JP2009112449A - 着座用マットおよび椅子 - Google Patents
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Abstract
【課題】生体が持つ姿勢制御システムの中の感覚システムの発動をもたらすことができる着座面を有する着座用マットを提供する。
【解決手段】着座用マット1は、その底面がほぼ水平面となるように設置され、底面に対向する着座面2は、図1のX方向が左右方向、Y方向が前後方向、Z方向が高さ方向となるように、着座者に提供される。着座面2の左右方向は、その中央部が低い対称形の凹面である。着座面2の前後方向は、その中央部が高い対称形の凸面である。この着座面に着座した場合、腰椎々間関節の形状が、垂直位置で構築学的に安定する性質を持つことから、骨盤に対して、左右方向には安定性を与え、前後方向には不安定性(前後方向の自由度)を与えることで、自然な腰椎々間関節の垂直が得られる状態をもたらすことが可能となる。
【選択図】図1
【解決手段】着座用マット1は、その底面がほぼ水平面となるように設置され、底面に対向する着座面2は、図1のX方向が左右方向、Y方向が前後方向、Z方向が高さ方向となるように、着座者に提供される。着座面2の左右方向は、その中央部が低い対称形の凹面である。着座面2の前後方向は、その中央部が高い対称形の凸面である。この着座面に着座した場合、腰椎々間関節の形状が、垂直位置で構築学的に安定する性質を持つことから、骨盤に対して、左右方向には安定性を与え、前後方向には不安定性(前後方向の自由度)を与えることで、自然な腰椎々間関節の垂直が得られる状態をもたらすことが可能となる。
【選択図】図1
Description
本発明は、座位姿勢を改善することができる着座面を有する着座用マット、および、椅子に関するものである。
日本人の生活が、畳から椅子へと変化したことに伴い、姿勢保持能力の低下が心配される。高度経済成長以降の家庭内での椅子生活の定着と、洋式便座がもたらした影響とも考えられるが、すぐ転倒し骨折する子供たちや、立っていられない若者たち、腰痛人口の増加という現象を生じている。
これらの事情を勘案して椅子に対する着座面について種々の提案がなされている。特許文献1に記載されたオフィス用リクライン椅子では、ユーザの座骨突起部により心地よく適応できる柔軟性座席パネルを提案している。特許文献2に記載された腰椎支持ユニットおよび椅子では、着座者の重量による圧力を適当に分散させることができ、姿勢の矯正効果を図ることができる形状を提案している。特許文献3に記載された健康マットでは、座席等に着座するときの姿勢の不安定さによる疲労、腰痛を軽減できる健康マットを提案している。特許文献4に記載された座板では、着座者の最適な着座位置と着座面における均一な圧力分配とを維持し、長時間にわたって着座しても大腿部の血行を妨げることなく、解剖学的に正しい姿勢を保つことを可能とする形状の座板を提供しようとするものである。
また、特許文献5に記載されたトレーニング用椅子では、ベース部材上に下向きに凸となす球面を有する球面体を球面運動が可能に配置し、この球面体に、球心を通って上向きに延びるように支持軸を設けて、支持軸上の上端に腰掛け可能のサドルを設けるとともに、支持軸が球面体による球面運動に対応して揺動する際に、水平方向の移動範囲を所定に領域に規制する規制ガイドを設けたものである。使用者がこのサドルに腰掛けるためには、その不安定さから、意識してその支持軸に沿って体重がかかるようにしないといけないために、上半身を真っ直ぐに伸ばし、その状態を保持して座ることになるため、結果として姿勢が良くなるというものである。
特許文献1〜4に記載された椅子やマットの形状は、着座者が着座したときの安定さ、すなわち、安定した状態での着座を実現しようとするものである。したがって、着座者に対して、意識を喚起して着座させようとするものではなく、受動的な着座面であるということができる。したがって、感覚システム(生体が感覚に反応して、受けた感覚に対応することを言い、例えば、着座をした使用者が着座面から受ける感覚に基づいて、姿勢を保とうとするなど、筋力が対応すること)の発動はなく、単なる安静状態の創出を目途としたものであり、感覚システムを鈍くさせることを目的とするものであるともいえる。
これに対して引用文献5に記載された椅子は、着座者に対して、常に意識をさせて着座状態を保つようにするものであり、いわば、能動的な椅子であるということができ、この意識の発揚によって姿勢保持能力を身につけることができるものであるということができる。しかし、トレーニング用であって、リハビリテーションの現場で一時的に利用するものであるから、日常の椅子として使用することには不向きである。
