JP2009081053A - 燃料電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】触媒活性物質の露出表面積を確保しつつ、使用量を低減すると同時に、電極反応の場となる三相界面に選択的に触媒活性物質を配置することによって、触媒利用効率の大幅な向上を可能とする燃料電池の製造方法を提供する。
【解決手段】電解質膜の一面側にアノード側又はカソード側触媒層を形成し、該電解質膜の他面側に対極を構成するように形成する触媒層形成工程と、前記被処理組成を有するアノード側触媒層及び/又はカソード側触媒層に、(1)白金8の溶解電位及び/又は析出電位を、高電位側から低電位側へ通過及び低電位側から高電位側へ通過するように変動する電位、或いは、(2)白金の溶解電位と白金の析出電位間を、高電位側から低電位側へ及び低電位側から高電位側へ変動する電位を印加することにより、白金の溶解と析出とを交互に生じさせ、白金の利用効率を向上させる電位印加工程と、を含むことを特徴とする燃料電池の製造方法。
【選択図】図1
【解決手段】電解質膜の一面側にアノード側又はカソード側触媒層を形成し、該電解質膜の他面側に対極を構成するように形成する触媒層形成工程と、前記被処理組成を有するアノード側触媒層及び/又はカソード側触媒層に、(1)白金8の溶解電位及び/又は析出電位を、高電位側から低電位側へ通過及び低電位側から高電位側へ通過するように変動する電位、或いは、(2)白金の溶解電位と白金の析出電位間を、高電位側から低電位側へ及び低電位側から高電位側へ変動する電位を印加することにより、白金の溶解と析出とを交互に生じさせ、白金の利用効率を向上させる電位印加工程と、を含むことを特徴とする燃料電池の製造方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、燃料電池の製造方法に関する。
燃料電池は、電気的に接続された2つの電極に燃料と酸化剤を供給し、電気化学的に燃料の酸化を起こさせることで、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する。火力発電とは異なり、燃料電池はカルノーサイクルの制約を受けないので、高いエネルギー変換効率を示す。燃料電池は、通常、電解質膜を一対の電極で挟持した膜・電極接合体を基本構造とする単セルを複数積層して構成されている。中でも、電解質膜として固体高分子電解質膜を用いた固体高分子電解質型燃料電池は、小型化が容易であること、低い温度で作動すること、などの利点があることから、特に携帯用、移動体用電源として注目されている。
固体高分子電解質型燃料電池において、アノード(燃料極)では(1)式の反応が進行する。
H2 → 2H+ + 2e− ・・・(1)
(1)式で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、カソード(酸化剤極)に到達する。そして、(1)式で生じたプロトンは、水と水和した状態で、電気浸透により固体高分子電解質膜内をアノード側からカソード側に移動する。
一方、カソードでは(2)式の反応が進行する。
4H+ + O2 + 4e− → 2H2O ・・・(2)
H2 → 2H+ + 2e− ・・・(1)
(1)式で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、カソード(酸化剤極)に到達する。そして、(1)式で生じたプロトンは、水と水和した状態で、電気浸透により固体高分子電解質膜内をアノード側からカソード側に移動する。
一方、カソードでは(2)式の反応が進行する。
4H+ + O2 + 4e− → 2H2O ・・・(2)
上記式(1)又は(2)の反応を促進させるため、各電極(アノード、カソード)には、電極触媒が備えられる。電極触媒としては、白金や白金合金等の触媒活性物質をカーボンブラック等の導電性材料に担持させたものが一般的である。電極触媒に用いられる白金は非常に高価な材料であるため、燃料電池の実用化にあたり、触媒活性物質の利用効率を向上させ、少ない使用量でも優れた発電性能を示す燃料電池の開発が望まれている。
触媒活性物質の利用効率を向上させる方法としては、例えば、触媒活性物質の微粒子化が挙げられる。触媒活性物質粒子の径を小さくすることによって、触媒活性物質の使用量は同じでも触媒活性物質の露出表面積が大きくなり、触媒活性物質の利用効率を高めることができる。
触媒活性物質の利用効率を向上させる方法としては、例えば、触媒活性物質の微粒子化が挙げられる。触媒活性物質粒子の径を小さくすることによって、触媒活性物質の使用量は同じでも触媒活性物質の露出表面積が大きくなり、触媒活性物質の利用効率を高めることができる。
また、特許文献1には、導電性炭素材料並びにこれに担持された白金及び金を含む粒子からなり、粒子の内部が金に富み、粒子の外表面が白金に富むことを特徴とする燃料電池用電極触媒が記載されている。この特許文献1に記載の技術は、実質上電極反応に関与しない触媒金属粒子の内部を、白金よりも安価な金とすることによって、白金の露出表面積を確保しつつ、白金使用量を低減させるものである。
一方、特許文献2には、白金粒子の成長抑制を目的として、導電性炭素材料、前記導電性炭素材料に担持された、酸性条件下で白金より酸化されにくい金属粒子、及び前記金属粒子の外表面を覆う白金からなることを特徴とする燃料電池用電極触媒が提案されている。白金粒子の成長は、白金の露出表面積を縮小させて触媒利用効率の低下を招くものである。特許文献2に記載の燃料電池用電極触媒は、燃料電池の運転条件下における白金によるカーボンブラック(導電性炭素材料)の酸化を防止することによって、白金粒子の移動を抑制し、白金粒子同士の融着による粒子成長を抑えようとするものである。
一般的な固体高分子電解質型燃料電池において、上記式(1)又は(2)の電極反応が進行する各電極(アノード、カソード)は、導電性材料に触媒活性物質を担持させた電極触媒の他、固体高分子電解質である陽イオン交換樹脂を含み、陽イオン交換樹脂によりプロトン伝導路が形成され、電極触媒の導電性材料により電子伝導路が形成されるように設計されている。このような電極は、通常、予め触媒活性物質を担持させた導電性材料(電極触媒)、陽イオン交換樹脂、及び必要に応じてその他成分を溶解、分散させたペーストを電解質膜に直接塗布、乾燥したり、或いは、ガス拡散層となる導電性多孔質体シートに塗布、乾燥する等して作製されてきた。
しかしながら、上記(1)、(2)の反応は、反応ガス(H2又はO2)の他、プロトン(H+)及び電子(e−)の授受を行うことができる三相界面において進行するため、触媒活性物質が反応の場となるためには、電子伝導路及びプロトン伝導路の両方に接している或いは電子伝導路及びプロトン伝導路両方の近傍に配置されている必要がある。
例えば、触媒活性物質が導電性材料表面に担持されていても、この導電性材料が電子伝導路から孤立している場合、触媒活性物質は電子の授受を行うことができずに、電極触媒として有効に働かない(図6の破線円A参照)。一方、陽イオン交換樹脂に接していない触媒活性物質(図6の破線円B参照)や、陽イオン交換樹脂と接していてもこの陽イオン交換樹脂がプロトン伝導路から孤立している触媒活性物質(図6の破線円C参照)は、プロトンの授受を行うことができないため電極触媒として有効に機能しない。
例えば、触媒活性物質が導電性材料表面に担持されていても、この導電性材料が電子伝導路から孤立している場合、触媒活性物質は電子の授受を行うことができずに、電極触媒として有効に働かない(図6の破線円A参照)。一方、陽イオン交換樹脂に接していない触媒活性物質(図6の破線円B参照)や、陽イオン交換樹脂と接していてもこの陽イオン交換樹脂がプロトン伝導路から孤立している触媒活性物質(図6の破線円C参照)は、プロトンの授受を行うことができないため電極触媒として有効に機能しない。
上記したような従来の一般的な方法により作製された電極においては、三相界面に偶然配置された電極触媒のみが電極反応に有効に作用することになる。従って、従来の燃料電池の製造方法では、微粒子化した白金粒子や、特許文献1及び特許文献2のように、白金使用量を低減した電極触媒を用いる場合であっても、三相界面に配置されなかった電極触媒は電極反応に有効に働かず、白金利用効率の低減が生じてしまう。
このような問題を解決する技術として、特許文献3には、陽イオン交換樹脂とカーボン粒子と触媒金属とを含む燃料電池用電極であって、触媒金属が主に陽イオン交換樹脂のプロトン伝導路とカーボン粒子表面との接面に担持された電極が提案されている。具体的な作製方法としては、例えば、陽イオン交換樹脂とカーボン粒子とを含むペーストを用いて作製した膜(混合体)へ、金属触媒となる金属元素を含む陽イオンを含む溶液を含浸させ、陽イオン交換樹脂の対イオンと触媒金属となる金属元素を含む陽イオンとのイオン交換反応により、その金属元素を含む陽イオンを陽イオン交換樹脂に吸着させる第一の工程と、第一の工程で得られた混合体中の金属元素を含む陽イオンを化学的に還元させる方法が記載されている。
特許文献3に記載の技術によれば、触媒金属を三相界面に配置することによる触媒金属の利用効率向上が可能ではあるが、イオン交換法は原子レベルでの操作であるため、発電に充分な量の触媒金属を電極に導入することが難しい。ゆえに、燃料電池の発電性能が充分に向上しないおそれがある。
本発明は上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、触媒活性物質の露出表面積を確保しつつ、触媒活性物質の使用量を低減すると同時に、電極反応の場となる三相界面に選択的に触媒活性物質を配置することによって、触媒利用効率の大幅な向上を可能とする燃料電池の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の燃料電池の製造方法は、電解質膜と、当該電解質膜の一方の面に設けられ、少なくともアノード側触媒層を有するアノードと、前記電解質膜の他方の面に設けられ、少なくともカソード側触媒層を有するカソードと、を備える燃料電池の製造方法であって、前記電解質膜の一面側に、白金と、陽イオン交換樹脂と、貴金属(白金は除く)の少なくとも1種とを含む組成(以下、「被処理組成という」)を有するアノード側又はカソード側触媒層を形成し、該電解質膜の他面側に、被処理組成を有していても有していなくても良いカソード側又はアノード側触媒層を対極を構成するように形成する触媒層形成工程と、前記アノード側触媒層及び前記カソード側触媒層を形成した電解質膜を湿潤状態に維持しながら、前記被処理組成を有するアノード側触媒層及び/又は前記被処理組成を有するカソード側触媒層に、(1)白金の溶解電位及び白金の析出電位を、高電位側から低電位側へ通過及び低電位側から高電位側へ通過するように変動する電位、或いは、(2)白金の溶解電位又は白金の析出電位を、高電位側から低電位側へ通過及び低電位側から高電位側へ通過するように変動する電位、或いは、(3)白金の溶解電位と白金の析出電位間を、高電位側から低電位側へ及び低電位側から高電位側へ変動する電位を印加することにより、白金の溶解と析出とを交互を生じさせ、白金の利用効率を向上させる電位印加工程と、を含むことを特徴とするものである。
