JP2009107934A - 殺菌防カビ性多層膜およびその形成方法 - Google Patents

殺菌防カビ性多層膜およびその形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
塩素剤やホルマリン剤を用いなくても、簡便かつ安全に下地の養生を行うことが可能で、しかも、長期に亘って優れた殺菌防カビ性を発揮する殺菌防カビ性多層膜、および該多層膜の形成方法を提供する。
【解決手段】
カチオン性殺菌剤を含有する下塗り塗料組成物から形成された第1の塗装膜と、該第1の塗装膜上に、防カビ剤を含有する上塗り塗料組成物から形成された第2の塗装膜を有することを特徴とする殺菌防カビ性多層膜、及び該多層膜の形成方法。
【選択図】 なし。

Description

本発明は、プラスチック、紙、木質、金属板、コンクリート、無機系素材などの基材上に、カチオン性殺菌剤を含有する下塗り塗料組成物から形成された第1の塗装膜と、該第1の塗装膜上に、防カビ剤を含有する上塗り塗料組成物から形成された第2の塗装膜を有する殺菌防カビ性多層膜、および該多層膜の形成方法に関する。
従来、プラスチックや紙、木質、金属板、コンクリート、無機系素材などの基体表面に、殺菌防カビ性を付与した殺菌防カビ性塗装膜を形成する方法が知られている。
例えば、特許文献1には、カチオン界面活性剤系抗菌剤を含有するコーティング剤を用いて塗装膜を形成させ、汚染防除を行う方法が記載されている。また、特許文献2には、木質系基材上に、第4級アンモニウム塩からなる木材用防腐組成物を塗布またはスプレーする方法が提案されている。さらに、特許文献3には、殺菌性陽イオン界面活性有機第四アンモニウム化合物を含有する水性陽イオン合成樹脂を、基体用の殺菌処理剤として使用する方法が提案されている。これらの文献に記載された方法は、塗料組成物にカチオン性殺菌剤を含有させて塗装面に汚染防除効果を付与するものである。
しかしながら、上記文献に記載された方法においては、以下に述べるような問題があった。
(i)殺菌防カビ性塗装膜を形成する前に、被塗装物(基体)表面を塩素剤やホルマリン剤などを用いて殺菌殺カビ処理する(養生)必要があり、これらの剤に起因する毒性や臭気の人体に対する悪影響が懸念されている。
(ii)形成された塗装膜は、水溶性の高い活性成分を用いているため、耐水性が悪く、殺菌防カビ性が持続しないという欠点を有する。
したがって、塩素剤やホルマリン剤を用いることなく、基材表面を養生することができ、しかも、長期に亘って優れた殺菌防カビ性を発揮する殺菌防カビ性塗装膜を形成する方法の開発が望まれている。
かかる要望に応えるべく、特許文献4には、抗菌剤に加えて防カビ剤を含有させた塗料組成物が提案されている。また、カルベンダジン(BCM)、チアベンダゾール(TBZ)、オクチルイソチアゾリン(OIT)などの防カビ剤が配合された上塗り塗料組成物が開発され、市販されている。
しかしながら、これらの塗料組成物を用いる場合であっても、下地のカビ汚染が顕著な場合に、その養生が不適切であると、防カビ剤を含有する塗料組成物を用いて殺菌防カビ性塗装膜を形成しても、基体面からのカビの繁茂を効果的に抑制できず、表面にカビが発生する場合があった。
特開2003−160414号公報 特開2003−321308号公報 特開昭63−264502号公報 特開2007−84823号公報
本発明は上記した従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、塩素剤やホルマリン剤を用いなくても、簡便かつ安全に下地の養生を行うことが可能で、しかも、長期に亘って優れた殺菌防カビ性を発揮する殺菌防カビ性多層膜、および該多層膜の形成方法を提供することを課題とする。
本願発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、基体上に、カチオン性殺菌剤を含有する下塗り塗料を塗布して第1の塗装膜を形成した後、該第1の塗装膜上に、防カビ剤を含有する上塗り塗料を塗布して第2の塗装膜を形成することで、高い殺菌防カビ性を有し、かつ効果の持続性に優れる殺菌防カビ性多層膜を、簡便かつ安全に形成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明の第1によれば、下記(1)〜(4)の殺菌防カビ性多層膜が提供される。
(1)カチオン性殺菌剤を含有する下塗り塗料組成物から形成された第1の塗装膜と、該第1の塗装膜上に、防カビ剤を含有する上塗り塗料組成物から形成された第2の塗装膜を有することを特徴とする殺菌防カビ性多層膜。
