JP2009084648A - 疲労強度及び伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】伸びフランジ性に優れたDP鋼において、疲労特性をさらに改善する。
【解決手段】質量%で、C:0.01%超〜0.30%、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜2.5%を含み、さらにV:0.01〜0.15%及びTi:0.01〜0.15%を式(1),(2)を満たすように含み、残部がFe及び不可避不純物からなり、フェライト分率が50〜95%、マルテンサイト+残留オーステナイトからなる硬質第2相分率が5%〜50%の組織を有し、フェライト中の析出物の平均粒径r(nm)が式(3)を満たし、平均粒径rと析出物分率fが式(4)を満たす。式(3)のX(M)(M:V,Ti)は析出物を構成する各元素の平均原子量比であり、式(5)で表される。式(1),(2),(5)中の元素記号は当該元素の質量%を意味する。
【数1】
Figure 2009084648

【選択図】 なし

Description

本発明は、自動車の足回り、フレーム部品等の強度と加工性及び疲労特性が必要な部品に用いられる優れた疲労強度及び伸びフランジ性を示す高強度熱延鋼板に関する。
近年、自動車部品の高強度化が進み、自動車の足回り部品やフレーム部品等でも高強度化が進んでいるが、部品の軽量化のためには、静的強度とともに疲労強度の改善が必要とされている。また、複雑な形状に加工されるため、加工性(延性)との両立が求められている。
加工性の改善には、強度比の大きい2種類の組織からなる鋼(Dual鋼、DP鋼)とすることが有効であり、さらにDP鋼の疲労特性の改善方法として、強度が低く応力集中の起こりやすいフェライト部を強化することが有効であることが知られている。例えば特許文献1には、Ti又はNbの炭化物で析出強化した主相フェライトと硬質な第2相からなるDP鋼において、20μmまでの表層部の平均フェライト粒径を5μm以下にすることが記載され、特許文献2には、第2相をマルテンサイト・針状フェライト・残留オーステナイトとしたDP鋼において、初析フェライトを析出強化することで、強度−加工性−疲労特性を改善することが記載されている。
特開平9−137249号公報 特開平11−189842号公報
前記特許文献1,2に記載された熱延鋼板は、700〜800℃付近の保持・滞留時間を短時間とし、フェライト中にTi、Nbの炭化物を分散析出させ、主相フェライトを析出強化している。この熱延鋼板では、上記温度範囲での短時間の保持・滞留で微細に分散析出した析出物が、転位の繰り返し運動に対して障害物になり、疲労特性を改善するものと考えられている。しかし、これらの熱延鋼板では、これにより十分な疲労特性改善効果が得られたとはいえなかった。
従って、本発明は、加工性に優れたDP鋼において、疲労特性をさらに改善することを目的とする。
本発明者らの研究により、DP鋼においてフェライトをTi、Vなどの析出物により強化する場合に、その析出物サイズを適切に制御(適度に粗大化)することにより、高い疲労特性改善効果が得られることが分かった。これは、析出物を適度に粗大化することで、転位が析出物を通過する機構がカッティング機構からオロワン機構に変わり、析出物が疲労試験中の転位の繰り返し運動に対し有効な障害物になり、疲労特性が改善するものと考えられる。カッティング機構からオロワン機構に遷移する析出物のサイズは、析出物の種類(析出物を構成する成分)によって変化するので、鋼組成の影響を考慮する必要がある。なお、前記特許文献1,2の熱延鋼板では、適切な析出物サイズが得られず、十分な疲労特性改善効果が得られなかったものと推測される。
本発明に係る疲労強度及び伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板は、質量%で、C:0.01%超、0.30%以下、Si:0.1%以上、2.0%以下、Mn:0.1%以上、2.5%以下を含み、さらにV:0.01%以上、0.15%以下及びTi:0.01%以上、0.15%以下を下記条件式(1),(2)を満たすように含み、残部がFe及び不可避不純物からなり、フェライト分率が50%以上、95%以下、マルテンサイト+残留オーステナイトからなる硬質第2相分率が5%以上、50%以下の組織を有し、析出物の平均粒径r(nm)が下記条件式(3)を満たし、平均粒径rと析出物分率fが下記条件式(4)を満たすことを特徴とする。
0.1≦V/(V+Ti)<0.5 ・・・・(1)
C−12×(V/51+Ti/48+Nb/93+Zr/91+W/184)≧0.01 ・・・・(2)
r≧207÷(31.4X(Ti)+27.4X(V)+23.5X(Nb)+25.5X(Zr)+23.5X(W)) ・・・・(3)
