JP2009101289A - タンパク質捕捉材料、タンパク質捕捉用カートリッジ及び製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】タンパク質を捕捉するためのタンパク質捕捉材料10において、基材1と、基材1に結合されたグラフト高分子鎖4と、グラフト高分子鎖4に固定された、所定のタンパク質に親和性がある金属イオン5と、を備え、所定のタンパク質と金属イオン5との親和性を利用して、当該所定のタンパク質を捕捉するよう構成した。
【選択図】図1
Description
イオン交換クロマトグラフィーでは、タンパク質を捕捉するための捕捉部としてイオン交換基が導入された樹脂を使用し、疎水性相互作用クロマトグラフィーでは、タンパク質を捕捉するための捕捉部として疎水性官能基が導入された樹脂を使用し、アフィニティクロマトグラフィーでは、タンパク質を捕捉するための捕捉部として抗体やレセプター、金属イオンなどが導入された樹脂を使用するようになっている。具体的には、この樹脂をカラムに充填し、カラムにタンパク質が溶解するタンパク質溶液を透過させることによって、タンパク質を分離精製するようになっている。
これらの樹脂はビーズ状であるため、樹脂内部の捕捉部までタンパク質が拡散するのに時間を要する。したがって、タンパク質溶液を高速で透過させるとタンパク質が樹脂内部の捕捉部に捕捉されずに流出してしまうため、タンパク質溶液を高速で透過させることができず、タンパク質の分離精製に時間がかかるという問題がある。
具体的には、特許文献1〜3では、多孔質膜(多孔性中空糸膜や多孔性フィルム)に放射線グラフト重合法を適用してグラフト高分子鎖を結合させ、そのグラフト高分子鎖に捕捉部としてイオン交換基(アニオン交換基やカチオン交換基)を導入することによって作成されるタンパク質捕捉材料が提案されている。
また、特許文献4では、多孔質膜(多孔性中空糸膜や多孔性フィルム)に放射線グラフト重合法を適用してグラフト高分子鎖を結合させ、そのグラフト高分子鎖に捕捉部として疎水性官能基を導入することによって作成されるタンパク質捕捉材料が提案されている。
また、特許文献4のタンパク質捕捉材料は、捕捉部と疎水性相互作用可能なタンパク質であれば、すなわち疎水部分を有するタンパク質であれば、捕捉してしまうため、選択性に乏しいという問題がある。
タンパク質捕捉材料において、
基材と、
前記基材に結合されたグラフト高分子鎖と、
前記グラフト高分子鎖に固定された、所定のタンパク質に親和性がある金属イオンと、
を備え、
前記所定のタンパク質と前記金属イオンとの親和性を利用して、当該所定のタンパク質を捕捉することを特徴とする。
請求項1に記載のタンパク質捕捉材料において、
前記金属イオンは、システイン、ヒスチジン及び/又はトリプトファンを備えるタンパク質と親和性があることを特徴とする。
請求項1又は2に記載のタンパク質捕捉材料において、
前記基材は、連通孔を有する多孔質体よりなるものであることを特徴とする。
請求項3に記載のタンパク質捕捉材料において、
前記基材は、厚さが1〜10mm、前記連通孔の平均細孔径が0.5〜5μm及び前記連通孔の体積分率が70〜85%のシート状のものであることを特徴とする。
請求項1〜4の何れか一項に記載のタンパク質捕捉材料において、
前記グラフト高分子鎖は、前記基材の表面部に結合されており、前記基材の内部には非結合されていることを特徴とする。
請求項1〜5の何れか一項に記載のタンパク質捕捉材料において、
前記基材は、ポリオレフィンから構成されたものであることを特徴とする。
タンパク質捕捉用カートリッジにおいて、
請求項1〜6の何れか一項に記載のタンパク質捕捉材料をカートリッジに充填して構成されていることを特徴とする。
請求項1〜6の何れか一項に記載のタンパク質捕捉材料の製造方法において、
前記基材に電離放射線を照射する照射ステップと、
次いで、所定の官能基を有する重合性単量体を前記基材にグラフト重合することによって、当該所定の官能基を有するグラフト高分子鎖を当該基材に結合させるグラフト重合ステップと、
次いで、前記所定の官能基の少なくとも一部を、前記金属イオンを吸着するための吸着用官能基に変換することによって、当該所定の官能基を有するグラフト高分子鎖を、当該吸着用官能基を有するグラフト高分子鎖に変換する変換ステップと、
