JP2009062489A - 機能素子 - Google Patents

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裕美子 畑中
Kotohiro Nomura
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Abstract

【課題】電荷輸送性及び量子効率に優れた機能素子を提供する。
【解決手段】ビニル基を有する高分子材料から形成される膜を備える機能素子であって、上記高分子材料は、−Ar−CH=CH−で表される繰り返し単位を有し、上記繰り返し単位におけるビニル基は、トランス体が主体である機能素子である。ただし、Arは、共役結合に関与する炭素原子数が4以上、20以下からなるアリーレン基又は複素環を有する2価の基を表し、上記高分子材料は、好ましくは触媒として遷移金属錯体を用いたメタセシス重合法により合成される。
【選択図】図2

Description

本発明は、機能素子に関する。より詳しくは、高分子型有機エレクルミネッセンス素子、特にポリアリーレンビニレンを発光層及び/又は電荷輸送層に含む高分子型有機エレクトロルミネッセンス素子、有機薄膜トランジスタ等に好適な機能素子に関するものである。
機能素子は、近年、電界発光素子の1種であるエレクトロルミネッセンス素子(以下、「EL素子」ともいう。)は、自発光性の全固体素子であり、視認性が高く、更に衝撃耐久性に優れているため、広く応用が期待されている。
EL素子は、発光材料として無機材料を用いた無機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「無機EL素子」ともいう。)と、発光材料として有機材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」ともいう。)とに大別することができる。現在は、無機発光材料を用いた無機EL素子が広く用いられているが、無機EL素子は、その駆動に200V以上もの高い交流電圧を要する。また、無機EL素子は、製造コストが高く、輝度が低いといった点で改善の余地がある。
一方、有機EL素子は、無機EL素子と比較して駆動電圧が低く、製造が容易であるため、近年特に盛んに研究がなされている。有機EL素子としては、高分子化合物を用いて発光層、電荷輸送層等の有機層が形成された高分子型有機EL素子と、低分子化合物を用いて発光層、電荷輸送層等の有機層が形成された低分子型有機EL素子とが挙げられる。なかでも、高分子型有機EL素子は、塗布により容易に有機層を製膜することができるので、低分子型有機EL素子の有機層を蒸着法により製膜する場合と比較して、大面積化や低コスト化に有利であると考えられている。一方、高分子型有機EL素子は、低分子型有機EL素子と比較して発光効率及び寿命に劣り、高分子材料の改善が求められている。
それに対して、ポリアリーレンビニレンにおいて、ビニレン基のトランス/シス比を小さくし、シス体のビニレン基の割合を高めることにより、高蛍光収率の高分子蛍光体を実現できるとともに、これを用いれば発光効率の高い高分子発光素子が得られることが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、この文献によれば、シス体が多いほど特性がよいとされていた。
特開2000−169839号公報
しかしながら、有機EL素子等の機能素子に用いられる高分子化材料においては、電荷輸送性の更なる向上と、高量子効率の実現による発光効率の更なる向上とが依然求められていた。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、電荷輸送性及び量子効率に優れた機能素子を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、電荷輸送性及び量子効率に優れた機能素子について種々検討したところ、機能素子の膜(有機層)に用いられるポリアリーレンビニレンにまず着目した。そして、実用化の障壁となっているポリアリーレンビニレンの低電荷輸送性及び低発光効率(低量子効率)の原因は、ポリアリーレンビニレンの主鎖に含まれるビニレン基にシス体及びトランス体の構造異性体が存在するためであり、この構造異性体の存在によりポリアリーレンビニレンを用いた機能素子において電荷輸送性、量子効率等の素子特性が低下するのではないかと考えた。そこで、メタセシス重合法により合成されたアリーレンビニレン系化合物は、ビニレン基のほぼ全てがトランス体となることに着目するとともに、このビニレン基のほぼ全てがトランス体であるアリーレンビニレン系化合物のデバイス化への検討を鋭意行った結果、このようにビニレン基がトランス体を主体とするポリアリーレンビニレンを用いて機能素子の膜(有機層)を形成することにより、優れた電荷輸送層及び量子効率を有する機能素子を実現できることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明は、ビニル基を有する高分子材料から形成される膜を備える機能素子であって、上記高分子材料は、下記化学式(1)で表される繰り返し単位を有し、上記繰り返し単位におけるビニル基は、トランス体が主体である機能素子である。
−Ar−CH=CH− (1)
式(1)中、Arは、共役結合に関与する炭素原子数が4以上、20以下からなるアリーレン基又は複素環を有する2価の基を表す。
本発明の機能素子の構成としては、このような構成要素を必須として形成されるものである限り、その他の構成要素を含んでいても含んでいなくてもよく、特に限定されるものではない。
本発明の機能素子における好ましい形態について以下に詳しく説明する。
上記ビニル基を有する高分子材料から形成される膜は、ビニル基を有する高分子材料以外の成分を含有してもよい。
上記高分子材料は、触媒として遷移金属錯体を用いたメタセシス重合法により合成されることが好ましい。
このように、本発明は、ビニル基を有する高分子材料から形成される膜を備える機能素子であって、上記高分子材料は、触媒として遷移金属錯体を用いたメタセシス重合法により合成されたものであり、上記化学式(1)で表される繰り返し単位を有する機能素子であってもよい。
上記遷移金属錯体は、中心金属がルテニウム又はモリブデンであることが好ましい。
上記高分子材料は、下記化学式(2)で表される単量体から合成されることが好ましい。
CH=CH−Ar−CH=CH (2)
式(2)中、Arは、式(1)と同義である。
上記機能素子は、有機エレクトロルミネセンス素子であってもよい。
上記有機エレクトロルミネセンス素子は、発光層を有し、前記ビニル基を有する高分子材料から形成される膜を発光層としてもよい。このとき、上記高分子材料は、ポリフェニルビニレン又はポリフルオレンビニレン系高分子材料であることが好ましい。
なお、ポリフェニルビニレン又はポリフルオレンビニレン系高分子材料は、少なくともフェニレン基又はフルオレン基(ただし、フェニレン基及びフルオレン基はそれぞれ、置換されていてもよい。)とビニレン基とが結合した構造を有する高分子材料であることが好ましい。
上記有機エレクトロルミネセンス素子は、電荷輸送層を有し、上記ビニル基を有する高分子材料から形成される膜を電荷輸送層としてもよい。また、上記電荷輸送層は、正孔輸送層であってもよい。このとき、上記高分子材料は、ポリフルオレンビニレン系高分子材料であることが好ましい。
本発明の機能素子によれば、優れた電荷輸送性及び量子効率を実現することができる。
以下に実施形態を掲げ、本発明を図面を参照して更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
(実施形態1)
まず、本発明の機能素子を有機EL素子に応用した場合について説明する。なお、本発明の機能素子は、有機機能素子と呼ばれるものであってもよい。
本実施形態の有機EL素子の構造としては、例えば、基板上に以下の(a)〜(e)の積層構造が形成されたものが挙げられる。なお、(a)〜(e)において、/は積層を示す。
(a)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(b)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
(c)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極
(d)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(e)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
