JP2009101920A - タイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】耐亀裂性を向上させ、かつ弾性率と発熱性のバランスを確保したゴム組成物をパットゴムに使用して歪みを低減し、耐亀裂成長性を高めることのできる大型車両用、及び重荷重用として優れているタイヤを提供すること。
【解決手段】本発明に係るタイヤは、ビードを巻き返している折り返しプライコードの外側に隣接し、且つタイヤ高さの半分以下、該ビードより上方の領域の一部又は全部に配置されるパッドゴムのゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対してシリカを2〜15質量部の範囲で含有することを特徴とし、更に、ヒドラジド化合物をゴム成分100質量に対して0.2〜3質量部の範囲で含有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、大型車両、重荷重用のタイヤに関するものであり、より詳しくは、タイヤの大型化に伴うタイヤの走行時の発熱や歪みによる亀裂成長等を起こしやすいパッド(PAD)ゴム部分を改良し、発熱性と弾性率のバランスも十分に維持した耐亀裂成長性のある、大型車両用又は重荷重用に適したタイヤに関するものである。
一般に、大型車両用、重荷重用等のラジアルタイヤにあっては、図1に示すような一般的な構造になっている。即ち、トレッド部2と、その両側に連なる一対のサイドウォール部3、及び一対のビード4からなる。これらの各部は埋設したビード4の相互間に架装されるカーカス(プライコードを含む)5と、そのカーカス5の外側でトレッド部2を強化する複数のスチールコードからなるベルト6を備えている。そして、カーカス5及びベルト6はスチールコード等の金属補強材に被覆ゴムを被覆してなるカーカスプライ層及びベルトプライ層からなっている。
また、一般的なタイヤにあっては、ビード4を巻き返している折返しプライコード5aの外側に隣接して、そのタイヤ高さの半分以下、ビード4より上方の領域Aの一部又は全部に渡って引っ張り物性に優れたパッドゴムが配置されている。
ところで、近年の大型化に伴い重荷重のかかるタイヤにあっては、そのカーカスの折返しプライコードの外側部分に走行時の発熱、歪み等が生じ易くなっている。このため、重荷重用タイヤにおいては、リムフランジからの突き上げにより折返しプライコード外側のゴムはせん断歪入力が大きくなる。プライコーティングゴムの外側にはクッション性を持たせる為に、低弾性で低発熱性のゴムを配置する。これは、歪の分散を図ると共に、発熱量を抑制することで耐亀裂性を向上させ、更にはプライコードの接着性を確保する役割も担っている。
低発熱性のゴムを得る為にカーボンブラックの配合量は少なく、低弾性で、耐熱劣化性を確保する為に硫黄の配合量も少なくすることが一般に実施されている。また補強性充填剤を30〜100重量部、および特定のジフェニルアミン系老化防止剤を0.2〜3.0重量部配合してなるゴム組成物を、ビード部補強用のゴムに使用することが提案されている(例えば、特許文献1)。
タイヤサイスの大型化に伴い、せん断歪入力は増加傾向にあり、重荷重での使用や高温での使用条件下ではゴムの耐亀裂性の更なる改良が求められている。
即ち、重荷重用空気入りタイヤの使用条件は、荷重や路面の勾配、気温、等の様々な要因があるが、非常に過酷な条件で使用されており、トレッドが完摩する以前に折返しプライコードの外側に配置されているパッド部材のセバレーションにより廃品になってしまうことがある。特に気温が高く、荷重の大きい使用条件のユーザーでは改良が求められている。
また、近年のタイヤの大型化に伴い、タイヤの変形が大きな問題となってきているが、折返しプライコードの被覆ゴムに対して入力を緩和する為に配置されているパットの弾性率は低く設定されており変形量が増加傾向にある為、パットの耐久性能の向上が求められている。
更に、パットの折返しプライ外側を占める割合は多く、ボリュームがある為、発熱性能の悪化はパットゴムの耐久性を低下させるだけでなく、隣接するゴムの耐久性の低下、例えば耐亀裂性の低下や、プライコードの接着性の低下等を引き超こす為、発熱性を低下させることは好ましくない。
