JP2009073155A - 印刷版材料、平版印刷版の作製方法および平版印刷版 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、露光可視画性、現像可視画性に優れ、かつ露光後の取り扱いで、可視画像が変化しない印刷版材料を提供することにある。
【解決手段】支持体上に感熱画像形成層を有する印刷版材料において、該感熱画像形成層が、粒子径が0.1μm以上、2.0μm以下であり、内部に発泡性を有する樹脂粒子Aを含有することを特徴とする印刷版材料。
【選択図】なし

Description

本発明は印刷版材料に関し、特にコンピューター・トゥー・プレート(CTP)方式により画像形成が可能な印刷版材料に関する。
現在、印刷の分野においては、印刷画像データのデジタル化に伴い、CTP方式による印刷が行われるようになってきているが、この印刷においては、安価で取り扱いが容易で従来の所謂PS版と同等の印刷適性を有したCTP方式用印刷版材料が求められている。
特に近年、特別な薬剤(例えばアルカリ、酸、溶媒など)を含む処理液による現像処理を必要とせず、従来の印刷機に適用可能である印刷版材料が求められており、例えば、全く現像処理を必要としない相変化タイプの印刷版材料、水もしくは水を主体とした実質的に中性の処理液で処理をする印刷版材料、印刷機上で印刷の初期段階で現像処理を行い特に現像工程を必要としない印刷版材料などの、ケミカルフリータイプ印刷版材料やプロセスレスタイプ印刷版材料と呼ばれる印刷版材料が知られている。
一方、これらのCTP方式においても従来のPS版と同様に所謂検版という作業が、現状のワークフローにおいては必要とされ、また印刷機に取り付ける際に必要なパンチング(取り付け用の穴あけ)を現像後に行う場合には、トンボ画像を専用装置で読み取って正確な位置調整を行うため、装置で読み取り可能なように画像部と非画像部とで、反射濃度に差があることが必要とされる場合があり、所謂現像可視画性をもつことが必要とされてる。
又、全く現像処理を必要としない印刷版材料や印刷機上で現像を行うプロセスレスタイプの印刷版材料においては、印刷機に取り付ける際に必要なパンチングを露光後に行うため、所謂露光可視画性をもつことが必要とされている。
プロセスレスタイプの印刷版材料の画像形成に主として用いられるのは近赤外〜赤外線の波長を有するサーマルレーザー記録方式である。この方式で画像形成可能なサーマルプロセスレスプレートには、大きく分けて、後述するアブレーションタイプと熱融着画像層機上現像タイプ、および相変化タイプが存在する。
アブレーションタイプとしては、例えば、特開平8−507727号、同6−186750号、同6−199064号、同7−314934号、同10−58636号、同10−244773号に記載されているものが挙げられる。
これらは、例えば、基材上に親水性層と親油性層とをいずれかの層を表層として積層したものである。表層が親水性層であれば、画像様に露光し、親水性層をアブレートさせて画像様に除去して親油性層を露出することで画像部を形成することができる。ただし、アブレートした表層の飛散物による露光装置内部の汚染が問題となるため、親水性層上にさらに水溶性の保護層を設けてアブレートした表層の飛散を防止し、印刷機上で保護層とともにアブレートした表層を除去する方式も提案されている。
アブレーションタイプの場合、表層とその下の層との色相を異なるものとしておくことで露光可視画性を付与することが可能であるが、そのためには表層を完全にアブレートさせて除去する必要がある。これは、例えば露光装置内にアブレーション飛散物を吸引除去するようなクリーナーを設置することで達成は可能であるが装置コストが大幅に上がるという問題点がある。
上述のような保護層を設けたタイプでは、アブレーション飛散物が残存するため、たとえ表層とその下の層との色相を異なるものとしておいたとしても良好な露光可視画性は得ることは難しい。
又、上記を解決する手段として、「印刷機上で除去可能な親水性オーバーコート層に、露光によって光学濃度を変化させることのできるシアニン系赤外線吸収色素を20質量%以上含有させる」方法が開示されている(特許文献1参照。)。
この方法によれば確かに良好な露光可視画性が得られるが、印刷機上で除去される層中に多量の色素を含有させ、露光によって色素をさらに発色させるにしろ退色させるにしろ、露光部もしくは未露光部のいずれかは発色濃度の高い層となるため、機上現像による印刷機汚染は避けるのは難しい。
一方、熱融着画像層機上現像タイプとしては、特許2938397号や特許2938397号に開示されているような、親水性層もしくはアルミ砂目上に画像形成層に熱可塑性微粒子と水溶性の結合剤とを用いたものが挙げられる。
このタイプで露光可視画性を付与するには、赤外線吸収色素の露光退色を利用したものが挙げられるが、このような色素を画像形成層に添加した場合、未露光部と露光部との色差を大きくして露光可視画性を向上させることは、即ち未露光部の着色濃度を上げることになり、未露光部の機上現像時の印刷機汚染が大きくなる。(特許文献3参照。)。
また、相変化タイプとしては、印刷時に除去されない親水性層中に、疎水化前駆体粒子を含有させ、露光部を親水性から親油性へと相変化させるというものが挙げられる。
このタイプで露光可視画性を付与するには、上述のような赤外線吸収色素の露光退色を利用したものが挙げられる。しかし、親水性層の親水性を維持するためには含有させる赤外線吸収色素も親水性、つまりは水溶性のものを使用することが好ましいが、この場合は印刷中に色素が湿し水中に溶出する場合があり、上記同様の印刷機汚染が多くなる。
一方で、色素の溶出がないように非水溶性の色素を用いると、親水性層の親水性が低下し、地汚れ等の問題が生じる。
又、印刷機上で現像可能な印刷版材料として、画像形成層中にロイコ色素とその顕色剤といったような感熱発色する素材を含有させ、露光部、即ち親油性の画像部のみを発色させる印刷版材料が知られている(特許文献2参照)。
この印刷版材料では、印刷機上で除去される非画像部の画像形成層は比較的着色濃度が低いため、露光退色を利用する方法よりも印刷機汚染(色濁り)は低減するが、発色した画像部にはやはり部分的に耐水性が低い領域が残存することは避けられず、発色画像部による印刷機汚染(色濁り)が生ずることがあったり、印刷枚数が多くなると小点の再現性が悪くなる場合があった。
また、本発明者は、上記課題を解決すべく、親水性表面を有する基材上に画像形成層を有する印刷版材料において、該親水性表面の反射濃度が1.0以上であり、該画像形成層の反射濃度が該親水性表面の反射濃度より0.2以上低いことを特徴とする印刷版材料を提案している(特許文献3参照)。
これは、濃色を呈した親水性層上に、白色顔料を含有する白色画像形成層を積層して親水性層の濃色を隠蔽印刷版材料である。白色顔料として特定粒径の熱溶融性ワックス粒子を用い、赤外線露光された画像部の熱溶融性粒子を溶融・透明化させて濃色親水性層を視認可能とすることで、白色非画像部とのコントラストで可視画像を得るものである。この態様においても良好な露光可視画が得られるが、熱溶融性ワックス粒子は圧力によってもつぶれて透明化するため、スクラッチ傷等が見えやすかった。スクラッチ傷がトンボ部分や文字画像部分と重なった場合には、パンチ精度、検版性が充分でない場合があった。
特許文献3には、ケミカルフリータイプの態様として、白色顔料として中空粒子を用いた態様も提案している。例えば中空の架橋樹脂粒子を用いた場合、粒子の強度が高いため、圧力によってもつぶれることがなく、スクラッチ傷等が見えやすくなるといった問題はないが、中空の架橋樹脂粒子は赤外線露光で溶融・透明化する機能は持たないため、露光可視画を得ることはできない(中性現像液での現像後には良好な可視画像が得られる)。
このように、従来の技術では、プロセスレスCTPにおいて、十分な露光可視画性を付与し、かつ、露光後の取り扱いでの可視画像変化を防止することが非常に困難であった。
特開2002−205466号公報 特開2000−225780号公報 特開2006−3783号公報
本発明の目的は、露光可視画性、現像可視画性に優れ、かつ露光後の取り扱いで、可視画像が変化しない印刷版材料を提供することにある。
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
1.支持体上に感熱画像形成層を有する印刷版材料において、該感熱画像形成層が、粒子径が0.1μm以上、2.0μm以下であり、内部に発泡性を有する樹脂粒子Aを含有することを特徴とする印刷版材料。