なお、本実施形態の有機EL素子において、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層及び電子輸送層は、それぞれ独立に2層以上用いてもよく、更に、電荷注入の改善、界面の密着性向上や及び/又は混合の防止等のために、いずれかの界面にバッファー層を挿入してもよい。積層する層の順番及び数は特に限定されず、発光効率、素子寿命等の特性を勘案して適宜設定することができる。また、各同一層中において、発光材料、正孔注入材料、正孔輸送材料、電子注入材料、電子輸送材料等を混合して使用してもよい。
なお、正孔注入層は、発光層又は正孔輸送層への優れた正孔注入性を有する正孔注入材料を含有し、陽極から発光層又は正孔輸送層への正孔の注入効率を向上する機能を有する。電子注入層は、発光層又は正孔輸送層への優れた電子注入性を有する電子注入材料を含有し、陰極から発光層又は正孔輸送層への電子の注入効率を向上する機能を有する。正孔輸送層は、正孔輸送性に優れた正孔輸送材料を含有し、陽極から発光層へ正孔を輸送する機能を有する。電子輸送層は、電子輸送性に優れた電子輸送材料を含有し、陰極から発光層へ電子を輸送する機能を有する。
本実施形態の有機EL素子において、電荷輸送層(正孔輸送層若しくは電子輸送層)及び/又は発光層は、下記化学式(1)で表される繰り返し単位(以下、「アリーレンビニレン単位」ともいう。)を有する高分子材料(以下、「ポリアリーレンビニレン」ともいう。)を用いて形成され、アリーレンビニレン単位におけるビニル基は、トランス体が主体である。
−Ar−CH=CH− (1)
なお、式(1)中、Arは、共役結合に関与する炭素原子数が4以上、20以下からなるアリーレン基又は複素環を有する2価の基、すなわち、共役結合に関与する炭素原子数が4以上、20以下からなるアリーレン基、又は、共役結合に関与する炭素原子数が4以上、20以下からなる複素環を有する2価の基を表す。
ポリアリーレンビニレンは、優れた量子効率を示すことから、発光材料として用いることによって、有機EL素子の発光効率を向上することができる。また、ポリアリーレンビニレンは、電荷輸送性に優れた材料でもあることから、電荷輸送材料(正孔輸送材料又は電子輸送材料)として用いることによって、機能素子の電荷輸送性能を向上することができる。
アリーレンビニレン単位の構造にもよるが、上記化学式(1)で表される繰り返し単位の合計は、全繰り返し単位の10モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましい。
ポリアリーレンビニレンは、アリーレンビニレン単位以外の繰り返し単位として、2価の芳香族化合物基若しくはその誘導体、複素環を有する2価の基若しくはその誘導体、又は、それらを組み合わせて得られる基等を含んでいてもよい。また、ポリアリーレンビニレンにおいて、アリーレンビニレン単位及び/又は他の繰り返し単位が、エーテル基、エステル基、アミド基、イミド基等を有する非共役の単位で連結されていてもよいし、繰り返し単位にそれらの非共役部分が含まれていてもよい。
なお、ポリアリーレンビニレンがアリーレンビニレン単位以外の繰り返し単位を有する場合、ポリアリーレンビニレンの構造は、ランダム、ブロック又はグラフト共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する高分子、例えばブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。他方、量子収率の高いポリアリーレンビニレンを得る観点からは、完全なランダム共重合体より、ブロック性を帯びたランダム共重合体又はブロック若しくはグラフト共重合体が好ましい。また、ポリアリーレンビニレンは、主鎖に枝分かれがあり、末端部が3つ以上あるものも含む。
上記式(1)のArとしては、特開平9−45478号公報の[化9]に示された2価の芳香族化合物基若しくはその誘導体基、複素環を有する2価の基若しくはその誘導体基、又はそれらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。
なかでも、式(1)のArとしては、フェニレン基、置換フェニレン基、ビフェニレン基、置換ビフェニレン基、ナフタレンジイル基、置換ナフタレンジイル基、アントラセン−9,10−ジイル基、置換アントラセン−9,10−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、置換ピリジン−2,5−ジイル基、チエニレン基、置換チエニレン基、フルオレン基又は置換フルオレン基が好ましい。更に好ましくは、Arは、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレンジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、チエニレン基、フルオレン基又は置換フルオレン基である。
上記式(1)のArが1つ以上のアルキル基、アルコキシ基又はアルキルチオ基を有している場合には、これらの置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソアミル基、2−エチルヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、イソアミルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、イソアミルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基等が挙げられる。
なお、ポリアリーレンビニレン中における複数のArはそれぞれ、同一の基であってもよいし、異なる基であってもよいが、溶解性の観点からは、ヘキシル基以上の炭素鎖が長いものであることが好ましい。
ポリアリーレンビニレンの蛍光強度及び溶解性を向上する観点からは、Arが2つ以上の置換基を有することが好ましい。また、同じ炭素数を有するアルキル鎖で比較すると、蛍光強度及び溶解性を向上させる観点からは直鎖状のものよりは枝分かれのものが好ましく、ポリアリーレンビニレンを電荷輸送材料として使用し、電荷輸送能力を向上する観点からは枝分かれのものよりは直鎖状のものが好ましい。
アリーレンビニレン単位中におけるトランス体のビニル基の割合としては、具体的には、50モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが更に好ましく、実質的にトランス体しか含まない、すなわち実質的にシス体を含まないことが特に好ましい。
なお、ビニル基のX(Xは、任意の数)モル%以上がトランス体であるとは、高分子材料の平均としての値であり、高分子材料に含まれる一つ一つの重合体(ポリマー)が必ずしも全てこれらの値を満たしている必要はない。
また、ビニル基が実質的にシス体を含まないとは、NMR測定においてシス体のビニル基に起因するピークが検出されない程度であることが好ましい。
ポリアリーレンビニレンの末端基は特に限定されないが、重合活性基(ビニレン基)がそのまま残っていると、有機EL素子にしたときに発光特性及び/又は寿命が低下する可能性があるので、安定な基で保護されていることが好ましい。末端基としては、主鎖の共役構造と連続した共役結合を有しているものが好ましく、例えば、ビニレン基を介してアリール基又は複素環を有する2価の基と結合している構造が挙げられる。より具体的には、特開平9−45478号公報の[化10]に記載の置換基等が挙げられる。
ポリアリーレンビニレンの合成法としては特に限定されないが、触媒として遷移金属錯体(金属カルベン錯体)を用いたメタセシス重合法が好ましく、これにより、ポリアリーレンビニレンを容易に製造することができる。
より具体的には、ポリアリーレンビニレンは、下記化学式(2)で表される単量体(モノマー)から合成されることが好ましい。
CH=CH−Ar−CH=CH (2)
なお、式(2)中、Arは、式(1)と同義である。
なお、メタセシス重合における反応条件としては、以下が挙げられ、これにより、ポリアリーレンビニレンを容易に合成ことができる。すなわち、反応温度は、0℃以上、200℃以下であることが好ましく、20℃以上、100℃以下であることがより好ましい。また、反応時間は、0.5時間以上、72時間以下であることが好ましく、1時間以上、24時間以下であることがより好ましい。更に、重合に用いられる単量体と遷移金属錯体とのモル比は、1:1000以下であることが好ましく、1:500以下であることがより好ましい。
