム96の先端が挿入される。
作動アーム96は、コの字状に形成され、その先端が、ロックストッパ94の枠内におけるシャフト径方向外側面となる第1枠内平面94aとシャフト径方向内側面となる第2枠内平面94bとに向かい合い、ロックストッパ94に対してシャフト径方向への変位力を伝達する作動板96aとなっている。ロックストッパ94の第2枠内平面94bと作動板96aとの間には、バネ95が圧縮状態で配設される。従って、ロックストッパ94は、このバネ95により作動板96aに対してシャフト径方向内側(ロックホルダ73方向)に付勢されている。
ステアリングロック機構90は、作動アーム96をシャフト径方向に移動させる電気アクチュエータとなる電動モータ92(以下、ロックモータ92と呼ぶ)と、ロックモータ92の出力軸の回転運動を作動アーム96の直線運動に変換するねじ送り機構93とを備えている。ねじ送り機構93は、作動アーム96に固着したナット93aと、ナット93aに螺合する雄ネジを形成したネジシャフト93bとからなる。ネジシャフト93bは、ウォーム・ホイール減速ギヤ97を介してロックモータ92の出力軸と連結される。
このステアリングロック機構90においては、ロックモータ92を正転(あるいは逆転)させることにより作動アーム96をシャフト径方向内側に移動させる。これによりロックストッパ94は、バネ95を介して作動板96aに押され、ロックバー91がロックホルダ73に押しつけられる。この状態でステアリングシャフト12がロック溝72とロックバー91とが対向する位置にまで回転すると、図7(a)に示すように、ロックバー91がロック溝72に侵入して、操舵ハンドル11の回転操作を禁止する。
このステアリングロック状態において、ロックモータ92を逆転(あるいは正転)させると、図7(b)に示すように、作動アーム96がシャフト径方向外側に移動し、作動アーム96の作動板96aがロックストッパ94の第1枠内平面94aを引き上げ、そのままロックストッパ94をロック溝72から引き抜く。このロックモータ92は、本発明におけるロック切替電気アクチュエータに相当する。
また、ステアリングロック機構90には、ロック位置およびロック解除位置を検出する位置検出スイッチ98を備える。例えば、作動アーム96における作動板96aと反対側の先端部をスイッチ作動片96bとして用い、スイッチ作動片96bにより押されるリミットスイッチ98a,98bをシャフト径方向に異なる2箇所に設けて、ロック位置とロック解除位置とで接点信号が得られるようにする。
ロックモータ92は、図6に示すように、その電源がロックモータ駆動回路130を介して副電源装置50から供給されるとともに、ロックECU120により駆動制御される。ロックモータ駆動回路130は、その電源入力部が充放電ライン119と接地ライン116とに接続され、電源出力部がロックモータ92の電源端子に接続される。ロックモータ駆動回路130は、ロックモータ92への通電/非通電および通電方向を切り替える通電制御回路である。
ステアリングECU80は、マイクロコンピュータを主要部として備え、その機能面から着目すると、モータ制御部81と昇圧制御部82とに大別される。モータ制御部81は、第1実施形態と同様な操舵アシスト制御処理を実行する。また、昇圧制御部82は、第1実施例と同様な昇圧回路40の昇圧制御を実行する。
ロックECU120は、ロックモータ92の回転方向(正転/逆転)に応じた制御信号をロックモータ駆動回路130に出力することにより、副電源装置50の電力でロックモータ92へ通電し、ステアリングロック機構90のロック・ロック解除を行う。ロックECU120は、電源制御装置140(以下、電源ECU140と呼ぶ)とイモビライザー制御装置150(以下、イモビライザーECU150と呼ぶ)とを接続している。ロックECU120、電源ECU140、イモビライザーECU150は、それぞれマイクロコンピュータを主要部として備え、互いに制御信号の授受が可能に接続されている。また、これら装置は、図示しない電源供給ラインにより主電源装置100から電源供給される。