2.前記樹脂粒子Aが、コア部及びシェル部を有するコアシェル構造を有し、該コア部が発泡剤を含有することを特徴とする前記1に記載の印刷版材料。
3.前記発泡剤が下記(B)〜(D)から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする前記2に記載の印刷版材料。
(B)沸点が30〜150℃の範囲である炭化水素化合物
(C)昇華性化合物
(D)熱分解性化合物
4.前記支持体の反射濃度が0.7〜2.5の範囲であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の印刷版材料。
5.前記1〜4のいずれか1項に記載の印刷版材料を画像露光し、該画像露光による未露光部の感熱画像形成層を、機上現像により除去して平版印刷版を作製することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
6.前記5に記載の平版印刷版の作製方法により作製されたことを特徴とする平版印刷版。
本発明の上記構成により、露光可視画性、現像可視画性に優れ、かつ露光後の取り扱いで、可視画像が変化しない印刷版材料が提供できる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明は、支持体上に感熱画像形成層を有する印刷版材料において、該感熱画像形成層が、粒子径が0.1μm以上、2.0μm以下であり、内部に発泡性を有する樹脂粒子Aを含有することを特徴とする。
本発明においては、特に感熱画像形成層に内部に発泡性を有する樹脂粒子を含有させることで、露光可視画性に優れ、かつ露光後の取り扱いで、可視画像が変化しない印刷版材料が得られる。
(樹脂粒子A)
本発明に係る樹脂粒子Aは、粒子径が0.1μm〜2.0μmで、内部に発泡性を有する樹脂粒子である。
内部に発泡性を有する樹脂粒子とは、画像露光により発生した熱により樹脂の粒子内に気泡(空隙)を生ずる樹脂の粒子である。
樹脂粒子内に生ずる気泡としては、組成的に単一であっても、複数の気泡であってもよい。
樹脂粒子の内側に発泡剤を含有させることにより、樹脂粒子内に気泡を生じさせることができる。樹脂粒子内に気泡が生ずることにより、画像形成層の光透過性、光散乱性が変化し可視画像を形成することができる。
発泡剤を含有するとは、樹脂粒子が、発泡剤を樹脂粒子の0.1質量%以上含有することを意味する。発泡剤は、可視画性、耐スクラッチ性(こすられた部分の画像形成層の現像性が低下して汚れとなるのを防ぐ)の面から樹脂粒子の0.1〜10質量%含有されていることが好ましく、0.5〜5質量%含有されていることがより好ましい。
本発明においては、樹脂粒子の内側に気泡が発生するのみで、気泡は樹脂粒子の外側の成分とは接触せず、樹脂粒子の表面が樹脂粒子の外側の成分と接触している。このことで、可視画性を良好にしつつ、露光後の取り扱いで、可視画像が変化しない印刷版材料が得られると推測される。
樹脂粒子の内側に発泡剤を含有させる方法としては、樹脂粒子をコア部およびシェル部を有するコアシェル構造とし、コア部に発泡剤を含有させる方法が好ましく用いられる。
この場合、シェル部を親水性樹脂で構成することが、機上現像性、水現像性の面から特に好ましい態様である。
発泡剤を樹脂粒子中に含有させる方法としては、公知の乳化重合法、コアシェル乳化重合法により作製することができ、例えば特開平7−316242号、特開平9−43893号、特開2003−201306号に記載されている方法を好ましく用いることができる。
樹脂粒子の樹脂としては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂が好ましく用いられる。
アクリル系樹脂は、構成単位として(メタ)アクリル酸またはそのエステルをモノマー単位として含む重合体であり、スチレン系樹脂は、スチレンまたはその誘導体をモノマー単位として含有する重合体である。
本発明に用いられる樹脂粒子としては、表面にカルボキシル基およびまたは、アマイド基を有することが好ましく、特にコアシェル構造を有し、シェルが、カルボキシル基を有する重合性モノマーとアマイド基を有する重合性モノマーとを用いて形成された樹脂粒子であることがより好ましい。
カルボキシル基を有する重合性モノマーは、カルボキシル基を有する重合性の単量体である。カルボキシル基を有する重合性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられ、これらが好ましく用いられる。カルボキシル基を有する重合性モノマー単位のポリマー粒子に対する含有量としては、粒子全体の1〜15質量%であることが好ましい。
アマイド基を有する重合性モノマーとしては、N−イソプロピルプロペンアマイド、N,N−ジメチルプロペンアマイド、N,N’−メチレンジアクリルアマイド、N−メチロールアクリルアマイド、ダイアセトンアクリルアマイド、ダイアセトンメタクリルアマイド等を挙げることができるがこれに限られるものではない。
特にダイアセトンアクリルアマイド、ダイアセトンメタクリルアマイドを用いることが好ましい。アマイド基を有する重合性モノマー単位のポリマー粒子に対する含有量としては、粒子全体の1〜15質量%であることが好ましい。
その他の重合性モノマーとしては、公知のものを用いることができる。たとえば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチレンオキサイド構造を含むモノマー等を好ましく用いることができる。
上記樹脂粒子は公知の乳化重合法、コアシェル乳化重合法により作製することができる。例えば、特開平7−316242号、特開平9−43893号、特開2003−201306号に記載されている方法を好ましく用いることができる。
本発明に係る樹脂粒子AのTgとしては、70℃〜150℃が好ましく、特に75℃〜110℃であることが好ましい。
発泡剤をアクリルモノマーやスチレンモノマーと混合して、樹脂を重合により合成することで、粒子の内側に発泡剤を含有した状態の樹脂粒子を得ることができる。
(発泡剤)
本発明に係る発泡剤は、画像露光時に発生した熱で気泡を発生し得るものであり、下記の(B)〜(D)のいずれかであることが好ましい。
(B)沸点が30〜150℃の範囲にある炭化水素化合物
(C)昇華性化合物
(D)熱分解性化合物
また、発泡剤は樹脂粒子を構成する樹脂との相溶性を有していることが好ましい。
沸点が30〜150℃の範囲にある炭化水素化合物としては、例えば、イソペンタン、ネオペンタン等を挙げることができる。
本発明に係る昇華性化合物とは、常温で固体であり、かつ、融点以下の温度で気化する化合物をいい、例えば、ナフタレン、パラジクロロベンゼン等を挙げることができる。
本発明に係る熱分解性化合物とは、50〜200℃の範囲の熱で分解して気体を発生させる化合物をいい、本発明においては、一般的な熱重合開始剤を熱分解性化合物として用いることができる。
熱分解性化合物としては、例えばアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等の樹脂粒子の乳化重合に用いられる重合開始剤を挙げることができる。これらを用いた場合は、重合後もこれらを粒子内に残存させる条件で重合させることで熱分解性化合物を内包する粒子とすることができる。
本発明においては、粒子の重合に用いる重合開始剤よりも、より高温で分解する熱分解性化合物を用いることが好ましい。具体的には、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3,2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、イソブチロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレート、ビス−t−ブチルパーオキシイソフタレート等が挙げられる。
上記の中でも、発泡剤としては、保存安定性、感度の面から(B)沸点が30〜150℃の範囲にある炭化水素化合物を用いることが好ましい態様である。
本発明の樹脂粒子Aの粒子径は0.1〜2.0μmであるが、0.1μm未満であると可視画性が不充分であり、2.0μmを超えると感度の低下が大きい。
粒子径は、走査型電子顕微鏡で観察した際の粒子の長径(最大径)の、粒子50個についての平均値をいう。
樹脂粒子Aの感熱画像形成層中の含有量としては、感熱画像形成層に対して、5質量%〜90質量%が好ましく、特に20質量%〜70質量%が好ましい。