一方、重荷重用空気入りタイヤの様な大型な空気入りタイヤの場合は最もゲージの厚いトレッド部分の加硫を考慮して低温長時間の加硫条件でタイヤを製造する為、トレッド領域以外は過加硫の状態であり、更に、タイヤの走行に伴って熱の入力もあることから、加硫中のゴムのリバージョン性は注意しなければならない点である。通常は、このリバージョン性を補う為にカーボンブラックの増量や硫黄の増量等により弾性率のレベルを向上させたりする。しかし、カーボンブラックの増量では発熱性の悪化による耐亀裂性の悪化傾向が認めら、硫黄の増量では走行劣化に対するリバージョン性の低下傾向がある為、あまり好ましくない。
また、カップリング剤の使用により弾性率の向上も計れるが、耐亀裂性の改良効果が少ない等の問題点もある。
特開2001−240701号公報
従って、本発明の課題とするところは、耐亀裂性を向上させ、かつ弾性率と発熱性のバランスを確保したゴム組成物をパットゴムに使用し、剪断歪に強く、耐亀裂成長性を高めることのできる大型車両用、及び重荷重用として優れているタイヤを提供することである。
本発明に係るタイヤは、以下に記載される構成或いは手段を特徴とするものである。
(1).ビードを巻き返している折り返しプライコードの外側に隣接し、且つタイヤ高さの半分以下、該ビードより上方の領域の一部又は全部に配置されるパッドゴムのゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対してシリカを2〜15質量部の範囲で含有することを特徴とするタイヤ。
(2).上記ゴム組成物は構造式が−C(=O)NHN=C(R1)R2で表されるヒドラジド基を少なくとも1以上含むヒドラジド化合物の少なくとも1種以上の化合物をゴム成分100質量に対して0.2〜3質量部の範囲で含有する請求項1記載のタイヤ。
但し、式中のR1及びR2は、炭素数1〜18の範囲にあるO、S、及びNの元素を含んで良い環状又は非環状の炭化水素である。
(3).上記ヒドラジド化合物が一般式(1)で表されるヒドラジド化合物である上記(2)記載のタイヤ。
Figure 2009101920
(4).上記シリカはゴム成分100質量部に対して2〜10質量部の範囲にあり、上記シリカとヒドラジド化合物との配合量の関係が、0.1≦ヒドラジド化合物(質量部)/シリカ(質量部)≦0.3である上記(2)又は(3)のタイヤ。
(5).上記タイヤのリム径が25インチ以上である上記(1)〜(4)の何れかに記載の重荷重用タイヤ。
(6).上記折り返しプライコードからタイヤ表面までの最大ゲージが30mm以上で、且つ上記ゴム組成物のパッドゴムへの割合が50体積%以上である上記(5)記載の重荷重用タイヤ。
上記(1)に係る本発明のタイヤは、シリカの単独配合ではゴム単体の耐亀裂性を向上させることは可能であり、ゴムパッドとして使用することによってタイヤにおける耐亀裂成長性を付与することができる。実際にはゴムパッドの弾性率が低下する傾向にある為、タイヤの歪みが増加し更なる改良を求めることが要求されるので、カーボンブラック及び硫黄の増量、又は適宜な配合によって、弾性率を確保し、タイヤでの歪みの増加を抑制することでタイヤの耐久性を改良する。この場合、本発明のタイヤは、シランカップリング剤を積極的に排除することが好ましい。これはカップリング剤の使用により弾性率の向上も計れるが、耐亀裂性の改良効果が喪失するものである。
上記(2)〜(4)に係る本発明のタイヤにおいて、更に性能を向上させる手段として、上記ヒドラジド化合物を配合することで弾性率低下を抑制し、かつ発熱性を確保した上で耐亀裂成長性を改良することができる。特に、上記(4)に係る本発明のタイヤにおいては、シリカ配合量とヒドラゾド化合物配合量の関係が0.1≦ヒドラジド化合物(質量部)/シリカ(質量部)≦0.3であることが好ましく、耐亀裂性を向上させると共に弾性率、発熱性のバランスを確保し、プライコーティングゴムへの悪影響もないパットゴムに適したタイヤを提供することが可能となる。
更に、上記(6)に係る発明のタイヤのように、上記効果を一層発揮させるために、タイヤのリム径が25インチ以上である重荷重用タイヤとして使用することができる。そして、この場合、上記(7)に係る発明のタイヤのように、折り返しプライコードからタイヤ表面までの最大ゲージが30mm以上、特に好ましくは40mm以上で、且つ上記ゴム組成物のパッドゴムへの割合が50体積%以上、特に好ましくは60体積%以上であるときに、一層の効果を発揮する。
以下、本発明に係る好ましい実施の形態を添付図面を参照して詳述する。尚、本発明は以下の実施形態及び実施例に限るものではない。