次いで、前記吸着用官能基に前記金属イオンを吸着させることによって、当該金属イオンを前記基材に結合されたグラフト高分子鎖に固定する固定ステップと、
を備えることを特徴とする。
請求項1〜6の何れか一項に記載のタンパク質捕捉材料の製造方法において、
前記基材と所定の官能基を有する重合性単量体とを共存させた状態で、当該基材に電離放射線を照射し、当該所定の官能基を有する重合性単量体を当該基材にグラフト重合することによって、当該所定の官能基を有するグラフト高分子鎖を当該基材に結合させる照射・グラフト重合ステップと、
次いで、前記所定の官能基の少なくとも一部を、前記金属イオンを吸着するための吸着用官能基に変換することによって、当該所定の官能基を有するグラフト高分子鎖を、当該吸着用官能基を有するグラフト高分子鎖に変換する変換ステップと、
次いで、前記吸着用官能基に前記金属イオンを吸着させることによって、当該金属イオンを前記基材に結合されたグラフト高分子鎖に固定する固定ステップと、
を備えることを特徴とする。
請求項8又は9に記載の製造方法において、
前記グラフト高分子鎖が有する前記所定の官能基を、親水性官能基に変換することによって、前記基材に結合されたグラフト高分子鎖を親水化する親水化ステップを備えることを特徴とする。
請求項1〜6の何れか一項に記載のタンパク質捕捉材料の製造方法において、
前記基材に電離放射線を照射する照射ステップと、
次いで、前記金属イオンを吸着するための吸着用官能基を有する重合性単量体を前記基材にグラフト重合することによって、当該吸着用官能基を有するグラフト高分子鎖を当該基材に結合させるグラフト重合ステップと、
次いで、前記吸着用官能基に前記金属イオンを吸着させることによって、当該金属イオンを前記基材に結合されたグラフト高分子鎖に固定する固定ステップと、
を備えることを特徴とする。
請求項1〜6の何れか一項に記載のタンパク質捕捉材料の製造方法において、
前記基材と前記金属イオンを吸着するための吸着用官能基を有する重合性単量体とを共存させた状態で、当該基材に電離放射線を照射し、当該吸着用官能基を有する重合性単量体を当該基材にグラフト重合することによって、当該吸着用官能基を有するグラフト高分子鎖を当該基材に結合させる照射・グラフト重合ステップと、
次いで、前記吸着用官能基に前記金属イオンを吸着させることによって、当該金属イオンを前記基材に結合されたグラフト高分子鎖に固定する固定ステップと、
を備えることを特徴とする。
さらに、所望のタンパク質は、連通孔を通っている間に、連通孔内に配置されたグラフト高分子鎖に固定された金属イオンまで容易にアクセスできる。したがって、所望のタンパク質が捕捉されずにタンパク質捕捉材料を通り抜けてしまうことが少なく、高速処理時においても高い捕捉性能を有するタンパク質捕捉材料を構成することができる。
さらに、基材は、連通孔の平均細孔径が0.5〜5μm及び連通孔の体積分率が70〜85%のシート状のものであり、微細な連通孔を多数有している。したがって、拡散性が良好であるためフィルター効率が良く、高速処理時においても高い捕捉性能を有するタンパク質捕捉材料を構成することができる。
図1に、タンパク質捕捉材料10の製造経路の一例を示し、図2に、タンパク質捕捉用カートリッジ100の一例を示す。
タンパク質捕捉材料10は、例えば、所定のタンパク質と金属イオン5との親和性を利用して、所定のタンパク質が溶解するタンパク質溶液からその所定のタンパク質を捕捉して分離するための固定化金属アフィニティ材料である。
タンパク質捕捉材料10は、例えば、連通孔を有する多孔質体よりなる基材1と、基材1に結合された、金属イオン5を吸着するための吸着用官能基を有するグラフト高分子鎖4と、グラフト高分子鎖4に固定された、所定のタンパク質に親和性がある金属イオン5と、を備えて構成される。すなわち、タンパク質捕捉材料10は、例えば、連通孔を有する多孔質体よりなる基材1に金属イオン5が固定されたグラフト高分子鎖4が結合された構造を有している。
具体的には、所定のタンパク質としては、例えば、非共有電子対を持つ部分を有するタンパク質、好ましくは非共有電子対を持つ部分を表面に有するタンパク質が挙げられる。
非共有電子対を持つ部分を有するタンパク質としては、例えば、非共有電子対を持つアミノ酸残基を有するタンパク質、非共有電子対を持つタグ(標識)が付与されたタンパク質などが挙げられる。