(感熱画像形成層)
本発明に係る感熱画像形成層は、画像様加熱により画像を形成し得る層であり、加熱の方法としては、サーマルヘッドなどのように画像様に熱源を接触させる方法、レーザーを画像様に照射する方法があるが、特にレーザーにより画像露光する方法が好ましい。
レーザーにより画像露光するに適した感熱画像形成層は、光熱変換剤を含むことが好ましく、さらに熱可塑性物質、水溶性化合物、pH調整剤、界面活性剤などを含むことが好ましい態様である。
(光熱変換剤)
光熱変換剤は、露光光を熱に変換し画像形成層に画像を形成し得る素材であり、光熱変換剤としては下記のような色素、顔料を挙げることができる。
色素としては、一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
また、特開平11−240270号、特開平11−265062号、特開2000−309174号、特開2002−49147号、特開2001−162965号、特開2002−144750号、特開2001−219667号に記載の化合物も好ましく用いることができる。
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。
カーボンとしては特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
グラファイトとしては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
金属としては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。
(熱可塑性化合物)
感熱画像形成層は熱可塑性化合物を熱可塑性粒子として、粒子の形態で含むのが好ましい。
熱溶融性素材あるいは熱融着性素材を熱溶融性粒子あるいは熱融着性粒子として粒子の状態で、本発明に係る併用して用いることができる。
上記熱溶融性粒子は、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された粒子である。物性としては、軟化点40℃以上120℃以下、融点60℃以上150℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上100℃以下、融点60℃以上120℃以下であることが更に好ましい。融点が60℃未満では保存性が問題であり、融点が300℃よりも高い場合はインク着肉感度が低下する。
使用可能な素材としては、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800から10000程度のものである。又、乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。
更には、軟化点を下げたり作業性を向上させるためにこれらのワックスにステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド又はこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。又、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
これらの中でもポリエチレン、マイクロクリスタリン、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。又、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
又、熱溶融性粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は機上現像性、解像度などの面より、0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。
又、熱溶融性粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。
被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
本発明の感熱画像形成層は、熱溶融性粒子をマイクロカプセル化して含有するのが好ましい態様である。
層中の熱溶融性粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
本発明に用いられる熱融着性粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体粒子が挙げられ、高分子重合体微粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体粒子の分解温度より低いことが好ましい。高分子重合体の重量平均分子量(Mw)は10、000〜1、000、000の範囲であることが好ましい。
高分子重合体粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
高分子重合体粒子は乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の何れの方法で重合された高分子重合体からなるものでもよい。溶液重合法又は気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水又は水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。又、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。
又、熱融着性粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は機上現像性、解像度などの面から0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。
又、熱融着性粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。
被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
本発明の感熱画像形成層は、熱融着性粒子をマイクロカプセル化して含有するのが特に好ましい態様である。
マイクロカプセルとしては、例えば特開2002−2135号や特開2002−19317号に記載されている疎水性素材を内包するマイクロカプセルを挙げることができる。
マイクロカプセルは平均径で0.1〜10μmであることが好ましく、0.3〜5μmであることがより好ましく、0.5〜3μmであることがさらに好ましい。
マイクロカプセルの壁の厚さは径の1/100〜1/5であることが好ましく、1/50〜1/10であることがより好ましい。
マイクロカプセルの含有量は感熱画像形成層全体の5〜100質量%であり、20〜95質量%であることが好ましく、40〜90質量%であることがさらに好ましい。
マイクロカプセルの壁材となる素材、およびマイクロカプセルの製造方法は公知の素材および方法を用いることができる。たとえば、「新版マイクロカプセルその製法・性質・応用」(近藤保、小石真純著/三共出版株式会社発行)に記載されているか、引用されている文献に記載されている公知の素材および方法を用いることができる。
光熱変換剤は、露光光を熱に変換し画像形成層に画像を形成し得る素材であり、光熱変換剤としては下記のような色素、顔料を挙げることができる。
色素としては、一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
また、特開平11−240270号、特開平11−265062号、特開2000−309174号、特開2002−49147号、特開2001−162965号、特開2002−144750号、特開2001−219667号に記載の化合物も好ましく用いることができる。
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。
カーボンとしては特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
グラファイトとしては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
金属としては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。