本発明の燃料電池の製造方法によれば、白金と陽イオン交換樹脂と貴金属とが無秩序に混在する前記被処理組成を有する触媒層においては、電子とプロトンの授受が充分に行われない場所に存在していた白金が、電位印加工程を経ることにより溶解、移動し、電子とプロトンの授受が充分に行われる位置に存在する貴金属の表面に、選択的に析出する。白金の析出が生じる位置、すなわち、電子とプロトンの授受が充分に行われる位置は、燃料電池として作動させた時に電極反応が起こる位置であり、このような位置に存在する白金は電極反応に有効に作用することになる。しかも、この白金の析出は、燃料電池として作動させる際に電極反応が活発に進行する場所で、特に集中的に生じる。
また、貴金属の表面に白金が担持されるため、使用量が少なくても白金の露出表面積を確保することができる。
従って、本発明によれば、露出表面積を確保しつつ、電極反応の場となる三相界面に白金を選択的に配置することが可能であり、白金の利用効率の向上が可能となる。
また、貴金属の表面に白金が担持されるため、使用量が少なくても白金の露出表面積を確保することができる。
従って、本発明によれば、露出表面積を確保しつつ、電極反応の場となる三相界面に白金を選択的に配置することが可能であり、白金の利用効率の向上が可能となる。
前記電位印加工程において、前記被処理組成を有するアノード側触媒層及び/又は前記被処理組成を有するカソード側触媒層に電位を印加する方法は特に限定されず、例えば、外部の電位変動手段によって印加してもよいし、或いは、前記変動する電位が印加される前記被処理組成を有するアノード側触媒層又は前記被処理組成を有するカソード側触媒層に、前記電解質膜を保湿状態に維持できるように加湿された酸化剤ガス、当該被処理組成を有するアノード側又はカソード側触媒層と対極をなす被処理組成を有していても有していなくても良いカソード側又はアノード側触媒層に、前記電解質膜を保湿状態に維持できるように加湿された燃料ガスを流通させることによって、アノード側触媒層及びカソード側触媒層において電極反応を起こし、アノード側触媒層及びカソード側触媒層間の負荷を変動させることによって変動電位を印加してもよい。
前記電位印加工程において、印加電位の上限は、電位が印加される構成部材の劣化を防止する観点から、可逆水素電極(RHE)を基準として1.0Vとすることが好ましい。一方、前記電位印加工程において、印加電位の下限は、構成部材の劣化や目的とする位置以外における白金の析出を防止する観点から、0.2Vとすることが好ましい。
前記電位印加工程において、被処理組成を有する触媒層全体に均一に電位を印加することができることから、前記電位印加工程の前に、前記アノード側触媒層及び前記カソード側触媒層の電解質膜側とは反対側の面に、導電性多孔質体からなるアノード側ガス拡散層及びカソード側ガス拡散層を設けるガス拡散層配設工程を含むことが好ましい。
また、前記電位印加工程において、被処理組成を有する触媒層全体に均一に電位を印加することができるという観点からは、前記触媒層形成工程後であって前記電位印加工程前に、前記アノード側触媒層及び前記カソード側触媒層を形成した電解質膜をセパレータで挟持した単セルを作製する単セル作製工程を含むことも好ましい。このとき、複数の単セルに同時に電位印加処理を施すことができることから、前記単セル作製工程後であって前記電位印加工程前に、前記単セルを複数積層してスタックを作製するスタック作製工程を含むことが好ましい。
前記電位印加工程における具体的な条件としては、印加電位の変動回数が1〜100,000回であることが好ましい。また、前記電解質膜、前記アノード側触媒層及びカソード側触媒層の温度は30〜90℃であることが好ましい。
また、前記電位印加工程において、前記電解質膜の湿潤状態を維持するための方法としては、各触媒層に相対湿度100%以上の加湿ガスを流通させる方法が挙げられる。
また、前記電位印加工程において、前記電解質膜の湿潤状態を維持するための方法としては、各触媒層に相対湿度100%以上の加湿ガスを流通させる方法が挙げられる。
また、前記触媒層形成工程において、前記被処理組成を有するアノード側触媒層及び/又は前記被処理組成を有するカソード側触媒層を形成する方法としては、前記白金と、前記貴金属と、前記陽イオン交換樹脂とを含む触媒層ペーストを用いる方法が挙げられる。
前記被処理組成を有するアノード側触媒層及び/又は前記被処理組成を有するカソード側触媒層において、前記白金及び前記貴金属は、導電性及び分散性の点で導電性材料に担持されていることが好ましい。
前記被処理組成を有するアノード側触媒層及び/又は前記被処理組成を有するカソード側触媒層において、前記白金及び前記貴金属は、導電性及び分散性の点で導電性材料に担持されていることが好ましい。
本発明の燃料電池の製造方法によれば、実質上電極反応に関与する触媒粒子表面に白金(触媒活性物質)を多く分布させることによって、白金の露出表面積を確保しつつ、白金の使用量を低減することができる。しかも、本発明によれば、プロトン及び電子の授受が可能な位置に選択的に白金を配置することが可能であるため、白金の利用効率をさらに高めることができる。
従って、本発明の製造方法によれば、燃料電池の低コスト化の達成が可能であり、さらには、発電性能に優れた燃料電池を提供することが可能である。
従って、本発明の製造方法によれば、燃料電池の低コスト化の達成が可能であり、さらには、発電性能に優れた燃料電池を提供することが可能である。
本発明の燃料電池の製造方法は、電解質膜と、当該電解質膜の一方の面に設けられ、少なくともアノード側触媒層を有するアノードと、前記電解質膜の他方の面に設けられ、少なくともカソード側触媒層を有するカソードと、を備える燃料電池の製造方法であって、
前記電解質膜の一面側に、白金と、陽イオン交換樹脂と、貴金属(白金は除く)の少なくとも1種とを含む組成(以下、「被処理組成という」)を有するアノード側又はカソード側触媒層を形成し、該電解質膜の他面側に、被処理組成を有していても有していなくても良いカソード側又はアノード側触媒層を対極を構成するように形成する触媒層形成工程と、
前記アノード側触媒層及び前記カソード側触媒層を形成した電解質膜を湿潤状態に維持しながら、前記被処理組成を有するアノード側触媒層及び/又は前記被処理組成を有するカソード側触媒層に、(1)白金の溶解電位及び白金の析出電位を、高電位側から低電位側へ通過及び低電位側から高電位側へ通過するように変動する電位、或いは、(2)白金の溶解電位又は白金の析出電位を、高電位側から低電位側へ通過及び低電位側から高電位側へ通過するように変動する電位、或いは、(3)白金の溶解電位と白金の析出電位間を、高電位側から低電位側へ及び低電位側から高電位側へ変動する電位を印加することにより、白金の溶解と析出とを交互を生じさせ、白金の利用効率を向上させる電位印加工程と、
を含むことを特徴とするものである。
前記電解質膜の一面側に、白金と、陽イオン交換樹脂と、貴金属(白金は除く)の少なくとも1種とを含む組成(以下、「被処理組成という」)を有するアノード側又はカソード側触媒層を形成し、該電解質膜の他面側に、被処理組成を有していても有していなくても良いカソード側又はアノード側触媒層を対極を構成するように形成する触媒層形成工程と、
前記アノード側触媒層及び前記カソード側触媒層を形成した電解質膜を湿潤状態に維持しながら、前記被処理組成を有するアノード側触媒層及び/又は前記被処理組成を有するカソード側触媒層に、(1)白金の溶解電位及び白金の析出電位を、高電位側から低電位側へ通過及び低電位側から高電位側へ通過するように変動する電位、或いは、(2)白金の溶解電位又は白金の析出電位を、高電位側から低電位側へ通過及び低電位側から高電位側へ通過するように変動する電位、或いは、(3)白金の溶解電位と白金の析出電位間を、高電位側から低電位側へ及び低電位側から高電位側へ変動する電位を印加することにより、白金の溶解と析出とを交互を生じさせ、白金の利用効率を向上させる電位印加工程と、
を含むことを特徴とするものである。
以下、本発明の燃料電池の製造方法について、図1〜図5を用いて説明する。
図2は、本発明により得られる固体高分子電解質型燃料電池の単セルの一形態例を示す断面模式図である。図2において、単セル100は、電解質膜1の一方の面にアノード(燃料極)4a、他方の面にカソード(酸化剤極)4bが設けられた膜・電極接合体5を備えている。本実施形態において、両電極4(アノード4a、カソード4b)は、それぞれ電解質膜側から順に、アノード側触媒層2aとアノード側ガス拡散層3a、カソード側触媒層2bとカソード側ガス拡散層3bとが積層した構造を有している。
図2は、本発明により得られる固体高分子電解質型燃料電池の単セルの一形態例を示す断面模式図である。図2において、単セル100は、電解質膜1の一方の面にアノード(燃料極)4a、他方の面にカソード(酸化剤極)4bが設けられた膜・電極接合体5を備えている。本実施形態において、両電極4(アノード4a、カソード4b)は、それぞれ電解質膜側から順に、アノード側触媒層2aとアノード側ガス拡散層3a、カソード側触媒層2bとカソード側ガス拡散層3bとが積層した構造を有している。
膜・電極接合体5は、アノードセパレータ6a及びカソードセパレータ6bで挟持され、単セル100を構成している。セパレータ6は、各電極4に反応ガス(燃料ガス、酸化剤ガス)を供給する流路7(7a、7b)を画成し、各単セル間をガスシールすると共に、集電体としても機能するものである。アノード4aは、流路7aから燃料ガス(水素を含む又は水素を発生させるガス。通常、水素ガス)が供給され、カソード4bは、流路7bから酸化剤ガス(酸素を含む又は酸素を発生させるガス。通常は空気。)が供給される。
この単セル100は、通常、複数積層されてスタックとして燃料電池内に組み込まれる。
この単セル100は、通常、複数積層されてスタックとして燃料電池内に組み込まれる。
図6は、従来の一般的な方法により作製された触媒層内の状態を示す概念図である。図6において、触媒層は、白金(触媒活性物質)8を担持した導電性材料であるカーボン粒子10と、陽イオン交換樹脂11とが無秩序に混在した状態であり、また、反応ガスの通り道となる細孔12が多数形成されている。
白金8とカーボン粒子10と陽イオン交換樹脂11とが無秩序に混在した触媒層においては、触媒活性物質である白金8は必ずしもプロトン伝導路を形成する陽イオン交換樹脂11と電子伝導路を形成するカーボン粒子10との両方に接しているわけではなく、また、陽イオン交換樹脂11とカーボン粒子10の両方に接していても、これら陽イオン交換樹脂11とカーボン粒子10がそれぞれプロトン伝導路又は電子伝導路を形成するものでない場合がある。このような白金は、プロトン及び電子の授受を行うことができないため、電極反応に有効に働かない。
また、プロトン伝導路及び電子伝導路の両方に接している、或いは、両方の近くに存在しており、プロトン及び電子の授受が可能であるが、プロトン及び電子の授受が活発に行われない白金も存在する。このような白金は電極反応に有効であるとはいえない。
すなわち、白金と導電性材料と陽イオン交換樹脂とが無秩序に混在する従来の方法により形成された触媒層には、電極反応に有効に働かない白金が存在し、白金利用効率が低かった。
すなわち、白金と導電性材料と陽イオン交換樹脂とが無秩序に混在する従来の方法により形成された触媒層には、電極反応に有効に働かない白金が存在し、白金利用効率が低かった。
これに対して、本発明の製造方法により提供される燃料電池の触媒層においては、図1の(1B)に示すように、プロトン伝導路を形成する陽イオン交換樹脂11と接し、且つ、電子伝導路を形成する金(貴金属)9の表面、或いは、プロトン伝導路を形成する陽イオン交換樹脂の近傍であって、且つ、電子伝導路を形成する金(貴金属)の近傍に存在する金の表面に、選択的に白金8が存在している。