非共有電子対を持つタグが付与されたタンパク質としては、例えば、システインなどの含硫アミノ酸及び/又はヒスチジンやトリプトファンなどの複素環式アミノ酸がタグとして付与されたタンパク質、システインなどの含硫アミノ酸残基及び/又はヒスチジンやトリプトファンなどの複素環式アミノ酸残基を有するポリペプチドがタグとして付与されたタンパク質などが挙げられる。
すなわち、所定のタンパク質としては、例えば、システイン、ヒスチジン及び/又はトリプトファンを備えるタンパク質が挙げられる。
具体的には、金属イオン5としては、例えば、所定のタンパク質が有する非共有電子対を持つ部分に親和性がある金属イオンが挙げられる。
所定のタンパク質が有する非共有電子対を持つ部分に親和性がある金属イオンとしては、例えば、2価の金属イオン(Mg2+、Ca2+、Cr2+、Mn2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+など)、2価及び3価の鉄イオン(Fe2+及びFe3+)、希土類元素(Sc、Y及びランタノイド)のイオンなどが挙げられる。
なお、タンパク質捕捉材料10は、金属イオン5として、1種類の金属イオンを備えていても良いし、複数種類の金属イオンを備えていても良い。
具体的には、タンパク質捕捉材料10は、例えば、図1に示すように、照射ステップと、グラフト重合ステップと、変換ステップと、親水化ステップと、固定ステップと、により製造される。
グラフト重合ステップでは、所定の官能基(例えば、エポキシ基)を有する重合性単量体(例えば、グリシジルメタクリレート(GMA))を基材1にグラフト重合することによって、所定の官能基を有するグラフト高分子鎖2を基材1に結合させる。すなわち、ラジカルを開始点として、所定の官能基を有するグラフト高分子鎖2を成長させる。
変換ステップでは、グラフト高分子鎖2が有する所定の官能基の少なくとも一部を、吸着用官能基(例えば、イミノジ酢酸基(−N(CH2COOH)2))に変換することによって、所定の官能基を有するグラフト高分子鎖2を、吸着用官能基を有するグラフト高分子鎖3に変換する。
親水化ステップでは、吸着用官能基を有するグラフト高分子鎖3に残存する所定の官能基を、親水性官能基(例えば、ジオール基((−OH)2))に変換することによって、基材1に結合されたグラフト高分子鎖を親水化する。
固定ステップでは、親水化されたグラフト高分子鎖4が有する吸着用官能基に金属イオン5(例えば、Ni2+)を吸着させることによって、金属イオン5を基材1に結合されたグラフト高分子鎖4に固定する。
なお、図1は、タンパク質捕捉材料10の製造経路の一例であり、タンパク質捕捉材料10の製造経路は、図1に限られるものではない。
そして、例えば、シリンジポンプや送液ポンプなどを用いてタンパク質捕捉用カートリッジ100に所定のタンパク質が溶解したタンパク質溶液を供給し、タンパク質捕捉材料10の一方の面(例えば、下面)から他方の面(例えば、上面)に向けてタンパク質溶液を透過させることによって、タンパク質捕捉材料10に所定のタンパク質を捕捉させる。
なお、カートリッジ20には、1枚のタンパク質捕捉材料10を充填しても良いし、複数枚のタンパク質捕捉材料10を充填しても良い。
基材1の好ましい形状としては、例えば、厚さが1〜10mm、連通孔の平均細孔径が0.5〜5μm及び連通孔の体積分率が70〜85%のシート状が挙げられる。
一方、基材1の厚さが10mmを超える場合には、厚さが厚くなり過ぎる。そのため、取り扱い難く、例えば、カートリッジ20への充填が困難であるなどの傾向を示す。
一方、連通孔の平均細孔径が5μmを超える場合には、孔径が大きくなり過ぎる。そのため、タンパク質溶液をタンパク質捕捉材料10の一方の面から他方の面へと透過させて所定のタンパク質を捕捉させる際、タンパク質溶液を高速に透過させると、所定のタンパク質が捕捉されずにタンパク質捕捉材料10を通り抜けてしまう傾向を示す。
ここで、連通孔の平均細孔径とは、例えば、バブルポイント法などの所定の評価法を利用して得られる平均流量細孔径のことである。
一方、連通孔の体積分率が85%を超える場合には、連通孔の割合が多くなり過ぎる。そのため、物理的強度が低く、例えば、繰り返し使用に適さないなどの傾向を示す。