(2)前記下塗り塗料組成物が、カチオン性樹脂をさらに含有するものである(1)に記載の殺菌防カビ性多層膜。
(3)前記下塗り塗料組成物が、カチオン性殺菌剤として、第4級アンモニウム塩系殺菌剤、ビグアナイド系殺菌剤、およびピリジン系殺菌剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するものである(1)または(2)に記載の殺菌防カビ性多層膜。
(4)前記上塗り塗料組成物が、防カビ剤として、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、ニトリル系化合物、ジチオール系化合物、フェノール系化合物、フェニルウレア系化合物、カーバメート系化合物、スルファミド系化合物、フタロイド系化合物、ピリジン系化合物、ピリチオン系化合物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、トリアゾール系化合物、チアゾール系化合物、およびベンズイミダゾール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するものである(1)〜(3)のいずれかに記載の殺菌防カビ性多層膜。
本発明の第2によれば、下記(5)〜(11)の殺菌防カビ性多層膜の形成方法が提供される。
(5)基体上に形成されたカチオン性殺菌剤を含有する第1の塗装膜上に、防カビ剤を含有する上塗り塗料組成物を塗工して第2の塗装膜を形成することを特徴とする殺菌防カビ性多層膜の形成方法。
(6)前記第1の塗装膜が、カチオン性樹脂をさらに含有するものである(5)に記載の殺菌防カビ性多層膜の形成方法。
(7)前記カチオン性殺菌剤が、第4級アンモニウム塩系殺菌剤、ビグアナイド系殺菌剤、およびピリジン系殺菌剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である(5)または(6)に記載の殺菌防カビ性多層膜の形成方法。
(8)基体上に、カチオン性殺菌剤を含有する下塗り塗料組成物を塗工して第1の塗装膜を形成する工程と、該第1の塗装膜上に、防カビ剤を含有する上塗り塗料組成物を塗工して第2の塗装膜を形成する工程を有することを特徴とする殺菌防カビ性多層膜の形成方法。
(9)前記下塗り塗料組成物が、カチオン性樹脂をさらに含有するものである(8)に記載の殺菌防カビ性多層膜の形成方法。
(10)前記カチオン性殺菌剤が、第4級アンモニウム塩系殺菌剤、ビグアナイド系殺菌剤、およびピリジン系殺菌剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である(8)または(9)に記載の殺菌防カビ性多層膜の形成方法。
(11)前記上塗り塗料組成物が、防カビ剤として、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、ニトリル系化合物、ジチオール系化合物、フェノール系化合物、フェニルウレア系化合物、カーバメート系化合物、スルファミド系化合物、フタロイド系化合物、ピリジン系化合物、ピリチオン系化合物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、トリアゾール系化合物、チアゾール系化合物、およびベンズイミダゾール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するものである(5)〜(10)のいずれかに記載の殺菌防カビ性多層膜の形成方法。
本発明の殺菌防カビ性多層膜によれば、カチオン性殺菌剤を含有する下塗り塗料組成物(カチオン性殺菌剤を含有する下塗り塗料)から形成された第1の塗膜上に、防カビ剤を含有する上塗り塗料組成物(防カビ剤を含有する上塗り塗料)から形成された第2の塗装膜を有するので、持続性に優れた、殺菌防カビ効果の高い塗装膜となっている。
また、本発明の形成方法によれば、塗装面に汚染防除を施すに際し、カチオン性殺菌剤を含有する下塗り塗料を用いることで、塩素剤やホルマリン剤といった有害な薬品を使用するような下地の養生を行うことなく、簡便かつ安全に防カビ塗装することができ、また塗工期間の短縮化も可能である。
本発明の形成方法は、特に、病院、学校、養護施設、保育所、幼稚園、一般住宅、食品工場、薬品工場、倉庫などの内装(浴室、トイレの壁、台所の壁、天井、床など)用の塗装に有効である。
以下、本発明を詳細に説明する。
1)殺菌防カビ性多層膜