メタセシス重合に用いられる遷移金属錯体は、中心金属がルテニウム又はモリブデンであることが好ましく、具体的には、中心金属がルテニウムである遷移金属錯体としては、ルテニウム・カルベン錯体、通称グラブス(Grubbs)触媒が好適であり、なかでも第2世代グラブス触媒及びその改良触媒がより好ましい。より具体的には、第2世代グラブス触媒としては、下記化学式(3)で表される化合物が挙げられ、第2世代グラブス触媒の改良触媒としては、下記化学式(4)〜(6)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2009062489
なお、式(3)〜(6)中、Arは、置換芳香族基を表し、特に2,6−位にアルキル置換基を有するフェニル基が好適であり、より具体的には、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基等が好適である。また、式(4)中、Rは、イソプロピル基等のアルキル基を表し、式(6)中、Rは、シクロヘキシル基、イソプロピル基等のアルキル基を表す。更に、式(3)及び(5)中、Phは、フェニレン基を表し、式(5)中、Xは、ハロゲン元素を表す。
一方、中心金属がモリブデンである遷移金属錯体としては、モリブデンカルベン錯体、いわゆるシュロック(Schrock)触媒が好適である。より具体的には、中心金属がモリブデンである遷移金属錯体としては、例えば、下記化学式(7)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2009062489
ポリアリーレンビニレンは、膜(薄膜)で利用されることから、固体状態で蛍光を発する、又は、固体状態で電荷輸送性を発揮することが好ましい。
ポリアリーレンビニレンに対する良溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、デカリン、n−ブチルベンゼン等が挙げられる。なお、ポリアリーレンビニレンの構造、分子量等にもよるが、ポリアリーレンビニレンは、通常、これらの溶媒に0.1重量%以上溶解することができる。
ポリアリーレンビニレンは、数平均分子量がポリスチレン換算で1000〜1000000であることが好ましく、10000〜500000であることがより好ましい。ポリアリーレンビニレンの重合度は特に限定されず、アリーレンビニレン単位の構造、その割合等によっても適宜変更することができる。他方、成膜性の観点からは、アリーレンビニレン単位の合計数は、一般には、好ましくは5〜10000、より好ましくは10〜5000である。
ポリアリーレンビニレンを有機EL素子の発光材料として用いる場合、その純度が発光特性に影響を与えるため、合成後、再沈精製、クロマトグラフィーによる分別等の純化処理を行うことが好ましい。
高分子型有機EL素子を作製する際に、上述の有機溶媒可溶性のポリアリーレンビニレンを用いることにより、ポリアリーレンビニレンを含有する溶液を基板に塗布した後、乾燥により溶媒を除去するだけで成膜することができる。また、ポリアリーレンビニレンと、他の電荷輸送材料又は発光材料を混合した場合においても同様な手法により成膜することができる。このように、ポリアリーレンビニレンは、有機EL素子等の機能素子の製造上、非常に有利である。
なお、ポリアリーレンビニレンを含有する溶液から膜を形成する方法としては、スピンコート法、インクジェット法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ドクターブレード法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法等の塗布法を用いることができる。
吸湿及び変質を防止する観点から、成膜工程(乾燥工程も含む)は、不活性ガス中で行うことが好ましい。また、より効果的に残留溶剤を除去する観点からは、乾燥工程は、減圧下で行うことが好ましい。
また、ポリアリーレンビニレンを含有する溶液から発光層を形成する場合は、発光層形成用塗液は、発光層と、発光層に接する層との付着性を向上させる観点から、ポリアリーレンビニレンの他に、結着用の樹脂を含有してもよい。結着用の樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル等が挙げられる。更に、発光層形成用塗液は、その他、レベリング剤、発光アシスト剤、電荷注入輸送材料(正孔注入材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子注入材料等)、添加剤(ドナー、アクセプター等)、発光性のドーパント等を含有していてもよい。発光層の膜厚は特に限定されないが、1nm〜1μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜100nmの範囲である。
ポリアリーレンビニレンを有機EL素子の発光材料として用いる場合、発光層に例えばポリアリーレンビニレン以外の発光材料(蛍光又は燐光材料)を混合してもよい。すなわち、発光層は、2種以上の発光材料を含有していてもよい。また、発光層は、異なる発光材料を含有する複数の発光層を積層したものであってもよい。本実施形態の有機EL素子において使用可能なポリアリーレンビニレン以外の発光材料としては、従来公知のものが挙げられる。具体的には、低分子蛍光材料としては、例えば、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)−ビフェニル(DPVBi)等の芳香族ジメチリデェン化合物、5−メチル−2−{2−[4−(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)フェニル]ビニル}ベンゾオキサゾール等のオキサジアゾール化合物、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−t−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)等のトリアゾ−ル誘導体、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン等のスチリルベンゼン化合物、チオピラジンジオキシド誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、フルオレノン誘導体等の蛍光性有機材料、アゾメチン亜鉛錯体、(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム錯体(Alq3)等の蛍光性有機金属化合物等が挙げられる。また、高分子蛍光材料としては、例えば、ポリ(2−デシルオキシ−1,4−フェニレン)(DO−PPP)、ポリ{2,5−ビス−[2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)エトキシ]−1,4−フェニル−アルト−1,4−フェニルレン}ジブロマイド(PPP−NEt3+)、ポリ[2−(2’−エチルヘキシルオキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)、ポリ[5−メトキシ−(2−プロパノキシサルフォニド)−1,4−フェニレンビニレン](MPS−PPV)、ポリ[2,5−ビス−(ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)](CN−PPV)、(ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン))(PDAF)、ポリスピロ等が挙げられる。更に、高分子蛍光材料の前駆体としては、例えば、PPV前駆体、PNV前駆体、PPP前駆体等が挙げけられる。そして、燐光材料としては、例えば、イリジウム錯体(例えば、(Ir(ppy))等)、白金錯体(例えば、PtOEP等)等の燐光性有機金属化合物、イリジウム錯体及びカルバゾールの共重合体等が挙げられる。
なお、本実施形態の有機EL素子においては、発光材料として、ポリアリーレンビニレンを用いず、ポリアリーレンビニレン以外の上記発光材料を用いてもよい。この場合も、発光層形成用塗液は、発光層と、発光層に接する層との付着性を向上させる観点から、上記発光材料の他に、結着用の樹脂を含有してもよい。結着用の樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル等が挙げられる。更に、発光層形成用塗液は、その他、レベリング剤、発光アシスト剤、電荷注入輸送材料(正孔注入材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子注入材料等)、添加剤(ドナー、アクセプター等)、発光性のドーパント等を含有していてもよい。
