JP2009061888A - 車両の駆動力配分制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の駆動力配分制御装置は、車両に於いて発生させる総駆動力と舵角と各輪スリップ角とに基づいて決定される駆動力配分デフの作動時に於ける各輪のスリップ率と、対応する各輪のドライビングスティフネスとの積に基づいて決定される各輪駆動力にて総駆動力が各輪へ分配されるよう駆動力配分デフの作動を制御することを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
図1(A)は、本発明の駆動力配分制御装置の好ましい実施形態が搭載される四輪自動車を模式的に示している。同図に於いて、左右前輪12FL、12FRと、左右後輪12RL、12RRを有する車両10には、通常の態様にて、運転者によるアクセルペダル14の踏込みに応じて前輪に駆動力を発生する駆動装置16と、左右前輪を操舵するステアリング装置30が搭載される。駆動装置16に於いて、図示の例では、エンジン18からの駆動トルク或いは回転駆動力は、トランスミッション(変速機)20を経て、センタデフ(又はトランスファ)22へ伝達され、更に、前輪側デフ24及び後輪側デフ26を介して、前輪12FL、12FR及び後輪12RL、12RRへそれぞれ伝達される(エンジン18に代えて電動機が用いられる電気式、或いは、エンジンと電動機との双方を有するハイブリッド式の駆動装置であってもよい。)。また、ステアリング装置30は、運転者によって回転されるステアリングホイール32の回転を、ステアリングギア機構34を介して、タイロッド36L、Rへ伝達し、前輪12FL、FRを転舵する。なお、簡単のため図示していないが、車両10には、通常の車両と同様に各輪に制動力を発生する制動系装置が設けられる。
前輪:後輪=4:6
であったとすると、前輪側回転速>後輪側回転速が成立するときには、前後輪の駆動力配分は、
前輪:後輪=3:7
となり、前輪側回転速<後輪側回転速が成立するときには、
前輪:後輪=5:5
となる。(上記の配分比の値は、一つの例であって、これらに限定されるものではない。)
本実施形態の駆動力配分制御装置に於ける制御は、概して述べれば、所謂、限界性能を最大化する駆動力配分制御、即ち、或る旋回状態に在る車両に於いて全ての駆動輪がスリップすることなく、タイヤグリップ力が保持した状態で、加速度をできるだけ増大できるよう駆動装置16から各車輪へ伝達される駆動力(又は駆動トルク)の配分を制御するものである。図1(B)は、かかる駆動力配分制御を実行する本発明の制御装置の制御構成の例をブロック図の形式で表している。
eti=(Di2+Fi2)1/2/μi・Wi・g …(1)
(ここに於いて、Diは、各輪の前後力(駆動力)、Fiは、各輪の横力、Wiは、各輪の垂直荷重、gは、重力加速度を示す。図2(A)参照。)
により定義される値である。各デフへ制御指令として与えられる配分比又は拘束率は、各輪のタイヤ負荷率etiが、全輪について、
eti≦1.0 …(2)
を満たすように設定される。Di、Fi、Wiは、それぞれ、後に詳細に述べる要領にて計算されてよい。
