JP4973415B2 - 車両の駆動力配分制御装置 - Google Patents

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本発明は、自動車等の車両の駆動力制御装置に係り、より詳細には、車両の旋回駆動時に於ける車両の限界(加速)性能が向上されるよう車両の各輪への駆動力の配分を制御する駆動力配分制御装置に係る。
車両の運動制御の分野に於いて、車輪のタイヤグリップ力を最大限に利用して旋回加速時の限界性能を向上するために、即ち、安定的に出力可能な最大加速度をより増大する目的で、車両に於ける前後左右車輪間の駆動力配分を制御することが提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。旋回中の車両に於いて、車輪の駆動力を単に一様に発生可能な最大限まで増大すると、一部の駆動輪のタイヤグリップ力(駆動力(前後力)と横力とのベクトル和)がその限界を越えてスリップ状態となるため、操縦性が悪化し、その他の車輪に於いて駆動力が増大可能であっても、車両全体として、それ以上駆動力が上げられなくなる。また、無理に駆動力を上げたとしても車両にその旋回方向を変更するヨーモーメントが惹起され、車両の進行方向が必ずしも運転者の所望の方向に一致しないこととなる。そこで、上記の如き旋回加速時の限界性能の向上を目的とする駆動力配分制御では、車両の旋回方向を変えるヨーモーメントを打ち消しつつ、タイヤグリップ力を最大限まで(いずれのタイヤもスリップしない限界まで)増大されるよう駆動輪の駆動力又は駆動トルクの左右輪間又は前後左右輪間の配分を調節し、これにより、所望の旋回方向への加速度を可能な限り増大することが提案されている。そのような車両の限界性能を引き上げる駆動力配分が達成されれば、車両がより高速にて走行可能になるとともに、高加速度にて旋回中でも車輪がスリップすることなく駆動エネルギーが最大限にて車両の加速に利用されることとなるので、車両駆動時のエネルギー効率も向上する。
しかしながら、通常の車両の構成では、駆動力又は駆動トルクは、単一のエンジン又はモーター等の駆動装置から各左右駆動輪へ均等に配分されるようになっているので、上記の如き駆動力配分制御を実行しようとする場合には、各駆動輪の駆動トルクは、トラクション制御(TRC)の如く、駆動装置から車輪へ伝達される駆動トルクに対して各輪にて制動装置による制動トルクを付与することにより調節されることとなる。従って、駆動装置から車輪へ一旦与えられた駆動エネルギーが制動により消費されて無駄になるので、駆動力配分制御が実行されてもエネルギー効率的にあまり有利にはならなかった。だが、近年、所謂、駆動力可変配分デフ(差動装置)の進歩により、単一の駆動装置からの駆動トルクを(前後だけでなく)左右の駆動輪へ自在に配分することが廉価に達成可能となってきており、駆動力配分制御も通常の車両に於いて実用的な制御の一つとなりつつある。そのような駆動力可変配分デフの機能を利用した駆動力配分制御の例は、例えば、非特許文献1、特許文献2−4に提案されている。
特開2005−67229 特開2005−82009 特開2005−112007 特開2006−69519 「四輪駆動力自在制御システムの開発」 森淳、芝端康二 社団法人自動車技術開 学術講演会前刷集 No.76-05,p.19-24
上記の如き駆動力配分制御では、旋回中の車両の車輪間に於ける荷重移動を考慮して、所望の旋回方向について発生可能な最大加速度を与える前後左右輪への駆動力又は駆動トルクの最適な配分が決定される。その際、車両の駆動系(駆動装置から駆動輪まで)の構造が、各輪への駆動力を自在に配分又は独立に調節できるよう構成されていれば、横加速度(又はヨーレート)を準定常的に一定に維持しつつ駆動輪全輪のタイヤグリップ力を最大限まで増大した状態を達成する最適な駆動力配分が決定可能であることが分かっている。従って、かかる制御によれば、各駆動輪のタイヤグリップ力を限界まで増大した状態にて所望の旋回方向について達成可能な最大の加速度が得られ、その状態では、既に触れたように、理論上、全駆動輪がスリップせず、駆動輪へ与えられたエネルギーが全て、車両の加速に寄与することになるので、エネルギー効率も向上される。
しかしながら、上記の駆動力配分制御を達成可能にする駆動力可変配分デフ又駆動力配分可変装置は、内部に複数のクラッチを備え、それらのクラッチの滑り量を調節することにより、デフ又は装置に連結される車軸の各々へ伝達される駆動力又はトルクの配分を制御する構成となっている(例えば、非特許文献1参照。)。そして、駆動力の配分比の可変制御を実行する間、クラッチに於いて常に滑りが発生するため、かかるクラッチの滑りにより発熱し、内部のクラッチ等の部材及び潤滑油の温度が上昇することとなる。従って、スポーツ走行など、オープンの状態(左右の駆動力配分が均等)から左右輪のいずれかに駆動力配分を偏倚する機会が多くなり得る走行条件に於いて、過度に駆動力配分制御を実行すると、それによる潤滑油温度上昇によってデフの耐久性又は機能の低下を惹起する場合があり、駆動力配分制御が良好に実行されない事態を引き起こし得る。
かくして、本発明の一つの目的は、上記の如き駆動力可変配分デフを採用して左右輪の駆動力配分制御が実行可能な四輪駆動車に於いて、駆動力可変配分デフが使用過多にならないように、その制御態様が改良された駆動力配分制御装置を提供することである。
上記の課題は、本発明によれば、前左右輪の駆動力を可変配分比にて分配する前輪用駆動力配分デフと、後左右輪の駆動力を可変配分比にて分配する後輪用駆動力配分デフとを備えた四輪駆動車両の駆動輪の駆動力の配分制御を行う車両の駆動力配分制御装置であって、車両の旋回中に前輪用駆動力配分デフ及び後輪用駆動力配分デフの両方及びいずれか一方のみによる駆動力の可変配分の実行時及び非実行時の各々に於ける車両の旋回方向に発生可能な車両の最大発生可能加速度を決定する最大発生可能加速度決定手段と、車両の現在の総駆動力に基づいて与えられる車両の加速度と前記の最大発生可能加速度との比較、又は、車両の現在の総駆動力と前記の最大発生可能加速度を与える車両の総駆動力との比較を行った結果に基づいて、前輪用駆動力配分デフ及び後輪用駆動力配分デフの各々の作動による駆動力の可変配分の実行及び非実行を決定するデフ作動決定手段とを含むことを特徴とする装置により達成される。
上記の構成に於いて、駆動力配分デフの「駆動力の可変配分の実行時」とは、駆動力配分デフが、可変配分比にて、即ち、配分比を自在に設定可能な状態にて駆動力の左右配分を実行している状態というものとし、駆動力配分デフの「駆動力の可変配分の非実行時」とは、駆動力配分デフが、固定の配分比にて、配分比を自在に設定できない状態にて駆動力の左右配分を実行している状態というものとする(従って、「駆動力配分デフが可変配分を実行していない」という場合は、駆動力配分デフが、配分比を自在に設定できない状態にて駆動力の左右配分を実行していることを意味する。)。また、上記の構成に於いて、「最大発生可能加速度」とは、前輪用駆動力配分デフ及び/又は後輪用駆動力配分デフが、それぞれ、可変配分比にて分配する左右輪に駆動力を配分した場合に、発生可能な最大の加速度であり、換言すれば、
(i)前輪用駆動力配分デフと後輪用駆動力配分デフの両方がそれぞれ配分比を自在に設定可能な状態、
(ii)前輪用駆動力配分デフのみが、配分比を自在に設定可能な状態、
(iii)後輪用駆動力配分デフのみが、配分比を自在に設定可能な状態、
(iv)前輪用駆動力配分デフと後輪用駆動力配分デフの両方が固定の配分比にて駆動力配分する場合
のそれぞれに於いて、発生可能な最大の加速度に相当する(加速度は、車両の総駆動力(駆動装置から各輪に分配される駆動力の総和)に対応するので、最大発生可能加速度は、上記の(i)〜(iv)の場合の各々に於ける車両の発生可能な総駆動力の最大値を与える。)。即ち、最大発生可能加速度決定手段は、そのときの車両の旋回状態に於いて、上記の(i)〜(iv)の場合のそれぞれの“最大発生可能加速度”を決定する手段である。実施の形態に於いては、“最大発生可能加速度”は、車両の全車輪のタイヤグリップ力が各々の限界値を超えない状態で発生可能な加速度、即ち、所謂、「限界加速度」であってよく、従って、全車輪のタイヤグリップ力が各々の限界値を超えない状態に於ける車両の総駆動力の最大値が確定されることとなる。“最大発生可能加速度”は、後述の実施形態の欄に於いてより詳細に説明される如く、典型的には、車両の旋回方向を表す旋回状態量(横加速度、ヨーレート、舵角等)と車両の走行路面の路面摩擦係数とに基づいて、或いは、これらのパラメータと車両の車速とに基づいて決定することが可能である(後述の如く、最大発生可能加速度の決定に必要なパラメータは、センタデフの前後輪の駆動力配分比の態様によって異なる。)。
