JP2009094561A - 音響再生装置、音響再生システム、および音響再生方法 - Google Patents

音響再生装置、音響再生システム、および音響再生方法 Download PDF

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Abstract

【課題】体感音響装置によってユーザに与える不快感を軽減し、臨場感と迫力に富んだ体感音響を提供することができる音響再生装置、音響再生システム、および音響再生方法を提供する。
【解決手段】音響再生システムのヘッドユニットに設けられたDSP200は、音声信号からアタック部を検出し、アタック部以外の部分で低いレベルとなる体感音響用制御信号と、アタック部において低いレベルとなるスピーカ音声用制御信号とを生成するアタック部検出器230と、音声信号に体感音響用制御信号を乗算した信号を体感音響装置の駆動信号として出力する乗算器241と、音声信号にスピーカ音声用制御信号を乗算した信号をラウドスピーカの駆動信号として出力する乗算器242とを有する。
【選択図】図3

Description

本発明は、音声信号に基づき体感音響装置を用いて音響を再生する音響再生装置、音響再生システム、および音響再生方法に係り、特に、車載用の体感音響装置に好適な音響再生装置、音響再生システム、および音響再生方法に関する。
ヘッドユニットとラウドスピーカから成る従来の音響再生システムに、補助的な音響設備を付加することは、従来から行われている。
例えば、乗用車の車内で音楽を再生する場合、通常、走行中は高音部分に比べて低音部分が聞き取りにくい。このことから、図7に示すように、車載用の音響再生システム10では、ヘッドユニット20および通常のラウドスピーカ30に加えて、サブウーハと呼ばれる低音再生用のラウドスピーカ40を補助的に設けることが広く行われている。
また、車載用の補助的な音響設備の他の例として、音の響きを振動によって体感することができる体感音響装置が注目されている(例えば特許文献1および特許文献2参照)。
体感音響装置では、座席シートに振動トランスデューサを組み込み、この振動トランスデューサに、音声信号を駆動信号として入力する。振動トランスデューサは音声信号に応じて振動を発生し、この振動は座席シートを介してユーザの体に伝達する。これにより、本来は耳で知覚される音響を体感することができるので、車両内での音楽再生における音響効果を高めることができる。また、上記したサブウーハに追加して体感音響装置を設けることにより、臨場感と迫力に富んだ音響環境を車両の室内に実現することができる。
特表平11−513210号公報 特表2001−518035号公報
ところで、例えば音楽の場合、断続的に音が存在するのが通常である。したがって、音楽の音声信号を駆動信号とする場合、体感音響装置は、ほぼ断続的に振動を発生することになる。
しかしながら、断続的な振動は、ユーザに不快感を与えることが知られている。一方で、不快感とならない程度に駆動信号のレベルを低下させると、音響を体感しにくくなり、補助的な音響設備として体感音響装置を採用した効果が半減してしまう。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、体感音響装置によってユーザに与える不快感を軽減し、臨場感と迫力に富んだ体感音響を提供することができる音響再生装置、音響再生システム、および音響再生方法を提供することを目的とする。
本発明の音響再生装置は、再生対象となる音声信号のアタック部を検出するアタック部検出手段と、前記音声信号のうち、前記アタック部を体感音響装置で再生させる体感音響再生制御手段とを有する構成を採る。
本発明の音響再生システムは、再生対象となる音声信号のアタック部を検出するアタック部検出手段と、前記アタック部において第1のレベルとなり、前記アタック部以外の部分において前記第1のレベルよりも低いレベルとなる体感音響用制御信号を生成する体感音響用制御信号生成手段と、前記音声信号に前記体感音響用制御信号を乗算する体感音響用乗算手段と、前記アタック部以外の部分において第3のレベルとなり、前記アタック部において前記第3のレベルよりも低いレベルとなるスピーカ音声用制御信号を生成するスピーカ音声用制御信号生成手段と、前記音声信号に前記スピーカ音声用制御信号を乗算するスピーカ音声用乗算手段と、を有する音響再生装置と、前記体感音響用乗算手段の出力信号に応じた振動を発生する体感音響装置と、前記スピーカ音声用乗算手段の出力信号に応じた音声を出力するラウドスピーカとを具備する構成を採る。
本発明の音響再生方法は、再生対象となる音声信号のアタック部を検出するアタック部検出ステップと、前記音声信号のうち、前記アタック部を体感音響装置で再生させ、前記アタック部以外の部分をラウドスピーカで再生させる音響再生制御ステップとを有するようにした。