イモビライザーECU150は、運転者がスマートキーを携帯しているとき、あるいはスマートキーをキースロットに挿入したときに、スマートキーから発信されるIDコードを受信して車両登録IDコードと照合し、照合結果を電源ECU140に出力するとともに、IDコードの一致が確認されたときにはロックECU120に対してロック解除許可信号出力する。
電源ECU140には、車両内全体における電源供給を統括する制御装置であって、プッシュ操作式のエンジンスイッチ141が接続されている。電源ECU140は、イモビライザーECU150から出力された照合結果が適正である場合には、運転者が行うエンジンスイッチ141のプッシュ操作に応じて各種の電源用リレーを駆動する。電動パワーステアリング装置においては、電源ECU140により駆動されるイグニッションリレー142がオンしたときに主電源装置100からステアリングECU80に電源供給されシステムが起動する。また、電源ECU140は、エンジンスイッチ141がプッシュ操作されたとき、スイッチオン信号をロックECU120に出力する。尚、エンジンスイッチ141は、プッシュ操作式に限るものではなく、運転者がエンジン起動を指示できるものであれば、どんな操作方式であっても良い。
次に、第2実施形態の電動パワーステアリング装置の電源供給系統について説明する。第2実施形態の電動パワーステアリング装置は、第1実施形態と同様な主電源装置100、昇圧回路40、アシストモータ駆動回路30、副電源装置50を備える。電源供給元ライン103は、制御系電源ライン104と駆動系電源ライン105とに分岐する。制御系電源ライン104は、ステアリングECU80の電源+端子に接続され、駆動系電源ライン105は、昇圧回路40の電源入力端子に接続される。
駆動系電源ライン105には、主電源リレー106が設けられる。主電源リレー106は、ステアリングECU80からの通電により接点がオン状態に維持され、電動パワーステアリング装置内のモータ駆動系および副電源装置50への電源供給回路を形成する。
制御系電源ライン104には、イグニッションリレー142が設けられる。イグニッションリレー142は、電源ECU140からの通電により接点がオン状態に維持され、ステアリングECU80への電源供給回路を形成する。イグニッションリレー142のステアリングECU80側にはダイオード112が設けられる。ダイオード112は、カソードをステアリングECU80側にアノードを主電源装置100側に向けて設けられる。
また、駆動系電源ライン105には、第1実施形態と同様に、主電源リレー106と昇圧回路40との間から連結ライン114が分岐して設けられ、駆動系電源ライン105からステアリングECU80に電源供給できるようになっている。連結ライン114には、カソードを制御系電源ライン104側に向け、アノードを駆動系電源ライン105側に向けたダイオード115が設けられる。
次に、ステアリングロック機構90のロックを解除するロック解除制御について説明する。図8は、ロックECU120の実行するロック解除制御ルーチンを表すフローチャートである。このロック解除制御ルーチンは、ロックECU120内のROM内に制御プログラムのかたちで記憶されている。
本制御ルーチンが起動すると、まず、ステップS41において、電源ECU140からスイッチオン信号が入力されたか否かを判断する。このスイッチオン信号は、停止中の車両を起動するために運転者がエンジンスイッチ141をプッシュ操作したときに電源ECU140から出力される。ロックECU120は、スイッチオン信号を受信するまで、この判断処理を繰り返す。そして、スイッチオン信号が入力されると(S41:YES)、ロックECU120は、ステップS42において、イモビライザーECU150からロック解除許可信号が出力されているか否かを判断する。
イモビライザーECU150は、スマートキーから発信されるIDコードを受信して車両登録IDコードと照合し、IDコードの一致が確認されたときにロックECU120に対してロック解除許可信号を出力するようになっている。従って、運転者が正しいスマートキーを携帯して、あるいは、キースロットに挿入した状態でエンジンスイッチ141をプッシュ操作した場合には、ステップS42の判断は「YES」となり、ロックECU120は、その処理をステップS43に進める。この場合、ロックECU120は、イモビライザーECU150からロック解除許可信号を入力している状態で電源ECU140からスイッチオン信号を入力した場合には、そのスイッチオン信号をロック解除指令とみなしてステップS43からのロックモータ駆動処理を開始する。一方、イモビライザーECU150によりIDコードの一致が確認されていない場合には、ロック解除許可を受けていないため本制御ルーチンを一旦終了する。