r/f≦13000 ・・・・(4)
ここで、式(3)中のX(M)(M:Ti,V,Nb,Zr,W)は析出物を構成する元素の平均原子量比であり、下記一般式(5)で表される。
X(M)=(Mの質量%/Mの原子量)/(Ti/48+V/51+Nb/93+Zr/91+W/184) ・・・・(5)
ただし、上記式(1),(2),(5)中の元素記号は当該元素の質量%を意味する。なお、上記式(2),(3),(5)において、鋼に含まれない元素があれば、その元素を除いて計算する。
上記高強度熱延鋼板において、フェライト相の平均粒径が5μm以下であることが望ましい。
上記高強度熱延鋼板は、必要に応じて、さらにNb:0.30%以下、Zr:0.30%以下、W:0.30%以下のいずれか1種又は2種以上、Cu:1%以下、Ni:1%以下、Cr:1%以下のいずれか1種又は2種以上、Al:0.1%以下、P:0.1%以下の1種又は2種,のいずれかを、又はこれらを適宜組み合わせて含むことができる。
本発明によれば、加工性と疲労特性が共に優れた高強度熱延鋼板を得ることができる。本発明に係る高強度熱延鋼板は、強度と加工性及び疲労特性が必要とされる自動車の足回り、フレーム部品等の製造に適している。
なお、本発明において加工性は、強度−伸びバランス(TS×El)と強度−伸びフランジバランス(TS×λ)で評価し、疲労特性は疲労強度比(FL/TS)で評価する。TSは引張強さ、Elは伸び、λは伸びフランジ性(穴広がり率)、FLは疲労強度を意味する。
まず、本発明に係る高強度熱延鋼板の組成及び組織限定理由について説明する。
・C:0.01%超、0.30%以下
Cは強化元素であり、C量が増加するとフェライト分率が低下する。0.01%以下では必要な強度が得られず、0.30%を超えると硬質第2相(マルテンサイト+残留オーステナイト)分率が大きくなり過ぎ、TS×Elバランス及びTS×λバランスが確保できない。好ましくは、0.04%超、0.20%以下である。
・Si:0.1%以上、2.0%以下
Siはフェライトの固溶強化元素としてTS×Elバランス改善に寄与し、疲労特性改善にも寄与する。しかし、0.1%未満であると脱酸が不十分となり疲労強度が劣化し、2.0%を超えるとフェライトが強化されすぎ、TS×Elバランスが劣化する。好ましくは0.5%以上、1.7%以下である。
・Mn:0.1%以上、2.5%以下
Mnは脱酸元素として添加され、また固溶強化によりTS×Elバランスの改善に寄与する。しかし、0.1%未満であると脱酸が不十分となり強度が不足し、2.5%を超えると焼き入れ性が高くなり過ぎフェライト分率が低下して、TS×Elバランス及びTS×λバランスが劣化する。好ましくは1.0%以上、2.0%以下である。
・V:0.01%以上、0.15%以下
・Ti:0.01%以上、0.15%以下
・0.1≦V/(V+Ti)<0.5((1)式)
V,Tiは炭化物としてフェライトを析出強化することで疲労特性改善に寄与する。しかし、それぞれ下限値未満であると析出強化効果が不十分であり、上限値を超えて添加しても特性改善効果が得られない。好ましくはV:0.03%以上、0.12%以下、Ti:0.03%以上、0.12%以下である。
また、発明者らが炭化物の分散状態に及ぼす成分の影響を調査した結果、Tiは合金炭化物の析出の駆動力を大きくし、フェライト中に均一微細に分散させる効果がある一方で、炭化物の成長速度が遅く適切なサイズに成長しない。一方、Vは析出の駆動力が小さく、成長速度が大きいため、粗大な析出物が疎に分散し十分な析出強化能が得られない。このようなTi,V単独添加の問題点を解決するためには、TiとVを適切な範囲で複合添加してTiとVの複合炭化物(Ti,V)Cを形成させることが有効で、これにより熱間圧延工程で析出物を均一,かつ適切なサイズに制御することができる。Vの割合が0.1未満(Tiの割合が0.9超)の場合、合金炭化物の成長速度が確保できず、析出物サイズが微細になり過ぎて疲労強度が確保できず、Vの割合が0.5以上(Tiの割合が0.5以下)では成長速度が大きくなり過ぎ、析出物サイズが粗大化してr/fが過大になり、疲労特性が劣化する。
・C−12×(V/51+Ti/48+Nb/93+Zr/91+W/184)≧0.01 (式(2))
この式はV,Ti,Nbにより固定されないフリーC量を0.01%以上残存させることを意味する。フリーCは必要な硬質第2相分率の確保に寄与する。左辺の計算値は0.04%以上が好ましい。
・Nb:0.30%以下
・Zr:0.30%以下
・W:0.30%以下