本発明によれば、音声信号のうち、体感音響装置によってアタック部を再生させる。これにより、アタック部における体感音響の効果を得ることと、振動の持続による不快感を軽減することとをバランス良く両立させることができ、ユーザに対してより臨場感と迫力に富んだ体感音響を提供することができる。
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る音響再生システムの構成を示すシステム構成図である。図1(A)は、音響再生システムを上方から見た概略図であり、図1(B)は、音響再生システムを側方から見た概略図である。本実施の形態は、本発明を、乗用車の車載用オーディオシステムに適用した例である。
図1において、音響再生システム100は、本発明の音響再生装置を含むヘッドユニット200と、フルレンジスピーカ300−1〜300−4と、サブウーハ400と、例えばエキサイタ等の振動トランスデューサ500とを有する。これらの装置は、車両600に搭載されている。
具体的には、ヘッドユニット200はダッシュボード付近に設置され、フルレンジスピーカ300−1、300−2、300−3、300−4はそれぞれ左前ドア、右前ドア、左後ドア、右後ドアに設置され、サブウーハ400は室内後方に設置されている。また、振動トランスデューサ500は、各座席シートの内部に取り付けられており、各座席シートと共に体感音響装置を構成する。フルレンジスピーカ300−1〜300−4、サブウーハ400、および振動トランスデューサ500(以下適宜「音声出力機器」と総称する)は、それぞれヘッドユニット200に接続されている。
ヘッドユニット200は、例えば、5.1チャンネルに対応したオーディオヘッドユニットであり、ラジオ放送やCD(compact disc)などから音声信号を取得し、取得した音声信号に対してディジタル信号処理および増幅処理を行い、各音声出力機器に個別に出力する。このとき、ヘッドユニット200は、音声信号の信号レベルが急激に高くなる部分、つまり、音声信号において直前の振幅に比べて直後の振幅が非常に大きい部分(以下「アタック部」という)を検出する。ここで、「信号レベル」とは、基となる音そのものが固有に有するソース信号の振幅を示す数値である。そして、ヘッドユニット200は、振動トランスデューサ500への出力信号についてはアタック部以外の部分を減衰させ、サブウーハ400への出力信号についてはアタック部を減衰させる信号処理を行う。
フルレンジスピーカ300−1〜300−4は、高音域から低音域まで出力可能なラウドスピーカであり、ヘッドユニット200からの入力信号に応じて音声を出力する。
サブウーハ400は、低音域を高効率かつ高音質で出力可能なラウドスピーカであり、ヘッドユニット200からの入力信号に応じて音声を出力する。
振動トランスデューサ500は、電気信号を振動エネルギーに変換し、ヘッドユニット200からの入力信号に応じて座席シートに直接体感し得る振動を与える。
このような音響再生システム100では、車両600の座席シートに座っているユーザは、フルレンジスピーカ300−1〜300−4から出力される通常の音声と、サブウーハ400から出力される空気振動を主とする音声とに加え、座席シートから伝達される直接振動とが補助的に追加された音響を得ることができる。
また、本実施の形態の音響再生システム100の体感音響装置では、アタック部で高出力となるメリハリを付けた振動出力となるため、ユーザに対し、従来のような振動の持続による不快感を軽減し、より臨場感と迫力に富んだ体感音響を与えることが可能となる。
更に、サブウーハ400のように、低音域に特化したラウドスピーカでは、アタック部の音声出力に耳障りな歪みが発生することがあるが、このような歪みの発生を低減することも可能となる。
特に若いユーザの間では、ビートの強い音楽が好まれる傾向があり、このような音楽では、例えば、個々のビート部分のうち信号レベルが急激に上がる部分がアタック部に相当する。したがって、アタック部の振動を強調することによって、音楽のリズム感や躍動感を強調することができる。
以下、左ドアのフルレンジスピーカ300−1、300−3の入力信号を生成する系統、右ドアのフルレンジスピーカ300−2、300−4の入力信号を生成する系統、サブウーハ400の入力信号を生成する系統、振動トランスデューサ500の入力信号を生成する系統を、順に「左スピーカ系統」、「右スピーカ系統」、「サブウーハ系統」、「振動トランスデューサ系統」という。
次に、本発明の音響再生装置を含むヘッドユニット200の構成について説明する。
図2は、ヘッドユニット200の構成を示すブロック図である。ここでは、説明の便宜のため、各音声出力機器を併せて図示する。
図2において、ヘッドユニット200は、音声信号再生部210、DSP(digital signal processor)220、およびパワーアンプ250を有する。