ロックECU120は、ロック解除指令を入力したと判断すると、ステップS43において、ロックモータ駆動回路130に制御信号を出力し、ロックバー91をロック溝72から引く抜く方向にロックモータ92を通電する。つまりステアリングロック機構90のロック解除を開始する。
このとき、ロックモータ92には、副電源装置50から電流が流れることとなる。つまり、後述する処理からわかるように、この時点では、まだエンジンが起動していなく、ステアリングECU80による操舵アシスト制御も開始されていない状況にあるため、主電源リレー106がオフ状態となっている。従って、ロックモータ駆動回路130は、主電源装置100から電源供給を受けることができず、副電源装置50のみから給電可能となっている。
続いて、ロックECU120は、ステップS44において、位置検出スイッチ98の状態を読み込み、ロックバー91がロック溝72から引き抜かれた位置に達したか否か、つまり、ロックバー91がロック解除位置に達したか否かを判断する。ロックバー91がロック解除位置に達するまでのあいだ、ステップS43によるロックモータ92の駆動が継続される。そして、位置検出スイッチ98により、ロックバー91がロック解除位置に達したことが確認されると(S44:YES)、ロックECU120は、電源ECU140とイモビライザーECU150とステアリングECU80とに対してロック解除完了信号を出力して本制御ルーチンを一旦終了する。
電源ECU140は、ロック解除完了信号を受信すると、図示しないエンジン制御装置に対してスタータ始動開始信号を出力する。また、イモビライザーECU150は、ロック解除完了信号を受信すると、エンジン制御装置に対してエンジン始動許可信号を出力する。エンジン制御装置は、これらの信号を受信することによってエンジンを始動する。
ステアリングECU80は、ロックECU120からロック解除完了信号が入力されると、さらに、エンジンが起動したことを確認して、主電源リレー106をオフ状態からオン状態に切り替え、操舵アシスト制御および昇圧制御を開始する。つまり、モータ制御部81が第1実施形態と同様に操舵アシスト制御(図4参照)を開始し、昇圧制御部82が第1実施形態と同様に昇圧回路40を作動させて主電源装置100の出力電圧を目標電圧にまで昇圧する昇圧制御を開始する。
以上説明した第2実施形態の電動パワーステアリング装置によれば、以下の作用効果を奏する。
1.副電源装置50に蓄電された電力を用いてロックモータ92を駆動し、ステアリングロック機構90のロック解除を行うようにしているため、主電源装置100の電力消費を抑えることができる。この結果、エンジン始動が不能になったり、他の車載電気負荷への電力供給が不足するといった不具合の発生を抑制することができる。
2.主電源装置100の出力電圧を昇圧回路40により昇圧してアシストモータ駆動回路30に電源供給するため操舵アシストモータ20を効率良く駆動することができる。また、副電源装置50を良好に充電することができる。
3.副電源装置50の出力電圧が昇圧電圧と同じ高電圧になっているため、ロックモータ92によるロックバー91の引き抜き力を増大させることができる。また、ロックモータ92として低回転高トルクのモータを採用することができるため、減速ギヤのギヤ比を小さくすることができ、作動時間の短縮、作動音の低減を図ることができる。
4.主電源装置100の大容量化を図らずに、主電源装置100の電力を蓄電し一時的な大電力消費時に電源供給を補助する副電源装置50を備えるため、従来の車載電源構成(主電源装置100)を変更することなく、高性能な電動パワーステアリング装置を構成することができる。
尚、本実施形態におけるロックECU120、ロックモータ駆動回路130によりロック解除制御を行う構成が本発明のロック解除制御手段に相当する。