本発明に係る画像形成層は水溶性化合物を含有することが好ましい態様である。
水溶性化合物は、25℃の水100gに0.1g以上溶解する化合物をいい、好ましくは25℃の水100gに1g以上溶解する化合物である。
画像形成層中の水溶性化合物の含有量は画像形成層に対して、機上現像性の面から1〜40質量%であり、5〜30質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましい。
(水溶性化合物)
水溶性化合物の具体例としては、下記を挙げることができるが、これに限られるものではない。
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキシ類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンモノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、テトラエチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩、リン酸塩(リン酸三Na、リン酸水素二Na、リン酸二水素Na、リン酸グアニジン)、炭酸塩(炭酸Na、炭酸グアニジン)、その他水溶性の有機塩、無機塩。糖類(単糖、オリゴ糖等)、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸塩等の水溶性ポリマーが挙げられる。また、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス等の水分散性ラテックスを挙げることができる。
また感熱画像形成層は、pH調整のための酸(リン酸、酢酸等)またはアルカリ(水酸化ナトリウム、ケイ酸塩、リン酸塩等)を含有していても良い。
感熱画像形成層の付き量としては、可視画性、感度の面から0.1〜3.0g/m2であることが好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.5g/m2である。
本発明に係る画像形成層は、機上現像可能または水現像可能な画像形成層であることが好ましい態様である。
機上現像可能な画像形成層とは、画像露光後特に現像工程を経ることなく、印刷工程に供した時点で、即ち印刷準備段階で湿し水、または湿し水と印刷インクにより、印刷時に非画像部となる部分の画像形成層が除去されて、印刷可能な画像が形成され得る画像形成層のことをいう。
(支持体)
本発明に係る支持体は、親水性表面を有する基材であることが好ましい。
親水性表面を有する基材は、印刷時、感熱画像形成層が除去された部分が水受容性となり非画像部となり得る表面を有する基材であり、基材表面を親水化処理し、親水性の表面層を有する基材、親水性物質を含む親水性層を設けた基材を用いることができる。
基材としては、表面形状が本発明で規定する範囲にあれば、印刷版の基板として使用される公知の材料を使用することができ、例えば、金属板、プラスチックフィルム、ポリオレフィン等で処理された紙、上記材料を適宜貼り合わせた複合基材等が挙げられる。
基材の厚さとしては、印刷機に取り付け可能であれば特に制限されるものではないが、50〜500μmのものが一般的に取り扱いやすい。
基材としては、基材表面を親水化処理した金属板が好ましく用いられる。
金属板としては、鉄、ステンレス、アルミニウム等が挙げられるが、本発明においては、比重と剛性との関係から、特にアルミニウムまたはアルミニウム合金(以下両者含めてアルミニウム板と称する)が好ましく、加えて、公知の粗面化処理、陽極酸化処理、表面親水化処理のいずれかの処理がなされたもの(所謂アルミ砂目板)がより好ましい。
アルミ砂目板としては、表面形状が本発明で規定する表面特性(Ra、A2)にあれば、どのような方法によって製造してもかまわないが、本発明で規定する表面形状が得られる製造方法のひとつとして、特開平10−869号公報に開示されている方法を挙げることができる。ここに示された製造方法にしたがって、適切な電解粗面化条件を選択することで、A2の値を1〜10の範囲とすることができる。
基材として用いるアルミニウム合金としては、種々のものが使用でき、例えば、珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムの合金が用いられる。
基材として用いられるアルミニウム板は、粗面化(砂目立て処理)するに先立って表面の圧延油を除去するために脱脂処理を施すことが好ましい。脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケシロン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理等が用いられる。又、脱脂処理には、苛性ソーダ等のアルカリの水溶液を用いることもできる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、上記脱脂処理のみでは除去できない汚れや酸化皮膜も除去することができる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、基材の表面にはスマットが生成するので、この場合には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、或いはそれらの混酸に浸漬しデスマット処理を施すことが好ましい。粗面化の方法としては、例えば、機械的方法、電解によりエッチングする方法が挙げられる。
用いられる機械的粗面化法は特に限定されるものではないが、ブラシ研磨法、ホーニング研磨法が好ましい。ブラシ研磨法による粗面化は、例えば、直径0.2〜0.8mmのブラシ毛を使用した回転ブラシを回転し、基材表面に、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させたスラリーを供給しながら、ブラシを押し付けて行うことができる。ホーニング研磨による粗面化は、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させ、ノズルより圧力をかけ射出し、基材表面に斜めから衝突させて粗面化を行うことができる。又、例えば、基材表面に、粒径10〜100μmの研磨剤粒子を、100〜200μmの間隔で、2.5×103〜10×103個/cm2の密度で存在するように塗布したシートを張り合わせ、圧力をかけてシートの粗面パターンを転写することにより粗面化を行うこともできる。
上記の機械的粗面化法で粗面化した後、基材の表面に食い込んだ研磨剤、形成されたアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。アルカリ水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
電気化学的粗面化法も特に限定されるものではないが、酸性電解液中で電気化学的に粗面化を行う方法が好ましい。酸性電解液は、電気化学的粗面化法に通常用いられる酸性電解液を使用することができるが、塩酸系または硝酸系電解液を用いるのが好ましい。電気化学的粗面化方法については、例えば、特公昭48−28123号公報、英国特許第896,563号公報、特開昭53−67507号公報に記載されている方法を用いることができる。この粗面化法は、一般には、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、10〜30ボルトの範囲から選ぶのが好ましい。電流密度は、10〜200A/dm2の範囲を用いることが出来るが、50〜150A/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気量は、100〜5000C/dm2の範囲を用いることができるが、100〜2000C/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。この粗面化法を行う温度は、10〜50℃の範囲を用いることが出来るが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。
