JP2009102778A - 金属光沢繊維集合体およびその製造方法 - Google Patents

金属光沢繊維集合体およびその製造方法 Download PDF

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【課題】縦糸と横糸を織る織成という工程が不要であり、材料としては天然のものに限らず、人工のものも使用でき、工程が簡単でコストも安価にできる金属光沢繊維集合体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】繊維径5μm以下の極細繊維が一方向に配向性をもって幅方向および厚み方向に集成されている金属光沢繊維集合体である。その製造に際しては、好適にはエレクトロスピニング法を用い、単数または複数の紡糸口4aと回転体コレクタ5間に高電圧を印加し、紡糸口4aから、荷電されたファイバ原料を溶剤に溶かした溶液を回転体コレクタ5に向かって噴射、吸引する際に、回転体コレクタ5表面に、一方向に並んだ極細繊維を、所定の幅、所定の厚みに集成する。
【選択図】図2

Description

本発明は、金属光沢を呈する繊維集合体およびその製造方法に関する。
人が色を知覚する因子として、色素に基づく色である「色素色」と、色素によらず、光の干渉、回折、散乱などによって生じる「構造色」というのがある。その構造色の例として、モルフォチョウ等の羽の色、虫の玉虫色、魚の青や銀色、真珠や絹糸の金属光沢がある。ここで、金属光沢は、真珠や絹糸の結晶や細胞質の成層構造により、可視光波長域の光がほぼ完全に反射されることにより生じる、輝きを伴う白色である。
このような絹のような金属光沢を実現するために、特許文献1には、生糸の成分と同じ絹フィブロイン又は絹様材料をヘキサフロロアセトン水和物又はそれを主成分とする溶剤に溶解し、次いでエレクトロスピニングすることを特徴とする絹又は絹様材料の極細繊維からなる不織布の製造方法が提案されている。
特開2004−68161号公報
しかしながら、前掲の特許文献1において提案された絹又は絹様材料の極細繊維からなる不織布の製造方法では、絹の原料と同じ家蚕、及び、エリ蚕、柞蚕、天蚕等の野蚕の絹フィブロインを紡糸液として用い、これを、公知の方法、例えば不織布を製造する場合にはエレクトロスピニング法を用いるとしているが、絹と同じ原料でも、配向性がない不織布の場合、光が乱反射して不織布が白く見え、絹の光沢が得られない。
そこで本発明は、縦糸と横糸を織る織成という工程が不要であり、材料としては天然のものに限らず、人工のものも使用でき、工程が簡単でコストも安価にできる金属光沢繊維集合体およびその製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明の金属光沢繊維集合体は、繊維径5μm以下の極細繊維が一方向に配向性をもって幅方向および厚み方向に集成されていることを特徴とする。
本発明においては、繊維径5μm以下の極細繊維が一方向に配向性をもって幅方向および厚み方向に集成されているので、金属光沢繊維集合体に当たった光線は、一部は単繊維の表面で反射し、一部は単繊維の内部で屈折して表面に出射することにより、ほぼ完全に反射して、絹のような光沢、すなわち金属光沢を呈する。また、幾層にも重なった単繊維により、背面から入射する光の一部が表面に透過するため、透けた感じが、絹に似たものとなる。同じ極細繊維を不織布のようにランダムな方向で集積すると、表面に当たった光は向きがランダムに反射するため、真っ白に見え、金属光沢は得られない。なお、本発明において「金属光沢」とは、反射によって輝きを伴う視覚的印象を言い、必ずしも「金属」に似た光沢に限定されない。
繊維径5μm以下としたのは、既存の繊維、例えば溶融紡糸法、溶液紡糸法により紡糸された繊維の径よりも細いものに限定したからである。
金属光沢繊維集合体の厚みは、極細繊維の繊維径の2倍以上とする。これ未満の厚みであると、極細繊維の層数が2層以上を確保できず、確実に金属光沢を呈することができないおそれがある。
本発明の金属光沢繊維集合体の製造方法は、極細繊維原料を溶剤に溶かした溶液から繊維が引き出される部位である溶液離脱部位とコレクタ間に高電圧を印加し、前記溶液離脱部位から、荷電された前記溶液を前記コレクタに向かって噴射、吸引する際に、前記コレクタ表面に、一方向に並んだ極細繊維を、所定の幅、所定の厚みに集成することを特徴とする、エレクトロスピニング法を用いた製造方法である。
このように、エレクトロスピニング法を用いて溶液離脱部位から紡糸ジェットを噴射させ、コレクタ上に配向性を持たせて集成することにより、金属光沢繊維集合体が得られる。金属光沢繊維集合体の幅方向ないし積層方向に隣接する単繊維同士は、金属光沢繊維集合体の乾燥の途中で密着するため、編んで横糸と縦糸を結合するという編成を行わなくても、集成される。