これらの元素は炭化物を形成し、析出強化量の増加に寄与する。しかし、上限値を超えるとオーステナイト域での圧延中に析出し、析出物サイズが粗大化してr/fが過大になり疲労特性が不足する。従って、Nb,Zr,W含有量は上記のとおりとする。好ましくはいずれも0.25%以下である。なお、これらの元素の合計含有量が多すぎると、熱延前の加熱で析出物が完全に固溶せず、未固溶の粗大析出物の量が多くなりr/fが過大になるため、好ましい合計含有量は0.3%以下である。
・Cu:1%以下
・Ni:1%以下
・Cr:1%以下
これらの元素は鋼の焼き入れ性を高めることにより、マルテンサイト及び残留オーステナイト以外の組織の形成を抑制する効果があり、必要に応じて添加される。しかし、上限値を超えるとフェライトが脆化し、TS×Elバランスを低下させる。好ましくは、Cu,Ni,Crはいずれも0.8%以下である。
・P:0.1%以下
・Al:0.1%以下
Pは固溶強化の効果があるが、添加しすぎると粒界に偏析し、粒界強度を低下させることで伸びフランジ性が低下する。0.1%まで添加可能である。好ましくは、0.03%以下である。
Alは脱酸元素であるとともに、Nを固定し、Nによる時効効果を抑制し脆化を抑制する作用がある。0.1%程度まで添加してよい。好ましくは、0.08%以下である。
・その他
S,N,Oは窒化物、酸化物を形成し、これが破壊の基点となり、疲労特性・伸びフランジ性を劣化させるので低い方がよく、S:0.010%以下、N:0.0060%以下、O:0.0030%以下に規制することが望ましい。
Ca,Mg,REMは介在物を微細にすることで伸びフランジ性や疲労特性の改善に寄与するので、添加してもよい。添加する場合は、いずれも0.01%以下が望ましい。
・フェライト分率(面積分率):50%以上、95%以下
・硬質第2相分率(面積分率):5%以上、50%以下
フェライト分率が50%未満又は硬質第2相(マルテンサイト+残留オーステナイト)分率が50%を越えると、硬質第2相が連結することによりTS×Elバランスが低下し、一方、フェライト分率が95%を超え又は硬質第2相分率が5%未満であると、複相組織化によるTS×Elバランス改善効果が得られない。好ましくはフェライト分率は50%以上、90%以下、マルテンサイト+残留オーステナイト分率は10%以上、50%以下である。
主相であるフェライト及び硬質第2相以外の組織(ベイナイト、パーライト)の分率は5%以下が望ましい。これは中途半端な硬質相の存在によりTS×Elバランスが低下するためである。
・フェライト粒径:5μm以下
フェライト粒径は疲労特性に対し、Hall−Petchの関係(σ∝d−1/2)をもつ(σ:降伏応力、d:結晶粒径)。また、フェライト粒径を微細化することで、変形を加えたときのフェライト粒界への応力集中が小さくなり、破壊が抑制されるため、伸びフランジ性が改善する。このため、フェライトの平均粒径は5μm以下が望ましい。
・r≧207÷(31.4X(Ti)+27.4X(V)+23.5X(Nb)+25.5X(Zr)+23.5X(W))(式(3))
・r/f≦13000(式(4))
この2つの規定は、フェライト中の析出物の平均粒径r(nm)を転位によりカッティングされないサイズに制御し、同時に析出物の粒子間距離(r/f)を小さい値に制限することを意味する。fはフェライト中の析出物分率(面積分率)である。これにより、転位が析出物を通過する機構がカッティング機構からオロワン機構に変わり、同時に繰り返し応力付与中の転位の移動に対する抵抗力を大きくし、疲労特性を改善することができる。条件式(4)において、r/fは好ましくは10000以下、さらに好ましくは8000以下である。
条件式(3)の右辺は、転位によりカッティングされない析出物の最小粒子径(臨界粒子径)rcを表す。この臨界粒子径は、「鉄鋼の析出メタラジー最前線」P.69〜80(社団法人日本鉄鋼協会 材料の組織と特性部会 析出制御メタラジー研究会編集、社団法人日本鉄鋼協会発行(2001))によれば、析出物の硬さと略反比例の関係がある(前記文献の図10のグラフ参照)。発明者らは、前記炭化物形成元素を単独又は複合添加する場合に、析出物の硬さに対する各元素の寄与度を当該元素の平均原子量比(式(5))に比例するものと推測し、臨界粒子径と析出物の硬さの関係(前記図10)から、近似的に前記条件式(3)を導出した。なお、条件式(3)において,平均原子量比X(M)の係数は,それぞれ元素M(M:V,Ti,Nb,Zr,W)の炭化物のビッカース硬さ(前記文献の図9参照)である。
前記条件式(3)は、転位が析出物を通過する機構としてオロワン機構が発現されるためには、鋼組成に応じた適切な析出物サイズ(臨界粒子径以上のサイズ)が存在することを示す。この条件式(3)が本発明の熱延鋼板の疲労特性を改善するうえで技術的意義を有することは、後述する実施例により実証されている。
続いて、本発明に係る高強度熱延鋼板の製造方法について説明する。