上記の本発明の制御装置の作動に於いては、まず、最大発生可能加速度決定手段によって、上に列記した(i)〜(iv)の状態の場合の最大発生可能加速度が決定される。そして、デフ作動決定手段が、(i)〜(iv)の状態の場合の最大発生可能加速度を参照して、現在の車両の総駆動力(車両のエンジン又はモータ等の駆動装置に於いて現に発生している駆動力又はこれから駆動装置に与える要求総駆動力であってもよい。)と、最大発生可能加速度を与える総駆動力との比較(現在の車両の総駆動力の与える加速度と最大発生可能加速度との比較であってもよいことは、理解されるべきである。)を行い、その比較の結果に基づいて、各デフの作動の有無、即ち、各デフに駆動力の可変配分を実行させるか否かを決定する。かかる構成によれば、各駆動力配分デフは、常に駆動力の可変配分を実行するのではなく、現在の車両の総駆動力と最大発生可能加速度との関係によって、駆動力の可変配分を実行しなくてもよい状態となるため、各駆動力配分デフの駆動力の可変配分の実行の期間又は頻度が低減されることとなる。駆動力配分デフは、典型的には、駆動力の可変配分の実行時には、既に述べた如く、内部のクラッチ等が作動され、これにより、エネルギーの消費量又は発熱量が大きくなるが、駆動力の可変配分の非実行時には、所謂「オープンデフ」と同様の状態とすることができ、内部のクラッチ等が非作動状態とされるので、エネルギーの消費量又は発熱量が大幅に低減される。かくして、駆動力配分デフの使用過多による耐久性の劣化又は機能低下が抑制されることが期待されることとなる。
上記の本発明の構成に於いて、デフの駆動力の可変配分を非実行とする制御態様としては、デフ作動決定手段は、車両の現在の総駆動力に基づいて与えられる車両の加速度が前輪用駆動力配分デフのみによる駆動力の可変配分の実行時に於いて発生可能な車両の最大発生可能加速度より小さいときには、後輪用駆動力配分デフによる駆動力の可変配分を非実行とするようになっていてよい。また、同様に、デフ作動決定手段は、車両の現在の総駆動力に基づいて与えられる車両の加速度が後輪用駆動力配分デフのみによる駆動力の可変配分の実行時に於いて発生可能な車両の最大発生可能加速度より小さいときには、前輪用駆動力配分デフによる駆動力の可変配分を非実行とするようになっていてよい。なお、ここでの比較は、加速度ではなく、総駆動力で実行されても良いことは理解されるべきである。上記の制御態様によれば、前輪用駆動力配分デフ又は後輪用駆動力配分デフのいずれか一方のみの駆動力の可変配分により、現在の総駆動力に対応する加速度が発生可能である場合には、他方のデフは、駆動力の可変配分が非実行とすることが可能となる。換言すれば、現在の総駆動力に対応する加速状態に於いて、両方の配分デフを作動させても旋回性能の向上につながらない場合には、一方又は両方のデフによる駆動力の可変配分の実行を行わず、これにより、デフの作動負担を低減することが可能となる。
本発明によれば、要すれば、四輪駆動車に於いて左右輪の駆動力可変配分を行う駆動力可変配分デフが搭載されている場合に、駆動力可変配分デフのそれぞれによる駆動力の可変配分の実行及び非実行の決定が、車両の駆動装置の総駆動力に対応する加速度と各デフの可変配分を非実行としたときの達成可能な加速度又は限界加速度とを比較することにより、選択的に為されることとなるので、デフの駆動力の可変配分の実行による性能向上につながらない領域を見分けることを可能にするものであるということができる。かかる構成によれば、使用過多による性能低下が回避又は抑制される、換言すれば、デフの能力が温存されることが期待され、実際に旋回性能の向上が要求される場面で、本来の機能又は性能が十分に発揮されることとなろう。また、デフの寿命又は耐久性が改善されることから、費用的にも有利になり、駆動力配分制御が、従前に比してより実用的なものとなることが期待される。
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。図中、同一の符号は、同一の部位を示す。
車両の構成
図1(A)は、本発明の駆動力配分制御装置の好ましい実施形態が搭載される四輪自動車を模式的に示している。同図に於いて、左右前輪12FL、12FRと、左右後輪12RL、12RRを有する車両10には、通常の態様にて、運転者によるアクセルペダル14の踏込みに応じて全輪に駆動力を発生する駆動装置16と、左右前輪を操舵するステアリング装置30が搭載される。駆動装置16に於いて、図示の例では、エンジン18からの駆動トルク或いは回転駆動力は、トランスミッション(変速機)20を経て、センタデフ(又はトランスファ)22へ伝達され、更に、前輪側デフ24及び後輪側デフ26を介して、前輪12FL、12FR及び後輪12RL、12RRへそれぞれ伝達される(エンジン18に代えて電動機が用いられる電気式、或いは、エンジンと電動機との双方を有するハイブリッド式の駆動装置であってもよい。)。また、ステアリング装置30は、運転者によって回転されるステアリングホイール32の回転を、ステアリングギア機構34を介して、タイロッド36L、Rへ伝達し、前輪12FL、FRを転舵する。なお、簡単のため図示していないが、車両10には、通常の車両と同様に各輪に制動力を発生する制動系装置が設けられる。
上記の構成に於いて、前輪側及び後輪側デフは、左右輪の駆動力の各々を駆動力配分比kf、krに従って分配可能なデフが用いられる(駆動力配分比は、本発明の駆動力配分制御装置により要求され得る配分比の全範囲を実現可能であるものとする。)。そして、センタデフは、駆動力可変配分方式、電子制御式カップリング方式又はトルク感応方式のデフが搭載される。
駆動力可変配分方式のデフは、前輪側及び後輪側デフと同様に、可変配分比kを与えることにより、その配分比にて前輪軸と後輪軸とに駆動装置からの駆動力を配分する形式のものである(駆動力配分は、本発明の駆動力配分制御装置により要求され得る配分比の全範囲を実現可能であるものとする。)。
電子制御式カップリング方式のデフ(差動装置)とは、所謂「速度拘束式デフ」と称されるものであり、エンジン又は駆動装置からの回転トルクが前輪側及び後輪側の推進軸の回転トルクに分配される過程に於いて、二つの推進軸の回転を互いに拘束する強さを電子制御式に調節することにより二つの推進軸の各々へ伝達される駆動力の配分量が調節されるデフである。この方式のデフがセンタデフとして搭載されている場合、具体的には、デフに与えられる制御指令は、前後輪への推進軸(プロペラシャフト)の互いの回転の拘束の程度を定める拘束率crとなる。即ち、拘束率crは、その値が0のとき、前後輪の推進軸の回転速が独立であり、回転トルクが予め定められた配分比にて分配される。一方、拘束率crの値が増大されると(cr>0)、前後輪の推進軸の回転速が次第に互いに拘束され、拘束率crの値が1となったときに、前後輪の推進軸の回転が完全に拘束され、即ち、前後輪の推進軸が直結状態となり、前後輪の推進軸の回転速が一致した状態にもたらされる。前後輪の推進軸の回転速が互いに拘束率crにて拘束される際、つまり、cr>0のときは、各輪の駆動力は、各輪のスリップ率(各輪の車輪速に依存)とドライビングスティフネスにより決定される。
一方、トルク感応方式のデフ(トルク感応式LSD)の場合には、エンジン又は駆動装置からの回転トルクが前輪側及び後輪側の推進軸の回転トルクに分配される過程に於いて、前輪側及び後輪側の推進軸のうち回転速の遅い方の軸へ分配される駆動力が相対的に増大するよう駆動力配分が為される。例えば、前輪側及び後輪側の推進軸の回転速が互いに等しいときの前後輪の駆動力配分比が
前輪:後輪=4:6
であったとすると、前輪側回転速>後輪側回転速が成立するときには、前後輪の駆動力配分比は、
前輪:後輪=3:7
となり、前輪側回転速<後輪側回転速が成立するときには、
前輪:後輪=5:5
となる。(上記の配分比の値は、一つの例であって、これらに限定されるものではない。)
かくして、上記の車両の構成に於いて、各輪の駆動力は、通常時は、各デフの配分は、基本的には、駆動装置16からの駆動力が全車輪に均等に分配するよう設定される(ベース設定。ただし、センタデフで分配される前後輪の駆動力は、任意の目的で均等でない場合が有り得る。)。しかしながら、各輪のタイヤグリップ力が増大して、その限界に近づき、本発明の駆動力制御装置による駆動力配分制御が実行される際には、車両の旋回状態及び路面の摩擦状態を参照して(センタデフが速度拘束式又はトルク感応式の場合は、更に、車速又は車輪速が参照される。)、各輪のタイヤグリップ力がその限界を超えないように、後に説明される如き駆動力配分を実現するべく配分比が変更される。その際、各輪の駆動力は、
(1)センタデフが前後輪の駆動力を可変配分比にて分配する駆動力可変配分デフである場合には、車両の現在の総駆動力と、センタデフの前後輪の駆動力配分比kと前輪用及び後輪用駆動力配分デフの各々の左右輪の駆動力配分比kf、krとにより、
(2)センタデフが速度拘束方式の駆動力配分装置である場合には、車両の各輪の駆動力は、車両の現在の総駆動力と、速度拘束方式の駆動力配分装置の前後回転軸の回転速の拘束率crと、前輪用及び後輪用駆動力配分デフの左右輪の駆動力配分比kf、krとにより、