このような従来の椅子における着座面に対する対応策を大別すると、2つの方向があるものと考えられる。
その1は、正しい姿勢と姿勢矯正という面からの発想であり、意思による筋緊張で、頚椎と仙骨の垂直を創出しようとするものである。「気を付け」の姿勢を模倣しようとするものということができ、製品としては、姿勢矯正装置や、バランスチェアーなどである。この着座面は、外見だけ、静的状態だけの矯正であり、腰は不安定状態となるので、動的状態で、正しい姿勢が実現できるという保証は、一切ない。また、広背筋等の緊張によって、肩まで姿勢制御に参加するため、疲労しやすいという問題点もある。
その2は、「くつろぎ」という感覚の追求を目途とするものである。広範に支持面を提供することで、安静姿勢を創出しようとするものであるが、腰は不安定となりやすい。製品としては、ウォーターチェアー,コンフォートチェアなどがある。このような着座面では、上述したように、感覚システムは発動しない。リハビリテーションの現場で、一時的に利用されるものもある。
このように、上記どちらも、1は意識からの筋緊張による自動的なものであり、2は広い、支持面の提供による他動的であるという違いはあるが、静的状態しか想定しておらず、労働や家事といった実生活にはそぐわない。なぜなら、その発想の前提が両者とも、身体の骨格構造を力学的に捉えたのみであり、生体が持つ姿勢制御システムの中の感覚システムの発動の観点が欠落しているからである。以上から、我が国における椅子生活の文化は、未だ成立していないと考える。
このように、安静状態の創出を目途とした着座面では、着座者に対して感覚システムを発動させることはできず、姿勢保持能力を身につけることはできない。また、不安定さを意識させて姿勢を矯正しようとするものでは、労働や家事といった実生活にはそぐわないという問題がある。
特開2002−199987号公報
特開2006−346223号公報
特開2006−167320号公報
特開平11−206502号公報
特開2005−287833号公報
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、その発想の前提が従来のものとは全く相違するものであり、生体が持つ姿勢制御システムの中の感覚システムの発動をもたらすことができる着座面を有する着座用マット、および、椅子を提供することを目的とするものである。
本発明は、着座用マットにおいて、左右方向がその中央部を底部とする凹曲面であり、前後方向がその中央部を頂部とする凸曲面である3次元曲面の着座面を有することを特徴とするものである。
また、本発明は、椅子において、左右方向がその中央部を底部とする凹曲面であり、前後方向がその中央部を頂部とする凸曲面である3次元曲面の着座面を有することを特徴とするものである。
本発明による着座面を有する着座用マット、および、椅子を使用することによって、使用者は、座位姿勢を改善することができる。
本発明が目指す座位姿勢とは、「腰椎が安定し、姿勢制御の中心となっており、四肢は姿勢制御に関与せず、自由に動かせる状態にあること」と定義した上で、それを実現し、実生活に活用出来るためのものにするための、着座面の工夫を以下に述べる。
まず、腰椎1番から4番の脊椎が、自然に垂直となることを第1の要件とする。なぜならば、腰椎における椎間関節は、上下垂直に噛み合うような形状を成しており、座位という抗重力的状態において、骨格が垂直であるということは、姿勢制御に筋緊張を必要とせず、骨格と靭帯系のみで安定が実現でききるということを意味する。積み木をそろえて積み上げれば、エネルギー消費が発生することなく立っているのと同じである。加えて、上述したように、腰椎においては、それらが「噛み合う」形状を成しているため、さらに強固な安定性を実現するからである。
この腰椎垂直の座位姿勢は、頭部、頚部、胸郭、腹部の重みが筋緊張に頼ることなく、つり合った状態で共通重心が発生し、その共通重心が、支持面となる骨盤内部の着座面中心と重なったときに、出現する現象である。端的な例が、交通事故などで頚椎を骨折し、頚部から下の体幹筋が麻痺している頚髄損傷の症例である。この症例の人は、腹筋や背筋などの体幹筋が麻痺しているにも関わらず、骨格の組み合わせだけで、腰椎の安定性を引き出し、背もたれにもたれることなく座位保持が可能であり、また、練習によっては正座すら可能である。この姿勢で着座面を越えない範囲内であれば、上肢を挙上し動かすことも可能である。
この事実から、腰椎の骨格並びに靭帯系の持つ、強力かつエネルギー消費無き安定性を引き出すためには、まず上体の共通重心と、着座面中心と一致させ得る感覚システムの発動がまず必要であり、腰椎の垂直という外見上の特徴は、結果としての現象であるといえる。
