本発明の第1の実施形態に係る蒸気供給装置10について、図1〜図9に基づいて説明する。先ず、蒸気供給装置10の全体構成を説明し、次いで、蒸気供給装置10を燃料電池システム100に適用した適用例を説明し、この適用例における蒸気供給装置10作用効果を説明することとする。
(蒸気供給装置の全体構成)
図1には、蒸気供給装置10のシステム構成図が示されている。この図1に示される如く、蒸気供給装置10は、蒸気発生器12を備えている。蒸気発生器12は、液体タンク14から液供給手段としてのポンプ16によって供給されてきた液体を蒸発させ、蒸気を発生するように構成されている。この実施形態では、蒸気発生器12は、加熱(潜熱の供給)により液体を気化させる加熱式の蒸発器とされている。この蒸気発生器12で発生された蒸気は、蒸気供給ライン18によって、図示しない蒸気消費装置に供給されるようになっている。すなわち、蒸気供給ライン18の下流端18Aが本発明における装置出口に相当する。
蒸気供給ライン18上には、流動抵抗体20が直列に配置されている。流動抵抗体20は、例えば多孔体、焼結体として構成されたり、繊維状の充填物やフィルタとして形成されたりした抵抗体本体がケース内に配設されて構成されており、通過するガスの流量に応じた圧力損失を生じさせるようになっている。このような流動抵抗体20を構成する上記の抵抗体本体やケースは、例えば金属やセラミック等の耐熱材料にて構成されている。
また、蒸気供給ライン18における蒸気発生器12の蒸気出口12Aと流動抵抗体20のガス入口20Aとの間には、第1ガス供給ライン22が合流している。第1ガス供給ライン22の上流端には、第1ガス供給装置24のガス供給口24Aが接続されている。また、第1ガス供給ライン22における第1ガス供給装置24のガス供給口24Aと蒸気供給ライン18との合流部J1との間には、第1のガス流量変更手段としての流量制御弁26が配設されている。流量制御弁26は、後述するコントローラ36に制御されて合流部J1に供給するガスの流量を変更(増減)させるようになっている。
一方、蒸気供給ライン18における流動抵抗体20のガス出口20Bよりも下流側部分には、第2ガス供給ライン28が合流している。第2ガス供給ライン28の上流端には、第2ガス供給装置30のガス供給口30Aが接続されている。また、第2ガス供給ライン28における第2ガス供給装置30のガス供給口30Aと蒸気供給ライン18との合流部J2との間には、第2のガス流量変更手段としての流量制御弁32が配設されている。流量制御弁32は、後述するコントローラに制御されて合流部J1に供給するガスの流量を変更させるようになっている。第1ガス供給装置24、第2ガス供給装置30は、例えばブロアやコンプレッサ等の起風装置、ガスボンベ等のガス貯蔵器として構成されている。
また、蒸気供給装置10は、蒸気供給ライン18における合流部J2の下流側に直列に設けられた混合器34を備えている。混合器34は、蒸気発生器12で発生された蒸気と、第1ガス供給ライン22、第2ガス供給ライン28から蒸気供給ライン18に合流されたガスとが通過に伴って略均一に混合されるように構成されている。したがって、本蒸気供給装置10は、蒸気とガスとの混合気を蒸気消費装置に供給する構成とされている。具体的には蒸気供給装置10は、例えば、燃料蒸気と空気との混合気を燃焼器に供給したり、水蒸気と炭化水素等の改質原料ガスとの混合気を改質型水素発生装置に供給したり、加湿用の水蒸気とカソード空気又はアノード用の水素との混合気を燃料電池に供給したりする用途に適用することができる。別の見方をすれば、蒸気供給装置10は、蒸気を含む混合気消費装置に混合気を供給するための混合気供給装置であると把握することができる。
そして、蒸気供給装置10は、上に例示した如き各種の蒸気消費装置に供給する蒸気量を変化させ得る構成とされている。すなわち、蒸気供給装置10は、蒸気消費装置からの要求蒸気量(の変化)に応じた量の蒸気を供給するようになっている。具体的には、蒸気供給装置10は、制御手段としてのコントローラ36を備えている。コントローラ36は、蒸気発生器12での加熱量、及び蒸気の原料である液体の蒸気発生器12への供給量及び変化させるために、蒸気発生器12及びポンプ16を制御し、また蒸気発生器12で発生する蒸気量に応じて蒸気供給ライン18へのガス供給量を変化させるために流量制御弁26、32を制御するように構成されている。
この実施形態では、コントローラ36は、蒸気消費装置側からの蒸気消費量の増減要求に応じて蒸気発生器12の蒸気生成量を制御する通常モードと、一時的な蒸気急増要求に応じて蒸気放出量を一時的に急増させる蒸気放出モードと、蒸気放出モードで減少した蒸気発生器12内の液量を回復させる液量回復モードとを実行し得る構成とされている。
通常モードでは、コントローラ36は、蒸気発生器12の内部圧力Pinが略一定になる(所定の範囲内にある)ように、かつ蒸気消費装置に供給される混合気の蒸気濃度(分圧)が略一定になるように、流量制御弁26、32を制御する構成とされている。このため、コントローラ36は、蒸気発生器12(図示しないヒータ)、ポンプ16、流量制御弁26、32と電気的に接続されると共に、流動抵抗体20の内部圧力Pinに応じた信号を出力する圧力計(センサ)38に電気的に接続されている。また、この実施形態では、コントローラ36は、流動抵抗体20の内部温度Tinに応じた信号を出力する温度計(センサ)40にも電気的に接続されている。さらに、コントローラ36は、液量回復モードを実行するために、蒸気発生器12の蒸気流量(単位時間当たりの発生蒸気量)に応じた信号を出力する蒸気流量計42に電気的に接続されている。
通常モードでコントローラ36は、蒸気消費装置から蒸気流量Vsの増加要求を受けた場合には、基本的に、要求された蒸気流量Vsの増加分ΔVsiに応じた分だけ、蒸気発生器12への液体供給量Vpが増すようにポンプ16を制御すると共に、要求された蒸気流量Vsの増加分ΔVsiの分だけ、蒸気発生器12と流動抵抗体20との間の合流部J1へのガス供給量V1が減少するように流量制御弁26を制御する構成とされている。これにより蒸気供給装置10では、発生蒸気量の増加に伴う流動抵抗体20での圧力損失の増大が相殺され、蒸気発生器12の圧力Pinが略一定に保たれるようになっている。
