JP2009102548A - アルミホイール用紫外線硬化型粉体塗料組成物及びアルミホイールの塗装方法 - Google Patents

アルミホイール用紫外線硬化型粉体塗料組成物及びアルミホイールの塗装方法 Download PDF

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Abstract

【課題】粉体塗料における塗膜外観及び長期密着性の改善を図った粉体塗料組成物を提供し、更に、密着性、外観に優れた塗膜を有する塗膜を形成することができるアルミホイールの塗装方法を提供する。
【解決手段】不飽和基含有ポリエステル樹脂、長波長領域において活性である少なくとも1種の光反応開始剤(T−1)、短波長領域において活性である少なくとも1種の光反応開始剤(T−2)、リン含有化合物(D)及び/又はリン含有化合物で変性された樹脂(E)並びに、体質顔料(F)を含有する粉体塗料粒子からなるアルミホイール用紫外線硬化型粉体塗料組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、アルミホイール用紫外線硬化型粉体塗料組成物及びアルミホイールの塗装方法に関する。
粉体塗料による塗装は、種々の分野において使用されているが、その大部分が熱硬化性のものである。しかし、熱硬化において必要とされるエネルギー量は大きく、一定の処理時間を確保するため、熱処理のためのラインも大規模なものとなっていた。更に、熱硬化型の粉体塗料組成物は、加熱によるフロー時に同時に硬化反応が進行するため塗膜の粘度が上昇する。このため、粉体と粉体の間の空隙や粉体と被塗物との間の空隙に存在する空気が塗膜中に気泡として残存しやすく、これによって外観不良を生じてしまう。高いレベルの塗膜外観が要求される用途においては、このような気泡の残存を抑制するのは重要な課題である。
熱以外の方法によって硬化させる粉体塗料として、紫外線等のエネルギー線照射によって硬化させるエネルギー線硬化型の粉体塗料が知られている(特許文献1〜3等)。しかし、これらの粉体塗料組成物は、密着性が不充分であることから密着性の改善が要求されていた。特に、長期間使用によって密着性が経時的に悪化しやすいという問題があった。
粉体塗料の用途の一例として、アルミホイールのプライマー塗装を挙げることができる。アルミホイールの塗装は、粉体塗料によるプライマー塗装工程と上塗り塗装工程とを行うことが一般的である。このような粉体塗料によるプライマー塗装工程は、通常熱硬化性の粉体塗料によって行われている(例えば、特許文献4等)。
しかし、成型されたアルミニウム基材は、高温での処理を行うと強度が低下してしまうという問題を有する。このため、硬化工程における熱処理を低減させることが望まれている。更に、熱硬化において必要とされるエネルギー量は大きく、一定の処理時間を確保するため、熱処理のためのラインも大規模なものとなっていた。更に、アルミホイール塗装は高いレベルの塗膜外観が要求されるから、気泡の残存を抑制するのは重要な課題である。
特許文献5には、熱硬化型のアルミホイール用粉体プライマーにおいて、酸性リン酸基含有アクリル系共重合体を使用して付着性を改善することが記載されている。しかし、このような方法によっても、初期密着性は改善されるものの、長期間使用後の塗膜密着性が不充分である。
特開平7−126554号公報 特表2001−502744号公報 特開2004−10734号公報 特開平6−210241号公報 特開2002−138246号公報
本発明は、上記に鑑み、粉体塗料における塗膜外観及び長期密着性の改善を図った粉体塗料組成物を提供することを目的とするものであり、更に、密着性、外観に優れた塗膜を形成することができるアルミホイールの塗装方法を提供することも目的とするものである。
本発明は、不飽和基含有ポリエステル樹脂、長波長領域において活性である少なくとも1種の光反応開始剤(T−1)、短波長領域において活性である少なくとも1種の光反応開始剤(T−2)、リン含有化合物(D)及び/又はリン含有化合物で変性された樹脂(E)並びに、体質顔料(F)
を含有する粉体塗料粒子からなることを特徴とするアルミホイール用紫外線硬化型粉体塗料組成物であって、
上記不飽和基含有ポリエステル樹脂は、以下に示す不飽和基含有ポリエステル樹脂(A)0〜30質量%、及び、以下に示す不飽和基含有ポリエステル樹脂(B)70〜100質量%からなるものであり:
上記ポリエステル樹脂(A)は、グリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレートと、以下の(a)及び(b)からなる群から選ばれる少なくとも1の末端カルボキシル基を含むポリエステルとの反応生成物;
(a):(a1)(a.1.1)テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又は1,12−ドデカン二酸であるジカルボン酸85〜100モル%、及び、
(a.1.2)4〜14個の炭素原子を有する上記(a.1.1)以外の脂肪族、脂環式又は芳香族ジ又はポリカルボン酸0〜15モル%を含む酸成分、
(a2)(a.2.1)2〜12個の炭素原子を有する飽和直鎖脂肪族ジオール85〜100モル%、及び、
(a.2.2)2〜15個の炭素原子を有する少なくとも1種の(a.2.1)以外の脂肪族又は脂環式ジ又はポリオール0〜15モル%を含むアルコール成分の反応生成物であるポリエステル
(b):(b1)(b.1.1)4〜14個の炭素原子を有する飽和直鎖脂肪族ジカルボン酸の1種85〜100モル%、及び、
(b.1.2)0〜15モル%の4〜14個の炭素原子を有する少なくとも1種の上記(b.1.1)以外の脂肪族、脂環式又は芳香族ジ又はポリカルボン酸を含む酸成分、
(b2)(b.2.1)1,4−シクロヘキサンジオール又は1,4−シクロヘキサンジメタノール85〜100モル%、及び、
(b.2.2)2〜15個の炭素原子を有する少なくとも1種の上記(b.2.1)以外の脂肪族又は脂環式ジ又はポリオール0〜15モル%を含むアルコール成分、
の反応生成物であるポリエステル、
上記不飽和基含有ポリエステル樹脂(B)は、グリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレートと末端カルボキシル基を含むポリエステル(c)との反応生成物;
(c):(c1)(c.1.1)テレフタル酸又はイソフタル酸40〜100モル%、並びに、
(c.1.2)0〜60モル%の、4〜14個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式ポリカルボン酸、及び、上記(c.1.1)以外の芳香族ジ又はポリカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1の単量体を含む酸成分、
(c2)(c.2.1)35〜100モル%のネオペンチルグリコール、及び(c.2.2)0〜65モル%の、2〜15個の炭素原子を有する、ネオペンチルグリコール以外の脂肪族ジ又はポリオール及び2〜15個の炭素原子を有する脂環式ジ又はポリオールからなる群から選択される少なくとも1のアルコール成分の反応生成物であるポリエステル、であり、
上記リン含有化合物(D)は、下記一般式(I);
Figure 2009102548
(式中、Rは水素、ハロゲン、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基及びCH=CH−より成る群から選ばれ;Rは水素、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基及び1〜8個の炭素原子を有するハロアルキル基より成る群から選ばれ;AはRO−及び(RO)−より成る群から選ばれ、ここでRは1〜9個、の炭素原子を含んでいる脂肪族又は脂環式アルキレン基であり;Rは1〜7個の炭素原子を有するアルキレン基であり;nは2〜10の整数であり;mは1又は2である。)
で表される化合物であり、
上記リン含有化合物で変性された樹脂(E)は、ポリエステル樹脂を上記一般式(I)で表されるリン含有化合物で変性したものであることを特徴とするアルミホイール用紫外線硬化型粉体塗料組成物である。
上記アルミホイール用紫外線硬化型粉体塗料組成物は、更に、アクリロイル基含有フェノキシ樹脂及び/又はメタクリロイル基含有フェノキシ樹脂(C)を不飽和基含有ポリエステル樹脂100質量%に対して10〜50質量%含有するものであることが好ましい。
上記アクリロイル基含有フェノキシ樹脂及び/又はメタクリロイル基含有フェノキシ樹脂(C)は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、ビスフェノールA系エポキシ樹脂及びノボラック系エポキシ樹脂から選択されるグリシジル基含有ポリフェノキシ樹脂との反応生成物であることが好ましい。
上記粉体塗料粒子は、体積平均粒子径が5〜40μmであることが好ましい。
上記アルミホイール用紫外線硬化型粉体塗料組成物は、更に、無機微粒子及び平均粒子径が0.001〜2μmである架橋又は非架橋の有機樹脂微粒子からなる群から選択される少なくとも1の流動性付与剤を含有することが好ましい。
上記体質顔料は、体積平均粒子径が0.1〜30μmであり、その含有量が粉体塗料粒子100質量%中、5〜40質量%であることが好ましい。
本発明はまた、基材上に上述のアルミホイール用紫外線硬化型粉体塗料組成物を塗布する工程(1)、上記工程(1)によって形成された塗膜を予備加熱してフローさせる工程(2)、及び、上記工程(2)後の塗膜にエネルギー線を照射する工程(3)からなることを特徴とするアルミホイールの塗装方法でもある。
上記アルミホイールの塗装方法は、上記工程(3)によって形成された塗膜上に水系若しくは溶剤系のメタリックベース塗料を塗装する工程(4)、及び、上記工程(4)によって形成された塗膜上に水系、溶剤系若しくは粉体系のクリヤー塗料を塗装する工程を更に有するものであることが好ましい。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のアルミホイール用紫外線硬化型粉体塗料組成物は、上記組成を有し、エネルギー線による硬化を行うことができるものであり、エネルギー線による硬化を行ったときに、均一な硬化を図ることができ、密着性も良好なものである。硬化時に気泡の塗膜中への残存も抑制することができる。
エネルギー線硬化型の粉体塗料は、塗装に際して硬化しない程度の温度で粉体状の塗料をフローさせる工程を有する。エネルギー線硬化型の粉体塗料組成物は、その際の加熱による粘度上昇を抑制することができるため、気泡が塗膜中から抜けやすく、塗膜中の気泡の残存を低減することができるものである。このように気泡の残存が抑制されたものであることから、優れた外観が得られるので、アルミホイール用の塗装等のように、高水準の塗膜外観が要求される用途に特に適しているものである。