本発明の殺菌防カビ性多層膜は、カチオン性殺菌剤を含有する下塗り塗料組成物から形成された第1の塗装膜と、該第1の塗装膜上に、防カビ剤を含有する上塗り塗料組成物から形成された第2の塗装膜を有することを特徴とする。
(1)第1の塗装膜
本発明の殺菌防カビ性多層膜の第1の塗装膜は、カチオン性殺菌剤を含有する下塗り塗料組成物から形成されてなるものである。
カチオン性殺菌剤としては、特に制限されず、塗料組成物に含有させることができる従来公知のカチオン性殺菌剤を用いることができる。例えば、第4級アンモニウム塩系殺菌剤、ビグアナイド系殺菌剤、およびピリジン系殺菌剤からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
第4級アンモニウム塩系殺菌剤としては、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド(DDAC)、ジデシルジメチルアンモニウムアジペート(DDAA)などが挙げられる。
ビグアナイド系殺菌剤としては、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、グルコン酸クロルへキシジンなどが挙げられる。
ピリジニウム系殺菌剤としては、セチルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムクロライドなどが挙げられる。
これらのカチオン性殺菌剤は1種単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、ジデシルジメチルアンモニウムアジペートが特に好ましい。ジデシルジメチルアンモニウムアジペートを含有するカチオン性殺菌剤の具体例としては、オスモリンDA50(三洋化成社製)が挙げられる。
カチオン性殺菌剤の含有量は、下塗り塗料組成物全体に対して、通常0.1〜50重量部%、好ましくは、0.3〜30重量部%である。カチオン性殺菌剤の含有量があまりに少ないと、その効力が不足し、多くなりすぎると、カチオン性殺菌剤を添加する効果が飽和する上に造膜性が悪化し、膜としての耐久性が損なわれるおそれがある。
本発明に用いる下塗り塗料組成物は、塗装膜強度を高めるために、カチオン性殺菌剤に加えてカチオン性樹脂を更に含有するのが好ましい。
カチオン性樹脂は、分子内にカチオン残基を有する樹脂である。カチオン残基は、樹脂自体にカチオン性と親水性を付与する官能基である。かかる官能基としては、例えば、第1級アミン、第2級、第3級アミン塩残基、第4級アンモニウム残基、第3級スルホニウム塩残基などが挙げられる。
カチオン性樹脂の具体例としては、カチオン残基を有するポリエポキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
カチオン性樹脂の含有量は、下塗り塗料組成物全体に対して、通常1〜30重量部%、好ましくは2〜20重量部%である。カチオン性樹脂の含有量があまりに少ないと塗膜の強度が不足し、逆に多すぎると、塗工時の作業性が悪化するおそれがある。
カチオン性樹脂を含有するカチオン性下塗り塗料としては、一般に流通している市販剤が使用可能であり、例えば、アイカカチオンSC(アイカ工業社製)、ダイヤワイドシーラー(恒和化学工業社製)などが挙げられる。
本発明に用いる下塗り塗料組成物は、カチオン性殺菌剤(および所望によりカチオン性樹脂)以外に、必要に応じて、溶剤、防腐剤、防藻剤、顔料、染料、可塑剤、乾燥促進剤、界面活性剤、消泡剤、皮張り防止剤、低温造膜剤、増粘剤、レベリング剤、分散剤、沈降防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを含有しても良い。
溶剤としては、水、エタノール、プロパノール、グリコール類などが挙げられる。
防腐剤としては、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(BIT)、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(Cl―MIT)などが挙げられる。
顔料または染料としては、例えば、二酸化チタン、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルク、カオリン、オーカー、酸化亜鉛、クロム酸亜鉛、クロム酸鉛、金属亜鉛末、アルミニウム粉、群青、紺青、ベンガラ、水酸化アルミニウム、ジルコニア、サチンホワイト、カーボンブラック、グラファイト、硫酸バリウムなどの無機顔料、または、アゾ系顔料、アゾ系分散染料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系分散染料などの有機染顔料などが挙げられる。