なお、「溶液離脱部位」とは、ノズルを使用する場合には単数または複数のノズルの紡糸口であり、ノズルを使用せず、溶液の表面から直接ないし間接的に繊維を引き出すときは、その引き出される繊維の基部をいう。
本発明で用いる極細繊維の原料としては、エレクトロスピニング法を適用できる材料であれば、天然材料でも、人工材料でも問わない。
なお、金属光沢繊維集合体の製造方法として、エレクトロスピニング法を用いることを例示したが、本発明の金属光沢繊維集合体を製造できれば、他の方法を用いることもでき、エレクトロスピニング法に限定されない。また、エレクトロスピニング法においても、溶液紡糸に限らず、溶融紡糸を用いてもよい。
本発明によれば、縦糸と横糸を織る織成という工程が不要であり、材料としては天然のものに限らず、人工のものも使用でき、工程が簡単でコストも安価にできるという効果を奏する。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図3を用いて説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る金属光沢繊維集合体の斜視図、図2は本発明の実施の形態に係る金属光沢繊維集合体の製造装置の基本的構成を示す正面図、図3はその側面図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る金属光沢繊維集合体Sは、A部拡大図に示すように、極細繊維の単繊維Fを幅方向および厚み方向に集成したものであり、編んだものではない。極細繊維の単繊維Fの繊維径は5μm以下、好適には数十nm〜数百nmのナノ・ファイバとする。これを、例えば20層程度積層して、厚み数μm〜10μm程度のシート状とする。なお、この積層数や厚みはこれに限定されない。
極細繊維の単繊維Fの素材は、金属光沢繊維集合体Sの用途、および要求される強度、耐摩耗性等にもよるが、例えば、絹の光沢を主に利用する装飾用であれば、天然材料、人工材料を問わない。
特開2006−152479号公報には、エレクトロスピニング法において使用できる可能性のある材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフッ化ビニリデン(FVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリレ−ト(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン6,ナイロン66、ナイロン610,ナイロン12、ナイロン46、ナイロン9Tなどのナイロン系列、ポリウレタン、アラミド、ポリイミド(PI)、ポリベンゾイミダゾ−ル(PBI)、ポリベンズオキサゾール(PBO)、ポリビニルアルコ−ル(PVA)、セルロ−ス、酢酸セルロ−ス、酢酸酪酸セルロ−ス、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンイミド(PEI)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(コハク酸エチレン)、ポリ(硫化エチレン)、ポリ(酸化プロピレン)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリアニリン、ポリ(テレフタル酸エチレン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(酸化エチレン)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリペプチド、タンパク質などのバイオポリマー、コールタールピッチ、石油ピッチなどのピッチ系などの様々な高分子が例示されている。
本発明の実施の形態に係る金属光沢繊維集合体製造装置の基本構成としては、図2、図3に示すように、極細繊維の素材となるポリマーと揮発性の溶媒との溶液を入れたシリンジ1と、シリンジ1内の原料と溶媒との溶液を押し出すシリンジポンプ2と、溶液供給チューブ3と、紡糸口4aを有するノズル4と、回転軸5aの回りに回転駆動される回転体コレクタ5と、ノズル4と回転体コレクタ5との間に高電圧を印加する高圧電源6と、回転体コレクタ5上に巻き付けられる極細繊維に対して除電イオンを照射して極細繊維の電荷を中和する静電除去装置7とを備えた構成である。なお、溶液供給チューブ3は、シリンジポンプ2とノズル4とを直接つなぐこともあり、必須ではない。