機能素子の電荷輸送性能を向上する観点からは、ポリアリーレンビニレンは、機能素子の電荷輸送材料として用いられてもよい。すなわち、有機EL素子においては、ポリアリーレンビニレンを用いて電荷輸送層(正孔輸送層若しくは電子輸送層)を形成してもよい。なかでも、ポリアリーレンビニレンは、有機EL素子の正孔輸送材料として用いられることが好ましく、ポリアリーレンビニレンを用いて有機EL素子の正孔輸送層を形成することが好ましい。
図1は、実施形態1の有機EL素子の構成の一例を示す断面模式図である。図1に示すように、本実施形態の有機EL素子は、基板10上に、陽極11、正孔注入層12、ポリアリーレンビニレンを含有する正孔輸送層13、発光層14、電子注入層15及び陰極16が積層された構造を有してもよい。
高分子型有機EL素子の低分子型有機EL素子と大きく異なる点としては、製造プロセスが異なることが挙げられ、高分子型有機EL素子は、インクジェット法、スピンコート法、バーコート法、スプレーコート法等のウェットプロセスによってデバイスの作製が可能であるのに対して、低分子型有機EL素子は、有機蒸着法等のドライプロセスによってデバイスが作製される。したがって、高分子型有機EL素子は、低分子型有機EL素子に対して製造面で優位性があるとされている。しかしながら、溶剤を使用するウェットプロセスの難点としては、下層(既に形成された層)を溶解する溶剤を用いて上層(後に形成される層)を塗布形成するのが困難なことが挙げられる。したがって、図1に示したように、正孔輸送材料としてポリアリーレンビニレンを用いる場合において、正孔輸送層の上層に有機溶媒に可溶の発光層をウェットプロセスにより積層する場合、正孔輸送層として形成したポリアリーレンビニレンの層が溶解してしまうおそれがある。そこで、ポリアリーレンビニレン系材料を正孔輸送層として用いる場合は、この正孔輸送層の膜を形成した後、難溶性にすることが好ましい。この方法としては、正孔輸送層に用いられるポリアリーレンビニレン系材料の化学構造中に架橋ユニットを導入すること、又は、ポリアリーレンビニレン系材料とは別の成分として、熱、紫外線等により架橋反応が起こり得る成分を導入することが好ましい。
ポリアリーレンビニレンを有機EL素子の正孔輸送材料として用いる場合、正孔輸送層に例えばポリアリーレンビニレン以外の正孔輸送材料を混合してもよい。また、本実施形態の有機EL素子においては、正孔輸送材料として、ポリアリーレンビニレンを用いず、ポリアリーレンビニレン以外の正孔輸送材料を用いてもよい。本実施形態の有機EL素子において利用可能な、ポリアリーレンビニレン以外の正孔輸送材料としては特に限定されず、例えば、無機P型半導体材料、ポルフィリン化合物、N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス−(フェニル)−ベンジジン(TPD)、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPD)等の芳香族第三級アミン化合物、ヒドラゾン化合物、キナクリドン化合物、スチリルアミン化合物等の低分子材料、ポリアニリン(PANI)、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンサルフォネイト(PEDT/PSS)、ポリ[トリフェニルアミン誘導体](Poly−TPD)、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等の高分子材料、ポリ(p−フェニレンビニレン)前駆体(Pre−PPV)、ポリ(p−ナフタレンビニレン)前駆体(Pre−PNV)等の高分子材料前駆体等が挙げられる。正孔輸送層の膜厚は、用いる材料にもよるが、1nm〜10μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜100nmの範囲である。なお、正孔輸送層は、上述のように2種以上の正孔輸送材料を含有していてもよい。また、正孔輸送層は、異なる正孔輸送材料を含有する複数の正孔輸送層を積層したものであってもよい。
正孔輸送層の形成方法としては、少なくとも1種の正孔輸送材料(ポリアリーレンビニレン又はその他の高分子正孔輸送材料)を溶媒に溶かした正孔輸送層形成用塗液を用いてウェットプロセスにより形成する方法、少なくとも1種の正孔輸送材料を用いてドライプロセスにより形成する方法等が挙げられる。ウェットプロセスに用いられる溶媒は、上記正孔輸送材料を溶解又は分散できる溶剤であればよく、例えば、純水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、キシレン、トリメチルベンゼン等を用いることができる。また、正孔輸送層形成用塗液は、正孔輸送層及び正孔注入層の付着性を向上させる観点から、結着用の樹脂を含有してもよい。結着用の樹脂は、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル等を用いることができる。更に、正孔輸送層形成用塗液は、その他、レベリング剤、添加剤(ドナー、アクセプター等)等を含有していてもよい。一方、正孔輸送層をドライプロセスにより形成する場合には、正孔輸送層は、添加剤(ドナー、アクセプター等)等を含有していてもよい。
正孔輸送層形成用塗液からの成膜方法としては、スピンコート法、インクジェット法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法等の塗布法を用いることができる。
なお、高分子化合物を含有する溶液を回転している基板上にキャストして成膜するスピンコート法(スピンキャスト法)は、容易に平坦性が高い膜を得られるという利点を有する。しかしながら、スピンコート法によって形成された膜において、高分子化合物の分子鎖(主鎖)は、膜面に平行に配向すると考えられる。また、本発明の機能素子に用いられるポリアリーレンビニレンについては、特に分子鎖の配向が重要になると考えられ、ポリアリーレンビニレンを用いて発光層を形成する場合には、分子鎖の配向、すなわち分子配向が起こらないように成膜されることが好ましい。これは、分子配向がおきることでエキシマー発光が起こり、発光波長がブロード化する懸念があるためである。したがって、ポリアリーレンビニレンを用いて発光層が形成された発光装置(有機ELディスプレイ、照明装置等)を作製する場合には、インクジェット法、スプレー法、印刷法等の分子配向が起こらないような塗布方法により発光層を成膜することが好ましい。また、スピンコート法を用いる場合は、回転数を比較的遅くした条件により発光層を成膜することが好ましく、後述する実施例においても、実際にスピンコートをする際の回転数を遅くした条件で素子作製を行った。
一方、高分子化合物の分子鎖を配向させることで電荷輸送パスの空間的及びエネルギー的不規則性が低減できるため、高分子化合物の電荷移動度の向上が期待できる。したがって、ポリアリーレンビニレンを用いて有機TFTや有機EL素子の電荷輸送層を形成する場合には、スピンコート法、キャスト法等の塗布方法により有機膜を形成することが好ましく、これにより高性能な膜を形成することができる。
正孔注入層に含有される正孔注入材料としては、上記正孔輸送材料と同様の材料を用いることが可能であるが、正孔輸送材料のHOMOレベルの絶対値が、正孔注入材料のHOMOレベルの絶対値より大きくなるように正孔輸送材料及び正孔注入材料を選択することが好ましい。これにより、正孔をより効率よく発光層に注入及び輸送でき、有機EL素子の駆動電圧の低減及び/又は発光効率の向上が可能となる。また、正孔輸送材料のLUMOレベルの絶対値が、正孔注入材料のLUMOレベルの絶対値より小さくなるように正孔輸送材料及び正孔注入材料を選択することが好ましい。これにより、電子をより効率よく発光層に閉じ込めることができ、有機EL素子の発光効率の向上が可能となる。正孔注入層の膜厚は、用いる材料にもよるが、1nm〜10μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜100nmの範囲である。なお、正孔注入層は、2種以上の正孔注入材料を含有していてもよい。また、正孔注入層は、異なる正孔注入材料を含有する複数の正孔注入層を積層したものであってもよい。
正孔注入層の形成方法としては、少なくとも1種の正孔注入材料を溶媒に溶かした正孔注入層形成用塗液を用いてウェットプロセスにより形成する方法、少なくとも1種の正孔注入材料を用いてドライプロセスにより形成する方法等が挙げられる。ウェットプロセスに用いられる溶媒は、上記正孔注入材料を溶解又は分散できる溶剤であればよく、例えば、純水、メタノール、エタノール、THF、クロロホルム、キシレン、トリメチルベンゼン等を用いることができる。また、正孔注入層形成用塗液は、正孔注入層及び陽極の付着性を向上させる観点から、結着用の樹脂を含有してもよい。結着用の樹脂は、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル等を用いることができる。更に、正孔注入層形成用塗液は、その他、レベリング剤、添加剤(ドナー、アクセプター等)等を含有していてもよい。一方、正孔注入層をドライプロセスにより形成する場合には、正孔注入層は、添加剤(ドナー、アクセプター等)等を含有していてもよい。
