JP2009092546A - 遺伝子検出方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】磁気ビーズから分離された電気化学発光物質を作用電極上に捕捉することのできる遺伝子検出方法を提供する。
【解決手段】測定すべき目的核酸と前記目的核酸の一部と結合する第一のプローブを持つ磁気ビーズと前記目的核酸の他の一部と結合する第二のプローブを持つ電気化学発光物質とが互いに結合してプローブ複合体を形成する第1のステップと、前記磁気ビーズに作用する磁力を用いて前記第1のステップにて形成されたプローブ複合体を収集する第2のステップと、前記第2のステップで収集されたプローブ複合体から少なくとも前記電気化学発光物質を分離する第3のステップと、前記第3のステップで分離された電気化学発光物質を収集するために作用電極上に負電圧を与える第4のステップと、前記作用電極に正電圧を与え前記収集された電気化学発光物質を発光させその光量を測定する第5のステップと、を備える遺伝子検出方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、試料中に存在する特定遺伝子を検出するための遺伝子検出方法に関し、作用極に負電圧を印加し電気化学発光物質を作用極上に捕捉することで高感度に目的遺伝子を検出する技術に関する。
従来、目的遺伝子を検出する手法として、電気化学反応を用いた検出方法が採用されてきた。この方法は以下の通りである。目的遺伝子と相補な配列を有する核酸を担体に固定し、ハイブリダイゼーション反応を起こさせることで選択的に目的遺伝子を検出プローブに捕捉させる。B/F(Bound/Free)分離により非目的遺伝子や余分な物質等の非目的試料を除去した後、電気化学反応性を有する2本鎖核酸挿入剤を用いて2本鎖核酸のみに選択的に挿入させる。これにより、遺伝子配列の相補性を利用して目的遺伝子を検出することができる(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
この電気化学反応を用いた遺伝子検出方法は、蛍光検出を行う際には必要になる励起光が不要なことからバックグラウンド光が低減でき、目的遺伝子の高感度な検出が可能となる。近年、検出プローブを固定する担体は、平面基板であるマイクロアレイ型からマイクロビーズ型に変わってきている。これは、マイクロビーズはマイクロアレイよりもハイブリダイゼーション反応効率が良く、特に、磁気ビーズを用いた場合、磁石によって磁気ビーズに結合していない非目的試料を容易にB/F分離することが可能となる。
B/F分離には流路型がよく用いられ、B/F分離から検出までの一連を流路中で行うことで工程の短縮化が行われている。図1に従来のフロー型電気化学発光測定系の概略図を示す。図1に示すように、作用電極13下部のフローセル12外に磁気ビーズを捕捉するための磁石16を配置される。磁気ビーズには予め電気化学発光物質が捕捉されている。送液管14から目的試料が結合した磁気ビーズと非目的試料が含まれる溶液を流し、磁石16により磁気ビーズを作用電極13上に収集した後非目的試料を排液管15から取り除く。これにより磁気ビーズ表面の目的試料に結合した電気化学発光物質を選択的に光検出器11により検出する方法が用いられている(例えば、特許文献3及び特許文献4参照。)。
このように、磁気ビーズを目的試料の担体として用いてB/F分離を行うことで目的試料に応じた電気化学発光物質を検出する方法が用いられている。
特開平5−199898号公報 特開平9−288080号公報 特表平7−508340号公報 特表平6−509412号公報
しかしながら、前記従来の構成では、磁気ビーズを利用して目的試料に結合した電気化学発光物質を作用電極上に収集していた。そのために、作用電極下部に磁石を配置していた。ところが、作用電極上の磁気ビーズは目的試料を遮蔽してしまうため、目的試料の発光量が低下するという問題が生じる。そこで、目的試料を捕捉した後の磁気ビーズから電気化学発光物質を分離し、電気化学発光物質のみの発光を測定すれば発光量の低下は無い。しかし、磁気ビーズから分離された電気化学発光物質を効率よく作用電極上に捕捉できないという課題を有していた。