音声信号再生部210は、図示しないが、ラジオチューナやCDプレーヤを有し、ラジオ放送波やCDから、左チャンネル用の音声信号(以下「信号Lch」という)および右チャンネル用の音声信号(以下「信号Rch」という)を抽出する。抽出された信号Lch、Rchは、DSP220に出力される。
DSP220は、音声信号再生部210で抽出された信号Lch、Rchから、フルレンジスピーカ300−1、300−2、300−3、300−4のための音声信号(以下順に「信号Front_Lch」、「信号Front_Rch」、「信号Rear_Lch」、「信号Rear_Rch」という)と、サブウーハ400のための音声信号(以下「信号SubWoofer_ch」という)と、振動トランスデューサ500のための音声信号(以下「信号VibroTransducer_ch」という)とを生成する。このとき、DSP220は、音声信号からアタック部を検出し、信号VibroTransducer_chについてはアタック部以外の部分を減衰させ、信号SubWoofer_chについては逆にアタック部を減衰させる。生成された信号Front_Lch、Front_Rch、Rear_Lch、Rear_Rch、SubWoofer_ch、VibroTransducer_ch(以下適宜「チャンネル別信号」という)は、パワーアンプ250に出力される。
パワーアンプ250は、DSP220で生成されたチャンネル別信号のそれぞれに対して、増幅処理を行う。パワーアンプ250で増幅された各チャンネル別信号は、対応する音声出力機器にそれぞれ出力される。
ヘッドユニット200は、図示しないが、CPU(central processing unit)、制御プログラムを格納したROM(read only memory)などの記憶媒体、およびRAM(random access memory)などの作業用メモリを有する。CPUが制御プログラムを実行することで、上記した各部の機能は実現される。
次に、DSP220の構成について説明する。
図3は、DSP220の構成を示すブロック図である。
図3において、DSP220は、左スピーカ系統のハイパスフィルタ(HPF:high pass filter)221、右スピーカ系統のハイパスフィルタ222、加算器223、ローパスフィルタ(LPF:low pass filter)224、アタック部検出器230、振動トランスデューサ系統の乗算器241、およびサブウーハ系統の乗算器242を有する。なお、図3に示す各部と図2の音声信号再生部210との間には、アナログ−ディジタル変換器(図示せず)が配置されており、信号Lch、Rchはそれぞれディジタル変換される。また、図3に示す各部と図2のパワーアンプ250との間には、ディジタル−アナログ変換器(図示せず)が配置されており、信号Front_Lch、Front_Rch、Rear_Lch、Rear_Rch、SubWoofer_ch、VibroTransducer_chはそれぞれアナログ変換される。
ハイパスフィルタ221は、信号Lchの高周波成分を取り出し、取り出した信号を信号Front_Lch、Rear_Lchとして出力する。
ハイパスフィルタ222は、信号Rchの高周波成分を取り出し、取り出した信号を信号Front_Rch、Rear_Rchとして出力する。
加算器223は、信号Lch、Rchを加算し、得られた信号をローパスフィルタ224に出力する。
ローパスフィルタ224は、加算器223の出力信号の低周波成分を取り出し、取り出した信号を、アタック部検出器230、振動トランスデューサ系統の乗算器241、およびサブウーハ系統の乗算器242に出力する。ローパスフィルタ224は、ハイパスフィルタ221、222との間で、減衰域がクロスオーバするフィルタ特性を有する。
アタック部検出器230は、ローパスフィルタ224の出力信号からアタック部を検出し、アタック部以外の部分において低い信号レベルとなる振動トランスデューサ用制御信号と、逆にアタック部において低い信号レベルとなるサブウーハ用制御信号とを生成する。生成された振動トランスデューサ用制御信号およびサブウーハ用制御信号は、それぞれ振動トランスデューサ系統の乗算器241、サブウーハ系統の乗算器242に出力される。
乗算器241は、ローパスフィルタ224の出力信号とアタック部検出器230から出力される振動トランスデューサ用制御信号とを乗算し、得られた信号を、信号VibroTransducer_chとして出力する。すなわち、振動トランスデューサ用制御信号は、ローパスフィルタ224の出力信号に対する乗算係数としての役割を持つ。
乗算器242、ローパスフィルタ224の出力信号とアタック部検出器230から出力されるサブウーハ用制御信号とを乗算し、得られた信号を、信号SubWoofer_chとして出力する。すなわち、サブウーハ用制御信号は、ローパスフィルタ224の出力信号に対する乗算係数としての役割を持つ。
次に、アタック部検出器230の構成について説明する。