また、通常モードでコントローラ36は、蒸気消費装置から蒸気流量Vsの増加要求を受けた場合には、基本的に、要求された蒸気流量Vsの増加割合((Vs+ΔVsi)/Vs)と略同じ割合で、合流部J1及び合流部J2から蒸気供給ライン18に供給される総ガス量(V1+V2)が増加するように、流量制御弁26、32を制御する構成とされている。すなわち、合流部J1でのガス供給量V1が上記の通り制限されている蒸気供給装置10では、蒸気供給ライン18全体での総ガス供給量(V1+V2)は、流量制御弁32の制御による合流部J2へのガス供給量V2によって調整されるようになっている。
一方、通常モードでコントローラ36は、蒸気消費装置から蒸気流量Vsの減少要求を受けた場合には、基本的に、要求された蒸気流量Vsの減少分ΔVsiに応じた分だけ、蒸気発生器12への液体供給量V1が減るようにポンプ16を制御すると共に、要求された蒸気流量Vsの減少分ΔVsiの分だけ、蒸気発生器12と流動抵抗体20との間の合流部J1へのガス供給量V1が増加するように流量制御弁26を制御する構成とされている。これにより蒸気供給装置10では、発生蒸気量の減少に伴う流動抵抗体20での圧力損失の減少が相殺され、蒸気発生器12の圧力Pinが略一定に保たれるようになっている。
また、通常モードでコントローラ36は、蒸気消費装置から蒸気流量Vsの減少要求を受けた場合には、基本的に、要求された蒸気流量Vsの減少割合((Vs−ΔVsi/Vs)と略同じ割合で、合流部J1及び合流部J2から蒸気供給ライン18に供給される総ガス量(V1+V2)が減少するように、流量制御弁26、32を制御する構成とされている。すなわち、合流部J1でのガス供給量V1が上記の通り制限されている蒸気供給装置10では、蒸気供給ライン18全体での総ガス供給量(V1+V2)は、流量制御弁32の制御による合流部J2へのガス供給量V2によって調整されるようになっている。
流量制御弁26に対する制御による合流部J1へのガス供給量V1の変化量のコントローラ36による求め方について補足する。合流部J1へのガス供給量V1の変化分をΔV1とすると、変化後のガス供給量(V1+ΔV1)は、以下に示す式(1)の如く、変化前のガス供給量V1、変化後のポンプ16による変化後の液体供給量(Vp+ΔVp)(蒸気発生器12での蒸気発生量(Vs+ΔVsi)としても良い)、蒸気発生器12の内部温度Tin、及び蒸気発生器12の内部圧力の目標値Ptと現実の内部圧力Pinとの差分eの関数とされる。
V1+ΔV1=f(V1、(Vs+ΔVsi)、Tin、e) (1)
より具体的には、流動抵抗体20を通過するガスの流量Vと圧力損失ΔPとの図3(B)に示す線図Rの如き関係がわかっていれば、蒸気発生器12の内部圧力の目標値Ptと現実の内部圧力Pinとの差分から合流部J1へのガス供給量の増加分ΔV1を得ることができる。ここでは、流動抵抗体20を通過するガスの流量Vと圧力損失ΔPとの関係は、流動抵抗体20を図3(B)に示す如く多数の細孔20Cが形成された抵抗体本体20Dを内蔵するモデルとした場合の流動抵抗体20を通過するガスの流量Vと圧力損失ΔPとの関係を以下の如く例示する。
流動抵抗体20の圧力損失ΔPは、以下の式(2)に示される如く、多数の細孔20Cの通過に伴う損失(微細流路内部損失)ΔPc、多数の細孔20Cへのガス流入に伴う損失(縮小損失)ΔPin、多数の細孔20Cからのガス流出に伴う損失(拡大損失)ΔPoutの和として把握することができる。
ΔP=ΔPc+ΔPin+ΔPout (2)
微細流路内部損失ΔPcは、流動抵抗体20を通過する混合気の密度をρ,抵抗体本体20Dの長さをL、多数の細孔20Cを通過する混合気の流速、動粘性係数をそれぞれu、ν、各細孔20Cの直径をde、蒸気供給ライン18の内径(流動抵抗体20を構成するケースの直径)をDe、レイノルズ数をRe(=u×de/ν)としてf=(64/Re)とすると、以下の式(3)から得ることができる。なお、流速uは、流動抵抗体20を通過する蒸気の流量(Vs+ΔVsi)、ガスの流量V1と、流路形状とから算出することができる。また、説明は省略するが、密度ρ、レイノルズ数Re(動粘性係数ν)は、温度Tinの関数でもあり、温度計40からの信号に応じて選択又は算出される。
ΔPc=(ρ×L×u2)×f/(2×de) (3)
また、抵抗体本体20Dの収縮係数をCc(ε)、開口比をεとすると、縮小損失ΔPin、拡大損失ΔPoutは、以下の式(4)、(5)からそれぞれ得ることができる。
ΔPin=1/2×ρ×u2×{(1/Cc(ε)−1)}2 (4)
ΔPout=1/2×ρ×u2×(1−ε)2 (5)
以上により、式(2)で示す流動抵抗体20の流量Vと圧力損失ΔPとの関係を算出することができるので、蒸気発生器12の内部圧力の目標値Ptと現実の内部圧力Pinとの差分eによりガス供給量の変化分ΔV1を得ることができる。なお、例えば略一定の運転温度で運転される用途においては、図3(B)に示す如き流量Vと圧力損失ΔPとの関係をコントローラ36に記憶させておいても良い。
また、蒸気放出モードでは、コントローラ36は、図8(A)に示されるように、蒸気発生器12の内部圧力Pinの制御目標値Ptが、通常モード及び液量回復モードでの内部圧力の目標値Pt(以下、内部圧力Pt2という)よりも低いPt1になり、かつ蒸気消費装置に供給される混合気の蒸気濃度(分圧)が略一定になるように、流量制御弁26、32を制御する構成とされている。これにより、蒸気放出モードの蒸気供給装置10では、主に蒸気発生器12の内部圧力低下(Pt2−Pt1)に基づく液体の沸点低下(過熱液の増加)分だけ、一時的に蒸気発生量を増す構成とされている。なお、蒸気放出モードでの内部圧力Pt1(の下限)は、任意の圧力とすることができるが、この実施形態では、予め設定された一定値とされている。