電解液として硝酸系電解液を用いて電気化学的粗面化を行う場合、一般には、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、10〜30ボルトの範囲から選ぶのが好ましい。電流密度は、10〜200A/dm2の範囲を用いることができるが、20〜100A/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気量は、100〜5000C/dm2の範囲を用いることができるが、100〜2000C/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気化学的粗面化法を行う温度は、10〜50℃の範囲を用いることができるが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。電解液における硝酸濃度は0.1〜5質量%が好ましい。電解液には、必要に応じて、硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、しゅう酸等を加えることができる。
電解液として塩酸系電解液を用いる場合、一般には、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、2〜30ボルトの範囲から選ぶのが好ましい。電流密度は、10〜200A/dm2の範囲を用いることができるが、50〜150A/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気量は、100〜5000C/dm2の範囲を用いることができるが、100〜2000C/dm2、更には200〜1000C/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気化学的粗面化法を行う温度は、10〜50℃の範囲を用いることができるが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。電解液における塩酸濃度は0.1〜5質量%が好ましい。
上記の電気化学的粗面化法で粗面化した後、表面のアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。
これらの中でもアルカリの水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。又、アルカリの水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
機械的粗面化処理法、電気化学的粗面化法はそれぞれ単独で用いて粗面化してもよいし、又、機械的粗面化処理法に次いで電気化学的粗面化法を行って粗面化してもよい。
粗面化処理の次には、陽極酸化処理を行うことが好ましい。本発明において用いることができる陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。陽極酸化処理を行うことにより、基材上には酸化皮膜が形成される。該陽極酸化処理には、硫酸及び/又は燐酸等を10〜50%の濃度で含む水溶液を電解液として、電流密度1〜10A/dm2で電解する方法が好ましく用いられるが、他に、米国特許第1,412,768号公報に記載されている硫酸中で高電流密度で電解する方法や、米国特許第3,511,661号公報に記載されている燐酸を用いて電解する方法、クロム酸、シュウ酸、マロン酸等を一種又は二種以上含む溶液を用いる方法等が挙げられる。形成された陽極酸化被覆量は、1〜50mg/dm2が適当であり、好ましくは10〜40mg/dm2である。陽極酸化被覆量は、例えばアルミニウム板を燐酸クロム酸溶液(燐酸85%液:35ml、酸化クロム(IV):20gを1Lの水に溶解して作製)に浸漬し、酸化被膜を溶解し、板の被覆溶解前後の質量変化測定等から求められる。
陽極酸化処理された基材は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。これら封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、珪酸ソーダ処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等公知の方法を用いて行うことができる。
更に、これらの処理を行った後に、親水化処理として、水溶性の樹脂、例えば、ポリビニルホスホン酸、スルホン酸基を側鎖に有する重合体および共重合体、ポリアクリル酸、水溶性金属塩(例えばホウ酸亜鉛)もしくは、黄色染料、アミン塩等を下塗りしたものも好適である。更に、特開平5−304358号公報に開示されているようなラジカルによって付加反応を起し得る官能基を共有結合させたゾル−ゲル処理基板も好適に用いられる。
基材として用いられるプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類等のフィルムを挙げることができる。
本発明では、これらのプラスチックフィルムのうち、特にポリエチレンテレフタレート(以降、略してPETという場合がある)、ポリエチレンナフタレート(以降、PENと略すことがある)などのポリエステルフィルムが基材として好ましく用いられる。
さらに特開平10−10676号に記載の方法で得られた120℃30秒での熱寸法変化率が0.001%以上0.04%以下の支持体を用いることが好ましい。
好ましいポリエステルフィルムとしては、未延伸ポリエステルフィルム、一軸延伸ポリエステルフィルムまたは二軸延伸ポリエステルフィルムである。
このうちフィルムの押出し方向(縦方向)に一軸延伸した縦延伸ポリエステルフィルムが特に好ましい。
(基材への下引き層塗布)
ポリエステルフィルム基材においては、各種の機能を持たせるために易接着処理や下引き層塗布を行うことができる。
易接着処理としては、コロナ放電処理や火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。
下引き層としては、ゼラチンやラテックスを含む層等をポリエステルフィルム支持体上に設けること等が好ましい。その中でも特開平7−191433号段落番号0044〜0116に記載の帯電防止下塗り層が好ましく用いられる。又特開平7−20596号公報段落番号0031〜0073に記載の導電性ポリマー含有層や特開平7−20596号公報段落番号0074〜0081に記載の金属酸化物含有層のような導電性層を設けることが好ましい。導電性層はポリエステルフィルム支持体上であればいずれの側に塗設されてもよいが、好ましくは支持体に対し画像形成機能層の反対側に塗設するのが好ましい。この導電性層を設けると帯電性が改良されてゴミなどの付着が減少し、印刷時の白抜け故障などが大幅に減少する。
(親水性層)
本発明においては、基材として上記のようなプラスチックフィルムを用いる場合には、基材上に親水性層を設けて親水性表面を有する基材とする。
この場合、親水性層は、多孔質構造を有することが好ましい。
多孔質構造を有する親水性層を形成するためには、下記に記載の親水性マトリクスを形成する素材が好ましく用いられる。
親水性マトリクスを形成する素材としては、金属酸化物が好ましい。
(金属酸化物)
金属酸化物としては、金属酸化物微粒子を含むことが好ましく、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。該金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良く、平均粒径としては、3〜100nmの範囲が好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。又、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
上記金属酸化物微粒子は、その造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
(コロイダルシリカ)
中でも、コロイダルシリカが特に好ましく使用できる。コロイダルシリカは、比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、良好な強度を得ることができる。コロイダルシリカとしては、後述するネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、更に、コロイダルシリカはコロイド溶液としてアルカリ性を呈することが好ましい。
ネックレス状コロイダルシリカとは、一次粒子径がnmのオーダーである球状シリカの水分散系の総称であり、一次粒粒子径が10〜50nmの球状コロイダルシリカが50〜400nmの長さに結合した「パールネックレス状」のコロイダルシリカを意味する。
パールネックレス状(即ち真珠ネックレス状)とは、コロイダルシリカのシリカ粒子が連なって結合した状態のイメージが、真珠ネックレスの様な形状をしていることを意味している。