すなわち、本発明により形成される触媒層においては、電子伝導路とプロトン伝導路との両方に接する位置や電子伝導路及びプロトン伝導路両方の近傍等、プロトン及び電子の両方の授受が可能な位置に、選択的に触媒活性物質である白金が存在する。このプロトン及び電子の授受が可能な位置に存在する白金は、電極反応の場となり、電極反応に有効に作用することができるものである。従って、本発明によれば、触媒層内の白金を無駄なく、有効に電極反応に働かせることができ、白金の利用効率を向上させることができる。このとき、白金は、金(貴金属)粒子の表面に存在しており、露出表面積を確保しつつ、使用量が低減されている。
ここで、本発明の製造方法について、詳しく説明する。
まず、電解質膜の一方の面に、白金と、陽イオン交換樹脂と、貴金属(白金は除く)の少なくとも一種と、を含む被処理組成を有するアノード側又はカソード側触媒層を形成する。そして、当該電解質膜の他方の面には、上記被処理組成を有するアノード側又はカソード側触媒層と対極を構成する被処理組成を有していても有していなくてもよいカソード側又はアノード側触媒層を形成する。このように対となるアノード側触媒層及びカソード側触媒層を形成するのが触媒層形成工程である。
まず、電解質膜の一方の面に、白金と、陽イオン交換樹脂と、貴金属(白金は除く)の少なくとも一種と、を含む被処理組成を有するアノード側又はカソード側触媒層を形成する。そして、当該電解質膜の他方の面には、上記被処理組成を有するアノード側又はカソード側触媒層と対極を構成する被処理組成を有していても有していなくてもよいカソード側又はアノード側触媒層を形成する。このように対となるアノード側触媒層及びカソード側触媒層を形成するのが触媒層形成工程である。
電解質膜は、一般的に固体高分子型燃料電池用電解質膜を用いられているものを使用することができる。具体的には、例えば、ナフィオン(商品名)等に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂膜等のフッ素系電解質膜や、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリ(アリルエーテルケトン)樹脂等の炭化水素系高分子にスルホン酸基、カルボン酸基、ボロン酸基等のイオン交換基を導入した炭化水素系電解質膜等が挙げられる。電解質膜の膜厚は、通常、20〜40μm程度が好適である。
ここで、被処理組成を有する触媒層とは、上記したような従来の方法により作製された触媒層のように、白金と、陽イオン交換樹脂と、上記貴金属とが無秩序に混在する、つまり、白金がプロトン伝導路及び電子伝導路の位置に関係なく配置されており、白金の利用効率が低い状態(典型的には、20〜40%程度)である。
触媒層形成工程において、被処理組成を有する触媒層を形成する際に、仕込まれる白金は、純白金の他、PtCo、PtFe等の白金合金でもよいが、純白金が導電性材料、典型的には、導電性カーボン粒子に担持されたPt/Cが好ましい。また、仕込まれる白金の粒径は、1〜3nm程度であることが好ましい。
貴金属(白金は除く。)は、後述する電位印加工程において、溶解した白金イオンを析出させる部分であり、電位印加工程条件下において白金よりも溶解電位が貴であること、耐酸化性を有すること、導電性があること、Ptが表面に吸着しやすいことが求められるものである。本発明において、貴金属としては、特に限定されずに用いることができる(白金除く)が、上述したような観点から、特に金が好適に用いられる。貴金属(白金除く)は、白金と比較して安価な材料であり、貴金属の表面に白金を析出させ、実質上電極反応に関与しない金属触媒粒子の内部を安価な貴金属で構成することにより、燃料電池のコスト削減を可能にする。
触媒層形成工程において、被処理組成を有する触媒層を形成する際に、仕込まれる貴金属は、単体であっても、金を導電性カーボン粒子に担持させたAu/C等の担持体でもよいが、Au/Cが好ましく用いられる。また、仕込まれる貴金属の粒径は、1〜100nm程度であることが好ましい。また、貴金属は、貴金属を含む金属メッシュや金属発泡体のような多孔質構造を有するシート状でもよい。
陽イオン交換樹脂は、陽イオンを移動させることが可能であれば特に限定されず、上記電解質膜を構成する固体高分子電解質樹脂を用いることができる。例えば、ナフィオン(商品名)等に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂等のフッ素系電解質や、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリ(アリルエーテルケトン)樹脂等の炭化水素系高分子にスルホン酸基、カルボン酸基、ボロン酸基等のイオン交換基を導入した炭化水素系電解質等が挙げられる。
被処理組成を有する触媒層の形成方法は、特に限定されず、例えば、白金と、貴金属と、陽イオン交換樹脂とを溶媒に混合・分散させることにより得られる触媒層ペーストを用いて形成することができる。溶媒は、触媒ペーストの成分にあわせて適宜選択すればよく、エタノール、メタノール、プロパノール、プロピレングリコール等のアルコール類や、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等、或いはこれら有機溶媒と水との混合物等を用いることができるが、これらに限定されない。
触媒層ペーストによる触媒層の形成方法としては、触媒層ペーストを電解質膜に直接塗布、乾燥したり、或いは、ガス拡散層となる導電性多孔質体に触媒層ペーストを塗布、乾燥し、触媒層が電解質膜と導電性多孔質体に挟まれるように電解質膜と導電性多孔質体とを重ね合わせたり、或いは、ポリテトラフルオロエチレン等の転写基材に触媒層ペーストを塗布、乾燥させ、これを電解質膜又は導電性多孔質体に転写する方法等が挙げられる。
触媒層ペーストの調製において、白金、貴金属、陽イオン交換樹脂、溶媒を加える順序は特に限定されず、これら4つを同時に混合してもよいし、溶媒と陽イオン交換樹脂とを予め混合してから、その他の成分を加えてもよいし、白金と貴金属を混ぜてから陽イオン交換樹脂を加えてもよいし、白金及び陽イオン交換樹脂を含む混合物と貴金属及び陽イオン交換樹脂を含む混合物とを混ぜ合わせてもよい。
また、まず、貴金属を含む貴金属インクを電解質膜に塗布し、次に、この金属インク層の上に、白金と陽イオン交換樹脂とを含む白金/陽イオン交換樹脂ペーストを塗布する方法でもよい。さらに、貴金属を含む貴金属メッシュや貴金属網等を電解質膜上に配置し、この上から白金/陽イオン交換樹脂ペーストを塗布、乾燥する方法でもよい。
燃料電池の発電下における白金利用率を高く維持する観点から、上記方法のうち、触媒層ペーストを用いる方法が好ましい。触媒層ペースト中の各成分量は特に限定されないが、通常、白金(白金そのもの):貴金属(貴金属そのもの):陽イオン交換樹脂=0.6:0.4:1(重量比)程度が好ましい。
白金粒子の分散性、後述する電位印加工程における被処理組成を有する触媒層の電子伝導性、燃料電池として作動させたときの触媒層内における電子伝導性、貴金属をペースト等に分散させて用いる場合の貴金属粒子の分散性等の観点から、白金や貴金属は、導電性材料に担持させた状態で被処理組成を有する触媒層内に混在していることが好ましく、特に白金及び貴金属の両方を導電性材料に担持させることが好ましい。導電性材料としては、例えば、従来電極触媒において、白金や白金合金等の触媒活性物質を担持させる担持体として用いられているカーボン粒子やカーボン繊維のような導電性カーボン等を用いることができる。
被処理組成を有する触媒層には、必要に応じて、撥水性高分子や結着剤等その他の材料が含まれていてもよい。
被処理組成を有する触媒層には、必要に応じて、撥水性高分子や結着剤等その他の材料が含まれていてもよい。
被処理組成を有するアノード側触媒層又は被処理組成を有するカソード触媒層が設けられた電解質膜の他方の面に設けられるカソード側触媒層又はアノード側触媒層は、被処理組成を有していても有してなくてもよい。電解質膜の他方の面にも被処理組成を有する触媒層を設ける場合には、上記一方の面に設けられる被処理組成を有する触媒層と同様にして形成することができる。
被処理組成を有する触媒層の対極として、被処理組成を有していない触媒層を形成する場合には、一般的な触媒層の形成方法に準じればよい。例えば、カーボン粒子等の導電性粒子に白金等の触媒活性物質を担持させたものと、陽イオン交換樹脂とを溶媒と混合した触媒ペーストを用いて、上記被処理組成を有する触媒層と同様の方法にて形成することができる。
被処理組成を有する触媒層の対極として、被処理組成を有していない触媒層を形成する場合には、一般的な触媒層の形成方法に準じればよい。例えば、カーボン粒子等の導電性粒子に白金等の触媒活性物質を担持させたものと、陽イオン交換樹脂とを溶媒と混合した触媒ペーストを用いて、上記被処理組成を有する触媒層と同様の方法にて形成することができる。
次に、上記触媒層形成工程において形成された被処理組成を有するアノード側及び/又はカソード側触媒層に電位を印加する(電位印加工程)。
電位印加工程において、被処理組成を有するアノード側触媒層及び/又は被処理組成を有するカソード側触媒層に印加される電位は、(1)白金の溶解電位及び白金の析出電位を、高電位側から低電位側へ通過及び低電位側から高電位側へ通過するように変動する電位、或いは、(2)白金の溶解電位又は白金の析出電位を、高電位側から低電位側へ通過及び低電位側から高電位側へ通過するように変動する電位、或いは、(3)白金の溶解電位と白金の析出電位間を、高電位側から低電位側へ及び低電位側から高電位側へ変動するものである。
電位印加工程において、被処理組成を有するアノード側触媒層及び/又は被処理組成を有するカソード側触媒層に印加される電位は、(1)白金の溶解電位及び白金の析出電位を、高電位側から低電位側へ通過及び低電位側から高電位側へ通過するように変動する電位、或いは、(2)白金の溶解電位又は白金の析出電位を、高電位側から低電位側へ通過及び低電位側から高電位側へ通過するように変動する電位、或いは、(3)白金の溶解電位と白金の析出電位間を、高電位側から低電位側へ及び低電位側から高電位側へ変動するものである。
電位印加工程における被処理組成を有する触媒層への変動電位の印加は、被処理組成を有する触媒層に、白金の溶解⇔析出が起こる電位範囲で電位の上昇・下降操作を行うことにより、触媒層内の白金を電極反応に有効に作用する位置へと選択的に配置させることを可能とする。
一般的に、白金は、高電位側への電位変化により溶解し、低電位側への電位変化により析出すると考えられる。すなわち、被処理組成を有する触媒層の電位を低電位側から高電位側(貴な方向)へ掃引したときに、被処理組成を有する触媒層内に含有された白金が、酸化されてイオン(カチオン)化し、溶解する電位が白金の溶解電位であり、また、被処理組成を有する触媒層の電位を高電位側から低電位側(卑な方向)へ掃引したときに、被処理組成を有する触媒層内の溶解した白金(白金イオン)が、還元されて白金金属となって析出する電位が白金の析出電位である。
白金の溶解電位及び析出電位は、被処理組成を有する触媒層内の環境(例えば、共存成分、pH、温度、雰囲気等)によって、変化する。また、白金の溶解電位と析出電位の高低は、溶解電位の方が析出電位よりも低いとは限らず、溶解電位の方が析出電位よりも高い場合もあり得る。