また、下塗り塗料組成物の固形物または不揮発成分は、3〜30重量部%を含有することができる。固形物または不揮発成分の含有量があまりに少ないと塗膜の強度が不足し、逆に多すぎると、塗工時の作業性が悪化するおそれがある。
前記下塗り塗料組成物としては、従来公知の下塗り塗料組成物にカチオン性殺菌剤の所定量を添加することにより調製したものを用いることができる。なかでも、カチオン性樹脂を主要素として含有するカチオン性下塗り塗料に所定量のカチオン性殺菌剤を添加して調製したものが好ましい。
第1の塗装膜は、後述するように、上記のようにして調製した下塗り塗料組成物を基体表面に塗布することにより形成することができる。
得られる第1の塗装膜の厚みは、通常0.1μmから1cmであり、好ましくは1μmから5mmである。
用いる基体としては、その表面に殺菌防カビ性を付与する必要があるものであれば、特に限定されない。例えば、アルミニウム材、亜鉛メッキ材、鉄材、ステンレス材などの金属部材や各種合金部材、木材、石膏ボード、ゴム、プラスチック、紙、布、コンクリートなどが挙げられる。
(2)第2の塗装膜
本発明の殺菌防カビ性多層膜の第2の塗装膜は、前記第1の塗装膜上に、防カビ剤を含有する上塗り塗料組成物から形成されてなるものである。
用いる防カビ剤としては、特に限定されない。例えば、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、ニトリル系化合物、ジチオール系化合物、フェノール系化合物、フェニルウレア系化合物、カーバメート系化合物、スルファミド系化合物、フタルイミド系化合物、ピリジン系化合物、ピリチオン系化合物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、トリアゾール系化合物、チアゾール系化合物、およびベンズイミダゾール系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
イソチアゾリン化合物としては、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(Cl−MIT)、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン(MTI)、N−n−ブチル−1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オン(Bu−BIT)などが挙げられる。
ニトロアルコール系化合物としては、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール(DBNE)、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(BNPD)、2−ヒドロキシメチル−2−ニトロ−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
ニトリル系化合物としては、テトラクロロイソフタロニトリル、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルなどが挙げられる。
ジチオール系化合物としては、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オン、4,5−ジブロモ−1,2−ジチオール−3−オンなどが挙げられる。
フェノール系化合物としては、o−フェニル−フェノール、p−クロロメタキシレノールなどが挙げられる。
フェニルウレア系化合物としては、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレアなどが挙げられる。
カーバメート系化合物としては、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート(IPBC)などが挙げられる。
スルファミド系化合物としては、N−ジメチルアミノスルホニル−N−トリル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Tolylfluanide)、N−ジメチルアミノスルホニル−N−フェニル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Dichlofluanide)などが挙げられる。