一方、液量回復モードでは、コントローラ36は、蒸気発生器12への液体供給量が増加されるようにポンプ16を制御すると共に、蒸気発生器12の内部圧力がPt1よりも上昇し、かつ蒸気消費装置に供給される混合気の蒸気濃度(分圧)が略一定になるように、流量制御弁26、32を制御する構成とされている。したがって、液量回復モードでは、蒸気発生器12からの所定の(通常モードで要求される)蒸気供給量が維持されながら、蒸気発生器12の貯液量(液位)が増すようになっている。
(燃料電池システムへの適用例)
図2には、蒸気供給装置10の燃料電池システム100への適用例が模式的なシステム構成図にて示されている。この図に示される如く、蒸気供給装置10は、燃料電池102に対し水素を高濃度で含む燃料ガスを供給するための燃料供給装置104の一部を構成している。燃料供給装置104は、炭化水素(例えば、プロパンやブタンなど)を主成分とする燃料を、水蒸気改質反応及び部分酸化反応を含む改質反応によって水素及び一酸化炭素を含む改質ガスに改質する改質反応部106を含んで構成されている。そして、蒸気供給装置10は、液体タンク14に貯留された水から蒸気発生器12にて水蒸気を発生させ、この水蒸気にブロアである第1ガス供給装置24、第2ガス供給装置30からの空気を混合し、水蒸気改質反応に供される水蒸気と部分酸化反応に供される空気との混合気を燃料供給装置104の改質反応部106に供給する構成とされている。
また、図2に示される如く、燃料供給装置104は、水ポンプ108による液体タンク14からの水を改質ガスに噴霧して水蒸気と改質ガスとからなる混合ガスとすると共に所定範囲の温度に混合ガスを冷却する熱交換部110と、混合ガス中の一酸化炭素をシフト反応により水素と二酸化炭素とにシフトするシフト反応部112と、シフト反応部112ではシフトできなかった一酸化炭素をブロア114により供給される空気中の酸素を用いて酸化して水素リッチで一酸化炭素濃度が低い燃料ガスとする一酸化炭素浄化部116とを備える。燃料供給装置104は、一酸化炭素浄化部116の出口ガスを上記した燃料ガスとして燃料電池102に供給するようになっている。
図2に示される如く、蒸気供給装置10の混合器34には、燃料ポンプ118により燃料タンク120から炭化水素系燃料が供給されるようになっている。燃料は、図示しないインジェクタ等により混合器34に噴霧されても良く、図示しない気化器にて気化されたのちに混合器34に供給されても良い。したがって、蒸気供給装置10の混合器34は、燃料、水蒸気、空気が混合された改質原料ガスを、燃料供給装置104の改質反応部106に供給する構成とされている。
蒸気供給装置10のコントローラ36は、燃料電池システム100の全体を制御するメインコントローラから要求される水蒸気量に基づいて、通常モードにおいて水蒸気濃度を略一定に維持しつつ水蒸気発生量を増減させるようになっている。また、コントローラ36は、メインコントローラからのヒートスポット冷却要求に基づいて、蒸気放出モードを実行し、その後、液量回復モードを実行する構成とされている。
ここで、ヒートスポットについて補足する。燃料電池システム100の燃料供給装置104では、発熱反応を伴う改質反応部106及びシフト反応部112でヒートスポットを生じ得る。改質反応部106では、部分酸化反応、シフト反応、メタネーション反応等の発熱反応と、吸熱反応である水蒸気改質反応とが並行して進む。水蒸気改質反応は、発熱反応で発生した熱の一部を利用することで反応を維持する。一方、部分酸化反応は、水蒸気改質反応を含む改質反応を維持し得る温度において、発熱量と吸熱量とがバランスするように供給される空気量が制御されている(蒸気供給装置10により水蒸気と空気との混合気の水蒸気濃度が一定とされている)。しかしながら、水蒸気改質反応に対し部分酸化反応の反応速度が速いため、ガス流れ方向における両反応の分布は完全に一致することはなく、反応速度の速い部分酸化反応が集中する改質反応部106の入口側において強い温度分布が発生する。ところで、燃料電池102による発電量の増加時には、燃料電池102からの燃料ガスの供給量増加要求に対し、改質原料(燃料、水蒸気、空気)の燃料供給装置104への供給量の増加制御が行われる。この反応量変化の過渡期においても、上記の通り水蒸気改質反応よりも部分酸化反応の反応速度が速いため、改質反応部106での反応が定常状態に至るまでに一時的な熱量のアンバランスが発生し、部分酸化反応が集中する改質反応部106の入口付近で局部的に温度の高い部分すなわちヒートスポットが生じる場合がある。
一方、シフト反応部112においては、シフト反応、メタネーション反応等の発熱反応が進行し、これら発熱反応により生じた熱は改質ガス(と水蒸気との混合ガス)の温度上昇(顕熱)により吸収されることで、所定の温度範囲でシフト反応が維持される。これにより、混合ガス中の一酸化炭素の濃度が低減される。このシフト反応部112の上流側に位置する改質反応部106において、燃料と水蒸気との供給量の変化速度の差に起因してS/C比(炭化水素ガス中のカーボン量に対する水蒸気量)が一時的に低下する(水蒸気が不足する)場合がある。この場合、改質反応部106の出口における一酸化炭素の濃度は一時的に増加するので、シフト反応部112において発熱量が吸熱量を上回ることとなり、該シフト反応部112に高温部分すなわちヒートスポットが生じ得る。
燃料電池システム100のメインコントローラは、改質反応部106、シフト反応部112でヒートスポットを検出した場合、ヒートスポットの発生を予測した場合、又はヒートスポットの発生確率が高い運転条件の場合(例えば発電量を増加する際の過渡期等)等に、蒸気供給装置10のコントローラ36に対しヒートスポット冷却要求を出力するようになっている。