白金の溶解電位及び析出電位は、被処理組成を有する触媒層内の環境(例えば、共存成分、pH、温度、雰囲気等)によって、変化する。また、白金の溶解電位と析出電位の高低は、溶解電位の方が析出電位よりも低いとは限らず、溶解電位の方が析出電位よりも高い場合もあり得る。
また、白金の溶解と析出は、上述したように、一般的には高電位側への電位変化により溶解し、低電位側への電位変化により析出すると考えられているが、詳細な機構が明らかとなっておらず、高電位側へ電位を変化させた場合に白金の析出が起こり、低電位側へ電位を変化させた場合に白金の溶解が起こる可能性もある。従って、本発明においては、白金の溶解⇔析出が起こる電位範囲で、被処理組成を有する触媒層の電位を上昇・下降させる操作を繰り返すことが重要である。
ここで、高電位側への電位変化により白金が溶解し、低電位側への電位変化により白金が析出する場合において、白金の溶解電位(以下、Psということがある)が析出電位(以下、Pdということがある)よりも低電位(Ps<Pd)である場合(図4参照)と、白金の溶解電位が析出電位よりも高電位(Ps>Pd)である場合(図5参照)について、電位印加工程における被処理組成を有する触媒層に印加される変動電位[上記(1)〜(3)]による白金の溶解と析出について説明する。
(A)白金の溶解電位が析出電位よりも低電位(Ps<Pd)である場合(図4参照)
<A−1>:白金の溶解電位及び析出電位を、低電位側から高電位側へ及び高電位側から低電位側へ通過するように変動する電位を印加する場合(図4−A参照)
被処理組成を有する触媒層の電位を低電位側から高電位側へ掃引し、白金の溶解電位(Ps)を低電位側から高電位側へ通過するような電位を印加すると、被処理組成を有する触媒層内の白金がイオン化して溶解する。さらに電位を掃引し、白金の析出電位(Pd)を低電位側から高電位側へ通過するように電位を印加しても白金の溶解は進行する。このように溶解電位(Ps)を低電位側から高電位側へと通過するように電位を印加し、溶解電位以上の電位を印加しているとき、白金は溶解し、被処理組成を有する触媒層の陽イオン交換樹脂を伝って、該被処理組成を有する触媒層内を移動(図1A参照)する。
<A−1>:白金の溶解電位及び析出電位を、低電位側から高電位側へ及び高電位側から低電位側へ通過するように変動する電位を印加する場合(図4−A参照)
被処理組成を有する触媒層の電位を低電位側から高電位側へ掃引し、白金の溶解電位(Ps)を低電位側から高電位側へ通過するような電位を印加すると、被処理組成を有する触媒層内の白金がイオン化して溶解する。さらに電位を掃引し、白金の析出電位(Pd)を低電位側から高電位側へ通過するように電位を印加しても白金の溶解は進行する。このように溶解電位(Ps)を低電位側から高電位側へと通過するように電位を印加し、溶解電位以上の電位を印加しているとき、白金は溶解し、被処理組成を有する触媒層の陽イオン交換樹脂を伝って、該被処理組成を有する触媒層内を移動(図1A参照)する。
続いて、被処理組成を有する触媒層の電位を高電位側(Pdより貴な電位)から低電位側へ掃引し、白金の析出電位(Pd)を高電位側から低電位側へと通過するような電位を印加すると、溶解していた白金は、金の表面に析出する(図1B)。
以上のように、本発明では、白金の析出がより表面積の小さい(粒径の小さい)白金から進行し、白金の析出がより表面積の大きな(粒径の大きな)粒子上で発生しやすいことを利用し、露出表面積が小さく、有効利用率が低い白金を、粒径の大きな金の表面に析出させることで、露出表面積の増大を図ると共に、電子とプロトンの授受が活発に行われる位置に選択的に配置させるものである。
引き続き、さらに電位を掃引し、白金の溶解電位を高電位側(Psより貴でPdより卑な電位)から低電位側へ通過するような電位を印加しても、白金の析出は進行し、再び、白金の溶解電位よりも低い電位から白金の溶解電位を通過するように高電位側へと電位を掃引させると、白金の溶解が起こる。
すなわち、白金の溶解電位及び析出電位を高電位側から低電位側へ通過する電位と、白金の析出電位及び溶解電位を低電位側から高電位側へ通過する電位とを繰り返し印加するように、被処理組成を有する触媒層の電位を掃引することで、該被処理組成を有する触媒層内の白金は、溶解と析出を繰り返し、露出表面積が大きくなるように、粒径の大きな金表面へ集中的に析出する。
<A−2>:白金の溶解電位(Ps)を低電位側から高電位側へ及び高電位側から低電位側へ通過するように変動する電位を印加する場合(図4−B参照)
被処理組成を有する触媒層の電位を低電位側から高電位側へ掃引し、白金の溶解電位を低電位側から高電位側へ通過するような電位を印加すると、被処理組成を有する触媒層内の白金がイオン化して溶解する。このとき、溶解した白金は<A−1>の場合と同様、被処理組成を有する触媒層の陽イオン交換樹脂を伝って、該被処理組成を有する触媒層内を移動する。
被処理組成を有する触媒層の電位を低電位側から高電位側へ掃引し、白金の溶解電位を低電位側から高電位側へ通過するような電位を印加すると、被処理組成を有する触媒層内の白金がイオン化して溶解する。このとき、溶解した白金は<A−1>の場合と同様、被処理組成を有する触媒層の陽イオン交換樹脂を伝って、該被処理組成を有する触媒層内を移動する。
続いて、被処理組成を有する触媒層の電位を、白金の析出電位より低い電位範囲おいて、高電位側(Psより貴でPdより卑な電位)から低電位側へ掃引すると、溶解していた白金は金の表面に析出する。さらに白金の溶解電位を高電位側から低電位側へと通過するように電位を掃引しても白金の析出は進行する。このように、<A−1>のように白金の析出電位を通過させなくても、白金の溶解電位よりも高く、析出電位より低い電位範囲で、高電位側から低電位側へ電位を掃引することで、溶解していた白金を析出させることができる。
引き続き、さらに電位を掃引し、白金の溶解電位を低電位側から高電位側へ通過するような電位を印加することで、再び、白金の溶解が起こる。すなわち、白金の溶解電位(Ps)を低電位側から高電位側へ通過するような電位と、白金の溶解電位を高電位側から低電位側へ通過するような電位とを交互に印加することで、被処理触媒層内で、<A−1>と同様、白金の溶解と析出が生じ、白金の金表面への集中的な析出を行うことができる。
<A−3>:白金の析出電位(Pd)を低電位側から高電位側へ及び高電位側から低電位側へ通過するように変動する電位を印加する場合(図4−C参照)
被処理組成を有する触媒層に、白金の溶解電位(Ps)よりも高い電位を印加すると、被処理組成を有する触媒層内の白金がイオン化して溶解する。そして、さらに高電位側へと電位を掃引し、白金の析出電位(Pd)を低電位側から高電位側へ通過するように電位を印加しても、白金の溶解は進行する。上記<A−1>のように、白金の溶解電位を通過させなくても、白金の溶解電位より高い電位を印加することで、白金を溶解させることができる。溶解した白金は、<A−1>の場合と同様、被処理組成を有する触媒層の陽イオン交換樹脂を伝って、該被処理組成を有する触媒層内を移動する。
被処理組成を有する触媒層に、白金の溶解電位(Ps)よりも高い電位を印加すると、被処理組成を有する触媒層内の白金がイオン化して溶解する。そして、さらに高電位側へと電位を掃引し、白金の析出電位(Pd)を低電位側から高電位側へ通過するように電位を印加しても、白金の溶解は進行する。上記<A−1>のように、白金の溶解電位を通過させなくても、白金の溶解電位より高い電位を印加することで、白金を溶解させることができる。溶解した白金は、<A−1>の場合と同様、被処理組成を有する触媒層の陽イオン交換樹脂を伝って、該被処理組成を有する触媒層内を移動する。
続いて、被処理組成を有する触媒層の電位を高電位側(Pdよりも貴な電位)から低電位側へ掃引し、白金の析出電位(Pd)を高電位側から低電位側へと通過するような電位を印加すると、上記<A−1>のように白金の溶解電位(Ps)以下の低電位を印加しなくても、溶解した白金は<A−1>の場合と同様、金の表面に析出する。
引き続き、再度、白金の溶解電位(Ps)より高い電位範囲において、低電位側から高電位側へ電位を掃引することで、再び、白金の溶解が起こる。
すなわち、白金の析出電位を低電位側から高電位側へ通過するような電位と、白金の析出電位を高電位側から低電位側へ通過するような電位とを交互に印加することで、被処理触媒層内で、<A−1>と同様、白金の溶解と析出が生じ、白金の金表面への集中的な析出を行うことができる。
すなわち、白金の析出電位を低電位側から高電位側へ通過するような電位と、白金の析出電位を高電位側から低電位側へ通過するような電位とを交互に印加することで、被処理触媒層内で、<A−1>と同様、白金の溶解と析出が生じ、白金の金表面への集中的な析出を行うことができる。
<A−4>:白金の溶解電位と析出電位間を低電位側から高電位側へ及び高電位側から低電位側へ変動する電位を印加する場合(図4−D、4−E、4−F参照)
ここで、白金の溶解電位と析出電位間とは、溶解電位以上析出電位以下の範囲(図4−D参照)の他、溶解電位以上析出電位未満の範囲、溶解電位より高電位から析出電位以下の範囲、溶解電位より高電位から析出電位未満の範囲(図4−E、4−F参照)を含む。
ここで、白金の溶解電位と析出電位間とは、溶解電位以上析出電位以下の範囲(図4−D参照)の他、溶解電位以上析出電位未満の範囲、溶解電位より高電位から析出電位以下の範囲、溶解電位より高電位から析出電位未満の範囲(図4−E、4−F参照)を含む。
被処理組成を有する触媒層に、白金の溶解電位(Ps)以上の電位を印加すると、被処理組成を有する触媒層内の白金がイオン化して溶解する。上記<A−1>のように、白金の溶解電位を通過させなくても、白金の溶解電位以上の電位範囲において低電位側から高電位側へと電位を掃引することで、白金を溶解させることができる。溶解した白金は<A−1>の場合と同様、被処理組成を有する触媒層の陽イオン交換樹脂を伝って、該被処理組成を有する触媒層内を移動する。
続いて、白金の溶解電位以上、析出電位以下の電位範囲において、高電位側から低電位側へ掃引すると、白金は金表面に析出する。上記<A−1>のように白金の析出電位を通過させなくても、白金の析出電位以下の電位範囲で低電位側へ電位を掃引することで、溶解した白金を析出させることができる。
引き続き、再び、白金の溶解電位以上の電位範囲において電位を低電位側から高電位側へと掃引することで、再び、白金の溶解が起こる。
すなわち、白金の溶解電位と析出電位間を低電位側から高電位側へ変動する電位及び高電位側から低電位側へ変動する電位を交互に印加することで、被処理触媒層内で、<A−1>と同様、白金の溶解と析出が生じ、白金の金表面への集中的な析出を行うことができる。
すなわち、白金の溶解電位と析出電位間を低電位側から高電位側へ変動する電位及び高電位側から低電位側へ変動する電位を交互に印加することで、被処理触媒層内で、<A−1>と同様、白金の溶解と析出が生じ、白金の金表面への集中的な析出を行うことができる。
(B)白金の溶解電位が析出電位よりも高電位(Ps>Pd)である場合(図5参照)
<B−1>:白金の溶解電位及び析出電位を低電位側から高電位側へ及び高電位側から低電位側へ通過するように変動する電位を印加する場合(図5−A参照)
被処理組成を有する触媒層の電位を低電位側から高電位側へ掃引し、白金の析出電位(Pd)を低電位側から高電位側へ通過するような電位を印加しても、被処理組成を有する触媒層内の白金は溶解しないが、白金の溶解電位(Ps)を低電位側から高電位側へ通過するような電位を印加すると、白金はイオン化して溶解する。