更に、エネルギー線硬化型の粉体塗料は、塗膜形成時に熱によるアルミニウム基材の物性低下(例えば、アルミニウムが脆化することによるワレ等)を低減することができる点でも、優れた性質を有する。このため、アルミホイール等のアルミニウム系基材の塗装に適したものである。また、アルミニウム基材に対する密着性においても優れた性質を有するものであることから、このような観点でもアルミホイールの塗装に適したものである。
従来の紫外線硬化型粉体塗料組成物の塗膜は密着性が不充分であった原因について本発明者らが検討したところ、塗膜の硬化ムラが原因であることが明らかとなった。すなわち、従来の紫外線硬化型の粉体塗料組成物は、塗膜表面においては充分に硬化させることができるが、塗膜内部の硬化性が充分ではなかった。これは、エネルギー線が樹脂によって吸収されてしまい、塗膜内部における硬化が不充分になりやすい、ということによるものであると推測される。
塗膜の密着性は、被塗物表面と塗膜の界面における硬化反応の反応度と関係があると推測され、この反応度が低い場合には密着性が低下する原因となると推測される。このような問題は、特に粉体塗料によって塗装を行う場合に顕著なものとなる。粉体塗料によって形成された塗膜は、溶剤系や水系塗料によって形成された塗膜よりも厚膜(例えば、20〜100μm)であることが多い。このため、エネルギー線が塗膜内部まで充分に到達せず、特に塗膜内部での硬化が不充分となりやすい。よって、上記問題点は、粉体塗料において特に顕著なものとなるのであると推測される。
上記長波長領域において活性である少なくとも1種の光反応開始剤(T−1)及び短波長領域において活性である少なくとも1種の光反応開始剤(T−2)を併用すると、従来よりも均一に塗膜全体を硬化させることができる。このように、塗膜全体の均一な硬化を得ることによって密着性が顕著に改善されるものと推測される。
また、本発明の粉体塗料組成物は、リン含有化合物(D)及び/又はリン含有化合物で変性させた樹脂(E)を更に含有するものであるため、塗装後の塗膜密着性を向上させることができる。このため、本発明の粉体塗料組成物より形成される塗膜は、形成時から長期間にわたって塗膜密着性を保持することができるものである。
本発明の粉体塗料組成物は、2種以上の光反応開始剤(T)を含有する粉体塗料粒子からなるものである。上記光反応開始剤(T)は、粉体塗料組成物の硬化反応を進行させるうえで必須成分である。しかし、粉体塗料組成物によって形成される塗膜は、溶剤系塗料や水系塗料によって形成される塗膜より厚膜となる。このため、光反応開始剤を一種のみ添加した場合は、塗膜の表面のみ硬化反応が進行したり、内部のみ硬化反応が進行したりする。
より具体的には、紫外線長波長領域320〜450nmで紫外線の吸収能を有することによって光反応を開始させるような開始剤は、塗膜内部を硬化させやすい傾向があり、一方、短波長領域100〜320nmで紫外線の吸収能を有することによって光反応を開始させるような開始剤は、塗膜表面を硬化させやすい傾向がある。通常、不飽和結合による光硬化反応は、100〜450nmの波長領域の光を吸収することによって生じる。しかし、これらの全領域に吸収域を有する開始剤は知られていない。よって、2種類の開始剤を組み合わせて使用することによって、初めて塗膜全体を均一に硬化させることができるものである。
上記長波長領域において活性である光反応開始剤(T−1)は、0.1%以上の含有率で、320〜450nmの領域における紫外線吸収能を有するものが好ましい。このような性質を有する紫外線吸収剤としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社より「IRGACURE819」という商品名で販売されているビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドを挙げることができる。図1に上記「IRGACURE819」の吸収スペクトルを示す。その他にも、BASF社より「Lucirin TPO」という商品名で販売されている2、4、6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド等を挙げることができる。
上記短波長領域において活性である光反応開始剤(T−2)は、0.1%以上の含有率で、100〜320nmの領域における紫外線吸収能を有するものが好ましい。このような性質を有する紫外線吸収剤としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社より「IRGACURE2959」という商品名で販売されている1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等を挙げることができる。また、この他、「IRGACURE184」(商品名、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)や、「IRGACURE651」(商品名、2,2−ジメトキシ−1,2ジフェニルエタン−1−オン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)も挙げることができる。図2、図3及び図4にそれぞれ上記「IRGACURE2959」、「IRGACURE184」及び「IRGACURE651」の吸収スペクトルを示す。
なお、上記光反応開始剤(T−1)及び(T−2)は、それぞれ少なくとも上述した波長域において紫外線吸収能を有するものであれば、実際の紫外線吸収能を有する波長域が互いに重なっていてもよい。
2種類の光反応開始剤の使用比率は、(T−1)/(T−2)(質量比)=0.5〜2の割合であることが好ましい。上記範囲とすることによって、塗膜の均一な硬化を図ることができる点で望ましい。
上記光反応開始剤の配合量は、不飽和基含有樹脂及び光反応開始剤を含有する粉体塗料粒子の全量に対して、1〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。1質量%未満では硬化速度が遅いおそれがあり、逆に10質量%を超える量を使用しても硬化速度の向上はみられず、硬化塗膜の物性を損なうおそれがあるので好ましくない。なお、ここでの配合量は、上記(T−1)及び(T−2)の合計量である。
本発明の粉体塗料組成物は、リン含有化合物(D)及び/又はリン含有化合物で変性された樹脂(E)を含有する粉体塗料粒子からなるものである。上記リン含有化合物(D)及び/又はリン含有化合物で変性された樹脂(E)を配合することによって、塗膜と基材との密着性が向上する。特に、上記リン含有化合物(D)及び/又はリン含有化合物で変性された樹脂(E)を含有する粉体塗料粒子からなる粉体塗料組成物は、塗装後の初期段階における塗膜密着性を向上させる効果が高い。このため、長期間での塗膜密着性を改善する効果が大きい本発明の粉体塗料組成物において、上記リン含有化合物(D)及び/又はリン含有化合物で変性された樹脂(E)を併用すると、初期から使用中における長期間にわたって塗膜密着性を保持することができる。
上記リン含有化合物(D)は、特に限定されず、例えば、リン酸、並びにホスフィン酸、ホスホン酸及びリン酸の有機誘導体等を挙げることができる。上記有機誘導体は、好ましくは末端に位置する少なくとも1個の官能基の存在によって特徴付けられる少なくとも1つの有機部分を有する。このような有機誘導体は飽和していても不飽和であってもよいが、少なくとも1個のオレフィン不飽和単位を有するのが好ましい。
代表的なリン含有化合物を限定することなく挙げると、リン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、メチル−(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、エチルメタクリロイルオキシエチルホスフェート、メチルアクリロイルオキシエチルホスフェート、エチルアクリロイルオキシエチルホスフェート;Rが水素又はメチルであり、そしてRがプロピル、イソブチル、エチルヘキシル、ハロプロピル、ハロイソブチル又はハロエチルヘキシルである式Iの化合物;ビニルホスホン酸、シクロヘキセン−3−ホスホン酸、α−ヒドロキシブテン−2−ホスホン酸、1−ヒドロキシ−1−フェニルメタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシ−1−メチル−1,1−ジホスホン酸、1−アミノ−1−フェニル−1,1−ジホスホン酸、3−アミノ−1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸、アミノ−トリス(メチレンホスホン酸)、γ−アミノプロピルホスホン酸、γ−グリシドオキシプロピルホスホン酸、リン酸−モノ−2−アミノエチルエステル、アリルホスホン酸、アリルホスフィン酸、β−メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、ジアリルホスホン酸、ビス(β−メタクリロイルオキシエチル)ホスホン酸及びアリルメタクリロイルオキシエチルホスホン酸を挙げることができる。
より好ましいリン含有化合物(D)は、下記一般式(I)で表される。
Figure 2009102548
(式中、Rは水素、ハロゲン、1〜8個、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基及びCH=CH−より成る群から選ばれ;Rは水素、1〜8個、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基及び1〜8個、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するハロアルキル基より成る群から選ばれ;AはRO−及びRO)より成る群から選ばれ、ここでRは1〜9個、好ましくは2〜6個の炭素原子を含んでいる脂肪族又は脂環式アルキレン基であり;Rは1〜7個、好ましくは2〜4個の炭素原子を有するアルキレン基であり;nは2〜10の整数であり;そしてmは1又は2、好ましくは1である。)
上記一般式(I)で表される化合物を使用すると、初期密着性の改善水準が顕著に優れている点で好ましいものである。
上記リン含有化合物により変性された樹脂(E)は、例えば、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の各種樹脂をリン含有化合物によって変性した樹脂をいう。特に、上記リン含有化合物(D)において例示した各種化合物を、樹脂中の水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、不飽和基等の各種官能基と反応させることによって得られた樹脂であることが好ましい。