図4は、アタック部検出器230の構成を示すブロック図である。ここでは、説明の便宜のため、ローパスフィルタ224、および乗算器241、242を併せて図示する。また、各信号の波形を図5に示す。図5については後述する。
図4において、アタック部検出器230は、全波整流器231、エンベロープ検出器232、ハイパスフィルタ(HPF)233、閾値判定器234、振動トランスデューサ用レベル制御信号生成器235、およびサブウーハ用レベル制御信号生成器236を有する。
ローパスフィルタ224では、上述のように、図3に示す加算器223からの出力信号701から低周波成分、つまり低音域の音声信号を取り出した信号702を生成する。生成された信号702は、全波整流器231に出力される。
全波整流器231は、ローパスフィルタ224から出力される信号702に対して、全波整流を行う。全波整流が行われた信号703は、エンベロープ検出器232に出力される。
エンベロープ検出器232は、全波整流器231から出力される信号703に対して、エンベロープ(包絡線)検出を行い、エンベロープ信号704を生成する。生成されたエンベロープ信号704は、ハイパスフィルタ233に出力される。
ハイパスフィルタ233は、エンベロープ検出器232から出力される信号704から高周波成分を取り出した信号705を生成する。生成された信号705は、閾値判定器234に出力される。ここで取り出される高周波成分の振幅は、ローパスフィルタから出力される信号702のアタック部で大きくなる。これについては後述する。
閾値判定器234は、ハイパスフィルタ233から出力される信号705の信号レベルを、予め設定された閾値と比較する。そして、閾値判定器234は、信号705が設定された閾値を超える区間(以下「アタック部」という)と、その他の区間で異なる2値を採る信号、つまりアタック部または持続部のいずれに該当するかを示す信号706を生成する。生成された信号706は、振動トランスデューサ用レベル制御信号生成器235およびサブウーハ用レベル制御信号生成器236に出力される。
振動トランスデューサ用レベル制御信号生成器235は、閾値判定器234から出力される信号706からアタック部を検出する。そして、振動トランスデューサ用レベル制御信号生成器235は、アタック部を含む所定の区間において、第1のレベルからこれよりも低い第2のレベルに漸減するフェードアウト処理を行い、この所定の区間以外の区間において、前記第2のレベルを保持する波形をとる振動トランスデューサ用制御信号707を生成する。生成された信号707は、振動トランスデューサ系統の乗算器241に出力される。
振動トランスデューサ用レベル制御信号生成器235から出力される信号707は、振動トランスデューサ系統の乗算器241でローパスフィルタ224からの出力信号702と乗算される。乗算器241から出力される信号708は、信号VibroTransducer_chとして、図2に示すパワーアンプ250に入力される。
なお、信号の減衰の仕方は、例えば振動トランスデューサ用レベル制御信号生成器235に設定された時定数に従うほか、予め定められた速度で行うなど、様々なパターンを適用することができる。
サブウーハ用レベル制御信号生成器236は、閾値判定器234から出力される信号706からアタック部を検出する。そして、サブウーハ用レベル制御信号生成器236は、アタック部を含む所定の区間において、第3のレベルよりも低い第4のレベルから第3のレベルに漸増するフェードイン処理を行い、この所定の区間以外の区間において、前記第3のレベルを保持する波形をとるサブウーハ用制御信号709を生成する。生成された信号709は、サブウーハ系統の乗算器242に出力される。
サブウーハ用レベル制御信号生成器236から出力される信号709は、サブウーハ系統の乗算器242でローパスフィルタ224からの出力信号702と乗算される。乗算器242から出力される信号710は、信号SubWoofer_chとして、図2に示すパワーアンプ250に入力される。
なお、信号の増大の仕方は、例えばサブウーハ用レベル制御信号生成器236に設定された時定数に従うほか、予め定められた速度で行うなど、様々なパターンを適用することができる。
また、サブウーハ用レベル制御信号生成器236と振動トランスデューサ用レベル制御信号生成器235とで独立して制御信号を生成するのではなく、一方が他方で生成された制御信号を用いるようにしてもよい。
具体的には、例えば、サブウーハ用レベル制御信号生成器236が、振動トランスデューサ用レベル制御信号生成器235から出力される振動トランスデューサ用制御信号707を用いて、この信号707と振幅方向に逆の波形となるサブウーハ用制御信号709を生成する。振動トランスデューサ用制御信号と振幅方向に逆の波形とするには、例えば、上記した第1のレベルおよび第3のレベルを「1」とし、上記した第2のレベルおよび第4のレベルを「0」として、値「1」から振動トランスデューサ用制御信号の振幅を減算すればよい。
