車載用情報表示装置や、カーオーディオの表示部等に、セグメント表示、またはセグメント表示に加えてドットマトリクス表示が可能な液晶表示装置が用いられる。セグメント表示部をカラー表示可能な液晶表示装置の1つとして、カラーフィルタの形成された液晶表示素子に、白色のバックライト光を照射する構成のものがある。
カラーフィルタを用いた液晶表示装置の短所としては、液晶表示素子のガラス基板上にカラーフィルタを形成する工程が必要なことや、各セグメントの表示色がカラーフィルタの色に限定されること等が挙げられる。
セグメント表示部をカラー表示可能な、他の液晶表示装置として、いわゆるフィールドシーケンシャル(FS)駆動を行うものがある。このような液晶表示装置では、液晶表示素子にカラーフィルタを形成しない代わりに、例えば赤緑青(RGB)発光可能なマルチカラー発光ダイオード(LED)光源などにより構成されたマルチカラーバックライトを用い、点灯色を順次時間的に切り替えることにより、カラー表示を行う。
図16を参照して、従来のFS駆動方法の具体例について説明する。図16は、各セグメントの入力信号と、バックライト点灯状態とを示すタイミングチャートである。液晶表示素子として、オン状態で光を透過させ、オフ状態で光を透過させないノーマリーブラック型のものを想定している。
1つの画像を表示する時間的単位である1フレーム内に、バックライトがR、G、Bそれぞれに点灯する3つのサブフレームSB1〜SB3が設定されている。例えば、1フレームの長さは、NTSC規格に従った16.7msであり、各サブフレームの長さは、1フレームを等間隔に3分割した5.57msである。
液晶表示素子に印加される駆動波形は、例えば矩形波で、駆動周波数は、1つのサブフレーム内で1周期以上になるように設定し、入力信号に対して液晶表示素子が明暗表示できるように、オン時及びオフ時の振幅(駆動電圧)が調整される。
一般に、液晶表示素子は、印加電圧に対する応答がバックライトのそれに比べて遅いため、液晶表示素子がある程度応答するまでバックライトを点灯させないブランク時間を要する。
図17に、ノーマリーブラック型液晶表示素子の1セグメント部分における、明表示から暗表示への切り替え時の立下り電気光学応答の測定例を示す。縦軸の上側が透過率を示し、縦軸の下側がセグメント部上下電極間駆動波形の電位を示し、横軸が経過時間を示す。
駆動電圧が閾値以上の電圧Vから0に変化しても、すぐには透過率が充分低下しないことが分かる。透過率が充分に低下していない状態で、サブフレーム内で指定された色のバックライト光を点灯すれば、このセグメントで消光すべき色の光が漏れるため、色純度が低下することになる。従って、透過率が充分に低下するまでの期間は、バックライトを点灯させないブランク時間とする必要がある。
図16に戻って説明を続ける。各サブフレームの切り替え直後から、ブランク時間Bが設けられている。ブランク時間Bの後、各サブフレームの終了時刻までが、サブフレームに対応する色のバックライトを点灯させるバックライト点灯時間Lとなっている。
サブフレーム動作を人間の目に認識されない速度(例えば約16.7ms/フレーム、約5.57ms/サブフレーム、約3ms/ブランク時間)で駆動させれば、狙い通りの、ちらつきの抑えられたカラー表示を実現可能である。図16に示す例で、セグメント1はRとGの混色である黄色、セグメント2はRとBの混色であるマゼンタ、セグメントnはGのみの緑の表示として、人間の目に認識される。
なお、上述のFS駆動方法(このFS駆動方法を、後述するカラーブレークレスFS駆動方法と区別する場合には、通常FS駆動方法と呼ぶこととする)では、特に観察者の周囲が暗い場合に、観察者の視線が表示素子から離れた時や、素子自体に振動が加わった場合など(例えば自動車内環境において)、通常状態では人間の目に認識されない、各サブフレームの画像が分離して観察されるカラーブレークと呼ばれる現象が現れる場合がある。この現象は、人間の心理的要因からあまり好ましい表示状態とはいえない。
カラーブレーク現象は、特に、白表示部分にはっきり現れることから、通常FS駆動方法において、1つのセグメント表示部にて複数のサブフレームで点灯動作が行われている場合、即ち白色、黄色やマゼンタなどの混色表示状態で顕著に確認されると考えられる。
カラーブレーク現象を低減する方法として、1フレーム内に白表示サブフレームを挿入する等の方法が提案されているが、このような方法でカラーブレーク現象を除去することはできない。
本願発明者らは、特許文献1において、カラーブレーク現象を解消可能なFS駆動方法(以下、上述の通常FS駆動方法と区別する場合には、カラーブレークレスFS駆動方法と呼ぶこととする)を提案した。
この駆動方法の基本的な考え方は、1サブフレーム内において、バックライトの点灯色として原色(R、G、B)のみではなく、混色(白やオレンジ等)も用い、各セグメントにおいては1サブフレームでのみバックライト光を透過させることにより、カラーブレーク現象を生じさせない、というものである。
図18を参照して、カラーブレークレスFS駆動方法の具体例について説明する。図18は、各セグメントの入力信号と、バックライト点灯状態とを示すタイミングチャートである。液晶表示素子として、ノーマリーブラック型のものを想定している。