正孔注入形成用塗液からの成膜方法としては、スピンコート法、インクジェット法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法等の塗布法を用いることができる。
電子輸送層に含有される電子輸送材料としては特に限定されず、例えば、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、フルオレノン誘導体等の低分子材料、ポリ[オキサジアゾール]等の高分子材料等が挙げられる。電子輸送層の膜厚は、用いる材料にもよるが、1nm〜1μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜100nmの範囲である。なお、電子輸送層は、2種以上の電子輸送材料を含有していてもよい。また、電子輸送層は、異なる電子輸送材料を含有する複数の電子輸送層を積層したものであってもよい。
電子輸送層の形成方法としては、少なくとも1種の電子輸送材料を溶媒に溶かした電子輸送層形成用塗液を用いてウェットプロセスにより形成する方法、少なくとも1種の電子輸送材料を用いてドライプロセスにより形成する方法等が挙げられる。ウェットプロセスに用いられる溶媒は、上記電子輸送材料を溶解又は分散できる溶剤であればよく、例えば、純水、メタノール、エタノール、THF、クロロホルム、キシレン、トリメチルベンゼン等を用いることができる。また、電子輸送層形成用塗液は、電子輸送層と、発光層、電子注入層及び/又は陰極との付着性を向上させる観点から、結着用の樹脂を含有してもよい。結着用の樹脂は、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル等を用いることができる。更に、電子輸送層形成用塗液は、その他、レベリング剤、添加剤(ドナー、アクセプター等)等を含有していてもよい。一方、電子輸送層をドライプロセスにより形成する場合には、電子輸送層は、添加剤(ドナー、アクセプター等)等を含有していてもよい。
電子輸送形成用塗液からの成膜方法としては、スピンコート法、インクジェット法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法等の塗布法を用いることができる。
電子注入層に含有される電子注入材料としては特に限定されないが、仕事関数が低い材料が好ましく、より具体低には、例えば、リチウム(Li)(仕事関数φ=2.4eV)、ナトリウム(Na)(φ=2.4eV)、カリウム(K)(φ=2.3eV)、ルビジウム(Rb)(φ=2.2eV)、セシウム(Cs)(φ=2.0eV)等のアルカリ金属、マグネシウム(Mg)(φ=3.6eV)、カルシウム(Ca)(φ=2.8eV)、ストロンチウム(Sr)(φ=2.4eV)、バリウム(Ba)(φ=2.5eV)等のアルカリ土類金属、スカンジウム(Sc)(φ=3.3eV)、イットリウム(Y)(φ=3.3eV)、ランタン(La)(φ=3.5eV)、セリウム(Ce)(φ=3.3eV)、プラセオジム(Pr)(φ=2.7eV)、ネオジム(Nd)(φ=3.2eV)、ガドリニウム(Gd)(φ=3.1eV)等の希土類金属、アルミニウム−リチウム合金(Al−Li)、マグネシウム−銀合金(Mg−Ag)等の低仕事関数材料を含む合金等が好ましい。また、上記元素の化合物も電子注入材料として好ましく、特に酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物が好ましく、なかでも、フッ化リチウム(LiF)、酸化リチウム(Li2O)、フッ化セシウム(CsF)、炭酸セシウム(CsCO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、フッ化ストロンチウム(SrF)、酸化バリウム(BaO)、フッ化バリウム(BaF)、炭酸カルシウム(CaCO)、フッ化スカンジウム(ScF)等の化合物が好ましい。電子注入層の膜厚は、用いる材料にもよるが、1nm〜1μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜100nmの範囲である。なお、電子注入層は、2種以上の電子注入材料を含有していてもよい。また、電子注入層は、異なる電子注入材料を含有する複数の電子注入層を積層したものであってもよい。
電子注入層の形成方法としては、例えば、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、スパッタリング法等が挙げられる。なかでも、電子輸送層又は発光層への熱的影響の少ない抵抗加熱蒸着法が好ましい。
陽極及び陰極は、従来の電極材料を用いることができる。陽極としては、仕事関数の高い(好ましくは4eV以上)金属(Au、Pt、Ni等)から形成される金属電極、透明導電材料(ITO、IDIXO(登録商標)、SnO等)を用いて形成された透明電極等が挙げられる。陽極側から光を取り出す場合には、陽極の光透過率は、大きく(好ましくは20%以上)することが好ましい。また、陽極のシート抵抗は小さいことが好ましく、具体的には、50Ω/□以下であることがより好ましい。更に、陽極の膜厚は、用いる材料にもよるが、1nm〜1μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜200nmの範囲である。
基板は、絶縁性の表面を有していれば特に限定されず、例えば、ガラス、石英等の無機材料から形成される基板、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック基板、アルミナ等のセラミックス基板、アルミニウム、鉄等の金属基板にSiO等の無機絶縁材料、有機絶縁材料等の絶縁物をコートした基板、金属基板の表面に陽極酸化等の方法により絶縁化処理を施した基板等を広く用いることができる。また、本実施形態の有機EL素子をアクティブ型とする場合、基板上には、薄膜トランジスタ(TFT)等のスイッチング素子が形成されていても良い。なお、TFTを形成する場合には、1画素当たり少なくとも2つのTFT、すなわち、走査信号線及びデータ信号線に接続されたスイッチ用TFTと、スイッチ用TFT、電源供給線及び陽極に接続された駆動用TFTとを少なくとも1画素内に形成することが好ましい。低温プロセスでポリシリコンTFTを形成する場合には、基板としては、500℃以下の温度で融解したり、歪みが生じたりしない基板、例えばガラス基板を用いることが好ましい。また、高温プロセスでポリシリコンTFTを形成する場合には、基板としては、1000℃以下の温度で融解したり、歪みが生じたりしない基板、例えば石英基板を用いることが好ましい。更に、本実施形態の有機EL装置の採光方式をボトムエミッション型にする場合には、基板は、実質的に無色透明であることが好ましい。
陰極としては、安定な金属(Al等)からなる電極、仕事関数の低い金属を含有する電極(Ca−Al合金、Mg−Ag合金、Li−Al合金等)、絶縁層(薄膜)と金属電極とを組み合わせた電極(LiF/Al、LiF/Ca/Al、BaF/Ba/Al等)等が挙げられる。陰極側から光を取り出す場合には、陰極を島状に形成する等して、陰極の光透過率を大きく(好ましくは20%以上)することが好ましい。また、陰極のシート抵抗は小さいことが好ましく、具体的には、50Ω/□以下であることがより好ましい。更に、陰極の膜厚は、用いる材料にもよるが、1nm〜1μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜200nmの範囲である。
陽極及び陰極の形成方法としては、蒸着法、電子ビーム(Electron Beam;EB)法、分子線エピタクシー(Molecular Beam Epitaxy;MBE)法、スパッタ法等のドライプロセス、又は、スピンコート法、印刷法、インクジェット法等のウェットプロセスが挙げられる。なお、本実施形態の有機EL素子においては、陽極及び陰極の少なくともいずれか一方が透明又は半透明であることが好ましく、これにより発光層からの光の取り出しを効率よく行うことができる。また、本実施形態の有機EL素子をパッシブ型とする場合、陽極は、ストライプ状に形成されるともに、陰極は、陽極と略直交するようにストライプ状に形成されてもよい。一方、本実施形態の有機EL素子をアクティブ型とする場合、陽極は、画素毎にマトリクス状に形成されるともに、陰極は、基板の略全面に形成されてもよい。
