JP2009085418A - 転がり軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】回転軸の外周面に互いに当接するように外嵌された内輪および環状部材の間にフレッティング摩耗が発生しにくくて寿命が長く、かつ、簡単安価に製造できる転がり軸受装置および転がり軸受装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】車軸1の外周面と第1,第2内輪5,6の内周面との間、車軸1の外周面と後蓋3の内周面との間、および、第2内輪7の後蓋3側の端面と後蓋3の第2内輪7側の端面との間に、二硫化モリブデンを介在させる。
【選択図】図1
【解決手段】車軸1の外周面と第1,第2内輪5,6の内周面との間、車軸1の外周面と後蓋3の内周面との間、および、第2内輪7の後蓋3側の端面と後蓋3の第2内輪7側の端面との間に、二硫化モリブデンを介在させる。
【選択図】図1
Description
本発明は、回転軸と、その回転軸の外周面に嵌合する転がり軸受とを備える転がり軸受装置に関し、特に、鉄道車両の車軸と、その車軸を回転自在に支持する転がり軸受とを備える転がり軸受装置に関する。
また、本発明は、回転軸と、転がり軸受とを備える転がり軸受装置を製造する転がり軸受装置の製造方法に関し、特に、鉄道車両の車軸と、その車軸を回転自在に支持する転がり軸受とを備える転がり軸受装置を製造する転がり軸受装置の製造方法に関する。
鉄道車両の車軸には数トンからなる車両の重量がラジアル荷重として加わるから、車軸の両端が下方に沈み、中央が膨らんだ状態(ベンディング)で回転することが知られている。
そして、鉄道車両の車軸と、その車軸に外嵌された転がり軸受と、上記車軸に外嵌されると共に、上記転がり軸受に軸方向に当接する環状の後蓋とを備える転がり軸受装置において、上記ベンディングの影響で、上記内輪の軸方向の端面と、その端面に当接している後蓋の軸方向の端面とに作用する応力が周期的に変動することが知られ、その応力変動によってそれらの端面に微少摩耗(フレッティング摩耗)が生じることが知られている。
上記フレッティング摩耗を抑制できる転がり軸受装置としては、特開2006−177448号公報(特許文献1)に記載されているものがある。
この転がり軸受装置は、車軸に装着された転がり軸受の内輪の端面と、その端面に当接する後蓋の端面とのうちの少なくとも一方を、軟質金属からなるメッキでコーティングすることにより、内輪の端面と後蓋の端面との摩擦を軽減して、微少摩耗(フレッティング摩耗)を抑制している。
しかしながら、この転がり軸受装置は、内輪の端面と、その内輪の端面に当接する後蓋の端面とのうちの少なくとも一方をメッキでコーティングしなければならないから、転がり軸受装置の製造コストが高いと共に、転がり軸受装置を製造するのに大きな工数が必要になる。
特開2007−177448号公報
そこで、本発明の課題は、回転軸の外周面に互いに当接するように外嵌された内輪および環状部材の間にフレッティング摩耗が発生しにくくて寿命が長く、かつ、簡単安価に製造できる転がり軸受装置を提供することにある。
また、本発明の課題は、回転軸の外周面に互いに当接するように外嵌された内輪および環状部材の間にフレッティング摩耗が発生しにくくて寿命が長い転がり軸受装置を簡単安価に製造できる転がり軸受装置の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、この発明の転がり軸受装置は、
回転軸と、
内輪、外輪および転動体を有すると共に、上記内輪の内周面が上記回転軸の外周面に嵌合している転がり軸受と、
上記内輪の軸方向の一方の側の端面に当接する上記軸方向の端面を有すると共に、内周面が上記回転軸の上記外周面に嵌合している環状部材と、
上記回転軸の上記外周面と上記内輪の上記内周面との間、上記回転軸の上記外周面と上記環状部材の上記内周面との間、および、上記内輪の上記端面と上記環状部材の上記端面との間に介在する二硫化モリブデンと