上記の如く、本発明の駆動力配分制御では、結局、現在の車両の走行状態に於ける車速Vs、横加速度Yg、路面摩擦係数μi、(要求)総駆動力Dtに対して、全輪のタイヤ負荷率etiが条件(2)を満たす駆動力配分を与える前後輪の各々の左右配分比及び/又はセンタデフの回転拘束率の組合せが決定される。しかしながら、車速Vs、横加速度Yg、路面摩擦係数μ、(要求)総駆動力Dt等の走行条件から、全輪のタイヤ負荷率etiが条件(2)を満たす駆動力配分を与える前後輪左右配分比及び/又はセンタデフの回転拘束率の組合せを解析的に直接的に算出することは困難である。そこで、実際の配分比及び拘束率の組合せの決定処理に於いては、或る任意の車両の走行に於いて車速Vs、横加速度Yg、路面摩擦係数μ及び(要求)総駆動力Dtを組合せてなる走行条件について、配分比及び拘束率の組合せを設定可能範囲で種々変更しながら、全輪のタイヤ負荷率etiを算出し、その算出結果に於いて、条件(2)を満たす配分比及び拘束率の組合せの一つが決定される。なお、実際の車両に於いて、かかる手法により配分比及び拘束率の組合せを決定する場合には、演算時間を要するため、好適には、予め想定される走行条件の下での演算により決定された配分比及び拘束率の組合せを与えるマップが準備され、車両の走行中には、車速Vs、横加速度Yg、路面摩擦係数μ及び(要求)総駆動力Dtを入力パラメータとして、マップの中から適切な組合せが選択されるようになっていてよい(もし電子制御装置の演算速度が間に合えば、即時の走行条件に対応した配分比と拘束率の組合せが即時的に演算により決定されてよい。)
図1(A)に例示されている如き車両に於いて四輪の駆動力が自在に調節可能である場合、式(1)から理解される如く、タイヤ負荷率etiは、或る車速Vs、横加速度Yg、路面摩擦係数μ、(要求)総駆動力Dtの走行条件下に於いて、前後輪駆動力配分比k、前輪駆動力の左右配分比kf、後輪駆動力の左右配分比krを用いて、各輪の駆動力Di、接地荷重Wi、横力Fiを算定することにより決定される。しかしながら、センタデフが速度拘束式又はトルク感応式デフである場合、センタデフの駆動力配分比が、前後輪の車輪速差(前後推進軸の回転速差)により決定されるので、各輪の車輪速を算出されてから出なければ確定されず、従って、タイヤ負荷率etiの算出に必要な各輪駆動力Diの値が、車輪速を決定してからでなければ確定できない。そこで、本発明では、端的に述べれば、タイヤ負荷率etiの算出に於いて、センタデフの駆動力配分比kを仮値(典型的には、デフが駆動力の可変配分作動を実行しないときの配分比の値)に設定して、各輪の駆動力Di、接地荷重Wi、横力Fiを算出し、しかる後に、車輪速を決定してから、決定された車輪速に基づいて、各輪の駆動力Diが再計算される。以下に於いては、まず、所与のデフの配分比kf、kr、kに於けるタイヤ負荷率の算出のための各輪の駆動力Di、接地荷重Wi、横力Fiの算定処理について説明し、その後、車輪速に基づいて各輪の駆動力Diを再設定する処理について説明する。なお、下記の演算では、左旋回方向を正としている。
まず、各輪の前後力Diは、前輪側、後輪側及びセンタデフの駆動力の配分比をkf、kr、kと仮定したとき、総駆動力Dtを用いて、下記の式により表される。(ここで、kは、後輪への駆動力の配分割合、kfは、両前輪に割り当てられた駆動力の右前輪への駆動力の配分割合、krは、両後輪に割り当てられた駆動力の右後輪への駆動力の配分割合に定義されている。)
DFL=Dt・(1−k)・(1−kf) …(3)
DFR=Dt・(1−k)・kf
DRL=Dt・k・(1−kr)
DFR=Dt・k・kr
WFL=(1/2)M・lf/l−(1/2)Δx−Δyf …(4)
WFR=(1/2)M・lf/l−(1/2)Δx+Δyf
WRL=(1/2)M・lr/l+(1/2)Δx−Δyr
WFR=(1/2)M・lr/l+(1/2)Δx+Δyr
ここで、Mは、車両重量、lf、lrは、それぞれ、前後輪軸から車両の重心までの距離であり、lは、前後輪の車軸間距離(ホイールベース)である。上記に於いて、車両の加速による前輪軸から後輪軸への方向の荷重移動量Δxは、