本発明において、親水性層マトリクス構造の多孔質化材として、粒径が1μm未満の多孔質金属酸化物粒子を含有することができる。
(多孔質金属酸化物粒子)
多孔質金属酸化物粒子としては、以下に記載の多孔質シリカ、多孔質アルミノシリケート粒子又は、ゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
(多孔質シリカ多孔質シリカ、多孔質アルミノシリケート粒子)
多孔質シリカ粒子は、一般に湿式法又は、乾式法により製造される。湿式法では、ケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、もしくは中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では、四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により、多孔性や粒径を制御することが可能である。多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。
多孔質アルミノシリケート粒子は、例えば、特開平10−71764号公報に記載されている方法により製造される。即ち、アルミニウムアルコキシドと珪素アルコキシドを主成分として加水分解法により合成された非晶質な複合体粒子である。粒子中のアルミナとシリカの比率は1:4〜4:1の範囲で合成することが可能である。又、製造時にその他の金属のアルコキシドを添加して3成分以上の複合体粒子として製造したものも本発明に使用できる。これらの複合体粒子も製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
粒子の多孔性としては、細孔容積で0.5ml/g以上であることが好ましく、0.8ml/g以上であることがより好ましく、1.0〜2.5ml/gであることが更に好ましい。細孔容積は、塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなるが、2.5ml/gよりも大きくなると粒子自体が非常に脆くなるため塗膜の耐久性が低下する。逆に、細孔容積が0.5ml/g未満の場合には、印刷性能がやや不十分となる場合がある。
(細孔容積の測定方法)
ここで、上記の細孔容積の測定は、オートソーブ−1(カンタクローム社製)を使用し、定容法を用いた窒素吸着測定により、粉体の空隙が窒素により、充填されていると仮定して相対圧力が0.998における窒素吸着量から算出されるものである。
(ゼオライト粒子)
ゼオライトは、結晶性のアルミノケイ酸塩であり、細孔径が0.3nm〜1nmの規則正しい三次元網目構造の空隙を有する多孔質体である。
又、親水層を構成する親水性層マトリクス構造は、層状粘土鉱物粒子を含有することができる。該層状鉱物粒子としては、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。特に、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、更に好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。又、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性のものが好ましく、自由膨潤であるものが更に好ましい。
又、上記の層状鉱物のインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(シランカップリング処理、有機バインダとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
平板状層状鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態で(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)、平均粒径(粒子の最大長)が1μm未満であり、平均アスペクト比が50以上であることが好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。又、粒子物を多く含有する塗布液においては、層状粘土鉱物の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。粒子径が上記範囲より大きくなると、塗膜に不均一性が生じて、局所的に強度が弱くなる場合がある。又、アスペクト比が上記範囲以下である場合、添加量に対する平板状の粒子数が少なくなり、増粘性が不充分となり、粒子物の沈降を抑制する効果が低減する。
層状鉱物粒子の含有量としては、層全体の0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。特に膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは少量の添加でも効果が見られるため好ましい。層状鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加してもよいが、簡便な調液方法(メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、層状鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを調製した後、塗布液に添加することが好ましい。
親水性層を構成する親水性層マトリクスにはその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率はケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
又、金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば、「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、又は本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
又、本発明では、水溶性樹脂を含有してもよい。水溶性樹脂としては、例えば、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられるが、本発明に用いられる水溶性樹脂としては、多糖類を用いることが好ましい。
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。これは、親水性層に多糖類を含有させることにより、親水性層の表面形状を好ましい状態形成する効果が得られるためである。
親水性層の表面は、PS版のアルミ砂目のように0.1〜20μmピッチの凹凸構造を有することが好ましく、この凹凸により保水性や画像部の保持性が向上する。このような凹凸構造は、親水性層マトリクスに適切な粒径のフィラーを適切な量含有させて形成することも可能であるが、親水性層の塗布液に前述のアルカリ性コロイダルシリカと前述の水溶性多糖類とを含有させ、親水性層を塗布、乾燥させる際に相分離を生じさせて形成することがより良好な印刷適性を有する構造を得ることができ、好ましい。
凹凸構造の形態(ピッチ及び表面粗さなど)は、アルカリ性コロイダルシリカの種類及び添加量、水溶性多糖類の種類及び添加量、その他添加材の種類及び添加量、塗布液の固形分濃度、ウエット膜厚、乾燥条件等で適宜コントロールすることが可能である。
本発明において、親水性マトリクス構造部に添加される水溶性樹脂は、少なくともその一部が水溶性の状態のまま、水に溶出可能な状態で存在することが好ましい。水溶性の素材であっても、架橋剤等によって架橋し、水に不溶の状態になると、その親水性は低下して印刷適性を劣化させる懸念があるためである。又、さらにカチオン性樹脂を含有しても良く、カチオン性樹脂としては、例えば、ポリエチレンアミン、ポリプロピレンポリアミン等のようなポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等が挙げられる。カチオン性樹脂は、微粒子状の形態で添加しても良く、例えば、特開平6−161101号公報に記載のカチオン性マイクロゲルが挙げられる。