を備えることを特徴としている。
回転軸と、
内輪、外輪および転動体を有すると共に、上記内輪の内周面が上記回転軸の外周面に嵌合している転がり軸受と、
上記内輪の軸方向の一方の側の端面に当接する上記軸方向の端面を有すると共に、内周面が上記回転軸の上記外周面に嵌合している環状部材と、
上記回転軸の上記外周面と上記内輪の上記内周面との間、上記回転軸の上記外周面と上記環状部材の上記内周面との間、および、上記内輪の上記端面と上記環状部材の上記端面との間に介在する二硫化モリブデンと
を備えることを特徴としている。
本発明によれば、上記内輪の上記端面と上記環状部材の上記端面との間に存在している二硫化モリブデンによって、上記内輪の上記端面と上記環状部材の上記端面との間に発生するフレッティング摩耗を抑制できる。したがって、転がり軸受装置の寿命を長くできる。
また、本発明によれば、内輪の軸方向の端面と、この端面に当接する環状部材の軸方向の端面との両方に、高価なメッキコーティングが施されていなくて、内輪の軸方向の端面と、この端面に当接する環状部材の軸方向の端面との間に、メッキコーティングよりも安価な二硫化モリブデンが存在しているだけであるから、転がり軸受装置の製造コストが小さくなる。
また、この発明の転がり軸受装置の製造方法は、
回転軸と、その回転軸を支持する転がり軸受と、上記回転軸に外嵌された環状部材とを備える転がり軸受装置を製造する転がり軸受装置の製造方法において、
上記回転軸の外周面の少なくとも一部に二硫化モリブデンを塗布した後、上記転がり軸受の内輪の軸方向の一方の端面と、上記環状部材の軸方向の一方の端面とが当接している状態で、上記内輪および上記環状部材を、上記回転軸の上記外周面に上記軸方向に圧入して、上記内輪および上記環状部材を、上記回転軸の上記外周面における上記二硫化モリブデンが塗布されている箇所を、上記回転軸の軸方向に移動させることにより、上記二硫化モリブデンの一部を、上記内輪の上記端面と上記環状部材の上記端面との間に移動させることを特徴としている。
回転軸と、その回転軸を支持する転がり軸受と、上記回転軸に外嵌された環状部材とを備える転がり軸受装置を製造する転がり軸受装置の製造方法において、
上記回転軸の外周面の少なくとも一部に二硫化モリブデンを塗布した後、上記転がり軸受の内輪の軸方向の一方の端面と、上記環状部材の軸方向の一方の端面とが当接している状態で、上記内輪および上記環状部材を、上記回転軸の上記外周面に上記軸方向に圧入して、上記内輪および上記環状部材を、上記回転軸の上記外周面における上記二硫化モリブデンが塗布されている箇所を、上記回転軸の軸方向に移動させることにより、上記二硫化モリブデンの一部を、上記内輪の上記端面と上記環状部材の上記端面との間に移動させることを特徴としている。
二硫化モリブデンは、軸に環状部材を圧入する際に発生し易いかじり(摺動面に引っかき傷が付くこと)を抑制する効果が大きい。
本発明によれば、上記内輪および上記環状部材を、上記回転軸の上記外周面に上記軸方向に圧入して、上記内輪および上記環状部材を、上記回転軸の上記外周面における上記二硫化モリブデンが塗布されている箇所上を、上記回転軸の上記軸方向に通過させることにより、上記二硫化モリブデンの一部を、上記内輪の上記端面と上記環状部材の上記端面との間に移動させているから、上記内輪および上記環状部材を、上記回転軸に圧入する際に発生するかじりを抑制できると同時に、上記内輪の上記端面と上記環状部材の上記端面との間に二硫化モリブデンを行き渡らせることができて、上記内輪の上記端面と上記環状部材の上記端面との間に発生するフレッティングも抑制することができる。
すなわち、本発明によれば、圧入終了後に、上記内輪の上記端面と上記環状部材の上記端面との間に行き渡るだけの二硫化モリブデンを、圧入前に回転軸の外周面に塗布するだけで、圧入の際のかじりを抑制でき、かつ、内輪の端面と環状部材の端面との間に別工程で潤滑剤を塗布したり、内輪の端面と環状部材の端面とのうちの少なくとも一方に、メッキでコーティングを施したりする必要が一切なく、上記内輪の上記端面と上記環状部材の上記端面との間に発生するフレッティングを抑制することができる。