本発明の目的は前記従来の課題を解決するもので、作用電極に印加する電圧を制御することで磁気ビーズから分離された電気化学発光物質を作用電極上に捕捉することのできる遺伝子検出方法を提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の遺伝子検出方法は、測定すべき目的核酸と前記目的核酸の一部と結合する第一のプローブを持つ磁気ビーズと前記目的核酸の他の一部と結合する第二のプローブを持つ電気化学発光物質とが互いに結合してプローブ複合体を形成する第1のステップと、前記磁気ビーズに作用する磁力を用いて前記第1のステップにて形成されたプローブ複合体を収集する第2のステップと、前記第2のステップで収集されたプローブ複合体から少なくとも前記電気化学発光物質を分離する第3のステップと、前記第3のステップで分離された電気化学発光物質を収集するために作用電極上に負電圧を与える第4のステップと、前記作用電極に正電圧を与え前記収集された電気化学発光物質を発光させその光量を測定する第5のステップと、を備えることを特徴としたものである。
以上のように本発明の遺伝子検出方法は、磁気ビーズ表面に結合した電気化学発光物質を磁気ビーズを捕捉した状態で磁気ビーズから分離させた後、負電圧を印加した作用電極に捕捉させることで、磁気ビーズ表面に結合した電気化学発光物質を効率よく作用電極上に収集させて発光させることが可能になるだけでなく、発光検出する際に不透明な磁気ビーズが光検出を阻害することなく高感度な測定が可能となる。
以下に、本発明の遺伝子検出法の実施の形態を詳細に説明する。まず、本発明の原理について説明し、次に具体的な実施の形態について説明する。
最初に、検体から遺伝子サンプルを抽出する前処理を行う。痰、血液、糞便、精液、唾液、培養細胞、組織細胞、その他遺伝子を有する検体から超音波、振とうなどの物理手段、核酸抽出溶液を用いる化学的手段を用いて必要試料を抽出する。
試料中の細胞の破壊は、常法により行うことができ、例えば、振とう、超音波等の物理的作用を外部から加えて行うことができる。また、核酸抽出溶液(例えば、SDS、Triton−X、Tween−20等の界面活性剤、又はサポニン、EDTA、プロテア−ゼ等を含む溶液等)を用いて、細胞から核酸を遊離させることもできる。
抽出された長鎖の2本鎖核酸は制限酵素、あるいは超音波などの物理的手段によって任意の長さに切断される。切断された2本鎖核酸は熱処理、あるいはアルカリ変性により1本鎖核酸に分離される。これらの工程により遺伝子サンプルを得る。遺伝子サンプルは、電気泳動による分離等で精製した核酸断片でもよい。
目的遺伝子を捕捉するための第一のプローブ核酸は、検出すべき遺伝子配列に対して相補的な塩基配列を有する1本鎖のプローブ核酸であり、生物試料から抽出した核酸を制限酵素で切断し、電気泳動による分離等で精製した核酸、あるいは化学合成で得られた1本鎖の核酸を用いることができる。生物試料から抽出した核酸の場合には、熱処理あるいはアルカリ処理によって、1本鎖の核酸に解離させておくことが好ましい。
このようにして得られた第一のプローブ核酸を磁気ビーズの表面に固定する。固定化方法としては、公知の方法が用いられる。例えば、磁気ビーズの表面に予めストレプトアビジンをコーティングしておき、ビオチンを標識した検出プローブと反応させることでアビジンービオチン結合を行う方法がある。また、マイクロアレイで用いられる公知の結合方法(例えばシランカップリング法)を用いることができる。