又、親水性層を塗設する為に用いられる塗布液には、塗布性改善等の目的で水溶性の界面活性剤を含有させることができ、Si系又は、F系等の界面活性剤を使用することができるが、特にSi元素を含む界面活性剤を使用することが印刷汚れを生じる懸念がなく、好ましい。該界面活性剤の含有量は、親水性層全体(塗布液としては固形分)の0.01〜3質量%が好ましく、0.03〜1質量%が更に好ましい。
又、親水性層には、リン酸塩を含むことができる。本発明では、親水性層の塗布液がアルカリ性であることが好ましいため、リン酸塩としてはリン酸三ナトリウムやリン酸水素二ナトリウムとして添加することが好ましい。リン酸塩を添加することで、印刷時の網の目開きを改善する効果が得られる。リン酸塩の添加量としては、水和物を除いた有効量として、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%が更に好ましい。
本発明においては、支持体表面の反射濃度が0.7〜2.5の範囲にあることが、可視画性の面から特に好ましい。
基材表面を濃色とすることで、白色化した露光部とのコントラストが強調され、良好な露光可視画が得られる。
基材表面の反射濃度を上記範囲とするには、以下の方法が挙げられる。アルミ砂目基材であれば、公知の電解着色法によりAD層を着色し、着色条件を適宜調整することにより反射濃度を上記範囲とすることができる。
親水性層を形成した基材であれば、親水性層中に着色顔料、好ましくは黒色顔料を含有させ、親水性層中の着色顔料の含有比率と親水性層付量とを適宜調整することで、反射濃度を上記範囲とすることができる。
本発明における反射濃度とは、Gretag−Macbeth社製の反射濃度計:D−196を用い、絶対白基準で濃度測定を行って得られた濃度の数値である。
親水性表面を有する基材が光透過性である場合には、測定を白色台(具体的には印刷に用いるコート紙を4枚重ねたものを敷いた台)上で行う。
(露光)
本発明に係る印刷版材料は、レーザー光を用いて画像を形成するのが好ましい。
その中でも、特にサーマルレーザーによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
例えば赤外及び/または近赤外領域で発光する、即ち700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましい。
レーザーとしてはガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましい。
走査露光に好適な装置としては、該半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
一般的には、(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式が挙げられる。又特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)の露光方式が用いられる。
(印刷)
画像露光された印刷版材料は、湿し水及び印刷インクを用いる一般的な平版印刷に供することができる。
印刷方法としては、特に湿し水としてイソプロノールを含有しない(含有しないとは水に対して0.5質量%以下の含有率である)湿し水を使用する場合が好ましい態様である。
即ち、本発明の印刷版材料を赤外線レーザーにより画像露光をし、印刷機上で湿し水または湿し水と印刷インキにより現像を行い、印刷することが好ましい態様である。
画像形成後の印刷版材料をそのまま印刷機の版胴に取り付けるか、あるいは印刷版材料を印刷機の版胴に取り付けた後に画像形成を行い、版胴を回転させながら水供給ローラー及びまたはインク供給ローラーを印刷版材料に接触させることで感熱画像形成層の非画像部を除去することが可能である。
上記の非画像部の除去、いわゆる機上現像方法を下記に示す。
印刷機上での感熱画像形成層の非画像部(未露光部)の除去は、版胴を回転させながら水付けローラーやインクローラーを接触させて行うことができるが、下記に挙げる例のような、もしくは、それ以外の種々のシークエンスによって行うことができる。
また、その際には、印刷時に必要な湿し水水量に対して、水量を増加させたり、減少させたりといった水量調整を行ってもよく、水量調整を多段階に分けて、もしくは、無段階に変化させて行ってもよい。
(1)印刷開始のシークエンスとして、水付けローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転回転させ、次いで、インクローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転回転させ、次いで、印刷を開始する。
(2)印刷開始のシークエンスとして、インクローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転回転させ、次いで、水付けローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転回転させ、次いで、印刷を開始する。
(3)印刷開始のシークエンスとして、水付けローラーとインクローラーとを実質的に同時に接触させて版胴を1回転〜数十回転回転させ、次いで、印刷を開始する。
本発明に係る感熱画像形成層は、特定のブロック化イソシアネート化合物の水分散物を塗布乾燥して得られた層であるため、比較的高温環境下に保存した場合でも、印刷機上での機上現像が可能であり、良好な画像形成を行うことが可能となる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例における「部」は、特に断りない限り「質量部」を表す。
(基材1の作製)
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を、50℃の1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、溶解量が2g/m2になるように溶解処理を行い水洗した後、25℃の0.1質量%塩酸水溶液中に30秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。
次いでこのアルミニウム板を、塩酸10g/L、酢酸10g/L、アルミを5g/L含有する電解液により、正弦波の交流を用いて、ピーク電流密度が50A/dm2の条件で電解粗面化処理を行った。この際の電極と試料表面との距離は10mmとした。電解粗面化処理は8回に分割して行い、一回の処理電気量(陽極時)を40C/dm2とし、合計で320C/dm2の処理電気量(陽極時)とした。また、各回の粗面化処理の間に4秒間の休止時間を設けた。
電解粗面化後は、50℃に保たれた1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、粗面化された面のスマット含めた溶解量が2g/m2になるようにエッチングし、水洗し、次いで25℃に保たれた10%硫酸水溶液中に10秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。次いで、25℃、20%硫酸水溶液中で、5A/dm2の定電流条件で陽極酸化層付量が2g/m2となるように陽極酸化処理を行い、さらに水洗した。
次いで、水洗後の表面水をスクイーズした後、50℃に保たれた0.5質量%のリチウムシリケート45(日産化学社製)水溶液に20秒間浸漬し、水洗を行った後に80℃で5分間乾燥し、基材1を得た。基材1の表面粗さはRaで0.33μmであった。
[表面粗さの測定方法]
試料表面に白金ロジウムを1.5nmの厚さで蒸着した後、WYKO社製の非接触三次元粗さ測定装置:RST plusを用いて、20倍の条件(222.4μm×299.4μmの測定範囲)で測定し、傾き補正およびMedianSmoothingのフィルターをかけて測定データを処理してRa値を求めた。測定は一試料について測定箇所を変えて5回行い、その平均を求めてRa値とした。
(印刷版材料の作製)
−支持体の作製−
顔料粒子の分散物(分散物1)の調製
下記素材を、サンドグラインダーを用いて1500rpmで2時間分散した。分散メディアとしては1mmφのジルコニアビーズを用いた。分散処理後、ビーズを除去し、ろ過して固形分50質量%の分散物1を得た。分散物1は、ほぼ一次粒子にまで分散された分散物となっていた。
分散物1組成(表中単位記載のない数値は質量部を示す)
Figure 2009073155
顔料粒子の分散物(分散物2)の調製