次に、アタック部検出器230の動作について、アタック部検出器230の各部および周辺の各装置部から出力される信号701〜710の波形を参照して説明する。
図5は、各部からの信号波形を模式的に示す図であり、図5(A)〜(J)は順に信号701〜710の波形図である。
図5の各波形図において、横方向は時間軸を示し、縦方向は信号レベルを示す。また、基準軸は、各加算器223の出力信号701が無振動または無音に相当する場合の信号レベルを示すものとする。なお、ここでは、説明の簡便化のため、信号遅延を無視している。以下、図3および図4を併せて参照し説明を行う。
時刻t−1の直前は、元の音声信号が無音であり、時刻t−1に、楽曲が開始するなどして、低音域を含む信号レベルが急激に高くなり、その後その信号レベルが持続したとする。
この場合、図5(A)に示すように、まず、加算器223の出力信号701は、時刻t−1で立ち上がり、その後、振幅の変化が持続する。
そして、図5(B)に示すように、ローパスフィルタ224は、信号701の低周波成分のみを通過させ、信号702を出力する。この信号702も、低音域の信号レベルが立ち上がったことから、時刻t−1で立ち上がり、その後、振幅の変化が持続する。ここでは、信号702が図5に示すように正弦波の波形となっているものとする。この正弦波の周波数は、ローパスフィルタ224の遮断周波数よりも低い。
そして、図5(C)に示すように、全波整流器231は、信号702に対して全波整流を行い、信号703を出力する。この信号703は、信号701の振幅が負の部分を反転させた波形となる。
そして、図5(D)に示すように、エンベロープ検出器232は、信号703のエンベロープを検出し、信号704を出力する。信号704は、信号703の立ち上がり部分では、ほぼ信号703の波形に一致するが、信号703の立下り部分では、設定された時定数に従って緩やかに信号703の波形に追従する。この結果、エンベロープ検出器232から出力される信号704は、低音域のアタック部でのみ立ち上がる波形となる。
ここでは、時定数が、信号702の周期の4分の1よりも十分に大きく設定されている場合を図示している。この場合、信号704は、図5(D)に示すように、時刻t−1でのみ立ち上がり、他のエンベロープが信号704と一致した直後にも増加するものの、その速度は、時刻t−1の直後に比べて微小となっている。時刻t−1の直後の部分、つまりアタック部では、信号704には、より多くの高周波成分が含まれることになる。
なお、アタック部が短い間隔で連続する場合もある。この場合、どの程度のアタック部の間隔およびどの程度の信号703の立ち上がり速度で、信号704が立ち上がるかは、エンベロープ検出器232に設定された時定数に依存する。時定数が小さいほど、信号704が立ち上がり易くなり、時定数が大きいほど、信号704が立ち上がり難くなる。
そして、図5(E)に示すように、ハイパスフィルタ233は、信号704の高周波成分のみを通過させ、信号705を出力する。この信号705は、信号703に高周波成分がより多く含まれる時刻t−1の直後で、振幅を増大させる。ここでは、説明の簡便化のため、信号704の微分値で、ハイパスフィルタ233の出力信号705を表わしている。
そして、閾値判定器234は、信号705の信号レベルと設定された閾値720とを比較し、図5(F)に示すように、信号705の信号レベルが閾値720を超える区間にアタック部に該当することを示す信号706を出力する。この信号706は、例えば、信号705の信号レベルが、閾値720を上回った時刻(ここでは時刻t−1に一致するものとする)から、閾値720を下回った時刻t−2まで、H(high)レベルを採り、他の区間ではL(low)レベルを採る矩形信号となる。信号706は、設定された閾値720が高ければ高いほどHレベルを採り難くなり、閾値720が低ければ低いほどHレベルを採り易くなる。
そして、図5(G)に示すように、振動トランスデューサ用レベル制御信号生成器235は、信号706がアタック部を示す区間で、上記した第1のレベルを採り、アタック部の終了時刻(時刻t−2)から、予め定められたパターンでフェードアウトする信号707を生成する。ここでは、予め定められた速度で信号を漸減させ、かつ第1のレベルが乗算係数「1」に相当し、第2のレベルが乗算係数「0」に相当する場合を図示している。つまり、信号707は、アタック部を含む所定の区間で、乗算係数「1」に相当する信号レベルから乗算係数「0」に相当する信号レベルまで漸減する。
そして、図5(H)に示すように、振動トランスデューサ系統の乗算器241は、ローパスフィルタ224の出力信号702に信号707を乗算し、信号708を出力する。この信号708は、信号707の減衰により、ローパスフィルタ224の出力信号702が通常の信号レベルから無振動に相当する信号レベルにまで減衰した波形となる。この結果、信号VibroTransducer_chは、アタック部が開始されると、無振動に相当する波形から通常の波形に即座に遷移し、アタック部を含む所定の区間で、通常の波形から無振動に相当する波形に比較的ゆっくりと遷移し、その後、無振動に相当する波形を保持する。