図1は、大型車両用のタイヤの半部分断面図である。図1に示すように、本実施の形態のタイヤ1にあっては、ビード4を巻き返している折返しプライコード5aの外側に隣接し、且つタイヤ高さHの半分以下、該ビード4より上方の領域Aの一部又は全部に配置されるパッドゴムのゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対してシリカを2〜15質量部の範囲で含有するものである。更に好ましくは、上記ゴム組成物は構造式が−C(=O)NHN=C(R1)R2で表されるヒドラジド基を少なくとも1以上含むヒドラジド化合物の少なくとも1種以上の化合物をゴム成分100質量に対して0.2〜3質量部の範囲で含有するものである。
即ち、本実施の形態のタイヤ1にあっては、一般的な大型車両用タイヤと同様に、トレッド部2と、その両側に連なる一対のサイドウォール部3、及び一対のビード4からなる。これらの各部は埋設したビード4と、図示しない他方のビード4との相互間に架装されるカーカス5と、そのカーカス5の外側でトレッド部3を強化する複数のスチールコードからなるベルト層6を備えている。そして、カーカス及びベルトはスチールコード等の金属補強部材に被覆ゴムを被覆してなるカーカスプライ層及びベルトプライ層からなっている。また、被覆ゴムは、スチールコード等の金属補強部材の表面を直接被覆し、或いは金属コード等が織物化した周囲をコーティングして使用される。
ここで、本願発明にあっては、タイヤのリム径が25インチ以上、更には、40インチ以上の大型重荷重用のタイヤとすることが良く、この場合の折り返しプライコード5aとタイヤ表面までの厚みの最大部分(図1のBの長さ)、即ち最大ゲージが30mm以上、特に、40mm以上のものに対してより好適に作用する。
上記ゴム組成物からなるパッドゴム部分は少なくとも50体積%以上を占めることが望ましく、特に、60体積%以上を占めることが望ましい。
本実施の最も好ましい形態において、上記ゴム組成物に配合するシリカは、ゴム成分100質量に対して、2〜15質量部配合する。好ましくは、2〜10質量部、更に好ましくは2〜7質量部である。
シリカの配合量が2.0質量部未満では耐亀裂性の効果が十分に認められなくなる。シリカの配合量が15質量部を超えるとゴムパッドの弾性率の低下により、走行中のパッドの歪量が増大するため、発熱量の増加と相まって耐亀裂性も却って低下させる悪影響がある。
本発明においては、弾性率をある程度維持するために、ゴム組成物中にカーボンブラック及び硫黄を適宜増量することができる。しかしながら、パッドゴムの弾性率及び発熱性の抑制を確保するためには、以下のヒドラジド化合物を配合することが好ましい。
本発明に配合するヒドラジド化合物は、構造式が−C(=O)NHN=C(R1)R2で表されるヒドラジド基を少なくとも1以上含むヒドラジド化合物の少なくとも1種以上の化合物をゴム成分100質量に対して0.2〜3質量部の範囲で含有することが好ましい。
式(1)中のR1及びR2は、炭素数1〜18の範囲にあるO、S、及びNの元素を含んで良い環状又は非環状の炭化水素である。例えば、飽和又は非飽和の直鎖状炭化水素、分岐炭化水素、環状炭化水素で、一部にO、S、及びNの元素を含んでいても良い。また、環状炭化水素としては、単環式、又は縮合多環式の芳香族化合物、及びO、S、及びNの元素を含んでいるヘテロ環であっても良い。また、ヒドラジド化合物はヒドラジド基が2以上含まれていていても良い。
中でも、一般式(1)で表されるナフトエ酸ヒドラジド化合物であることが好ましい。
Figure 2009101920
上記ヒドラジド化合物としては、例えば、イソフタル酸ジヒドラジドから誘導されるイソフタル酸−N,N−ジ(1−メチルエチリデン)ジヒドラジド、イソフタル酸−N,N−ジ(1−メチルプロピリデン)ジヒドラジド、イソフタル酸−N,N−ジ(1,3−ジメチルブチリデン)等のジヒドラジド化合物、サリチル酸ヒドラジドから誘導されるサリチル酸−N′−(1−メチルエチリデン)ヒドラジド、サリチル酸−N′−(1−メチルプロピリデン)ヒドラジド、サリチル酸−N′−(1−メチルブチリデン)ヒドラジド、サリチル酸−N′−(1,3−ジメチルブチリデン)ヒドラジド、サリチル酸−N′−(2−フリルメチレン)ヒドラジド等が挙げられる。