基材1を形成する好ましい材料としては、例えば、物理的・化学的安定性に優れている、基材1自体の反応性が低いなどの特徴を有するポリオレフィン(例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなど)が挙げられる。その他、基材1を形成する材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂、ポリオレフィンとフッ素樹脂との組み合わせ(混合体や共重合体)などが挙げられる。また、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレンなども挙げられる。
好ましいグラフト重合法としては、例えば、重合開始剤が不要である、基材1の形状に制限がない、基材1全体にラジカルを生成することができるなどの特徴を有する電離放射線(電子線、X線、α線、β線、γ線など)を用いる重合法が挙げられる。その他、グラフト重合法としては、例えば、紫外線を用いる重合法、重合開始剤を用いる重合法などが挙げられる。
好ましい所定の官能基としては、例えば、吸着用官能基への変換が容易であるなどの特徴を有するエポキシ基が挙げられる。したがって、好ましい重合性単量体としては、例えば、エポキシ基を有する重合単量体であるグリシジルメタクリレート(GMA)やグリシジルアクリレートなどが挙げられる。
具体的には、吸着用官能基としては、例えば、イオン交換基やキレート形成基などが挙げられる。イオン交換基としては、例えば、スルホン酸基やリン酸基、カルボキシル基などのカチオン交換基などが挙げられる。キレート形成基としては、例えば、イミノジ酢酸基やイミノジエタノール基などが挙げられる。なお、グラフト高分子鎖3,4は、吸着用官能基として、1又は複数種類のイオン交換基を有していても良いし、1又は複数種類のキレート形成基を有していても良いし、1又は複数種類のイオン交換基及び1又は複数種類のキレート形成基を有していても良い。
好ましい吸着用官能基としては、例えば、金属イオン5とより強固に結合するなどの特徴を有するキレート形成基が挙げられる。金属イオン5とキレート形成基との結合(キレート結合)は、金属イオン5とイオン交換基との結合(静電相互作用による結合)よりも強固であることが知られている。
好ましい親水性官能基としては、例えば、所定の官能基(例えば、エポキシ基)からの変換が容易であるなどの特徴を有するジオール基(2個のヒドロキシル基)などが挙げられる。その他、親水性官能基としては、例えば、ヒドロキシル基や、ヒドロキシアルキル基(アルキル基は好ましくは低級アルキル基)、ピロリドニル基などが挙げられる。
グラフト高分子鎖4が基材1の全体に結合されたタンパク質捕捉材料10は、例えば、グラフト重合における重合性単量体の濃度、溶媒の種類、反応温度、反応時間などを制御して所定の官能基を有するグラフト高分子鎖2を基材1の全体に結合させることによって得られる。
一方、グラフト高分子鎖4が基材1の表面部に結合されて基材1の内部には非結合されたタンパク質捕捉材料10は、例えば、グラフト重合における重合性単量体の濃度、溶媒の種類、反応温度、反応時間などを制御して所定の官能基を有するグラフト高分子鎖2を基材1の表面部のみに結合させることによって得られる。
ここで、グラフト高分子鎖4が結合される表面部は、基材1の膜厚方向における基材1の表面部(表層)を指し、グラフト高分子鎖4が非結合される内部は、基材1の膜厚方向における基材1の内部(内層)を指す。
次に、タンパク質捕捉材料10を用いたタンパク質の分離精製方法について説明する。
ここで、溶出液は、例えば、タンパク質捕捉材料10が備える金属イオン5と、溶出させる所定のタンパク質と、の組み合わせに応じて、適宜選択される。
具体的には、溶出液としては、例えば、タンパク質と金属イオン5とのアフィニティ相互作用を弱める溶液や、当該アフィニティ相互作用の平衡関係をずらす溶液などが挙げられる。より具体的には、例えば、競合試薬が溶解する溶液、キレート剤が溶解する溶液、所定のpHの緩衝液などが挙げられる。
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、タンパク質捕捉材料10を製造した。