次に、腰椎1番から4番の脊椎が、自然に垂直となる状態を実現するための、理論的背景について考察する。単純に考えれば、壁にもたれたり、直角のものに腰を当てれば外見上直角にすることは可能である。がしかし、外部にその根拠を求めても感覚システムは発動せず、腰椎の安定性は得られない。「仏作って魂入れず」の例え通りとなる。これは上述したように、結果だけを真似てみても、そこに過程がなければ、機能しないことを意味している、身体の内部の感覚システムが発動し、おのずと腰椎が垂直となるように導くためにはどのような工夫が必要かを、以下に述べる。
本発明において、実現しようとする着座面の形状は、着座した場合における腰椎々間関節の形状が、垂直位置で構築学的に安定する性質を持つことから、骨盤に対して、左右方向には安定性を与え、前後方向には不安定性(前後方向の自由度)を与えることで、自然な腰椎々間関節の垂直が得られる状態をもたらすことが可能な着座面である。
そのような着座面の具体的な構造について考察する。最初に、左右方向の形状が決定される。なぜなら、臀部と座骨が左右二つ存在し、それらが中心に向かう形状は、凹面体である。したがって、まず凹面立体が用意されるべきである。
これに対して、前後方向について考える。単純に考えると凹面体が、正解となりそうだが、これは間違いである。なぜなら、前後方向も凹面体の立体構造は、臀部の形状と一致して、身体と着座面は、面で接触することになる。そうなると点としての感覚が発現せず、中心が存在しないため、どっかりと腰をかける状態となって、左右方向ばかりでなく、前後方向にも安定を与えることとなって、着座者に対して感覚システムを発動させることはできない。このことから、本発明では、前後方向は凹面と逆の凸面とすることにより、左右方向の凹面との拮抗が生じて、着座してみると、左右方向には安定性が優位となるのに対して、前後方向は可動性が優位となり、不安定性を生じ、腰椎々間関節を垂直にしようとする感覚システムを発動させることができ、無意識の中で、正しい姿勢を保とうとする力が働く。
図1の実施例に基づいて着座面をより具体的に説明する。図1は、本発明の着座面を説明するための斜視図である。図中、1は着座用マット、2は着座面である。なお、着座面2に記載した細線は、着座面2の曲面を分かりやすくするために付したものである。
着座用マット1は、その底面がほぼ水平面となるように設置され、底面に対向する着座面2は、図1のX方向が左右方向、Y方向が前後方向、Z方向が高さ方向となるように、着座者に提供される。着座面2の左右方向は、その中央部が低い対称形の凹面である。したがって、X方向の垂直面で着座面2を任意の位置で切った断面形状は、下向きに凸の曲線であり、この曲線を解析幾何学的に表現すれば、双曲線、円、楕円、放物線などの2次曲線の一部、あるいは、3次以上の高次の曲線の一部である。この実施例では、双曲線である。
着座面2の前後方向は、その中央部が高い対称形の凸面である。したがって、Y方向の垂直面で着座面2を任意の位置で切った断面形状は、上向きに凸の曲線であり、この曲線を解析幾何学的に表現すれば、双曲線、円、楕円、放物線などの2次曲線の一部、あるいは、3次以上の高次の曲線の一部である。この実施例では、双曲線である。
なお、この実施例では、X方向、Y方向が、ともに双曲線であるが、両方向とも同じ形状とする必要はなく、いずれの方向も適宜の形状でよい。また、これらの形状は、解析幾何学的な厳密さを要求するものではなく、X方向の断面形状については、下向きに凸の曲線、Y方向の断面形状については、上向きに凸の曲線であればよい。着座面についても、図1の着座面2の全体が、上述した形状であることを要求するものではなく、実質的に着座者が腰を掛ける領域が、上述した形状であればよく、この明細書における着座面の意義は、実質的に着座者が腰を掛ける領域を意味している。
図2〜図4は、着座用マットの一具体例を説明するためのもので、図2は平面図、図3は図2におけるA−A線の側面図(A)、および、B−B線断面図(B),C−C線断面図(C),D−D線断面図(D),E−E線断面図(E)であり、図3は図2におけるa−a線の側面図(a)、および、b−b線断面図(b),c−c線断面図(c),d−d線断面図(d),e−e線断面図(e)である。図1と対照すると、A−A線の方向がX方向(左右方向)であり、a−a線の方向がY方向(前後方向)である。E−E線およびe−e線は、Y方向およびX方向の中心線であり、両中心線に対して、線対称となっている。外周は、ほぼ直方体形状であり、その大きさは、1人用の椅子の着座面となる大きさである。なお、A−A線に沿う端面が内側に向く凹面となっている。これは、着座者に対して、座りやすくするために、ふくらはぎが接する部分を後退させたものであるが、後退させることは必ずしも必要ではない。角部は斜めに面取りをしたが、この面取りも必ずしも必要ではない。なお、この具体例では、外形を長方形状としたが、長方形以外の四角形状、あるいは、円形状、楕円形状等、適宜の外形とすることができる。