(3)センタデフがトルク感応方式の駆動力配分装置である場合、各輪の駆動力は、車両の現在の総駆動力と、前輪用及び後輪用駆動力配分デフの左右輪の駆動力配分比kf、krとにより、
それぞれ、与えられる(センタデフがトルク感応方式デフの場合に、センタデフに対する制御指令が与えられないのは、上記の如く、その駆動力配分比が前後の車輪速の大小関係により、受動的に決定されるためである。)。なお、以下、デフが駆動力の可変配分を実行する状態を、デフの“作動状態”と言い、デフが駆動力の可変配分を実行しない状態を、デフの“非作動状態”と言うこととする(デフが非作動という場合には、デフは、固定配分比にて駆動力配分を実行する状態を意味する。)。
本発明の駆動力配分制御装置の構成及び作動は、電子制御装置50により実現される。電子制御装置50は、通常の形式の、双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU、ROM、RAM及び入出力ポート装置を有するマイクロコンピュータ及び駆動回路を含んでいてよい。電子制御装置50には、各輪に搭載された車輪速センサ40i(iは、特に断らない限り、FL、FR、RL、RR、即ち、左前輪、右前輪、左後輪、右後輪の値であることを示す。)からの車輪速Vwiを表す信号と、車両の各部に設けられたセンサからのエンジンの回転速Er、アクセルペダル踏込量θa、ステアリングシャフト32aに設けられた操舵角センサ32bからの操舵角δ等の信号が入力される。なお、上記以外に、本実施形態の車両に於いて実行されるべき各種制御に必要な種々のパラメータを得るための各種検出信号、例えば、ヨーレートセンサにより検出されるヨーレート、Gセンサ42により検出される前後加速度又は横加速度、各輪に設けられた荷重センサからの各輪の垂直荷重が入力されてよいことは理解されるべきである。そして、後に説明される態様にて決定された各デフの駆動力配分比k、kf、kr又は拘束率crが対応するデフの制御器へ送信される。
駆動力配分制御の構成と作動
本実施形態の駆動力配分制御装置に於ける制御は、概して述べれば、所謂、限界性能を最大化する駆動力配分制御、即ち、或る旋回状態に在る車両に於いて、或る総駆動力を与えたときに、全ての駆動輪がスリップすることなく、タイヤグリップ力が保持した状態で、加速度をできるだけ増大できるよう駆動装置16から各車輪へ伝達される駆動力(又は駆動トルク)の配分を制御するものである。
図1(B)は、かかる駆動力配分制御を実行する本発明の制御装置の制御構成の例をブロック図の形式で表している。同図を参照して、駆動力配分制御装置に於いては、車輪速センサの情報に基づいて任意の方法により決定される現在の車両の車速Vs(50a)と、旋回状態を参照するための車両の横Gセンサ42からの車両の重心位置の横加速度Ygと、運転者によるアクセルペダルの踏込量θa又はエンジン回転数Erに基づいて決定される車両に要求されている総駆動力Dt(50c)と、車輪速センサの情報や前後Gセンサ又はその他の情報を用いて任意の方法にて推定されてよい路面摩擦係数μi(50b)とが演算処理部(50d)へ入力される。なお、本明細書に於いて、路面摩擦係数は、車輪に於いて、(路面摩擦係数)×(接地荷重)により最大(限界)摩擦力を与える摩擦係数であり、車輪のスリップ率に依存して変化する(みかけの)摩擦係数の最大値である。
そして、演算処理部50dは、入力されたデータをパラメータとして、後により詳細に説明される演算方法により予め決定された、最適な駆動力配分を与える前輪及び後輪の駆動力の左右配分比kf、krと、センタデフの駆動力配分比k又は拘束率cr(速度拘束式の場合)との組合せを決定し、それらの左右配分比kf、kr、k又は拘束率crを対応するデフの制御器へ送信する。そして、各制御器は、受信した制御量を実現するための制御指令を生成し、デフの作動状態を調節する。かくして、総駆動力が増大し、駆動力配分を変更しなければ、いずれかの駆動輪がグリップ力を失う状況となっても、旋回状態を維持しながら、駆動力配分を等配分からずらすことによって、全ての駆動輪がグリップ力を保持した状態で総駆動力を増大することができ、車両の限界性能が向上されることとなる。
上記の如き駆動力配分制御に於いて、従前では、駆動力の可変配分を実行する際には、全てのデフに於いて駆動力の可変配分を実行していた(全てのデフが“作動”されていた。)。しかしながら、本発明の制御では、現在の旋回状態の下、現に要求されている総駆動力(又は駆動装置で既に発生している総駆動力であってもよい。)、即ち、これに対応する加速度が、前輪又は後輪デフのうちのいずれか一方又はそれら両方のデフによる駆動力の可変配分が実行されなくても発生可能である場合には、換言すれば、現在の旋回状態及び路面摩擦状態(又は車速)に於いて、現在の総駆動力を各輪に分配する際に、前輪又は後輪デフのうちのいずれか一方又はそれら両方のデフによる駆動力の可変配分が実行されなくても、全輪のタイヤグリップ力が維持される場合には、そのいずれか一方又は両方のデフが非作動状態とされる(つまり、それらのデフは、ベース設定にて駆動力を配分する。)。
かかる選択的なデフの作動を行うべく、本発明の駆動制御装置の演算処理部に於いては、限界加速度決定部50eと、デフ作動決定部50fとが設けられる。
まず、限界加速度決定部50eは、現在の車両の旋回状態と路面の摩擦状態と(或いは更に、車速と)を参照パラメータとして、下記の選択的にデフを作動した状態、即ち、
(i)前輪側デフと後輪側デフの両方を作動
(ii)前輪側デフのみ作動
(iii)後輪側デフのみ作動
(iv)前輪側デフと後輪側デフの両方を非作動
とした場合の各々についての最大発生可能加速度αfr、αf、αr、αoff(作動状態のデフの配分比を自在に変更して発生可能な加速度のうちの最大値)及び/又はそのときの総駆動力Dt_fr、Dt_f、Dt_r、Dt_offを決定する(これらの値の決定方法は、後述される。)。
一方、デフ作動決定部50fは、上記の最大発生可能加速度αfr、αf、αr、αoffに対応する総駆動力Dt_fr、Dt_f、Dt_r、Dt_offと、現在の要求総駆動力Dtとを比較し、後述の態様にて、前輪側デフ及び後輪側デフの作動・非作動を決定する。そして、各デフの駆動力配分比の制御指令として、非作動とされたデフが固定配分比による駆動力配分をする条件下で、最適な駆動力配分を与える前輪及び後輪の駆動力の左右配分比kf、krと、センタデフの駆動力配分比k又は拘束率crとの組合せが決定され、それらの左右配分比kf、kr、k又は拘束率crを対応するデフの制御器へ送信する。
以下、駆動力配分制御の制御指令(駆動力配分比(又は拘束率)の組合せ)の決定処理、限界加速度決定部50eに於ける最大発生可能加速度及びそれらに対応する総駆動力の決定処理、デフ作動決定部50fに於けるデフ作動判定処理について説明する。
なお、ここで、最適な駆動力配分を与える各デフへ与えられる配分比又は拘束率とは、要すれば、駆動輪の全てに於いて、タイヤグリップ力がその対応する限界値を超えないように駆動力を配分し、これにより、車両の限界性能を向上する値である。この点に関し、各輪のタイヤグリップ力の限界は、各輪の接地荷重によって変化するので、力の限界値の大きさ自体を指標値とすることは演算が煩雑になる。そこで、本発明に於いて、各輪のタイヤグリップ力がその限界値にどの程度近づいているかを表す指標として、“タイヤ負荷率”が用いられる。タイヤ負荷率eti(i=FL(左前輪)、FR(右前輪)、RL(左後輪)、RR(右後輪) 以下同様)は、現在のタイヤグリップ力とその限界値との比であり、下記の式
eti=(Di+Fi1/2/μi・Wi・g …(1)
(ここに於いて、Diは、各輪の前後力(駆動力)、Fiは、各輪の横力、Wiは、各輪の垂直荷重、gは、重力加速度を示す。図2(A)参照。)
により定義される値である。各デフへ制御指令として与えられる配分比又は拘束率は、各輪のタイヤ負荷率etiが、全輪について、
eti≦1.0 …(2)
を満たすように設定される。Di、Fi、Wiは、それぞれ、後に詳細に述べる要領にて計算されてよい。また、各輪の前後力(駆動力)Diと各輪の横力Fiとが与えられると、そのときの加速度αは、
α=(ΣDi−(FFL+FFR)βf−(FRL+FRR)βr)/M …(1a)
(ここで、βf、βrは、前輪及び後輪のスリップ角であり、Mは、車両重量である。)
により与えられる。最大発生可能加速度は、可変の駆動力配分比を変更可能な範囲で変更したときに、条件(2)が満たす状態に於いて発生される加速度の最大値である。このとき、通常、少なくとも一つの車輪は、
eti=1.0 …(2a)
を満たし、特に、前後左右の駆動力配分比が自在に設定可能な場合には、全輪が、条件(2a)を満たすこととなる。総駆動力は、Dt=ΣDiであるので、式(1a)は、
α=(Dt−(FFL+FFR)βf−(FRL+FRR)βr)/M …(1b)
と表される。このときの、最大発生可能加速度を、以下「限界加速度α」と称し、そのときの総駆動力Dtを限界総駆動力と称する。