Δx=H・((DFL+DFR)cosδ+DRL+DRR/(l・g) …(5a)
により与えられる。また、前輪の横方向の左側から右側への荷重移動量Δyfは、遠心力による荷重移動と、前輪の駆動力の車両の横方向成分の荷重移動とを考慮して、
Δyf=H・((M・Rf・Yg(cosδ+βf・sinδ)+(DFL+DFR)sinδ)/(Tr・g) …(5b)
により与えられ、後輪の横方向の左側から右側への荷重移動量は、遠心力による荷重移動を考慮して、
Δyr=H・M・Rr・Yg/(Tr・g) …(5c)
により与えられる。ここで、Hは、重心高、Rf、Rgは、それぞれ、前後輪に於けるロール剛性配分、Trは、トレッド長である。そして、Ygは、横加速度、δは、前輪舵角、βf、βrは、前輪及び後輪のスリップ角である(図2(B)参照)。なお、スリップ角βf、βrは、微小であるので、
cosβf=cosβr=1; sinβf=βf,r; sinβr=βr
とする近似を用いている(以下、上記の近似を用いるときには、表式に於いて、「〜」を用いる。)。
(M・lf/l−Δx)・Yg …(6a)
により与えられ、これと、駆動力の旋回半径方向成分(DFL+DFR)・sinβf〜(DFL+DFR)・βfと横力の旋回半径方向成分(FFL+FFR)・cosβf〜(FFL+FFR)との釣り合いの式
(M・lf/l−Δx)・Yg=(DFL+DFR)・βf+(FFL+FFR)
から、前輪横力和として、
Ff=(FFL+FFR)=(M・lf/l−Δx)・Yg−(DFL+DFR)・βf …(6b)
を得る。同様に、後輪についても、その横力和として、
Fr=(FRL+FRR)=(M・lr/l+Δx)・Yg−(DRL+DRR)・βr …(6c)
が得られる。
(DRR−DRL+(DFR−DFL)cosδ)(Tr/2)+(DFR+DFL)sinδ・lf …(6d)
と表される。このヨーモーメントと、前輪から後輪への車軸に垂直方向の横力移動量ΔFによるヨーモーメントΔF・lとが釣り合うと考えると、横力移動量ΔFは、
ΔF={(DRR−DRL+(DFR−DFL)cosδ)(Tr/2)+(DFR+DFL)sinδ・lf}/l …(6e)
と表すことができる。従って、ヨーモーメントの釣り合いの条件から得られる前後輪の各々の横力の移動量ΔFf、ΔFrは、それぞれ、
ΔFf=ΔF・cosδ …(6f)
ΔFr=ΔF
とすることができる。ΔFfにcosδが乗じられているのは、前輪の横力は、車軸に垂直方向から舵角δだけ傾いているからである。かくして、式(6b)、(6c)の横力の表式に於いて、式(6f)の移動量分を減算又は加算して、式(6)の大括弧内の表式が得られることとなる。
βf=(FFL+FFR)/2kpf …(7a)
βr=(FRL+FRR)/2kpr …(7b)
により与えられる。また、前輪舵角δは、
δ=βf−βc+(lf・γ)/Vs …(7c)
(ここでβcは、車両重心のスリップ角、γは、ヨーレートである。)
により表され、重心のスリップ角βcは、βr−(lr・γ)/Vsであり、ヨーレートγは、γ=Yg/Vsなので、結局、舵角は、
δ=βf−βr+l・Yg/Vs2 …(7d)
と表される。従って、接地荷重Wi、横力Fiの値は、式(6)、(7a)、(7b)、(7d)の連立方程式をスリップ角βf、βr及び舵角δについて解くことにより得ることができる。具体的な演算は、任意の手法の数値演算(収束演算)により行われてよく、実際に連立方程式を数値的に解く場合には、スリップ角βf、βrと舵角δについて値を得た後に、その結果を式(4)及び(6)に代入して、接地荷重Wi、横力Fiが得られる。
