JP2009064723A - 燃料電池用触媒層及び/又は拡散層の製造方法、製造された燃料電池用触媒層及び/又は拡散層、並びに燃料電池用膜電極接合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】工程がシンプルである触媒層と拡散層のひび割れが抑制された燃料電池用触媒層、拡散層の製造方法を提案することにより、優れた燃料電池の出力を得る。
【解決手段】少なくとも触媒物質と高分子電解質と溶剤を含む触媒インクを基材上に塗布して触媒層前駆体を製造する工程及び/又は少なくとも導電性粉末と撥水性高分子粉末と溶剤を含む撥水性インクを基材上に塗布して拡散層前駆体を製造する工程の後に、熱源と該触媒層前駆体及び/又は拡散層前駆体との間に、多孔質シートを載置し、該触媒層前駆体及び/又は拡散層前駆体を乾燥させる乾燥工程を含むことを特徴とする燃料電池用触媒層及び/又は拡散層の製造方法。
【選択図】図1
【解決手段】少なくとも触媒物質と高分子電解質と溶剤を含む触媒インクを基材上に塗布して触媒層前駆体を製造する工程及び/又は少なくとも導電性粉末と撥水性高分子粉末と溶剤を含む撥水性インクを基材上に塗布して拡散層前駆体を製造する工程の後に、熱源と該触媒層前駆体及び/又は拡散層前駆体との間に、多孔質シートを載置し、該触媒層前駆体及び/又は拡散層前駆体を乾燥させる乾燥工程を含むことを特徴とする燃料電池用触媒層及び/又は拡散層の製造方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、燃料電池用触媒層及び/又は拡散層の製造方法、製造された燃料電池用触媒層及び/又は拡散層に関する。また、燃料電池用膜電極接合体の製造方法に関する。
図9は、固体高分子型燃料電池の要部を示しており、膜電極接合体(MEA:Membrane−Electrode Assembly)1がセパレータ2を挟持して多数配置される。膜電極接合体1は、プロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜3の両面にアノードおよびカソードとして機能する触媒層4が積層されており、アノードおよびカソードにはセパレータ2に形成された流路を介して燃料ガス(水素)および酸化ガス(酸素、通常は空気)が供給される。なお、必要な場合には拡散層5が設けられる。
触媒層4の形成には、触媒物質と電解質と溶剤とを含む触媒インクが用いられ、それを電解質膜3に直接塗布した後、乾燥処理するか、図10aに示すように、該触媒インク4aを適宜の基材シート6上に塗布した後、乾燥処理を行って溶剤を飛散させて、基材シート6の上に触媒層4が積層した積層体7を形成することも行われる。形成された積層体7は、触媒層4側が電解質膜3に面するようにして電解質膜3に積層し、加熱・加圧して触媒層4を電解質膜3側に転写し、基材シート6を除去することによって、図9に示すような膜電極接合体(MEA:Membrane−Electrode Assembly)1とされる。
同様に、拡散層5の形成には、少なくとも導電性粉末と撥水性高分子粉末と溶剤を含む撥水性インクが用いられ、撥水性インクを適宜の基材シート上に塗布した後、乾燥処理を行って溶剤を飛散させて、基材シートの上に拡散層が積層した積層体を形成することが行われる。
触媒物質としては、白金のような貴金属類をカーボンブラックなどの導電性材料の表面に担持させたものが主に用いられ、電解質としては、プロトン伝導性を有するポリマー(例えば、デュポン社の「ナフィオン」(商品名))が主に用いられ、溶剤としては水やシクロヘキサノールやエタノールや2−プロパノールなどの低級アルコールなどである有機物成分が主に用いられる。