次に、第1の実施形態の作用について、図4〜図6に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
上記構成の燃料電池システム100に適用された蒸気供給装置10では、運転開始後、コントローラ36は、図4に示される如く、ステップS100で、メインコントローラからヒートスポットの冷却要求がされているか否かを判断する。メインコントローラからヒートスポットの冷却要求がされていないと判断したコントローラ36は、ステップS102で蒸気発生器12の内部圧力の目標値PtをPt2としてステップS104に進み、通常モードの制御を実行する。
一方、コントローラ36は、メインコントローラからヒートスポットの冷却要求がされていると判断した場合には、ステップS106で蒸気発生器12の内部圧力の目標値PtをPt1としてステップS108に進み、蒸気放出モードの制御を実行する。さらに、コントローラ36は、蒸気放出モードの制御の実行後、ステップS110で蒸気発生器12の内部圧力の目標値Ptの設定値をPt2としてステップS112に進み、液量回復モードの制御を実行する。コントローラ36は、ステップS104又はステップS112の実行後、ステップS100に戻る。以下、通常モード、蒸気放出モード、液量回復モードの各制御について説明する。
(通常モード)
通常モードでは、図5に示されるフローが実行される。すなわち、通常モードにおいてコントローラ36は、ステップS10で、蒸気供給対象である蒸気消費装置から要求蒸気量、濃度に応じた情報を受け取る。次いでコントローラ36は、ステップS12に進み、要求蒸気量、濃度に応じてポンプ16による蒸気発生器12への供給液量、ステップS12での加熱量、流動抵抗体20の上下流の合流部J1、J2への供給ガス量をそれぞれ算出する。なお、ステップS12での処理には、各制御量の算出に必要な情報(例えば温度Tinの入力)が含まれる。そして、ステップS14では、ステップS12で算出した供給液量、加熱量、及び合流部J1、J2への供給ガス量に基づいて、ポンプ16、流量制御弁26、流量制御弁32、ステップS12のヒータへの給電量に応じた信号を出力する。これにより、蒸気供給装置10は、要求蒸気量、濃度の蒸気とガスとの混合器を生成し、蒸気消費装置に供給する。
コントローラ36は、ステップS16で圧力計38からの信号を入力し、ステップS18で、蒸気発生器12の内部圧力Pinが目標値Ptの90%を下回っているか否かを判断する。蒸気発生器12の内部圧力Pinが目標値Ptの90%を下回っていると判断した場合には、ステップS20に進む。ステップS20では、流量制御弁26、32を制御して合流部J1への供給ガス量を増してPinを上昇させる一方、合流部J2への供給ガス量を減少して、蒸気供給ライン18へのトータルでのガス供給量を維持する。
コントローラ36は、ステップS18において蒸気発生器12の内部圧力Pinが目標値Ptの90%以上であると判断した場合には、ステップS22に進む。ステップS22では、蒸気発生器12の内部圧力Pinが目標値Ptの110%を上回っているか否かを判断する。蒸気発生器12の内部圧力Pinが目標値Ptの110%を上回っていると判断した場合には、ステップS24に進む。ステップS24では、流量制御弁26、32を制御して合流部J1への供給ガス量を減じてPinを低減させる一方、合流部J2への供給ガス量を増して、蒸気供給ライン18へのトータルでのガス供給量を維持する。
コントローラ36は、ステップS24において蒸気発生器12の内部圧力Pinが目標値Ptの110%以下であると判断した場合には、ステップS26に進む。ステップS26では、コントローラ36による制御の終了条件が成立したか否かを判断する。コントローラ36による制御の終了条件が成立したと判断した場合には、本制御を終了し、コントローラ36による制御の終了条件が成立していないと判断した場合には、ステップS10に戻る。
ステップS10でコントローラ36は、蒸気消費装置から要求蒸気量、濃度に応じた情報を再度受け取る。したがって、供給蒸気量の変動が生じた場合には、ステップS10で入力された情報が前回の情報とは異なり、ステップS12では、変更された要求蒸気量に応じて蒸気発生器12への供給液量、加熱量、及び合流部J1、J2への供給ガス量が算出される。この際、合流部J1へのガス供給量V1の変化分ΔV1は、上記した通り図3に示す圧力差を解消するだけのガス流量の変化分として算出され、さらにこのように変化した合流部J1へのガス供給量(V1+ΔV1)を用いて、蒸気濃度を維持するために合流部J2に供給される要求蒸気量の変化に応じたガス量V2rev(又はガス供給量V2に対する変化分ΔV2)が算出される。すなわち、ガス量V2は、以下の式(6)を満たすように決められる。
(Vs+ΔVsi)/(V2rev+(V1+ΔV1))=Vs/(V2+V1)
(6)
そしてコントローラ36は、上記したのと同様に、ステップS18、S22で蒸気発生器12の圧力に変動があると判断された場合はステップS20、S24でガス供給量を補正しつつ、ステップS26で制御終了と判断されるまで、図5のフローを繰り返す。
ここで、蒸気供給装置10では、上流端が蒸気発生器12の蒸気出口12Aに接続された蒸気供給ライン18に流動抵抗体20が配設されると共に、該流動抵抗体20のガス入口20Aと蒸気発生器12の蒸気出口12Aとの間の合流部J1への供給ガス量を変化させ得る流量制御弁26を第1ガス供給ライン22に設けたので、要求発生量の変化に対し高応答で供給(発生)蒸気量を追従させることができる。
この点を図7に示す例を参照しつつ補足する。図7(A)には、蒸気供給ライン18の下流端18Aでの蒸気濃度が一定となるように要求蒸気量がSr1とSr2(=Sr1/5)との間で変化される場合における蒸気供給装置10を構成する各部の圧力が示されている。太い実線(白抜き丸プロット)は、要求蒸気量がSr1である場合の各部の圧力、細い実線(黒塗り参画プロット)は、要求蒸気量がSr2である場合の各部の圧力、破線(黒塗り丸プロット)は、要求蒸気量がSr2で合流部J1へのガス供給量の変化がない比較例における各部の圧力が示されている。