したがって、本発明によれば、圧入の際のかじりを防止でき、かつ、内輪および環状部材の間のフレッティング摩耗を抑制できて、転がり軸受装置の寿命を長くすることができ、かつ、従来と比較して、転がり軸受を製造する工数(手間)を格段に小さくすることができると共に、転がり軸受装置の製造コストを、大幅に低減することができる。
本発明の転がり軸受装置によれば、内輪および環状部材の間のフレッティング摩耗を抑制できて、転がり軸受装置の寿命を長くすることができ、かつ、従来と比較して、転がり軸受装置の製造コストを、低減することができる。
また、本発明の転がり軸受装置の製造方法によれば、圧入の際のかじりを防止でき、かつ、内輪および環状部材の間のフレッティング摩耗を抑制できて、転がり軸受装置の寿命を長くすることができ、かつ、従来と比較して、転がり軸受を製造する工数(手間)を格段に小さくすることができると共に、転がり軸受装置の製造コストを、大幅に低減することができる。
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の転がり軸受装置の軸方向の断面図である。
この転がり軸受装置は、鉄道車両の一部を構成している。この転がり軸受装置は、回転軸の一例としての鉄道車両の車軸1と、転がり軸受の一例としての複列円錐ころ軸受2と、環状部材の一例としての環状の後蓋3と、油切り4とを備える。
上記複列円錐ころ軸受2は、車軸1を回転自在に支持している。上記複列円錐ころ軸受は、第1内輪6、第2内輪7、外輪8、転動体としての複数の第1円錐ころ10、および、転動体としての複数の第2円錐ころ11を有する。上記第1内輪6と第2内輪7とは、複合内輪を構成している。
上記車軸1は、円筒外周面部14と、拡径外周面部17とを有し、上記拡径外周面部17は、円筒外周面部14につながっている。上記拡径外周面部17は、軸方向に円筒外周面部14から離れるにしたがって、外径が大きくなっている。上記拡径外周面部14は、軸方向の断面において、略放物線状の形状を有している。
上記第1内輪6は、外周に円錐軌道面21を有すると共に、第2内輪7は、外周に円錐軌道面22を有している。上記第1内輪6と第2内輪7とは、同一であり、第1内輪6の円錐軌道面21の小径側の端面は、第2内輪7の円錐軌道面22の小径側の端面に当接している。
一方、上記外輪8は、互いに軸方向に隣接する第1円錐軌道面31および第2円錐軌道面32を有している。上記第1円錐軌道面31の内径は、第2円錐軌道面32側にいくにしたがって小さくなり、第2円錐軌道面32の内径は、第1円錐軌道面31側にいくにしたがって小さくなっている。
上記第1円錐ころ10は、第1内輪6の円錐軌道面21と、外輪8の第1円錐軌道面31との間に、第1保持器41に保持された状態で、周方向に所定の間隔を隔てられて複数配置されている。また、上記第2円錐ころ11は、第2内輪7の第1円錐軌道面22と、外輪8の第2円錐軌道面32との間に、第2保持器42に保持された状態で、周方向に所定の間隔を隔てられて複数配置されている。
上記後蓋3は、車軸1の拡径外周面部17に対応する形状を有する拡径内周面部44を有している。上記後蓋3の拡径内周面部44が、車軸1の拡径外周面部17に嵌り込むことにより、後蓋3を、車軸1の所定位置に固定するようになっている。上記後蓋3の車軸1の複列円錐ころ軸受2側の端面は、第2内輪7の軸方向の上記他端部側の端面と当接している。
上記油切り4は、環状部材であり、複列円錐ころ軸受2の後蓋3側とは反対側に位置している。油切り4の軸方向の一方の側の端面は、第1内輪6の第2内輪7側とは反対側の端面に当接している。油切り4は、車軸2の端部にネジで固定された前蓋(図示せず)によって、後蓋3側に力を付与されている。上記車軸1に対して位置決めされた前蓋および後蓋3で、複列円錐ころ軸受2と油切り4とを挟み込むことにより、複列円錐ころ軸受2と油切り4とを軸方向に位置決めしている。