駆動力配分比及び/又はセンタデフの回転拘束率の決定処理の概要
上記の如く、本発明の駆動力配分制御では、基本的には、現在の車両の走行状態に於ける横加速度Yg、路面摩擦係数μi、車速Vs、(要求)総駆動力Dtに対して、全輪のタイヤ負荷率etiが条件(2)を満たす駆動力配分を与える前後輪の各々の左右配分比及び/又はセンタデフの回転拘束率の組合せが決定される。この点に関し、横加速度Yg、路面摩擦係数μ、車速Vs、(要求)総駆動力Dt等の走行条件から、全輪のタイヤ負荷率etiが条件(2)を満たす駆動力配分を与える駆動力配分比及び/又はセンタデフの回転拘束率の組合せを解析的に直接的に算出することは困難である。そこで、実際の配分比及び拘束率の組合せの決定処理に於いては、或る任意の車両の走行に於いて横加速度Yg、路面摩擦係数μ、車速Vs及び(要求)総駆動力Dtを組合せてなる走行条件について、配分比及び拘束率の組合せを設定可能範囲で種々変更しながら、全輪のタイヤ負荷率etiを算出し、その算出結果に於いて、条件(2)を満たす配分比及び拘束率の組合せの一つが決定される。なお、実際の車両に於いて、かかる手法により配分比及び拘束率の組合せを決定する場合には、演算時間を要するため、好適には、予め想定される走行条件の下での演算により決定された配分比及び拘束率の組合せを与えるマップが準備され、車両の走行中には、横加速度Yg、路面摩擦係数μ、車速Vs及び(要求)総駆動力Dtを入力パラメータとして、マップの中から適切な組合せが選択されるようになっていてよい(もし電子制御装置の演算速度が間に合えば、即時の走行条件に対応した配分比と拘束率の組合せが即時的に演算により決定されてよい。)
以下、横加速度Yg、路面摩擦係数μ、車速Vs及び(要求)総駆動力Dtを組合せてなる走行条件に於けるタイヤ負荷率の演算処理過程と、かかるタイヤ負荷率の演算処理過程を用いて、配分比と拘束率の組合せを決定する処理過程について説明する。
タイヤ負荷率の演算
図1(A)に例示されている如き車両に於いて四輪の駆動力が自在に調節可能である場合、式(1)から理解される如く、タイヤ負荷率etiは、或る横加速度Yg、路面摩擦係数μ、車速Vs、(要求)総駆動力Dtの走行条件下に於いて、前後輪駆動力配分比k、前輪駆動力の左右駆動力配分比kf、後輪駆動力の左右配分比krを用いて、各輪の駆動力Di、接地荷重Wi、横力Fiを算定することにより決定される。この点に関し、センタデフが速度拘束式又はトルク感応式デフである場合については、センタデフの駆動力配分比が、前後輪の車輪速差(前後推進軸の回転速差)により決定されるので、各輪の車輪速を算出されてから出なければ確定されず、従って、タイヤ負荷率etiの算出に必要な各輪駆動力Diの値が、車輪速を決定してからでなければ確定できない。そこで、その場合には、端的に述べれば、タイヤ負荷率etiの算出に於いて、センタデフの駆動力配分比kを仮値(典型的には、デフが駆動力の可変配分作動を実行しないときの配分比の値)に設定して、各輪の駆動力Di、接地荷重Wi、横力Fiを算出し、しかる後に、車輪速を決定してから、決定された車輪速に基づいて、各輪の駆動力Diが再計算される。
以下に於いては、まず、所与のデフの配分比kf、kr、kに於けるタイヤ負荷率の算出のための各輪の駆動力Di、接地荷重Wi、横力Fiの算定処理(センタデフが駆動力可変配分デフの場合にはそのまま適用される)について説明し、その後、センタデフが速度拘束式又はトルク感応式デフである場合のための、車輪速に基づいて各輪の駆動力Diを再設定する処理について説明する。なお、下記の演算では、左旋回方向を正としている。
(i)配分比kf、kr、kに於けるDi、Wi、Fiの算定処理
まず、各輪の前後力Diは、前輪側、後輪側及びセンタデフの駆動力の配分比をkf、kr、kとしたとき、総駆動力Dtを用いて、下記の式により表される。(ここで、kは、後輪への駆動力の配分割合、kfは、両前輪に割り当てられた駆動力の右前輪への駆動力の配分割合、krは、両後輪に割り当てられた駆動力の右後輪への駆動力の配分割合に定義されている。)
FL=Dt・(1−k)・(1−kf) …(3)
FR=Dt・(1−k)・kf
RL=Dt・k・(1−kr)
FR=Dt・k・kr
また、各輪の垂直荷重Wiは、車両の加速による前後方向の荷重移動量Δxと前後輪それぞれに於ける遠心力による横方向の荷重移動量Δyf、Δyrとの影響を考慮して、下記の式により表される(図2(B)参照)。
FL=(1/2)M・lf/l−(1/2)Δx−Δyf …(4)
FR=(1/2)M・lf/l−(1/2)Δx+Δyf
RL=(1/2)M・lr/l+(1/2)Δx−Δyr
FR=(1/2)M・lr/l+(1/2)Δx+Δyr
ここで、Mは、車両重量、lf、lrは、それぞれ、前後輪軸から車両の重心までの距離であり、lは、前後輪の車軸間距離(ホイールベース)である。上記に於いて、車両の加速による前輪軸から後輪軸への方向の荷重移動量Δxは、
Δx=H・((DFL+DFR)cosδ+DRL+DRR/(l・g) …(5a)
により与えられる。また、前輪の横方向の左側から右側への荷重移動量Δyfは、遠心力による荷重移動と、前輪の駆動力の車両の横方向成分の荷重移動とを考慮して、
Δyf=H・((M・Rf・Yg(cosδ+βf・sinδ)+(DFL+DFR)sinδ)/(Tr・g) …(5b)
により与えられ、後輪の横方向の左側から右側への荷重移動量は、遠心力による荷重移動を考慮して、
Δyr=H・M・Rr・Yg/(Tr・g) …(5c)
により与えられる。ここで、Hは、重心高、Rf、Rgは、それぞれ、前後輪に於けるロール剛性配分、Trは、トレッド長である。そして、Ygは、横加速度、δは、前輪舵角、βf、βrは、前輪及び後輪のスリップ角である(図2(B)参照)。なお、スリップ角βf、βrは、微小であるので、
cosβf=cosβr=1; sinβf=βf; sinβr=βr
とする近似を用いている(以下、上記の近似を用いるときには、表式に於いて、「〜」を用いる。)。
各輪の横力Fiについては、まず、左右前輪の横力の和Ffと左右後輪の横力の和Frが前後輪のそれぞれに於ける遠心力に釣り合い、且つ、前記の前後力Diにより発生するヨーモーメントが前後輪で発生する前後輪間の横力差ΔFにより生ずるヨーモーメントに釣り合うとの条件から、左右前輪の横力の和Ffと左右後輪の横力の和Frが決定される。そして、かかる前後輪のそれぞれの横力和Ff、Frが、左右輪に前記の垂直荷重に比例して配分されると考えて、各輪の横力Fiが、下記の式により表される。
Figure 0004973415
上記の式の大括弧内が、前輪横力和Ff又は後輪横力和Frであり、そこにおいて、第一項及び第二項が遠心力に釣り合うための力の成分である。例えば、前輪についてより詳細に述べれば(図2(C))、前輪軸上に作用する遠心力は、前記の加速時の前後方向の荷重移動を考慮した前輪軸の質量の割り当て分と、横加速度から、
(M・lf/l−Δx)・Yg …(6a)
により与えられ、これと、駆動力の旋回半径方向成分(DFL+DFR)・sinβf〜(DFL+DFR)・βfと横力の旋回半径方向成分(FFL+FFR)・cosβf〜(FFL+FFR)との釣り合いの式
(M・lf/l−Δx)・Yg=(DFL+DFR)・βf+(FFL+FFR
から、前輪横力和として、
Ff=(FFL+FFR)=(M・lf/l−Δx)・Yg−(DFL+DFR)・βf …(6b)
を得る。同様に、後輪についても、その横力和として、
Fr=(FRL+FRR)=(M・lr/l+Δx)・Yg−(DRL+DRR)・βr …(6c)
が得られる。
式(6)の大括弧内の第3項ΔFfとΔFrは、前後力Diによるヨーモーメントと前後輪間の横力差により生ずるヨーモーメントの釣り合いの式から得られる前輪から後輪への横力移動量を表している。図3を参照して、各輪駆動力によるヨーモーメントは、
(DRR−DRL+(DFR−DFL)cosδ)(Tr/2)+(DFR+DFL)sinδ・lf …(6d)
と表される。このヨーモーメントと、前輪から後輪への車軸に垂直方向の横力移動量ΔFによるヨーモーメントΔF・lとが釣り合うと考えると、横力移動量ΔFは、
ΔF={(DRR−DRL+(DFR−DFL)cosδ)(Tr/2)+(DFR+DFL)sinδ・lf}/l …(6e)
と表すことができる。従って、ヨーモーメントの釣り合いの条件から得られる前後輪の各々の横力の移動量ΔFf、ΔFrは、それぞれ、
ΔFf=ΔF・cosδ …(6f)
ΔFr=ΔF
とすることができる。ΔFfにcosδが乗じられているのは、前輪の横力は、車軸に垂直方向から舵角δだけ傾いているからである。かくして、式(6b)、(6c)の横力の表式に於いて、式(6f)の移動量分を減算又は加算して、式(6)の大括弧内の表式が得られることとなる。
ところで、上記までのタイヤ負荷率の式(1)の変数である各輪の駆動力Di、接地荷重Wi、横力Fiの表式のうち、後の二つには、各輪のスリップ角βf、βr及び前輪舵角δが含まれている。βf、βrは、それぞれ、前輪及び後輪のコーナーリングパワーkpf、kprを用いて表すと、