触媒インク4aを基材シート6上に塗布した後、乾燥処理を行う過程において、溶剤の飛散等に起因して触媒インク4aが収縮するのは避けられない。従来、基材シート6にはテフロン(商品名)シートのような溶媒で膨潤しない性質のものが用いられており、触媒インク4aが収縮しても基材シートは収縮しないことから、図10bに示すように、乾燥工程において、触媒層4にひび割れ8が生じることがあった。このようなひび割れは燃料電池の性能に影響を与えるので、極力回避しなければならない。
燃料電池の出力特性を向上させるためには、抵抗分極、活性化分極、拡散分極の損失を小さくする必要がある。これらのうち、抵抗分極の損失を減少させるためには、イオン交換膜(電解質膜)の抵抗、触媒層の抵抗、拡散層の抵抗、および、接触抵抗などを小さくすることが重要である。
接触抵抗による損失の一つとして、触媒層、拡散層内の炭素粒子同士の接触抵抗や触媒層と拡散層との界面の接触抵抗がある。また、拡散分極の損失を減少させるためには、触媒表面で酸化剤(もしくは燃料)、イオン、電子の濃度を保つことが重要である。特に、燃料電池の場合、電気化学反応で発生する生成水が酸化剤(もしくは燃料)の濃度拡散を阻害する。そのため、触媒層や拡散層内部から生成水を上手く排出することが重要である。
燃料電池用触媒層、拡散層の作製方法として、触媒層であれば、白金または白金系合金を触媒としてカーボン粒子に担持させた物質(触媒担持粒子)とイオンを触媒表面に供給するためのイオン交換樹脂(高分子電解質)を水や有機溶媒に超音波やジェットミル、ビーズミル、シェアミキサーなどで分散させた触媒層形成用の溶液(触媒インク)を用いて、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートなどの基材上に塗工する方法、膜に直接塗工する方法、スプレー、インクジェットなどが知られている。
ところが、これらの塗工方法において、材料や溶媒組成、及び乾燥条件に多大な注意を払わなければ、乾燥時の凝集力により、触媒層にひび割れが発生する。すなわち、このひび割れは、触媒層内での粒子間の接触面積を小さくし、接触抵抗を大きくするとともに、触媒層表面の面積も小さくなり界面抵抗を大きくさせるため、燃料電池の出力が限定される。
また、これらのひび割れは、燃料電池の電気化学反応で発生する生成水の排水性を悪化させる。カーボン粒子が形成する内部の空隙と比較して極めて大きいひびは、毛細管力が小さいため排水力が小さく、ひびの内部に水が溜まり易い。つまり、排水性の悪化により、酸化剤(もしくは燃料)の拡散分極が大きくなり、燃料電池の出力を低下させる。
拡散層であれば、カーボン粒子とPTFEディスバージョン、界面活性剤、増粘剤などを超音波やジェットミル、ビーズミル、シェアミキサーなどで分散させた拡散層形成用の溶液(撥水インク)を炭素繊維からなる多孔質基材(カーボンペーパーやカーボンクロスもしくは、金属多孔質基材上に塗工もしくは、含浸塗工した後、塗工する方法が知られている。これらの塗工方法においても、触媒層を形成する際と同様に、材料、溶媒組成および乾燥条件に多大な注意を払う必要があり、ひび割れが発生し、接触抵抗や界面抵抗を大きくするとともに、排水性を悪化させ、拡散分極も大きくなり、燃料電池の出力を低下させる。
さらに、多孔質基材に撥水インクを含浸させる拡散層製造において、撥水インクを多孔質基材に含浸後、温風乾燥方法などで急速に乾燥させると、多孔質基材の表面に多孔体の孔を塞ぐ皮張りが発生する。この皮張りは、排水性やガスの拡散を阻害して、燃料電池の性能を悪化させる。また、皮張りは、拡散層の物性(透気度や気孔率など)に現れないこともあり、量産化時の品質を保証することができないため、皮張り無く製造できる方法が望まれる。