本発明で用いる磁気ビーズは特に限定されるものではなく、使用可能な磁気ビーズとしては、例えば酸化鉄系ビーズが挙げられる。磁気ビーズの直径は0.05μmから200μm、特に0.1μmから100μmが好ましい。また、流路に流す溶液中の磁気ビーズ濃度は、例えば、1〜10000μg/mlから、特に5〜1000μg/mlまで適応可能である。本発明に使用する磁気ビーズは少なくとも0.01cgs単位の磁化率を有することが望ましく、磁化率が少なくとも0.01cgs単位であるのが望ましい。磁気ビーズを収集するための磁力源は永久磁石であろうと、電磁石であろうと磁石に吸引される位置に配置される。より好適には強磁場を生じる永久磁石が好ましい。
上記で得られた、プローブ核酸が固定された磁気ビーズを、目的遺伝子を含む溶液に接触させることにより、プローブ核酸と相補的な配列を有する目的遺伝子がハイブリダイゼーション反応を起こし、2本鎖核酸が形成されるが、ハイブリダイズさせる方法は公知の方法を使用すれば良い。
目的遺伝子に相補な配列を有する第二のプローブ核酸には予め電気化学反応物質を修飾させておく。電気化学反応物質を目的遺伝子や検出用のプローブ核酸に結合させる方法は末端に標識させる方法や核酸の任意の箇所に化学的に結合させる方法がある。
検出するための標識剤は電気化学発光物質を用いる。電気化学発光物質は電気化学発光活性を有する物質であり、電気化学発光的に検出可能な物質であれば限定されるものではない。例えば、金属錯体を挙げることができ、特に、中心金属がルテニウム、オスニウムである錯体は良好な電気化学発光特性を有する。このような良好な電気化学発光特性を有する物質としては、例えば、ルテニウムビピリジン錯体、ルテニウムフェナントロリン錯体、オスニウムビピリジン錯体、オスニウムフェナントロリン錯体等を挙げることができる。これらは溶液中において、正に帯電する物質である。
このようにして得られた測定すべき目的遺伝子と、目的遺伝子の一部と結合する第一のプローブを持つ磁気ビーズと、目的遺伝子の他の一部と結合する第二のプローブを持つ電気化学発光物質とが互いに結合してプローブ複合体を形成させる。
磁気ビーズに捕捉されなかった非目的試料や未反応物質はB/F分離により洗浄される。B/F分離は磁気ビーズを用いた場合、外部磁場により磁気ビーズを溶液内に保持することで余分な溶液を除去する。このB/F分離によって、磁気ビーズに固定された目的遺伝子および目的遺伝子に結合した電気化学発光物質を選択的に得ることができる。外部磁場は前述の方法で与えられる。
B/F分離は液体を保持するマイクロウェル等の容器内で行われ、特に、洗浄工程が容易な流路中で行うことも可能である。流路はフローセルやキャピラリー管、マイクロ流路等が適応可能である。流路の大きさは磁気ビーズの流れを阻害しないように決められ、磁気ビーズの直径に対し2〜10000倍であることが好ましい。送液時の流速は磁気ビーズが少なくとも沈降するように決められることが好ましく、0.1〜100mm/分の流速が好ましい。
測定対象となる目的遺伝子と電気化学発光物質が磁気ビーズに結合させる工程によって得られるプローブ複合体を流路内に導入し、B/F分離や検出を同一流路内で行う。さらに好適には、プローブ複合体の形成から検出までの一連を同一流路内で行うことで簡便かつ迅速に測定を行うことが可能である。また、流路内のこれら一連の工程を流路内の上流から下流に向けて順次行うことで、流速方向にそってB/F分離から検出までを行うことができ、より迅速に測定を行うことが可能となる。
次にB/F分離によって得られた磁気ビーズを流路内の磁場により流路中に固定した状態で電気化学発光物質を分離させる。分離には紫外線照射によってプローブ核酸自体を切断する方法が挙げられる。紫外線によるプローブ核酸の切断は、波長210nm以上290nm以下の光をプローブ核酸に照射することで行われるが、より好適には240nm以上260nm以下が選ばれる。紫外線照射の条件は、用いるプローブ核酸の種類等に応じて選択できる。通常、紫外線が用いられ、その照射量は適宜設定できるが、例えば、マイクロプレートのウェル内の溶液に対して行なう場合、通常、100Wの市販の高圧水銀ランプを1分間から10分間程度の短時間照射すればよい。