黒色酸化鉄:ABL−207に変えて、Fe−Ti系の複合金属酸化物であるETB−300(チタン工業社製、平均粒子径:0.5μm)を用いた以外は分散物1と同様にして、分散物2を得た。分散物2も、ほぼ一次粒子にまで分散された分散物となっていた。
−親水性層塗布液の調製−
下表の素材のうち、界面活性剤を除く素材をホモジナイザを用いて十分に混合分散した後、界面活性剤を添加してさらに攪拌混合し、これをろ過して、固形分30質量%の親水性層塗布液をそれぞれ調製した。
親水性層塗布液組成(表中単位記載のない数値は質量部を示す)
Figure 2009073155
−親水性層の塗布形成−
基材1上に、表2に示す親水性層塗布液を表3に示す乾燥付量となるように塗布し、120℃で1分間乾燥した。これを60℃で24時間エイジング処理して、表3に示す親水性表面を有する基材(支持体)A〜Eを得た。
各親水性表面を有する基材表面の反射濃度を、Gretag−Macbeth社製の反射濃度計:D−196を用いて測定し、表3に示した。これは、絶対白基準で濃度測定を行って得られた濃度(ブラック)の数値である。
Figure 2009073155
−発泡剤含有樹脂粒子の作製−
発泡剤含有樹脂粒子(A)−1
2リットルの4つ口フラスコに脱イオン水312質量部、Newcol707SF(日本乳化剤製、固形分30質量%)2.3質量部を加え、窒素置換後、80℃に保つ。下記組成のプレエマルジョンを滴下する直前に0.7質量部の過硫酸アンモニウムを加え、プレエマルジョンを3時間にわたって滴下した。
脱イオン水 350部
ダイアセトンアクリルアミド 65部
アクリル酸 65部
スチレン 98部
TBMA(ターシャリーブチルメタクリレート) 370部
2−エチルヘキシルアクリレート 52部
n−ヘプタン(沸点98℃) 20部
Newcol707SF 60部
過硫酸アンモニウム 1.2部
滴下終了後30分より、30分間0.7質量部の過硫酸アンモニウムを7質量部の脱イオン水に溶かした溶液を滴下し、さらに2時間80℃に保持し、その後約50℃に降温した後、アンモニア水でpHを8〜9の範囲内に調整し、固形分50質量%、平均粒子径100nmの発泡剤含有樹脂粒子粒子(A)−1のエマルジョンを得た。
(A)−1を20℃24時間乾燥させて単膜とし、これをアセトンに溶解して、GCでn−ヘプタンの含有量を測定したところ、2質量%であった。
発泡剤含有樹脂粒子(A)−2、(A)−3、(A)−4、(A)−5、比較粒子1
発泡剤の添加量や種類を変えた以外は(A)−1と同様の方法により、下記の(A)−2、(A)−3、(A)−4、(A)−5を作製した。
また、発泡剤を添加しなかった比較粒子1も作製した。
(A)−2:n−ヘプタンを8質量%含有。
(A)−3:n−ヘキサン(沸点68.7℃)を5質量%含有。
(A)−4:ナフタレンを5質量%含有。
(A)−5:t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを1質量%含有。
−感熱画像形成層の塗布形成−
熱溶融性化合物(B):ワックスエマルジョン粒子と赤外線吸収色素との混合分散物の調製
熱溶融性化合物としてカルナバワックスエマルジョンA118(岐阜セラック社製、平均粒子径0.3μm、軟化点65℃、融点80℃、140℃での溶融粘度8×10-3Pa・s、固形分40質量%)を用いた。A118を攪拌しながら純水で希釈し、固形分を10質量%とした。
これの48.5質量部を攪拌しながら、下記構造の赤外線吸収色素2の1質量%IPA(イソプロパノール)溶液を15質量部を5分間かけて滴下した。さらに攪拌を続けながら、純水36.5質量部を添加して、固形分5質量%の混合分散物を得た。
次に、下記表の各素材を十分に混合攪拌し、ろ過して、固形分濃度5質量%の画像形成層塗布液を調製した。
画像形成層用塗布液1〜5組成(表中の単位指定のない数字は質量部を表す)
Figure 2009073155
(印刷版材料の作製)
表5に示すような親水性表面を有する基材(支持体)と画像形成層塗布液との組み合わせで、親水性表面を有する基材(支持体)表面に、画像形成層塗布液をワイヤーバーを用いて、乾燥付量が0.8g/m2となるように塗布し、55℃で1分間乾燥した。次いで、これを50℃で24時間エイジング処理をして、印刷版材料1〜9を得た。
(評価)
赤外線レーザーによる露光
各印刷版材料を露光ドラムに巻付け固定した。露光には波長830nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す)、175線で画像を形成した。露光した画像はベタ画像と1〜99%の網点画像と2400dpiのラインアンドスペース細線画像とを含むものである。露光エネルギーは250mJ/cm2とした。
(露光可視画性評価)
各露光済の印刷版材料の50%網点画像部をマイクロスコープ:VH−X(キーエンス社製)を用いて200倍の倍率で観察した。画像部と非画像部との識別性を下記の指標により目視で評価し、結果を表5に示した。
◎:非常に良好
○:良好
△:識別可能
×:識別困難
(露光可視画安定性評価)
露光可視画性評価で用いたサンプルを、版面を露出させた状態で明所に24時間放置した後の可視画性を同様の方法で評価した。結果を表5に示した。
◎:非常に良好
○:良好
△:識別可能
×:識別困難
(現像可視画性評価)
各露光済の印刷版材料を、界面活性剤:サーフィノール485(エアプロダクツ社製)を0.01質量%含有する水溶液を含ませた製版スポンジを用いて現像した。各版とも、製版スポンジで軽くこするだけで未露光部の画像層を除去することができた。現像後、版面を純水で十分に洗浄した後に、55℃で乾燥して各印刷版を得た。これら印刷版を露光可視画性と同様の方法により評価し、結果を表5に示した。
(印刷評価)
露光済、未現像の印刷版材料を用いて、印刷評価を行った。
印刷機:三菱重工業社製DAIYA1F−1を用いて、コート紙、湿し水:アストロマーク3(日研化学研究所製)2質量%、インク(東洋インキ社製トーヨーキングハイユニティM紅)を使用して、PS版と同様の印刷条件および刷り出しシークエンスを用いて印刷を行った。
刷り出し性の指標として、印刷物上で刷り出しから非画像部の汚れがなくなるまでの印刷枚数(刷りだし性1)、および、ベタ画像部の濃度が1.5以上となる印刷枚数(すりだし性2)をそれぞれ求めた。結果を表5に示した。
(機上現像後の版面画像部の視認性)
500枚の印刷後、版面をプレートクリーナと水を用いて洗浄しインキを除去した。次いで、版面が乾燥した後に、画像部と非画像部との目視による識別性を下記の指標により評価し、結果を表5に示した。
機上現像後の版面画像部の視認性は、機上での消去が必要となった場合に重要となる性能である。
◎:非常に良好
○:良好
△:識別可能
×:識別困難
Figure 2009073155
表5から、本発明の印刷版材料は、露光可視画性、現像可視画性および露光可視画性に優れ、かつ、良好な機上現像性を有し、機上現像後の版面の画像視認性も良好であることがわかる。

Claims (6)

  1. 支持体上に感熱画像形成層を有する印刷版材料において、該感熱画像形成層が、粒子径が0.1μm以上、2.0μm以下であり、内部に発泡性を有する樹脂粒子Aを含有することを特徴とする印刷版材料。
  2. 前記樹脂粒子Aが、コア部及びシェル部を有するコアシェル構造を有し、該コア部が発泡剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の印刷版材料。
  3. 前記発泡剤が下記(B)〜(D)から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項2に記載の印刷版材料。
    (B)沸点が30〜150℃の範囲である炭化水素化合物
    (C)昇華性化合物
    (D)熱分解性化合物
  4. 前記支持体の反射濃度が0.7〜2.5の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷版材料。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷版材料を画像露光し、該画像露光による未露光部の感熱画像形成層を、機上現像により除去して平版印刷版を作製することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
  6. 請求項5に記載の平版印刷版の作製方法により作製されたことを特徴とする平版印刷版。
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