βf=(FFL+FFR)/2kpf …(7a)
βr=(FRL+FRR)/2kpr …(7b)
により与えられる。また、前輪舵角δは、
δ=βf−βc+(lf・γ)/Vs …(7c)
(ここでβcは、車両重心のスリップ角、γは、ヨーレートである。)
により表され、重心のスリップ角βcは、βr−(lr・γ)/Vsであり、ヨーレートγは、γ=Yg/Vsなので、結局、舵角は、
δ=βf−βr+l・Yg/Vs …(7d)
と表される。従って、接地荷重Wi、横力Fiの値は、式(6)、(7a)、(7b)、(7d)の連立方程式をスリップ角βf、βr及び舵角δについて解くことにより得ることができる。具体的な演算は、任意の手法の数値演算(収束演算)により行われてよく、実際に連立方程式を数値的に解く場合には、スリップ角βf、βrと舵角δについて値を得た後に、その結果を式(4)及び(6)に代入して、接地荷重Wi、横力Fiが得られる。
かくして、上記までの表式によれば、センタデフが駆動力可変配分デフである場合の、或る総駆動力Dtと、或る駆動力配分比kf、kr、kを与えたときのタイヤ負荷率が算定できることとなる。なお、舵角及びスリップ角を微小として0に近似して演算がなされてもよい。その場合、舵角、スリップ角の決定のための数値演算は実行されず、また、タイヤ負荷率の演算に車速Vsを参照しなくてもよくなる(後に示すように、駆動力配分比kf、kr、kが、旋回状態量、路面摩擦係数、総駆動力により決定されることとなる。)。
(ii)センタデフの駆動力配分が前後輪間の車輪速差に依存する場合の修正
既に触れた通り、センタデフの駆動力配分比kがデフの前後推進軸から前輪又は後輪へ伝達される回転速に依存して決定される場合、各輪の駆動力又はセンタデフの駆動力配分比を算定するためには、前後推進軸の回転速又は各輪車輪速を決定する必要がある。その場合に具体的に各輪駆動力値又は駆動力配分比を確定するためには、デフが作動していないとき(前後輪の回転拘束をしていないとき)又は所定の配分比にて前後輪に駆動力配分を実行している場合の前輪及び後輪の回転速Vwf、Vwr(ただし、車輪速の単位に変換した値)が参照される。そこで、まず、かかる前後輪駆動力配分が所定の配分比にて実行されている場合の前輪及び後輪の回転速Vwf、Vwrの算定方法について説明する。
所定の配分比にて前後輪駆動力配分が実行される場合の前輪及び後輪の回転速Vwf、Vwrは、各々、左右輪の車輪速Vwi(=回転速×半径)の平均値であると考えると、
Vwf=(VwFL+VwFR)/2 …(8a)
Vwr=(VwRL+VwRR)/2 …(8b)
により表される。各輪に於いて、スリップ率Siは、車輪速Vwiと各輪の回転面に沿った移動速度(回転方向の移動速度)Vf、Vr(簡単のため、前輪及び後輪の車軸の中点の移動速度で代用する。)を用いて表すと、
(前輪)Si=(Vwi−Vf)/Vf; (後輪)Si=(Vwi−Vr)/Vr …(9)
となるので、Vwiは、
(前輪)
Vwi=(Si+1)Vf …(9a)
(後輪)
Vwi=(Si+1)Vr …(9b)
と表すことができる。
上記の式(9a)及び(9b)に於いて、各輪の回転方向の移動速度Vf、Vrは、各輪の移動速度ベクトルVsf、Vsrを用いて、
Vf=Vsfcosβf〜Vsf
Vr=Vsrcosβr〜Vsr
と表される(図4参照)。各輪の移動速度ベクトルVsf、Vsrが、それぞれ、各車軸中点の旋回半径Rf、Rrとヨーレートγ(=Yg/Vs)を用いて、
Vsf=Rf・γ; Vsr=Rf・γ
であるので、結局、各輪の回転方向の移動速度Vf、Vrは、
Vf=Rf・γcosβf〜Rf・γ …(10a)
Vr=Rr・γcosβr〜Rr・γ …(10b)
と表される。なお、旋回半径Rf、Rrは、図4を参照して、それぞれ、
Rf=(R+lf−2lf・R・sinβc)1/2
〜(R+lf−2lf・R・βc)1/2 …(10c)
Rf=(R+lr+2lr・R・sinβc)1/2
〜(R+lr+2lr・R・βc)1/2 …(10d)
により与えられる(上記の式は、旋回中心Oから車両の中心軸線に対して下ろした垂線を用いて、ピタゴラスの定理により得られる。)。なお、Rは、重心の旋回半径であり、R=Vs/Ygにより与えられ、βcは、重心のスリップ角である。
また、上記の式(9a)及び(9b)に於いて、スリップ率は、各輪の駆動力DiとドライビングスティフネスKiを用いて、
Si=Di/Ki …(11)
により与えられる。なお、ドライビングスティフネスKiは、各輪の接地荷重Wiに比例し、
Ki=κWi …(11a)
と与えられる量である。κは比例係数であり、実験的に又は理論的に予め与えられる。かくして、式(9a)〜(11a)により、式(8a)、(8b)の前輪及び後輪の回転速Vwf、Vwrが各輪の駆動力Diとその他の走行条件により表されることとなる。そして、かかる前輪及び後輪の回転速Vwf、Vwrが算定可能となると、それらの値からセンタデフによる駆動力配分比又は各輪の駆動力の値が確定される。なお、センタデフによる駆動力配分比又は各輪の駆動力の値は、以下に説明される如く、デフの形式によって算定方法が異なる。
(速度拘束方式デフの場合)
センタデフが速度拘束方式デフである場合、既に触れたように、前後輪への推進軸の回転の拘束の程度を調節することにより、前後輪の推進軸へ伝達される駆動力が調節される。前後輪への推進軸の回転の拘束の程度は、拘束率crにより設定され、かかるcrは、前後輪への推進軸の回転を非拘束にした場合(非作動時)の前輪及び後輪の回転速Vwf、Vwrと、前後輪への推進軸の回転を拘束した場合(作動時)の前輪及び後輪の回転速Vcwf、Vcwrとを、下記の式により関連付ける量である。
cr=1−dW’/dW …(12)
ここで、
dW’=|Vcwr−Vcwf|
dW=|Vwr−Vwf|
として与えられる回転速差の絶対値である。従って、拘束率crを与え、且つ、デフの作動時及び非作動時の前輪及び後輪の回転速の和(又は平均値)が等しい、即ち、
Vcwr+Vcwf=Vwr+Vwf …(13)
とすると、デフの作動時の前輪及び後輪の回転速は、結局、
Vcwf=Vwf−(cr/2)(Vwf−Vwr) …(14a)
Vcwr=Vwr+(cr/2)(Vwf−Vwr) …(14b)
により与えられる。なお、特に、cr=1のとき(直結状態)は、
Vcwf=Vcwr=(Vwr+Vwf)/2 …(14c)
となる。
上記の如く、前後輪の推進軸の回転速Vcwf、Vcwrが決定されると、それらの値と駆動力の左右配分比kf又はkrを用いて、前後の左右輪の各々の車輪速、スリップ率及び駆動力が決定される。具体的には、まず、前後輪にそれぞれについて左右の駆動力Diは、
FL・kf=DFR・(1−kf) …(15a)
RL・kr=DRR・(1−kr) …(15b)
の関係にあることから、式(9)、(11)、(11a)の関係式より、各輪垂直荷重Wi(式(4))と移動速度Vf、Vr(式(10a、b))とを用いて
kf・WFL(VwFL−Vf)=(1−kf)・WFR(VwFR−Vf) …(16a)
kr・WRL(VwRL−Vr)=(1−kr)・WRR(VwRR−Vr) …(16b)
が成立する。この条件と、左右輪の車輪速の平均値が推進軸の回転速に一致する、即ち、
VwFL+VwFR=2Vcwf …(16c)
VwRL+VwRR=2Vcwr …(16d)
との条件から、各輪の車輪速Vwiが算定される。しかる後、算定された車輪速Vwiを式(9)に代入し、速度拘束式デフの作動時の各輪スリップ率Sciが算定され、更に、式(11)の関係、即ち、
Dci=Ki・Sci …(17)
より、各輪スリップ率SciとドライビングスティフネスKiとの積によって、速度拘束式デフの作動時の各輪駆動力Dciが表される。なお、添え字cは、デフの回転拘束が作動しているときの量であることを示している。
かくして、上記まで各輪の駆動力Dci(式(17))、垂直荷重Wi(式(4))、横力Fi(式(6))を用いて、タイヤ負荷率etiが算定されることとなる。この点に関し、垂直荷重Wi、横力Fi及び速度拘束式デフの作動時の各輪駆動力Dciの算出に用いた前輪及び後輪の回転方向の移動速度Vf、Vrは、式(3)に於いてセンタデフの駆動力配分比kを与えて算出される値である。従って、より厳密に演算を実行する場合には、式(17)の各輪の駆動力Dciの値と式(3)の各輪駆動力Diの値とが整合するようkの値を変更しつつ数値演算が実行され、
Dci=Di …(18)
となるときの駆動力Di、垂直荷重Wi、横力Fiを用いてタイヤ負荷率が決定されてよい。なお、条件(18)が成立するよう駆動力Dci、垂直荷重Wi、横力Fiの演算を繰り返す過程に於いて、スリップ角βf、βr等の値は、再計算されるが、式(13)、(14a〜c)に於いて参照されるデフの非作動時の前後輪回転速Vwf、Vwrは、再計算をせずにデフの非作動時の駆動力配分比kの値を用いて得られたものが常に用いられることは注意されるべきである。
