JP5125669B2 - 四輪駆動車の車体速推定装置 - Google Patents

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本発明は、自動車等の車両の車体速を推定する装置に係り、より詳細には、車両の走行時の挙動を安定化する挙動制御に用いられる車体速推定値を演算する車体速推定装置に係る。
自動車等の車両の運動制御の分野に於いて、制駆動系又は操舵系の作動を電子制御することにより、旋回中の車両のヨー方向の挙動の安定性を向上するVSC(Vehicle Stability Control)又はVDIM(Vehicle Dynamic Integrated Management)などの挙動制御技術が、既に、多数提案されている。典型的なVSCに於いては、車両の旋回状態を表す旋回状態量、例えば、車両のヨーレート、スリップ角又は所定の状態量(オーバーステア状態量、アンダーステア状態量、横滑り状態量といった車両の現在の状態に基づいて所定の手順で算出される量)が監視され、車両の挙動がオーバーステア又はアンダーステア状態となったとき、各輪のタイヤのスリップ率又はスリップ量(以下、「スリップ率等」とする。)が調節され、或いは、エンジン又はモーター出力が低減又は制限され車両の加速が制限される。よく知られているように、車両の左右輪に於いて制駆動力差を発生させると、車両の重心周りにヨーモーメントが発生し、これにより車両の旋回方向の安定モーメントが発生し、また、車速が低減されると、旋回に必要な横力が低減することになるので、各輪のスリップ率等の調節(車輪スリップ制御)及び車両の加速の制限又は減速によって、オーバーステア又はアンダーステア状態が緩和され、車両のヨー方向挙動の安定化が図られることとなる。
上記の如き挙動制御又は車輪スリップ制御に於いて制御される各輪のスリップ率等は、各輪の車輪速と車体速との差分(の関数)により与えられるので、かかる制御の実行に際しては、車輪速値と車体速値とが用いられる。これらの値のうち、車輪速値は、各輪に備えられた車輪速センサにより検出される。他方、車体速値については、通常の車両では、その値を直接的に検出することのできる対地速度センサが設けられることは多くないので、例えば、従動輪を有する二輪駆動車の場合には、(制駆動スリップの発生していない)従動輪の車輪速値が車体速値として参照される。しかしながら、四輪駆動車などの全輪が駆動輪として作動する車両の場合、四輪駆動状態では(パートタイム4WDなど、車両によって、四輪駆動装置が二輪駆動状態と四輪駆動状態とのいずかに切換可能な場合がある。)、いずれの車輪に於いても制駆動スリップが発生している可能性があるので、いずれかの車輪速値をそのまま車体速値として用いることができない。そこで、そのような四輪駆動車に於いて車体速値を取得する際には、例えば、全輪の車輪速値のうち、最低値又は二番目に低い値を車体速の推定値として選択したり(特許文献1)、或いは、Gセンサ(前後加速度センサ)の値又はその値を用いて推定される路面の摩擦係数などに基づいて、車両に於いて発生可能な加速度を算定し、その加速度を用いて現在の車体速値を適当に推定する、といったことが行われる(特許文献2)。
特開2002−29402 特開2002−127881
上記の如き四輪駆動車に於ける車体速の推定に関し、特許文献1の如く、車輪速値を参照して車体速値を推定する場合、車両の四輪駆動装置が直結四輪駆動(直結4WD)状態、即ち、前後輪のプロペラシャフトが連結された状態、となっているときに、車輪スリップ制御により前輪側(又は後輪側)の左右輪のいずれか一方のみに制動力が付与されると、その車輪(制御輪)の回転数が低減される一方で左右輪のうちの他方(非制御輪)の回転数が車体速よりも相対的に大きくなり、これにより、上記の車輪速値に基づく車体速推定値の精度が悪化する現象が見出された。