以上、本発明の実施形態としての車両の電動パワーステアリング装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、第1実施形態においては、カム76の扇形状により、ロックストッパ74に対して退避作動力を付与しない不作動回転域を設けているが、図9に示すように、ロックストッパ74の枠内平面74aを斜めに切り欠いた切欠部74bを形成して、半円状(中心角180°)のカム76’に対して不作動回転域を設けるなど、種々の構成を採用することができる。
また、第2実施形態のようなスマートキーシステムを採用した車両においては、エンジンスイッチ141のオン操作を検出したときに、第1実施形態のように操舵アシストモータ20を副電源装置50の電力を使って駆動してロック解除の補助を行うようにしてもよい。この場合、ロックモータ92によるロック解除動作に関しては、主電源装置100あるいは副電源装置50のいずれを使ってもよい。ロックモータ92の駆動電源として主電源装置100を使った場合であっても、操舵アシストモータ20によるロック解除補助によりロックバー91の引き抜きが容易となるため、ロックモータ92の電力消費が少なくなり主電源装置100の電力消費を抑えることができる。
また、第2実施形態においては、ロックECU120が、電源ECU140から出力されるスイッチオン信号と、イモビライザーECU150から出力されるロック解除許可信号とを別々に入力し、両方の信号が入力されたときにロック解除指令を受けたものとしてロック解除動作を開始するようにしているが、例えば、電源ECU140からロックECU120に直接的にロック解除指令を入力するようにしてもよい。つまり、ロックECU120にはイモビライザーECU150を接続せずに、電源ECU140がイモビライザーECU150によるIDコードの照合の完了を確認して、エンジンスイッチ141のプッシュ操作時にロックECU120に対してロック解除指令を出力するようにした構成であってもよい。
また、本実施形態においては、昇圧回路40により主電源装置100の電圧を昇圧する構成を採用しているが、昇圧回路40は必ずしも設ける必要はない。また、本実施形態においては、ステアリングコラムに操舵アシストモータを組み込んだ形式の電動パワーステアリング装置について説明したが、ラックバーに操舵アシストモータを組み込んだ形式の電動パワーステアリング装置であってもよい。
また、本発明の車両のステアリング装置は、操舵ハンドルと車輪転舵軸とを機械的に切り離し、操舵操作に応じて作動する電動モータの力だけで車輪を転舵するバイワイヤ方式のステアリング装置にも適用することができる。
第1実施形態にかかる車両の電動パワーステアリング装置の概略構成図である。 第1実施形態にかかるステアリングロック機構の作動説明を兼用した概略構成図である。 第1実施形態にかかるロック解除アシスト制御ルーチンを表すフローチャートである。 第1実施形態にかかる操舵アシスト制御ルーチンを表すフローチャートである。 アシストトルクテーブルを表す特性図である。 第2実施形態にかかる車両の電動パワーステアリング装置の概略構成図である。 第2実施形態にかかるステアリングロック機構の概略構成図である。 第2実施形態にかかるロック解除制御ルーチンを表すフローチャートである。 第1実施形態の変形例としてのステアリングロック機構の作動説明を兼用した概略構成図である。 従来のステアリングロック機構の作動説明を兼用した概略構成図である。
符号の説明
10…ステアリング機構、11…操舵ハンドル、12…ステアリングシャフト、12a…入力シャフト、12b…出力シャフト、12c…トーションバー、20…操舵アシストモータ、21…操舵トルクセンサ、30…アシストモータ駆動回路、40…昇圧回路、50…副電源装置、60,80…ステアリング制御装置(ステアリングECU)、61,81…モータ制御部、62,82…昇圧制御部、70…ステアリングロック機構、71…ロックバー、72…ロック溝、73…ロックホルダ、74…ロックストッパ、75…バネ、76…カム、77…補助開始スイッチ、90…ステアリングロック機構、91…ロックバー、92…ロックモータ、94…ロックストッパ、95…バネ、96…作動アーム、98…位置検出スイッチ、100…主電源装置、101…主バッテリ、102…オルタネータ、103…電源供給元ライン、104…制御系電源ライン、105…駆動系電源ライン、106…主電源リレー、109…イグニッションスイッチ、110…ロック解除補助用リレー、111…リレー制御回路、119…充放電ライン、120…ロック制御装置(ロックECU)、130…ロックモータ駆動回路、140…電源制御装置(電源ECU)、141…エンジンスイッチ、142…イグニッションリレー、150…イモビライザー制御装置(イモビライザーECU)、FWL,FWR…左右前輪、IGK…イグニッションキー、KC…キーシリンダ。

