JP2009067717A - マメ科植物の害虫による摂食を阻害する方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、Variovorax属又はMethylobacterium属に属し、マメ科植物体内に共生して該植物に害虫摂食阻害性を付与する能力、該植物の生長を促進させる能力、該植物の着莢数を増加させる能力、該植物における根粒数を増加させる能力、及び該植物の収量を増加させる能力を有する細菌(具体的にはVariovorax sp. M30P3 (受託番号NITE P-95) もしくは Methylobacterium sp. M143R1 (受託番号NITE P-96))を、マメ科植物に人為的に感染させる工程を含む方法に関する。
【選択図】なし
Description
(1) Variovorax属又はMethylobacterium属に属し、マメ科植物体内に共生して該植物に害虫摂食阻害性を付与する能力、該植物の生長を促進させる能力、該植物の着莢数を増加させる能力、該植物における根粒数を増加させる能力、及び該植物の収量を増加させる能力を有する細菌を、マメ科植物に人為的に感染させる工程を含む、マメ科植物に害虫摂食阻害性を付与する方法。
(2) Variovorax属又はMethylobacterium属に属し、マメ科植物体内に共生して該植物に害虫摂食阻害性を付与する能力、該植物の生長を促進させる能力、該植物の着莢数を増加させる能力、該植物における根粒数を増加させる能力、及び該植物の収量を増加させる能力を有する細菌を、マメ科植物に人為的に感染させる工程を含む、マメ科植物の生長を促進させる方法。
(4) Variovorax属又はMethylobacterium属に属し、マメ科植物体内に共生して該植物に害虫摂食阻害性を付与する能力、該植物の生長を促進させる能力、該植物の着莢数を増加させる能力、該植物における根粒数を増加させる能力、及び該植物の収量を増加させる能力を有する細菌を、マメ科植物に人為的に感染させる工程を含む、マメ科植物における根粒数を増加させる方法。
(6) 前記細菌がVariovorax sp. M30P3 (受託番号NITE P-95)、又はその変異株である、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7) 前記細菌がMethylobacterium sp. M143R1 (受託番号NITE P-96)、又はその変異株である、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(9) 前記細菌がVariovorax sp. M30P3 (受託番号NITE P-95)、又はその変異株である、(8) 記載の微生物製剤。
(10) 前記細菌がMethylobacterium sp. M143R1 (受託番号NITE P-96)、又はその変異株である、(9) 記載の微生物製剤。
(12)(11) Variovorax sp. M30P3 (受託番号NITE P-95) 又はその変異株であってマメ科植物体内に共生して該植物に害虫摂食阻害性を付与する能力、該植物の生長を促進させる能力、該植物の着莢数を増加させる能力、該植物における根粒数を増加させる能力、及び該植物の収量を増加させる能力を有する変異株。
(13) Variovorax sp. M30P3 (受託番号NITE P-95)、及び Methylobacterium sp. M143R1 (受託番号NITE P-96)、並びにこれらの変異株であってマメ科植物体内に共生して該植物に害虫摂食阻害性を付与する能力、該植物の生長を促進させる能力、該植物の着莢数を増加させる能力、該植物における根粒数を増加させる能力、及び該植物の収量を増加させる能力を有する変異株からなる群から選択される少なくとも1種が人為的に感染されたマメ科植物。
M143R1 (受託番号NITE P-96)が挙げられる。また、Variovorax sp. M30P3 (受託番号NITE P-95)、又はMethylobacterium sp. M143R1 (受託番号NITE P-96)と同等の能力を有する細菌、例えば、Variovorax属に属し、実施例1に示すVariovorax sp. M30P3と同一の炭素源の資化能力を有する細菌や、Variovorax属に属し、配列番号1に示す塩基配列を少なくとも一部分に含む16S rDNAを有する細菌や、Methylobacterium属に属し、実施例2に示すMethylobacterium sp. M143R1と同一の炭素源の資化能力を有する細菌や、Methylobacterium属に属し、配列番号2に示す塩基配列を少なくとも一部分に含む16S rDNAを有する細菌が挙げられるがこれらには限定されない。