既に触れた通り、センタデフの駆動力配分比kがデフの前後推進軸から前輪又は後輪へ伝達される回転速に依存して決定される場合、各輪の駆動力又はセンタデフの駆動力配分比を算定するためには、前後推進軸の回転速又は各輪車輪速を決定する必要がある。その場合に具体的に各輪駆動力値又は駆動力配分比を確定するためには、デフが作動していないとき(前後輪の回転拘束をしていないとき)又は所定の配分比にて前後輪に駆動力配分を実行している場合の前輪及び後輪の回転速Vwf、Vwr(ただし、車輪速の単位に変換した値)が参照される。そこで、まず、かかる前後輪駆動力配分が所定の配分比にて実行されている場合の前輪及び後輪の回転速Vwf、Vwrの算定方法について説明する。
Vwf=(VwFL+VwFR)/2 …(8a)
Vwr=(VwRL+VwRR)/2 …(8b)
により表される。各輪に於いて、スリップ率Siは、車輪速Vwiと各輪の回転面に沿った移動速度(回転方向の移動速度)Vf、Vr(簡単のため、前輪及び後輪の車軸の中点の移動速度で代用する。)を用いて表すと、
(前輪)Si=(Vwi−Vf)/Vf; (後輪)Si=(Vwi−Vr)/Vr …(9)
となるので、Vwiは、
(前輪)
Vwi=(Si+1)Vf …(9a)
(後輪)
Vwi=(Si+1)Vr …(9b)
と表すことができる。
Vf=Vsfcosβf〜Vsf
Vr=Vsrcosβr〜Vsr
と表される(図4参照)。各輪の移動速度ベクトルVsf、Vsrが、それぞれ、各車軸中点の旋回半径Rf、Rrとヨーレートγ(=Yg/Vs)を用いて、
Vsf=Rf・γ; Vsr=Rf・γ
であるので、結局、各輪の回転方向の移動速度Vf、Vrは、
Vf=Rf・γcosβf〜Rf・γ …(10a)
Vr=Rr・γcosβr〜Rr・γ …(10b)
と表される。なお、旋回半径Rf、Rrは、図4を参照して、それぞれ、
Rf=(R2+lf2−2lf・R・sinβc)1/2
〜(R2+lf2−2lf・R・βc)1/2 …(10c)
Rf=(R2+lr2+2lr・R・sinβc)1/2
〜(R2+lr2+2lr・R・βc)1/2 …(10d)
により与えられる(上記の式は、旋回中心Oから車両の中心軸線に対して下ろした垂線を用いて、ピタゴラスの定理により得られる。)。なお、Rは、重心の旋回半径であり、R=Vs2/Ygにより与えられ、βcは、重心のスリップ角である。
Si=Di/Ki …(11)
により与えられる。なお、ドライビングスティフネスKiは、各輪の接地荷重Wiに比例し、
Ki=κWi …(11a)
と与えられる量である。κは比例係数であり、実験的に又は理論的に予め与えられる。かくして、式(9a)〜(11a)により、式(8a)、(8b)の前輪及び後輪の回転速Vwf、Vwrが各輪の駆動力Diとその他の走行条件により表されることとなる。そして、かかる前輪及び後輪の回転速Vwf、Vwrが算定可能となると、それらの値からセンタデフによる駆動力配分比又は各輪の駆動力の値が確定される。なお、センタデフによる駆動力配分比又は各輪の駆動力の値は、以下に説明される如く、デフの形式によって算定方法が異なる。
センタデフが速度拘束方式デフである場合、既に触れたように、前後輪への推進軸の回転の拘束の程度を調節することにより、前後輪の推進軸へ伝達される駆動力が調節される。前後輪への推進軸の回転の拘束の程度は、拘束率crにより設定され、かかるcrは、前後輪への推進軸の回転を非拘束にした場合(非作動時)の前輪及び後輪の回転速Vwf、Vwrと、前後輪への推進軸の回転を拘束した場合(作動時)の前輪及び後輪の回転速Vcwf、Vcwrとを、下記の式により関連付ける量である。