触媒インクの場合では、塗工や分散状態を安定化させるような界面活性剤、増粘剤などは、触媒や電解質を被毒させ、性能低下を引き起こすため添加しないほうが好ましい。また、溶液も電解質が偏析しないようなものに限られる。撥水インクの場合では、塗工や分散状態を安定化させるような、界面活性剤、増粘剤などを添加する場合には、PTFEディスパージョンが分解する温度360℃以下で分解するものに限られる。また、界面活性剤や増粘剤に金属イオンが含まれる場合には、電池耐久性を著しく低下させるため、少ないものを選定する必要がある。
このように、限られた材料系のインクで塗工する場合、乾燥条件に注意を図りながら、ひび割れを抑制する必要がある。又、拡散層については、皮張りを抑制する有効な手段は見出されなかったのが現状である。
下記特許文献1には、触媒層のひび割れ抑制策として、触媒インクを直接多孔質支持体に塗工して防ぐ方法が開示されている。特許文献1においても、多孔質支持体に触媒インクを塗布して触媒層を形成する際に、材料、溶媒組成および乾燥条件に注意を払う必要がある。特に、このような多孔性基材に塗布する場合には、多孔性基材の収縮にも注意を払う必要があり、ひび割れを容易に抑制できる方法ではない。また、特許文献1では、本発明のような拡散層のひび割れや皮張りを抑制する手段とはならない。
本発明は、燃料電池用触媒層、拡散層の製造方法に関して、工程がシンプルである触媒層と拡散層のひび割れ抑制方法を提案することにより、優れた燃料電池の出力を得ることを目的とする。
本発明者は、特定の手段を用いて、触媒層前駆体及び/又は拡散層前駆体を均一に乾燥させることによって、上記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
即ち、第1に、本発明は、燃料電池用触媒層及び/又は拡散層の製造方法の発明であり、少なくとも触媒物質と高分子電解質と溶剤を含む触媒インクを基材上に塗布して触媒層前駆体を製造する工程及び/又は少なくとも導電性粉末と撥水性高分子粉末と溶剤を含む撥水性インクを基材上に塗布して拡散層前駆体を製造する工程の後に、熱源と該触媒層前駆体及び/又は拡散層前駆体との間に、多孔質シートを載置し、該触媒層前駆体及び/又は拡散層前駆体を乾燥させる乾燥工程を含むことを特徴とする。本発明により、シンプルな乾燥工程で、燃料電池用触媒層及び/又は拡散層のひび割れと皮張りを抑制することができる。
本発明において、前記熱源と前記多孔質シートとの間隔は接触又は無接触状態で良く、具体的には、熱源と前記多孔質シートとの間隔が0〜10mmであることが好ましい。
本発明において、前記多孔質シートとしてはポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリイミド等の各種高分子多孔質材料、金属多孔質材料、金属メッシュなどを使用することができる。均一で生産性のいい乾燥のためには、多孔質シートの気孔率としては70〜90%が好ましく、膜厚としては10〜500μmが好ましい。
前記多孔質シートの表面に離型剤を塗布することは、乾燥工程後の燃料電池用触媒層及び/又は拡散層を剥離することに有効である。
本発明の乾燥工程において、多孔質シートを介して熱源を用いて前記触媒層前駆体及び/又は拡散層前駆体を片側から乾燥しても良く、両側から乾燥しても良い。両側から乾燥する場合は、前記触媒層前駆体及び/又は拡散層前駆体の両側から、前記熱源と前記触媒層前駆体及び/又は拡散層前駆体との間に、多孔質シートを載置し、前記触媒層前駆体及び/又は拡散層前駆体を乾燥させることとなる。
本発明において、前記熱源としては各種熱源が用いられる。これらの中で、電気ヒーター又は赤外線ヒーターが好ましい。
本発明の燃料電池用触媒層及び/又は拡散層の製造における乾燥工程は、バッチ式でも連続式でも行うことを特徴とするが出来る。特に、生産性を考えると、乾燥工程をロールツーロールで連続的に行うことが好ましい。
第2に、本発明は、上記の方法で製造された燃料電池用触媒層及び/又は拡散層である。本発明の燃料電池用触媒層及び/又は拡散層は、ひび割れ及び表面の皮張りの発生が抑制されており、電気抵抗が少なく、燃料電池に用いた際に、優れた発電出力を得ることができる。
