JP7168160B2 - 米の収量を増加させる方法、米の栽培用植物体を栽培する方法、米の収量増加用組成物及び菌体細胞壁を含む組成物又は死菌体 - Google Patents
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Description
しかしながら、これらの技術では、合成品を用いることによる土壌に対する影響の問題や、組換え植物は一般に受け入れ難いという問題などがあり、新たな技術が求められている。
<1> メタノール資化性細菌の細胞壁含有物を穀物類の栽培用植物体に接種することを含むことを特徴とする穀物類の収量を増加させる方法である。
<2> メタノール資化性細菌の細胞壁含有物を穀物類の栽培用植物体に接種することを含むことを特徴とする穀物類の栽培用植物体を栽培する方法である。
<3> 前記接種が、出穂前30日から出穂後30日の間に行われる前記<1>から<2>のいずれかに記載の方法である。
<4> 前記接種が出穂の前と後に行われる前記<1>から<3>のいずれかに記載の方法である。
<5> 前記メタノール資化性細菌が植物体の表面から単離された前記<1>から<4>のいずれかに記載の方法である。
<6> 前記メタノール資化性細菌の単離が、前記メタノール資化性細菌を前記植物体の表面から洗い流して得た洗浄液又は前記植物体を液体培地に入れて培養して得られた液を、培地に接種し、増殖してきたコロニーを同定し、前記メタノール資化性細菌のコロニーを単離することにより行われる前記<5>に記載の方法である。
<7> 前記メタノール資化性細菌の単離に用いる植物体が、茎及び籾の少なくともいずれかである前記<5>から<6>のいずれかに記載の方法である。
<8> 前記接種が、前記メタノール資化性細菌の細胞壁含有物を含む液を前記栽培用植物体に噴霧することにより行われる前記<1>から<7>のいずれかに記載の方法である。
<9> 前記メタノール資化性細菌が、受託番号NITE P-02628のメチロバクテリウム エスピー(Methylobacterium sp.)Rst株である前記<1>から<8>のいずれかに記載の方法である。
<10> 前記メタノール資化性細菌の細胞壁含有物が、死菌体及び菌体細胞壁の少なくともいずれかを含む前記<1>から<9>のいずれかに記載の方法である。
<11> 前記死菌体が破砕菌体を含む前記<1>から<10>のいずれかに記載の方法である。
<12> 前記穀物類が米である前記<1>から<11>のいずれかに記載の方法である。
<13> 前記米が酒米である前記<12>に記載の方法である。
<14> 前記酒米が白鶴錦である前記<13>に記載の方法である。
<15> メタノール資化性細菌の細胞壁含有物を含むことを特徴とする穀物類の収量増加用組成物である。
<16> 前記メタノール資化性細菌が、受託番号NITE P-02628のメチロバクテリウム エスピー(Methylobacterium sp.)Rst株である前記<15>に記載の組成物である。
<17> 前記メタノール資化性細菌の細胞壁含有物が、死菌体及び菌体細胞壁の少なくともいずれかを含む前記<15>から<16>のいずれかに記載の組成物である。
<18> 受託番号NITE P-02628のメチロバクテリウム エスピー(Methylobacterium sp.)Rst株であることを特徴とする微生物である。
また、本発明の微生物は本発明の穀物類の収量増加用組成物に好適に用いることができ、本発明の穀物類の収量増加用組成物は本発明の穀物類の増収方法及び穀物類の栽培方法に好適に用いることができる。そのため、本発明の微生物及び本発明の穀物類の収量増加用組成物についても、本発明の穀物類の増収方法及び穀物類の栽培方法の説明と併せて説明する。
前記穀物類の増収方法及び穀物類の栽培方法は、接種工程を含む限り、特に制限はなく、通常の穀物類の栽培方法を目的に応じて適宜選択することができる。
前記接種工程は、メタノール資化性細菌の細胞壁含有物を穀物類の栽培用植物体に接種する工程である。
前記メタノール資化性細菌の細胞壁含有物は、メタノール資化性細菌の細胞壁を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
前記メタノール資化性細菌は、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属に属する細菌であり、シソやイネ等の植物表面上に生育し、植物由来のメタノールを利用するとともに、植物へはビタミンや植物ホルモンなどを供給し、共生関係にあることが知られている。
前記単離の方法の具体例としては、例えば、前記メタノール資化性細菌を前記植物体の表面から洗い流して得た洗浄液を、培地に接種し、増殖してきたコロニーを同定し、前記メタノール資化性細菌のコロニーを単離することにより行う方法、前記植物体を液体培地に入れて培養して得られた液を、培地に接種し、増殖してきたコロニーを同定し、前記メタノール資化性細菌のコロニーを単離することにより行う方法などが挙げられる。