上記外輪8の軸方向の一端部の内周面には、筒状のシールケース37が、取り付けられ、外輪8の軸方向の他端部の内周面には、筒状のシールケース38が取り付けられている。また、上記シールケース37と油切り4との間は、密封装置47で密封され、シールケース38と後蓋3との間は、密封装置48で密封されている。
また、図1において、他の線よりも太線で描かれている、車軸1の外周面と複合内輪(第1および第2内輪5,6の内周面)との間50、車軸1の外周面と環状部材としての後蓋3の内周面との間51、第2内輪7の軸方向の後蓋3側の端面と後蓋3の軸方向の第2内輪7側の端面との間52、および、車軸1の外周面と油切り4の内周面との間53には、二硫化モリブデンが介在している。
また、図1に示すように、上記後蓋3の上記端面には、周方向に延在するOリング溝が形成され、Oリング56が、そのOリング溝に配置されている。上記Oリング56は、二硫化モリブデンが複列円錐ころ軸受2の内部に浸入して、二硫化モリブデンが複列円錐ころ軸受2の内部のグリース等の潤滑剤に混入することを防止し、また、摩耗粉等の外部の異物が複列円錐ころ軸受2の内部に浸入することを防止し、また、複列円錐ころ軸受2の内部の潤滑剤が外部に漏洩することを防止している。
尚、図示しないが、車軸1において油切り4の軸方向の軸受2側とは反対側に位置する部分の外径は、円筒外周面部14の外径よりも小さくなっている。このようにして、後蓋3、第1および第2内輪6,7および油切り4を軸方向に圧入する際に、後蓋3、第1および第2内輪6,7および油切り4が、車軸1において油切り4の軸方向の軸受2側とは反対側に位置する部分に接触しないようにして、圧入を行い易くし、かつ、各部材に傷が付くことを抑制している。
図2および図3は、本発明の一実施形態の転がり軸受装置の製造方法を説明するための模式図であり、上記実施形態の転がり軸受装置を製造する転がり軸受装置の製造方法を説明するための模式図である。
この方法によって、上記実施形態の転がり軸受装置は、次のように製造される。
先ず、図2に点のハッチングで示す部分、すなわち、転がり軸受装置の完成品において、複列円錐ころ軸受2、後蓋3、および、油切り4が接触する車軸1の外周面部分に、二硫化モリブデンを塗布する。
次に、複列円錐ころ軸受2、後蓋3、油切り4、シールケース37、シールケース38、密封装置47および密封装置48を組み立てて一体にして、軸受アッセンブリを形成する。
続いて、図3に示すように、上記軸受アッセンブリを、車軸1における円筒外周面部14の拡径外周面部17側とは反対側から車軸1に挿入して、後蓋3が所定の位置に到達するまで、上記軸受アッセンブリを、軸方向に圧入する。このとき、第2内輪7の軸方向の後蓋3側の端面の径方向の内方の角部で、二硫化モリブデンの一部を掻き取って、第2内輪7と後蓋3との間におけるOリング56よりも径方向の内方に位置する部分に移動させる。
逆にいうと、圧入する前の車軸1には、圧入後に、第2内輪7と後蓋3との間におけるOリング56よりも径方向の内方に位置する部分に行き渡ることが可能な量の下限よりも大きな量の二硫化モリブデンが、塗布されている。
最後に、図示しないキャップ状(軸方向の断面において略コ字状)の前蓋を、車軸1の軸方向の一方の端面を覆うように、車軸1における円筒外周面部14の拡径外周面部17側とは反対側から車軸1にかぶせた後、前蓋を、ボルトで車軸1に固定して、転がり軸受装置の製造を終了する。
図4Aは、上記実施形態の転がり軸受の製造方法において、二硫化モリブデンの車軸の塗布領域だけを変化させたときの、具体的には、車軸における二硫化モリブデンの塗布領域を、車軸における油切りの嵌合い面および拡径外周面部(図1では17で示す部分)のみに限定した点だけが、異なる方法により、製造した比較例の装置において、装置の使用前において、第2内輪の後蓋側の端面の表面粗さを表す図である。