フタルイミド系化合物としては、N−1,1,2,2−テトラクロロエチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captafol)、N−トリクロロメチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captan)、N−ジクロロフルオロメチルチオフタルイミド(Fluorfolpet)、N−トリクロロメチルチオフタルイミド(Folpet)などが挙げられる。
ピリチオン系化合物としては、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジンなどのハロピリジン化合物およびジンクピリチオン(ZPT)、ソディウムピリチオンなどのピリチオン化合物などが挙げられる。
トリアジン系化合物としては、キサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンなどが挙げられる。
グアニジン系化合物としては、ドデシルグアニジンハイドロクロライド、ドデシルグアニジンハイドロブロマイド、デシルグアニジンハイドロクロライド、1,1′−ヘキサメチレンビス[5−(4−クロロフェニル)ビグアニド]ジハイドロクロライドなどが挙げられる。
トリアゾール系化合物としては、α−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(テブコナゾール)、1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(プロピコナゾール)、1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(アザコナゾール)、α−(4−クロロフェニル)−α−(1−シクロプロピルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(シプロコナゾール)などが挙げられる。
チアゾール系化合物としては、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
ベンズイミダゾール系化合物としては、メチル−2−ベンズイミダゾールカーバメート(MBC)、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾールなどが挙げられる。
これらの中でも、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)などのイソチアゾリン系化合物、ベンズイミダゾール系化合物のメチル−2−ベンズイミダゾールカーバメート(MBC)などのベンズジミダゾール系化合物が好ましい。これらの防カビ剤は多種類のカビに対して優れた防カビ性を有し安価であるため、用いる防カビ剤として好適である。
防カビ剤の含有量は、上塗り塗料組成物全体に対して、通常0.01〜10重量部%、好ましくは、0.1〜5重量部%である。防カビ剤の含有量があまりに少ないと効力が不足し、逆に多すぎると防カビ剤を添加する効果が飽和する上に造膜性が悪化し、膜としての耐久性が損なわれるおそれがある。
本発明に用いる上塗り塗料組成物は、従来公知の基材塗料に防カビ剤を添加することにより調製することができる。
用いる基材塗料としては、特に限定されず、例えば、油性塗料、酒精塗料、NAD塗料、電着塗料、粉体塗料、セルロース塗料、合成樹脂塗料、水性塗料、漆系塗料、ゴム系塗料などが挙げられる。これらの中でも、合成樹脂塗料、水性塗料が好ましい。(理由)
合成樹脂塗料としては、例えば、フェノール樹脂塗料、フタル酸樹脂塗料(例えば、アルキド樹脂塗料など)、マレイン酸樹脂塗料、尿素樹脂塗料、メラミン樹脂塗料、ビニル樹脂塗料(例えば、酢酸ビニル樹脂塗料、塩化ビニル樹脂塗料、スチレン樹脂塗料、アクリル酸樹脂塗料、ポリビニルブチラール樹脂塗料など)、エポキシ樹脂塗料、シリコーン樹脂塗料、フラン樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、ニトロセルロース樹脂塗料、アミノ樹脂塗料、フッ素樹脂塗料などが挙げられる。
水性塗料としては、例えば、水性ペイント、エマルション油ペイント、乳化重合塗料(例えば、酢酸ビニル樹脂乳化重合塗料、塩化ビニリデン塩化ビニル共重合体乳化重合塗料、アクリル酸樹脂乳化重合塗料、スチレン樹脂乳化重合塗料、合成ゴムラテックス塗料など)などが挙げられる。
本発明の上塗り塗料組成物は、防カビ剤以外に、必要に応じて、溶剤、防腐剤、防藻剤、顔料、染料、可塑剤、乾燥促進剤、界面活性剤、消泡剤、皮張り防止剤、低温造膜剤、増粘剤、レベリング剤、分散剤、沈降防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを含有しても良い。