前記メタノール資化性細菌の細胞壁を調製する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。例えば、培養し、回収した培養菌体を50mM EDTAと2% SDSを含有する水溶液に懸濁し、37℃程度で60分間程度インキュベートした後遠心分離し、その上清に3M酢酸ナトリウムとエタノールを加え混和し、遠心分離を行い、ペレット状の菌体細胞壁を調製する方法などが挙げられる。
前記菌体細胞壁成分の有無を確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノール-硫酸法を用い、多糖を指標として確認する方法などが挙げられる。
前記メタノール資化性細菌の細胞壁含有物におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、賦形剤、乳化剤、湿潤剤、分散剤、可溶化剤、懸濁剤、展着剤、浸透剤、安定剤等の公知の製剤用添加剤などが挙げられる。前記その他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、殺菌剤、殺虫剤、植物生長調節剤などを配合してもよい。
前記その他の成分のメタノール資化性細菌の細胞壁含有物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記破砕処理の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を目的に応じて適宜選択することができる。前記破砕の程度としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記メタノール資化性細菌の細胞壁含有物の剤型としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液剤、乳剤、油剤、水溶液、懸濁液、水和剤、フロアブル、粉剤、微粒剤、粒剤、エアゾール、ペースト剤などが挙げられる。
前記穀物類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イネ科植物、マメ科植物などが挙げられる。
前記イネ科植物の具体例としては、例えば、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバク、ハダカムギ等のムギ類、イネ、モロコシ、トウモロコシ、アワ、キビ、ヒエ、シコクビエ、トウジンビエなどが挙げられる。
前記マメ科植物の具体例としては、例えば、ダイズ、アズキ、リョクトウ、ササゲ、インゲンマメ、ライマメ、ラッカセイ、エンドウ、ソラマメなどが挙げられる。
前記接種の時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、播種前の種子の段階、出穂前の段階、出穂後の段階などが挙げられる。前記接種の時期は、1つの時期であってもよいし、2つ以上の時期であってもよい。これらの中でも、出穂前30日から出穂後30日の間が好ましく、出穂の前と後の両方で行われることがより好ましく、出穂前1日~30日の間と、出穂後1日~30日の間とに行われることが更に好ましく、出穂前15日~30日の間と、出穂後5日~25日の間とに行われることが特に好ましい。前記好ましい時期に接種を行うと、穀物類の収量をより増加させることができる点で、有利である。
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、通常の穀物類の栽培における工程を目的に応じて適宜選択することができる。
前記栽培は、水耕であってもよいし、土耕であってもよい。
本発明の穀物類の収量増加用組成物は、前記メタノール資化性細菌の細胞壁含有物を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
イネの茎を試料とし、NMS培地(Whittenbury, R., K. C. Phillips, and J. F. Wilkinson. 1970. Enrichment, isolation and some properties of methane-utilizing bacteria. J. Gen. Microbiol. 61:205-218.)に0.01%イーストエクストラクトと0.5%メタノールを添加した培地で集積培養を行った。集積培養後の培養液を同組成の平板培地に画線し、生じたコロニーを単離し、メチロバクテリウム エスピー(Methylobacterium sp.)Rst株を得た。
<前培養>
前記製造例1で得られたメチロバクテリウム エスピーRst株を、Hypho最少培地(Delaney N.F., Kaczmarek M.E., Ward L.M., Swanson P.K., Lee M.C. & Marx C.J. Development of an optimized medium, strain and high-throughput culturing methods for Methylobacterium extorquens. PLoS One 8, e62957 (2013))に0.2%コハク酸ナトリウムを添加した培地5mLを用い、試験管にて、28℃で48時間培養した。