典型的な製造方法は、鋼素材を加熱した後、仕上げ圧延を含む熱間圧延、熱延後の急冷、急冷停止後の保持又は滞留、保持又は滞留後の冷却、巻き取りである。以下、各工程について説明する。
・加熱
熱間圧延前の加熱は1100℃以上、1300℃以下で行う。この加熱によりオーステナイト単相とし、かつV,Ti,Nb等をオーステナイトに固溶させる。加熱温度が1100℃未満ではV,Ti,Nb等がオーステナイトに固溶できず、粗大な炭化物が形成されるため疲労特性改善効果が得られない。一方、1300℃を越える温度は操業上困難である。
・熱間圧延
熱間圧延は、仕上げ圧延温度が700℃以上、1050℃以下の範囲になるように行う。仕上げ圧延温度が700℃未満では焼き入れ性が低下し、フェライト変態、パーライト変態が促進され、TS×Elバランスが低下する。一方、1050℃を超えるとオーステナイトが粗大化し、焼き入れ性が高まるため、十分なフェライト量が確保できない。また、最終組織が微細化しない。好ましくは、700℃以上、850℃以下である。
・熱延後の急冷
熱延後の急冷は650℃以上、800℃以下の温度域に20℃/s以上で急冷する。これはフェライト析出ノーズに急冷してフェライトを形成させるためである。急冷停止温度が650℃未満ではパーライト変態又はベイナイト変態が促進され、また析出物が十分なサイズに成長せず、800℃を超えるとフェライト変態が生じず、所定の相分率のDP鋼を得るのが困難である。
・急冷停止後の保持又は滞留
急冷停止後の前記温度域での保持又は前記温度域内での滞留(前記温度域内で例えば空冷により冷却)は、3s以上、20s未満の時間行うことが望ましい。これによりフェライト変態を進行させ、かつフェライト中の析出物を適度に粗大化させる。前記温度域での保持又は滞留の時間が短いと、析出物が十分なサイズに粗大化せず、疲労特性が十分に改善しない。一方、保持又は滞留の時間が長過ぎると、析出物が粗大化しすぎて疲労特性が改善しない。
・保持後又は滞留後の冷却、巻き取り
前記温度域での保持又は滞留後、第2相をマルテンサイト又は残留オーステナイトにするため、300℃以下まで5℃/s以上の冷却速度で冷却し、巻き取る。300℃を越える温度又は5℃/s未満の冷却速度の場合、マルテンサイト又は残留オーステナイト以外の組織が形成され、TS−Elバランスが改善しない。
表1,2に示す成分の50kg鋳塊を溶製し、熱間圧延により25mm厚の板材とし、これを供試材とした。
Figure 2009084648
Figure 2009084648
この供試材を、図1に示すプロセス及び表3に示す条件で熱間圧延し、熱延鋼板を製造した。より詳しくは、表3に示す加熱温度に30分保持した後、表3に示す温度で仕上げ圧延を行い、仕上げ板厚は3mmとした。仕上げ圧延後、表3に示す熱延後冷却速度で表3に示す急冷停止温度まで冷却し、表3に示す保持時間だけ保持した。その後、表3に示す保持後冷却速度で表3に示す巻き取り模擬温度まで冷却し、30分保持した後、炉冷した。
得られた熱延鋼板からサンプルを採取し、組織観察、引張試験、疲労試験、伸びフランジ特性試験を下記要領で実施した。
Figure 2009084648
・組織観察
鋼板中心部のTD面の組織を観察した。サンプルは鏡面に研磨した後、レペラ試薬により腐食し、×400で5視野観察及び撮影し、その中の白い領域をマルテンサイト+残留オーステナイト(以下、残留γ)、黒い領域をその他の組織、中間色の領域をフェライトとして、画像解析ソフト(Micromedia社製Image Pro Plus)を用いて、それぞれの組織分率を求めた。フェライトの平均粒径についても、上記画像解析ソフトを用い、個々のフェライト粒の面積を測定し、その面積から円相当直径を算出し、その平均をフェライトの平均粒径とした。
・析出物の平均粒径r、r/f
フェライト中の析出物の平均粒径rは、抽出レプリカ法により析出物を抽出し、フェライト領域を透過形電子顕微鏡にて、倍率×150000で1μm×1μmの領域を観察及び撮影し、その中に観察された析出物(円相当直径で2nm以上)を画像解析して各粒子の面積を求め、その面積から円相当直径を求めて平均値を算出し、平均粒径rとした。
また、析出物の面積を足し合わせ、観察面積に占める析出物面積からベイナイト中の析出物分率(面積率)fを求め、平均粒径rと析出物分率fからr/fを計算した。
・引張試験
引張試験は、サンプルをJISZ2201記載の5号試験片に加工し、JISZ2241に従って実施した。また、引張強さ(TS)と伸び(El)から強度−伸びバランス(TS×El)を計算した。
・疲労試験
疲労試験は、サンプルの表裏面を0.2mmずつ研削し、その後、JISZ2275記載の平面曲げ試験で疲労強度を測定した。また、疲労強度(FL)と引張強さ(TS)から疲労限度比(FL/TS)を計算した。
・伸びフランジ特性試験