本実施形態の有機EL素子は、更に封止基板又は封止膜を備えることが好ましく、封止基板又は封止膜が上述の積層構造を閉止することが好ましい。封止膜又は封止基板の材料としては、従来から封止に用いられる材料を用いることができる。また、封止方法は、公知の封止方法を用いることができ、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスをガラス、金属等で封止する方法、上記封止方法において、更に不活性ガス中に酸化バリウム等の吸湿剤等を混入する方法等を用いることができる。また、封止膜は、陰極上に樹脂を直接スピンコートしたり、貼り合わせたりすることによって形成されてもよい。このように、有機EL素子を封止することにより、外部から酸素、水分等が有機EL素子内に混入するのを防止できるので、本実施形態の有機EL素子の寿命を向上することができる。
なお、本実施形態の有機EL素子は、有機ELディスプレイや照明装置として好適である。また、本発明の機能素子におけるポリアリーレンビニレンは、電荷輸送性に優れることから、本発明の機能素子は、有機EL素子以外に、ホールオンリーデバイス(HOD)や有機薄膜トランジスタ(TFT)としても好適に用いることができる。
以下に実施例を掲げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、平均分子量については、THFを溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算の平均分子量を求めた。
(実施例1)
<9,9−ジ−n−オクチル−2,7−ジビニルフルオレンの合成>
Figure 2009062489
本合成で使用したテトラ(トリフェニルホスフィナト)パラジウム(Pd(PPh3)4)は、『マンフレッド・シュロッサー(Manfred Schlosser)編、「合成における有機金属:マニュアル(Organometallics in Synthesis : a manual)」、(米国)、第2版、ジョン・ウィリー&サンズ(John Wiley & Sons Inc)、2001年12月15日、p. 1126』を参考にし、合成した。また、モノマーである9,9−ジ−n−オクチル−2,7−ジビニルフルオレン(上記化学式(8))の合成については、国際公開第97/05184号パンフレットを参考にした。
より具体的には、まず、9,9−ジ−n−オクチル−2,7−ジブロモフルオレン、Pd(PPh3)4及び2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを反応器に所定量加え、系内を窒素置換した。次に、反応器をアルミホイルで遮光し、トルエン(脱水溶媒)を加えた後、トリブチルビニル錫(tributyl(vinyl)tin)を添加した。そして、窒素雰囲気下、オーバーナイトで還流させた。その後、反応溶液を1M水酸化ナトリウム水溶液で1時間撹拌した後、水相を取り除いた。続いて、有機相を再度1M水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、次いで有機相を塩水で洗浄した。次に、回収した有機層を硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥させ、セライトで濾過することによって、黄色の溶液を得た。その後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:n−ヘキサン)によって目的物を回収した。そして、回収した溶液を濃縮し、冷蔵庫で冷却した後、真空乾燥することによって白色固体の目的物を得た。なお、収率は、20%であった。
<トランス−ポリ(9,9−ジ−n−オクチル−2,7−ジビニルフルオレン)(trans−PFV)の合成>
Figure 2009062489
重合に使用するトルエン(脱水溶媒、関東化学社製、製品名:トルエン(脱水)、製品番号: 40500-05)は、使用前にアルミナ(Al2O3)にて濾過を行った。9,9−ジ−n−オクチル−2,7−ジビニルフルオレンと、Ru(CHPh)(Cl2)(ImesH2)(PCy3)(ルテニウム触媒、CAS登録番号[246047-72-3]、ImesH2=1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロミダゾール−2−イリデン)を所定量とり、上記トルエンに溶解させ、反応器である封管型シュレンク管に加えた。このとき、モノマーであるPFVの濃度は、180μmol/mLとし、触媒であるRu(CHPh)(Cl2)(ImesH2)(PCy3)(ベンジリデン{1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン}ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、Cl2(PCy3)(IMesH2)Ru(=CHPh))の濃度は、4.5μmol/mLとした。すなわち、モノマーと触媒とのモル比を40:1とした。そして、これらを50℃で10時間反応させた後、停止剤(エチルビニルエーテル)を反応器に過剰量加えて1時間撹拌した。その後、反応器にメタノールを加えることによってポリマーを沈殿させ、そして、遠心沈降機によりポリマーを回収した。得られたポリマーのMn(数平均分子量)は、275000であり、分子量分布は、2.0であった(THF中測定、ポリスチレン換算分子量)。なお、メタセシス重合法によるtrans−PFVの合成方法に関する参考文献としては、『Kotohiro Nomura, Hisao Morimoto, Yukio Imanishi, Zoubir Ramhani, Yves Geerts、「モリブデン触媒を用いた非環式ジエンメタセシス重合による高分子量のトランス−ポリ(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン−2,7−ビニレン)の合成(Synthesis of High Molecular Weight trans-Poly(9,9-di-n-octylfluorene-2,7-vinylene) by the Acyclic Diene Metathesis Polymerization Using Molybdenum Catalysts)」、Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry、(米国)、ジョン・ウィリー&サンズ(John Wiley & Sons Inc)、2001年7月15日、第39巻、第14号、p. 2463−2470』が挙げられる。
このようにして合成されたtrans−PFV(上記化学式(9))のH−NMR及び13C−NMR測定を行った。図2は、trans−PFVのNMRスペクトルであり、(a)は、H−NMRスペクトルであり、芳香族領域及びビニル領域を拡大したものを示し、(b)は、13C−NMRスペクトルであり、芳香族領域を拡大したものを示す。なお、図2中のa〜hは、上記化学式(9)中におけるa〜hの水素原子に対応するピークを示す。H−NMR及び13C−NMR測定には、JEOL JNM-LA400 spectrometer(399.65MHz,H;100.40MHz,13C)を用い、重クロロホルム溶媒又は重テトレラクロロエタン溶媒中、室温(約25℃)で測定した。ケミカルシフトはテトラクロロシランを0ppmとして算出した。『Thorn-Csanyi, E.; Kraxner, P.、「溶解性の合成、メタセシス重縮合によるall-transポリ(2,5−ジヘプチル−p−フェニレン−ビニレン(Synthesis of soluble, all-trans poly(2,5-diheptyl-p-phenylene-vinylene) via metathesis polycondensation)」、Macromolecular Rapid Communications、(ドイツ)、Huthig & Wepf Verlag、1995年、第16巻、p. 147−153』、『Thorn-Csanyi, E.; Kraxner, P.、「ジアルキル置換されたp−フェニレンビニレンのメタセシス合成のための安定なモリブデン・カルベン錯体の研究(Investigation of stable molybdenum carbene complexes for the metathesis synthesis of dialkylsubstituted poly(p-phenylenevinylene)s)」、Journal of Molecular Catalysis A: Chemical、(オランダ)、Elsevier Science B.V.、1997年、p. 21−28』及び『Thorn-Csanyi, E.; Kraxner, P.、「2,5−ジアルキル−1,4−フェニレンビニレンのall-transオリゴマー−メタセシス調合及び特性解析(All-trans oligomers of 2,5-dialkyl-1,4-phenylenevinylenes - metathesis preparation and characterization」、Macromolecular Chemistry and Physics、(ドイツ)、Huthig & Wepf Verlag、1997年、第198巻、p. 3827−3843』によれば、H−NMRスペクトルにおいて、PFVのシス体のピークは、δ=6.65ppmに現れると報告されているが、本実施例で得られた化合物において、シス体のピークは確認できなかった。また、13C−NMRスペクトルにおいては、モノマーとポリマーとの比較を行うことにより、芳香族環に由来する6本のピークと内部オレフィンに由来する1本のピークとのみが確認された。これら二つの結果から、得られたポリマーは、シス体のビニル基をほとんど含まず、ビニル基の99%以上がトランス体、すなわちall−trans構造である考えられる。