上記リン含有化合物により変性された樹脂(E)は、ポリエステル樹脂を上記一般式(I)で表されたリン含有化合物によって変性した樹脂であることがより好ましい。上記リン含有化合物により変性された樹脂(E)によって変性される基体樹脂は、以下で詳細に説明する不飽和基含有ポリエステル樹脂(A)、不飽和基含有ポリエステル樹脂(B)等を好適に使用することができる。
上記リン含有化合物により変性された樹脂(E)は、例えば、上述した不飽和基含有ポリエステル樹脂(B)に溶融状態、溶液状態等の任意の状態で上記リン含有化合物(D)を添加して、攪拌して反応させることにより得ることができる。上記反応条件としては、140〜160℃で20〜40分間であることが好ましい。
上記リン含有化合物(D)及び/又はリン含有化合物により変性された樹脂(E)は、粉体塗料粒子に対してリン原子換算で合計0.005〜5質量%の割合で配合することが好ましい。上記リン含有化合物(D)及び/又はリン含有化合物の添加量が少なすぎると、初期密着性の改善が不充分となるおそれがあり、過剰であると樹脂の安定性が低下し、耐水性の低下や密着不良という問題を生じるおそれがある。なお、上記リン含有化合物により変性された樹脂(E)が上記不飽和基含有樹脂をリン含有化合物によって変性した樹脂である場合は、単一の樹脂によって不飽和基含有樹脂と上記リン含有化合物により変性された樹脂(E)の双方の性質を兼ねるものであってもよく、このような場合であっても本発明に包含されるものである。
本発明の粉体塗料組成物は、更に、不飽和基含有ポリエステル樹脂を含有する粉体塗料粒子からなるものである。上記不飽和基としては、炭素−炭素二重結合であることが好ましく、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基であることが好ましい。上記不飽和基含有ポリエステル樹脂は、グリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレートと末端カルボキシル基を含むポリエステルとの反応生成物である。
上記不飽和基含有ポリエステル樹脂は、以下に示す不飽和基含有ポリエステル樹脂(A)0〜30質量%、及び、以下に示す不飽和基含有ポリエステル樹脂(B)70〜100質量%からなるものである。
なお、以下、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を指す。また、グリシジル(メタ)アクリレートとは、グリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレートを指す。
上記不飽和基含有ポリエステル樹脂(A)は、グリシジル(メタ)アクリレートと以下の(a)及び(b)からなる群から選ばれる少なくとも1の末端カルボキシル基を含むポリエステルとの反応生成物である。
(a):(a1)(a.1.1)テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又は1,12−ドデカン二酸のジカルボン酸85〜100モル%、及び、
(a.1.2)4〜14個の炭素原子を有する上記(a.1.1)以外の脂肪族、脂環式又は芳香族ジ又はポリカルボン酸0〜15モル%を含む酸成分、
(a2)(a.2.1)2〜12個の炭素原子を有する飽和直鎖脂肪族ジオール85〜100モル%、及び、
(a.2.2)2〜15個の炭素原子を有する少なくとも1種の他の脂肪族又は脂環式ジ又はポリオール0〜15モル%を含むアルコール成分の反応生成物であるポリエステル
(b):(b1)(b.1.1)4〜14個の炭素原子を有する、飽和直鎖脂肪族ジカルボン酸85〜100モル%、及び、
(b.1.2)0〜15モル%の、4〜14個の炭素原子を有する少なくとも1種の上記(b.1.1)以外の脂肪族、脂環式又は芳香族ジ又はポリカルボン酸を含む酸成分、
(b2)(b.2.1)1,4−シクロヘキサンジオール又は1,4−シクロヘキサンジメタノール85〜100モル%、及び、
(b.2.2)2〜15個の炭素原子を有する、少なくとも1種の上記(b.2.1)以外の脂肪族又は脂環式ジ又はポリオール0〜15モル%を含むアルコール成分、
の反応生成物であるポリエステル。
上記(a.1.1)は、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,12−ドデカン二酸のうち、いずれか1を85〜100モル%使用するものである。
上記(a.1.2)4〜14個の炭素原子を有する上記(a.1.1)以外の脂肪族、脂環式又は芳香族ジ又はポリカルボン酸としては特に限定されず、例えば、マレイン酸、フマル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸等を挙げることができる。また、上記(a.1.1)と相違するものであれば、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,12−ドデカン二酸を使用することもできる。これらの酸は、重合反応によってポリエステル樹脂を製造する際には、遊離酸又はその官能基誘導体の形態、特に、酸無水物の形態で用いてもよい。
上記(a.1.2)として、少なくとも3個のカルボキシル基を含むポリカルボン酸(又は酸無水物)、例えば、トリメリット酸(又はその酸無水物)又はピロメリット酸を併用するものであってもよい。上記少なくとも3個のカルボキシル基を含むポリカルボン酸を使用することによって、枝分かれポリエステルとすることができる。上述した各種カルボン酸は、単独で用いても2種以上の混合物として使用してもよいが、好ましくは単独で用いられる。
上記末端カルボキシル基を含むポリエステル(a)のアルコール成分は、85〜100モル%の(a.2.1)2〜12個の炭素原子を有する飽和直鎖脂肪族ジオールの1種を含む。使用されうるジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール等を挙げることができる。なお、上記(a.2.1)は、上記要件を満たす特定の1種類のアルコール成分を85〜100モル%の割合で含有するとの意味である。
上記末端カルボキシル基を含むポリエステル(a)のアルコール成分は、15モル%以下の、2〜15個の炭素原子を有する少なくとも1種の上記(a.2.1)で使用した以外の脂肪族又は脂環式ジ又はポリオール、例えば、上述したもののほか、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール又は水素化ビスフェノールAを含む。枝分かれポリエステルの製造のために、トリヒドロキシル化もしくはテトラヒドロキシル化されたポリオール、例えば、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン又はペンタエリトリトール及びそれらの混合物を使用することが好ましい。
末端カルボキシル基を含むポリエステル(b)の酸成分は、85〜100モル%の、(b.1.1)4〜14個の炭素原子を有する飽和直鎖脂肪族ジカルボン酸を含む。使用されうる酸の例は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸等である。これらの酸は遊離酸又はそれらの官能基誘導体の形態、特に、酸無水物の形態で用いられてよい。なお、上記(b.1.1)は、上記要件を満たす特定の1種類のジカルボン酸成分を85〜100モル%の割合で含有するとの意味である。
末端カルボキシル基を含むポリエステル(b)の酸成分は、15モル%以下の割合で、4〜14個の炭素原子を有する1種以上の上記(b.1.1)以外の脂肪族、脂環式もしくは芳香族ジもしくはポリカルボン酸、例えば、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸をも含む。少なくとも3個のカルボキシル基を含むポリカルボン酸(もしくはその酸無水物)、例えば、トリメリット酸(もしくはその酸無水物)又はピロメリット酸を使用することによって、枝分かれポリエステル樹脂とすることができる。上記ジもしくはポリカルボン酸は単独で用いても又は混合物として用いてもよいが、好ましくは単独で用いられる。
末端カルボキシル基を含むポリエステル(b)のアルコール成分は、85〜100モル%の(b.2.1)1,4−シクロヘキサンジオール又は1,4−シクロヘキサンジメタノールを含む。末端カルボキシル基を含むポリエステル(b)のアルコール成分は、15モル%以下の1種以上の上記(b.2.1)以外の脂肪族もしくは脂環式ジもしくはポリオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び水素化ビスフェノールAをも含んでよい。枝分かれポリエステルの製造のために、トリヒドロキシル化もしくはテトラヒドロキシル化されたポリオール、例えば、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン又はペンタエリトリトール及びそれらの混合物を好適に使用することができる。
上記不飽和基含有ポリエステル樹脂(A)は、ポリエステル1g当たり0.17〜2.0ミリ当量、好ましくは0.35〜1.50ミリ当量の不飽和度を示すことが好ましい。
上記不飽和基含有ポリエステル樹脂(A)は、更に、下記の特性を示すことが好ましい。
(i)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(即ち、GPC)により測定して、ポリスチレン換算で1000〜20,000、好ましくは1400〜8500の数平均分子量(Mn)、
(ii)ASTMスタンダードD 4287−88によりコーン/プレート法(ICI粘度)により測定して、100℃で10,000mPa.s以下の粘度。
上記不飽和基含有ポリエステル樹脂(A)はまた、ASTMスタンダード D 3418−82により、示差走査熱量測定(即ち、DSC)により測定して、60〜150℃の範囲内に明確に規定される融点を有するものであることが好ましい。
上記不飽和基含有ポリエステル樹脂(B)は、グリシジル(メタ)アクリレートと以下に示す末端カルボキシル基を含むポリエステル(c)との反応生成物である。
(c):(c1)(c.1.1)テレフタル酸又はイソフタル酸40〜100モル%、並びに、