伸びフランジ特性試験として穴広げ試験を行い、穴広がり率(λ)を測定した。穴広げ試験は、日本鉄鋼連盟規格JFST1001に従って行い、穴広がり率(λ)を測定した。
また、穴広がり率(γ)と引張強さ(TS)から強度−伸びフランジバランス(λ×TS)を計算した。
測定結果を表4,5に示す。表4,5において、引張強度は590MPa以上を良好と評価し、強度−伸びバランス(TS×El)は17000MPa%以上を良好、18000MPa%以上を特に良好と評価し、疲労限度比(FL/TS)は引張強度が980MPaまでは0.60以上を良好、0.65以上を非常に良好と評価し、980MPa超は0.55以上を良好、0.60以上を特に良好と評価し、強度−伸びフランジバランス(λ×TS)は64000MPa%以上を良好と評価した。
Figure 2009084648
Figure 2009084648
表4,5の測定結果から、試験例No.3,4,8,9,12,13,16,17,19〜30,32,33,36は、クレームに規定された組成、フェライト分率、硬質第2相分率、フェライト粒径、析出物の平均粒径r及びr/fの各要件を満たし、FL/TS、TS×El及びTS×γが優れる。
一方、その他の試験例は、クレームに規定された組成、ベイナイト分率、析出物の平均粒径r、及びr/fの少なくとも1つの要件を満たさず、FL/TSとTS×El及びTS×γのいずれか1つ以上が劣る。
実施例のプロセスを説明する図である。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.01%超、0.30%以下、Si:0.1%以上、2.0%以下、Mn:0.1%以上、2.5%以下を含み、さらにV:0.01%以上、0.15%以下及びTi:0.01%以上、0.15%以下を下記条件式(1),(2)を満たすように含み、残部がFe及び不可避不純物からなり、フェライト分率が50%以上、95%以下、マルテンサイト+残留オーステナイトからなる硬質第2相分率が5%以上、50%以下の組織を有し、析出物の平均粒径r(nm)が下記条件式(3)を満たし、平均粒径rと析出物分率fが下記条件式(4)を満たすことを特徴とする疲労強度及び伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板。
    0.1≦V/(V+Ti)<0.5 ・・・・(1)
    C−12×(V/51+Ti/48+Nb/93+Zr/91+W/184)≧0.01 ・・・・(2)
    r≧207÷(31.4X(Ti)+27.4X(V)+23.5X(Nb)+25.5X(Zr)+23.5X(W)) ・・・・(3)
    r/f≦13000 ・・・・(4)
    ここで、式(3)中のX(M)(M:Ti,V,Nb,Zr,W)は析出物を構成する元素の平均原子量比であり、下記一般式(5)で表される。
    X(M)=(Mの質量%/Mの原子量)/(Ti/48+V/51+Nb/93+Zr/91+W/184) ・・・・(5)
    ただし、上記式(1),(2),(5)中の元素記号は当該元素の質量%を意味する。
  2. フェライトの平均粒径が5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載された疲労強度及び伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板。
  3. さらにNb:0.30%以下、Zr:0.30%以下、W:0.30%以下のいずれか1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載された疲労強度及び伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板。
  4. さらにCu:1%以下、Ni:1%以下、Cr:1%以下のいずれか1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された疲労強度及び伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板。
  5. さらにAl:0.1%以下を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された
  6. さらにP:0.1%以下を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載された疲労強度及び伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板。
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