更に、一般式(1)で表わされるナフトエ酸ヒドラジド化合物としては、例えば、1−ヒドロキシ−N′−(1−メチルエチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド、1−ヒドロキシ−N′−(1−メチルプロピリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド、1−ヒドロキシ−N′−(1−メチルブチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド、1−ヒドロキシ−N′−(1,3−ジメチルブチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド、1−ヒドロキシ−N′−(2−フリルメチレン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ−N′−(1−メチルエチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ−N′−(1−メチルプロピリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ−N′−(1−メチルブチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ−N′−(1,3−ジメチルブチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ−N′−(2−フリルメチレン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ−N′−(1,2−ジフェニルエチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド等が挙げられる。
この中でも、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド(HNH)から誘導される3−ヒドロキシ−(1,3−ジメチルブチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド(BMH)が特に好ましい。
本発明において、ヒドラジド化合物はゴム成分100質量部に対して0.2〜3質量部の範囲で含有することが好ましい。
シリカ配合量の少ない場合にヒドラゾド化合物を多量に適用すると、弾性率が上昇し、ヒドラジド化合物はゴムの弾性率低下を抑制し、且つ発熱性を確保した上での耐亀裂性の改良効果を発揮できるが、ヒドラジド化合物は隣接するプライコードのコーティングゴムとコードとの接着性を阻害する特性を有するため3質量部以下での配合が好ましい。また、ヒドラジド化合物の配合量が0.2質量部未満では弾性率向上効果が十分にえられない。
また、上述したように、シリカの配合量を多くすれば耐亀裂性を付与するが、多すぎると弾性率低下させ、ゴムパッドとしてはパットの歪量が増大するため、却って発熱量の増加を含めて耐亀裂性に悪影響を与えることを示した。ここで、シリカ配合量を少なくしてヒドラジド化合物を多量に配合すると弾性率は上昇し、これにより歪量は低減出来るが、隣接するプライのコーティングゴムの歪量が増大し、コーティングゴム内でセバレーションを引き起こしてしまうことが確認されている。このため、以上のことから、本発明の効果が得られるシリカ配合量とヒドラジド化合物配合量の関係は、
0.1≦ヒドラジド化合物(質量部)/シリカ(質量部)≦0.3
シリカ配合量:2〜10質量部、ヒドラジド化合物配合量:0.2〜3質量部が好ましい。
従って、耐亀裂性を向上させると共に弾性率、発熱性のバランスを確保し、プライコーティングゴムへの悪影響もないパットゴムのゴム組成物となり、重荷重用空気入りタイヤを提供することが十分に可能となる。この場合においても、シランカップリング剤を含まないことが好ましい。更に発熱性に関しては、ヒドラジド化合物を配合することで改良効果が得られるが、シリカ配合量が2〜7質量部の領域においては、特に良好な特性を得ることができる。
本実施の形態のパッドゴム組成物にあっては、先ず、そのゴム成分は特に限定されないが、タイヤ等に使用する場合、イソプレンの重合物、例えば、一般に入手可能な天然ゴム及び合成イソプレンゴムから選ばれた少なくとも1種からなるゴム成分であることが好ましい。
上記ゴム成分は、このように天然ゴムのみ、合成ゴムのみを含んでいてもよいし、両者を含んでいてもよい。合成ゴムとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、特に、ジェン系ゴムが好ましく、中でもスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、及びブチルゴムから少なくとも1種を適宜選択することができる。