続いて、被処理組成を有する触媒層の電位を、高電位側(Psよりも貴な電位)から低電位側へと掃引し、白金の溶解電位(Ps)を高電位側から低電位側へ通過するような電位を印加しても、該触媒層内の白金の溶解は進行する。このように溶解電位を低電位側から高電位側へと通過するように電位を印加し、続いて析出電位より高い電位を印加しているとき、白金は溶解し、被処理組成を有する触媒層の陽イオン交換樹脂を伝って、該被処理組成を有する触媒層内を移動(図1A参照)する。
<B−1>:白金の溶解電位及び析出電位を低電位側から高電位側へ及び高電位側から低電位側へ通過するように変動する電位を印加する場合(図5−A参照)
被処理組成を有する触媒層の電位を低電位側から高電位側へ掃引し、白金の析出電位(Pd)を低電位側から高電位側へ通過するような電位を印加しても、被処理組成を有する触媒層内の白金は溶解しないが、白金の溶解電位(Ps)を低電位側から高電位側へ通過するような電位を印加すると、白金はイオン化して溶解する。
続いて、被処理組成を有する触媒層の電位を、高電位側(Psよりも貴な電位)から低電位側へと掃引し、白金の溶解電位(Ps)を高電位側から低電位側へ通過するような電位を印加しても、該触媒層内の白金の溶解は進行する。このように溶解電位を低電位側から高電位側へと通過するように電位を印加し、続いて析出電位より高い電位を印加しているとき、白金は溶解し、被処理組成を有する触媒層の陽イオン交換樹脂を伝って、該被処理組成を有する触媒層内を移動(図1A参照)する。
引き続き、被処理組成を有する触媒層の電位を高電位側(Pdより貴でPsより卑な電位)から低電位側へ掃引し、白金の析出電位(Pd)を高電位側から低電位側へと通過するような電位を印加すると、溶解していた白金は、金の表面に析出する(図1B参照)。
その後、該触媒層の電位を低電位側(Pdより卑な電位)から高電位側へ掃引し、白金の析出電位(Pd)を低電位側から高電位側へと通過するように電位を印加しても、白金は溶解しないが、さらに電位を掃引し、白金の溶解電位を低電位側から高電位側へと通過するように電位を印加することで、再び白金が溶解する。
すなわち、白金の析出電位及び溶解電位を低電位側から高電位側へ通過するような電位と、白金の析出電位及び溶解電位を高電位側から低電位側へ通過するような電位と、を交互に印加することで、被処理触媒層内で、<A−1>と同様、白金の溶解と析出が生じ、白金の金表面への集中的な析出を行うことができる。
すなわち、白金の析出電位及び溶解電位を低電位側から高電位側へ通過するような電位と、白金の析出電位及び溶解電位を高電位側から低電位側へ通過するような電位と、を交互に印加することで、被処理触媒層内で、<A−1>と同様、白金の溶解と析出が生じ、白金の金表面への集中的な析出を行うことができる。
<B−2>:白金の析出電位(Pd)を低電位側から高電位側へ及び高電位側から低電位側へ通過するように変動する電位を印加する場合(図5−B参照)
被処理組成を有する触媒層の電位を、白金の溶解電位(Ps)よりも低い電位範囲において、低電位側から高電位側へ掃引しても、被処理組成を有する触媒層内の白金は溶解しない。すなわち、白金の析出電位(Pd)を低電位側から高電位側へと通過するような電位を印加しても、該触媒層内の白金の溶解は起こらない。
被処理組成を有する触媒層の電位を、白金の溶解電位(Ps)よりも低い電位範囲において、低電位側から高電位側へ掃引しても、被処理組成を有する触媒層内の白金は溶解しない。すなわち、白金の析出電位(Pd)を低電位側から高電位側へと通過するような電位を印加しても、該触媒層内の白金の溶解は起こらない。
続いて、該触媒層の電位を、白金の溶解電位(Ps)より低く、析出電位(Pd)より高い電位範囲において、高電位側から低電位側へ掃引すると、該触媒層内の白金は溶解する。溶解した白金は、<A−1>の場合と同様、被処理組成を有する触媒層の陽イオン交換樹脂を伝って、該被処理組成を有する触媒層内を移動する。
引き続き、被処理組成を有する触媒層の電位を、高電位側から低電位側へ掃引し、白金の析出電位(Pd)を高電位側から低電位側へ通過するような電位を印加することで、該触媒層内の溶解していた白金は、金の表面に析出する。
すなわち、白金の析出電位を低電位側から高電位側へ通過するような電位と白金の析出電位を高電位側から低電位側へ通過するような電位とを交互に印加することで、被処理触媒層内で、<A−1>と同様、白金の溶解と析出が生じ、白金の金表面への集中的な析出を行うことができる。
すなわち、白金の析出電位を低電位側から高電位側へ通過するような電位と白金の析出電位を高電位側から低電位側へ通過するような電位とを交互に印加することで、被処理触媒層内で、<A−1>と同様、白金の溶解と析出が生じ、白金の金表面への集中的な析出を行うことができる。
<B−3>:白金の溶解電位を低電位側から高電位側へ及び高電位側から低電位側へ通過するように変動する電位を印加する場合(図5−C参照)
被処理組成を有する触媒層に、白金の溶解電位(Ps)を低電位側から高電位側へ通過するような電位を印加すると、析出していた白金は、イオン化して溶解する。続いて、白金の溶解電位(Ps)を高電位側から低電位側へと通過するような電位を印加しても、白金の溶解は進行する。溶解した白金は<A−1>の場合と同様、被処理組成を有する触媒層の陽イオン交換樹脂を伝って、該被処理組成を有する触媒層内を移動する。
被処理組成を有する触媒層に、白金の溶解電位(Ps)を低電位側から高電位側へ通過するような電位を印加すると、析出していた白金は、イオン化して溶解する。続いて、白金の溶解電位(Ps)を高電位側から低電位側へと通過するような電位を印加しても、白金の溶解は進行する。溶解した白金は<A−1>の場合と同様、被処理組成を有する触媒層の陽イオン交換樹脂を伝って、該被処理組成を有する触媒層内を移動する。
引き続き、被処理組成を有する触媒層の電位を、白金の析出電位(Pd)よりも高い電位範囲において、低電位側から高電位側へ掃引すると、溶解していた白金は、金の表面に析出する。
すなわち、白金の溶解電位を低電位側から高電位側へ通過するような電位と白金の溶解電位を高電位側から低電位側へ通過するような電位とを交互に印加することで、被処理触媒層内で、<A−1>と同様、白金の溶解と析出が生じ、白金の金表面への集中的な析出を行うことができる。
すなわち、白金の溶解電位を低電位側から高電位側へ通過するような電位と白金の溶解電位を高電位側から低電位側へ通過するような電位とを交互に印加することで、被処理触媒層内で、<A−1>と同様、白金の溶解と析出が生じ、白金の金表面への集中的な析出を行うことができる。
<B−4>:白金の溶解電位と析出電位間を低電位側から高電位側へ及び高電位側から低電位側へ変動する電位を印加する場合(図5−D、5−E、5−F参照)
まず、ここで、白金の溶解電位と析出電位間とは、析出電位以上溶解電位以下の範囲(図5−D参照)の他、析出電位以上溶解電位未満の範囲、析出電位より高電位から溶解電位以下の範囲、析出電位より高電位から溶解電位未満の範囲(図5−E、5−F参照)を含む。
まず、ここで、白金の溶解電位と析出電位間とは、析出電位以上溶解電位以下の範囲(図5−D参照)の他、析出電位以上溶解電位未満の範囲、析出電位より高電位から溶解電位以下の範囲、析出電位より高電位から溶解電位未満の範囲(図5−E、5−F参照)を含む。
被処理組成を有する触媒層の電位を、白金の析出電位(Pd)以上の電位範囲において、低電位側から高電位側へ掃引すると、被処理組成を有する触媒層内の白金は溶解せずに析出した固体の状態で存在する。続いて、該触媒層の電位を、白金の溶解電位(Ps)以下の電位範囲において、高電位側から低電位側へ掃引することで、白金を溶解させることができる。このとき、溶解した白金は<A−1>の場合と同様、被処理組成を有する触媒層の陽イオン交換樹脂を伝って、該被処理組成を有する触媒層内を移動する。
続いて、該触媒層の電位を、白金の析出電位(Pd)以上の電位範囲において、低電位側から高電位側へ掃引すると、白金は金表面に析出する。
すなわち、白金の溶解電位と析出電位間を低電位側から高電位側へ変動する電位及び高電位側から低電位側へ変動する電位を交互に印加することで、被処理触媒層内で、<A−1>と同様、白金の溶解と析出が生じ、白金の金表面への集中的な析出を行うことができる。
すなわち、白金の溶解電位と析出電位間を低電位側から高電位側へ変動する電位及び高電位側から低電位側へ変動する電位を交互に印加することで、被処理触媒層内で、<A−1>と同様、白金の溶解と析出が生じ、白金の金表面への集中的な析出を行うことができる。
電位印加工程において、電位の変動は、被処理組成を有する触媒層に導入された白金ができるだけ多く貴金属表面に析出されるように繰り返す。
このとき、白金の析出が起こるのは、酸化されて溶解した白金イオン(カチオン)が移動して到達することができ、且つ、白金イオンが電子を受け取って還元される場所のみである。すなわち、カチオン伝導路、つまり、プロトン伝導路を形成する陽イオン交換樹脂と、電子伝導路を形成する貴金属が共に存在する場所のみである。この陽イオン交換樹脂と貴金属が共に存在する場所は、上述したように燃料電池として作動したときに、電極反応の場となる場所である。
このとき、白金の析出が起こるのは、酸化されて溶解した白金イオン(カチオン)が移動して到達することができ、且つ、白金イオンが電子を受け取って還元される場所のみである。すなわち、カチオン伝導路、つまり、プロトン伝導路を形成する陽イオン交換樹脂と、電子伝導路を形成する貴金属が共に存在する場所のみである。この陽イオン交換樹脂と貴金属が共に存在する場所は、上述したように燃料電池として作動したときに、電極反応の場となる場所である。
そして、白金と陽イオン交換樹脂と貴金属とが無秩序に混在する被処理組成を有する触媒層においては電子とプロトンの授受が充分に行われない場所に存在している白金でも、電位印加工程における電位変動によって溶解し、移動することが可能となり、上記のような析出が可能な貴金属の表面へと集中的に移動して析出する。
すなわち、白金と陽イオン交換樹脂と貴金属とが無秩序に混在する被処理組成を有する触媒層が、電位印加工程を経ることによって、プロトン伝導路と電子伝導路の両方に接する又は両方の近傍であり、プロトン及び電子の授受が可能な位置に白金が偏在する触媒層へと変化する。しかも、白金の析出量は、燃料電池として作動させたときの電極反応の活発さに対応し、燃料電池における電極反応が活発に行われる場所で集中的に白金の析出が起こる。
従って、本発明によれば、電極反応の場となる三相界面に白金(触媒活性物質)を選択的に配置することが可能であり、且つ、白金が貴金属の表面に析出してその露出表面積が増大する。その結果、上述したような白金の利用効率の向上が可能となるのである。具体的には、上記のような電極反応が活発に行われる位置に白金を偏在させることが可能な本発明の方法により製造した触媒層では、白金の利用効率を30〜60%程度にすることができる。
従って、本発明によれば、電極反応の場となる三相界面に白金(触媒活性物質)を選択的に配置することが可能であり、且つ、白金が貴金属の表面に析出してその露出表面積が増大する。その結果、上述したような白金の利用効率の向上が可能となるのである。具体的には、上記のような電極反応が活発に行われる位置に白金を偏在させることが可能な本発明の方法により製造した触媒層では、白金の利用効率を30〜60%程度にすることができる。
貴金属表面への白金の析出は、白金が貴金属の表面に島状に点在する態様であってもよいし、或いは、貴金属の表面が白金で被覆されたコア−シェル型(図1C参照)であってもよい。