Variovorax sp. M30P3 (受託番号NITE P-95)、又は Methylobacterium sp. M143R1 (受託番号NITE P-96) が変異誘発処理されて作出された変異株であって、マメ科植物体内に共生して該植物に害虫摂食阻害性を付与する能力、該植物の生長を促進させる能力、該植物の着莢数を増加させる能力、該植物における根粒数を増加させる能力、及び該植物の収量を増加させる能力を有する変異株もまた、本発明に好適に使用することができる。変異誘発処理は任意の適当な変異原を用いて行われ得る。ここで、「変異原」なる語は広義の意味を有し、例えば変異原効果を有する薬剤のみならずUV照射のごとき変異原効果を有する処理をも含むものと理解すべきである。適当な変異原の例としてエチルメタンスルホネート、UV照射、N−メチル−N′−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、ブロモウラシルのようなヌクレオチド塩基類似体及びアクリジン類が挙げられるが、他の任意の効果的な変異原もまた使用され得る。
(材料)
長野県、静岡県朝霧高原周辺及び沖縄県石垣島周辺でマメ科とアブラナ科植物を採集した。得られた植物のうち、長野県及び静岡県朝霧高原周辺で収集したマメ科52株、及びアブラナ科47株の植物を用い、耐虫性評価試験とエンドファイトの分離をおこなった。摂食阻害作用を評価する鱗翅目は広食性のハスモンヨトウ (Spodoptera litura) を用いた。
摂食阻害作用の評価はリーフディスク検定でおこなった。植物体の葉をコルクボーラーで直径12mmにくり抜きリーフディスクを作成した。葉が小さい等、くり抜くことが困難なものは同程度の面積になるように葉数枚を用いて一処理区とした。ハスモンヨトウは孵化1日目から4日目の1齢幼虫を用いた。リーフディスク16枚に対しハスモンヨトウを250個体加え、25℃暗条件で約2日間摂食させた。評価は摂食程度が5%未満のものを強度阻害、70%未満のものを中程度阻害とした。これを1次スクリーニングとした。次に1次スクリーニングで中程度以上の阻害を示した植物のみを集め、同様の方法で2次スクリーニングをおこなった。
1次スクリーニングにより、マメ科植物52株中で強度阻害を示したもの5株、中程度阻害を示したもの13株を選抜した。さらに選抜された株のみで2次スクリーニングをおこなったところ、強度阻害を示すものが3株、中程度阻害を示すものが6株見られた(表1)。
(目的)
上記で分離されたエンドファイトのなかから、ダイズに共生して宿主ダイズに害虫による摂食に対する抵抗性を付与することができるものを選抜する。
上記で摂食阻害が認められたマメ科及びアブラナ科自生植物の系統から単離した菌(M30N2, M30P1, M30P2, M30P3, M30P5, M71N1, M72N4)を、ダイズの栽培品種エンレイへ接種した。接種方法は次の通りである。すなわち、70% EtOH 20秒間、2.5% 次亜塩素酸ナトリウム水溶液5分間で滅菌処理したダイズ種子に菌懸濁液を1 x 108 cells/種子の量で接種し、接種後の種子を栽培して個体を得た。それぞれの菌について3個体ずつ作成した。対照として菌無接種区も1処理区作成し同様に供試した。
それぞれの摂食被害程度を、無接種個体の摂食被害程度との最小有意差法により検定したところ、M30P1、M30P2及びM30P3の接種個体が1%水準で有意に摂食被害程度が低くなるという結果が得られた(表3及び図1)。試験区全体で植物体が 24 本であることとから、ハスモンヨトウは計 240 個体放した事になるが、摂食試験終了時(20 日目)に植物上に生息していた幼虫数は試験開始時の 4.1 % (10個体) にまで減少していた。有意に摂食が抑制されたM30P1、M30P2及びM30P3の3系統の接種個体には幼虫は存在していなかった。幼虫が外部へ逃げ出さないように不織布で覆いをした試験では、M30P2接種個体が最も摂食被害程度が低かったが、有意差は得られなかった。
(目的)
上記で選抜したM30P1、M30P2及びM30P3の3株の追証検定をおこなった。
エンドファイト:M30P1株、M30P2株及びM30P3株
対照区:無接種個体
ダイズ品種:エンレイ
虫:ハスモンヨトウ1齢虫
栽培:ポット栽培、4個体/ポット/処理区
検定:ポット栽培60日目にハスモンヨトウ1齢虫を10個体/ダイズ個体接種し、温室内で摂食させた。
測定方法:被害指数として評価した。
被害指数:指数(1: 摂食面積10%以下; 2: 摂食面積10〜30%; 3: 摂食面積30〜50%; 4: 摂食面積50〜70%; 5: 摂食面積70%以上)を目視によりカウントし、以下の式で被害指数を算出した。
被害指数=100×[1×(被害指数1の葉数)+2×(被害指数2の葉数)+3×(被害指数3の葉数)+4×(被害指数4の葉数)+5×(被害指数5の葉数)]/[5×(全葉数)]