四輪駆動装置が直結四輪駆動状態にあるときには、前後輪のプロペラシャフトの回転数が一致し、(前後のファイナルギヤでの終減速比が等しいとして)左右前輪の回転数の総和と左右後輪の回転数の総和とが略等しくなる。従って、例えば、車両の旋回中、旋回内外輪に於ける旋回半径の差を補うべく旋回内方及び外方の車輪の回転数がそれぞれ低減及び増大されるとき、或いは、車輪スリップ制御によるVSC等の挙動制御が開始されて特定の車輪に制動力が付与されることにより車両の左右で制駆動力差が与えられるときに、前輪及び後輪のそれぞれの差動装置(デフ)の作動によって左右輪に回転数差又は車輪速差が許される場合も、四輪駆動装置が直結四輪駆動状態にあるときには、前輪側及び後輪側のそれぞれの左右輪の回転数の総和が互いに等しい関係が維持される。即ち、一対の左右輪のうちの一方の回転数又は車輪速が低下すると、他方の回転数又は車輪速が相対的に増大することとなる(より詳細には、「発明を実施するための最良の形態」の欄参照)。
一方、車体速の推定に於いて、車輪速値を参照して車体速推定値を得る場合、車輪スリップ制御によるVSC等の挙動制御が開始されて特定の車輪に制動力が付与されるときには、その特定の車輪、即ち、制動作用を受ける制御輪の車輪速の値は、車体速の推定に用いることはできない。従って、車輪スリップ制御の実行中は、その制御輪を除く、非制御輪の車輪速の値のみが車体速の推定のために用いられる。例えば、典型的な挙動制御に於いて、旋回中の車両に於いてオーバーステア状態を緩和するべく旋回外前輪に制動力が付与されるときには、非制御輪となっている旋回内前輪の車輪速値に基づいて車体速が推定されることとなる。
しかしながら、既に述べた如く、四輪駆動機構が直結四輪駆動状態であるときには、前輪側及び後輪側のそれぞれの左右輪の回転数の総和が互いに等しくなるという制約から、車輪スリップ制御に基づき付与された制動力によって制御輪の車輪速が低減すると、これに伴って、その左右方向で反対側の非制御輪の車輪速が(車体速よりも相対的に)増大した状態となる。従って、車体速の推定に於いて、車輪スリップ制御による制動力が制御輪に付与されているときに、制御輪の(デフを挟んだ)左右反対側の非制御輪の車輪速値を参照してしまうと、車体速値が実際の(真の)車体速値よりも過大に推定されることとなり得る(車体速推定値の精度の悪化)。そして、車体速推定値が過大に見積もられると、車体速と車輪速との差分の関数で与えられるスリップ率等の大きさが真の大きさよりも過大に見積もられることとなり、結局、車輪スリップ制御により制御輪に対して付与される制動力が意図通りに発生しにくくなり、VSC等の制御効果に影響がでる。
かくして、本発明の一つの課題は、四輪駆動車に於いて各輪の車輪速に基づいて車体速の推定を行う車体速推定装置であって、上記の如きVSC等の挙動制御により特定の車輪に制動力が付与されるときの車体速推定値の精度を必要なレベルに保つことのできる装置を提供することである。
また、本発明のもう一つの課題は、上記の如き車体速推定装置であって、前輪側及び後輪側のそれぞれのプロペラシャフトの回転数又は左右輪の回転数の総和が互いに等しくなるという制約が存在している状態下で、或る車輪に制動力が付与される場合に、制動力が付与されない車輪の車輪速が連動して変化し、これにより、推定される車体速値の精度が悪化するという問題が解決されるよう構成された装置を提供することである。
更に、本発明のもう一つの課題は、上記の如き車体速推定装置であって、四輪駆動装置が直結四輪駆動状態にあるときに車輪スリップ制御により或る車輪に制動力が付与される場合には、車輪スリップ制御に於ける非制御輪の車輪速が相対的に増大することを考慮し、その影響が、算定される車体速推定値に於いて低減されるよう構成された装置を提供することである。
また、本発明の更なる課題は、上記の如き車体速推定装置であって、四輪駆動装置が直結四輪駆動状態にあり且つ車輪スリップ制御により或る車輪に制動力が付与される場合の車体速推定値精度の悪化及びこれによる挙動制御の制御効果の悪化を抑制できるように車体速推定値を決定する装置を提供することである。


本発明によれば、端的に述べれば、四輪駆動装置を有する車両の車体速値を車輪速値に基づいて推定する車体速推定装置であって、車両に於いて挙動制御又はその他の制御の目的で一部の車輪に制動力が付与された際には、かかる制動力の付与に伴って他の車輪(非制御輪)の車輪速が増加し得ることを考慮して車体速推定値を決定するよう構成された装置が提供される。