この例のバックライト発光色は、第1のサブフレームで白色とし、第2のサブフレームでオレンジとし、第3のサブフレームで青としている。この駆動方法では、1フレーム内で可能な表示色は、サブフレーム数をMとして、発光色Mに黒を加えたM+1色となる。
なお、フレームごとにバックライト点灯色を可変にできるので、液晶表示素子の動作が明と暗の2値動作である場合は、上記通常FS駆動方法に比べて、表示色が大幅に増加可能であることは明白であろう。
この例では、1フレームが16.7msであり、等間隔の3つのサブフレームを設定している。なお、各サブフレームの間隔は、バックライトの発光色に応じて変化させても良い。即ち、サブフレームは不等間隔でも動作可能である。
この例では、セグメント1で白表示を行い、セグメント2で黒表示を行い、セグメントnでオレンジ表示を行っている。バックライトの点灯タイミングについて、通常FS駆動方法と同様に、サブフレーム切り替え直後は、液晶表示素子の電気光学応答を待つため約3msのブランク時間Bを設けている。ブランク時間Bの後、サブフレームの終了まで、サブフレームに対応する色のバックライトを点灯させるバックライト点灯時間Lが設けられる。
このような動作を行うことにより、外観上狙い通りの、ちらつきの無いカラー表示を、カラーブレークなしに実現することが可能である。
まず、図1を参照して、本発明の実施例によるカラーブレークレスフィールドシーケンシャル(FS)駆動液晶表示装置に共通な構成について説明する。図1は、液晶表示装置の概略的構成を示すブロック図である。実施例の液晶表示装置は、液晶表示素子1と、バックライト2と、駆動装置3とを含んで構成される。
液晶表示素子1は、少なくとも1つのコモン電極と、コモン電極に対向しセグメント表示を行う複数グループのセグメント電極とを含む。セグメント電極のグループごとに、表示画面が、表示領域A、B等に分割されている。
バックライト2は、液晶表示素子1の背面に備えられ、表示領域ごとに設けられたマルチカラー光源LSと、マルチカラー光源LSから放出された光が、対応する表示領域のみに入射するように、配光を制御する配光構造とを含む。各マルチカラー光源LSは、複数色の光源、例えば赤緑青(RGB)発光可能なマルチカラー発光ダイオード(LED)を含んで構成される。各マルチカラー光源LSは、それぞれ独立のタイミングで点灯可能である。
駆動装置3が、液晶表示素子1と各マルチカラー光源LSを所望のタイミングで同期駆動させて、カラーブレークレスFS駆動を行う。カラーブレークレスFS駆動では、各セグメント表示部を1フレーム当たり1つのサブフレームでしか明表示としないが、サブフレームで、原色表示のみでなく、複数色の光源を同時点灯して混色表示を行うことにより、所望のカラー表示を行うことができる。
液晶表示素子1として、例えば、ノーマリーホワイト(NW)ツイステッドネマチック(TN)モード液晶表示素子、2層TNモード液晶表示素子、及び、垂直配向(VA)モード液晶表示素子を用いることができる。
図2(A)〜図2(C)を参照して、NWTNモード液晶表示素子について説明する。図2(A)は、NWTNモード液晶表示素子の概略斜視図である。液晶セル11が、上下のガラス基板12、13と、それらの間に形成された液晶層14とを含んで構成される。
図2(B)に示すように、液晶セルのガラス基板12、13それぞれの、液晶層側内面に、表示パタンに対応するパタンが形成された透明電極31が配置され、さらにその内面に、水平配向膜32が形成されている。上下の水平配向膜32に、上下基板間で左ねじれ90°で液晶分子が配向するようラビング処理が施されている。
上下水平配向膜32の間に、左ねじれのカイラル材が添加されたΔε>0の液晶材料が満たされて、液晶層14が形成されている。液晶層14の厚さ、即ちセル厚は、略2μmに設定されており、液晶セル厚dと液晶材料のねじれピッチpとの比d/pは、略0.35に設定されている。なお、液晶材料の複屈折率Δnとセル厚dとの積であるリタデーションΔndは、略446nmに設定されている。液晶層中央分子配向方位が、液晶表示素子を法線方向から観察したとき、素子面内において6時方位となるように、ラビング方向が調整されている。
液晶セル11は、相互にクロスニコル配置された上側偏光板21と下側偏光板22との間に配置されている。偏光板21、22は、それぞれ、液晶セル11の近接する基板のラビング方向に直交するように、吸収軸が配置されている。偏光板21、22として、例えばポラテクノ製SKN18243Tが用いられる。
なお、液晶表示素子の視角特性等を改善するため、表示パタン部以外の領域の、片側または両側のガラス基板上に、表示パタン電極から非導電物により電気的に絶縁したブラックマスク膜を配置する場合もある。ブラックマスク膜は、例えばクロムやモリブデン等の金属薄膜からなる。なお、ブラックマスク膜として、顔料、カーボンを分散したアクリル等の樹脂膜を用いてもよい。
図2(C)に示すように、絶縁膜41、ブラックマスク膜42は、例えば、液晶セルのガラス基板12(13)と透明電極31との間に形成される。必要に応じて、透明電極31と配向膜32との間に形成してもよい。特に、カラーブレークレスFS駆動の液晶表示装置には、このような遮光構造を採用することが好ましい。
次に、図3を参照して、2層TNモード液晶表示素子について説明する。図3は、2層TNモード液晶表示素子の概略斜視図である。上側偏光板61と下側偏光板62とが、相互にクロスニコル配置されている。偏光板61、62として、ポラテクノ製SKN18243Tを用いることができる。偏光板61、62の間に、上側から、2層の液晶セル51、52が配置されている。