磁気ビーズから分離され、溶液内に溶出した電気化学発光物質は、流路内に配置された作用電極上で測定される。電極は作用電極と対極の2極系、又は作用電極、対極、及び参照電極の3電極系のいずれかが用いられる。分離した電気化学発光物質を負電圧に印加した作用電極上に静電的に収集させる。このときの負電圧は、磁石により流路内に収集された磁気ビーズに紫外線を照射するタイミングと同時に印加させておくか、さらに好適には紫外線照射前に印加しておく。これにより、紫外線によって分離された電気化学発光物質を効率よく作用電極上に収集させることが可能となる。
作用電極に与える負電圧の絶対値は、前記電気化学発光物質を還元する還元剤の酸化電位の絶対値よりも小さいことが望ましい。このことで対極において還元剤が酸化されず、電解液状態が変化することなく作用電極で収集可能である。酸化電位の測定はサイクリックボルタンメトリ法等周知の方法が用いられる。負電圧によって電気化学発光物質を収集した後、作用電極に正電圧を印加することで電気化学発光物質を発光させる。電気化学発光物質の量に応じた発光信号は光電子増倍管等の光検出器を用いて計測が可能である。
以下、本発明の具体的な実施例とその作用効果を詳細に説明する。
<実施例>
本発明における遺伝子検出方法の具体的な実施例を図面を用いて説明する。本発明の工程は、工程(1)〜(5)からなる。それぞれの工程は、(1)磁気ビーズへのプローブ核酸の固定、(2)電気化学反応物質が標識された検出用プローブ核酸の作製、(3)ハイブリダイゼーション反応、(4)紫外線照射による電気化学発光物質の磁気ビーズからの分離、(5)負電圧印加による電気化学発光物質の捕捉からなる。このようにして作製した本発明の実施例と従来法により作製した比較例とを用意し、両者の電気化学発光量の測定を行った。
各工程の詳細については以下に示す。
(1)磁気ビーズへのプローブ核酸の固定
目的遺伝子を捕捉する相補プローブ核酸の担体として、磁気ビーズ(BangsLaboratories社製;CM01N/5896、平均粒径0.35μm)を用いた。この磁気ビーズはビーズ表面にストレプトアビジンがコーティングされている。相補プローブ核酸には、AATTTGTTAT GGGTTCCCGG GAAATAATCAの配列を有する5’末端にビオチン基を修飾した30塩基のオリゴデオキシヌクレオチド(配列表1)を使用した。該相補プローブ核酸を10mMのPBS(pH7.4のリン酸ナトリウム緩衝液)に溶解させ、10μMに調製した。
まず、磁気ビーズを1mg採取し、TTLバッファー(終濃度:100mMTris−HCl(pH8.0)、0.1%Tween20、1MLiCl)で洗浄後、20μLのTTLバッファーに置換した。その後、100nMの相補プローブ核酸を5μL添加し、室温で15分穏やかに振とうした。
溶液を除去し、残留した磁気ビーズを0.15MのNaOHで洗浄後、TTバッファー(250mMTris−HCl(pH8.0)、0.1%Tween20)で洗浄した。
洗浄後、TTEバッファー(250mMTris−HCl(pH8.0)、0.1%Tween20、20mMNa2EDTA(pH8.0))に溶液を置換し、80℃で10分間インキュベートすることにより、不安定なアビジンービオチン結合を除去した。これにより、磁気ビーズ表面に相補プローブ核酸が固定された磁気ビーズAを得た。
さらに、本実施例においては、比較対象として、2本鎖核酸が形成されない磁気ビーズBを作製する。この2本鎖核酸が形成されない磁気ビーズBは、磁気ビーズ表面に非相補プローブ核酸を固定させたものである。磁気ビーズBの作製方法は上述の相補プローブ核酸の磁気ビーズへの固定化条件と同じ処理を行う。なお、前記非相補プローブ核酸には、30塩基のPoly−A(AAAAAAAAAA AAAAAAAAAA AAAAAAAAAA)の配列を有する5’末端にビオチンを修飾したオリゴデオキシヌクレオチド(配列表2)を使用した。
(2)電気化学反応物質が標識された検出用プローブ核酸の作製
検出用プローブ核酸には、TGCTTACAAT CCTGATGTTT TCATTCAATTの配列を有する、5’末端にアミノ基を修飾した30塩基のオリゴデオキシヌクレオチド(配列表3)を使用した。