実施例では、所定の官能基を有する重合性単量体としてGAMを選択し、吸着用官能基としてイミノジ酢酸(IDA)基を選択し、親水性官能基としてジオール基を選択し、金属イオン5としてNi2+を選択した。そして、例えば、図1に示す製造経路で、Ni2+が固定されたタンパク質捕捉材料10(ニッケル固定シート)を製造した。
GMAシートのグラフト率[%](=100×(グラフトされたGMAの重量)/(基材1の重量))は、基材1をGMA溶液に浸漬させる時間が増加するほど、増加することを確認した。実施例では、グラフト率150%を採用した。
IDAシートのモル転化率[%](=100×(導入されたIDA基のモル数)/(IDA基導入前のエポキシ基のモル数))はGMAシートをイミノジ酢酸二ナトリウム溶液に浸漬させる時間が増加するほど、増加することを確認した。実施例では、モル転化率60%を採用した。
IDA-ジオールシート湿潤体積あたりのIDA基のモル数、すなわちIDA-ジオールシートのIDA基密度は、0.76mmol/mLであった。
このようにして、タンパク質捕捉材料10(ニッケル固定シート)を製造するとともに、タンパク質捕捉材料10が充填されたタンパク質捕捉用カートリッジ100を製造した。
IDA-ジオールシートに透過させた硫酸ニッケル溶液の体積が0〜約13mLの範囲では、流出液中のNi2+の濃度は0(ゼロ)mMであった。
IDA-ジオールシートに透過させた硫酸ニッケル溶液の体積が約13〜約65mLの範囲では、硫酸ニッケル溶液の供給量が増加するにつれて、流出液中のNi2+の濃度は増加した。
IDA-ジオールシートに透過させた硫酸ニッケル溶液の体積が約65mL以上の範囲では、流出液中のNi2+の濃度が供給液(硫酸ニッケル溶液)中のNi2+の濃度と同等となり、IDA-ジオールシートに約65mLの硫酸ニッケル溶液を透過させた時点で、吸着が平衡に達することが分かった。
IDA-ジオールシート湿潤体積あたりのNi2+平衡吸着量、すなわちニッケル固定シートのNi2+固定密度は、0.59mmol/mLであった。
次に、タンパク質捕捉材料10の透水性を測定した。
例えば、ニッケル固定シートに一定圧力及び一定温度下で純水を透過させ、ニッケル固定シートの透水性を測定した。
IDA基密度が0.76mmol/mL、Ni2+固定密度が0.59mmol/mLのニッケル固定シートの純水透過流束は、36m/h(ΔP=0.1 MPa,25℃)であった。
次に、タンパク質捕捉材料10を用いて所定のタンパク質の分離精製を行った。
実施例では、所定のタンパク質として、ヒスチジンがタグとして付与された緑色蛍光タンパク質(以下、「ヒスチジンタグ融合タンパク質」と呼ぶ)を選択し、溶出液として、競合試薬(イミダゾール)が溶解する溶液(250mMイミダゾール溶液)を選択した。
具体的には、液体クロマトグラフィーによって、タンパク質溶液、流出タンパク質溶液及び流出溶出液のクロマトグラムを得た。その結果を図3に示す。
具体的には、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)法によって、タンパク質溶液及び流出溶出液のバンドを得た。その結果を図4に示す。
その結果、タンパク質溶液及び流出溶出液の純度は、それぞれ30及び98であることが分かった。これにより、タンパク質捕捉材料10(ニッケル固定シート)を用いると、所定のタンパク質(ヒスチジンタグ融合タンパク質)を98%の純度で分離精製できることが分かった。
さらに、所望のタンパク質は、連通孔を通っている間に、連通孔内に配置されたグラフト高分子鎖4に固定された金属イオン5まで容易にアクセスできる。したがって、所望のタンパク質が捕捉されずにタンパク質捕捉材料10を通り抜けてしまうことが少なく、高速処理時においても高い捕捉性能を有するタンパク質捕捉材料10を構成することができる。
さらに、基材1は、連通孔の平均細孔径が0.5〜5μm及び連通孔の体積分率が70〜85%のシート状のものであり、微細な連通孔を多数有している。したがって、拡散性が良好であるためフィルター効率が良く、高速処理時においても高い捕捉性能を有するタンパク質捕捉材料10を構成することができる。
上記した実施の形態では、照射ステップと、グラフト重合ステップと、変換ステップと、親水化ステップと、固定ステップと、によってタンパク質捕捉材料10を製造するようにしたが、例えば、所定の官能基を有する重合性単量体に代えて、吸着用官能基を有する重合性単量体を基材1にグラフト重合すると、グラフト重合ステップのみで、吸着用官能基を有するグラフト高分子鎖4を基材1に結合させることができるため、変換ステップを省略することができるとともに、吸着用官能基は親水性であるため、親水化ステップを省略することができる。