cr=1−dW’/dW …(12)
ここで、
dW’=|Vcwr−Vcwf|
dW=|Vwr−Vwf|
として与えられる回転速差の絶対値である。従って、拘束率crを与え、且つ、デフの作動時及び非作動時の前輪及び後輪の回転速の和(又は平均値)が等しい、即ち、
Vcwr+Vcwf=Vwr+Vwf …(13)
とすると、デフの作動時の前輪及び後輪の回転速は、結局、
Vcwf=Vwf−(cr/2)(Vwf−Vwr) …(14a)
Vcwr=Vwr+(cr/2)(Vwf−Vwr) …(14b)
により与えられる。なお、特に、cr=1のとき(直結状態)は、
Vcwf=Vcwr=(Vwr+Vwf)/2 …(14c)
となる。
DFL・kf=DFR・(1−kf) …(15a)
DRL・kr=DRR・(1−kr) …(15b)
の関係にあることから、式(9)、(11)、(11a)の関係式より、各輪垂直荷重Wi(式(4))と移動速度Vf、Vr(式(10a、b))とを用いて
kf・WFL(VwFL−Vf)=(1−kf)・WFR(VwFR−Vf) …(16a)
kr・WRL(VwRL−Vr)=(1−kr)・WRR(VwRR−Vr) …(16b)
が成立する。この条件と、左右輪の車輪速の平均値が推進軸の回転速に一致する、即ち、
VwFL+VwFR=2Vcwf …(16c)
VwRL+VwRR=2Vcwr …(16d)
との条件から、各輪の車輪速Vwiが算定される。しかる後、算定された車輪速Vwiを式(9)に代入し、速度拘束式デフの作動時の各輪スリップ率Sciが算定され、更に、式(11)の関係、即ち、
Dci=Ki・Sci …(17)
より、各輪スリップ率SciとドライビングスティフネスKiとの積によって、速度拘束式デフの作動時の各輪駆動力Dciが表される。なお、添え字cは、デフの回転拘束が作動しているときの量であることを示している。
Dci=Di …(18)
となるときの駆動力Di、垂直荷重Wi、横力Fiを用いてタイヤ負荷率が決定されてよい。なお、条件(18)が成立するよう駆動力Dci、垂直荷重Wi、横力Fiの演算を繰り返す過程に於いて、スリップ角βf、βr等の値は、再計算されるが、式(13)、(14a〜c)に於いて参照されるデフの非作動時の前後輪回転速Vwf、Vwrは、再計算をせずにデフの非作動時の駆動力配分比kの値を用いて得られたものが常に用いられることは注意されるべきである。
センタデフがトルク感応方式の場合には、既に触れたように、駆動力配分比は、
前輪側及び後輪側の推進軸の回転速Vwf、Vwrの大小関係によって、例えば、
(a)Vwf=Vwrのとき 前輪:後輪=4:6
(b)Vwf>Vwrのとき 前輪:後輪=3:7
(c)Vwf<Vwrのとき 前輪:後輪=5:5
の如く決定される。従って、具体的に演算する際には、まず、(a)が成立しているものとして、所与の走行条件下で、各輪駆動力Di、垂直荷重Wi、横力Fiを演算して、式(8a、b)の前輪側及び後輪側の推進軸の回転速Vwf、Vwrを算出し、その大小関係が判定され、センタデフの駆動力配分比が上記の(a)〜(c)から選択される。そして、再度、選択されたセンタデフの駆動力配分比を用いて、各輪駆動力Di、垂直荷重Wi、横力Fiを演算し、タイヤ負荷率etiが算出される。[稀に、走行条件によって、再度、演算を実行して式(8a、b)の前輪側及び後輪側の推進軸の回転速Vwf、Vwrが逆転する場合が生ずるが、その場合は、センタデフの駆動力配分比として、(a)を選択して、タイヤ負荷率etiが演算されることとする。]