この図から、合流部J1(流動抵抗体20のガス入口20Aの直上流)に供給するガス流量を、要求蒸気量がSr1である場合に、要求蒸気量がSr2である場合と比較して蒸気発生量の差分(Sr1−Sr2)だけ小さくし、換言すれば、要求蒸気量がSr2である場合に、要求蒸気量がSr1である場合と比較して蒸気発生量の差分(Sr1−Sr2)だけ大きくすることで、蒸気発生器12の内部圧力Pinが蒸気発生量に依らず一定に保たれることがわかる。これにより、蒸気供給装置10では、図7(B)に示される如く、沸点Tbを一定にすることができ、蒸気発生器12(ヒータ)の加熱量の増減によって蒸気発生量を良好に制御することができる。
例えば図7(A)に破線にて比較例として示した如く合流部J1へのガス供給量を変化させない構成では、要求発生量がSr1からSr2に減少した場合に蒸気発生器12の内部圧力Pinが低くなってしまうことがわかる。この作用は、図12に示す流動抵抗体20を備えない蒸気供給装置での作用と定性的に同じであるため、この図12に基づいて補足する。図12(A)には、蒸気供給ライン18の下流端18Aでの蒸気濃度が一定となるように要求蒸気量がSr1とSr2(=Sr1/5)との間で変化される場合における比較例に係る構成の各部の圧力が示されている。この図から、要求蒸気量(発生量)が大きい場合には、供給ガス量も大きくなるため装置各部で圧力が高く、逆に要求蒸気量(発生量)が小さい場合には、供給ガス量も小さくなるため装置各部で圧力が低くなり、蒸気発生器12の内部圧力Pinが要求蒸気量に応じて(ほぼ比例して)変化してしまうことがわかる。この場合、図12(B)に示される如く、蒸気発生器12の内部では圧力Pinに応じて沸点Tbが変化する。具体的には、要求蒸気量Sr1である大きい場合の沸点Tb3は、要求蒸気量Sr2である場合の沸点Tb4に対し高くなる。このため、例えば要求蒸気量をSr2からSr1に変化(増加)させる場合には、沸点が高くなるために蒸気が不足しやすい状態になり、逆に要求蒸気量をSr1からSr2に変化(減少)させる場合には、沸点が低くなるために蒸気が過剰になりやすい状態になる。すなわち、蒸気発生器12の内部圧力Pinの変化によって、要求蒸気量の変化に追従し難くなってしまう。
これに対して蒸気供給装置10では、上記した通り要求蒸気量の変動時にも蒸気発生器12の内部圧力Pinが一定に保たれるので、ポンプ16(供給液量)、流動抵抗体20(ヒータによる加熱量)の制御によって、要求蒸気量に従って応答良く蒸気供給量を変化させることができる。
またここで、蒸気供給装置10では、蒸気発生器12の内部圧力Pinを一定に保つために合流部J1にガスを供給する第1ガス供給ライン22、第1ガス供給装置24、流量制御弁26に加えて、流動抵抗体20の下流である合流部J2にガスを供給する第2ガス供給ライン28、第2ガス供給装置30、流量制御弁32を備えるため、上記の通り蒸気発生器12の内部圧力Pinを一定に保ちながら、要求蒸気量の変化に応じて供給蒸気量を増加させると共に蒸気消費装置に供給する混合気中の蒸気濃度を維持することができる。すなわち、蒸気供給装置10では、高い応答性で安定した出力(混合気の量、蒸気濃度)を得ることができる。以下、この点を実験結果に基づき確認する。
図9は、要求蒸気量を急激に増加させた場合の実験結果を示している。図9(A)は、蒸気供給装置10の蒸気発生器12への供給液量、合流部J1、J2への供給ガス量の時間変化を示している。時間0で要求蒸気量の増加指令が入力され、蒸気発生器12への供給液量(発生蒸気量)の増加に伴って、合流部J1への供給ガス量が減じられると共に、合流部J2への供給ガス量が増加されていることがわかる。図9(B)は、蒸気消費装置の入口(蒸気供給ライン18の下流端18A)の圧力、及び蒸気濃度の時間変化(応答)を示している。時間0から供給蒸気量の増加に伴い圧力が増加することがわかる。そして、この図から、蒸気供給装置10では、混合気中の蒸気濃度が蒸気供給量(圧力)の変化に依らず、ほぼ一定であることが確かめられた。換言すれば、増加されたガス供給量に対して蒸気が高い応答性で発生されていることがわかる。なお、図示は省略しているが、流動抵抗体20のガス入口20A側、すなわち蒸気発生器12内の内部圧力Pinは、合流部J1への供給ガス量の減少により、蒸気量の増加要求がされた時間0から略一定に保たれることが確認されている。
この図9(B)に破線にて示す線図は、比較例に係る制御方法で制御した場合の蒸気濃度の応答を示している。この制御方法は、図9(C)に示される如く、合流部J1へのガス供給を常時0とし、合流部J2へのガス供給のみで蒸気濃度を一定に維持しようとするものである。この比較例に係る制御では、図9(B)に示される如く、要求蒸気量の変化直後から蒸気濃度が著しく低下し、蒸気の供給不安定状態になってしまう。すなわち、この比較例では、要求蒸気量の増加に対応してガス供給量が増すが、これによる蒸気発生器12の内部圧力Pinの増大に伴って図12(B)に示される如く沸点Tbが上昇してしまい、蒸気発生(量の増加)が抑制されるために、上記した蒸気濃度の低下が生じる。この実験例では、蒸気濃度が所定濃度に回復するのに略100秒を要している。この比較例との比較により、蒸気供給装置10が著しく高い応答性を示し、要求蒸気量の変化に追従して蒸気濃度を維持することができることが確かめられた。
そして、蒸気供給装置10では、蒸気供給ライン18に流動抵抗体20を設けると共に該流動抵抗体20の上下流にそれぞれガス供給部を設けた構成にて、上記した各効果を得ることができる。すなわち、蒸気を発生させるため高温となる蒸気供給ライン18に、高温・耐熱の高価なシール材を用い、かつ駆動部の冷却のために大型化された流量調整弁等を設ける必要がないので、蒸気供給装置10を安価でかつコンパクトに構成することはできる。しかも、上記の如き流量調整弁を設けた構成では、材料の耐熱温度の制限によって高温での始動が許容されないので、初期始動の際に装置(蒸気発生器12)の昇温に長時間を要することとなる。これに対して蒸気供給ライン18に流量調整弁を備えない蒸気供給装置10では、高温での始動が可能であり、早期に装置(蒸気発生器12)の昇温すなわち通常運転への移行を果たすことができる。