(c.1.2)0〜60モル%の、4〜14個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式ポリカルボン酸、及び、上記(c.1.1)以外の芳香族ジ又はポリカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1の単量体を含む酸成分
(c2)(c.2.1)35〜100モル%のネオペンチルグリコール、及び(c.2.2)0〜65モル%の、2〜15個の炭素原子を有する、ネオペンチルグリコール以外の脂肪族ジ又はポリオール及び2〜15個の炭素原子を有する脂環式ジ又はポリオールからなる群から選択される少なくとも1のアルコール成分の反応生成物であるポリエステル。
カルボキシル基を含むポリエステル(c)の酸成分は、40〜100モル%の、好ましくは80〜100モル%のテレフタル酸又はイソフタル酸、及び、0〜60モル%の、好ましくは0〜20モル%の、4〜14個の炭素原子を有する、上記(c.1.1)以外の脂肪族、脂環式もしくは芳香族ジもしくはポリカルボン酸、例えば、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、フタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸を含む。上記(c.1.1)で使用したものと相違していれば、テレフタル酸、イソフタル酸であってもよい。これらの酸は遊離酸又はそれらの官能基誘導体の形態、特に、酸無水物の形態で使用されてよい。少なくとも3個のカルボキシル基を含むポリカルボン酸(もしくはその酸無水物)、トリメリット酸(もしくはその酸無水物)又はピロメリット酸を使用することによって、枝分かれポリエステルを製造することができる。更に、これらのジもしくはポリカルボン酸は単独で用いられても又は混合物として用いられてもよい。
上記カルボキシル基を含むポリエステル(c)のアルコール成分は、35〜100モル%の、好ましくは60〜100モル%のネオペンチルグリコール、及び、0〜65モル%の、好ましくは0〜40モル%の、2〜15個の炭素原子を有する、別の脂肪族もしくは脂環式ジもしくはポリオール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール又はネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートからなる。少なくとも3個のヒドロキシル基を含むポリオール、例えば、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン又はペンタエリトリトールを使用することによって、枝分かれポリエステルを製造することができる。
上記不飽和基含有ポリエステル樹脂(B)は、ポリエステル1g当たり0.17〜1.5ミリ当量、好ましくは0.35〜1.25ミリ当量の二重結合の末端メタクリル不飽和度を示すものであることが好ましい。上記不飽和基含有ポリエステル樹脂(B)は、下記の特性を示すことが好ましい。
(i)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(即ち、GPC)により測定して、約1100〜9000、好ましくは1300〜8500の数平均分子量、
(ii)45〜80℃のガラス転移温度、
(iii)2〜4の官能価。
上記不飽和基含有ポリエステル樹脂(B)はまた、非晶性であることが好ましく、上記ガラス転移温度は、ASTMスタンダード D−3418−82により、示差走査熱量測定(即ち、DSC)により測定して得られる値である。
本発明の粉体塗料組成物に含まれる不飽和基含有ポリエステル樹脂(A)及び不飽和基含有ポリエステル樹脂(B)は、上述したカルボキシル基を含むポリエステル(a)、(b)又は(c)とグリシジル基を有するアクリレート化合物、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等との反応により導入することができる。上記不飽和基含有ポリエステル樹脂(A)及び(B)は、鎖の各末端に架橋可能な(メタ)アクリロイル基を本質的に全て含む鎖から構成されることが好ましい。
上記不飽和基含有ポリエステル樹脂(A)又は上記不飽和基含有ポリエステル樹脂(B)は、上記末端カルボキシル基を含むポリエステルの調製を行い、次いで調製された末端カルボキシル基を含むポリエステルと上記グリシジル基を有するアクリレート化合物とを反応させることによって得ることができる。
上記末端カルボキシル基を含むポリエステル(a)、(b)又は(c)は、1つ以上の段階におけるエステル化によるポリエステルの合成のための公知の方法により調製することができる。
上記末端カルボキシル基を含むポリエステル(a)、(b)又は(c)は、1段階の反応で得るものであっても、2段階の反応で得るものであってもよい。1段階で得る場合は、理論過剰量の1種以上の適切なジもしくはポリカルボン酸と1種以上の適切なジオールもしくはポリオールを一緒に反応させることによって得ることができる。
上記末端カルボキシル基を含むポリエステル(a)、(b)又は(c)を2段階で得るために、末端ヒドロキシル基を含むポリエステルを、1種以上の適切なジもしくはポリカルボン酸と、理論過剰量の1種以上の適切なジオールもしくはポリオールから最初に調製し、そしてその後、このように得られた末端ヒドロキシル基を含むポリエステルを1種以上の他の適切なジもしくはポリカルボン酸によりエステル化し、末端カルボキシル基を含むポリエステル(a)、(b)又は(c)を得る。
上記末端カルボキシル基を含むポリエステル(a)、(b)又は(c)の調製には、一般にスターラー、不活性ガス(窒素)インレット、水冷式コンデンサーに連結した蒸留カラム及び温度調節器に連結した温度計を装備した反応器を用いる。
これらのポリエステルを調製するために用いるエステル化条件は公知の条件であってよく、即ち、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジラウレート又はn−ブチル錫トリオクトエートのような錫から誘導された、又は、テトラブチルチタネートのようなチタンから誘導された通常のエステル化触媒を、反応体の0〜1質量%の割合で用いることができる。更に、必要に応じて、フェノール化合物のIrganox 1010(Ciba−Geigy社製)又はIonol CP(Shell社製)のような酸化防止剤を使用することができる。
ポリエステル化は、一般に、130℃から約180℃〜250℃に徐々に上げていく温度において、最初に標準圧力で、その後、プロセスの各段階の最後に減圧で行われ、これらの条件は、所望のヒドロキシル価及び/又は酸価を示すポリエステルを得るまで維持される。エステル化度は、反応の間に生成した水の量及び得られたポリエステルの性質、例えば、ヒドロキシル価、酸価、分子量及び/又は粘度を決定することによりモニターされる。
このように得られた、上記末端カルボキシル基を含むポリエステル(a)及び(b)は、以下の特性を示すものであることが好ましい。
(i)10〜150mgKOH/g、好ましくは20〜100mgKOH/gの酸価、
(ii)800〜20,000、好ましくは1000〜8500の数平均分子量、(iii)ASTMスタンダードD 3418−82による示差走査熱量測定(即ち、DSC)により決定して、約60〜150℃の明確に規定された融点、 ASTMスタンダードD 4287−88によりコーン/プレート粘度計により175℃で測定して(「ICI粘度」の名称で知られている)、10,000mPa.s未満の溶融状態の粘度、
(iv)2〜3の官能価。
このように得られた上記末端カルボキシル基を含むポリエステル(c)は下記の特性を示すことがより好ましい。
(i)10〜100mgKOH/g、好ましくは20〜70mgKOH/gの酸価、
(ii)800〜9000、好ましくは1000〜8500の数平均分子量、 −好ましくは2〜4の官能価、
(iii)45〜85℃のガラス転移温度、
(iv)ポリエステル1g当たり0〜3.5ミリ当量、好ましくは0〜1.0ミリ当量の二重結合。
不飽和基含有ポリエステル樹脂(A)及び不飽和基含有ポリエステル樹脂(B)は、重縮合の完了時に、上記の反応器中に見られる溶融状態のポリエステルを100〜160℃の温度に冷却させ、そして重合抑制剤、次に、ゆっくりと実質的に等量のグリシジルメタクリレート又はβ−メチルグリシジルメタクリレートを加えることによって調製することができる。
上記不飽和基含有ポリエステル樹脂(A)又は不飽和基含有ポリエステル樹脂(B)の調製のために用いられる操作条件も従来のものであり、即ち、酸/エポキシ反応のための触媒である、2−フェニルイミダゾリンのようなアミン含有誘導体、テトラプロピルアンモニウムクロリド又はテトラブチルアンモニウムブロミドのような第四級アンモニウム化合物、又は、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド又はベンジルトリフェニルホスホニウムクロリドのようなホスホニウム塩、又は、クロムをベースとする触媒を、反応体の0.01〜1.0質量%の割合で用いることができ、そしてフェノチアジンのようなラジカル重合抑制剤、又は、ヒドロキノンタイプの抑制剤を、反応体の0.01〜1.0質量%の割合で添加することができる。
上記付加反応は、一般に100〜160℃の温度で行うことができる。反応の進行度は得られたポリエステルの性質、例えば、ヒドロキシル価、酸価、末端不飽和度及び/又は残存エポキシ基の含有量の測定によりモニターすることができる。
上記不飽和基含有樹脂は、不飽和基含有ポリエステル樹脂(B)であることが好ましく、必要に応じて、不飽和基含有ポリエステル樹脂(A)と混合して使用するものであってもよい。すなわち、本発明の粉体塗料組成物は、上記不飽和基含有樹脂を含有することにより、比較的低温で硬化することができ、溶融状態での流動性、表面外観、表面硬度等が良好で、かつ保存安定性に優れる。これらの性質によって、ホイールの塗装に適した物性が得られる。
不飽和基含有ポリエステル樹脂は、不飽和基含有ポリエステル樹脂(A)を0〜30質量%、及び、不飽和基含有ポリエステル樹脂(B)を70〜100質量%からなるものである。不飽和基含有ポリエステル樹脂(A)の割合が30質量%以上になると、塗料のガラス転移温度が下がり、保存中又は塗装中に塗料が融着してしまうおそれがある。
本発明の粉体塗料組成物は、更に、不飽和基含有ポリエステル樹脂100質量%に対して10〜50質量%の割合で、(メタ)アクリロイル基含有フェノキシ樹脂(C)を含有することが好ましい。(メタ)アクリロイル基含有フェノキシ樹脂(C)を添加することによって、硬化反応性及び基材への密着性を更に向上させることができる。上記(メタ)アクリロイル基含有フェノキシ樹脂(C)の含有割合は、10〜35質量%であることがより好ましい。