また、図4Bは、一実験例において、上記比較例の装置において、所定時間使用した後の第2内輪の後蓋側の端面の表面粗さを表す図である。
図4Bに結果を示す実験、および、以下の図5B、図6B、図7Bに結果を示す実験は、詳しくは、次の[表1]に示す実験条件で行った。本発明者は、これ以外の条件でも、実験を多数行った。それらの実験においても、図4B、図5B、図6B、図7Bで得られた結果と同様な結果が得られた。
[表1]
[表1]
また、図5Aは、上記実施形態の転がり軸受の製造方法により製造した装置、すなわち、上記実施形態の転がり軸受装置において、装置の使用前において、第2内輪7の後蓋3側の端面の表面粗さを表す図である。
また、図5Bは、一実験例において、上記実施形態の装置において、上記所定時間使用した後の第2内輪7の後蓋3側の端面の表面粗さを表す図である。
図4Bに示すように、比較例の装置においては、所定時間使用した試験後において、使用前と比較して、表面粗さが大きくなっていて、第2内輪の後蓋側の端面にフレッティング摩耗が発生している。一方、図5Bに示すように、上記実施形態の装置においては、図5Aおよび図5Bに示されているように、使用の前後において、第2内輪7の後蓋3側の端面の表面粗さが変化しておらず、上記所定時間使用した試験後においても、第2内輪7の後蓋3側の端面にフレッティング摩耗が発生していない。
このことから、圧入前の二硫化モリブデンの量が少なければ、第2内輪と後蓋との間におけるOリングよりも径方向の内方に位置する部分に二硫化モリブデンを到達させることができない一方、上記実施形態の方法で、装置を製造すれば、圧入の後に、第2内輪7と後蓋3との間におけるOリング56よりも径方向の内方に位置する部分に二硫化モリブデンを充分に行き渡らせることができて、第2内輪7の後蓋3側の端面にフレッティング摩耗が発生することを防止できる。
図6Aは、上記比較例の装置において、装置の使用前において、後蓋の第2内輪側の端面の表面粗さを表す図である。
また、図6Bは、一実験例において、上記比較例の装置において、上記所定時間使用した後の後蓋の第2内輪側の端面の表面粗さを表す図である。
また、図7Aは、上記実施形態の転がり軸受の製造方法により製造した装置、すなわち、上記実施形態の転がり軸受装置において、装置の使用前において、後蓋3の第2内輪7側の端面の表面粗さを表す図である。
また、図7Bは、一実験例において、上記実施形態の装置において、上記所定時間使用した後の後蓋3の第2内輪7側の端面の表面粗さを表す図である。
図6Bに示すように、比較例の装置においては、所定時間使用した試験後において、使用前と比較して、表面粗さが大きくなっていて、後蓋の第2内輪側の端面にフレッティング摩耗が発生している。一方、図7Bに示すように、上記実施形態の装置においては、図7Aおよび図7Bに示されているように、使用の前後において、後蓋3の第2内輪7側の端面の表面粗さが変化しておらず、上記所定時間使用した試験後においても、後蓋3の第2内輪7側の端面にフレッティング摩耗が発生していない。
このことから、圧入前の二硫化モリブデンの量が少なければ、第2内輪と後蓋との間におけるOリングよりも径方向の内方に位置する部分に二硫化モリブデンを到達させることができない一方、上記実施形態の方法で、装置を製造すれば、圧入の後に、第2内輪7と後蓋3との間におけるOリング56よりも径方向の内方に位置する部分に二硫化モリブデンを充分に行き渡らせることができて、後蓋3の第2内輪7側の端面にフレッティング摩耗が発生することを防止できる。
この結果は、上記第2内輪のフレッティング摩耗の有無を調査した上述の試験結果と符合している。
上記実施形態の転がり軸受装置によれば、互いに軸方向に当接する、第2内輪7の後蓋3側の端面と、後蓋3の第2内輪7側の端面との間に存在している二硫化モリブデンによって、第2内輪7の上記端面と後蓋3の上記端面との間に発生するフレッティング摩耗を抑制できる。したがって、転がり軸受装置の寿命を長くできる。