(蒸気放出モード)
蒸気放出モードでは、Pin=Pt1である点、及びステップS26の制御終了条件が異なる点を除いて、図5に示す通常モードと同様の制御が行われる。このため、上記した通常モードと異なる点について補足する。
蒸気放出モードでは、蒸気発生器12の制御目標である蒸気発生器12の内部圧力の目標値PtがPt2からPt1に切り替わるので、先ずステップS22からステップS24に進んで合流部J1への供給ガス量が減少されるので、内部圧力Pinが急減される。このため、蒸気発生器12の内部では、図8(B)に示される如く、水の沸点TbがTb1からTb2へ低下し、圧力Pt1での過熱水が瞬間的に蒸発して一時的に水蒸気の排出量が増す。その後は、ステップS26で制御(蒸気放出モード)終了と判断されるまで、図5のフローを繰り返す。この場合において、蒸気発生器12の内部圧力の目標値Pt=Pt1となっているので、蒸気発生器12は、通常モードと比較して(加熱量一定)、水蒸気の放出量が多い。また、燃料電池システム100への蒸気供給濃度が一定(ステップS10で設定)である蒸気供給装置10では、水蒸気の放出量の増加に伴って合流部J2へのガス供給量が増す。
この蒸気放出モードで水蒸気、空気の供給量が増すことで、改質反応部106、シフト反応部112では、水蒸気、空気増加分の顕熱冷却効果、熱容量流量の増加効果により、温度上昇が抑制される。特に、改質反応部106、シフト反応部112への供給が増加されるガスが水蒸気を主要ガスとして含むため、例えば発熱反応を促進する空気(のみ)を導入する場合と比較して、改質反応部106、シフト反応部112の温度上昇抑制効果が高い。また、蒸気発生器12内の水を蒸発して生成する水蒸気を冷媒として用いるため、蒸気発生器12の圧力をPin2からPin1に急減させることで、瞬間的に水蒸気を放出することができる。すなわち、ホットスポットの冷却要求から短時間で水蒸気を放出して改質反応部106、シフト反応部112の温度上昇を効果的に抑制することができる。
しかも、蒸気供給装置10では、改質反応部106への供給水蒸気量を増すことで、S/C比が一時的に増加するので、吸熱反応である水蒸気改質反応が促進されて、改質反応部106の温度上昇が抑制される。また、水蒸気改質反応が促進されることで改質反応部106から排出される一酸化炭素の濃度が一時的に低下するため、シフト反応部112でのシフト反応に伴う発熱が抑制され、該シフト反応部112での温度上昇がさらに抑制される。
以上により、蒸気供給装置10が蒸気放出モードで運転されることで、ヒートスポットの冷却効果が得られる。
(液量回復モード)
そして、例えば、蒸気放出モードにおけるステップS26では、ヒートスポットの冷却要求が解除された場合に、コントローラ36は、制御終了と判断し、蒸気放出モードを終了する。このコントローラ36は、図4のステップS110で蒸気発生器12の内部圧力の目標値PtをPt1からPt2(>Pt1)に切り替え、図6に示される液量回復モードを実行する。
液量回復モードにおいてコントローラ36は、ステップS30で、蒸気供給対象である蒸気消費装置から要求蒸気量(Vs)、濃度、及び蒸気発生器12に貯蔵すべき液量(蒸気換算でΔVsd)に応じた情報を受け取る。次いでコントローラ36は、ステップS32に進み、要求蒸気量及び貯蔵液量、濃度に応じてポンプ16による蒸気発生器12への供給液量(蒸気換算でVs+ΔVsd)、ステップS12での加熱量、流動抵抗体20の上下流の合流部J1、J2への供給ガス量をそれぞれ算出する。なお、ステップS12での処理には、各制御量の算出に必要な情報(例えば温度Tinの入力)が含まれる。そして、ステップS34では、ステップS32で算出した供給液量、加熱量、及び合流部J1、J2への供給ガス量に基づいて、ポンプ16、流量制御弁26、流量制御弁32、ステップS12のヒータへの給電量に応じた信号を出力する。
これにより、蒸気供給装置10は、要求蒸気量、濃度の蒸気とガスとの混合器を生成し、蒸気消費装置に供給しつつ、蒸気発生器12の内部圧力の目標値PtがPt2(>Pt1)に切り替わることで、圧力(沸点)上昇分だけ蒸気発生器12内の蒸気(圧力Pt2での過冷却蒸気)が凝縮して液として蒸気発生器12に蓄えられる。すなわち、図8(B)に示される如く、蒸気放出モードで減少した分の液が蒸気発生器12に蓄えられる。
コントローラ36は、ステップS36で蒸気流量計42からの信号を入力し、ステップS38で、蒸気発生器12の蒸気量(蒸気流量)Vsが目標値Vtの90%を下回っているか否かを判断する。蒸気発生器12の蒸気流量Vsが目標値Vtの90%を下回っていると判断した場合には、ステップS40に進む。ステップS40では、流量制御弁26、32を制御して合流部J1への供給ガス量を減じてVsを増加させる一方、合流部J2への供給ガス量を増加して、蒸気供給ライン18へのトータルでのガス供給量を維持する。
コントローラ36は、ステップS38において蒸気発生器12の蒸気流量Vsが目標値Vtの90%以上であると判断した場合には、ステップS42に進む。ステップS42では、蒸気発生器12のVsが目標値Vtの110%を上回っているか否かを判断する。蒸気発生器12の蒸気流量Vsが目標値Vtの110%を上回っていると判断した場合には、ステップS44に進む。ステップS44では、流量制御弁26、32を制御して合流部J1への供給ガス量を増してVsを減少させる一方、合流部J2への供給ガス量を減少させて、蒸気供給ライン18へのトータルでのガス供給量を維持する。