下側の液晶セル52は、図2(A)を参照して説明したNWTNモード液晶セルと同等なものであり、「駆動セル」として動作させる。駆動セル52は、このセル側に外部から駆動電圧を印加して、表示素子の明暗をスイッチングするために用いる。
上側の液晶セル51は、「補償セル」として用いる。補償セル51では、上下のガラス基板間で液晶分子が右ねじれ90°に配向するように、ラビング方向が設定されている。補償セル51の液晶層には、右ねじれを誘起するカイラル材が添加され、液晶層中央分子の配向方位は3時方位としている。また、補償セル51のガラス基板表面には、表示パタン電極が形成されていない。その他の条件は、駆動セル52と同様である。
補償セル51により、駆動セル52で発生したリタデーションがキャンセルされ、正面観察時におけるリタデーションが略0となり、ほぼ偏光板クロスニコルの暗表示が得られる。このように2層の液晶セルを用いることにより、ノーマリーブラック(NB)動作が得られる。
なお、補償セルの代わりに、補償セルと同様な光学特性を有する光学フィルム、例えばポラテクノ製Twistarフィルムを用いることができることは明らかであり、実際の液晶表示素子に適用して、同様な動作が可能であることを確認済みである。
次に、図4を参照して、垂直配向(VA)モード液晶表示素子について説明する。図4は、VAモード液晶表示素子の概略斜視図である。VAモード液晶表示素子の液晶セル71では、上下ガラス基板72、73それぞれの液晶層側内面に、所望のパタンを形成した透明電極が配置され、さらにその内面に、垂直配向膜が形成されている。上下の垂直配向膜に、上下基板間でアンチパラレル配向となるようにラビング処理が施されている。
上下垂直配向膜間に、Δε<0の液晶材料が満たされて、液晶層74が形成されている。液晶層74の厚さは略2μmに設定され、リタデーションΔndは略300nmに設定され、液晶層中央分子の配向方位は12時方位に設定されている。
液晶セル71は、相互にクロスニコル配置された上側偏光板81と下側偏光板82との間に配置されている。上側の偏光板81の吸収軸は、12時方位から反時計回りに45°回転させた位置に設定されている。
液晶セル71と、上下の偏光板81、82との間に、それぞれ、視角補償板91、92が配置されている。視角補償板91、92として、負の二軸光学異方性を有する光学フィルムを用いることができる。試作した液晶表示素子では、住友化学製ヨウ素系偏光板に、負の二軸光学異方性を有する光学フィルムを貼り合わせた視角補償板貼合偏光板を用いた。
視角補償板91、92の面内遅相軸は、それぞれ、近接する偏光板81、82の透過軸にほぼ平行に配置した。視角補償板91、92各々について、面内位相差は、略45nmとし、厚さ方向の(厚さ断面内の)位相差は略120nmとしている。
なお、負の二軸光学異方性を有する視角補償板は、液晶セルの上面側または下面側の一方のみに配置されていてもよい。さらに他方に、負の一軸光学異方性を有する視角補償板を配置してもよい。光学フィルムのパラメータとしては、厚さ方向の位相差(光学フィルム2枚以上使用の場合はその合計)を、液晶セルのΔndに対して略0.5倍〜略1倍に設定することが好ましい。また、負の二軸光学異方性を有する光学フィルムの面内位相差は、略30nm〜略65nmに設定することが好ましい。
2層TN素子、VA素子は、ノーマリーブラック型素子となる。ノーマリーブラック型素子を用いると、ブラックマスクを用いない構造で、コントラストの高いカラーブレークレスFS駆動液晶表示装置を作製することが容易である。特に、VA素子は視角特性に優れているので、表示品位を高めるのに好適である。
次に、第1の実施例の液晶表示装置について説明する。第1の実施例において、液晶表示素子は、非表示部を金属ブラックマスクで遮光したNWTN素子であり、スタティック駆動用に配線がパタニングされており、駆動装置がスタティック駆動を行う。図5(A)に、液晶表示素子1の表示パタンを示す。
液晶表示素子1は、1つのコモン電極101を有し、「STANLEY」という文字を示す1セグメントの表示部102と、「R&D」という文字を示す1セグメントの表示部103と、2桁の7セグメント表示部(左側の桁の7セグメント表示部104及び右側の桁の7セグメント表示部105)とを有する。全ての表示部102〜105のセグメント電極は、コモン電極101に対向する。なお、必要に応じて、表示部と、その表示部を表示するセグメント電極とを同一の参照番号で指し示すこととする。
第1の実施例の液晶表示装置は、白黒表示をベースに、部分的にカラー表示を行うものである。下地は黒表示である。「STANLEY」という文字表示部102はオレンジ表示、「R&D」という文字表示部103は白表示、左側の7セグメント表示部104は白表示、右側の7セグメント表示部は青表示を行わせる。
なお、図14に示すように、7セグメント表示部を構成するセグメント同士を区別する場合は、最上部の横棒表示にa、右上部の縦棒表示にb、右下部の縦棒表示にc、最下部の横棒表示にd、左下部の縦棒表示にe、左上部の縦棒表示にf、中央の横棒表示にgというアルファベットを付す。