前記検出用プローブ核酸に用いる電気化学発光物質は、以下のようにして得る。
まず、テトラヒドロフラン(以下THF)60.0mLに溶解させた4,4’−ジメチル−2,2’ビピリジン2.50g(13.5mmol)溶液を窒素雰囲気の容器に注入した後、リチウムジイソプロピルアミド2M溶液16.9mL(27.0mmol)を滴下し、冷却しながら30分撹拌させた。一方、同様に窒素気流中で乾燥させた容器に、1,3−ジブロモプロパン4.2mL(41.1mmol)とTHF10mLとを加え、冷却しながら撹拌させた。この容器に、先程の反応液を30分かけて滴下させ、2.5時間反応させた。反応溶液は2Nの塩酸で中和し、THFを留去した後、クロロホルムで抽出した。溶媒を留去して得た粗生成物をシリカゲルカラムで精製し、生成物Aを得た。
窒素雰囲気の容器に、前記生成物A1.0g(3.28mmol)、フタルイミドカリウム0.67g(3.61mmol)、及びジメチルホルムアミド(脱水)30.0mLを加え、オイルバスで18時間還流した。反応後、クロロホルムで抽出し、0.2N水酸化ナトリウム50mLで蒸留水洗浄した。溶媒を留去して酢酸エチルとヘキサンから再結晶を行い、生成物Bを得た。
塩化ルテニウム(III)(2.98g、0.01mol)、及び2,2’−ビピリジン(3.44g、0.022mol)をジメチルホルムアミド(80.0mL)中で6時間還流した後、溶媒を留去した。その後、アセトンを加え、一晩冷却することで得られた黒色沈殿物を採取し、エタノール水溶液170mL(エタノール:水=1:1)を加え1時間加熱還流を行った。ろ過後、塩化リチウムを20g加え、エタノールを留去し、さらに一晩冷却した。析出した黒色物質は吸引ろ過で採取し、生成物Cを得た。
窒素置換した容器に、前記生成物B0.50g(1.35mmol)、前記生成物C0.78g(1.61mmol)、及びエタノール50mLを加えた。9時間窒素雰囲気で還流した後、溶媒を留去し、蒸留水で溶解させ、1.0Mの過塩素酸水溶液で沈殿させた。この沈殿物を採取し、メタノールで再結晶を行い、生成物Dを得た。
さらに、前記生成物D1.0g(1.02mmol)、及びメタノール70.0mLを1時間還流した。室温まで冷却した後、ヒドラジン一水和物0.21mL(4.21mmol)を加え再び13時間還流した。反応後、蒸留水を15mL加え、メタノールを留去した。
次に、濃塩酸を5.0mL加え、2時間還流して得られた反応液を8時間4度で冷蔵し、不純物を自然ろ過で除去した。
これを炭酸水素ナトリウムで中和した後、水を留去し、無機物をアセトニトリルで除去した。溶媒を留去して得た粗生成物をシリカゲルカラムで精製し、生成物Eを得た。
アルミホイルで遮光した容器に、前記生成物E0.65g(0.76mmol)を加え、アセトニトリル10mLに溶解させた。次に、トリエチルアミン0.23g(2.29mmol)を加えた後、アセトニトリル20mLに溶解したグルタル酸無水物0.87g(7.62mmol)を滴下した。
9時間反応後、エバポレーターでアセトニトリルを留去して得た粗生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製し、下記式(化1)に示す電気化学発光物質を得た。
Figure 2009092546
表1は、前述のようにして得た(化1)に示す物質の1H‐NMR結果である。
Figure 2009092546
このようにして得た(化1)の電気化学発光物質と配列表3のオリゴデオキシヌクレオチドを以下のようにして結合させる。まず、該オリゴデオキシヌクレオチド283μg(29.7pmol)を蒸留水0.2mLに溶解させ、該オリゴデオキシヌクレオチドの溶液に、1mMに調製した(化1)溶液89μL(89.0pmol)、N−ヒドロキシスクシンイミド0.3mg(2.6μmol)、WSC5.1mg(26.7μmol)、0.1Mトリエチルアミン0.9μL(90.0pmol)を添加し、2日間室温で反応させた。HPLCで精製後、目的物のフラクションを採取し、溶液を留去して末端に電気化学発光物質が標識された検出用プローブ核酸を得た。