コントローラ36は、ステップS44において蒸気発生器12の蒸気流量Vsが目標値Ptの110%以下であると判断した場合には、ステップS46に進む。ステップS46では、コントローラ36による制御(液量回復モード)の終了条件が成立したか否かを判断する。制御終了条件としては、例えば、蒸気放出モードの実行時間及び蒸気発生器12の容量に応じて設定される設定時間の経過、液位計を設けた場合における液位計の出力信号が設定値に至った場合等とすることができる。コントローラ36による制御の終了条件が成立したと判断した場合には、本制御を終了し、コントローラ36による制御の終了条件が成立していないと判断した場合には、ステップS30に戻る。
ステップS30でコントローラ36は、蒸気消費装置から要求蒸気量、濃度に応じた情報を再度受け取る。したがって、供給蒸気流量Vsの変動が生じた場合にコントローラ36は、上記した通常モードと同様に、供給蒸気量に応じてJ1、J2への供給ガス量を算出し、供給蒸気流量Vsの変化に追従すると共に供給ガスの濃度を維持しつつ蒸気発生器12内の液量を増加させる。そしてコントローラ36は、上記したのと同様に、ステップS38、S42で蒸気発生器12の蒸気流量Vsに変動があると判断された場合はステップS40、S44で蒸気流量Vsを補正しつつ、ステップS26で制御終了と判断されるまで、図6のフローを繰り返す。
これにより、蒸気供給装置10では、ヒートスポットの冷却のために水蒸気として供給した分の液量を、燃料電池システム100からの要求に応じた水蒸気(と空気との混合ガス)を供給しながら回復することができる。液量回復モードでは、蒸気発生器12への供給液量をΔVsd分だけ増しつつ蒸気発生器12の内部圧力の目標値Pt=Pt2(>Pt1)とするので、換言すれば、図8(B)に示される如く沸点TbがTb1からTb2へ上昇するので、瞬間的に蒸気発生器12の液量が回復する。すなわち、次回のヒートスポット冷却要求に応じて蒸気放出モードを行い得る状態に短時間で復帰する。
以上説明したように、蒸気供給装置10では、蒸気発生器12の内部圧力を変化させて液の沸点(露点)を変化させることで、急激に水蒸気放出量を変化させることができる。ここで、この実施形態において急激とは、流量制御弁26、32の応答時間で規定された蒸気放出時間、貯蔵時間(数秒)において、蒸気発生器12の液位(貯液量)を内圧に応じた液位まで変化させる程度の蒸気発生量の時間変化率を生じる場合をいう。この実施形態では、液位の変化幅として、蒸気発生器12の全液位の20%から80%までの変化を上下限として設定している。より具体的には、例えば蒸気発生器12の全液位の50%が通常の液位である場合に、流量制御弁26、32の応答時間で液位を50%から20%まで低減する程度に蒸気発生量を増し、又は流量制御弁26、32の応答時間で液位を50%から80%まで増加させる程度に蒸気発生器12の内部圧力の目標値Ptが設定されている。蒸気発生器12の液位が20%を下回ると伝熱面積の不足による蒸気発生の減少が懸念され、蒸気発生器12の液位が80%を上回ると過熱液の液溢れが懸念されるが、上記の如く蒸気発生器12の全液位の20%から80%までの範囲で変化させる蒸気発生器12の内部圧力の目標値Ptを設定することで、急激な内圧変化に追従して十分な蒸気発生の増加量を所定時間に亘って得ることができ、また過熱液の溢れを防止することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る蒸気供給装置50について、図10及び図11に基づいて説明する。なお、上記した第1の実施形態と基本的に同一の部品・部分については、上記した第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
図10には、蒸気供給装置50が図1に対応するフロー図にて示されている。この図に示される如く、蒸気供給装置50は、第2ガス供給装置30、流量制御弁32、及び第2ガス供給ライン28を備えず、蒸気供給ライン18に合流部J2が設けられていない点で、第1の実施形態に係る蒸気供給装置10とは異なる。また、蒸気供給装置50は、コントローラ36に代えて、制御手段としてのコントローラ52を備えている。
コントローラ52は、蒸気消費装置から蒸気流量Vsの増加要求を受けた場合には、基本的に、要求された蒸気流量Vsの増加分ΔVsiに応じた分だけ、蒸気発生器12への液体供給量Vpが増すようにポンプ16を制御すると共に、要求された蒸気流量Vsの増加分ΔVsiの分だけ、蒸気発生器12と流動抵抗体20との間の合流部J1へのガス供給量V1が減少するように流量制御弁26を制御する構成とされている。これにより蒸気供給装置10では、発生蒸気量の増加に伴う流動抵抗体20での圧力損失の増大が相殺され、蒸気発生器12の圧力Pinが略一定に保たれるようになっている。
一方、コントローラ52は、蒸気消費装置から蒸気流量Vsの減少要求を受けた場合には、基本的に、要求された蒸気流量Vsの減少分ΔVsiに応じた分だけ、蒸気発生器12への液体供給量V1が減るようにポンプ16を制御すると共に、要求された蒸気流量Vsの減少分ΔVsiの分だけ、蒸気発生器12と流動抵抗体20との間の合流部J1へのガス供給量V1が増加するように流量制御弁26を制御する構成とされている。これにより蒸気供給装置10では、発生蒸気量の減少に伴う流動抵抗体20での圧力損失の減少が相殺され、蒸気発生器12の圧力Pinが略一定に保たれるようになっている。
流量制御弁26に対する制御による合流部J1へのガス供給量V1の変化量のコントローラ52による求め方は、第1の実施形態におけるコントローラ36と同様である。そして、ガス供給量V1の変化量のコントローラ52による制御フローは、図5に示すステップS20、S24で合流部J2に対する制御を行わないことを除き、図5に示すフローによる。