ここで、吸着用官能基を有する重合性単量体は、金属イオン5を吸着するためのイオン交換基を有する重合性単量体や、金属イオン5を吸着するためのキレート形成基を有する重合性単量体であれば任意である。
具体的には、吸着用官能基を有する重合性単量体としては、例えば、イオン交換基(カチオン交換基)を有するアクリル酸などが挙げられる。また、例えば、所定の官能基(例えば、エポキシ基)を有する重合性単量体(例えば、グリシジルメタクリレートやグリシジルアクリレートなど)の所定の官能基を吸着用官能基に変換することによって作成した重合性単量体などが挙げられる。
上記した実施の形態では、照射ステップと、グラフト重合ステップと、変換ステップと、親水化ステップと、固定ステップと、によってタンパク質捕捉材料10を製造するようにしたが、例えば、基材1と所定の官能基を有する重合性単量体とを共存させた状態で、基材1に電離放射線を照射すると(照射・グラフト重合ステップ)、上記した実施の形態における照射ステップとグラフト重合ステップとを同時に行うことができる。
ここで、基材1と所定の官能基を有する重合性単量体とを共存させた状態とは、例えば、所定の官能基を有する重合性単量体が溶解する溶液(GMA溶液など)中に基材1を浸漬させた状態や、所定の官能基を有する重合性単量体が溶解する溶液を基材1に含浸させた状態などのことである。
上記した実施の形態では、照射ステップと、グラフト重合ステップと、変換ステップと、親水化ステップと、固定ステップと、によってタンパク質捕捉材料10を製造するようにしたが、例えば、基材1と吸着用官能基を有する重合性単量体とを共存させた状態で、基材1に電離放射線を照射すると(照射・グラフト重合ステップ)、上記した実施の形態における変換ステップ及び親水化ステップを省略できるとともに、照射ステップとグラフト重合ステップとを同時に行うことができる。
ここで、基材1と吸着用官能基を有する重合性単量体とを共存させた状態とは、例えば、吸着用官能基を有する重合性単量体が溶解する溶液中に基材1を浸漬させた状態や、吸着用官能基を有する重合性単量体が溶解する溶液を基材1に含浸させた状態などのことである。
また、親水化ステップは、必ずしも行う必要はない。親水化ステップは、所定の官能基がエポキシ基のように疎水性の官能基である場合は有効であるが、所定の官能基が親水性の官能基である場合は特に行う必要はない。
また、基材1は、連通孔を有する多孔質体よりなるものである必要はなく、グラフト重合法によって、基材1を形成する高分子素材(主鎖)に、グラフト高分子鎖(側鎖)を付与することができるのであれば任意であり、例えば、繊維、不織布、非多孔質体の高分子基材などであっても良い。
また、実施例において、材料(IDA-ジオールシート)をカートリッジ20に充填して、固定ステップを行うようにしたが、材料をカートリッジ20に充填するタイミングに制限は無く、例えば、基材1をカートリッジ20に充填して、照射ステップから固定ステップを行っても良いし、電子線が照射された基材1をカートリッジ20に充填して、グラフト重合ステップから固定ステップを行っても良いし、GMAシートをカートリッジ20に充填して、変換ステップから固定ステップを行っても良いし、IDAシートをカートリッジ20に充填して、親水化ステップから固定ステップを行っても良いし、固定ステップを行った後、タンパク質捕捉材料10(ニッケル固定シート)をカートリッジ20に充填するようにしても良い。
2 所定の官能基を有するグラフト高分子鎖
3,4 吸着用官能基を有するグラフト高分子鎖
5 金属イオン
10 タンパク質捕捉材料
20 カートリッジ
100 タンパク質捕捉用カートリッジ
Claims (12)
- 基材と、
前記基材に結合されたグラフト高分子鎖と、
前記グラフト高分子鎖に固定された、所定のタンパク質に親和性がある金属イオンと、
を備え、
前記所定のタンパク質と前記金属イオンとの親和性を利用して、当該所定のタンパク質を捕捉することを特徴とするタンパク質捕捉材料。 - 請求項1に記載のタンパク質捕捉材料において、