本発明で用いる上塗り塗料組成物(防カビ剤入り上塗り塗料)としては、一般に流通している市販剤が使用可能であり、例えば、「浴室・かべ用スプレーA(カンペハピオ社)」、「抗菌かべ・浴室用(カンペハピオ社)」などが挙げられる。
本発明の上塗り塗料組成物の固形物もしくは不揮発成分の含有量は、通常、組成物全体に対して5〜50重量部%である。固形物もしくは不揮発成分の含有量があまりに少ないと、塗布膜強度が不足し、逆に多すぎると作業性が悪くなる・
第2の塗装膜の厚みは、通常0.1μmから1cm、好ましくは1μmから5mmである。
本発明の殺菌防カビ性多層膜は、カチオン性殺菌剤を含有する下塗り塗料組成物から形成された第1の塗装膜と、防カビ剤を含有する上塗り塗料組成物から形成された第2の塗装膜を有するので、耐水性に優れており、かつ長期に亘って優れた殺菌防カビ性を発揮するものである。
本発明の殺菌防カビ性多層膜は、前記第1の塗装膜と第2の塗装膜を少なくとも有するものであるが、基体と第1の塗装膜の間、第1の塗装膜と第2の塗装膜の間、および/または第2の塗装膜上にさらに別の層を有していてもよい。
本発明の殺菌防カビ性多層膜は、建築物全般の塗装(特に医療関係建築物、食品関係建築物および一般建築物の塗装)、建築資材の塗装、自動車の一般塗装、電着塗装および補修用塗装、船舶の耐水塗装、金属、木工およびプラスチック製品の塗装、さらに繊維および紙のコーティングなどに適用することができる。
2)殺菌防カビ性多層膜の形成方法
本発明の殺菌防カビ性多層膜の形成方法は、基体上に形成されたカチオン性殺菌剤を含有する第1の塗装膜上に、防カビ剤を含有する上塗り塗料組成物を塗工して第2の塗装膜を形成することを特徴とする。
本発明の殺菌防カビ性多層膜の形成方法の別の態様は、基体上に、カチオン性殺菌剤を含有する下塗り塗料組成物を塗工して第1の塗装膜を形成する工程と、該第1の塗装膜上に、防カビ剤を含有する上塗り塗料組成物を塗工して第2の塗装膜を形成する工程を有するものである。
本発明の形成方法によれば、カチオン性殺菌剤を含有する下塗り塗料組成物を用いて第1の塗装膜を形成するので、従来必要とされる塩素剤やホルマリン剤を用いる下地の養生は必要としない。
(1)基体
本発明の形成方法に用いる基体としては、前記本発明の殺菌防カビ性多層膜の項で、第1の塗装膜を形成できるものとして列記したものと同様のものが挙げられる。
(2)第1の塗装膜を形成する工程
先ず、基体上にカチオン性殺菌剤を含有する下塗り塗料組成物を塗工して第1の塗装膜を形成する。
用いる下塗り塗料組成物としては、前記本発明の殺菌防カビ性多層膜の項で、第1の塗装膜の形成に用いるものと同様のものが使用できる。
本発明においては、カチオン性殺菌剤を含有する下塗り塗料組成物を用いるため、従来必要とされる塩素剤やホルマリン剤を用いる下地の養生を必要としない。
第1の塗装膜を形成する方法としては、塗料に用いられる樹脂若しくは溶剤の種類、塗工する物品の種類若しくは形状などに応じて、公知の方法を用いればよい。すなわち、下塗り塗料組成物を基体表面に塗工し、得られた塗布膜を乾燥(場合によっては、硬化・乾燥)することにより、第1の塗装膜を形成することができる。
下塗り塗料組成物の塗布膜を形成する方法としては、特に制約されず、刷毛塗り、ローラー塗り、スプレー塗装などの従来公知の塗工方法を採用することができる。
下塗り塗料組成物の塗布量は基材の種類や目的によって異なるが、通常、ウェットな状態で10〜500g/m程度である。
下塗り塗料組成物の塗布膜を乾燥(場合によっては、硬化・乾燥)する条件は、塗料の種類、目的によって異なるが、通常は0〜250℃で、1分から1日間、好ましくは常温(20℃)〜45℃で10分から12時間である。
(3)第2の塗装膜を形成する工程
次いで、第1の塗装膜上に上塗り塗料組成物を塗工して第2の塗装膜を形成することにより、殺菌防止カビ性多層膜を得ることができる。
第2の塗装膜を形成する方法としては、塗料に用いられる樹脂若しくは溶剤の種類、塗工する物品の種類若しくは形状などに応じて、公知の方法を用いればよい。すなわち、上塗り塗料組成物を第1の塗装膜上に塗工し、得られた塗布膜を乾燥(場合によっては、硬化・乾燥)することにより、第2の塗装膜を形成することができる。
上塗り塗料組成物を第1の塗装膜上に塗工する方法としては、特に制約されず、刷毛塗り、ローラー塗り、スプレー塗装などの従来公知の塗工方法を採用することができる。