図5(B)に、第1の実施例の液晶表示装置の表示領域を示す。表示画面が、2つの表示領域A、Bに分割されている。「STANLEY」という文字表示部102と左側の7セグメント表示部104とからなるグループを内包するように表示領域Aが設定され、「R&D」という文字表示部103と右側の7セグメント表示部105とからなるグループを内包するように表示領域Bが設定されている。左側の7セグメント表示部104の右端と、右側の7セグメント表示部105の左端との中央に、表示領域AとBとの境界106が配置されている。
図6に、バックライト2の構造例を示す。これは、サイドライト式バックライトの構造例である。導光板201の、表示領域AとBの境界106の直下に、例えば金属からなる反射板202が挿入されており、導光板201が、表示領域A側の部分201Aと表示領域B側の部分201Bとに分割されている。
導光板201の表示領域A側の部分201Aの端部に、マルチカラー光源LSAが設置され、表示領域B側の部分201Bの端部に、マルチカラー光源LSBが設置されている。反射板202が設けられていることにより、マルチカラー光源LSA、LSBから放出された光は、相互に混ざることなく、それぞれ、表示領域Aのみ、表示領域Bのみを照明する。
ただし、表示領域A内のセグメント表示部と、表示領域B内のセグメント表示部とが、マルチカラー光源LSA、LSBで別々に照明されるためには、セグメント表示部同士の間隔が充分に開いていることが好ましい。相互に隣接する表示領域に含まれるセグメント表示部間の最短距離(表示画素間の最短距離)は、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましい。本実施例では、左側の7セグメント表示部104の右端と、右側の7セグメント表示部105の左端との間隔を、2.5mmとしている。
なお、バックライトの構造は、サイドライト式に限定されない。例えば、図7を示すように、いわゆる直下型バックライトとしてもよい。光を拡散反射させる側壁211を持つ箱状の構造体が、光を拡散反射させる隔壁212で、表示領域A側の部分211Aと、表示領域B側の部分211Bとに仕切られている。隔壁212は、表示領域AとBの境界106の直下に設けられている。
表示領域A側の部分211Aの底部に、マルチカラー光源LSAが設置され、表示領域B側の部分211Bの底部に、マルチカラー光源LSBが設置されている。マルチカラー光源LSA、LSBから放出された光は、隔壁212により、相互に混ざることなく、散乱板213を介して、それぞれ、表示領域Aのみ、表示領域Bのみを照明する。
次に、比較例として、表示画面を複数の表示領域に分割しない液晶表示装置について考える。比較例の液晶表示装置では、図5(A)に示した表示パタン全体を、1つのマルチカラー光源を持つバックライトで表示させる。
次に、第1の実施例及び比較例の液晶表示装置のFS駆動方法を説明する。図8に、第1の実施例の液晶表示装置の、各セグメント電極102、103、104d、105dとコモン電極101との間に印加される駆動電圧と、表示領域A、Bのバックライトの点灯タイミングを示すタイミングチャートを示す。図15に、比較例の液晶表示装置の、各セグメント電極102、103、104d、105dとコモン電極との間に印加される駆動電圧と、バックライトの点灯タイミングを示すタイミングチャートを示す。左側及び右側の7セグメント表示部104、105について、代表のセグメントとして、双方とも、最下部のセグメント104d、105dを挙げている。
実施例及び比較例で、1フレームを略16.7msとし、サブフレームは等間隔とし、ブランク時間Bは略2.5msとした。サブフレームの開始時刻からブランク時間Bの後、サブフレームの終了時刻までがバックライトの点灯時間Lとなる。各セグメントに印加される駆動波形は矩形波とし、駆動電圧V=6Vrmsとし、駆動周波数は略720Hzとした。なお、実施例及び比較例とも、液晶表示素子としてノーマリーホワイト型のものが想定されている。
まず、比較例のタイミングチャート(図15)について説明する。セグメント表示部102、103、104d、105dは、それぞれ、オレンジ表示、白表示、白表示、青表示される。従って、1フレーム内でオレンジ、白、青の3色の発光色を表示することが必要であり、サブフレーム数は3つ必要となる。
この例では、第1のサブフレームSB1でセグメント表示部103及び104dの白表示を行い、第2のサブフレームSB2でセグメント表示部102のオレンジ表示を行い、第3のサブフレームSB3でセグメント表示部105dの青表示を行っている。
各サブフレーム時間は、1フレーム期間16.7msを3等分して略5.57msとなる。サブフレーム時間が5.57msに設定されるので、これからブランク時間2.5msを引いて、各サブフレームのバックライト点灯時間は略3.07msとなる。
次に、第1の実施例のタイミングチャート(図8)について説明する。第1の実施例では、表示領域A、BごとのカラーブレークレスFS駆動を、共通のフレーム内で並列して行う。フレーム内での点灯色を、表示領域AとBとで異ならせることができるので、比較例に比べてサブフレーム数を減らすことができる。
サブフレーム数を2とすれば、必要な表示色を得ることができる。この例では、表示領域Aにおいて、第1のサブフレームSB1でセグメント表示部104dの白表示を行い、第2のサブフレームSB2でセグメント表示部102のオレンジ表示を行っている。そして、表示領域Bにおいて、第1のサブフレームSB1でセグメント表示部103の白表示を行い、第2のサブフレームSB2でセグメント表示部105dの青表示を行っている。