静電除去装置7としては、紡糸口4aが+の高電圧に帯電しているときは、極細繊維の電荷は+であるので、マイナスイオンを照射するマイナスイオン発生器を用いることができる。逆に、紡糸口4aが−の高電圧に帯電しているときは、極細繊維の電荷は−であるので、プラスイオンを照射するプラスイオン発生器を用いる。また、静電除去装置7の設置位置は、図2,図3に示すように、紡糸口4aとは反対側の回転体コレクタ5の近傍が望ましい。しかし、回転体コレクタ5の側部でもよいし、紡糸口4aと回転体コレクタ5の中間の位置でもよい。
次に、この金属光沢繊維集合体製造装置の動作について説明する。
ノズル4と回転体コレクタ5間に高電圧が印加されていない状態では、ポリマー溶液は、ノズル4の先端の紡糸口4aの先端部において、表面張力で留まっている。紡糸口4aと回転体コレクタ5との間に、例えば数kV〜30kVの高電圧を印加すると、紡糸口4a先端のポリマー溶液の液滴は+に帯電し、異極(またはアース電位)に帯電している回転体コレクタ5に向かう静電力により吸引される。静電力が表面張力よりも越えると、ポリマー溶液の紡糸ジェット8が回転体コレクタ5に向かって連続的に噴射される。
回転体コレクタ5は、高速回転により、紡糸空間において螺旋軌道を描いている紡糸ジェット8を、直線的に巻き取る。このとき、ノズル4を回転体コレクタ5の回転軸5aの長手方向に往復動させることにより、所定の長さの範囲で、極細繊維を巻き取ることができる。または、回転体コレクタ5を回転軸5aの長手方向に往復動させても良い。
上述したように、回転体コレクタ5を用いた紡糸方法においては、極細繊維の1層目を巻き取るときには極細繊維の電荷はアース電位である回転体コレクタ5に接触したときに放電して+の電荷は失われるが、2層目、3層目と積層していくと、極細繊維自体は絶縁体であるので、+電荷は完全には消失せずに残留する。そのため、先に回転体コレクタ5上に紡糸した極細繊維と新たに紡糸された極細繊維が反発しあって、配向が乱れ、一方向に揃った繊維が得られない。本実施の形態においては、回転体コレクタ5に対して、静電除去装置7から、マイナスイオンを照射しているため、2層目、3層目と積層されていく絶縁体である極細繊維の+電荷が中和され、電荷が消失するため、同極性の電荷の反発は発生せず、揃った配向の一方向極細繊維の集積体である金属光沢繊維集合体が得られる。
なお、円筒状の回転体コレクタ5に代えて、ベルトコンベア状のコレクタとすることにより、面積の大きな金属光沢繊維集合体を製作することができる。
また、配向性を揃えるための手段としては、静電除去装置の他、あるいは静電除去装置と共に、次の手段を用いることができる。
(1)紡糸口4aから回転体コレクタ5に至る紡糸空間の電界を制御する電極板等の電界制御手段。
(2)回転体コレクタ5の回転により生じる回転体コレクタ表面の空気流によって、ノズルから吐出される紡糸ジェットの軌道が乱されることを抑制する空気流制限手段。
本実施の形態では、金属光沢繊維集合体を製造する方法として、エレクトロスピニング法を用いた例を示したが、それ以外の方法でも、本発明の金属光沢繊維集合体を製造できる方法であれば、採用することができることは言うまでもない。
本発明は、配向性の高い極細繊維からなる金属光沢繊維集合体およびその製造方法として、装飾の分野、服飾の分野、人工皮膚等の再生医療工学の分野等の広い分野において利用することができる。
本発明の実施の形態に係る金属光沢繊維集合体の斜視図である。 本発明の実施の形態に係る金属光沢繊維集合体製造装置の基本的構成を示す正面図である。 本発明の実施の形態に係る金属光沢繊維集合体製造装置の基本的構成を示す側面図である。
符号の説明
S 金属光沢繊維集合体
F 単繊維
1 シリンジ
2 シリンジポンプ
3 溶液供給チューブ
4 ノズル
4a 紡糸口
5 回転体コレクタ
5a 回転軸
6 高圧電源
7 静電除去装置
8 紡糸ジェット

Claims (3)

  1. 繊維径5μm以下の極細繊維が一方向に配向性をもって幅方向および厚み方向に集成されている金属光沢繊維集合体。
  2. 厚みは前記極細繊維の繊維径の2倍以上である請求項1記載の金属光沢繊維集合体。
  3. 極細繊維原料を溶剤に溶かした溶液から繊維が引き出される部位である溶液離脱部位とコレクタ間に高電圧を印加し、前記溶液離脱部位から、荷電された前記溶液を前記コレクタに向かって噴射、吸引する際に、前記コレクタ表面に、一方向に並んだ極細繊維を、所定の幅、所定の厚みに集成することを特徴とするエレクトロスピニング法を用いた金属光沢繊維集合体の製造方法。
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