上記(メタ)アクリロイル基含有フェノキシ樹脂(C)は、(メタ)アクリル酸と、ビスフェノールA系エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシ樹脂等のグリシジル基含有ポリフェノキシ樹脂との反応で得ることができる。ビスフェノールA系エポキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンの反応から調製でき、ここでは過剰のエピクロロヒドリンがエポキシ樹脂の数平均分子量を決定する(W.G.Potter:エポキシド樹脂、Springer−Verlag、ニューヨーク1970;Y.田中等(eds.):エポキシ樹脂化学とテクノロジー、Marcel Dekker、ニューヨーク1973、2章、ページ9−134)。ノボラック系樹脂としては、フェノール系、クレゾール系等を挙げることができ、酸触媒によるホルムアルデヒドとフェノール又はクレゾールとの縮合反応で調製できる。エピクロロヒドリンを用いるノボラック系樹脂のエポキシ化でエポキシノボラックが供給される。商業的に利用可能なエポキシ樹脂、例えばShell社製Epikote 1055、Ciba社製のAraldite GT7004又はAraldite ECN9699、Dow、その他からのD.E.R.664等は、典型的なグリシジル基含有ポリフェノキシ樹脂であり、(メタ)アクリロイル基含有フェノキシ樹脂(C)の調製に利用できる。
上記(メタ)アクリロイル基含有フェノキシ樹脂(C)の調製は、一般に、攪拌機、酸素入口、(メタ)アクリル酸入口、温度調節器に接続している温度計を装備した従来の反応器によって行うことができる。温度100〜150℃を示すエポキシ樹脂に、エポキシ樹脂の質量基準で、例えば、0.01〜1%の割合のラジカル重合阻害剤を添加する。次いで、実質上当量の(メタ)アクリル酸を、融解しているエポキシ樹脂に、ゆっくり添加する。酸/エポキシ反応用の触媒をオプションで使用できる。そのような触媒の例としては、アミン(例えば、2−フェニルイミダゾリン)、アンモニウム塩(例えば、臭化テトラブチルアンモニウム又は塩化テトラプロピルアンモニウム)、等を挙げることができる。これらの触媒は、エポキシ樹脂質量基準で、好ましくは、0.05〜1%の量で使用される。反応の進行程度は、得られる(メタ)アクリロイル基含有ポリフェノキシ樹脂の酸価、ヒドロキシル価及び不飽和度等の諸性質の定量でモニターすることができる。
上記(メタ)アクリロイル基含有フェノキシ樹脂(C)は、好ましくは、不飽和度0.2〜6.0、特に好ましく0.5〜4.5ミリ当量二重結合/樹脂gを示し、及び付加的に、特に好ましい実施態様は以下の特性を有する。
(i)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(Mn)が、500〜5,000、好ましくは、650〜3,500;
(ii)ASTM D3418−82に従って、示差走査熱量計(DSC)により決定したガラス転移温度(Tg)が、30〜80℃;そして、ASTM D 4287−88に従って円錐/プレート粘度計で、200℃で測定した融解状態の粘度(ICI粘度の名称で知られている)が、1〜25000mPa.sである。
本発明の粉体塗料組成物に含有される粉体塗料粒子は、主成分として上記不飽和基含有ポリエステル樹脂の他に、表面調整剤を含有するものであってもよい。上記表面調整剤としては、アクリル系樹脂からなるものであることが好ましい。
上記アクリル系樹脂は、主成分として用いる上記不飽和基含有樹脂との合計100質量部に対して、0.01〜5質量部、好ましくは、0.05〜3質量部、更に好ましくは、0.1〜2質量部の範囲のものが好適である。0.01質量部より少ないと十分に表面調整を行うことができず、外観不良の確率が高くなり、5質量部を超えると、塗料のブロッキング性が低下するおそれがある。
上記粉体塗料粒子は、更に、体質顔料(F)を含有するものである。
上記体質顔料(F)としては、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム等を挙げることができる。
上記体質顔料(F)は、体積平均粒子径が0.1〜30μmであることが好ましい。0.1μm未満であると、仕込み作業が低下するおそれがある。30μmを超えると、粗粒が多くなり、外観が低下するおそれがある。上記体積平均粒子径は、0.2〜5μmであることがより好ましい。上記体積平均粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定機(日機装社製)を用いて湿式方法で測定した値である。
上記体質顔料の含有量は、粉体塗料粒子100質量%中、5〜40質量%であることが好ましい。5質量%未満であると、金属製品との密着性が低下するおそれがある。40質量%を超えると、外観が低下するおそれがある。
上記含有量は、10〜30質量%であることがより好ましい。
上記粉体塗料粒子は、必要により上記体質顔料以外の顔料及び/又は添加剤を含有していても良い。上記顔料を含有する場合、その種類は特に限定されず、具体的には、二酸化チタン、ベンガラ、黄色酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン系顔料、アゾ系顔料等の着色顔料、各色のメタリック顔料、各色のパール顔料、金属粉末及びそれに表面処理を施したもの等を挙げることができる。また、光沢を低下させるために、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、長石、ワラストナイト等の無機系艶消し剤や、有機微粒子からなる有機系の艶消し剤を含むことが好ましい。上記艶消し剤の体積平均粒子径は、3〜30μmであることが好ましい。
上記添加剤としては、粉体塗料において汎用されている添加剤を使用することができ、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤(例えば、Ciba社からのTinuvin 144)、Resiflow PV5(Worlee社)、Modaflow(Monsanto社)、Acronal 4F(BASF社)又はCrylcoat 109(UCB社)のような流動性調節剤、ベンゾインのような脱泡剤等である。上記添加剤としては、例えば荷電制御剤、可塑剤、酸化防止剤、ワキ防止剤等が挙げられる。これらのものについては粉体塗料に通常用いられているものを使用することができる。
本発明の粉体塗料組成物には、更に、ポリテトラフルオロエチレン変性ポリエチレンワックス(例えば、Lubrizol社からのLanco Wax TF 1830)、ポリエチレンワックス(例えば、BYK Chemie社からのCeraflour 961)、ポリプロピレンワックス(例えば、Lubrizol社からのLanco Wax PP1362)、ポリアミドワックス(例えば、ELF Atochem社からのOrgasol 3202 D NAT)、有機シリコーン(例えば、Protex社からのModarez S304P)等々、又はそれらのブレンドのような多種多様な被覆性改質物質によって表面を被覆したものであってもよい。
上記樹脂と開始剤、添加剤を含有する粉体塗料粒子の体積平均粒子径は、5〜40μmであることが好ましい。より好ましくは10〜30μmである。5μm未満であると、粉体塗料の搬送性が低下することにより、塗装作業性に問題が生じ、塗着効率の低下をきたすおそれがある。逆に、体積平均粒子径が40μmを超えると、塗膜の平滑性が低下し、塗膜外観が悪化するおそれがある。なお、上記体積平均粒子径は、粒度分析計(例えば、日機装社製、マイクロトラックHRA X−100)により測定することができる。
本発明の粉体塗料組成物は、上記粉体塗料粒子に加えて、流動性付与剤として、無機微粒子又は有機微粒子を更に含有するものであってもよい。このような微粒子を含有することにより、搬送性とブロッキング性を更に向上させることができるからである。
上記無機微粒子としては、疎水性シリカ、親水性シリカや酸化アルミニウム、酸化チタン等が挙げられる。この無機微粒子の市販品として、例えば、AEROSIL 130、AEROSIL 200、AEROSIL 300、AEROSIL R−972、AEROSIL R−812、AEROSIL R−812S、二酸化チタンT−805、二酸化チタンP−25、Alminium Oxide C(日本アエロジル社製)、カープレックスFPS−1(塩野義製薬社製)等を例示することができる。上記無機微粒子の添加量は、付与される効果と塗膜の平滑性及び塗着効率の観点から、上記不飽和基含有樹脂を主成分とする粒子100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。0.05質量部未満であると効果が小さくなり、10質量部を越えると塗膜の平滑性が低下したり艶引けが発生したりするおそれがある。
一方、有機微粒子としては、粒子径が0.001〜2μm、好ましくは0.01〜0.5μmの架橋又は非架橋の有機樹脂微粒子が挙げられる。また、その有機樹脂としては、ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができるが、アクリル樹脂が工業的に生産することが容易である点から好ましい。
上記非架橋の有機樹脂微粒子は、例えば乳化重合や懸濁重合により直接製造したり、溶液重合や塊重合等により樹脂を製造し、これを粉砕して分級することにより得られるものである。なお、上記非架橋の有機樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg)は、50〜150℃が好ましく、70〜120℃の範囲にあることがより好適である。非架橋の有機樹脂微粒子を用いると、粉体塗料に熱が加えられるとこの有機樹脂微粒子自身もフローして外観の優れた塗膜が得られる。Tgが50℃未満では貯蔵、輸送中等における粉体塗料の耐ブロッキング性能を十分に確保することが難しくなるし、またTgが150℃を超えるものはあまり実用性がないからである。上記非架橋の有機樹脂微粒子の平均粒子径は、0.001〜2μmが好ましく、0.01〜0.5μmの範囲内がより好ましい。またその添加量は、上記不飽和基含有樹脂を主成分とする粒子100質量部に対し、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部程度である。これは非架橋の有機樹脂微粒子の平均粒子径とその添加量とが比例関係にあって、有機樹脂微粒子の工業的な製造の容易さから粒子径の下限は約0.001μm程度が好ましく、その場合の粒子添加による効果発現には0.05質量%程度の添加量が好ましいこと、粒子径が大になるにつれ耐ブロッキング性を付与するために要する樹脂微粒子の添加量も増大すること、粒子径が2μmを超えると粉体塗料の流動性が悪くなり、塗装ガンによる粉体塗料の塗装時に、塗装ガン先端部分に粉体塗料粒子が付着して凝集しやすくなり、凝集粒子の飛散による塗膜のヘコミ等が生じ、高外観塗膜を得るとの発明目的が達成され難くなるので、粒子径は最大2μmに制限されること、その場合の添加量は粉体塗料に対して最大約10質量%まででなければならないことの知見に基づくものである。