第3に、本発明は、上記の方法で製造された燃料電池用触媒層及び/又は拡散層を高分子電解質膜上に接合することを特徴とする燃料電池用膜電極接合体の製造方法である。これらの接合自体は公知の方法、例えばホットプレスを用いて、バッチ式又は連続式に行うことが出来る。
本発明により、シンプルな乾燥工程で、燃料電池用触媒層及び/又は拡散層のひび割れと皮張りを抑制することができる。又、本発明の燃料電池用触媒層及び/又は拡散層は、ひび割れ及び表面の皮張りの発生が抑制されており、電気抵抗が少なく、燃料電池に用いた際に、優れた発電出力を得ることができる。
図1及び図2に、本発明の乾燥工程での各器材の配置状態の例を示す。図1は、PTFEシートや高分子電解質膜上に触媒インクを塗布し、その上に多孔体シートを載置してヒーターで乾燥して触媒層を作製するするものである。図2は、多孔質材料に撥水インクを塗布し、両側に多孔体シートを載置して両側からヒーターで乾燥して拡散層(MPL)を作製するものである。
本発明による、ひび割れ抑制メカニズムは以下のように考えられる。触媒インクや撥水インクをPTFEシートや高分子電解質膜上に塗布して乾燥させると、乾燥時に、塗工部分に凝集力が働き、表面が著しく早く乾燥するため、内部との歪が発生し、ひび割れの原因となるものである。これに対して本発明では、多孔シートを用いるため、凝集力を多孔体基材が抑えるとともに、表面の乾燥を抑え、内部との歪も少なくひび割れが発生しない。ここで、蒸発物質は、多孔体内部を通って、外部へ放出される。
又、本発明による、皮張り抑制メカニズムは以下のように考えられる。多孔質基材に撥水インクを含浸塗工させたものを直接乾燥させると、多孔質基材表面が著しく早く乾燥するが、内部には多孔質の骨格があり、撥水インクが乾燥する際、厚さ方向に凝集していくことが出来ないため、より乾燥しやすい表面に撥水インクがマイグレーションしてくる。その結果、多孔質基材表面に皮張りを形成しやすくなる。これに対して、本発明では、撥水インクを多孔質基材に塗布したワークと熱源との間に多孔体シートを配置することにより、内部との蒸発の差を抑制し、皮張りを引き起こさないように形成することが出来る。ここで、蒸発物質は、多孔体シート内部を通って、外部へ放出される。
図3に、本発明をロールツーロールで連続的に製造する場合の一例を示す。多孔質基材に触媒インクや撥水インクを塗布し、両側から多孔体シートを送致し、装置内の上下面に熱源を備えた乾燥炉の中をロールツーロールで移動させる。乾燥後は、両側の多孔体シートを外し、多孔質基材上に触媒層や拡散層が作製される。
本発明において、触媒インクや撥水インクを塗工する工程は特に限定されず、例えば、ダイ塗工法、カーテン塗工法、ゲラビア塗工法、スクリーン印刷法、スプレー塗工法、インクジェット塗工法などが好ましく採用できる。
以下、本発明の実施例と比較例を示す。
本発明の実施例
[実施例1]
白金触媒を50wt%担持させた炭素粉末とデュポン製の電解質溶液、商品名Nafion溶液を水とエタノールとプロピレングリコールがそれぞれ44:42:14の溶媒組成になるように添加し混合した後、超音波を照射して分散させ、触媒インクを作製した。
[実施例1]
白金触媒を50wt%担持させた炭素粉末とデュポン製の電解質溶液、商品名Nafion溶液を水とエタノールとプロピレングリコールがそれぞれ44:42:14の溶媒組成になるように添加し混合した後、超音波を照射して分散させ、触媒インクを作製した。
上記触媒インクをPTFE製のシート上にダイ塗工した後、PTFEを2軸延伸させた多孔体フィルムを塗工した触媒インク上へ覆い被せ、温風乾燥炉に入れて乾燥し、多孔体を取り除き、触媒層を作製した。作製した触媒層の白金担持量は0.5mg/cm2とした。