(トルク感応方式デフの場合)
センタデフがトルク感応方式の場合には、既に触れたように、駆動力配分比は、
前輪側及び後輪側の推進軸の回転速Vwf、Vwrの大小関係によって、例えば、
(a)Vwf=Vwrのとき 前輪:後輪=4:6
(b)Vwf>Vwrのとき 前輪:後輪=3:7
(c)Vwf<Vwrのとき 前輪:後輪=5:5
の如く決定される。従って、具体的に演算する際には、まず、(a)が成立しているものとして、所与の走行条件下で、各輪駆動力Di、垂直荷重Wi、横力Fiを演算して、式(8a、b)の前輪側及び後輪側の推進軸の回転速Vwf、Vwrを算出し、その大小関係が判定され、センタデフの駆動力配分比が上記の(a)〜(c)から選択される。そして、再度、選択されたセンタデフの駆動力配分比を用いて、各輪駆動力Di、垂直荷重Wi、横力Fiを演算し、タイヤ負荷率etiが算出される。[稀に、走行条件によって、再度、演算を実行して式(8a、b)の前輪側及び後輪側の推進軸の回転速Vwf、Vwrが逆転する場合が生ずるが、その場合は、センタデフの駆動力配分比として、(a)を選択して、タイヤ負荷率etiが演算されることとする。]
配分制御時の駆動力配分比、限界加速度及び限界総駆動力の決定
かくして、上記に説明された演算によれば、所与の走行条件(路面摩擦係数μ、横加速度Yg、車速Vs、総駆動力Dt)に於いて、駆動力配分比kf、kr、k若しくは拘束率cr(速度拘束式センタデフの場合)の組み合わせ又は駆動力配分比kf、krの組み合わせ(トルク感応式センタデフの場合)を与えると、各輪のタイヤ負荷率が算定される。かかるタイヤ負荷率は、既に述べた如く、実際の車両の駆動力配分制御に於いては、全輪について、条件(2)を満たす必要がある。そこで、本発明に於いては、走行条件を入力パラメータとして、駆動力配分比の組合せ(以下、単に、「駆動力配分比の組合せ」という場合、駆動力配分比kf、krと拘束率crの組み合わせをさす場合も含むものとする。)を種々変更しながら、条件(2)を満たすタイヤ負荷率を与える駆動力配分比の組合せが決定される。
本発明の発明者による計算実験によれば、所与の走行条件に於いて、駆動力配分比の組合せの可変範囲全域に渡って、駆動力配分比(kf、kr、k)の値又は駆動力配分比(kf、kr)を変更して、上記の式(1)の各輪のタイヤ負荷率etiを算出すると、全輪のタイヤ負荷率etiが条件(2)を満たす駆動力配分比の組合せの範囲が、三次元(駆動力可変配分デフ及び速度拘束式センタデフの場合)又は二次元(トルク感応式センタデフの場合)の領域として決定されることが見出された(図5(A)、(B)参照)。また、上記の条件(2)を満たすタイヤ負荷率etiを与える駆動力配分比の範囲は、所与の路面摩擦係数μと横加速度Yg(又は更に車速Vs)について、総駆動力Dtの増大とともに縮小し(タイヤ負荷率etiは、全体的に増大する。)、全輪が
eti=1.0 …(2a)
となるとき、一つの駆動力配分比kf、kr、k(又はcr)の組み合わせに収束することが見出された。かくして、条件(2)を与える駆動力配分比は、車両の走行に於いて想定される路面摩擦係数μ、横加速度Yg、車速Vs及び総駆動力Dtの範囲全域に於いて、駆動力配分比kf、kr、k(又はcr)のそれらの可変範囲全域についてタイヤ負荷率etiを算出して、全輪のタイヤ負荷率etiが1.0以下となる駆動力配分比kf、kr、k(又はcr)の範囲を求め、その結果得られた駆動力配分比の範囲内から適当な値(例えば、範囲の中心値)を選択することにより決定することができる。また、或る路面摩擦係数μ、横加速度Yg、車速Vsの条件に於ける限界加速度(最大発生可能加速度)と総駆動力Dtは、条件(2a)が成立するときの式(1a)又は(1b)により与えられる。
図6及び7は、センタデフが駆動力可変配分デフである場合について、或る路面摩擦係数μ、横加速度Yg、車速Vsに於いて、総駆動力Dtを徐々に増大しながら、駆動力配分比の組合せ(kf、kr、k)の値を逐次的に決定し、総駆動力Dtを変数とした駆動力配分比の組合せ(kf、kr、k)のマップの調製及び限界加速度又は限界総駆動力の算出の処理をフローチャートの形式で表したものである(後述の如く、本発明の特徴的な構成に於いては、路面摩擦係数μ、横加速度Yg、車速Vsをパラメータとする限界加速度又は限界総駆動力のマップが調製されてよい。)。なお、当業者にとって理解される如く、総駆動力があまり高くなければ、駆動力配分比又は拘束率をベース設定(各デフを作動していない状態:通常、左右配分デフについては、kf=kr=0.5、センタデフについては、k=所定の設計比)にしても、全輪のタイヤ負荷率は、上記の上限値以下となることは明らかであり、その場合、駆動力配分比kf、kr、kを変更する必要はない。そこで、例示されている処理では、まず、駆動力配分比の組合せをベース設定にて設定し、総駆動力を任意の低い値から増大しつつ全輪のタイヤ負荷率が算出される。(これにより、ベース設定の駆動力配分比で対応可能な総駆動力Dt、路面摩擦係数μ及び横加速度Ygの条件の範囲を確認することもできる。)。そして、総駆動力Dtが或る程度高くなり、これにより、全輪のタイヤ負荷率が上限値に或る程度近づいてきたとき、その時点から初めて駆動力配分比kf、kr、k又は拘束率crを変更してタイヤ負荷率を算出し、上記の条件(2)を満たす駆動力配分比の組合せの範囲及びその選択値(例えば、中心値)の決定がなされる。
図6を参照して、まず、総駆動力Dtとして任意の低い値Dt0を設定し(ステップ100)、ベース設定の駆動力配分比kf、kr、k(=0.5,etc.)を用いて、上記の如く、全輪のタイヤ負荷率etiが算出される(ステップ110)。そして、算出された全輪のタイヤ負荷率etiが、所定の閾値Th、例えば、0.8を越えるか否かが判定される(ステップ120)。既に述べた如く、総駆動力Dtが小さければ、タイヤ負荷率etiは、いずれも1.0を越えないので(ベース設定の駆動力配分比で十分に対応可能であることを意味する。)、総駆動力を所定の量ΔDtだけ増大し(ステップ130)、ステップ110及び120が繰り返される。かかる処理は、総駆動力を徐々に増大しつつ、いずれかのタイヤ負荷率etiが所定の閾値Thを越えるまで繰り返される。
タイヤ負荷率etiのいずれかが所定の閾値Thを越えたとき(ステップ120)、今度は、駆動力配分比kf、kr、kの可変範囲全域について全輪のタイヤ負荷率etiが算出される(ステップ140)。ここにおいて、駆動力配分比は、可変範囲(kmin,kmax)に於いて、kf、kr、kをそれぞれ適当なキザミ幅Δkにて、全ての組み合わせについて全輪のタイヤ負荷率etiを算出し[kf、kr、kの三次元空間に於いて、格子幅Δkの三次元格子を想定し、その格子点の全てについてタイヤ負荷率etiを算出する。]、上記の条件(2)を与えるkf、kr、kの範囲が特定される(ステップ150)。このことに関し、kf、kr、kの三次元空間を考えたときに、既に述べた如く、上記の条件(2)を満たす(kf、kr、k)の集合は、三次元領域として特定されることがわかっている。従って、上記の条件(2)を満たすkf、kr、kの組み合わせの集合は、kf、kr、kの三次元空間に於ける領域の境界表面の座標を検出することにより、特定することができる。上記の条件(2)を満たすkf、kr、kの領域の境界の特定は、当業者にとって任意の方法で為されることは理解されるべきである。例えば、図7に示す如く、k、kfを固定してkrを微小量Δkずつ変化させながら、タイヤ負荷率etiを算出し、条件(2)を満たすkrの下限krlowと上限krhighを決定する操作(ステップ210−270参照)を、kfを微小量Δkずつ変化させながら繰り返し(ステップ280−290参照)、また更にその操作を、kを微小量Δkずつ変化させて繰り返すことにより(ステップ300−310参照)、条件(2)を満たす領域の境界表面の座標を特定することができる。
次いで、ステップ150に於いて上記の条件(2)を満たすkf、kr、kの領域を特定した後、kf、kr、kの領域に入るkf、kr、kの有意な組み合わせが存在する場合[三次元空間の格子点が存在するとき](ステップ160)、その領域の中心点の組み合わせがそのときの総駆動力Dtの駆動力配分比kf、kr、kとして決定され、マップの値として記憶されてよい(ステップ170)。中心点は、例えば、上記の条件(2)を満たす領域の重心(境界表面の座標値kf、kr、kの各々の和を境界表面の座標の数で割ったものなど)であってよい。中心点を選択するのは、どの車輪についてもタイヤ負荷率に概ね同程度の余裕があると想定されるためである(中心点は、いずれ方向についても境界表面まで距離(余裕)がある。)。