前記金属イオンは、システイン、ヒスチジン及び/又はトリプトファンを備えるタンパク質と親和性があることを特徴とするタンパク質捕捉材料。 - 請求項1又は2に記載のタンパク質捕捉材料において、
前記基材は、連通孔を有する多孔質体よりなるものであることを特徴とするタンパク質捕捉材料。 - 請求項3に記載のタンパク質捕捉材料において、
前記基材は、厚さが1〜10mm、前記連通孔の平均細孔径が0.5〜5μm及び前記連通孔の体積分率が70〜85%のシート状のものであることを特徴とするタンパク質捕捉材料。 - 請求項1〜4の何れか一項に記載のタンパク質捕捉材料において、
前記グラフト高分子鎖は、前記基材の表面部に結合されており、前記基材の内部には非結合されていることを特徴とするタンパク質捕捉材料。 - 請求項1〜5の何れか一項に記載のタンパク質捕捉材料において、
前記基材は、ポリオレフィンから構成されたものであることを特徴とするタンパク質捕捉材料。 - 請求項1〜6の何れか一項に記載のタンパク質捕捉材料をカートリッジに充填して構成されていることを特徴とするタンパク質捕捉用カートリッジ。
- 請求項1〜6の何れか一項に記載のタンパク質捕捉材料の製造方法において、
前記基材に電離放射線を照射する照射ステップと、
次いで、所定の官能基を有する重合性単量体を前記基材にグラフト重合することによって、当該所定の官能基を有するグラフト高分子鎖を当該基材に結合させるグラフト重合ステップと、
次いで、前記所定の官能基の少なくとも一部を、前記金属イオンを吸着するための吸着用官能基に変換することによって、当該所定の官能基を有するグラフト高分子鎖を、当該吸着用官能基を有するグラフト高分子鎖に変換する変換ステップと、
次いで、前記吸着用官能基に前記金属イオンを吸着させることによって、当該金属イオンを前記基材に結合されたグラフト高分子鎖に固定する固定ステップと、
を備えることを特徴とする製造方法。 - 請求項1〜6の何れか一項に記載のタンパク質捕捉材料の製造方法において、
前記基材と所定の官能基を有する重合性単量体とを共存させた状態で、当該基材に電離放射線を照射し、当該所定の官能基を有する重合性単量体を当該基材にグラフト重合することによって、当該所定の官能基を有するグラフト高分子鎖を当該基材に結合させる照射・グラフト重合ステップと、
次いで、前記所定の官能基の少なくとも一部を、前記金属イオンを吸着するための吸着用官能基に変換することによって、当該所定の官能基を有するグラフト高分子鎖を、当該吸着用官能基を有するグラフト高分子鎖に変換する変換ステップと、
次いで、前記吸着用官能基に前記金属イオンを吸着させることによって、当該金属イオンを前記基材に結合されたグラフト高分子鎖に固定する固定ステップと、
を備えることを特徴とする製造方法。 - 請求項8又は9に記載の製造方法において、
前記グラフト高分子鎖が有する前記所定の官能基を、親水性官能基に変換することによって、前記基材に結合されたグラフト高分子鎖を親水化する親水化ステップを備えることを特徴とする製造方法。 - 請求項1〜6の何れか一項に記載のタンパク質捕捉材料の製造方法において、
前記基材に電離放射線を照射する照射ステップと、
次いで、前記金属イオンを吸着するための吸着用官能基を有する重合性単量体を前記基材にグラフト重合することによって、当該吸着用官能基を有するグラフト高分子鎖を当該基材に結合させるグラフト重合ステップと、
次いで、前記吸着用官能基に前記金属イオンを吸着させることによって、当該金属イオンを前記基材に結合されたグラフト高分子鎖に固定する固定ステップと、
を備えることを特徴とする製造方法。 - 請求項1〜6の何れか一項に記載のタンパク質捕捉材料の製造方法において、
前記基材と前記金属イオンを吸着するための吸着用官能基を有する重合性単量体とを共存させた状態で、当該基材に電離放射線を照射し、当該吸着用官能基を有する重合性単量体を当該基材にグラフト重合することによって、当該吸着用官能基を有するグラフト高分子鎖を当該基材に結合させる照射・グラフト重合ステップと、
次いで、前記吸着用官能基に前記金属イオンを吸着させることによって、当該金属イオンを前記基材に結合されたグラフト高分子鎖に固定する固定ステップと、
を備えることを特徴とする製造方法。
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