上塗り塗料組成物の塗布量は基材の種類や目的によって異なるが、通常、ウェットな状態で10〜500g/m程度である。
上塗り塗料組成物の塗布膜を乾燥(場合によっては、硬化・乾燥)する条件は、塗料の種類、目的によって異なるが、通常は0〜250℃で1分から1日間、好ましくは20℃から45℃で10分から12時間である。
本発明の殺菌防カビ性多層膜によれば、カチオン性殺菌剤を含有する下塗り塗料組成物(カチオン性殺菌剤を含有する下塗り塗料)から形成された第1の塗装膜上に、防カビ剤を含有する上塗り塗料組成物(防カビ剤を含有する上塗り塗料)から形成された第2の塗装膜を有するので、持続性に優れた、殺菌防カビ効果の高い塗装膜となっている。
また、本発明の形成方法によれば、塗装面に汚染防除を施すに際し、カチオン性殺菌剤を含有する下塗り塗料を用いることで、塩素剤やホルマリン剤といった有害な薬品を使用するような下地の養生を行うことなく、簡便かつ安全に防カビ塗装することができ、また塗工期間の短縮化も可能である。
本発明の多層膜の形成方法は、建築物全般の塗装(特に医療関係建築物、食品関係建築物および一般建築物の塗装)、建築資材の塗装、自動車の一般塗装、電着塗装および補修用塗装、船舶の耐水塗装、金属、木工およびプラスチック製品の塗装、さらに繊維および紙のコーティングなどに適用することができる。
特に、本発明の養生が不要である利点を生かすには、病院、学校、養護施設、保育所、幼稚園、一般住宅、食品工場、薬品工場、倉庫などの内装(浴室、トイレの壁、台所の壁、天井、床など)用の塗装に有効である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら制限されるものではない。
〔実施例1〕
50×50mmに裁断濾紙(型番26、ADVANTEC社製)をアルミ箔で包みオートクレーブ滅菌後、滅菌シャーレにPDA培地(「パールコア・ポテトデキストロース寒天培地‘栄研’」栄研化学(株)社製)を固化した培地上に置いた。次いで、汚染カビの代表としてフザリウム菌(Fusarium moniliforme NBRC No.6349〔現名Gibberella fujikuroi 〕)を接種し、27±1℃の恒温槽にて2週間の前培養を実施し十分な菌叢の生育および色素産生が見られたシャーレから濾紙を取り出した。金属ヘラにて付着した培地と余剰な菌叢を除去後、4時間常温風乾したものをカビ汚染壁面に見立てた基材サンプルとした。
カチオン系シーラー(「ダイヤ ワイドシーラー(カチオン形水系一液エポキシシーラー)」恒和化学社製)95重量部に対してカチオン性殺菌剤(「オスモリンDA50」三洋化成社製)5重量部を添加してよく攪拌混溶して得られた殺菌剤カチオン系シーラー(下塗り塗料組成物)を上記基材サンプルに150g/m2になるように塗布し、常温で2時間風乾した。得られた下塗り塗布後の基材サンプルに、防カビ剤を含まないアクリルエマルション塗料(「水性フレッシュワイド」防カビ剤抜き、ニッペホームプロダクツ社製)100重量部に対して防カビ剤(「バイオカットBM10」日本曹達社製)0.1重量部を添加し、よく混合して得られた塗料(上塗り塗料組成物)を200g/m2になるように塗布し、常温で2時間風乾することにより、培養試験用多層膜サンプル(1)を得た。
効果確認培養として、滅菌シャーレにPDA培地を固化した培地上に塗膜サンプルを置き、フザリウム菌を培地面に接種し27±1℃の恒温槽にて1週間の培養を実施したところ、塗装膜面にカビの発育は見られず防カビ効果を発揮していた。
〔比較例1〕
実施例1と同様に作製した基材サンプルに、下塗り塗料組成物としてカチオン性殺菌剤を含有しないカチオン系シーラーを塗布し、常温で2時間風乾することにより、下塗り塗布後の基材サンプルを得た。次いで、このものに、防カビ剤を含まないアクリルエマルション塗料(「水性フレッシュワイド」防カビ剤抜き、ニッペホームプロダクツ社製)95重量部に対してカチオン性殺菌剤(「オスモリンDA50」三洋化成社製)5重量部と防カビ剤(「バイオカットBM10」日本曹達社製)0.1重量部を添加し、よく混合して得られた殺菌剤および防カビ剤入り塗料を200g/m2になるように上塗り塗料組成物として塗布し、24時間室温で風乾することにより、培養試験用多層膜サンプル(2)を得た。
実施例1と同様に効果確認培養を実施したところ、塗装膜面にカビが発育し、防カビ効果はみられなかった。
〔比較例2〕