本発明の車両の車体速推定装置は、車両の各輪の車輪速値を取得する車輪速取得部と、車両の各輪のうちの少なくとも一つの車輪に制動力を付与する車輪スリップ制御が実行される際には制動力が付与されない車輪の車輪速値を用いて車両の車体速推定値を決定する車体速推定部とを含み、前記の制動力が少なくとも一部の車輪に付与されるとき、車体速推定部にて決定される車体速推定値に於ける制動力が付与されない車輪の車輪速値の増大側の変化量の寄与が低減されることを特徴とする。なお、「車輪スリップ制御」とは、各輪スリップ率等をVSC又はVDIM等による挙動制御に基づいて決定される目標値に一致させるよう、各輪に制動力を付与する制御であり、かかる制動力の付与は、運転者の制動操作とは独立に実行される。車輪スリップ制御により制動力が付与される車輪が「制御輪」であり、制動力が付与されない車輪が「非制御輪」である。
上記の本発明の構成に於いては、車輪スリップ制御により車両のいずれかの車輪に制動力が選択的に付与された場合、車体速の推定は、制動力が付与されない非制御輪の車輪速値のみを用いて為されるところ、その車体速推定値の決定に用いられる非制御輪の車輪速値の増大側の変化量の、車体速推定値に於ける寄与が低減され、これにより、車体速推定値が過大に算出されることを回避することが試みられる。既に述べた如く、四輪駆動車に於いて、その駆動装置が直結四輪駆動状態にあるときには、前後輪のプロペラシャフトの回転数が互いに一致するという制約から、前輪側及び後輪側の左右一対の車輪のうちの一方(制御輪)の車輪速が低下すると、車体自体の速度が増大していないにもかかわらず、或いは、制動力が付与されることによって車両が減速するはずであるにもかかわらず、左右一対の車輪のうちの他方(非制御輪)の車輪速が増加し、或いは、実際の車体速値より相対的に大きな状態となる。そして、車体速の推定に於いて、非制御輪の車輪速の値をそのまま用いてしまうと、車体速推定値に非制御輪の車輪速の増加が反映され、車体速推定値が過大な値となり得る。そこで、本発明では、上記の如く、非制御輪の車輪速に於ける増大側の変化量が車体速推定値に与える寄与を低減することによって、換言すれば、非制御輪の車輪速値の増大側の変化量を低減した値を用いて車体速推定値を決定することによって、制御輪の車輪速の低下に伴って非制御輪の車輪速が増加する現象の影響により車体速推定値が過大な値と成る可能性が低減される。
なお、挙動制御が実行される際には、典型的には、車両の車輪のいずれかに制動力が付与され、或いは、駆動出力を低下させて車両の減速が実行され、車体速は、低下する方向に変化するはずなので、非制御輪の車輪速に於ける増大側の変化量が車体速推定値に与える寄与が無視される、即ち、車体速推定値に於いて非制御輪の車輪速に於ける増大側の変化量が全く反映されないようになっていてもよい。また、制御輪の車輪速の低下に伴って非制御輪の車輪速が増加する現象は、四輪駆動装置が直結四輪駆動状態にあり且つ車両の挙動制御により車両の少なくとも一対の左右の車輪のうちの一方に選択的に制動力が付与されるときに生ずる。従って、本発明の装置の構成に於ける車体速推定値に於ける非制御輪の車輪速値の増大側の変化量の寄与の低減は、四輪駆動装置が直結四輪駆動状態にあり且つ車両の挙動制御により車両の少なくとも一対の左右の車輪のうちの一方(制御輪)に選択的に制動力が付与されるとき、車体速推定値の決定に際して、一対の左右の車輪のうちの他方(非制御輪)の車輪速値に於ける増大側の変化量を低減して得られる値を用いるという構成により達成されてよい。
上記の本発明の装置の実施の態様の一つに於いて、車体速推定値に於ける非制御輪の車輪速値の増大側の変化量の寄与の低減は、非制御輪のうちの少なくとも一つの車輪速値の変化率が所定の上限値を超えるときに、その(車体速推定に用いられる車輪速値の)変化率を所定の上限値に設定することにより為されてよい(車輪の回転自体を制限するのではない。)。既に述べた如く、車体は、車輪スリップ制御中、その制御により制御輪に付与される制動力によって減速されるので、車体速は低下するはずである。従って、上記の実施の態様の如く、所定の上限値を上回る増大方向の変化が無視された非制御輪の車輪速値を用いて車体速推定値の決定を行うことにより、非制御輪の車輪速の検出値に増大があっても又は低減の遅れがあっても、これらは推定結果に反映されず、車速推定値を、低減傾向にある真の車速値により近づけられることが期待される。なお、この場合、一つの実施形態として、車輪速値の変化率が所定時間に於ける車輪速の変化量であり、該変化率が前記の所定の上限値を超えるとき、車体速推定値の決定に用いられる(前記の変化率に対応する)車輪の車輪速値が、前記の所定の上限値に前記の所定時間を乗じて与えられるようになっていてよい。また、車体速推定値の決定に用いる車輪速値の変化率が過剰に減速側にならないように、かかる変化率に下限値が設けられ、変化率が下限値を下回るときには、変化率がその下限値に設定されるようになっていてよい。