かくして、そのときの総駆動力Dt(及び路面摩擦係数μ、横加速度Yg及び車速Vs)に於けるkf、kr、kの選択値が決定されると、総駆動力Dtを所定増分ΔDtだけ増大し(ステップ180)、ステップ140−170が繰り返され、総駆動力Dtに於けるkf、kr、kの選択値が逐次的に決定される。かかる処理を繰り返し、総駆動力Dtを増大していくと、kf、kr、kの全てが可変の場合は、既に述べた如く、条件(2)を満たすタイヤ負荷率を与えるkf、kr、kは、一点に収束し、即ち、タイヤ負荷率etiは、本発明の制御に於ける上限値に到達する(キザミ幅Δkの大きさによっては、計算上、タイヤ負荷率の上限を満たすkf、kr、kの組み合わせ(格子点)が数個になることが有り得る。)。かくして、更に、総駆動力Dtを増大すると(ステップ180)、次のステップ160の判定に於いて、領域が存在しないこととなる。その場合には、その一つ前の状態が限界であることを意味するので、そのサイクルの一つ前の総駆動力Dtと(kf、kr、k)の組み合わせとにより決定される式(1a)又は(1b)が限界加速度として、このときの総駆動力Dtが対応する限界総駆動力として決定され(ステップ190)、処理が終了する。
実際の走行中の車両に於いて、上記の駆動力配分比kf、kr、kのマップにより各デフの駆動力配分比が設定されると、各輪に於いて条件(2)が満たされるよう駆動力が調節され、全輪がグリップ力を維持した状態で限界加速度の向上がなされることとなる。また、マップの算出に於いて、横加速度Ygがパラメータの一つとして用いられているので、制御時、即時の横加速度Ygに於けるマップの値(kf、kr、k)を選択することにより、制御後の駆動力の配分に於いても横加速度が維持される。横加速度は、式(7d)の如く、
δ=βf−βr+l・Yg/Vs
の関係にて、運転者により制御される舵角δと一対一の関係にあるので、運転者が操舵角を変更して前輪舵角を変更すると、横加速度に反映され、これにより、車両は、所望の方向に加速されることとなる。
なお、上記のマップの調製に於いて、駆動力配分比kf、kr、kをベース設定から変更する処理は、タイヤ負荷率が閾値Thを越えた後(ステップ120)から実行するようになっているが、総駆動力の初期値Dt0から駆動力配分比kf、kr、kの領域の算出及びその中心値の決定の手順により、駆動力配分比kf、kr、kを決定するようになっていてもよい。また、調製されるマップは、総駆動力Dt、摩擦係数μ、横加速度Yg、車速Vsを変数とした駆動力配分比の組(kf、kr、k)により構成されるので、図6のマップの調製過程では、摩擦係数μ、横加速度Yg及び車速Vsが固定され、総駆動力Dtを徐々に増大した算出処理が例示されているが、総駆動力Dtと、摩擦係数μ、横加速度Yg及び車速Vsのうちのいずれか一つを固定して、残りの一つを徐々に変化させても同様のマップが調製されることは理解されるべきである。
また、上記の一連の演算に於いて、タイヤ負荷率の演算中で車輪舵角、スリップ角を微小量として無視する場合には、車速Vsが各輪横力Fi、垂直荷重に於いて変数の一つにならないので、駆動力配分比の決定に於いて、車速Vsは参照しなくてもよくなる。従って、駆動力配分比の組合せのマップは、総駆動力Dt、摩擦係数μ、横加速度Ygを変数としたものとなる。
しかしながら、センタデフが速度拘束式のものである場合には、前後輪の駆動力配分比が拘束率crに変更され、状態のパラメータとして、摩擦係数μ及び横加速度Ygに加えて車速Vsも考慮される。従って、この場合、マップの調製に於いて、車速Vs、摩擦係数μ及び横加速度Ygについて想定される範囲全域に渡って変更しながら、左右配分比kf、krと拘束率の組合せと総駆動力Dtが逐次決定される。センタデフがトルク感応式のものである場合には、図7の処理に於いて、crを逐次変更する処理(ステップ300、310)は実行されない。
実際の車両に於いて、マップを予め準備するのではなく、即時の走行条件に於いて、駆動力配分比の組合せを決定する場合には、即時に図7の処理(図6のステップ140、150)を実行した後、図6のステップ160、170の処理が実行される。ステップ160で、k(又はcr)、kf、krの利用可能範囲が存在しない場合には、総駆動力Dtを増大すべきでないこととなる。
前輪側デフ又は後輪側デフが非作動とされる場合の配分制御時の駆動力配分比、限界加速度及び限界総駆動力の決定
上記の処理は、前輪側又は後輪側のデフの双方の駆動力配分比が可変のものとして説明されているが、前輪側又は後輪側デフのいずれか又は両方が非作動状態とされる場合の駆動力配分比の組合せのマップの調製と限界加速度αij(ij=fr,f,r,off 以下同様。)又は限界総駆動力Dt_ijの決定は、上記の図7の処理に於いて、非作動とされるデフの配分比をベース設定(kr=0.5及び/又はkf=0.5)に固定した状態で、各算出値を演算することにより為される。この場合、
eti≦1.0 …(2)
を満たす最大の総駆動力を与えたときに、全輪について条件(2a)が成立しないが、図6のステップ160の判定がノーとなり、ステップ190に到達した時点で、その前のサイクルの総駆動力が限界総駆動力として決定され、その値と駆動力配分比の組合せから、式(1a)又は(1b)から限界加速度が算出される。図8は、上記に説明された演算手法により得られる、種々の旋回状態及び路面摩擦状態に於ける前輪側又は後輪側のデフを選択的に作動又は非作動状態にした場合の限界加速度又は限界総駆動力の大きさを示したものである(図6のステップ190に於いて、限界加速度又は限界総駆動力を記憶したものをプロットしたものである。)。同図に於いては、それぞれ、(A)前輪側デフと後輪側デフの両方を作動したときの限界加速度αfr、(B)前輪側デフのみ作動したときの限界加速度αf、(C)後輪側デフのみ作動したときの限界加速度αr、(D)前輪側デフと後輪側デフの両方を非作動としたときの限界加速度αoffが示されている。図示の如く、いずれの場合も、限界加速度は、車両の旋回状態量と路面摩擦係数(又は更に車速)を与えることにより、一意に決定される。又、既に述べた如く、各限界加速度に対しては、限界総駆動力Dt_fr、Dt_f、Dt_r、Dt_offが、それぞれ、一意に決定されるので、車両の旋回状態量と路面摩擦係数を与えることにより、限界総駆動力も同様に決定される。なお、車輪舵角、スリップ角が小さいとされる場合、限界加速度と限界総駆動力の関係は、
αij=Dt_ij/M …(1c)
により与えられても良い。
限界加速度決定手段50eの作動
限界加速度決定手段50eでは、現在の車両の旋回状態量(横加速度Yg)と路面摩擦係数μ(又は更に車速Vs)から、上記の如く算出されるαfr、αf、αr、αoff又はこれに対応する総駆動力Dt_fr、Dt_f、Dt_r、Dt_offが決定される。この点に関し、既に述べた如く、上記の演算は、演算処理時間を要する一方、限界加速度又は限界総駆動力は、現在の車両の走行条件により一意に導出されるので、前記の走行条件をパラメータとする限界加速度又は限界総駆動力のマップが準備され、即時に入力されたパラメータから値が得られるようになっていてよい。即時に演算する場合には、図6のステップ170(総駆動力毎の駆動力配分制御に用いる配分比の決定)が省略される。
デフ作動決定部50fの作動
デフ作動決定部では、限界加速度決定部にて決定された限界加速度αijに対応する限界総駆動力Dt_ijと、現在の要求総駆動力Dtとが比較され、前輪側又は後輪側デフを作動しなくても、条件(2)を満たした状態(全輪のタイヤグリップ力が維持される状態)で、要求駆動力Dtの発生が許される場合には、デフが非作動とされる。具体的には、各デフは、以下の如く作動・非作動が決定される。
(a)Dt_off>Dtのとき−前輪側及び後輪側デフを非作動
(b)Dt_f>Dt_r>Dt>Dt_offのとき−後輪側デフのみ作動
(c)Dt_r>Dt_f>Dt>Dt_offのとき−前輪側デフのみ作動
(d)Dt_r>Dt>Dt_fのとき−後輪側デフのみ作動
(e)Dt_f>Dt>Dt_rのとき−前輪側デフのみ作動
(f)Dt>Dt_f且つDt>Dt_rのとき−前輪側及び後輪側デフを作動
例えば、図8を再度参照して、図中、黒点Xは、(a)が成立するため、前輪側及び後輪側デフが非作動と設定される。また、星点Yは、(f)が成立するため、前輪側及び後輪側デフが作動と設定される。また、白点Zは、(b)が成立するため、後輪側デフのみが作動される。なお、上記(a)〜(f)の判定は、現在の総駆動力を加速度に変換した値と、限界加速度との比較でも同様に為される。ただし、現在の総駆動力を加速度に正確に変換するためには、予め準備された駆動力配分比の組合せのマップから現在の車両の走行状態に適合した駆動力配分比の組合せを選択するなどの時間を要するので、上記の近似式(1c)が使用されてよい。
かくして、デフの作動・非作動が決定されると、前記の図6〜7において、非作動に設定されたデフの駆動力配分比を固定配分比として算出された駆動力配分比の組合せにより駆動力配分比の制御指令が決定され、対応するデフへ送信される。かかる構成によれば、既に述べた如く、全てのデフが常に作動状態に置かれることが回避され、使用過多によるデフの機能低下等の問題が低減されることとなる。
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。