これにより、振動トランスデューサ500は、アタック部で高出力となるようにメリハリを付けて振動し、ユーザに対し、振動の持続による不快感を軽減し、より臨場感と迫力に富んだ体感音響を提供することができる。
一方、図5(I)に示すように、サブウーハ用レベル制御信号生成器236は、信号706がアタック部を示す区間で、上記した第4のレベルを採り、アタック部の終了時刻(時刻t−2)から、予め定められたパターンでフェードインする信号709を生成する。ここでは、振動トランスデューサ用レベル制御信号生成器235と逆符号の速度で信号を漸増させ、かつ第4のレベルが乗算係数「0」に相当し、第3のレベルが乗算係数「1」に相当する場合を図示している。つまり、信号709は、振動トランスデューサ用レベル制御信号生成器235から出力される信号707が乗算係数「1」に相当する信号レベルから乗算係数「0」に相当する信号レベルまで漸減する区間と同一の区間で、乗算係数「0」に相当する信号レベルから乗算係数「1」に相当する信号レベルまで漸増する。
そして、図5(J)に示すように、サブウーハ系統の乗算器242は、ローパスフィルタ224の出力信号702に信号709を乗算し、信号710を出力する。この信号710は、信号709の増大により、ローパスフィルタ224の出力信号702が無音に相当する信号レベルから通常の信号レベルにまで増大した波形となる。この結果、信号SubWoofer_chは、アタック部が開始されると、通常の波形から無音に相当する波形に即座に遷移し、信号VibroTransducer_chが通常の波形から無振動に相当する波形に遷移する区間で、無音に相当する波形から通常の波形に比較的ゆっくりと変化し、その後、通常の波形を保持する。
これにより、サブウーハ400は、アタック部における耳障りな音声の歪みの発生を低減することができる。
また、結果的に振動トランスデューサ500およびサブウーハの入力信号は、それぞれ本来出力の対象とすべき信号に対して欠損部分が存在することになるが、それぞれの入力信号の信号レベルが互いの欠損部分を補完する形となっている。したがって、全体としてユーザに到達する音響レベルをほぼ一定とすることができ、ユーザに対して、特に音響品質の向上を感じさせることができる。
更に、信号VibroTransducer_chの信号レベルの減衰およびSubWoofer_chの信号レベルの増大は、それぞれ比較的ゆっくりと行われるので、双方の音響効果を自然にシフトさせることができるとともに、高周波成分の発生によるノイズを防止することができる。
なお、高周波成分の発生防止の観点から、アタック部の開始部分における信号VibroTransducer_chの信号レベルの増大およびSubWoofer_chの信号レベルの減衰を、緩やかに行うようにしてもよい。
また、エンベロープ検出器232に設定される時定数や、閾値判定器234に設定される閾値は、ユーザ操作によって調整可能であることが望ましい。どの程度の信号レベル差があるときをアタック部とすべきかは、ユーザの嗜好によって異なるが、これら時定数および閾値を調整可能とすることによって、よりユーザの嗜好に沿った音響を実現することができる。
なお、本実施の形態のアタック部検出器230は、ローパスフィルタ224の出力信号702に対して全波整流を行い、この全波整流が行われた信号703に対してエンベロープ検出を行う構成を採っているが、これに限定されるものではない。例えば、ローパスフィルタ224の出力信号702をエンベロープ検出器232にそのまま入力し、エンベロープ検出器232が信号702の正と負とでそれぞれエンベロープ(包絡線)を検出し、いずれか一方のエンベロープ(包絡線)を選択する構成としてもよい。
また、アタック部検出器230は、ハイパスフィルタ233に代えて、例えばダウンサンプラを備えてもよい。この場合、ダウンサンプラは、信号704をダウンサンプリングし、閾値判定器234は、隣り合うサンプリング値の差と予め設定された閾値とを比較する。そして閾値判定器234は、隣り合うサンプリング値の差が予め設定された閾値を超える区間をアタック部とし、その他の区間を持続部として、信号706を生成する。
ここで、車載用の体感音響装置における振動トランスデューサ500の設置位置の具体例について説明する。
図6は、振動トランスデューサ500の座席シートにおける設置位置の具体例を示す図である。