また、上記実施形態の転がり軸受装置によれば、第2内輪7の上記端面と、この端面に当接する後蓋3の上記端面との両方に、高価なメッキコーティングが施されていなくて、第2内輪7の上記端面と、この端面に当接する後蓋3の上記端面との間に、メッキコーティングよりも安価な二硫化モリブデンが存在しているだけであるから、上記従来例の装置と比較して、転がり軸受装置の製造コストが小さくなる。
また、上記実施形態の転がり軸受装置の製造方法によれば、第1および第2内輪5,6および後蓋3を、車軸1の外周面に軸方向に圧入して、第1および第2内輪5,6および後蓋3を、車軸1の外周面における二硫化モリブデンが塗布されている箇所上を、車軸1の軸方向に通過させることにより、二硫化モリブデンの一部を、第2内輪7の上記端面と後蓋3の上記端面との間に移動させているから、かじり(摺動面に引っかき傷が付くこと)を抑制する効果が大きい二硫化モリブデンで、内輪5,6および後蓋3を、車軸1に圧入する際に発生するかじりを抑制できると同時に、第2内輪7の上記端面と後蓋3の上記端面との間に二硫化モリブデンを行き渡らせることができて、第2内輪7の上記端面と後蓋3の上記端面との間に発生するフレッティングも抑制することができる。
すなわち、上記実施形態の転がり軸受装置の製造方法によれば、圧入終了後に、第2内輪7の上記端面と後蓋3の上記端面との間に行き渡るだけの二硫化モリブデンを、圧入前に車軸1の外周面に塗布するだけで、圧入の際のかじりを防止でき、かつ、第2内輪の後蓋側の端面と後蓋の第2内輪側の端面との間に別工程でグリース等の潤滑剤を塗布したり、第2内輪の後蓋側の端面と後蓋の第2内輪側の端面とのうちの少なくとも一方に、メッキコーティングを施したりする必要が一切なく、第2内輪7の上記端面と後蓋3の上記端面との間に発生するフレッティングを抑制することができる。
したがって、本発明の転がり軸受の製造方法によれば、圧入の際のかじりを防止でき、かつ、第2内輪7および後蓋3の間のフレッティング摩耗を抑制できて、転がり軸受装置の寿命を長くすることができ、かつ、従来と比較して、転がり軸受を製造する工数(手間)を格段に小さくすることができると共に、転がり軸受装置の製造コストを、大幅に低減することができる。
尚、上記実施形態の転がり軸受装置では、油切り4と車軸1の外周面との間に二硫化モリブデンが存在していたが、この発明では、油切りと車軸の外周面との間に二硫化モリブデンが存在していなくても良い。
また、上記実施形態の転がり軸受装置では、第2内輪7の上記端面と後蓋3の上記端面との間をOリング56で密封したが、この発明では、内輪と環状部材との間にOリングが存在しなくても良い。
また、上記実施形態の転がり軸受装置では、転がり軸受が、複列の円錐ころ軸受2であったが、この発明では、転がり軸受において、転動体は、軸方向に一列または複数列配置されていても良く、かつ、転動体は、円錐ころ、円筒ころ、または、円錐ころと円筒ころとの組み合わせであっても良い。また、外輪または内輪は、一体型であっても、複数の環状部材からなる複合型であってもどちらでも良い。
また、上記実施形態の転がり軸受装置の製造方法では、軸受アッセンブリの圧入前に、転がり軸受装置の完成品における、複列円錐ころ軸受2、後蓋3、および、油切り4の車軸1の嵌合い面に、二硫化モリブデンを塗布したが、この発明では、軸受アッセンブリの圧入前に、転がり軸受装置の完成品における、転がり軸受の車軸の嵌合い面のみに二硫化モリブデンを塗布しても良いし、または、転がり軸受装置の完成品における、転がり軸受の車軸の嵌合い面および後蓋の嵌合い面のみに二硫化モリブデンを塗布しても良い。このようにしても、圧入後に、第2内輪の上記端面と後蓋の上記端面との間に二硫化モリブデンを充分に行き渡らせることができることが、試験により確認されており、第2内輪の後蓋側の端面および後蓋の第2内輪側の端面のフレッティング摩耗を抑制することができるからである。