また、上記の本発明の装置に於いて、車体速推定値の決定は、非制御輪の車輪速値のうちから選択された値、例えば、最低値、が車体速推定値として決定されるようになっていてよい。その場合、車体速推定値として選択された車輪速値がその増大側の変化量の寄与が低減された値であってよい。一つの実施の形態に於いて、四輪駆動装置が直結四輪駆動状態にあり且つ車両の挙動制御により車両の少なくとも一対の左右の車輪のうちの一方(制御輪)に選択的に制動力が付与されるときに、車体速推定値が、非制御輪の車輪速値と、少なくとも一対の左右の車輪のうちの他方(制御輪の車両の左右方向について反対側の非制御輪)の車輪速値からその増大側の変化量を低減して得られる値とのうち最も低い値に決定される。四輪のうち三輪が制御輪となるときには、残る一つの非制御輪の車輪速が車体速推定に用いられるところ、その場合には、その非制御輪の車輪速の増大側の変化量を低減して得られる値が車体速推定値として採用されるようになっていてよい。
なお、上記の本発明の一連の態様に於いて、車体速推定値に於ける非制御輪の車輪速値の増大側の変化量の寄与の低減は、車輪スリップ制御による制動力が所定値より大きいとき、或いは、路面の最大摩擦係数がその所定値より大きいときにのみ実行されてよい。また、運転者により制動操作が行われ、各輪に制動力が付与される場合には、非制御輪の車輪速値がそのまま車体速推定値として採用されるようになっていてよい。
本発明の車体速推定装置によれば、四輪駆動装置が直結四輪駆動状態にあり、前輪側と後輪側とのプロペラシャフトの回転数が互いに一致するという制約の下で生ずる特殊な状態に於いて、車輪速値に基づき推定される車体速推定値ができるだけ真の車体速値に近づくように、車体速推定の手法が変更される。既に述べた如く、VSC等の挙動制御では、車体速推定値と車輪速値とを用いて、実際の各輪スリップ率等を監視し、それらのスリップ率等が車両の旋回状態に応じて決定される各輪の目標スリップ率等に一致するよう制御されるところ、従前では、四輪駆動装置が直結四輪駆動状態にあるときには、車体速推定値が過大に見積もられ、これにより、制御輪のスリップ率等も過大に見積もられることとなり、実際には、制御輪のスリップ率等がその目標値に達していないにもかかわらず、スリップ率等の調節が為されず、その結果、挙動制御の効果が低下する場合があった。しかしながら、本発明によれば、結果として得られる車体速推定値が、従前に比して、より真の値に近い値が得られることとなり、挙動制御の効果を意図通りに発揮できることとなる。また、本発明の装置により与えられる推定結果は、挙動制御以外の目的で利用されてもよく、そのような場合も本発明の範囲に属すると理解されるべきである。
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明より明らかになるであろう。
車両の構成
図1(A)は、本発明の車体速推定装置の好ましい実施形態が搭載される四輪駆動車を模式的に示している。同図に於いて、左右前輪12FL、12FRと、左右後輪12RL、12RRを有する車両10には、通常の態様にて、運転者によるアクセルペダル16a(図1(B))の踏込みに応じて前後輪に駆動力を発生する駆動装置16と、車両を操舵するためのステアリング装置(図示せず。)と、各輪に制動力を発生する制動装置とが搭載される。駆動装置16に於いては、図示の例では、ガソリン若しくはディーゼルエンジン、電動機又はこれらが差動歯車装置(図示せず)にて連結されてなるハイブリッド式の駆動ユニット18からの駆動トルク或いは回転駆動力が、トランスミッション(変速機)20を経て、トランスファ22へ伝達され、更に、前輪側デフ24及び後輪側デフ26を介して、前輪12FL、12FR及び後輪12RL、12RRへそれぞれ伝達される。