上記架橋した有機樹脂微粒子は、三次元構造を有す有機樹脂の微粒子で、実質的に溶剤に溶解せず、また焼付け温度程度の加熱では溶融しないものである。
この架橋した有機樹脂微粒子は、溶液重合や塊重合等により樹脂を製造し、これを粉砕して分級することにより得ることができるものであるが、乳化重合や懸濁重合により直接製造して得られたものや、非架橋の有機樹脂微粒子形成後に架橋反応を行って得られたものであってもよい。
上記架橋した有機樹脂微粒子は平均粒子径が0.001〜2μmであることが好ましく、2μmをこえると塗膜時にブツとなりやすく、0.001μm未満のものではあまり効果がないおそれがある。その量としては、上記不飽和基含有樹脂を主成分とする粒子100質量部に対して、0.05〜10質量部、好ましくは、0.1〜5質量部であることが好適である。0.05質量部未満では耐ブロッキング性改良の効果がなく、逆に10質量部を超えると外観が低下するおそれがある。
上記架橋した有機樹脂微粒子は、非架橋の有機樹脂微粒子と同様に、ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等から得られたものが好ましいが、中でもアクリル樹脂が工業的に生産することが容易である点から好ましい。
次に本発明の粉体塗料組成物の製造法を説明する。
まず、上記粒子の主要構成成分である樹脂組成物、開始剤、リン含有化合物及び/又はリン含有化合物で変性された樹脂、体質顔料、並びに、必要により、上記表面調整剤や、その他添加剤等を所定量仕込んで、混合機により均一に混合する。その混合機としては、ヘンシェルミキサー、ボールミル、バンバリーミキサー等の一般的なものが用いられる。次に得られた混合物を溶融混練する。ここでは、エクストルーダーや熱ロール等の混練機により加熱し、溶融する。次にこの溶融混練工程で得られたペレットをアトマイザーやジェットミル等の粉砕機を用いて粉砕する。また、上記成分を溶融混練して混合した後、得られた混合物をスプレードライ法により直接粉末状の粒子を得ることもできる。このようにして得られる本発明の粉体塗料組成物の体積平均粒子径は5〜40μmであることが好ましい。このような範囲とするために、巨大粒子や微小粒子を除去して粒度分布を調整するために分級を行うことが好ましい。このようにして得られた粒子は、そのままで粉体塗料として利用できるが、更に上記微粒子を含有する粉体塗料としてもよい。上記微粒子は、ペレット粉砕前に添加してもよく、粉砕後又は、分級後の粒子に添加し、スーパーミキサー等の混合機により、攪拌混合してもよい。このような添加方法により、上記微粒子は、通常上記粒子の表面に付着していたり、その粒子の表面に若干埋めこまれた状態で、上記粉体塗料中に存在しているものと考えられる。
本発明の粉体塗料は、特にアルミホイール用のプライマー塗料としての使用に適している。本発明のプライマーによって塗装されるアルミホイール(被塗物)は、乗用車、オートバイ、トラック及びワゴン車等の自動車用チューブやタイヤ等の取り付け部材である自動車用ホイールであり、アルミニウムを主成分とし、又は、更にマグネシウムやケイ素を含む合金からなっており、軽量化及び意匠性等の目的で任意の形状に成型加工したものが適用できる。ショットブラストした凹凸状の鋳肌面や切削した平滑面等が混在するアルミホイールも包含される。アルミホイールは、プライマーに先立って、リン酸塩等のノンクロム系化成処理剤でその表面をあらかじめ処理しておくことが好ましい。
本発明の粉体塗料組成物は、被塗装物に対して塗布された後、硬化することにより塗膜を得ることができる。上記被塗装物としては、特に限定されず、具体的には、鉄板、鋼板、アルミニウム板等及びそれらを表面処理した金属板、それを加工してなるもの等の金属製品を挙げることができる。この場合、上記粉体塗料組成物を、上記被塗装物に直接下塗り塗料すなわちプライマーとして塗布し、下塗り塗膜を形成し、その上に中塗り塗料、上塗り塗料を塗装してもよい。上記中塗り塗料は、メタリックベース塗料であることが好ましく、上塗り塗料はクリヤー塗料であることが好ましい。上記メタリックベース塗料、クリヤー塗料は、水性、溶剤系、粉体系等の公知のものを使用することができる。被塗装物がアルミホイールである場合には、上記メタリックベース塗料及びクリヤー塗料による塗装を施すことが好ましい。
上記粉体塗料組成物を塗布する方法としては、特に限定されず、スプレー塗装法、静電粉体塗装法、流動浸漬法等の当業者によってよく知られた方法を用いることができるが、塗着効率の点から、静電粉体塗装法が好適に用いられる。
本発明の粉体塗料組成物を塗布する際の塗装膜厚は、特に限定されないが、20〜200μmに設定することができる。
本発明の粉体塗料組成物を塗装する場合、エネルギー線硬化の前に塗膜をフローさせる目的で予備加熱を行うことが好ましい。上記予備加熱の条件は、硬化に関与する官能基及び硬化促進剤の量により異なるが、例えば、加熱温度は、80〜230℃、好ましくは100〜180℃であり、加熱時間は、上記加熱温度に応じて適宜設定することができが、10分以内であることが好ましい。10分を超えて予備加熱を行うと、硬化反応が進行してしまうおそれがある。
本発明の粉体塗料組成物は、これを被塗装物に静電スプレー塗装や流動層浸漬塗装等の方法で塗布した後、活性エネルギー線を照射することにより硬化させる。活性エネルギー線としては、紫外線を使用することが最も望ましい。紫外線照射を行う時の光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯等が用いられる。照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、その他の条件により異なるが、長くとも数十秒であり、通常は数秒である。放射線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の完全を図ることもできる。電子線照射の場合は、50〜1,000KeVの範囲のエネルギーを持つ電子線を用い、2〜5Mradの照射量とすることが好ましい。通常、ランプ出力80〜300W/cm程度の照射源を使用することができる。
このような、被塗装物である基材上に本発明のアルミホイール用紫外線硬化型粉体塗料組成物を塗布する工程(1)、上記工程(1)によって形成された塗膜を予備加熱してフローさせる工程(2)、及び、上記工程(2)後の塗膜にエネルギー線を照射する工程(3)からなることを特徴とするアルミホイールの塗装方法もまた、本発明の一つである。
上記アルミホイールの塗装方法は、上記工程(3)によって形成された塗膜上に水系若しくは溶剤系のメタリックベース塗料を塗装する工程(4)、及び、上記工程(4)によって形成された塗膜上にクリヤー塗料を塗装する工程を更に有していてもよいものである。
本発明のアルミホイール用紫外線硬化型塗料組成物は、密着性が良好であり、塗膜外観にも優れた塗膜を形成することができる。また、特にアルミホイールのプライマー塗装等の金属製品の塗装に適したものである。
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<粉体塗料組成物の製造方法>
合成例1 末端メタクリロイル基を含むポリエステル(A−1)の合成
(第一段階)
191.4部のエチレングリコール、800.6部の1,12−ドデカン二酸および触媒として2.2部のn−ブチル錫トリオクトエートの混合物を4口丸底フラスコに入れる。このフラスコはスターラー、水冷コンデンサーに連結した蒸留カラム、窒素インレットパイプおよび温度調節器に連結した温度計を装備している。この混合物を窒素雰囲気下で攪拌しながら約140℃の温度に加熱し、形成される水を蒸留し始める。その後、反応物が220℃の温度に達するまでゆっくりと加熱を続ける。大気圧での蒸留が止まったときに、0.8部のトリブチルホスフィットを添加し、そして50mmHgの真空を徐々に確立させる。反応を220℃で50mmHgの圧力下でさらに3時間続ける。
このようにして得られた末端カルボキシル基を含むポリエステルは次の性質を示す。
酸価 52mgKOH/g、ヒドロキシル価 2mgKOH/g
(第二段階)
第一段階で得られたポリエステルを140℃に放冷し、そして0.7部のジ−tert−ブチルヒドロキノンおよび4.4部のベンジルトリフェニルホスホニウムクロリドをそれに添加する。111.8部のグリシジルメタクリレートを、その後、この混合物にゆっくりと添加し、そして混合物を酸素下に140℃で1時間攪拌する。末端メタクリロイル基を含むポリエステル(A−1)は得られ、それは次の性質を示す。
酸価 2.0mgKOH/g、ヒドロキシル価 48mgKOH/g、 末端メタクリル不飽和の含有量 0.8ミリ当量/g、100℃におけるICI粘度 150mPa.s、融解温度(DSC、20℃/分)65℃、 Mn(GPC) 2530
合成例2 末端メタクリロイル基を含むポリエステル(A−2)の合成
(第一段階)
502.6部の1,4−シクロヘキサンジメタノール、545.4部のアジピン酸および触媒として2.3部のn−ブチル錫トリオクトエートを合成例1の第一段階に記載した完全な手順により反応させる。
このようにして得られた末端カルボキシル基を含むポリエステルは次の性質を示す。
酸価 31mgKOH/g、ヒドロキシル価 2mgKOH/g
(第二段階)
第一段階において得られたポリエステルを140℃の温度に放冷し、そして0.4部のジ−tert−ブチルヒドロキノンおよび4.6部のベンジルトリフェニルホスホニウムクロリドをそれに加える。その後、70.3部のグルシジルメタクリレートをこの混合物にゆっくりと加え、そして混合物を酸素下にて140℃で1時間攪拌する。末端メタクリロイル基を含むポリエステル(A−2)は得られ、それは次の性質を示す。
酸価 1.7mgKOH/g、ヒドロキシル価 30mgKOH/g、末端メタクリル不飽和の含有量 0.5ミリ当量/g、100℃におけるICI粘度 3600mPa.s、融解温度(DSC、20℃/分) 67℃、 Mn(GPC) 4024
合成例3 末端メタクリロイル基を含むポリエステル(B−1)の合成
(第一段階)