(3)ハイブリダイゼーション反応
本発明で用いる目的核酸には、ヒト由来CytochromeP−450の遺伝子配列の5’−末端より599−698番目に位置するAATTGAATGA AAACATCAGG ATTGTAAGCA CCCCCTGGAT CCAGATATGC AATAATTTTC CCACTATCAT TGATTATTTC CCGGGAACCC ATAACAAATTの配列を有する100塩基のオリゴデオキシヌクレオチド(配列表4)を使用した。
(1)の工程で得られた磁気ビーズに、2倍のSSCを14μL加え、そこに5μMに調製した目的核酸及び(2)の工程で作製した検出用プローブ核酸をそれぞれ4μL添加し、70℃で穏やかに振とうさせた。1時間振とうさせた後、溶液を除去し、40℃に加温した2倍のSSCで洗浄した。洗浄溶液を除去し、さらにTTバッファーで洗浄することで、磁気ビーズA'を得た。なお、非相補プローブ核酸を固定した磁気ビーズBについても、上記と同様の処理を行うことで、磁気ビーズB'を得た。
(4)紫外線照射による電気化学発光物質の磁気ビーズからの分離
図2を用いて本測定装置を説明する。流路23は、樹脂製の流路蓋部21とガラスを基材とする電極チップ22とで構成された隙間に壁となるシリコン樹脂24を挟むことで密封空間が構成される。電極チップ22上には作用電極25、対極及び参照極26、さらに電極ピン27が接触する電極パット28、及びそれぞれの電極と電極パットをつなぐ配線が金属薄膜によって電極チップ上にパターニングされており、作用電極、対極、及び参照極に対応した電極パットに電極ピンが接触され、電圧印加及び信号の取得が可能な構成となっている。金属薄膜はガラス基板上にスパッタ装置(アルバック製SH−350)によりチタン10nmを下地に金200nmを形成されたものであり、さらにこの金属薄膜はフォトリソグラフィ工程により各電極、配線、電極パットのパターンを電極チップ上に形成されている。
流路蓋部21には磁気ビーズや電解液を送液する送液管29、測定後の液を排液する排液管30が配置されている。さらに、流路蓋部21と電極チップ22とで流路23を構成した際に作用電極25上に光を透過する窓34を介して光検出器31が構成されるように配置されている。また、流路23の流路外下部には磁気ビーズを収集するための磁石32が配置されている。さらに、磁石32の流路外上部に光を透過する窓34を介して紫外線照射装置33が配置されている。作用電極25対極及び参照極26にはポテンショスタット35から電極ピン27を介して電圧が印加される。電圧印加及び光検出器からの信号処理は制御用PC36によって制御・処理される。
図2で示す装置構成において、磁気ビーズA'を送液管29に導入した後、電解液(終濃度:0.1MPBS、0.1Mトリエチルアミン)で送液を行った。電解液の送液は50mm/分で行う。流路は長さ(送液方向)300mm、幅5mm、高さ1mmに設定した。
永久磁石を流路外に配置させた磁気ビーズ収集部を滴下部の下流に設けており、この収集部によって流路内を流れる磁気ビーズを捕捉させた。この時捕捉されない非目的試料は排液管から排水させた。捕捉させた磁気ビーズを、窓に密着させた短波長紫外光源(UVP製CL1000型)を用いて中心波長265nm、5mW/cm2の紫外線を20分間照射しプローブ核酸を切断することでルテニウム錯体を磁気ビーズから分離させた。磁気ビーズB’に対しても同様の処理を行った。
(5)負電圧印加による電気化学発光物質の捕捉
(4)の紫外線照射時に磁気ビーズ収集部の流路内の下流に配置した作用電極を参照電極に対して−0.4Vの電位に保持しておく。これにより上流から流れてきたルテニウム錯体を作用電極上に捕捉した。磁気ビーズB’に対しても同様の処理を行った。
<比較例>
上記実施例と対比させるため、(4)の紫外線照射を行った後、作用電極に負電圧を印加しない状態としたものを比較例とした。