Hypho最少培地に0.5%メタノールを添加した培地100mLに、前記前培養した培養液をOD600が0.002となるように加え、500mLのバッフル付き三角フラスコ(2個)にて、28℃、180rpmで72時間培養した。なお、集菌時のOD600は2.9~3.3であった。
前記本培養を行った後、遠心分離により培養菌体を回収した。その後、滅菌水で2回洗浄し、ペレットをOD600換算でODが0.5相当になるように下記組成の展着剤にて調製した。
-展着剤-
・ ポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル 0.2g/L
・ カルボキシメチルセルロースナトリウム 1g/L
※ 超純水にて調製
前記本培養を行った後、遠心分離により培養菌体を回収した。その後、滅菌水で2回洗浄した。洗浄後の菌体をオートクレーブで121℃、20分間滅菌した。滅菌後のペレットを菌液時のOD600換算でODが0.5相当になるように前記展着剤にて調製した。
前記本培養を行った後、遠心分離により培養菌体を回収した。その後、50mM NaCl水溶液で2回洗浄した。培養液量と当量(100mL)の50mM EDTAと2% SDSを含有する水溶液に懸濁した。50mLのコーニングチューブ2本に前記懸濁液を分け、37℃の湯浴で60分間インキュベートした。8,000×gで5分間遠心し、上清を10mLずつ50mLコーニングチューブに分けた。コーニングチューブ1本に対し1mLの3M酢酸ナトリウムと30mLのエタノールを加え混和した。-20℃で一晩保存した。8,000×gで5分間遠心し、ペレット状にし、70%エタノールで1回洗浄した。ペレットを菌液時のOD600換算でODが0.5相当になるように前記展着剤にて調製した。
なお、細胞壁成分の有無は、フェノール-硫酸法を用い、多糖を指標として確認した。具体的には、サンプル100μLに対して100μLの5%フェノールと500μLの硫酸を加え混和し、溶液の黄色への変色により、多糖の存在を確認した。
穀物類の一例として酒米の1つである白鶴錦を用い、以下のようにして穀物類の増収を試験した。
兵庫県多可町東安田地区の圃場にて、各試験区(下記参照)につき約110株の白鶴錦に対して試料を散布した。1回目の散布は8月初旬の穂肥前(出穂の約20日前)に行い、2回目の散布は1回目の散布の1ヵ月後(出穂の約10日後)に実施した。1回あたりの散布量は約400mLであり、噴霧器を用いて稲全体に均一に散布した。
-試験区-
・ 対照散布試験区 ・・・ 展着剤のみ
・ 生菌体散布試験区 ・・・ 製造例2-1で調製した生菌体
・ 死菌体散布試験区 ・・・ 製造例2-2で調製した死菌体
・ 菌体細胞壁散布試験区 ・・・ 製造例2-3で調製した菌体細胞壁
稲刈りは通常時期に行い、各試験区の株数と面積を算出した。圃場にて3週間乾燥した後に脱穀、籾摺り、小型米選機による選別を行い、精玄米重を算出した。結果を表1に示す。
Claims (11)
- メタノール資化性細菌の細胞壁含有物を米の栽培用植物体に接種することを含み、
前記メタノール資化性細菌の細胞壁含有物が、死菌体及び前記メタノール資化性細菌から調製した菌体細胞壁の少なくともいずれかを含むことを特徴とする米の収量を増加させる方法。 - メタノール資化性細菌の細胞壁含有物を米の栽培用植物体に接種することを含み、
前記メタノール資化性細菌の細胞壁含有物が、死菌体及び前記メタノール資化性細菌から調製した菌体細胞壁の少なくともいずれかを含むことを特徴とする米の栽培用植物体を栽培する方法。 - 前記接種が、出穂前30日から出穂後30日の間に行われる請求項1から2のいずれかに記載の方法。
- 前記メタノール資化性細菌が、受託番号NITE P-02628のメチロバクテリウム エスピー(Methylobacterium sp.)Rst株である請求項1から3のいずれかに記載の方法。
- 前記メタノール資化性細菌の細胞壁含有物を米の栽培用植物体の地上部に接種する請求項1から4のいずれかに記載の方法。
- 前記米が酒米である請求項1から5のいずれかに記載の方法。
- メタノール資化性細菌の細胞壁含有物を含み、
前記メタノール資化性細菌の細胞壁含有物が、死菌体及び前記メタノール資化性細菌から調製した菌体細胞壁の少なくともいずれかを含むことを特徴とする米の収量増加用組成物。 - 前記メタノール資化性細菌が、受託番号NITE P-02628のメチロバクテリウム エスピー(Methylobacterium sp.)Rst株である請求項7に記載の組成物。
- 米の栽培用植物体の地上部に接種するためのものである請求項7から8のいずれかに記載の組成物。
- 出穂前30日から出穂後30日の間に接種するためのものである請求項7から9のいずれかに記載の組成物。
- メタノール資化性細菌から調製した菌体細胞壁を含む組成物又はメタノール資化性細菌の死菌体であって、
前記メタノール資化性細菌が、受託番号NITE P-02628のメチロバクテリウム エスピー(Methylobacterium sp.)Rst株であることを特徴とする菌体細胞壁を含む組成物又は死菌体。
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