各サブフレーム時間は、1フレーム期間16.7msを2等分して略8.35msとなる。サブフレーム時間が8.35msに設定されるので、これからブランク時間2.5msを引いて、各サブフレームのバックライト点灯時間は略5.85msとなる。比較例のバックライト点灯時間3.07msに比べて、略1.9倍点灯時間を延長でき、大幅な表示輝度向上が期待される。なお、第1の実施例と比較例とで表示輝度を等しく保持するのであれば、実施例の方がバックライトの輝度を低く抑えることができる。
図8のタイミングチャートに従ってFS駆動する第1の実施例の液晶表示装置と、図15のタイミングチャートに従ってFS駆動する比較例の液晶表示装置とを作製して外観状態を観察した。なお、バックライトの輝度は双方で等しく設定した。その結果、実施例及び比較例ともに狙い通りの表示状態が得られていることを確認できたが、実施例の方が大幅に高い表示輝度を示すことが明確に観察できた。
このように、セグメント表示部のグループごとに表示領域を分割し、複数の表示領域のFS駆動を並列して行うことにより、1フレーム内で、サブフレーム数M+1よりも多い表示色が得られる。表示領域数をBVとすると、BV×M+1色の表示が可能である。
第1の実施例のように、比較例と同数の表示色を得るような場合、1フレーム当たりのサブフレーム数を減少させることができるので、フレーム期間を延ばさずとも、サブフレーム時間を長くすることができる。サブフレーム内のバックライト点灯時間を延ばし、表示輝度を向上させることができる。なお、比較例とサブフレーム数を等しくするのであれば、表示可能な色数を比較例よりも増やせる。
第1の実施例では、液晶表示素子としてスタティック駆動のものを想定したが、より表示容量の多い場合には、マルチプレックス駆動が必要になる。
次に、マルチプレックス駆動を行う第2の実施例の液晶表示装置について説明する。液晶表示素子として、第1の実施例と同様に、NWTN素子を想定している。図9(A)に、液晶表示素子1の表示パタンを示す。この例は、時計表示及び車室内の温度表示を想定した表示パタンである。
第2の実施例の液晶表示素子1は、4つのコモン電極111〜114を有し、「AM」という文字を示す1セグメントの表示部115と、時表示及び分表示を示す3桁の7セグメント表示部及び時表示と分表示との間に配置されたコロンを示すセグメント表示部(116h)からなる、時刻を表す表示部116と、ともに「TEMP」という文字を示す1セグメントの表示部117(左側)、118(右側)と、ともに2桁の7セグメント表示部119(左側)、120(右側)とを有する。
表示部115のセグメント電極はコモン電極111に対向し、表示部116のセグメント電極はコモン電極112に対向し、表示部117、118のセグメント電極はコモン電極113に対向し、表示部119、120のセグメント電極はコモン電極114に対向する。
すなわち、セグメント電極115はコモン電極111が走査された時、セグメント電極116はコモン電極112が走査された時、セグメント電極117、118はコモン電極113が走査された時、セグメント電極119、120はコモン電極114が走査された時に、選択電圧が印加される。
第1の実施例と同様に、下地は黒表示である。「AM」という文字表示部115は黄色表示、時刻表示部116は白表示、2ヶ所の「TEMP」という文字表示部117、118は白表示、左側の2桁の7セグメント表示部は赤表示、右側の2桁の7セグメント表示部は青表示を行わせる。
図9(B)に、第2の実施例の液晶表示装置の表示領域を示す。表示画面が、3つの表示領域A〜Cに分割されている。表示部115及び116からなるグループ(すなわち時計表示部)を内包するように表示領域Aが設定され、表示部117及び119からなるグループ(すなわち左側温度表示部)を内包するように表示領域Bが設定され、表示部118及び120からなるグループ(すなわち右側温度表示部)を内包するように表示領域Cが設定されている。
時計表示部と、左側温度表示部と、右側温度表示部との間に、各表示領域同士の境界121が画定されている。時計表示部、左側温度表示部、及び右側温度表示部の間の最短距離が、2.5mm以上確保されている。
なお、バックライトは、表示領域A〜Cをそれぞれに照明するマルチカラー光源を有し、表示領域A〜C間で照明光が混ざらないような配光構造の形成されたものを用いる。
図10に、第2の実施例の、コモン電極111〜114、及び、セグメント電極115、116h、117、118、119d、120dに印加される1/4デューティ、1/3バイアスの駆動波形と、表示領域A〜Cのバックライトの点灯タイミングを示すタイミングチャートを示す。
代表のセグメントとして、時刻表示部116について、コロン表示部116hを挙げ、左側温度表示の2桁の7セグメント表示部119について、左側の桁の最下部のセグメント119dを挙げ、右側温度表示の2桁の7セグメント表示部120について、左側の桁の最下部のセグメント120dを挙げている。
コモン選択電圧は±Vとし、セグメントに±Vbが印加されると画素がオン状態となる。液晶表示素子としてNWTN素子を想定しているので、オン状態で暗表示となり、オフ状態で明表示となる。