図2〜図4から分かるように、水平方向でみた図3の(A)〜(E)における着座面を示す上側の線は下方に凸の形状であり、前後方向でみた図4の(a)〜(e)においては、着座面を示す上側の線は上方に凸の形状である。したがって、図3,図4において、中心線を示す一点鎖線を参照すると、図2〜図4に示す着座用マットの着座面は、左右方向がその中央部を底部とする凹曲面であり、前後方向がその中央部を頂部とする凸曲面である3次元曲面であるということができる。
着座面を上述した3次元曲面の着座面とすることにより、骨盤に対し、左右方向には安定性を与え、前後方向には運動の自由度を与えることで、水平面に対して腰椎1番から4番が自然に垂直となる座位姿勢を実現できる。
このような形状をもつ着座用マットの大きさと材質について説明する。左右方向の幅は、38cmから42cmと考えられる。理由は、成人の座幅の統計平均値が約38cmであり、車いすの着座面の幅やオフィスで使用されている椅子のサイズに、その根拠が求められる。もちろん、小児や、極端な肥満体形の人などを含めて、体格に応じた適宜の寸法としてもよいことであるから、左右方向の幅は、上記の値に限られるものではない。
座骨の間隔、換言すれば、この着座用マットに着座した場合において、着座者が着座面から受ける感覚の中心間の間隔も、着座者の体格によって多少の相違があるが、ほぼ、20cm前後である。したがって、図2で説明すれば、E−E線とc−c線の交点の近傍の領域であるといえる。
着座用マットの前後方向の長さについては、概ね、正方形に近い形状となる長さか、あるいは、やや縦長、やや横長となる長さよいが、本発明においては、大きさは重要な要素ではなく、使いやすさやを考慮して適宜の大きさを採用できる。厚さについては、椅子での使用、床においての使用等、使用環境によって若干考慮する点はあるものの、概ね5cmから10cmが適当である。重さは1kg以下が、取り扱い上望ましいと考えられる。
材質については、触感覚の観点から相反する性質を持った材質が、検討されるべきである。すなわち、3次元曲面の形状の質感を身体に伝えるためには、ある程度の固さを有するものが必要となり、直接触れる皮膚感覚を阻害しないためには、柔らかい素材が選ばれるべきである。具体的には加工しやすい木材と、その表面に貼付される低反発素材との組み合わせによる二重構造が、実用性を伴うと考えられる。
図5は、図2〜図4で説明した着座用マットの一例の具体的な大きさと厚さを記載したものである。単位はmmであり、図2の左上の1/4の部分を記載している。対称形であるので、残りの3/4の部分は同じ値である。全体の左右方向の長さは、384.0mm(48.0mm×8)であり、前後方向の長さは、300.0mm(37.5mm×8)である。
なお、図5に記載した値で構成される着座用マットは一例であり、本発明の着座用マットがこの値に限られるものではないことは勿論である。したがって、本発明の着座用マットの着座面の形状、特に、凹曲面と凸曲面の曲率も図5に記載された数値から決まる曲率に限られるものではない。上述した左右方向の安定性、前後方向の不安定性の程度を考慮して、適宜の値とすることができる。
上述した実施例は、着座用マットの着座面の形状について説明したが、この着座面の形状は、椅子の着座面にも同様に適用することができる。
1…着座用マット
2…着座面
2…着座面
Claims (2)
- 左右方向がその中央部を底部とする凹曲面であり、前後方向がその中央部を頂部とする凸曲面である3次元曲面の着座面を有することを特徴とする着座用マット。
- 左右方向がその中央部を底部とする凹曲面であり、前後方向がその中央部を頂部とする凸曲面である3次元曲面の着座面を有することを特徴とする椅子。
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JP2007287358A JP2009112449A (ja) | 2007-11-05 | 2007-11-05 | 着座用マットおよび椅子 |
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JP3174521U (ja) * | 2011-09-03 | 2012-03-29 | 祥明 菊池 | 低反発u字型クッション |
JP2016002439A (ja) * | 2014-06-16 | 2016-01-12 | 木夢株式会社 | 禅チェアー |
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