なお、駆動装置16は、所謂パートタイム4WDシステムであり、通常走行時には、前輪又は後輪を駆動輪とする二輪駆動モード(前輪又は後輪のいずれを駆動輪とするものであってよい。)にて作動し、雪道や砂利道などの滑りやすい路面を走行するときなどに選択的に全輪が駆動輪となる四輪駆動モードにて作動する形式のものである。かくして、二輪駆動モードが選択されるときには、トランスファ22に於いて、トランスミッション20から伝達される回転は、後輪側プロペラシャフト28R(又は前輪側プロペラシャフト28F)のみに伝達されるが、四輪駆動モードが選択されるときには、トランスファ22に於いて、前輪側プロペラシャフト28Fと後輪側プロペラシャフト28Rとが機械的に直結され、トランスミッション20から伝達される回転がそれぞれのプロペラシャフト28F、Rに均等に伝達される(直結四輪駆動状態)。
制動装置40は、運転者によりブレーキペダル44(図1(B))の踏込みに応答して作動される油圧回路46によって、各輪に装備をされたホイールシリンダ42i(i=FL、FR、RL、RR 以下同様。)内のブレーキ圧、即ち、各輪に於ける制動力が調節される形式の電子制御式の油圧式制動装置であってよい。油圧回路46には、通常の態様にて、各輪のホイールシリンダを選択的に、マスタシリンダ、オイルポンプ又はオイルリザーバ(図示せず)へ連通する種々の弁(マスタシリンダカット弁、油圧保持弁、減圧弁)が設けられており、通常の作動に於いては、ブレーキペダル44の踏込みに応答して、マスタシリンダの圧力がそれぞれのホイールシリンダ42i(i=FL,FR,RL,RR。以下同様)へ供給される。しかしながら、挙動制御又はその他の任意の制動力配分制御を実行するべく、各輪の制動力を個別に又は独立に調節する場合には、電子制御装置50の指令に基づいて、前記の種々の弁が作動され、各輪のホイールシリンダ内のブレーキ圧が、対応する圧力センサ(ブレーキ圧センサ42a−i(図1(B))の検出値に基づいて、それぞれの目標圧に合致するよう制御される。なお、制動装置40は、空気圧式又は電磁式に各輪に制動力を与える形式又はその他当業者にとって任意の形式のものであってよい。
上記の車両の挙動制御、駆動装置16及び制動装置40の作動制御は、既に触れたように、電子制御装置50に於いて実現され、本発明の車体速推定装置は、電子制御装置50の一部に組み込まれる。電子制御装置50は、通常の形式の、双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU、ROM、RAM及び入出力ポート装置を有するマイクロコンピュータ及び駆動回路を含んでいてよい。図1(A)に於いては、簡単のため、電子制御装置50には、車輪速センサ30iからの車輪速Vwi、ブレーキ圧センサ42a−iからの各輪ブレーキ圧Pbiの検出値、駆動装置の駆動モードを示す情報が入力されるよう例示されているが、図1(B)に示されているように、本実施形態の車両に於いて実行されるべき各種制御に必要な種々のパラメータ、例えば、操舵角センサ34からの操舵角δ、横Gセンサ62からの横加速度Gy、ヨーレートセンサ64からのヨーレートγ、前後Gセンサ値等の各種検出信号が入力されてよい。
電子制御装置の構成及び作動
図1(B)は、電子制御装置50にて実現される挙動制御装置及び車体速推定装置(車体速推定部50dと車輪速値Vwiを車体速推定部50dへ入力するための部分)の構成を制御ブロックの形式にて表したものである。なお、図示の制御装置の構成及び作動は、車両の運転中、電子制御装置50内のCPU等の処理作動に於いて実現されることは理解されるべきである。
同図を参照して、本実施形態の挙動制御を実行する制御装置は、その基本的な構成に於いて、公知の任意の形式のVSC、VDIM装置と同様であってよい。かかる挙動制御装置に於いて、VSC部50aは、概して述べれば、車両がアンダーステア状態又はオーバーステア状態に陥ったこと又は陥るおそれがあることを検出すると、制動装置の制動制御装置50bとエンジン又はモーターのトルク制御を実行する駆動制御装置50cに対して、それぞれ、各輪の目標スリップ率Si及び駆動装置の発生トルク(駆動出力)に対するトルクダウン率Tdを送信し、車両に於いてヨーモーメントを生成し、或いは、車両の増速制限又は減速をし、これにより、車両挙動の安定化が図られる。