実施例1と同様に作製した基材サンプルに、カチオン系シーラー(「ダイヤ ワイドシーラー(カチオン形水系一液エポキシシーラー)」恒和化学社製)95重量部に対してカチオン性殺菌剤(「オスモリンDA50」三洋化成社製)5重量部と防カビ剤(「バイオカットBM10」日本曹達社製)0.1重量部を添加し、よく攪拌混溶して得られた殺菌剤および防カビ剤入りカチオン系シーラーを下塗り塗料組成物として塗布し、常温で2時間風乾することにより下塗り塗布後の基材サンプルを得た。次いで、このものに、防カビ剤を含まないアクリルエマルション塗料(「水性フレッシュワイド」防カビ剤抜き、ニッペホームプロダクツ社製)のみを200g/m2になるように上塗り塗料として塗布し、24時間室温で風乾することにより、培養試験用多層膜サンプル(3)を得た。
実施例1と同様に効果確認培養を実施したところ、塗装膜面にカビが発育し、防カビ効果はみられなかった。
以上の効果結果を第1表に示す。
Figure 2009107934

Claims (11)

  1. カチオン性殺菌剤を含有する下塗り塗料組成物から形成された第1の塗装膜と、該第1の塗装膜上に、防カビ剤を含有する上塗り塗料組成物から形成された第2の塗装膜を有することを特徴とする殺菌防カビ性多層膜。
  2. 前記下塗り塗料組成物が、カチオン性樹脂をさらに含有するものである請求項1に記載の殺菌防カビ性多層膜。
  3. 前記下塗り塗料組成物が、カチオン性殺菌剤として、第4級アンモニウム塩系殺菌剤、ビグアナイド系殺菌剤、およびピリジン系殺菌剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するものである請求項1または2に記載の殺菌防カビ性多層膜。
  4. 前記上塗り塗料組成物が、防カビ剤として、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、ニトリル系化合物、ジチオール系化合物、フェノール系化合物、フェニルウレア系化合物、カーバメート系化合物、スルファミド系化合物、フタロイド系化合物、ピリジン系化合物、ピリチオン系化合物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、トリアゾール系化合物、チアゾール系化合物、およびベンズイミダゾール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の殺菌防カビ性多層膜。
  5. 基体上に形成されたカチオン性殺菌剤を含有する第1の塗装膜上に、防カビ剤を含有する上塗り塗料組成物を塗工して第2の塗装膜を形成することを特徴とする殺菌防カビ性多層膜の形成方法。
  6. 前記第1の塗装膜が、カチオン性樹脂をさらに含有するものである請求項5に記載の殺菌防カビ性多層膜の形成方法。
  7. 前記カチオン性殺菌剤が、第4級アンモニウム塩系殺菌剤、ビグアナイド系殺菌剤、およびピリジン系殺菌剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項5または6に記載の殺菌防カビ性多層膜の形成方法。
  8. 基体上に、カチオン性殺菌剤を含有する下塗り塗料組成物を塗工して第1の塗装膜を形成する工程と、該第1の塗装膜上に、防カビ剤を含有する上塗り塗料組成物を塗工して第2の塗装膜を形成する工程を有することを特徴とする殺菌防カビ性多層膜の形成方法。
  9. 前記下塗り塗料組成物が、カチオン性樹脂をさらに含有するものである請求項8に記載の殺菌防カビ性多層膜の形成方法。
  10. 前記カチオン性殺菌剤が、第4級アンモニウム塩系殺菌剤、ビグアナイド系殺菌剤、およびピリジン系殺菌剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項8または9に記載の殺菌防カビ性多層膜の形成方法。
  11. 前記上塗り塗料組成物が、防カビ剤として、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、ニトリル系化合物、ジチオール系化合物、フェノール系化合物、フェニルウレア系化合物、カーバメート系化合物、スルファミド系化合物、フタロイド系化合物、ピリジン系化合物、ピリチオン系化合物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、トリアゾール系化合物、チアゾール系化合物、およびベンズイミダゾール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するものである請求項5〜10のいずれかに記載の殺菌防カビ性多層膜の形成方法。
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