被処理組成を有する触媒層に電位を印加する方法は、特に限定されず、被処理組成を有する触媒層の電位を変動させることが可能な外部手段(以下、電位変動外部手段ということがある)を用いて行ってもよい。また、変動電位を印加する被処理組成を有する触媒層(以下、被処理触媒層ということがある)に酸化剤ガス、該被処理触媒層と対極をなす触媒層に燃料ガス(還元剤ガス)を流通させ、各触媒層において電極反応を起こし、変動電位を印加する方法でもよい。また、上記2つの方法を組み合わせてもよい。
具体的には、電位変動外部手段を用いる方法として、例えば、以下の3つの方法が挙げられる。
(a)被処理触媒層に窒素ガス、該被処理触媒層と対極をなす触媒層(以下、対極触媒層ということがある。)に水素ガスを流通しながら、該被処理触媒層に変動電位を印加する方法:
このとき、水素ガスを流通している対極触媒層は、被処理触媒層の対極であると同時に参照極としても機能する。すなわち、被処理触媒層の処理のために参照極を設けなくても、対極触媒層の電位を基準として、被処理触媒層の電位を変動させることができる。ただし、対極触媒層に流す水素ガスが電解質膜を透過し、水素ガスが被処理触媒層側に移動してくるおそれがある。水素ガスと白金イオンとが接触すると、白金イオンは還元され、水素ガスと接触した場所で析出してしまう。すなわち、電解質膜表面等の電極反応に有効に働かない位置で白金が析出し、白金のロスが生じてしまうおそれがある。しかしながら、このような電極反応に有効利用されない位置で白金が析出し、白金のロスが生じてしまったとしても、本方法による白金の露出表面積の増大効果は得られる。
(a)被処理触媒層に窒素ガス、該被処理触媒層と対極をなす触媒層(以下、対極触媒層ということがある。)に水素ガスを流通しながら、該被処理触媒層に変動電位を印加する方法:
このとき、水素ガスを流通している対極触媒層は、被処理触媒層の対極であると同時に参照極としても機能する。すなわち、被処理触媒層の処理のために参照極を設けなくても、対極触媒層の電位を基準として、被処理触媒層の電位を変動させることができる。ただし、対極触媒層に流す水素ガスが電解質膜を透過し、水素ガスが被処理触媒層側に移動してくるおそれがある。水素ガスと白金イオンとが接触すると、白金イオンは還元され、水素ガスと接触した場所で析出してしまう。すなわち、電解質膜表面等の電極反応に有効に働かない位置で白金が析出し、白金のロスが生じてしまうおそれがある。しかしながら、このような電極反応に有効利用されない位置で白金が析出し、白金のロスが生じてしまったとしても、本方法による白金の露出表面積の増大効果は得られる。
尚、この方法(a)において、被処理触媒層に流通させる窒素ガス及び対極触媒層に流通させる水素ガスのうち、少なくとも被処理触媒層に流通させる窒素ガスは、該被処理触媒層の陽イオン交換樹脂及び電解質膜の湿潤状態を保持できるように加湿する。被処理触媒層内における白金イオンの円滑な移動のためには、該被処理触媒層の陽イオン交換樹脂が陽イオン交換能を発現できるように湿潤状態を保持する必要があるからである。好ましくは、被処理触媒層に流通させるガスと対極触媒層に流通させるガスの両方を加湿し、電解質膜及び被処理触媒層と対極触媒層の陽イオン交換樹脂の湿潤状態を保持できるようにする。下記(b)及び(c)の方法においても、同様である。
(b)被処理触媒層に窒素ガス、対極触媒層に酸素ガス又は空気を流通しながら、該被処理触媒層に変動電位を印加する方法:
このとき、被処理触媒層の電位の基準となる参照極を設けることが好ましい。参照極は、例えば、該被処理触媒層及び対極が設けられた電解質膜の一方の面に、該被処理触媒層及び該対極触媒層とは独立(絶縁)した適当な触媒(水素の酸化還元反応に対して触媒活性を有するもの)を配置し、該触媒に水素ガスを供給する形態が挙げられる。ただし、対極触媒層に純物質である酸素ガスを流通させる場合には、該対極触媒層を参照極として利用することも可能である。
このとき、被処理触媒層の電位の基準となる参照極を設けることが好ましい。参照極は、例えば、該被処理触媒層及び対極が設けられた電解質膜の一方の面に、該被処理触媒層及び該対極触媒層とは独立(絶縁)した適当な触媒(水素の酸化還元反応に対して触媒活性を有するもの)を配置し、該触媒に水素ガスを供給する形態が挙げられる。ただし、対極触媒層に純物質である酸素ガスを流通させる場合には、該対極触媒層を参照極として利用することも可能である。
この方法(b)では、対極触媒層側からの水素ガスの透過がないため、上記(a)のような白金のロスが生じないという利点がある。また、参照極を設けた場合には、被処理触媒層の電位を正確に規定して制御することができる。すなわち、白金の溶解と析出をより正確に制御することができる。ただし、被処理触媒層に変動電位を印加する際に該被処理触媒層に流れた電流と対となる反応が対極触媒層で生じるため、対極触媒層に酸素ガスが存在する場合、酸素の高電位な反応が進行し、対極触媒層を構成する材料の劣化が生じる可能性が考えられるので、注意する必要がある。
(c)被処理触媒層及び対極触媒層に窒素ガスを流通しながら、該被処理触媒層に変動電位を印加する方法:
このとき、上記(b)同様、被処理触媒層の電位の基準となる参照極を設けることが好ましい。参照極を設けることで、被処理触媒層の電位を正確に制御することができる。ただし、対極触媒層に純物質である窒素ガスを流通させるので、対極触媒層を参照極として利用することもできるが、正確な電位制御の観点からは、対極触媒層とは別途参照極を設けることが好ましい。
このとき、上記(b)同様、被処理触媒層の電位の基準となる参照極を設けることが好ましい。参照極を設けることで、被処理触媒層の電位を正確に制御することができる。ただし、対極触媒層に純物質である窒素ガスを流通させるので、対極触媒層を参照極として利用することもできるが、正確な電位制御の観点からは、対極触媒層とは別途参照極を設けることが好ましい。
この方法(c)では、対極触媒層側からの水素ガスの透過がないため、上記(a)のような白金のロスが生じないという利点がある。むしろ、被処理触媒層で溶解した白金(カチオン)が、電解質膜内を通って対極触媒層側へと移動し、対極触媒層内の陽イオン交換樹脂を伝って対極触媒層内で白金金属として析出する可能性もある。すなわち、上記(a)の方法では電解質膜の表面等に析出し、電極反応に有効に働かない白金が生じていたのに対して、本方法では、処理対象である被処理触媒層の白金表面積を増大させると同時に、対極触媒層において白金を析出させることが可能である。ただし、被処理触媒層と対極触媒層における白金の露出表面積を制御するのは困難である。
また、上記(b)の方法では、対極触媒層における酸素の反応による材料劣化のおそれがあるのに対して、本方法では、対極触媒層にも不活性な窒素ガスを流通させているので、上記のようなおそれがない。
また、上記(b)の方法では、対極触媒層における酸素の反応による材料劣化のおそれがあるのに対して、本方法では、対極触媒層にも不活性な窒素ガスを流通させているので、上記のようなおそれがない。
尚、ここで、対極触媒層は、変動電位を印加して、白金の溶解と析出を起こす処理の対象となる被処理触媒層と対をなす触媒層であり、対極触媒層も被処理組成を有する触媒層であって、被処理触媒層の電位印加工程の前又は後に電位印加工程を受ける状態であってもよいし、被処理組成を有していないものであってもよい。また、「被処理触媒層」は実際に燃料電池として作動させる際にアノード側触媒層として機能するか、カソード側触媒層として機能するかを規定するものではなく、本発明の製造方法における電位印加工程の処理を受ける触媒層を指すものである。
被処理組成を有する触媒層の電位を変動させるための電位変動外部手段としては、ポテンショスタット等、一般的なものを用いることができる。外部手段により被処理組成を有する触媒層に電位を印加する場合には、電位の制御が容易であること、印加電位の上限を大きく(具体的には、例えば、1.0Vvs.RHE)することができること、これに伴い印加電位の変動幅を大きくすることができること等の利点がある。また、電解質膜の両面に被処理組成を有する触媒層を設けた場合に、これら2つの被処理組成を有する触媒層に同時に電位を印加することができる場合もあり、各触媒層ごとに電位印加工程を設ける必要がなく、効率的である。
電極反応を起こし、電位を変動させる方法においては、酸化剤ガスが供給される被処理触媒層のみにおいて、白金を溶解・析出させることができる。すなわち、被処理組成を有するカソード側触媒層において、白金の溶解・析出を行う場合には、被処理組成を有するカソード側触媒層に酸化剤ガスを供給し、当該カソード側触媒層と対をなすアノード側触媒層に燃料ガスを供給する。また、被処理組成を有するアノード側触媒層において、白金の溶解・析出を行う場合には、被処理組成を有するアノード側触媒層に酸化剤ガスを供給し、当該アノード側触媒層と対をなすカソード側触媒層に燃料ガスを供給する。
上記酸化剤ガスとしては、固体高分子電解質型燃料電池のカソードに供給される酸化剤ガスと同様のもの、例えば、空気、酸素ガス等を用いることができる。また、上記燃料ガスとしては、固体高分子電解質型燃料電池のアノードに供給される燃料ガスと同様のもの、例えば、水素ガスなどを用いることができる。
被処理触媒層に酸素や空気等の酸化剤ガスを流通させると同時に対極触媒層に水素ガス等の燃料ガスを流通させることによって、被処理触媒層及び対極触媒層において電極反応(酸化剤の還元反応、燃料の酸化反応)が進行する。本方法では、電極反応が進行する被処理触媒層及び対極触媒層間の負荷変動により被処理触媒層の電位が変動することを利用する。
本方法では、白金イオンの円滑な移動と共に、プロトンの円滑な移動を促すために、被処理触媒層に流通させる酸化剤ガス及び対極触媒層に流通させる燃料ガスの両方を加湿し、電解質膜及び被処理触媒層と対極触媒層の陽イオン交換樹脂を湿潤状態に保持することが好ましい。被処理触媒層に流通させる酸化剤ガスのみを加湿する場合であっても、白金イオンとプロトンが充分に移動できる場合もあるが、通常は、酸化剤ガスと燃料ガスの両方を加湿することが好ましい。
上記(a)の方法と同様、本方法では、白金の金(貴金属)表面における析出によって、白金の露出表面積増大や選択的な位置への白金の配置という効果が得られると同時に、対極触媒層からの水素ガスの透過により、電解質膜の被処理触媒層側表面等で白金の析出が生じてしまうおそれがある。また、被処理触媒層に印加する電位の正確な制御が困難なため、白金の溶解と析出のコントロールが難しいという短所もあるが、電圧印加工程のために、作動時には不要な参照極を設けたり、電位変動外部手段を要したりしないという利点を有している。
電解質膜を挟んで対峙する各触媒層それぞれに酸化剤ガス又は燃料ガスを供給することによって、電極反応が起こり、被処理組成を有する触媒層に電位が印加されることになる。このような電極反応により生じる電位の調節は、反応ガスの流量、反応ガスの種類、反応ガスの圧力、加湿、温度等を調整し、電極反応の進行具合を調整することにより行うことができる。電極反応により生じる電位の上限は、電極反応によって異なってくるが、酸化剤ガスとして空気、燃料ガスとして水素ガスを用いた場合には、1.0V(vs.RHE)程度となる。
尚、上述したように、白金の析出電位及び溶解電位は、被処理組成を有する触媒層内の環境(流通ガスの種類、陽イオン交換樹脂の種類等)や被処理組成を有する触媒層に導入された白金の種類(純白金、白金合金)等によって異なってくるものである。