図6に示すように、振動トランスデューサ500は、車両600の座席シート610の座部611および背もたれ部612のそれぞれに設置される。座部611に設置される振動トランスデューサ500−1は、座部611のクッションおよびスプリングの下面側でこれらを支える板状部材(いずれも図示せず)に取り付けられる。また、背もたれ部612に設置される振動トランスデューサ500−2は、背もたれ部612のクッションおよびスプリングの背面側でこれらを支える板状部材(いずれも図示せず)に取り付けられる。これにより、座席シート610本来のクッション性や快適性を損なうことなく、座席シート610を用いて体感音響装置を実現することができる。
なお、座席シート610に取り外し可能なクッション部材の内部に振動トランスデューサ500を取り付けるようにしてもよい。
以上説明したように、本実施の形態の音響再生装置、音響再生システム、および音響再生方法によれば、音声信号からアタック部を検出し、アタック部において他の部分よりも高いレベルとなる振動トランスデューサ用の制御信号を生成する。そして、音声信号に振動トランスデューサ用の制御信号を乗算した信号を生成し、生成された信号を体感音響装置に設置された振動トランスデューサに出力する。これにより、音声信号のうち、アタック部でのみ高出力となるようにメリハリを付けて振動トランスデューサを振動させ、ユーザに対し、振動の持続による不快感を軽減し、より臨場感と迫力に富んだ体感音響を与えることができる。
また、本実施の形態の音響再生装置、音響再生システム、および音響再生方法によれば、アタック部において他の部分よりも低いレベルとなるサブウーハ用の制御信号を生成する。そして、音声信号に振動トランスデューサ用の制御信号を乗算した信号を生成し、生成された信号を体感音響装置に設置された振動トランスデューサに出力する。また、音声信号にサブウーハ用の制御信号を乗算した信号を生成し、生成された信号をサブウーハに出力する。また、サブウーハのアタック部における耳障りな音声歪みの発生を低減することができる。したがって、ユーザに与える不快感を軽減しより臨場感と迫力に富んだ体感音響を提供することができる。
また、振動トランスデューサおよびサブウーハの入力信号を、互いの欠損部分を補完する波形とするので、全体としてユーザに到達する音響レベルをほぼ一定とすることができ、ユーザに対して、音響品質の向上を感じさせることができる。
また、同じレベルの音響効果を実現する場合において、体感音響装置の電力効率はサブウーハに比して良くないのが通常であるが、体感音響装置での振動発生をアタック部に限定し、持続部はサブウーハを積極的に用いることにより、消費電力をも抑えることができる。特にカーオーディオに適用する場合には、車両のガソリン消費量をも抑えることが可能となる。
また、サブウーハは、音声信号に対する過渡応答性がフルレンジスピーカに比して悪いことから、音が遅れるように感じられることがあり、一方で、音の遅れを改善しようとすると、音の歪みが大きくなるのが通常である。アタック部の音響効果を過渡応答性の良い振動トランスデューサにシフトさせることにより、音の遅れを補うことができ、かつ、音の歪みを防ぐことができる。
更に、信号処理を工夫するのみであるため、安価かつ高品質な車載用オーディオシステムを実現でき、特に強いビートを好む若年層をターゲットとした商品としての価値を高めることができる。
なお、以上説明した実施の形態では、本発明を車載用オーディオシステムに適用した例について説明したが、体感音響装置への入力信号に対する処理を行う各種の音響再生装置や音響再生システムにも適用することができる。例えば、居室用のソファを体感音響装置とするサラウンドシステムに適用することにより、マンションなど音量を抑えなければならない等の音響設備に制約がある環境において、臨場感や迫力の物足りなさを体感音響による音響効果で補うことができる。また、映画館や遊園地のアトラクションの座席シートを体感音響装置とする音響設備に適用することにより、より迫力と臨場感のある音響環境を実現することができる。
本発明に係る音響再生装置、音響再生システム、および音響再生方法は、体感音響装置によってユーザに与える不快感を軽減し、臨場感と迫力に富んだ体感音響を提供することができる音響再生装置、音響再生システム、および音響再生方法として有用である。
本発明の一実施の形態に係る音響再生システムの構成を示すシステム構成図 本実施の形態に係る音響再生装置を含むヘッドユニットの構成を示すブロック図 本実施の形態におけるDSPの構成を示すブロック図 本実施の形態におけるアタック部検出器の構成を示すブロック図 本実施の形態におけるアタック部検出器の信号波形を模式的に示す図 本実施の形態における振動トランスデューサの座席シートにおける設置位置の具体例を示す図 従来の音響再生システムの構成の一例を示すシステム構成図
符号の説明
100 音響再生システム
200 ヘッドユニット
210 音声信号再生部
220 DSP
221、222、233 ハイパスフィルタ
223 加算器
224 ローパスフィルタ
230 アタック部検出器
231 全波整流器
232 エンベロープ検出器
234 閾値判定器
235 振動トランスデューサ用レベル制御信号生成器