本発明にあっては上述したようにカーボンブラック及び硫黄を適宜配合することが好ましい。
カーボンブラックは、ゴム成分100質量部に対して、30〜60質量部の範囲、特に好ましくは35〜50質量部の範囲で含むことが望ましい。カーボンブラックの配合量が30質量部未満では補強剤としての効果が不十分となりゴムの弾性率を確保することができなくなり、また、カーボンブラックの配合量が60質量部を超えると、ゴムの発熱性が高くなり、破断伸度が低下してくる。
このようなカーボンブラックは通常ゴム業界で用いられるものから適宜選択することができ、例えば、SRF、GPF、FER、HAF、ISAF等の種々のグレードのカーボンブラックを使用することができる。
硫黄は、ゴム成分100質量部に対して、1.0〜5.0質量部の範囲、特に好ましくは1.5〜4.0質量部の範囲で含むことが望ましい。硫黄の配合量が1.0質量部未満では補強剤としての効果が不十分となりカーボンブラックと同様にゴムの弾性率を確保することができなくなり、また硫黄の配合量が5.0質量部を超えると、ゴムの発熱性が高くなり、破断伸度が低下してくる。
上記パッドゴムにおけるゴム組成物には、上述した配合物の他に、他の配合物、例えば、補強性充填剤、タルク、炭酸カルシウム及び炭酸ナトリウム等の無機充填剤、加硫促進剤、老化防止剤、酸価亜鉛、ステアリン酸、オゾン劣化防止剤、プロセスオイル等の加工助剤、可塑剤、軟化剤、及びコバルト有機酸塩等の加硫短縮剤などを添加することができる。尚、加硫促進剤としては、M(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、及びCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、NS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド)等のチアゾール系加硫促進剤を挙げることができる。
上記パッドゴム組成物は、バンバリーミキサー等の密閉式混練機、オープンロール等の混練機を用いて混練することによって得られ、タイヤのベルト層及びカーカス層に上述した領域間に適宜配して成形加工後、加硫を行い、図1に示す領域Aの一部(必要があればほぼ全部に)にパッドゴム及びクッションゴムとしてタイヤ内に成形する。
このような上記パッドゴムを備えて構成されるタイヤにあっては、パッドゴムの弾性率及び発熱性が維持され、耐亀裂成長性が向上する。このため、例えば重荷重での走行後のゴムの歪みなどが起こらず、耐亀裂成長性が向上し、タイヤの走行耐久性及びその安全性が改善される。このため、大型車両用、重荷重用タイヤに好適である。尚、本発明のタイヤの内部には空気のほかに、窒素等の不活性ガスを充填することができる。
次に、実施例、比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに制約されるものではない。
実施例及び比較例は、天然ゴム(NR)、カーボンブラック(HAF:シースト3、東海カーボン株式会社製)、シリカ(東ソーシリカ社製ニップシールKQ)、硫黄、ヒドラジド化合物(BMH)を配合主成分として、酸化亜鉛を3.0質量部、ステアリン酸を2質量部、老化防止剤(商品名:SANTOFLEX 6PPD)を1.0質量部、及び加硫促進剤(DZ:N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド:商品名“ノクセラーDZG”大内新興科学製)を1質量使用して、下記表1及び表2に示すようにシリカ、ヒドラジド化合物の配合量を変えて各組成物を、バンバリーミキサーを使用して混練し、未加硫のゴム組成物を得、このゴム組成物を図1で示すようにベルトとカーカスに隣接する所定領域Aにパッドゴムとして成形し、建設車両用タイヤ(4000R57)を製造した。製造したタイヤに対して以下の評価試験を実施した。結果を表1及び表2に示した。
<弾性率(M50)>
製造した新品タイヤのバッドゴムから試験片を作成し、東洋精機社製ストログラフ(DIN)で温度25℃、引張り速度100mm/minにて引張り試験を行い、50%伸張時の弾性率(MPa)を測定した。
<tanδ:発熱性>
製造した新品タイヤのバッドゴムから試験片を作成し、東洋精機社製スペクトロメーターで温度25℃、周波数52Hz及び動歪2.0%の条件で、損失正接(tanδ)の測定を行った。数値が小さいほどヒステリシスロスは少なく、発熱性が良好である。