例えば、上記の例に於いて、タイヤ負荷率が条件(2)を満たすように、即ち、全輪についてその限界まで増大することが許されるように、駆動力配分制御が実行されているが、タイヤ力が、一輪のみ、例えば、旋回外前輪のみ、限界まで増大することが許され、その他の車輪については、タイヤ力の増大が限界値よりも所定量低いまでに制限されるようになっていてもよい。その場合、全輪が同時に限界に達することが回避されるので、全輪の駆動力が同時に限界を超えることが回避される。また、前輪側及び後輪側デフの作動・非作動を要求総駆動力と限界加速度との関係に基づいて決定した後、その状態に於ける駆動力の配分又は各輪の駆動力は、上記の実施形態の手法によらず、任意の方法で決定されてよいことは理解されるべきであり、そのような場合も本発明の範囲に属する。
図1(A)は、本発明による駆動力配分制御装置の好ましい実施形態が実現される自動車の模式図を示している。図1(B)は、本発明の駆動力配分制御装置の構成を制御ブロックの形式にて表したものである。 図2(A)は、タイヤ負荷率について説明する図である。図2(B)は、旋回加速中の車両に於ける駆動力及び遠心力による各輪の荷重移動量を算出する際に参照する力成分のベクトルを示している。図2(C)は、旋回加速中の車両の各輪横力を算出する際に参照する遠心力、横力、駆動力ベクトルの関係を示している。なお、(B)、(C)は、車両を二輪モデルとして扱っている。 図3は、旋回加速中の車両の各輪横力を算出する際に参照する車両に作用するヨーモーメントの釣り合いに係わる力成分のベクトルを示している。ΔFが、駆動力の左右差によるヨーモーメントに対向する前輪から後輪へ移動する横力移動量に相当する。 図4は、旋回加速中の車両の各輪スリップ率を算出するために参照される前輪及び後輪の回転方向の移動速度Vf、Vr及び旋回半径Rf、Rrを算出する方法を説明する図である。構成を明瞭に示すために、スリップ角は、実際のものより大きく示されているが、各輪の回転方向の移動速度Vsf・cosβf、Vrs・cosβrに於いて、cosβf(r)〜1とする近似が用いられる。なお、図に於いて、車両を二輪モデルとして扱っている。 図5(A)は、センタデフが駆動力可変配分デフである場合の、或る路面摩擦係数μ、横加速度Yg、総駆動力Dtに於いて、全駆動輪のタイヤ負荷率が上限値1.0以下となる駆動力配分比の組み合わせの範囲を(kf,kr,k)の三次元空間に於いて示したものである。路面摩擦係数μ=1.0、横加速度Yg=4.9m/s(左旋回中)に於いて、Dt=3800Nmのときの例を示している(舵角、スリップ角を0に近似した場合である。)。総駆動力を増大すると、全駆動輪のタイヤ負荷率が上限値1.0以下となる(kf,kr,k)の領域は、1点に収束する(図示せず)。図5(B)は、センタデフが速度拘束式デフである場合の、或る車速Vs、路面摩擦係数μ、横加速度Yg、総駆動力Dtに於いて、全駆動輪のタイヤ負荷率が上限値1.0以下となる駆動力配分比の組み合わせの範囲を(kf,kr,cr)の三次元空間に於いて示したものである。図示の例では、車速Vs=60km/h、路面摩擦係数μ=1.0、横加速度Yg=3.92m/s(左旋回中)、総駆動力Dt=5000Nとした。総駆動力を増大すると、全駆動輪のタイヤ負荷率が上限値1.0以下となる(kf,kr,cr)の領域は、1点に収束する(図示せず)。 図6は、駆動力配分比の組み合わせのマップを調製する手順をフローチャートの形式で表した図である。図中、kf,kr,kの利用可能範囲とは、条件(2)を満たすkf,kr,kの三次元領域のことである。 図7は、或る路面摩擦係数μ、横加速度Yg、車速Vs及び総駆動力Dtに於いて、全駆動輪のタイヤ負荷率が上限値1.0以下となる駆動力配分比の組み合わせの領域を決定する手順をフローチャートの形式で表したものである。Nullは、値が無いことを意味する。Δk及び配分比又は拘束率の可変範囲[kmin,kmax]は、デフ毎に異なっていてもよい。S225は、S220がイエスになった後、ノーになるときには、krの下限、上限が決定されていることになるので、それ以後krを変更した計算の実行を省略するためのものである。kf、kについても同様の処理がなされよい。 図8は、横加速度Ygと摩擦係数μを変数としたときの、前輪側デフ及び後輪側デフをそれぞれ作動又は非作動とした場合のそれぞれの限界加速度の値のグラフ化したものである。(A)前輪側デフと後輪側デフの両方を作動したときの限界加速度αfr:(B)前輪側デフのみ作動したときの限界加速度αf:(C)後輪側デフのみ作動したときの限界加速度αr:(D)前輪側デフと後輪側デフの両方を非作動としたときの限界加速度αoff。センタデフが駆動力可変配分デフである場合の例である。
符号の説明
10…車体
12FL、FR、RL、RR…車輪
14…アクセルペダル
16…駆動装置
18…エンジン
20…変速機
22…センタデフ
24…前輪側デフ
26…後輪側デフ
30…操舵装置
32…ステアリングホイール
32…操舵角センサ
40FL、FR、RL、RR…車輪速センサ
50…電子制御装置

Claims (9)

  1. 前左右輪の駆動力を可変配分比にて分配する前輪用駆動力配分デフと、後左右輪の駆動力を可変配分比にて分配する後輪用駆動力配分デフとを備えた四輪駆動車両の駆動輪の駆動力の配分制御を行う車両の駆動力配分制御装置であって、
    前記車両の旋回中に前記前輪用駆動力配分デフ及び前記後輪用駆動力配分デフの両方及びいずれか一方のみによる駆動力の可変配分の実行時及び非実行時の各々に於ける前記車両の旋回方向に発生可能な前記車両の最大発生可能加速度を決定する最大発生可能加速度決定手段と、
    前記車両の現在の総駆動力に基づいて与えられる前記車両の加速度と前記最大発生可能加速度との比較、又は、前記車両の現在の総駆動力と前記最大発生可能加速度を与える前記車両の総駆動力との比較を行った結果に基づいて、前記前輪用駆動力配分デフ及び前記後輪用駆動力配分デフの各々の作動による駆動力の可変配分の実行及び非実行を決定するデフ作動決定手段と
    を含むことを特徴とする装置。
  2. 請求項1の装置であって、前記デフ作動決定手段が、前記車両の現在の総駆動力に基づいて与えられる前記車両の加速度が前記前輪用駆動力配分デフのみによる駆動力の可変配分の実行時に於いて発生可能な前記車両の最大発生可能加速度より小さいときには、前記後輪用駆動力配分デフによる駆動力の可変配分を非実行とすることを特徴とする装置。
  3. 請求項1又は2の装置であって、前記デフ作動決定手段が、前記車両の現在の総駆動力に基づいて与えられる前記車両の加速度が前記後輪用駆動力配分デフのみによる駆動力の可変配分の実行時に於いて発生可能な前記車両の最大発生可能加速度より小さいときには、前記前輪用駆動力配分デフによる駆動力の可変配分を非実行とすることを特徴とする装置。
  4. 請求項1の装置であって、前記車両の旋回方向を表す旋回状態量を決定する手段と、前記車両の走行路面の路面摩擦係数を決定する手段とを含み、前記最大発生可能加速度決定手段が、前記目標旋回状態量と前記路面摩擦係数とに基づいて前記最大発生可能加速度の各々を決定することを特徴とする装置。
  5. 請求項1の装置であって、前記車両の旋回方向を表す旋回状態量を決定する手段と、前記車両の走行路面の路面摩擦係数を決定する手段と、前記車両の車速を決定する手段とを含み、前記最大発生可能加速度決定手段が、前記目標旋回状態量と前記路面摩擦係数と前記車速とに基づいて前記最大発生可能加速度の各々を決定することを特徴とする装置。
  6. 請求項1の装置であって、前記最大発生可能加速度が前記車両の全車輪のタイヤグリップ力が各々の限界値を超えない状態で発生可能な加速度であることを特徴とする装置。
  7. 請求項1の装置であって、前記車両の前後輪の駆動力の配分を行うセンタデフが前記車両の前後輪の駆動力を可変配分比にて分配する駆動力可変配分デフであり、前記車両の各輪の駆動力が、前記車両の現在の総駆動力と、前記センタデフの前後輪の駆動力配分比と前記前輪用及び後輪用駆動力配分デフの各々の左右輪の駆動力配分比とにより与えられることを特徴とする装置。
  8. 請求項1の装置であって、前記車両の前後輪の駆動力の配分を行うセンタデフが速度拘束方式の駆動力配分装置であり、前記車両の各輪の駆動力が、前記車両の現在の総駆動力と、前記速度拘束方式の駆動力配分装置の前後回転軸の回転速の拘束率と、前記前輪用及び後輪用駆動力配分デフの左右輪の駆動力配分比とにより与えられることを特徴とする装置。
  9. 請求項1の装置であって、前記車両の前後輪の駆動力の配分を行うセンタデフがトルク感応方式の駆動力配分装置であり、前記車両の各輪の駆動力が、前記車両の現在の総駆動力と、前記前輪用及び後輪用駆動力配分デフの左右輪の駆動力配分比とにより与えられることを特徴とする装置。
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