すでに上述したように、この発明では、上記実施形態のように、内輪は、必ずしも二つの環状部材6,7で構成されなくても良い。また、この発明では、環状部材は、後蓋に限定されず、環状部材は、内輪に、軸方向に当接すると共に、回転軸に外嵌されている環状の部材(例えば、スペーサやカラー等)であれば、如何なる部材であっても良い。また、この発明では、転がり軸受の内輪の圧入後に、互いに軸方向に当接する、内輪および環状部材の間に二硫化モリブデンを行き渡らせることができさえすれば、内輪の圧入前に、回転軸の如何なる領域に二硫化モリブデンが塗布されていても良い。
1 車軸
2 複列円錐ころ軸受
3 後蓋
4 油切り
6 第1内輪
7 第2内輪
8 外輪
10 第1円錐ころ
11 第2円錐ころ
2 複列円錐ころ軸受
3 後蓋
4 油切り
6 第1内輪
7 第2内輪
8 外輪
10 第1円錐ころ
11 第2円錐ころ
Claims (2)
- 回転軸と、
内輪、外輪および転動体を有すると共に、上記内輪の内周面が上記回転軸の外周面に嵌合している転がり軸受と、
上記内輪の軸方向の一方の側の端面に当接する上記軸方向の端面を有すると共に、内周面が上記回転軸の上記外周面に嵌合している環状部材と、
上記回転軸の上記外周面と上記内輪の上記内周面との間、上記回転軸の上記外周面と上記環状部材の上記内周面との間、および、上記内輪の上記端面と上記環状部材の上記端面との間に介在する二硫化モリブデンと
を備えることを特徴とする転がり軸受装置。 - 回転軸と、その回転軸を支持する転がり軸受と、上記回転軸に外嵌された環状部材とを備える転がり軸受装置を製造する転がり軸受装置の製造方法において、
上記回転軸の外周面の少なくとも一部に二硫化モリブデンを塗布した後、上記転がり軸受の内輪の軸方向の一方の端面と、上記環状部材の軸方向の一方の端面とが当接している状態で、上記内輪および上記環状部材を、上記回転軸の上記外周面に上記軸方向に圧入して、上記内輪および上記環状部材を、上記回転軸の上記外周面における上記二硫化モリブデンが塗布されている箇所を、上記回転軸の軸方向に移動させることにより、上記二硫化モリブデンの一部を、上記内輪の上記端面と上記環状部材の上記端面との間に移動させることを特徴とする転がり軸受装置の製造方法。
Priority Applications (1)
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JP2007259795A JP2009085418A (ja) | 2007-10-03 | 2007-10-03 | 転がり軸受装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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EP2828366A1 (en) * | 2012-03-22 | 2015-01-28 | The Timken Company | Anti-fretting additives for non-lubricated contact surfaces |
JP2016205443A (ja) * | 2015-04-16 | 2016-12-08 | 日本精工株式会社 | 鉄道車両車軸用軸受 |
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2007
- 2007-10-03 JP JP2007259795A patent/JP2009085418A/ja active Pending
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JP2016205443A (ja) * | 2015-04-16 | 2016-12-08 | 日本精工株式会社 | 鉄道車両車軸用軸受 |
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