例えば、陽イオン交換樹脂としてパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、白金を純白金で導入した被処理組成を有する触媒層に、空気(相対湿度100%以上)を供給し、当該被処理組成を有する触媒層と対極をなす触媒層に水素ガス(相対湿度100%以上)を供給する場合、白金の析出電位は、通常、0.7〜1.0V(vs.可逆水素電極(RHE))の範囲内にある。
例えば、陽イオン交換樹脂としてパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、白金を純白金で導入した被処理組成を有する触媒層に、空気(相対湿度100%以上)を供給し、当該被処理組成を有する触媒層と対極をなす触媒層に水素ガス(相対湿度100%以上)を供給する場合、白金の析出電位は、通常、0.7〜1.0V(vs.可逆水素電極(RHE))の範囲内にある。
このとき、電位印加工程においては、0.7〜1.0Vの範囲を含む電位範囲で往復するように電位変動させることで、被処理組成を有する触媒層に白金の溶解電位を低電位側から高電位側へ通過するように変動する電位と白金の析出電位を高電位側から低電位側へ通過するように変動する電位を印加することができる。また、各触媒層間で電極反応を起こし、触媒層間の負荷変動を利用して被処理触媒層に変動電位を印加する場合、印加電位を0.4と1.0Vの間で変動させると、効率良く、白金を溶解・析出することができる。
電位の変動サイクル(白金を溶解状態から析出させる電位変動と白金を析出状態から溶解させる電位変動を1セットとし、1回と数える)は、印加する電位の大きさ、電位の変動幅、電位の掃引速度、被処理触媒層温度等によって異なってくるが、1サイクルにおいて、白金を溶解状態とする電位の印加時間及び白金を析出状態とする電位の印加時間が、それぞれ10秒程度のとき、通常、1〜100,000回程度でよく、20,000〜100,000回程度が好ましい。
電位の変動幅は、白金の溶解と析出の程度を左右する大きな要素であり、電位の振り幅が大きいほど白金の溶解と析出が効率よく進行し、電位印加工程を短時間で行うことができる。ゆえに、各部材へ悪影響を与えない範囲で電位の変動幅を大きくすることが好ましい。
電位印加工程において、電位が印加される構成部材の各材料の劣化、特に、白金や金を担持させる導電性材料として用いられる導電性炭素材料の劣化を防止するためには、印加電位の上限は1.0V程度とすることが好ましい。1.0Vを超えるような高電位では導電性炭素材料が腐食してしまうおそれがある。
また、印加電位の下限は0.05V程度、好ましくは0.2V程度とすることが好ましい。0.2V程度の低電位、特に0.05V程度の低電位になると、電解質膜内のプロトン(H+)が水素ガス(H2)なる場合がある。電解質膜内のプロトンから水素ガスが発生することにより、電解質膜表面で白金が析出したり、或いは、触媒層内に酸素が存在する場合には、酸素と水素とが反応し、燃焼反応による発熱を生じて構成材料の劣化を招くおそれがある。印加電位の下限を0.05V程度としても、プロトンから水素ガスが発生するのを充分防止することができるが、確実に防止するためには、0.2V程度とすることが好ましい。
上記したように、電位印加工程は、白金の溶解及び白金イオンの陽イオン交換樹脂内の移動がスムーズに行われるように、また、電解質膜及び電極の乾燥を防止するために、電解質膜を湿潤状態に維持しながら行われる。
電解質膜を湿潤状態に維持する方法は特に限定されず、例えば、電解質膜の湿潤状態を保持できる程度に加湿された加湿ガスを各触媒層に流通させる方法等が挙げられる。加湿ガスの加湿状態は、電解質膜を湿潤状態に維持できれば特に限定されないが、好ましくは、相対湿度が80%以上であり、特に好ましくは、相対湿度が100%である。
各触媒層に流通させる加湿ガスの種類及び組み合わせは、電位の印加を外部手段を用いて行う場合は、特に限定されず、上記(a)〜(c)の組み合わせ以外にも、例えば、空気、窒素ガス、水素ガス、酸素ガス等のガスを適宜組み合わせて各極に流通させてもよいし、両極に同じガスを流通させてもよい。一方、各極で電極反応を起こし、負荷変動により変動電位を印加する場合には、加湿ガスとして、上記したように酸化剤ガス、燃料ガス(還元剤ガス)を流通させることになる。
また、電位印加工程において、電解質膜及び各触媒層内の温度は、触媒層内の陽イオン交換樹脂及び電解質膜へのダメージを考慮して、通常、30〜90℃程度、好ましくは60〜80℃程度とする。
電位印加工程において、被処理組成を有する触媒層への均一な電位の印加が可能であることから、電位印加工程の前に、アノード側触媒層及びカソード側触媒層の電解質膜側とは反対側の面に、導電性多孔質体からなるガス拡散層を設けるガス拡散層配設工程を設けることが好ましい。電位印加工程において、被処理触媒層へ酸化剤ガス、対極触媒層へ燃料ガスを供給し、負荷変動により変動電位を印加する場合の各反応ガスや、加湿ガスを効率よく触媒層へ供給することができるという利点もある
尚、被処理組成を有する触媒層への均一な電位の印加という点では、電位印加工程において電位を印加する被処理組成を有する触媒層にのみ、ガス拡散層を設けてもよい。
尚、被処理組成を有する触媒層への均一な電位の印加という点では、電位印加工程において電位を印加する被処理組成を有する触媒層にのみ、ガス拡散層を設けてもよい。
導電性多孔質体としては、触媒層に効率良くガスを供給することができるガス拡散性、導電性、及びガス拡散層を構成する材料として要求される強度を有するもの、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等の炭素質多孔質体や、チタン、アルミニウム、銅、ニッケル、ニッケル−クロム合金、銅及びその合金、アルミ合金、亜鉛合金、鉛合金、チタン、ニオブ、タンタル、鉄、ステンレス等の金属から構成される金属メッシュ又は金属多孔質体等が挙げられる。導電性多孔質体の厚さは、80〜300μm程度であることが好ましい。
ガス拡散層は、上記したような導電性多孔質体の単層からなるものであってもよいが、触媒層に面する側に撥水層を設けたものを用いてもよい。撥水層は、通常、炭素粒子や炭素繊維等の導電性粉粒体、ポリテトラフルオロエチレン等の撥水性樹脂等を含む多孔質構造を有するものである。撥水層は、必ずしも必要なものではないが、触媒層及び電解質膜内の水分量を適度に保持しつつ、ガス拡散層の排水性を高めることができる上に、触媒層とガス拡散層間の電気的接触を改善することができるという利点がある。
撥水層を導電性多孔質体上に形成する方法は特に限定されない。例えば、炭素粒子等の導電性粉粒体と撥水性樹脂、及び必要に応じてその他の成分を、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール等の有機溶剤、水又はこれらの混合物等の溶剤と混合した撥水層インクを、導電性多孔質体の少なくとも触媒層に面する側に塗布し、その後、乾燥及び/又は焼成すればよい。
撥水層の形状は特に限定されず、例えば、導電性多孔質層の触媒層側の面全体を覆うような形状でもよいし、格子状等の所定パターンを有する形状でもよい。撥水層インクを導電性多孔質体に塗布する方法としては、例えば、スクリーン印刷法、スプレー法、ドクターブレード法、グラビア印刷法、ダイコート法等が挙げられる。
また、導電性多孔質体は、触媒層と面する側に、ポリテトラフルオロエチレン等の撥水性樹脂をバーコーター等によって含浸塗布することによって、触媒層内の水分がガス拡散層の外へ効率良く排出されるように加工してもよい。
ガス拡散層を触媒層の電解質膜側とは反対側の面に設ける方法は、特に限定されず、例えば、ガス拡散層を形成する導電性多孔質体に触媒層を設け、この触媒層を電解質膜側にして導電性多孔質体と電解質膜とを接合する方法や、電解質膜に設けられた触媒層上に導電性多孔質体を接合する方法等が挙げられる。
電位印加工程の前にガス拡散層を設けた場合、当該ガス拡散層を介して触媒層に電位を印加することになる。
電位印加工程の前にガス拡散層を設けた場合、当該ガス拡散層を介して触媒層に電位を印加することになる。
電位印加工程において、触媒層に均一に電位を印加することが可能になるという観点からは、触媒層形成工程の後であって電位印加工程の前に、アノード側触媒層及びカソード側触媒層が形成された電解質膜をセパレータで挟持した単セルを作製する単セル作製工程を設けることが好ましい。
セパレータは集電体として機能するものであり、導電性を有しているため、被処理組成を有する触媒層への均一な電位の印加を可能にする。セパレータとしては、一般的な固体高分子電解質型燃料電池に用いられているもの、例えば、炭素系材料からなるものや金属材料からなるもの等が挙げられる。ガス拡散層を設ける場合には、ガス拡散層の外側(電解質膜側とは反対側)にセパレータが設けられる。
電位印加工程の前にセパレータを設けた場合、当該セパレータを介して触媒層に電位を印加することになる。
電位印加工程の前にセパレータを設けた場合、当該セパレータを介して触媒層に電位を印加することになる。
さらに、上記単セル作製工程の後であって電位印加工程の前に、単セルを複数積層してスタックを作製するスタック作製工程を設けることが好ましい。スタックを構成する複数の単セルに同時に電位印加処理を施すことが可能となり、燃料電池の製造工程を短縮化することができるからである。
尚、本発明の製造方法において、電解質膜、導電性多孔質体(ガス拡散層)、基材の表面に触媒層ペーストや貴金属インク等を塗布する方法は特に限定されず、例えば、スプレー法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、グラビア印刷法、ダイコート法等が挙げられる。また、電解質膜、触媒層、ガス拡散層等の各層間の接合は、例えば、ホットプレス等によって行うことができる。
尚、電解質膜の各面に設けられる触媒層のうち、一方のみを本発明の製造方法により製造しても、触媒利用効率を向上させることは可能であるが、より触媒利用効率を高めるためには、アノード側触媒層及びカソード側触媒層の両方を本発明の方法により製造することが好ましい。
(実施例1〜5)
<触媒層ペーストの調製>
まず、白金を重量比で40%担持したカーボン粒子(商品名:C1−40、E−TEK製)5gと、金を重量比で40%担持したカーボン粒子(商品名:C7−40、E−TEK製)5gとを遊星ボールミルにより粉砕、混合した。ここに、陽イオン交換樹脂(パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂)を水とアルコール(エタノール)に分散させた分散溶液(商品名DE2020、Dupont製、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂含有)を加えて、混合し、触媒層ペーストを調製した。
<触媒層ペーストの調製>
まず、白金を重量比で40%担持したカーボン粒子(商品名:C1−40、E−TEK製)5gと、金を重量比で40%担持したカーボン粒子(商品名:C7−40、E−TEK製)5gとを遊星ボールミルにより粉砕、混合した。ここに、陽イオン交換樹脂(パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂)を水とアルコール(エタノール)に分散させた分散溶液(商品名DE2020、Dupont製、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂含有)を加えて、混合し、触媒層ペーストを調製した。