[比較例1]
実施例1と同じ触媒インクを用い、PTFE製のシート上にダイ塗工した後、温風乾燥炉に入れて乾燥させて触媒層を作製した。白金担持量は0.5mg/cm2とした。
実施例1と同じ触媒インクを用い、PTFE製のシート上にダイ塗工した後、温風乾燥炉に入れて乾燥させて触媒層を作製した。白金担持量は0.5mg/cm2とした。
[実施例2]
炭素粉末とデュポン製のPTFEディスバージョンを比率が6:4になるように界面活性剤と増粘剤を含む水溶液に加え、ビーズミルにて分散させ、撥水インクを作製した。
炭素粉末とデュポン製のPTFEディスバージョンを比率が6:4になるように界面活性剤と増粘剤を含む水溶液に加え、ビーズミルにて分散させ、撥水インクを作製した。
撥水インクを東レ製カーボンペーパーに含浸させるようにダイ塗工した後、引き続き、その含浸したカーボンペーパー上に含浸させないようにダイ塗工で撥水インクを塗工した後、塗工側にポリイミドの多孔体フィルムを覆い、その反対の含浸させた側はチタン多孔体で覆い被せ、温風乾燥炉に入れて乾燥し、多孔体を取り除き、360℃の焼成を行い拡散層を作製した。作製した拡散層のカーボンとPTFEの担持量は、基材への含浸量が2mg/cm2、表面への塗布量が4mg/cm2とした。
[比較例2]
実施例2で、ポリイミド多孔体フィルムとチタン多孔体を使用しないこと以外は同様な方法で拡散層を作製した。作製した拡散層のカーボンとPTFEの担持量は、基材への含浸量が2mg/cm2、表面への塗布量が4mg/cm2とした。
実施例2で、ポリイミド多孔体フィルムとチタン多孔体を使用しないこと以外は同様な方法で拡散層を作製した。作製した拡散層のカーボンとPTFEの担持量は、基材への含浸量が2mg/cm2、表面への塗布量が4mg/cm2とした。
[評価]
1.塗工層のひび割れ状態の評価
塗工層の状態を目視にて次の4段階に評価した。
A:ひび割れば全く無い
B:塗工層の一部にひび割れが入っている
C:塗工層の全面にひび割れが入っている
D:全面にひび割れが発生しており、表面に触れると破片が剥離する
下記表1に塗工層のひび割れ状態の結果を示す。
1.塗工層のひび割れ状態の評価
塗工層の状態を目視にて次の4段階に評価した。
A:ひび割れば全く無い
B:塗工層の一部にひび割れが入っている
C:塗工層の全面にひび割れが入っている
D:全面にひび割れが発生しており、表面に触れると破片が剥離する
下記表1に塗工層のひび割れ状態の結果を示す。
次に、実施例1と比較例1の触媒インク塗布面のひび割れ状態を電子顕微鏡にて評価した。図4に、実施例1の電子顕微鏡写真を示す。図5に、比較例1の電子顕微鏡写真を示す。図4と図5の比較により、実施例1の方がひび割れが少ないことが分かる。
2.含浸層の皮張り状態の評価
実施例2と比較例2の含浸させた側の皮張り状態を電子顕微鏡にて評価した。図6に、実施例2の電子顕微鏡写真を示す。図7に、比較例2の電子顕微鏡写真を示す。図6と図7の比較により、実施例2の方が皮張りが少ないことが分かる。
実施例2と比較例2の含浸させた側の皮張り状態を電子顕微鏡にて評価した。図6に、実施例2の電子顕微鏡写真を示す。図7に、比較例2の電子顕微鏡写真を示す。図6と図7の比較により、実施例2の方が皮張りが少ないことが分かる。
3.電池性能評価
実施例1で得た触媒層をジャパンゴアテックス製電解質膜45μm品の両側に130℃、3MPaで熱転写して膜・触媒層接合体を得た。この膜・触媒層接合体の両側に実施例2で得た拡散層が含浸させた側がセパレータ側になるようにで挟み込み、ガス流路が形成されたセパレータで狭持し、測定セルとした。
実施例1で得た触媒層をジャパンゴアテックス製電解質膜45μm品の両側に130℃、3MPaで熱転写して膜・触媒層接合体を得た。この膜・触媒層接合体の両側に実施例2で得た拡散層が含浸させた側がセパレータ側になるようにで挟み込み、ガス流路が形成されたセパレータで狭持し、測定セルとした。