(実施例2)
<トランス−ポリ(2,5−ジ−n−オクチル−1,4−フェニレンビニレン)(trans−PPV)の合成>
Figure 2009062489
トランス−ポリ(2,5−ジ−n−オクチル−1,4−フェニレンビニレン)(trans−PPV)を、実施例1と同様にして、中心元素がルテニウムである遷移金属錯体を用いたメタセシス重合法により合成した。なお、モノマーである2,5−ジ−n−オクチル−1,4−フェニレンビニレン(上記化学式(10))の濃度は、300μmol/mLとし、触媒であるRu(CHPh)(Cl2)(ImesH2)(PCy3)の濃度は、5.0μmol/mLとした。すなわち、モノマーと触媒とのモル比を60:1とした。また、反応は、50℃で24時間行った。得られたポリマーのMn(数平均分子量)は、10700であり、分子量分布は、1.9であった(THF中測定、ポリスチレン換算分子量)。そして、得られたポリマーについて、実施例1と同様に、H−NMR及び13C−NMR測定を行ったところ、シス体のビニル基に由来するピークが観測されなかったことから、本実施例のPPVは、ビニル基の99%以上がトランス体、すなわち上記化学式(11)で表されるtrans−PPVであることがわかった。なお、メタセシス重合法によるtrans−PPVの合成方法に関する参考文献としては、『Kotohiro Nomura, Yoshitaka Miyamoto, Hisao Morimoto, Yves Geerts、「モリブデン又はルテニウム触媒を用いた2,5−ジアルキル−1,4−ジビニルベンゼンの非環式ジエンメタセシス重合:デファクトフリー、かつ高分子量のトランス−ポリ(p−フェニレンビニレン)の精密合成に影響を及ぼす要因(Acyclic Diene Metathesis Polymerization of 2,5-Dialkyle-1,4-divinylbenzene with Molybdenum or Ruthenium Catalysts: Factors Affecting the Precise Synthesis of Defect-Free, High-Molecular-Weight trans-Poly(p-phenylene vinylene)s)」、Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry、(米国)、ジョン・ウィリー&サンズ(John Wiley & Sons Inc)、2005年12月1日、第43巻、第23号、p. 6166−6177』が挙げられる。
(比較例1)
<ポリ(9,9−ジ−n−オクチル−2,7−ジビニルフルオレン)(ポリフルオレンビニレン)の合成>
比較例として、市販のポリ(9,9−(ジ−2−エチルヘキシル)−9H−フルオレン−2,7−ビニレン)(略称:DEH−PFV、アルドリッチ社製)を用いた。なお、DEH−PFVは、実施例1のtrans−PFVと化学組成は同じであるが、その合成法を考慮するとDEH−PFVの構造異性体は、特に制御されていないと考えられる。また、DEH−PFVは、『Jin, S.; Kang, S.; Kim, M.; Chan, Y.; Kim, J.; Lee, K.; Gal, Y.、「ポリ(9,9−ジ−n−オクチルフルオレニル−2,7−ジビニレンの合成及びエレクトロルミネッセンス(Synthesis and Electroluminescence Properties of Poly(9,9-di-n-octylfluorenyl-2,7-vinylene) Derivatives for Light-Emitting Display)」、Macromolecules、(米国)、アメリカ化学学会(American Chemical Society)、2003年2月3日、第36巻、p. 3841−3847』に記載の方法により合成されている。
<量子収率の測定>
実施例1により合成されたtrans−PFVと、比較例として購入したDEH−PFVとについて、量子収率を測定した結果について説明する。まず、量子収率の測定用サンプルの作製方法について説明する。
(実施例3)
水晶基板上に、実施例1のtrans−PFVの25mg/mlキシレン溶液を窒素雰囲気下のグローブボックス内にて4800rpmで50秒間スピンコートを行い、層厚80nmの単膜を形成し、次いで150℃で1時間焼成することによって実施例3のサンプルを作製した。
(比較例2)
水晶基板上に、比較例1のDEH−PFVの25mg/mlキシレン溶液を窒素雰囲気下のグローブボックス内にて2800rpmで50秒間スピンコートを行い、層厚80nmの単膜を形成し、次いで150℃で1時間焼成することによって比較例2のサンプルを作製した。
実施例3及び比較例2のサンプル(単膜)の量子収率を絶対PL量子収率測定装置(浜松フォトニクス社製、製品番号C9920−01)を用いて測定した。なお、励起光の範囲は、325〜450nmとして測定を行った。
図3は、実施例3及び比較例2のポリマーの量子収率を示す。図3に示すように、各励起波長から得られた量子収率の結果から、trans−PFVの方が、DEH−PFVよりも量子収率が高いことがわかった。この結果から、アリーレンビニレン系ポリマーの主鎖に存在するビニル基の構造を制御することで、従来得られなかった高量子収率が得られることがわかった。
なお、有機EL素子(デバイス)としての発光効率と、量子収率とには以下の関係(式(a)及び式(b))が成り立つ。
ηΦ=γβΦ (a)
ηΦ(ext)=χηΦ (b)
ηΦは、内部量子効率であり、γは、電荷(電子及び正孔)のバランス因子であり、βは、キャリア再結合による発光励起子の生成効率であり、Φは、一重項励起子からの発光量子収率(内部量子収率)であり、ηΦ(ext)は、有機EL素子の発光効率(外部量子効率)であり、χは、有機EL素子内部で発生したフォトンの素子外部への取り出し効率である。なお、Φは、主に色素分子固有の性質を反映し、分子固有の蛍光の量子収率と等しい。すなわち、上述のように単膜で求めた量子収率は、式(a)におけるΦに相当する。このように、材料単膜での発光量子収率Φの値が高ければ、それだけ内部量子効率ηΦがよく、外部量子効率すなわち素子の発光特性(発光効率)がよいことがわかる。したがって、実施例1のtrans−PFVは、高量子収率を有することから、実施例1のtrans−PFVを発光材料として用いることによって、従来の発光材料よりも高効率な有機EL素子を実現することができる。
<有機EL素子特性>
実施例1により合成されたtrans−PFVと、実施例2により合成されたtrans−PPVと、比較例として購入したDEH−PFVとを用いて有機EL素子を作製し、それぞれの素子特性を評価した結果について説明する。図4は、実施例4及び5有機EL素子の構成を示す断面模式図である。
(実施例4)
<trans−PFVを用いた有機EL素子(バイポーラデバイス(BPD)発光素子)の作製法>