追証検定の結果、3株のうちM30P3株を接種したダイズ個体が有意に被害程度を抑制することが証明された(表4)。
バイオログシステム(微生物同定システム)を用いてM30P3株の同定をおこなった。その結果、Variovorax paradoxus(グラム陰性、非腸内細菌)が最も相同性が高いという結果を得た。
当該菌株をNutrient Brothで培養し、菌体からゲノムDNAを単離した。単離したDNAを鋳型に、16S rDNA領域の前半約 500 bp の塩基配列を、dyeプライマー法で決定した(配列番号 1 )。相同性検索プログラムFASTAを利用し、決定した塩基配列と、DDBJ/EMBL/GenBank
国際塩基配列データベースとの相同性検索を行った。
(材料及び方法)
野菜の害虫に対して高い抵抗性を示すエンドファイトを探索するため、平成15年3月4日から7日にかけて沖縄県石垣島内6ヶ所、与那国島内6ヶ所、西表島内4ヶ所においてマメ科及びアブラナ科自生植物の採取をおこなった。
沖縄県での植物採集の結果、形態からマメ科と推定される植物75株、アブラナ科と推定される植物18株を採集した。ハスモンヨトウ1齢幼虫を用いた摂食試験の結果、摂食率5%以下の強度の抵抗性を示す株をマメ科、アブラナ科から各1植物、50%程度までの中程度の抵抗性を示す株をマメ科より4植物選抜することができた。
(目的)
上記で分離されたエンドファイトのなかから、ダイズに共生して宿主ダイズに害虫による摂食に対する抵抗性を付与することができるものを選抜する。
上記で分離されたエンドファイトをダイズ (Glycine max cv. Enrei) に接種し、定着性の評価と、ポット栽培個体のハスモンヨトウ摂食試験をおこなった。細菌エンドファイトは1種類ずつ殺菌したダイズ種子に接種した。各接種区のダイズは原則として6個体(ただし6個体実験ができなかったものもある)とし、播種40〜50日目に孵化直後のハスモンヨトウを1植物に25個体放し、そのまま栽培してハスモンヨトウ幼虫に対するダイズ葉の摂食を観察した。栽培ポットを隣接させ、ハスモンヨトウが植物間を自由に移動できる状態で摂食試験を行った。結果の評価は、上記M30P1、M30P2及びM30P3の3株の追証検定被害評価と同様に、被害指数を出すことで行った。
被害指数:指数(1: 摂食面積10%以下; 2: 摂食面積10〜30%; 3: 摂食面積30〜50%; 4: 摂食面積50〜70%; 5: 摂食面積70%以上)を目視によりカウントし、以下の式で被害指数を算出した。
被害指数=100×[1×(被害指数1の葉数)+2×(被害指数2の葉数)+3×(被害指数3の葉数)+4×(被害指数4の葉数)+5×(被害指数5の葉数)]/[5×(全葉数)]
表7に、植物M143から分離された13種類の菌株について、摂食試験の結果を示す。その結果、M143R1株がダイズの摂食を抑制しており、宿主ダイズに摂食阻害作用を付与する細菌エンドファイトとしてM143R1が選抜された。植物M143から分離されたその他の12菌株については無接種区と大きな差がなかった。
M143R1株が資化可能であることが確認された炭素源を表8に示す。
当該菌株をNutrient Brothで培養し、菌体からゲノムDNAを単離した。単離したDNAを鋳型に、16S rDNA領域の前半約500bp塩基配列をdyeプライマー法で決定した(配列番号2)。相同性検索プログラムFASTAを利用し、決定した塩基配列と、DDBJ/EMBL/GenBank 国際塩基配列データベースとの相同性検索を行った。
1.目的
Variovorax sp. M30P3 (NITE P-95)及びMethylobacterium sp. M143R1 (NITE P-96)のダイズに対する生育促進と収量増加に対する効果について調査するとこを目的とした。
2−1.供試作物
ダイズ品種:トヨホマレ 各処理区200本
2−2.圃場
水田転換初年目圃場
Variovorax sp. M30P3 (NITE P-95)
Methylobacterium sp. M143R1 (NITE P-96)
ダイズは種子を圃場に蒔き、路地栽培を行った。本葉が1〜3枚程度になったところで、108CFU/mlになるように調製した菌液を噴霧器を用いて噴霧した。通常の管理を行い、栽培途中(播種後57日目)および収穫期(播種後135日目)に生育調査および収量調査を行った。生育調査項目は、葉数及び茎長、株立数を、収量調査では着莢数(大≧8mm、中8−7mm、屑7mm≦)及び子実重を測定した。
解析は、上記の収量調査結果より、総収量を算出した。
3−1.生育調査結果
播種後57日目及び、135日目の生育調査結果を表9に示した。57日目の結果より、葉数および茎長に関して本発明のエンドファイト接種区で対照区より若干生育促進が見られた。また、135日目の収穫期調査結果でも、全ての項目で対照区よりも本発明のエンドファイト接種区で生育促進が見られた。