また、同様に比較例1と比較例2を用いて測定セルを得た。
発電条件はアノード側に水素ガスを85℃の加湿温度で500ml/min、0.05MPaとなるように供給し、カソード側に空気を70℃の加湿温度で1000ml/min、0.05MPaとなるように供給した。セル温度を80℃とし、電流を変化させた場合の電圧変化を測定した。
図8に、実施例1+実施例2の測定セルと比較例1+比較例2の測定セルの発電性能結果を示す。図8の結果より、実施例1+実施例2の測定セルの方が比較例1+比較例2の測定セルに比べて、ひび割れ抑制と皮張り抑制が達成され、発電性能が良いことが分かる。特に、高負荷領域で両者の差が現れており、拡散分極が改善されていることが分かる。
本発明により、シンプルな乾燥工程であり、製造された燃料電池用触媒層及び/又は拡散層は、ひび割れ及び表面の皮張りの発生が抑制されており、電気抵抗が少なく、燃料電池に用いた際に、優れた発電出力を得ることができる。本発明は、燃料電池の実用化と普及に貢献する。
Claims (9)
- 少なくとも触媒物質と高分子電解質と溶剤を含む触媒インクを基材上に塗布して触媒層前駆体を製造する工程及び/又は少なくとも導電性粉末と撥水性高分子粉末と溶剤を含む撥水性インクを基材上に塗布して拡散層前駆体を製造する工程の後に、熱源と該触媒層前駆体及び/又は拡散層前駆体との間に、多孔質シートを載置し、該触媒層前駆体及び/又は拡散層前駆体を乾燥させる乾燥工程を含むことを特徴とする燃料電池用触媒層及び/又は拡散層の製造方法。
- 前記熱源と前記多孔質シートとの間隔が0〜10mmであることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用触媒層及び/又は拡散層の製造方法。
- 前記多孔質シートの気孔率が70〜90%であり、膜厚が10〜500μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池用触媒層及び/又は拡散層の製造方法。
- 前記多孔質シートの表面に離型剤を塗布することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の燃料電池用触媒層及び/又は拡散層の製造方法。
- 前記触媒層前駆体及び/又は拡散層前駆体の両側から、前記熱源と前記触媒層前駆体及び/又は拡散層前駆体との間に、多孔質シートを載置し、前記触媒層前駆体及び/又は拡散層前駆体を乾燥させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の燃料電池用触媒層及び/又は拡散層の製造方法。
- 前記熱源が電気ヒーター又は赤外線ヒーターであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の燃料電池用触媒層及び/又は拡散層の製造方法。
- 前記乾燥工程をロールツーロールで連続的に行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の燃料電池用触媒層及び/又は拡散層の製造方法。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載の方法で製造された燃料電池用触媒層及び/又は拡散層。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載の方法で製造された燃料電池用触媒層及び/又は拡散層を高分子電解質膜上に接合することを特徴とする燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
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