また、コントローラ52は、燃料電池システム100のメインコントローラからヒートスポット冷却要求を受けた場合には、蒸気発生器12の内部圧力の目標値PtをPt2からPt1に減少させることで瞬間的に水蒸気の放出量を増す蒸気放出モードを実行する構成とされている。さらに、コントローラ52は、蒸気発生器12の内部圧力の目標値PtをPt1からPt2に増加させると共に蒸気発生器12への供給液量を増すことで、燃料電池システム100への蒸気供給量を維持しつつ、蒸気放出モードで減少した蒸気発生器12の液量を回復させる液量回復モードを実行する構成とされている。蒸気供給装置50の他の構成は、蒸気供給装置10の対応する構成と同じである。
したがって、第2の実施形態に係る蒸気供給装置50によっても、合流部J2へガス供給量を変化させて蒸気供給ライン18の下流端18Aでの蒸気濃度を一定に維持する効果を除き、第1の実施形態に係る蒸気供給装置10と同様の効果を得ることができる。すなわち、蒸気供給装置50では、上流端が蒸気発生器12の蒸気出口12Aに接続された蒸気供給ライン18に流動抵抗体20が配設されると共に、該流動抵抗体20のガス入口20Aと蒸気発生器12の蒸気出口12Aとの間の合流部J1への供給ガス量を変化させ得る流量制御弁26を第1ガス供給ライン22に設けたので、要求発生量の変化に対し高応答で供給(発生)蒸気量を追従させることができる。この効果について、図11を用いて補足する。
図11は、要求蒸気量を急激に増加させた場合の実験結果を示している。図11(A)は、蒸気供給装置50の蒸気発生器12への供給液量、合流部J1への供給ガス量の時間変化を示している。時間0で要求蒸気量の増加指令が入力され、蒸気発生器12への供給液量(発生蒸気量)の増加に伴って、合流部J1への供給ガス量が減じられていることがわかる。図11(B)は、蒸気消費装置の入口(蒸気供給ライン18の下流端18A)への蒸気流量の時間変化(応答)を示している。この図から、蒸気供給装置10では、要求蒸気量の増加指令(時間0)から短時間(約4秒)で蒸気流量が増加(整定)し、その後安定した蒸気流量が維持されることが確かめられた。図示は省略するが、蒸気消費装置の入口圧力についても、短時間で一定になることが確かめられている。
図11(B)に破線にて示す線図は、比較例に係る制御方法で制御した場合の蒸気濃度の応答を示している。この制御方法は、合流部J1へのガス供給を常時0とするものである。この比較例に係る制御では、図11(B)に示される如く、要求蒸気量の変化直後から蒸気流量が著しく低下し、蒸気の供給不安定状態になってしまう。すなわち、この比較例では、要求蒸気量の増加に伴って蒸気発生器12の内部圧力Pinが増大し、図12(B)に示される如く沸点Tbが上昇してしまう。すると、蒸気発生(量の増加)が抑制されるために、上記した蒸気流量の低下が生じる。この実験例では、蒸気流量が所定流量に回復するのに略120秒を要している。この比較例との比較により、蒸気供給装置10が著しく高い応答性を示し、要求蒸気量の変化に追従して蒸気濃度を維持することができることが確かめられた。
また、蒸気供給装置50では、燃料電池システム100のメインコントローラからヒートスポット冷却要求を受けた場合には、蒸気放出モードを実行して瞬間的に水蒸気の放出量を増すため、改質反応部106、シフト反応部112の温度上昇を効果的に抑制することができる。また、蒸気供給装置50では、蒸気放出モードの実行後には、液量回復モードを実行して燃料電池システム100への蒸気供給を維持しつつ蒸気発生器12の液量を瞬間的に回復させることができる。すなわち、次回のヒートスポット冷却要求に応じて蒸気放出モードを行い得る状態に短時間で復帰する。
なお、上記した各実施形態では、燃料電池システム100の燃料供給装置104に適用された蒸気供給装置10、50について例示したが、本発明はこれに限定されず、蒸気消費装置に蒸気、好ましくは蒸気とガスとの混合気を供給するための各種用途に適用することができる。したがって、例えば、燃料蒸気を空気と混合させて燃焼機器に供給するための燃料混合気供給装置等に本発明を適用することも可能である。このような各種の用途において、合流部J1へのガス供給量を増して蒸気発生器12の内部圧力Pinを急増させることで、蒸気の供給を瞬間的に急減(停止)させる制御(蒸気放出抑制モード)を採ることも可能である。この場合、第2ガス供給ライン28、第2ガス供給装置30、流量制御弁32を備えた構成においては、合流部J1へのガス供給量の増加に合わせて合流部J2へのガス供給量を減少させることで、燃焼機器に供給する燃料混合気の濃度を一定にすることも可能である。さらにこの場合、蒸気の供給を瞬間的に急減(停止)させると、蒸気発生器12の液量は増すが、上記した回復モードと逆の動作(通常モードに対する蒸気放出モードと同様の動作)により、液量を回復させることができる。
また、上記した各実施形態では、通常モードでコントローラ36が蒸気発生器12の内部圧力Pinを一定に保つための制御を行う例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、要求蒸気量の増加に伴って、蒸気発生を促進するために合流部J1へのガス供給量を蒸気発生量の増加分以上に減らすように制御しても良い。
さらに、上記した第1の実施形態では、通常モードで要求蒸気量に応じて合流部J1、J2へのガス供給量を算出する制御例を示したが、本発明はこれに限定されず、各種の制御にて蒸気発生器12の内部圧力Pinを略一定に保つ等することができる。したがって、例えば、蒸気供給ライン18における混合器34の下流に蒸気濃度計を設け、該蒸気濃度計と圧力計38との信号に基づくフィードバック制御により蒸気発生器12の内部圧力Pin、蒸気供給ライン18の下流端18Aでの蒸気濃度を維持する制御を採用しても良い。
またさらに、上記した各実施形態では、蒸気とガスとの混合気が蒸気消費装置に供給される例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、混合器34に代えて蒸気供給ライン18に蒸気分離膜等を設け、蒸気のみを蒸気消費装置に供給するように構成しても良い。