<実施例と比較例との電気化学発光測定結果>
作用電極上に電圧を印加し、この時に生じた電気化学発光の測定を行った。なお、電圧の印加は、-0.4Vから1.3Vまで1秒間で掃印し、電気化学発光測定を行った。電気化学発光量の測定は、窓に密着させた光電子増倍管(浜松ホトニクス製H7360−01)を用いて行い、電圧掃印中におけるルテニウム錯体の最大発光量を測定した。
実施例及び比較例での測定結果を図3に示す。図3に示すように、実施例において得られた磁気ビーズA’からの発光量は負電圧を印加しない比較例の発光量に対して著しく高い値を示すので、本実施例における負電圧の印加はルテニウム錯体を捕捉していると考えられる。従って、効率よく磁気ビーズ錯体に捕捉されたルテニウム錯体を作用極上に収集し発光させることができる。また、磁気ビーズA’と磁気ビーズB’の発光量の差異は、本実施例の方が比較例よりもはるかに大きい。これは、本発明は、配列特異性を持つことを示している。以上の結果から、本発明を用いることで高感度に目的遺伝子の検出が可能であることは明らかである。
本発明に係る遺伝子検出方法は、磁気ビーズを必要とせず、作用電極に目的試料を収集できるので、微量な遺伝子サンプルの検出が可能となる。従って、高感度な測定が必要となる一塩基変異多型の検出、細菌検査及びウイルス検査方法に有用である。
従来のフロー型電気化学測定系の構成を示す概略図 本発明のフロー型電気化学測定装置の構成を示す概略図 実施例と比較例との電気化学発光量を示すグラフ
符号の説明
11、31 光検出器
12 フローセル
13、25 作用電極
14、29 送液管
15、30 排液管
16、32 磁石
23 流路
21 流路蓋部
22 電極チップ
24 シリコン樹脂
26 対極
27 電極ピン
28 電極パット
33 紫外線照射装置
34 窓
35 ポテンショスタット
36 制御用PC

Claims (8)

  1. 測定すべき目的核酸と前記目的核酸の一部と結合する第一のプローブを持つ磁気ビーズと前記目的核酸の他の一部と結合する第二のプローブを持つ電気化学発光物質とが互いに結合してプローブ複合体を形成する第1のステップと、
    前記磁気ビーズに作用する磁力を用いて前記第1のステップにて形成されたプローブ複合体を収集する第2のステップと、
    前記第2のステップで収集されたプローブ複合体から少なくとも前記電気化学発光物質を分離する第3のステップと、
    前記第3のステップで分離された電気化学発光物質を収集するために作用電極上に負電圧を与える第4のステップと、
    前記作用電極に正電圧を与え前記収集された電気化学発光物質を発光させその光量を測定する第5のステップと、
    を備える遺伝子検出方法。
  2. 前記第4のステップは、前記第3のステップと同時又は前記第3のステップの前に行う請求項1に記載の遺伝子検出方法。
  3. 前記第2から第5のステップを同一流路内で行う請求項1又は2に記載の遺伝子検出方法。
  4. 前記第2から第4のステップを同一流路内の上流側から下流側にかけて順次行う請求項3に記載の遺伝子検出方法。
  5. 前記第2のステップにおける磁力は流路の外部に配置した磁石より与える請求項1又は2に記載の遺伝子検出方法。
  6. 前記第3のステップは紫外線の照射により行われる請求項1又は2に記載の遺伝子検出方法。
  7. 前記紫外線の波長帯は、240nm以上260nm以下である請求項6に記載の遺伝子検出方法。
  8. 前記電気化学発光物質はルテニウム錯体である請求項1に記載の遺伝子検出方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN110286120A (zh) * 2019-08-15 2019-09-27 北京农业质量标准与检测技术研究中心 流动式电化学发光生物检测系统

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