かくして、上記に説明された演算によれば、所与の走行条件(車速Vs、路面摩擦係数μ、横加速度Yg、総駆動力Dt)に於いて、駆動力配分比kf、krと拘束率crの組み合わせ(速度拘束式センタデフの場合)又は駆動力配分比kf、krの組み合わせ(トルク感応式センタデフの場合)を与えると、各輪のタイヤ負荷率が算定される。かかるタイヤ負荷率は、既に述べた如く、実際の車両の駆動配分制御に於いては、全輪について、条件(2)を満たす必要がある。そこで、本発明に於いては、走行条件を入力パラメータとして、駆動力配分比の組合せ(以下、単に、「駆動力配分比の組合せ」という場合、駆動力配分比kf、krと拘束率crの組み合わせをさす場合も含むものとする。)を種々変更しながら、条件(2)を満たすタイヤ負荷率を与える駆動力配分比の組合せが決定される。
eti=1.0 …(2a)
となるとき、一つの駆動力配分比kf、kr、crの組み合わせに収束することが見出された。かくして、条件(2)を与える駆動力配分比は、車両の走行に於いて想定される車速Vs、路面摩擦係数μ、横加速度Yg及び総駆動力Dtの範囲全域に於いて、駆動力配分比kf、kr、crのそれらの可変範囲全域についてタイヤ負荷率etiを算出して、全輪のタイヤ負荷率etiが1.0以下となる駆動力配分比kf、kr、crの範囲を求め、その結果得られた駆動力配分比の範囲内から適当な値(例えば、範囲の中心値)を選択することにより決定することができる。
δ=βf−βr+l・Yg/Vs2
の関係にて、運転者により制御される舵角δと一対一の関係にあるので、運転者が操舵角を変更して前輪舵角を変更すると、横加速度に反映され、これにより、車両は、所望の方向に加速されることとなる。
12FL、FR、RL、RR…車輪
14…アクセルペダル
16…駆動装置
18…エンジン
20…変速機
22…センタデフ
24…前輪側デフ
26…後輪側デフ
30…操舵装置
32…ステアリングホイール
32…操舵角センサ
40FL、FR、RL、RR…車輪速センサ
50…電子制御装置
Claims (5)
- 速度拘束方式又はトルク感応方式のセンタデフと前輪又は後輪の少なくとも一方の左右駆動輪の駆動力を可変配分比にて分配する駆動力配分デフとを備えた四輪駆動車両の駆動輪の駆動力の配分制御を行う車両の駆動力配分制御装置であって、前記車両に於いて発生させる総駆動力と前記前輪の舵角と前記前輪スリップ角と前記後輪スリップ角とに基づいて決定される前記駆動力配分デフの作動時に於ける前記車両の各車輪のスリップ率と、対応する前記各車輪のドライビングスティフネスとの積に基づいて決定される各輪駆動力にて前記総駆動力が前記各輪へ分配されるよう前記駆動力配分デフの作動を制御することを特徴とする装置。
- 請求項1の装置であって、前記車両の駆動輪のタイヤグリップ力がその限界を超えないように前記各輪に分配される駆動力が調節されることを特徴とする装置。
- 請求項1の装置であって、前記センタデフが速度拘束方式の駆動力配分装置であり、前記車両の各輪の駆動力が、前記総駆動力と、前記速度拘束方式の駆動力配分装置の前後回転軸の回転速の拘束率と、前記駆動力配分デフの左右輪の駆動力配分比とにより与えられることを特徴とする装置。
- 請求項1の装置であって、前記センタデフがトルク感応方式の駆動力配分装置であり、前記車両の各輪の駆動力が、前記総駆動力と、前記駆動力配分デフの左右輪の駆動力配分比とにより与えられることを特徴とする装置。
- 請求項1の装置であって、前記車両の車速、旋回状態量、前記総駆動力及び前記各輪の路面摩擦係数を入力パラメータとして前記各輪の駆動力が決定されることを特徴とする装置。
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