1フレームは16.7msとし、2つのサブフレームに等間隔に分割した。1サブフレーム時間は略8.35msである。液晶表示素子に印加するマルチプレックス駆動波形の駆動周波数fは略180Hzとした。コモン電極1つ当たりの走査時間は略0.7msである。
この例では、表示領域Aにおいて、第1のサブフレームSB1でセグメント115の黄色表示を行い、第2のサブフレームSB2でセグメント116hの白表示を行っている。表示領域Bにおいて、第1のサブフレームSB1でセグメント117の白表示を行い、第2のサブフレームSB2でセグメント119dの赤表示を行っている。表示領域Cにおいて、第1のサブフレームSB1でセグメント118の白表示を行い、第2のサブフレームSB2でセグメント120dの青表示を行っている。
スタティック駆動の場合と異なり、複数のコモン電極があるので、液晶表示素子の表示輝度を一様にするためには、コモン電極が走査されるのを待つ走査待ち時間Cが必要となる。具体的には、コモン電極数をNとすると、C=(N−1)/(f×2N)と表せ、本実施例での走査待ち時間は略2.08msとなる。
サブフレームの開始時刻から走査待ち時間Cとして2.08msを経た後、さらにブランク時間Bとして略2.5msを待って、サブフレームの終了時刻までバックライト点灯時間Lが設定される。バックライト点灯時間Lは、略3.77msとなる。
この実施例では、発光色として黄色、白、赤、青の4色が必要である。画面を複数の表示領域に分割しない場合は、つまり、1フレーム内で4色の発光色を表示させる場合は、4つのサブフレームが必要となるので、サブフレーム時間が短くなり、充分なバックライト点灯時間の確保が容易でない。
第2の実施例でも、第1の実施例と同様に、複数の表示領域にセグメント表示部を振り分けることにより、サブフレーム数を減らし、長いサブフレーム時間を確保してバックライト点灯時間を延ばせるので、表示輝度向上を期待できる。図10のタイミングチャートに従ってFS駆動する液晶表示装置を作製して外観状態を観察したところ、狙い通りの表示状態が得られていることを確認できた。
次に、上述のように作製したNWTNモード、2層TNモード、及びVAモードの3種の液晶表示素子の、室温時における電気光学応答特性について説明する。測定には、大塚電子製LCD5200を用いた。
駆動条件について説明する。駆動波形は、スタティック駆動(1/1デューティ駆動)時には矩形波、1/2デューティ駆動時には1/2バイアス、1/3及び1/4デューティ駆動においては1/3バイアスのマルチプレックス駆動波形とし、駆動周波数は500Hzとした。それぞれの駆動条件における駆動電圧VLCDは、外観上最も良好な表示状態となるように調整した。なお、スタティック駆動時におけるオフ電圧は全て0Vとした。
図11(A)は、NWTN素子、2層TN素子、及びVA素子の、オン電圧の駆動電圧VLCD、立上り応答時間(暗→明)、及び、立下り応答時間(明→暗)を、スタティック駆動、1/2デューティ〜1/4デューティのマルチプレックス駆動についてまとめた表である。立上り及び立下り応答時間はms単位で示す。
暗表示電圧印加時における定常状態の透過率を0%とし、明表示電圧印加時における定常状態の透過率を100%とした相対透過率を考え、暗表示から明表示への立上り応答時間を、相対透過率が0%から90%まで上昇するのに要する時間で定義し、明表示から暗表示への立下り応答時間を、相対透過率が100%から10%まで下降するのに要する時間で定義している。
駆動電圧VLCDの設定により応答時間は左右されることになるが、特に2層TN素子とVA素子において、デューティが大きくなるに従って、立上り応答時間が長くなる傾向が見られる。また、2層TN素子、VA素子の立下り応答について、駆動電圧VLCDを高くすると応答時間が短くなる傾向が見られるようである。
NWTN素子と、ノーマリーブラック型である2層TN素子及びVA素子とを比較すると、立下り応答時間について、ノーマリーブラック型素子の方が、NWTN素子よりも長い傾向がある。
図11(B)は、NWTN素子、2層TN素子、及びVA素子の、オン電圧の駆動電圧VLCD、及び、立上りの応答遅れ時間(0−10%時間)を、スタティック駆動、1/2デューティ〜1/4デューティのマルチプレックス駆動についてまとめた表である。立上りの応答遅れ時間はms単位で示す。立上りの応答遅れ時間は、相対透過率が0%から10%まで上昇するのに要する時間で定義している。
立上りの応答遅れ時間は、NWTN素子では、デューティが大きくなるに従って短くなる傾向が見られる。一方、2層TNの立上りの応答遅れ時間は、デューティが大きくなるに従って長くなる傾向が見られる。VA素子の立上りの応答遅れ時間は、比較的デューティによる依存性が低いが、スタティック駆動に比べて、1/2デューティ〜1/4デューティ駆動時の方が長くなる傾向がある。
NWTN素子と、ノーマリーブラック型である2層TN素子及びVA素子とを比較すると、ノーマリーブラック型素子の方が、立上りの応答遅れ時間が長い傾向がある。
特に立下りの応答時間が長くなると、色純度低下を避けるためにサブフレーム内のブランク時間を長く設定しなければならなくなるが、ブランク時間が長くなるほど、バックライト点灯時間が短くなるので、表示輝度が低下することが懸念される。