365.8部のネオペンチルグリコールおよび触媒として1.9部のn−ブチル錫トリオクトエートを例1において用いたような丸底フラスコに入れる。この混合物を、攪拌しながら、窒素雰囲気下で約140℃の温度に加熱し、依然として攪拌しながら、460.0部のテレフタル酸および24.3部のアジピン酸を加え、そして混合物を190℃の温度に加熱し、そこで、形成された水の蒸留を始める。その後、反応物が230℃の温度に達するまで、加熱を徐々に続ける。
形成される水の理論量の約95%を回収した後に、透明のポリエステルが得られる。
このようにして得られた末端ヒドロキシル基を含むポリエステルは次の性質を示す。
酸価 2mgKOH/g、ヒドロキシル価 63mgKOH/g
(第二段階)
第一段階において得られた末端ヒドロキシル基を含むポリエステルを200℃に放冷し、そして159.4部のイソフタル酸をそれに加える。その後、反応混合物を徐々に225℃の温度にまで加熱する。この反応混合物を、反応混合物が透明になるまで、この温度に約2時間放置し、0.7部のトリブチルホスフィットをそれに加え、そして圧力を徐々に50mmHgにまで低下させる。反応を減圧下に225℃において更に3時間続ける。
このようにして得られた末端カルボキシル基を含むポリエステルは次の性質を示す。
酸価 47mgKOH/g、ヒドロキシル価 3mgKOH/g、200℃におけるICI粘度 3200mPa.s
(第三段階)
第二段階で得られた末端カルボキシル基を含むポリエステルを150℃に放冷し、そして重合抑制剤として0.7部のジ−tert−ブチルヒドロキノンおよび触媒として4.4部のエチルトリフェニルホスホニウムブロミドを加える。攪拌しながら、107.8部のグリシジルメタクリレートを酸素雰囲気中で約30分間にわたってゆっくりと加える。添加が完了した1時間後に、末端メタクリロイル基を含むポリエステル(B−1)が得られ、それは次の性質を示す。
酸価 1mgKOH/g、ヒドロキシル価 43mgKOH/g、末端メタクリル不飽和の含有量 0.8ミリ当量/g、150℃におけるICI粘度 7600mPa.s、 ガラス転移温度 37℃ (20℃/分の加熱速度で示差走査熱量測定(即ち、DSC)により決定)、融点なし、Mn(GPC) 2532
合成例4 末端メタクリロイル基を含むポリエステル(B−2)の合成
(第一段階)
347.6部のネオペンチルグリコール、14.3部のトリメチロールプロパンおよび1.9部のn−ブチル錫トリオクトエートは反応器に導入される。丸底フラスコの含有分を窒素下に攪拌しながら140℃に加熱し、そして513.2部のテレフタル酸をそれに加える。反応混合物を230℃にする。反応の水は190℃で蒸留し始める。水の理論量の約95%が蒸留されたときに、プレポリマーは透明である。
このようにして得られたヒドロキシル基を含むポリエステルは次の性質を示す。
酸価 4mgKOH/g、ヒドロキシル価 65mgKOH/g
(第二段階)
反応混合物を200℃に加熱し、そして133.2部のイソフタル酸をそれに加える。この反応混合物を225℃にし、ここで、2時間保持する。それは透明であり、そして0.9部のトリブチルホスフィットをそれに加える。225℃および50mmHgの真空下で3時間後、得られたカルボキシル基を含むポリエステルは次の特性を示す。
酸価 47mgKOH/g、ヒドロキシル価 3mgKOH/g、200℃におけるICI粘度 6500mPa.s
(第三段階)
第二段階で得られたポリエステルを150℃に冷却し、そして0.7部のジ−tert−ブチルヒドロキノンおよび4.4部のエチルトリフェニルホスホニウムブロミドをそれに加える。112.1部のグリシジルメタクリレートをゆっくりと30分間にわたってこの混合物に加え、その後、酸素下で150℃で1時間攪拌する。末端メタクリロイル基を含むポリエステル(B−2)が得られ、それは次の性質を示す。
酸価 1mgKOH/g、ヒドロキシル価 46mgKOH/g、末端メタクリル不飽和の含有量 0.8ミリ当量/g、175℃におけるICI粘度 6000mPa.s、 ガラス転移温度(DSC、20℃/分) 46℃、融点なし、 Mn(GPC) 2910
合成例5 メタクリロイル基含有フェノキシ樹脂(C−1)の合成
攪拌機、酸素入口、(メタ)アクリル酸入口及び温度調節器に付属した熱電対を装備した従来の四つ口丸底フラスコに、酸素雰囲気下で、910部のAraldite GT7004(EEWが715〜750および軟化点が95〜101℃のビスフェノール−A−ポリフェノキシ樹脂)を、140℃の温度に加熱した。引き続いて、0.8部の臭化エチルトリフェニルホスホニウムを添加し、0.2部のジ−t−ブチルヒドロキノンを含んでいる90部のアクリル酸の添加を開始した。アクリル酸添加は3時間で終了した。アクリル酸添加終了後、1時間半後に、以下の特性を持つ樹脂が得られた: AN =7mg KOH/g、不飽和度 =1.24meq/g、ICI(200℃)=700mPa.s、Tg(クエンチ済み)(DSC 20°/分)=49℃、Mn(GPC)=1650。
合成例6 メタクリロイル基含有フェノキシ樹脂(C−2)の合成
合成例5と同様に、957部のAraldite GT7077(EEWが1515〜1665および軟化点が125〜135℃のビスフェノール−A−ポリフェノキシ樹脂)を、43部の、0.2部のジ−t−ブチルヒドロキノンを含んだアクリル酸と反応させ、開始させた。反応は0.8部の臭化エチルトリフェニルホスホニウムの添加により触媒作用を受けた。以下の特性を持つ樹脂が得られた: AN =5mg KOH/g、不飽和度 =0.63meq/g、ICI(200℃)=2700mPa.s、Tg(クエンチ済み)(DSC 20°/分)=55℃、 Mn(GPC)=3320。
合成例7 リン含有化合物(D)の合成
攪拌機、酸素用入口、ヒドロキシエチルアクリレート用入口、および温度調節器に取り付けられた熱電対を備える常用の二重壁フラスコ中に、450部のトルエンおよび0.6部のヒドロキノンを装填する。そこで、攪拌しながら162.3部の五酸化リン(phosphorpentoxide)を5分で加える。そこで、397.7部のヒドロキシエチルアクリレートを0.6部のヒドロキノンと一緒に30分の期間にわたってゆっくり加える。その間に温度を70℃未満に保つためにその混合物を冷却する。ヒドロキシエチルアクリレートの添加完了1時間後に、フラスコ内容物を冷却、降温し、そしてエチレン性不飽和リン含有化合物を、回転蒸発器を用いて単離する。
合成例8 リン含有化合物変性ポリエステル樹脂(E)の合成
合成例4で得られた末端メタクリロイル基を含むポリエステル(B−2)96部に合成例7で得られたリン含有化合物(D)4部を加え、150℃で30分攪拌後冷却して末端メタクリロイル基を含むリン含有化合物変性ポリエステル樹脂(E)を得た。
合成例9 架橋した有機樹脂微粒子の製造
撹拌器、窒素導入管、温度制御装置、コンデンサー、デカンターを備えた反応容器に、ビスヒドロキシエチルタウリン134部、ネオペンチルグリコール130部、アゼライン酸236部、無水フタル酸186部およびキシレン27部を仕込み、昇温した。反応により生成する水をキシレンと共沸させ除去した。還流開始より約2時間をかけて温度を190℃にし、カルボン酸相当の酸価が145になるまで撹拌と脱水を継続し、次に140℃まで冷却した。次いで140℃の温度を保持し、バーサティック酸グリシジルエステル(商品名「カージュラE10」シェル社製)314部を30分で滴下し、その後2時間撹拌を継続し、反応を終了させた。得られた両イオン性基を有するポリエステル樹脂は酸価59、ヒドロキシル価90であった。次いで、冷却器、温度制御装置を備えた反応容器に、脱イオン水282部、上記の両イオン性基を有するポリエステル樹脂10部およびジメチルエタノールアミン0.75部を仕込み、撹拌下温度を80℃に保持しながら溶解し、これにアゾビスシアノ吉草酸4.5部を脱イオン水45部とジメチルエタノールアミン4.3部に溶解した液を添加した。次いでメチルメタクリレート70.7部、n−ブチルアクリレート94.2部、スチレン70.7部、2−ヒドロキシエチルアクリレート30部およびエチレングリコールジメタクリレート4.5部からなる混合溶液を60分間を要して滴下した。滴下後さらにアゾビスシアノ吉草酸1.5部を脱イオン水15部とジメチルエタノールアミン1.4部にとかしたものを添加して80℃で60分間撹拌を続けたところ、不揮発分45%、pH7.2、粘度92cps(25℃)、粒子径0.156μmのエマルジョンが得られた。このエマルジョンを噴霧乾燥して有機樹脂微粒子を得た。
合成例10 アクリル樹脂の合成
滴下ロート、攪拌翼、温度計を備えたフラスコにキシレン80質量部を仕込み、130℃に加熱した。滴下ロートを用いて、メチルメタクリレート55部、スチレン10部、グリシジルメタクリレート30部、n−ブチルメタクリレート5部、開始剤カヤエステルO 3部の溶液を上記フラスコに3時間で等速滴下した。滴下終了後30分間保持の後、キシレン20部、カヤエステルO 1部を、滴下ロートを用いて1時間で等速滴下した。滴下終了後、さらに130℃で2時間保持の後、キシレンを減圧蒸留により除去して、Tg70℃の粉体アクリル樹脂を得た。このアクリル樹脂は、数平均分子量が4000であった。このアクリル樹脂を、次の比較例で粉体塗料用のアクリル樹脂として用いた。
実施例1
表1の配合表に従い、合成例4で得た樹脂(B−2)80部と合成例8で得た樹脂(E)20部、そして、沈降性硫酸バリウム20部、ベンゾイン1部、光開始剤「IRGACURE819」1部そして光開始剤「IRGACURE2959」1部を原料として、混合機スーパーミキサー(日本スピンドル社製)を用いて約3分間混合し、さらに溶融混練機コニーダー(ブス社製)を用いて約110℃で溶融混練した。その後、得られた溶融混練物を室温まで冷却し塗料ペレットを得た。つぎに、こうして得た塗料ペレット100部に合成例9で得た流動性添加剤である有機樹脂微粒子0.4部を混合し、粉砕機アトマイザーを用いて粉砕し、得られた粉体を200meshのタイラーふるいを用いて分級し、微小粒子と粗大粒子を除去することによって、体積平均粒子径25μmの粉体塗料組成物を得た。また、得られた粉体塗料組成物のリン含有量は0.1%であった。
上記のようにして得られた光開始剤を含む紫外線硬化性粉体塗料用樹脂組成物をノンクロム処理したアルミホイールに膜厚約100μmになるように静電塗装により塗布し、遠赤外線ヒーターにより表面温度が160℃になるように1分程度加熱し、その後、出力80W/cmを有する紫外線ランプ(ヒュージョン製)を用いて約5秒間紫外線を照射することにより得られた塗板を室温まで冷却してUV塗板を得た。次に以下の方法により塗膜性能の評価を行った。その結果を表1に示す。
<体積平均粒子径の測定>
粉体塗料の体積平均粒子径は、粒度分析計(日機装社製 マイクロトラックHRA X−100)により測定した。