<膜−電極接合体の製造>
パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂膜(5cm×5cm、厚さ50μm、商品名ナフィオン、DuPont製)の両表面に、上記にて得られた触媒層ペーストを塗布、乾燥して被処理組成を有する触媒層(3.5cm×3.5cm)を形成し、触媒層−電解質膜−触媒層接合体を得た。このとき、各触媒層の白金担持量が0.26mg/cm2となるように触媒層ペーストを塗布した。
得られた触媒層−電解質膜−触媒層接合体を、カーボンクロス(厚み200μm、3.5cm×3.5cm、E−TEK製)で挟んだ状態で、ホットプレス(130℃、3MPa)して接合し、膜−電極接合体を得た。
パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂膜(5cm×5cm、厚さ50μm、商品名ナフィオン、DuPont製)の両表面に、上記にて得られた触媒層ペーストを塗布、乾燥して被処理組成を有する触媒層(3.5cm×3.5cm)を形成し、触媒層−電解質膜−触媒層接合体を得た。このとき、各触媒層の白金担持量が0.26mg/cm2となるように触媒層ペーストを塗布した。
得られた触媒層−電解質膜−触媒層接合体を、カーボンクロス(厚み200μm、3.5cm×3.5cm、E−TEK製)で挟んだ状態で、ホットプレス(130℃、3MPa)して接合し、膜−電極接合体を得た。
<電位の印加>
得られた膜−電極接合体の各電極に、それぞれ水素ガス(流量300mL/min、相対湿度100%)、空気(流量300mL/min、相対湿度100%)を供給しながら、開回路電圧:OCV−0.7V(vs.RHE)の電位変動を10秒毎に繰り返す処理を24時間(電位変動回数:約8640回、実施例1)、48時間(電位変動回数:約17280回、実施例2)、120時間(電位変動回数:約43200回、実施例3)、144時間(電位変動回数:約51840回、実施例4)、168時間(電位変動回数:約60480回、実施例5)行い、カーボン粒子に担持された金粒子の表面に白金を析出させた。
得られた膜−電極接合体の各電極に、それぞれ水素ガス(流量300mL/min、相対湿度100%)、空気(流量300mL/min、相対湿度100%)を供給しながら、開回路電圧:OCV−0.7V(vs.RHE)の電位変動を10秒毎に繰り返す処理を24時間(電位変動回数:約8640回、実施例1)、48時間(電位変動回数:約17280回、実施例2)、120時間(電位変動回数:約43200回、実施例3)、144時間(電位変動回数:約51840回、実施例4)、168時間(電位変動回数:約60480回、実施例5)行い、カーボン粒子に担持された金粒子の表面に白金を析出させた。
(比較例)
電位の印加を行わなかった以外は、実施例と同様にして膜−電極接合体を製造した。
電位の印加を行わなかった以外は、実施例と同様にして膜−電極接合体を製造した。
(発電性能の評価)
上記にて得られた実施例及び比較例の膜−電極接合体を、2枚のセパレータで挟持し、燃料電池評価用単セルを組立てた。この単セルに、燃料ガスとして加湿した水素ガス、酸化剤ガスとして加湿した空気ガスを供給し、以下の条件で発電試験を行った。
上記にて得られた実施例及び比較例の膜−電極接合体を、2枚のセパレータで挟持し、燃料電池評価用単セルを組立てた。この単セルに、燃料ガスとして加湿した水素ガス、酸化剤ガスとして加湿した空気ガスを供給し、以下の条件で発電試験を行った。
水素ガス:流量300mL/min、温度80℃、相対湿度100%
空気:流量300mL/min、温度80℃、相対湿度100%
電極面積:12.25cm2
セル温度:80℃
空気:流量300mL/min、温度80℃、相対湿度100%
電極面積:12.25cm2
セル温度:80℃
発電性能評価の結果を図3に示す。
図3からわかるように、電位の印加を行わなかった比較例(電位印加時間0h)の膜−電極接合体と比較して、変動電位の印加を繰り返し行った実施例1〜5(電位印加時間24〜168h)の膜−電極接合体は、発電性能に優れるものであった。白金の使用量は同じにもかかわらず、発電性能に差が生じたのは、上記のような電位を印加することによって、白金の利用効率が向上したためと考えられる。
また、実施例では、電位変動回数が多くなるほど、発電性能が向上した。これは、白金の溶解と析出を何度も繰り返すことによって、より電極反応が活発な場所へと白金が移動、析出したためと推測される。
図3からわかるように、電位の印加を行わなかった比較例(電位印加時間0h)の膜−電極接合体と比較して、変動電位の印加を繰り返し行った実施例1〜5(電位印加時間24〜168h)の膜−電極接合体は、発電性能に優れるものであった。白金の使用量は同じにもかかわらず、発電性能に差が生じたのは、上記のような電位を印加することによって、白金の利用効率が向上したためと考えられる。
また、実施例では、電位変動回数が多くなるほど、発電性能が向上した。これは、白金の溶解と析出を何度も繰り返すことによって、より電極反応が活発な場所へと白金が移動、析出したためと推測される。
1…固体高分子電解質膜
2…触媒層(2a:アノード側触媒層、2b:カソード側触媒層)
3…ガス拡散層(3a:アノード側ガス拡散層、3b:カソード側ガス拡散層)
4…電極(4a:アノード、4b:カソード)
5…膜・電極接合体
6…セパレータ(6a:アノード側セパレータ、6b:カソード側セパレータ)
7…流路(7a、7b)
8…白金(触媒活性物質)
9…金(貴金属)
10…カーボン粒子(導電性材料)
11…陽イオン交換樹脂
12…細孔
100…単セル
2…触媒層(2a:アノード側触媒層、2b:カソード側触媒層)
3…ガス拡散層(3a:アノード側ガス拡散層、3b:カソード側ガス拡散層)
4…電極(4a:アノード、4b:カソード)
5…膜・電極接合体
6…セパレータ(6a:アノード側セパレータ、6b:カソード側セパレータ)
7…流路(7a、7b)
8…白金(触媒活性物質)
9…金(貴金属)
10…カーボン粒子(導電性材料)
11…陽イオン交換樹脂
12…細孔
100…単セル
Claims (13)
- 電解質膜と、当該電解質膜の一方の面に設けられ、少なくともアノード側触媒層を有するアノードと、前記電解質膜の他方の面に設けられ、少なくともカソード側触媒層を有するカソードと、を備える燃料電池の製造方法であって、
前記電解質膜の一面側に、白金と、陽イオン交換樹脂と、貴金属(白金は除く)の少なくとも1種とを含む組成(以下、「被処理組成という」)を有するアノード側又はカソード側触媒層を形成し、該電解質膜の他面側に、被処理組成を有していても有していなくても良いカソード側又はアノード側触媒層を対極を構成するように形成する触媒層形成工程と、
前記アノード側触媒層及び前記カソード側触媒層を形成した電解質膜を湿潤状態に維持しながら、前記被処理組成を有するアノード側触媒層及び/又は前記被処理組成を有するカソード側触媒層に、(1)白金の溶解電位及び白金の析出電位を、高電位側から低電位側へ通過及び低電位側から高電位側へ通過するように変動する電位、或いは、(2)白金の溶解電位又は白金の析出電位を、高電位側から低電位側へ通過及び低電位側から高電位側へ通過するように変動する電位、或いは、(3)白金の溶解電位と白金の析出電位間を、高電位側から低電位側へ及び低電位側から高電位側へ変動する電位を印加することにより、白金の溶解と析出とを交互を生じさせ、白金の利用効率を向上させる電位印加工程と、
を含むことを特徴とする燃料電池の製造方法。 - 前記電位印加工程において、前記被処理組成を有するアノード側触媒層及び/又は前記被処理組成を有するカソード側触媒層に印加される変動電位が、外部の電位変動手段によって印加される、請求項1に記載の燃料電池の製造方法。
- 前記電位印加工程において、前記変動する電位が印加される前記被処理組成を有するアノード側触媒層又は前記被処理組成を有するカソード側触媒層に、前記電解質膜を保湿状態に維持できるように加湿された酸化剤ガス、当該被処理組成を有するアノード側又はカソード側触媒層と対極をなす被処理組成を有していても有していなくても良いカソード側又はアノード側触媒層に、前記電解質膜を保湿状態に維持できるように加湿された燃料ガスを流通させることによって、アノード側触媒層及びカソード側触媒層において電極反応を起こし、アノード側触媒層及びカソード側触媒層間の負荷を変動させることによって変動電位を印加する、請求項1又は2に記載の燃料電池の製造方法。
- 前記電位印加工程において、印加電位の上限が、可逆水素電極(RHE)を基準として1.0Vである、請求項1乃至3のいずれかに記載の燃料電池の製造方法。
- 前記電位印加工程において、印加電位の下限が、可逆水素電極(RHE)を基準として0.2Vである、請求項1乃至4のいずれかに記載の燃料電池の製造方法。
- 前記電位印加工程の前に、前記アノード側触媒層及び前記カソード側触媒層の電解質膜側とは反対側の面に、導電性多孔質体からなるアノード側ガス拡散層及びカソード側ガス拡散層を設けるガス拡散層配設工程を含む、請求項1乃至5のいずれかに記載の燃料電池の製造方法。
- 前記触媒層形成工程後であって前記電位印加工程前に、前記アノード側触媒層及び前記カソード側触媒層を形成した電解質膜をセパレータで挟持した単セルを作製する単セル作製工程を含む、請求項1乃至6のいずれかに記載の燃料電池の製造方法。
- 前記単セル作製工程後であって前記電位印加工程前に、前記単セルを複数積層してスタックを作製するスタック作製工程を含む、請求項7に記載の燃料電池の製造方法。
- 前記電位印加工程において、印加電位の変動回数が1〜100,000回である、請求項1乃至8のいずれかに記載の燃料電池の製造方法。
- 前記電位印加工程において、前記電解質膜、前記アノード側触媒層及びカソード側触媒層の温度が30〜90℃である、請求項1乃至9のいずれかに記載の燃料電池の製造方法。
- 前記電位印加工程において、各触媒層に相対湿度100%以上の加湿ガスを流通させる、請求項1乃至10のいずれかに記載の燃料電池の製造方法。
- 前記触媒層形成工程において、前記白金と、前記貴金属と、前記陽イオン交換樹脂とを含む触媒層ペーストを用いて前記被処理組成を有するアノード側触媒層及び/又は前記被処理組成を有するカソード側触媒層を形成する、請求項1乃至11のいずれかに記載の燃料電池の製造方法。
- 前記被処理組成を有するアノード側触媒層及び/又は前記被処理組成を有するカソード側触媒層において、前記白金及び前記貴金属が導電性材料に担持されている、請求項1乃至12のいずれかに記載の燃料電池の製造方法。
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JP2007249635A JP2009081053A (ja) | 2007-09-26 | 2007-09-26 | 燃料電池の製造方法 |
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JP2019053901A (ja) * | 2017-09-15 | 2019-04-04 | 日産自動車株式会社 | 電極触媒の製造方法 |
-
2007
- 2007-09-26 JP JP2007249635A patent/JP2009081053A/ja active Pending
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