上述のように、ノーマリーブラック型素子は、表示品位を高めた液晶表示装置に用いるのに好ましいが、ノーマリーホワイト型素子に比べて立下り応答時間が長い傾向が見られ、長いバックライト点灯時間を確保することが比較的難しくなる。ノーマリーブラック型素子を用いた場合でも、バックライトの点灯時間を長く取れるFS駆動方法が望まれる。
次に、このようなFS駆動方法について考察する。あるサブフレーム(第1のサブフレームと呼ぶこととする)で明表示にされていた表示部は、次のサブフレーム(第2のサブフレームと呼ぶこととする)で明表示のままか暗表示に切り替えられる。暗表示に切り替えられる場合でも、図11(A)や図17に示したように、瞬時に透過率が低下するわけではない。一方、暗表示から第2のサブフレームで明表示に切り替えられる表示部も、図11(A)及び図11(B)に示したように、透過率が瞬時に上昇するわけではない。
第2のサブフレームの初期、図11(B)に示したような立上りの応答遅れ時間内(相対透過率が10%に達するまでの時間内)に、第1のサブフレームの表示パタンに対応する点灯色を延長して点灯させるのであれば、第2のサブフレームで明表示に切り替えられる表示部からのこの点灯色の光漏れによる色純度低下を抑制して、第1のサブフレームの表示パタンに対応する表示部の輝度を向上させることができると考えられる。
すなわち、第1のサブフレームの表示パタンに対応する点灯色のバックライトを、第1のサブフレーム内で点灯させ、さらに、その直後の第2のサブフレームの初期まで延長して点灯させることにより、色純度低下を抑制しつつ、長いバックライト点灯時間を確保し、表示輝度を向上できると考えられる。
図11(A)及び図11(B)を参照して説明したように、ノーマリーブラック型素子(2層TN素子、VA素子)は、立上りの応答遅れ時間が比較的長いので、延長点灯時間を長く取れることになる。また、立下り応答時間も比較的長いので、明表示から暗表示に切り替わる表示部について、延長点灯時間中の透過率が比較的高い。次サブフレームの初期までバックライト点灯時間を延長するFS駆動方法は、このような観点から、特にノーマリーブラック型素子を用いる液晶表示装置の表示輝度向上に有効と考えられる。
次に、第3の実施例によるFS駆動方法について説明する。液晶表示装置として、図5(A)を参照し第1の実施例で説明したスタティック駆動されるものを用いる。ただし、液晶表示素子として、ノーマリーブラック型である2層TN素子を用いる。第1の実施例とは逆に、駆動電圧のオン時に明表示状態となり、オフ時に暗表示状態となる。
図12に、各セグメント電極102、103、104d、105dとコモン電極101との間に印加される駆動電圧と、表示領域A、Bのバックライトの点灯タイミングを示すタイミングチャートを示す。第1の実施例と同様に、1フレームは16.7msとし、等間隔に2分割して各8.35msのサブフレームSB1、SB2を設定した。駆動周波数は略720Hzとした。
サブフレームの開始時刻から、2層TN素子の立下り応答完了を待つための略3.54ms(図11(A)のスタティック駆動時参照)の後、サブフレームの終了時刻までが、当該サブフレームの表示パタンに対応する点灯色のバックライトを点灯させる現サブフレームバックライト点灯時間Lに設定されている。現サブフレームバックライト点灯時間Lは、略4.81msである。
第3の実施例では、さらに、サブフレームの開始時刻から、その直前のサブフレームの表示パタンに対応する点灯色のバックライトを延長して点灯させる前サブフレームバックライト点灯時間Dが設定されている。前サブフレームバックライト点灯時間Dは、2層TN素子の立上りの応答遅れ時間1.76ms(図11(B)のスタティック駆動時参照)に設定されている。
1色当たりのバックライト点灯時間は、前サブフレームバックライト点灯時間を導入することにより、4.81msから1.76ms延びて略6.57msとなる。バックライト点灯時間の延長により、表示輝度向上が期待される。
2層TN素子を用いた液晶表示装置を、図12のタイミングチャートに従う第3の実施例の方法で駆動させた場合と、図8のタイミングチャートに従う第1の実施例と同様な方法(前サブフレームバックライト点灯時間を導入しない駆動方法)で駆動させた場合とで、外観状態を比較した。なお、第1の実施例と同様な、前サブフレームバックライト点灯時間を導入しない駆動方法では、2層TN素子を用いることに伴い、第1の実施例と駆動波形のオンオフを逆転させ、ブランク時間を略3.5msとし、バックライト点灯時間を略4.85msとした。その結果、両者とも狙い通りの表示状態が得られたが、第3の実施例の方が、表示輝度が明らかに向上していることが確認された。
次に、第4の実施例によるFS駆動方法について説明する。液晶表示装置として、図9(A)を参照し第2の実施例で説明した1/4デューティでマルチプレックス駆動されるものを用いる。ただし、液晶表示素子として、ノーマリーブラック型であるVA素子を用いる。第2の実施例とは逆に、駆動電圧のオン時に明表示状態となり、オフ時に暗表示状態となる。
図13に、コモン電極111〜114、及び、セグメント電極115、116h、117、118、119d、120dに印加される1/4デューティ、1/3バイアスの駆動波形と、表示領域A〜Cのバックライトの点灯タイミングを示すタイミングチャートを示す。