236 サブウーハ用レベル制御信号生成器
241、242 乗算器
250 パワーアンプ
300 フルレンジスピーカ
400 サブウーハ
500 振動トランスデューサ
600 車両

Claims (15)

  1. 再生対象となる音声信号のアタック部を検出するアタック部検出手段と、
    前記音声信号のうち、前記アタック部を体感音響装置で再生させる体感音響再生制御手段と、
    を有する音響再生装置。
  2. 前記アタック部検出手段は、
    前記音声信号から包絡線を検出する包絡線検出手段と、
    前記包絡線検出手段の結果信号から振幅の変化量を取り出すフィルタ手段と、
    前記フィルタ手段の結果信号から所定の閾値と比較する閾値判定手段と、を有し、
    前記比較の結果に基づいて、前記アタック部の検出を行う、
    請求項1記載の音響再生装置。
  3. 前記体感音響再生制御手段は、
    前記アタック部の直後に前記音声信号の前記体感音響装置での再生をフェードアウトさせる、
    請求項1記載の音響再生装置。
  4. 前記体感音響再生制御手段は、
    前記アタック部において第1のレベルとなり、前記アタック部以外の部分において前記第1のレベルよりも低いレベルとなる体感音響用制御信号を生成する体感音響用制御信号生成手段と、
    前記音声信号に前記体感音響用制御信号を乗算する体感音響用乗算手段と、を有する、
    請求項1記載の音響再生装置。
  5. 前記体感音響用制御信号は、前記アタック部を含む所定の区間において前記第1のレベルからこれよりも低い第2のレベルに漸減し、前記所定の区間以外の区間において前記第2のレベルを保持する波形である、
    請求項4記載の音響再生装置。
  6. 前記第2のレベルは、無振動に相当するレベルである、
    請求項5記載の音響再生装置。
  7. 前記音声信号のうち、前記アタック部以外の部分をラウドスピーカで再生させるスピーカ音声再生制御手段、
    を更に有する請求項1記載の音響再生装置。
  8. 前記スピーカ音声再生制御手段は、
    前記アタック部の直後に前記音声信号の前記ラウドスピーカでの再生をフェードインさせる、
    請求項7記載の音響再生装置。
  9. 前記音声信号のうち、前記アタック部以外の部分をラウドスピーカで再生させるスピーカ音声再生制御手段、を更に有し、
    前記スピーカ音声再生制御手段は、
    前記アタック部以外の部分において第3のレベルとなり、前記アタック部において前記第3のレベルよりも低いレベルとなるスピーカ音声用制御信号を生成するスピーカ音声用制御信号生成手段と、
    前記音声信号に前記スピーカ音声用制御信号を乗算するスピーカ音声用乗算手段と、を有する、
    請求項4記載の音響再生装置。
  10. 前記スピーカ音声用制御信号は、前記アタック部を含む所定の区間において前記第3のレベルよりも低い第4のレベルから前記第3のレベルに漸増し、前記所定の区間以外の区間において前記第3のレベルを保持する波形である、
    請求項9記載の音響再生装置。
  11. 前記第4のレベルは、無音に相当するレベルである、
    請求項10記載の音響再生装置。
  12. 前記体感音響用制御信号と前記スピーカ音声用制御信号とが、振幅方向において逆の波形となっている、
    請求項9記載の音響再生装置。
  13. 再生対象となる音声信号のアタック部を検出するアタック部検出手段と、前記アタック部において第1のレベルとなり、前記アタック部以外の部分において前記第1のレベルよりも低いレベルとなる体感音響用制御信号を生成する体感音響用制御信号生成手段と、前記音声信号に前記体感音響用制御信号を乗算する体感音響用乗算手段と、前記アタック部以外の部分において第3のレベルとなり、前記アタック部において前記第3のレベルよりも低いレベルとなるスピーカ音声用制御信号を生成するスピーカ音声用制御信号生成手段と、前記音声信号に前記スピーカ音声用制御信号を乗算するスピーカ音声用乗算手段と、を有する音響再生装置と、
    前記体感音響用乗算手段の出力信号に応じた振動を発生する体感音響装置と、
    前記スピーカ音声用乗算手段の出力信号に応じた音声を出力するラウドスピーカと、
    を具備する音響再生システム。
  14. 前記音響再生装置および前記ラウドスピーカは、同一の車両に設置され、
    前記体感音響装置は、前記車両の座席シートに設置される、
    請求項13記載の音響再生システム。
  15. 再生対象となる音声信号のアタック部を検出するアタック部検出ステップと、
    前記音声信号のうち、前記アタック部を体感音響装置で再生させ、前記アタック部以外の部分をラウドスピーカで再生させる音響再生制御ステップと、
    を有する音響再生方法。
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