<耐亀裂成長性:Log(N)>
製造した新品タイヤを車体のフロント装着で2000時間、リアー装着で2000時間、合計4000時間を走行させた後にタイヤを外した。次に、タイヤのバッドゴムから厚さ1mm、幅6mmの試験片を作成し、そのロードテスト後のタイヤ、及びまた新品のタイヤで、ダンベル状7号型(JIS−K6251)にて繰り返し引張り試験を実施し入力エネルギーに対する破断回数から評価した。得られた試験結果から下記式に従って、新品時の耐亀裂成長性と走行による耐亀裂成長性の保持率を算出した。保持率の大きい方が引張り物性の低下が少なく良好である。また、比較例1を100として指数表示した。指数値が大きい程、傷が成長するまでの時間が長く、耐亀裂成長性が良好であることを示す。
(保持率)=(ロードテスト後の測定値)÷(新品タイヤの測定値)×100
Figure 2009101920
Figure 2009101920
実施例1〜3と比較例1及び2の評価より、シリカの配合量が2.0質量部未満であると十分な改良効果が見られない。これに対して実施例の範囲では、弾性率の低下傾向、発熱性の悪化傾向があるものの、新品時の耐亀裂性で優れることからタイヤの耐久性ではシリカを配合しないものよりは改良効果がある。
実施例4〜6から、シリカ2.0質量部でのヒドラジド化合物変量時の比較を行うと、実施例3のヒドラジド化合物の配合量が0.2質量部未満であると耐亀裂性の改良効果があまり認められない。これに対して、実施例5及び6で配合される範囲では耐亀裂性の向上と弾性率及び発熱性とのバランスが取れていることが分かる。耐亀裂性に関してはロードテスト後の耐亀裂性のレベルが低下し難くなっていることが分かる。
実施例7〜9では、シリカ5.0質量部でのヒドラジド化合物変量時の比較を実施した結果、ヒドラジド化合物増量に伴い弾性率において増加傾向が認められるが、耐亀裂性の向上と弾性率及び発熱性とのバランスが取れていることが分かる。
実施例10〜12から、シリカ10.0質量部でのヒドラジド化合物変量時の比較を行うと、実施例10のヒドラジド化合物の配合量のシリカ配合量に対する比率が0.1未満であると弾性率の低下が大きく、ロードテスト後の耐亀裂性のメリットが減少するが、実施例11、12の範囲では耐亀裂性の向上と弾性率及び発熱性とのバランスが取れていることが分かる。
本発明に係るタイヤは、耐亀裂性を向上させ、かつ弾性率と発熱性のバランスを確保したゴム組成物をパットゴムに使用しているので、歪みが低減し、耐亀裂成長性があり産業上の利用可能性の高いものである。
図1は、一般的な大型車両用タイヤの半部分断面概略図である。
符号の説明
1 タイヤ
2 トレッド
3 サイドウォール
4 ビード
5 カーカス(プライコード)
5a 折り返しプライコード
6 ベルト
A パッド設置領域
B 最大ゲージ

Claims (6)

  1. ビードを巻き返している折り返しプライコードの外側に隣接し、且つタイヤ高さの半分以下、該ビードより上方の領域の一部又は全部に配置されるパッドゴムのゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対してシリカを2〜15質量部の範囲で含有することを特徴とするタイヤ。
  2. 上記ゴム組成物は構造式が−C(=O)NHN=C(R1)R2で表されるヒドラジド基を少なくとも1以上含むヒドラジド化合物の少なくとも1種以上の化合物をゴム成分100質量に対して0.2〜3質量部の範囲で含有する請求項1記載のタイヤ。
    (但し、式中のR1及びR2は、炭素数1〜18の範囲にあるO、S、及びNの元素を含んで良い環状又は非環状の炭化水素である。)
  3. 上記ヒドラジド化合物が一般式(1)で表されるヒドラジド化合物である請求項2記載のタイヤ。
    Figure 2009101920
  4. 上記シリカはゴム成分100質量部に対して2〜10質量部の範囲にあり、上記シリカとヒドラジド化合物との配合量の関係が、0.1≦ヒドラジド化合物(質量部)/シリカ(質量部)≦0.3である請求項2又は3記載のタイヤ。
  5. 上記タイヤのリム径が25インチ以上である請求項1〜4の何れかに記載の重荷重用タイヤ。
  6. 上記折り返しプライコードからタイヤ表面までの最大ゲージが30mm以上で、且つ上記ゴム組成物のパッドゴムへの割合が50体積%以上である請求項5記載の重荷重用タイヤ。
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