Claims (6)

  1. 車載電気負荷に電源供給する主電源装置と、
    上記主電源装置の電力を蓄電する副電源装置と、
    上記主電源装置と上記副電源装置とを並列接続した電源供給回路から電源供給され、操舵ハンドルの回転操作をアシストするための電動モータと、
    ロック状態にて上記操舵ハンドルの回転操作を不能にするとともにロック解除状態にて上記操舵ハンドルの回転操作を許容するステアリングロック機構と、
    上記副電源装置に蓄電された電力を用いて、上記ステアリングロック機構のロック解除あるいはロック解除の補助を行うロック解除制御手段と
    を備えたことを特徴とする車両のステアリング装置。
  2. 上記ロック解除制御手段は、上記主電源装置からの電源供給を遮断した状態で上記副電源装置から上記電動モータに電源供給し、上記電動モータを駆動制御することにより上記ステアリングロック機構のロック解除の補助を行うことを特徴とする請求項1記載の車両のステアリング装置。
  3. 上記ステアリングロック機構は、
    ステアリングシャフトの外周に設けられたロック溝と、
    上記ステアリングシャフトの上記ロック溝が設けられた軸方向位置にて、バネにより上記ステアリングシャフトの径方向内側に付勢されたロックバーと、
    イグニッションキーの回転操作に連動して回転し、上記イグニッションキーのロック位置において上記ロックバーを上記ロック溝に挿入可能な位置に配置し、上記イグニッションキーのオン位置において上記ロックバーを上記ロック溝に挿入不能な位置にまで退避させるとともに、上記イグニッションキーがロック位置からオン位置方向に所定角度回転するまでは上記ロック溝に挿入されたロックバーに退避作動力を伝達しないように不作動回転域を設けたカムとを備え、
    上記ロック解除制御手段は、上記イグニッションキーが上記ロック位置から上記不作動回転域内における所定位置にまで回転したときに作動するスイッチを備え、上記スイッチが作動したときに上記副電源装置から上記電動モータに電源供給して、上記電動モータの駆動制御を開始することを特徴とする請求項2記載の車両のステアリング装置。
  4. 上記ロック解除制御手段は、上記ステアリングシャフトに入力されるトルクを検出するトルク検出手段を備え、上記検出されたトルクの大きさが予め設定したゼロより大きな規定値を超える場合に、上記トルクを減らす方向に上記電動モータを駆動制御することを特徴とする請求項3記載の車両のステアリング装置。
  5. 上記ステアリングロック機構は、
    ステアリングシャフトの外周に設けられたロック溝と、
    上記ステアリングシャフトの上記ロック溝が設けられた軸方向位置にて、バネにより上記ステアリングシャフトの径方向内側に付勢されたロックバーと、
    上記ロックバーを上記ロック溝に挿入可能な位置と挿入不能な位置とに切り替えるロック切替電気アクチュエータと
    を備え、
    上記ロック解除制御手段は、ロック解除指令の入力に基づいて上記主電源装置からの電源供給を遮断した状態で上記副電源装置から上記ロック切替電気アクチュエータに電源供給して上記ステアリングロック機構のロック解除を行うことを特徴とする請求項1記載の車両のステアリング装置。
  6. 上記電源供給回路は、上記主電源装置の出力電圧を昇圧する昇圧回路を備え、上記昇圧回路の出力側に上記副電源装置を並列接続して構成したことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか一項記載の車両のステアリング装置。
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