<密着性の評価方法>
40℃のイオン交換水に塗板を10日間浸漬した後、それらを自然放置24時間で乾燥した後、2mm間隔で縦及び横それぞれ10個の碁盤目カットをいれる。つぎに、カット部をテープ剥離し、塗膜の残存率を得た。
○:残存率100
×:100未満
<耐溶剤性>
塗膜に対して、溶剤のキシロールを2滴ほど適下し、1分間放置後、布によってふき取った。その後の塗膜表面を目視によって観察して、スポット跡の有無を下記基準に基づいて判断した。
○:スポット跡なし
×:スポット跡あり
<耐衝撃性の評価>
JIS K5400 8.3.2に準拠したデュポン式で、下記の条件にて塗膜のワレ・はがれが生じた重りの高さを調べた。
おもり :500g撃ち型と受け台のサイズ :1/2インチ
<塗膜外観の評価方法>
塗装後の塗膜外観を目視にて観察し、以下の基準に基づいて判断した。
○:良好
△:普通
×:不良
<塗膜中に残存した気泡>
塗装後の塗膜中の気泡の数を目視に数え、以下の基準に基づいて判断した。
○:10個/m未満
△:10個/m以上〜50個/m未満
×:100個/m以上
実施例2、3、5及び6
表1の配合表に従い、実施例1と同様の方法によりUV粉体塗料を作成し、UV塗板を得た。またそれらを実施例1と同様の塗膜性能の評価を行った。その結果を表1に示す。
実施例4
表1の配合表に従い、流動性添加剤に無機微粒子カープレックスFPS−1(デグサ社製)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法によりUV粉体塗料を作成し、UV塗板を得た。またそれらを実施例1と同様の塗膜性能の評価を行った。その結果を表1に示す。
比較例1
合成例10のアクリル樹脂100質量部、デカンジカルボン酸24部、ベンゾイン1部と、ポリシロキサン系表面調整剤のYF−3919(東芝シリコン社製)0.1部と、ビスフェノールエポキシ樹脂のYD014(東都化成社製)2.2部とを含む原料群を、ヘンシェルミキサー(三井三池製作所社製)にて乾式混合し、次いで溶融分散機コニーダーPR−46(スイス・ブス社製)にて、100℃の温度で溶融分散しペレットを製造した。
次に、こうして得た塗料ペレット100部に、流動性添加剤カープレックスFPS−1 0.25部を混合し、粉砕機アトマイザーを用いて粉砕し、得られた粉体を200メッシュの金網で分級して粉体塗料を得た。
こうして得られた粉体塗料組成物を、ノンクロム処理したアルミホイールに膜厚約100μmになるようにコロナ帯電型塗装ガンにより静電吹付塗装し、焼付け炉にて150℃まで昇温させ20分間保持したのち、得られた塗板を室温まで冷却してアクリル粉体塗料塗板を得た。実施例1同様の方法により塗膜性能の評価を行った。その結果を表1に示す。
比較例2〜4
表1の配合表に従い、実施例1と同様の方法によりUV粉体塗料を作成し、UV塗板を得た。またそれらを実施例1と同様の塗膜性能の評価を行った。その結果を表1に示す。
Figure 2009102548
表1より、実施例の粉体塗料組成物は、従来の熱硬化型粉体塗料に比較し、短時間で効果を達成できるとともに、密着性・耐溶剤性・塗膜外観・脱気泡性にすぐれた塗膜を得ることができる。
実施例の結果から明らかなように、本発明の粉体塗料組成物は、密着性、硬化の均一性、及び、塗膜外観に優れた性質を有するものである。
本発明の粉体塗料組成物は、高い外観特性が要求される各種金属製品の塗装に特に適したものであり、例えば、アルミホイールのプライマー塗装等に好適に使用することができる。
本発明で使用する光反応開始剤(T−1)の吸収スペクトルの一例である。 本発明で使用する光反応開始剤(T−2)の吸収スペクトルの一例である。 本発明で使用する光反応開始剤(T−2)の吸収スペクトルの一例である。 本発明で使用する光反応開始剤(T−2)の吸収スペクトルの一例である。

Claims (8)

  1. 不飽和基含有ポリエステル樹脂、長波長領域において活性である少なくとも1種の光反応開始剤(T−1)、短波長領域において活性である少なくとも1種の光反応開始剤(T−2)、リン含有化合物(D)及び/又はリン含有化合物で変性された樹脂(E)並びに、体質顔料(F)
    を含有する粉体塗料粒子からなることを特徴とするアルミホイール用紫外線硬化型粉体塗料組成物であって、
    前記不飽和基含有ポリエステル樹脂は、以下に示す不飽和基含有ポリエステル樹脂(A)0〜30質量%、及び、以下に示す不飽和基含有ポリエステル樹脂(B)70〜100質量%からなるものであり:
    前記不飽和基含有ポリエステル樹脂(A)は、グリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレートと、以下の(a)及び(b)からなる群から選ばれる少なくとも1の末端カルボキシル基を含むポリエステルとの反応生成物;
    (a):(a1)(a.1.1)テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又は1,12−ドデカン二酸であるジカルボン酸85〜100モル%、及び、
    (a.1.2)4〜14個の炭素原子を有する前記(a.1.1)以外の脂肪族、脂環式又は芳香族ジ又はポリカルボン酸0〜15モル%を含む酸成分、
    (a2)(a.2.1)2〜12個の炭素原子を有する飽和直鎖脂肪族ジオール85〜100モル%、及び、
    (a.2.2)2〜15個の炭素原子を有する少なくとも1種の(a.2.1)以外の脂肪族又は脂環式ジ又はポリオール0〜15モル%を含むアルコール成分の反応生成物であるポリエステル
    (b):(b1)(b.1.1)4〜14個の炭素原子を有する飽和直鎖脂肪族ジカルボン酸の1種85〜100モル%、及び、
    (b.1.2)0〜15モル%の4〜14個の炭素原子を有する少なくとも1種の前記(b.1.1)以外の脂肪族、脂環式又は芳香族ジ又はポリカルボン酸を含む酸成分、
    (b2)(b.2.1)1,4−シクロヘキサンジオール又は1,4−シクロヘキサンジメタノール85〜100モル%、及び、
    (b.2.2)2〜15個の炭素原子を有する少なくとも1種の前記(b.2.1)以外の脂肪族又は脂環式ジ又はポリオール0〜15モル%を含むアルコール成分、
    の反応生成物であるポリエステル、であり、
    前記不飽和基含有ポリエステル樹脂(B)は、グリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレートと末端カルボキシル基を含むポリエステル(c)との反応生成物;
    (c):(c1)(c.1.1)テレフタル酸又はイソフタル酸40〜100モル%、並びに、
    (c.1.2)0〜60モル%の、4〜14個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式ポリカルボン酸、及び、前記(c.1.1)以外の芳香族ジ又はポリカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1の単量体を含む酸成分、
    (c2)(c.2.1)35〜100モル%のネオペンチルグリコール、及び(c.2.2)0〜65モル%の、2〜15個の炭素原子を有する、ネオペンチルグリコール以外の脂肪族ジ又はポリオール及び2〜15個の炭素原子を有する脂環式ジ又はポリオールからなる群から選択される少なくとも1のアルコール成分の反応生成物であるポリエステル、
    前記リン含有化合物(D)は、下記一般式(I);
    Figure 2009102548
    (式中、Rは水素、ハロゲン、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基及びCH=CH−より成る群から選ばれ;Rは水素、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基及び1〜8個の炭素原子を有するハロアルキル基より成る群から選ばれ;AはRO−及び(RO)−より成る群から選ばれ、ここでRは1〜9個、の炭素原子を含んでいる脂肪族又は脂環式アルキレン基であり;Rは1〜7個の炭素原子を有するアルキレン基であり;nは2〜10の整数であり;mは1又は2である。)
    で表される化合物であり、
    前記リン含有化合物で変性された樹脂(E)は、ポリエステル樹脂を前記一般式(I)で表されるリン含有化合物で変性したものである
    ことを特徴とするアルミホイール用紫外線硬化型粉体塗料組成物。
  2. 更に、アクリロイル基含有フェノキシ樹脂及び/又はメタクリロイル基含有フェノキシ樹脂(C)を、不飽和基含有ポリエステル樹脂100質量%に対して10〜50質量%含有する請求項1記載のアルミホイール用紫外線硬化型粉体塗料組成物。
  3. 前記アクリロイル基含有フェノキシ樹脂及び/又はメタクリロイル基含有フェノキシ樹脂(C)は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、ビスフェノールA系エポキシ樹脂及びノボラック系エポキシ樹脂から選択されるグリシジル基含有ポリフェノキシ樹脂との反応生成物である請求項1又は2記載のアルミホイール用紫外線硬化型粉体塗料組成物。
  4. 前記粉体塗料粒子は、体積平均粒子径が5〜40μmである請求項1、2又は3記載のアルミホイール用紫外線硬化型粉体塗料組成物。
  5. 更に、無機微粒子及び平均粒子径が0.001〜2μmである架橋又は非架橋の有機樹脂微粒子からなる群から選択される少なくとも1の流動性付与剤を含有する請求項1、2、3又は4記載のアルミホイール用紫外線硬化型粉体塗料組成物。
  6. 前記体質顔料は、粒子径が0.1〜30μmであり、その含有量が粉体塗料粒子100質量%中、5〜40質量%である請求項1、2、3、4又は5記載のアルミホイール用紫外線硬化型粉体塗料組成物。
  7. 基材上に請求項1、2、3、4、5又は6記載のアルミホイール用紫外線硬化型粉体塗料組成物を塗布する工程(1)、
    前記工程(1)によって形成された塗膜を、予備加熱してフローさせる工程(2)、及び、
    前記工程(2)後の塗膜にエネルギー線を照射する工程(3)
    からなることを特徴とするアルミホイールの塗装方法。
  8. 前記工程(3)によって形成された塗膜上に水系若しくは溶剤系のメタリックベース塗料を塗装する工程(4)、及び、
    前記工程(4)によって形成された塗膜上にクリヤー塗料を塗装する工程
    を更に有するものである請求項7記載のアルミホイールの塗装方法。
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