まず、図4に示すように、インジウム錫酸化物(ITO)からなる層厚150nm、幅2mmのストライプ形状の第1電極(陽極11)が形成されたガラス基板(旭硝子社製、AN100)10に、正孔注入材料であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を水に分散させてなる正孔注入層形成用インク(エイチ・シー・スタルク(H.C.Starck)社製、製品名:BAYTRON P VP CH 8000)を3000rpmで50秒間スピンコートし、膜厚65nmの正孔注入層12を形成した。次に、正孔注入層上に、20mg/mlのtrans−PFVキシレン溶液を窒素雰囲気下、グローブボックス内にて4800rpmで50秒間スピンコートを行い、続いて、150℃で1時間焼成することにより、層厚80nmの発光層14を形成した。次に、発光層14上に10−5Paの圧力条件下、0.5nm/secの蒸着速度でBaを蒸着させることにより層厚1nmの電子注入層(Ba層)15を形成した。次に、Ba層15上に、10−5Paの圧力条件下、3nm/secの蒸着速度でAlを蒸着させることにより層厚1000nmのAl層を積層することにより、第2電極(陰極16)を形成し、有機EL素子を作製した。次に、有機EL素子に対する酸素及び空気による影響をなくすために20mm四方の封止キャップ(旭硝子社製、特注品)を用いて、有機EL素子の周縁部分をUV硬化樹脂により封止した。このとき、樹脂硬化の際のUVによる劣化が画素部分に起こらないように有機EL素子をアルミ箔等で覆った。以上のように作製した、trans−PFVを用いた有機EL素子は、緑色に発光し、1000cd/mの発光輝度の時に発光効率0.2cd/Aを達成した。
(実施例5)
<trans−PPVを用いた有機EL素子(バイポーラデバイス(BPD)発光素子)の作製法>
正孔注入層上に、20mg/mlのtrans−PPVキシレン溶液を窒素雰囲気下、グローブボックス内にて2800rpmで50秒間スピンコートを行い、続いて、150℃で1時間焼成することにより、層厚80nmの発光層を形成したこと以外は、実施例4と同様にして、実施例5の有機EL素子を作製した。以上のように作製した、trans−PPVを用いた有機EL素子は、緑色に発光し、1000cd/mの発光輝度の時に発光効率3.0cd/Aを達成した。
(比較例3)
<DEH−PFVを用いた有機EL素子(バイポーラデバイス(BPD)発光素子)の作製法>
正孔注入層上に、25mg/mlのDEH−PFVキシレン溶液を窒素雰囲気下、グローブボックス内にて2800rpmで50秒間スピンコートを行い、続いて、150℃で1時間焼成することにより、層厚80nmの発光層を形成したこと以外は、実施例4と同様にして、比較例3の有機EL素子を作製した。以上のように作製した、DEH−PFVを用いた有機EL素子は、20V印加時にわずかに発光したが、すぐに消光した。また、この素子は、1000cd/mまで発光しなかった。
実施例4、5及び比較例3の結果から、比較例3で得られた素子はほとんど発光しなかったのに対し、本発明の高分子材料であるポリアリーレンビニレンを用いた素子は、発光効率が高いことがわかった。
このように、ポリアリーレンビニレンを用いることによって、従来の発光材料よりも高効率な有機EL素子が得られることが、量子収率測定及びEL特性の結果からわかった。
<正孔輸送性>
実施例1により合成されたtrans−PFVと、比較例として購入したDEH−PFVとを用いてホールオンリーデバイス(HOD)を作製し、それぞれの正孔輸送性(ホール輸送性)を評価した結果について説明する。図5は、実施例6のホールオンリーデバイス(HOD)の構成を示す断面模式図である。
(実施例6)
<trans−PFVを用いたホールオンリーデバイス(HOD)の作製法>
まず、図5に示すように、ITOからなる層厚150nm、幅2mmのストライプ形状の第1電極(陽極11)が形成されたガラス基板(旭硝子社製、AN100)10に、正孔注入材料であるPEDOT/PSSを水に分散させてなる正孔注入層形成用インク(エイチ・シー・スタルク(H.C.Starck)社製、製品名:BAYTRON P VP CH 8000)を3000rpmで50秒間スピンコートし、膜厚65nmの正孔注入層12を形成した。次に、正孔注入層上に、20mg/mlのtrans−PFVキシレン溶液を窒素雰囲気下、グローブボックス内にて4800rpmで50秒間スピンコートを行い、続いて、150℃で1時間焼成することにより、層厚80nmの正孔輸送層13を形成した。次に、正孔輸送層13上に10−5Paの圧力条件下、3nm/secの蒸着速度でAuを蒸着させることにより層厚100nmのAu層(陰極16)を形成し、HODを作製した。次に、HODに対する酸素及び空気による影響をなくすために20mm四方の封止キャップ(旭硝子社製、特注品)を用いて、HODの周縁部分をUV硬化樹脂により封止した。このとき、樹脂硬化の際のUVによる劣化が起こらないように素子部分をアルミ箔等で覆った。以上のように作製した、trans−PFVを用いたHODは、発光が確認されず、単電荷素子であることが確認された。
(比較例4)
<DEH−PFVを用いたホールオンリーデバイス(HOD)の作製法>
正孔注入層上に、25mg/mlのa−PFVキシレン溶液を窒素雰囲気下、グローブボックス内にて2800rpmで50秒間スピンコートを行い、続いて、150℃で1時間焼成することにより、層厚80nmの正孔輸送層を形成したこと以外は、実施例6と同様にして、比較例4のHODを作製した。以上のように作製した、DEH−PFVを用いたHODは、発光が確認されず、単電荷素子であることが確認された。
図6は、実施例6及び比較例4のホールオンリーデバイス(HOD)の正孔電流密度−電圧曲線を示す。図6に示されるように、本発明に係るtrans−PFVは、同じ組成を持つ従来の材料(a−PFV)よりも正孔輸送性に富んだ材料であることがわかった。これは、アリーレンビニレンポリマーのビニレン基をトランス体に制御することにより、正孔輸送性能が飛躍的に向上したと考えられる。
以上説明したように、アリーレン基をフェニルやフルオレン以外にも置換することで、従来の材料よりも電子輸送性及びホール輸送性に富んだ材料が得られると考えられる。
実施形態1の有機EL素子の構成の一例を示す断面模式図である。 trans−PFVのNMRスペクトルであり、(a)は、H−NMRスペクトルであり、芳香族領域及びビニル領域を拡大したものを示し、(b)は、13C−NMRスペクトルであり、芳香族領域を拡大したものを示す。 実施例3及び比較例2のポリマーの量子収率を示す。 実施例4及び5有機EL素子の構成を示す断面模式図である。 実施例6のホールオンリーデバイス(HOD)の構成を示す断面模式図である。 実施例6及び比較例4のホールオンリーデバイス(HOD)の正孔電流密度−電圧曲線を示す。
符号の説明
10:基板
11:陽極
12:正孔注入層
13:正孔輸送層
14:発光層
15:電子注入層
16:陰極

Claims (10)

  1. ビニル基を有する高分子材料から形成される膜を備える機能素子であって、
    該高分子材料は、下記化学式(1)で表される繰り返し単位を有し、
    該繰り返し単位におけるビニル基は、トランス体が主体であることを特徴とする機能素子。
    −Ar−CH=CH− (1)
    式(1)中、Arは、共役結合に関与する炭素原子数が4以上、20以下からなるアリーレン基又は複素環を有する2価の基を表す。
  2. 前記高分子材料は、触媒として遷移金属錯体を用いたメタセシス重合法により合成されることを特徴とする請求項1記載の機能素子。
  3. 前記遷移金属錯体は、中心金属がルテニウム又はモリブデンであることを特徴とする請求項2記載の機能素子。
  4. 前記高分子材料は、下記化学式(2)で表される単量体から合成されることを特徴とする請求項2記載の機能素子。
    CH=CH−Ar−CH=CH (2)
    式(2)中、Arは、式(1)と同義である。
  5. 前記機能素子は、有機エレクトロルミネセンス素子であることを特徴とする請求項1記載の機能素子。
  6. 前記有機エレクトロルミネセンス素子は、発光層を有し、前記ビニル基を有する高分子材料から形成される膜を発光層とすることを特徴とする請求項5記載の機能素子。
  7. 前記高分子材料は、ポリフェニルビニレン又はポリフルオレンビニレン系高分子材料であることを特徴とする請求項6記載の機能素子。
  8. 前記有機エレクトロルミネセンス素子は、電荷輸送層を有し、前記ビニル基を有する高分子材料から形成される膜を電荷輸送層とすることを特徴とする請求項5記載の機能素子。
  9. 前記電荷輸送層は、正孔輸送層であることを特徴とする請求項8記載の機能素子。
  10. 前記高分子材料は、ポリフルオレンビニレン系高分子材料であることを特徴とする請求項8記載の機能素子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2016013461A1 (ja) * 2014-07-23 2016-01-28 住友化学株式会社 高分子化合物およびそれを用いた有機半導体素子

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