第2の実施例と同様に、コモン選択電圧は±Vとし、セグメントに±Vbが印加されると画素がオン状態となる。ただし第4の実施例では液晶表示素子としてVA素子を想定しているので、オン状態で明表示となり、オフ状態で暗表示となる。
また、第2の実施例と同様に、1フレームは16.7msとし、2つのサブフレームに等間隔に分割した。1サブフレーム時間は略8.35msである。液晶表示素子に印加するマルチプレックス駆動波形の駆動周波数は略180Hzとした。コモン電極1つ当たりの走査時間は略0.7msであり、走査待ち時間は、略2.08msである。
サブフレームの開始時刻から、走査待ち時間2.08msを待ち、さらに、VA素子の立下り応答完了を待つための略3.48ms(図11(A)の1/4デューティ、1/3バイアス駆動時参照)の後、サブフレームの終了時刻までが、当該サブフレームの表示パタンに対応する点灯色のバックライトを点灯させる現サブフレームバックライト点灯時間Lに設定されている。現サブフレームバックライト点灯時間Lは、略2.79msである。
第4の実施例では、さらに、サブフレームの開始時刻から、その直前のサブフレームの表示パタンに対応する点灯色のバックライトを延長して点灯させる前サブフレームバックライト点灯時間Dが設定されている。前サブフレームバックライト点灯時間Dは、VA素子の立上りの応答遅れ時間2.28ms(図11(B)の1/4デューティ、1/3バイアス駆動時参照)に設定されている。
1色当たりのバックライト点灯時間は、前サブフレームバックライト点灯時間を導入することにより、2.79msから2.28ms延びて略5.07msとなる。バックライト点灯時間の延長により、表示輝度向上が期待される。
VA素子を用いた液晶表示装置を、図13のタイミングチャートに従う第4の実施例の方法で駆動させた場合と、図10のタイミングチャートに従う第2の実施例と同様な方法(前サブフレームバックライト点灯時間を導入しない駆動方法)で駆動させた場合とで、外観状態を比較した。なお、第2の実施例と同様な、前サブフレームバックライト点灯時間を導入しない駆動方法では、VA素子を用いることに伴い、第2の実施例と駆動波形のオンオフを逆転させ、走査待ち時間2.08msの後に設定されるブランク時間を略3.48msとし、バックライト点灯時間を略2.79msとした。その結果、第4の実施例の駆動方法の方が、表示輝度が明らかに向上していることが確認された。
なお、1サブフレーム時間Sは、走査待ち時間C、前サブフレームバックライト点灯時間D、ブランク時間B、現サブフレームバックライト点灯時間Lを用いて、C≦Dの場合、S=D+B+Lと表され、C>Dの場合、S=D+(C−D)+B+Lと表される。
サブフレーム内で、立下りの応答を待って、そのサブフレームに対応する点灯色を点灯させる現サブフレームバックライト点灯時間Lが設定される。しかし、例えば低温等で立下り応答時間が非常に長くなると、立下りの応答完了時点が、サブフレームの終了時刻に到達してしまう。このような場合には、現サブフレームバックライト点灯時間Lが0になってしまう。
しかし、この点灯色を、次のサブフレームの初期に点灯させれば、点灯時間を確保することができることになる。つまり、現サブフレームバックライト点灯時間Lが0となっても、前サブフレームバックライト点灯時間Dを非0とすることにより、点灯時間を確保することができる。
前サブフレームバックライト点灯時間を導入したFS駆動方法は、このように、サブフレームの表示パタンに対応する点灯色のバックライトを、そのサブフレームでは点灯させずに、その直後のサブフレームで点灯するような場合に応用することもできる。
前サブフレームバックライト点灯時間を導入したFS駆動方法では、現サブフレームバックライト点灯時間Lが非0であっても0となっても、サブフレームの表示パタンに対応する点灯色が、当該サブフレーム内のある時点から、その直後のサブフレーム内のある時点までの間に点灯される。
走査待ち時間Cは、上述のように、1サブフレーム時間をS、液晶表示素子のコモン電極数をN(1/Nデューティ駆動)、液晶表示素子の駆動周波数をfとして、C=(N−1)/(f×2N)という式で表せる。前サブフレームバックライト点灯時間Dとブランク時間Bとの和は、走査待ち時間Cと液晶表示素子の立下り応答時間との和以上に設定されていることが好ましい。
なお、上記実施例では、サブフレームを等間隔としたが、必要に応じて、サブフレームを不等間隔に分割してもよい。なお、サブフレーム数Mは2以上となる。また、1フレーム期間を、1フレーム表示ごとまたは複数フレームごとに異ならせることも可能であり、これに伴ってサブフレーム時間を変化させてもよい。
なお、上記実施例では、スタティック駆動または1/4デューティ、1/3バイアスマルチプレックス駆動を検討したが、デューティ比は1/4デューティに限られず、1/2デューティ〜1/16デューティであればよく、1/2デューティ〜1/9デューティがより好ましい。
なお、実施例の液晶表示装置、FS駆動方法は、以下のような製品に適用することができる。例えば、セグメント表示部、または、セグメント表示部及びドットマトリクス表示部を含む車載用情報表示装置に適用することができる。また、例えば、カーオーディオの表示部、コピー機等の操作パネル表示部に適用することもできる。
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。