Claims (13)
- Variovorax属又はMethylobacterium属に属し、マメ科植物体内に共生して該植物に害虫摂食阻害性を付与する能力、該植物の生長を促進させる能力、該植物の着莢数を増加させる能力、該植物における根粒数を増加させる能力、及び該植物の収量を増加させる能力を有する細菌を、マメ科植物に人為的に感染させる工程を含む、マメ科植物に害虫摂食阻害性を付与する方法。
- Variovorax属又はMethylobacterium属に属し、マメ科植物体内に共生して該植物に害虫摂食阻害性を付与する能力、該植物の生長を促進させる能力、該植物の着莢数を増加させる能力、該植物における根粒数を増加させる能力、及び該植物の収量を増加させる能力を有する細菌を、マメ科植物に人為的に感染させる工程を含む、マメ科植物の生長を促進させる方法。
- Variovorax属又はMethylobacterium属に属し、マメ科植物体内に共生して該植物に害虫摂食阻害性を付与する能力、該植物の生長を促進させる能力、該植物の着莢数を増加させる能力、該植物における根粒数を増加させる能力、及び該植物の収量を増加させる能力を有する細菌を、マメ科植物に人為的に感染させる工程を含む、マメ科植物の着莢数を増加させる方法。
- Variovorax属又はMethylobacterium属に属し、マメ科植物体内に共生して該植物に害虫摂食阻害性を付与する能力、該植物の生長を促進させる能力、該植物の着莢数を増加させる能力、該植物における根粒数を増加させる能力、及び該植物の収量を増加させる能力を有する細菌を、マメ科植物に人為的に感染させる工程を含む、マメ科植物における根粒数を増加させる方法。
- Variovorax属又はMethylobacterium属に属し、マメ科植物体内に共生して該植物に害虫摂食阻害性を付与する能力、該植物の生長を促進させる能力、該植物の着莢数を増加させる能力、該植物における根粒数を増加させる能力、及び該植物の収量を増加させる能力を有する細菌を、マメ科植物に人為的に感染させる工程を含む、マメ科植物の収量を増加させる方法。
- 前記細菌がVariovorax sp. M30P3 (受託番号NITE P-95)、又はその変異株である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
- 前記細菌がMethylobacterium sp. M143R1 (受託番号NITE P-96)、又はその変異株である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
- Variovorax属又はMethylobacterium属に属し、マメ科植物体内に共生して該植物に害虫摂食阻害性を付与する能力、該植物の生長を促進させる能力、該植物の着莢数を増加させる能力、該植物における根粒数を増加させる能力、及び該植物の収量を増加させる能力を有する細菌を有効成分として含有する、マメ科植物用の微生物製剤。
- 前記細菌がVariovorax sp. M30P3 (受託番号NITE P-95)、又はその変異株である、請求項8記載の微生物製剤。
- 前記細菌がMethylobacterium sp. M143R1 (受託番号NITE P-96)、又はその変異株である、請求項8記載の微生物製剤。
- Variovorax sp. M30P3 (受託番号NITE P-95) 又はその変異株であってマメ科植物体内に共生して該植物に害虫摂食阻害性を付与する能力、該植物の生長を促進させる能力、該植物の着莢数を増加させる能力、該植物における根粒数を増加させる能力、及び該植物の収量を増加させる能力を有する変異株。
- Methylobacterium sp. M143R1 (受託番号NITE P-96) 又はその変異株であってマメ科植物体内に共生して該植物に害虫摂食阻害性を付与する能力、該植物の生長を促進させる能力、該植物の着莢数を増加させる能力、該植物における根粒数を増加させる能力、及び該植物の収量を増加させる能力を有する変異株。
- Variovorax sp. M30P3 (受託番号NITE P-95)、及び Methylobacterium sp. M143R1 (受託番号NITE P-96)、並びにこれらの変異株であってマメ科植物体内に共生して該植物に害虫摂食阻害性を付与する能力、該植物の生長を促進させる能力、該植物の着莢数を増加させる能力、該植物における根粒数を増加させる能力、及び該植物の収量を増加させる能力を有する変異株からなる群から選択される少なくとも1種が人為的に感染されたマメ科植物。
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