具体的には、例えば、VSC部50aは、公知のVSCと同様に、まず、運転者により回転されるハンドルの操舵角δと、車体速Vxと、ヨーレートセンサからの実ヨーレートγ又は横Gセンサからの実横加速度Gyとから旋回中の車両の挙動を表す旋回状態量(旋回状態指標値)として、
アンダーステア状態量:US=(γt−γ)×signδ …(1a)
オーバーステア状態量:OS=(γ−γt)×signδ …(1b)
横滑り状態量:LS=w1・|Gy−γVx|+w2・∫|Gy−γVx|dt …(1c)
をそれぞれ算出する。ここで、signδは、操舵角の符号±1である。γtは、目標ヨーレートであり、操舵角δと車体速Vxとから、例えば、車両の旋回モデルにより下記の如く与えられるものであってよい。
γt=Vx・δ/N・L−Gy・kh・Vx …(2)
ここで、N、L、khは、それぞれ、ハンドル操舵角のギア比(δ/Nが前輪舵角になる)、ホイールベース、車両の旋回特性値(定数)である。また、(1c)のw1、w2は、重み係数である。なお、US状態量とOS状態量とは、負値になるときは、0とされる。上記の旋回状態量に於いて、US状態量は、実ヨーレートの大きさが目標ヨーレート(理論的に適正とされる値)の大きさを下回っている状態、つまり、アンダーステア状態の程度を表すものであり、OS状態量は、実ヨーレートの大きさが目標ヨーレートの大きさを上回っている状態、つまり、オーバーステア状態の程度を表すものである。LS状態量は、旋回中の車両の横滑り量の指標値であり、横滑り角を0に戻すために必要な(安定化)ヨーモーメントの大きさに相当する。
かくして、上記の旋回状態量が算出されると、VSC部50aに於いて、更に、前記の旋回状態量が何れも0となるように車両の旋回挙動を修正するヨーモーメントを生成するための各輪タイヤのスリップ率(タイヤ力)の目標値Siが決定され、制動制御装置50bへ送信される。制動制御装置50bに於いて、現在の各輪のスリップ率Saiが
Sai=(Vx−Vwi)/Vx …(3)
により計算され、Sai=Siの状態が達成されるようブレーキ圧Pbiを調節する制御指令(回路内の種々の弁、ポンプに対する指令)を油圧回路46へ与え、各輪の制動装置(ホイールシリンダ)を作動する(車輪スリップ制御)。[典型的には、挙動を修正するのに必要十分なヨーモーメントを発生させるのではなく、旋回状態量がそれぞれの閾値を越えたときに、旋回状態量の大きさに応じて適当な量のヨーモーメントを発生させる方向に各輪スリップ率を配分制御し、フィードバック制御により各旋回状態量が所定値以下に落ち着くようスリップ率が調節される。]また、上記の旋回状態量が0より大きいときには、車両に於いて旋回に必要な横力を発生することができないか、或いは、後輪のタイヤ力が限界に達している可能性があるので、車体速を低減して、旋回に必要な横力を低減し、車両挙動の安定化が図られる。かかる作動に於いては、典型的には、エンジン(電動機若しくは駆動ユニット)の出力トルクを制御する駆動制御装置50cに対して、トルクダウン率(駆動トルクの低減率)Tdが指示され、これに応答して、駆動制御装置50cがエンジンの出力トルクを制限又は低減させる。
上記から理解される如く、挙動制御の旋回状態量の算出及び現在の各輪スリップ率Saiの算出に於いては、車体速Vxが用いられる。この点に関し、「発明の開示」の欄に於いて述べた通り、通常の車両では、対地速度センサは設けられないので、車体速Vxの値は、車体速推定部50dに於いて各輪の車輪速値を用いた推定により与えられる値が用いられる。かかる車体速推定部50dに於ける車体速推定処理に関して、既に述べた如く、車輪スリップ制御が実行されると、制動力が付与される制御輪の車輪速は参照されず、制動力が付与されない非制御輪の車輪速のみを参照して、車体速推定値Vxeが決定される。しかしながら、車両の四輪駆動装置が直結四輪駆動状態のときには、制御輪の車輪速の低下に伴って、非制御輪の車輪速は、車体速に対して相対的に増大した状態となり、そのまま車体速推定値として採用すると、車体速推定値が真の値よりも過大となる。そこで、本実施形態の車体速推定部50dでは、上記の如き車体速推定値が真の値より過大となる不具合ができるだけ解消されるよう車体速推定処理の構成が修正される。なお、車体速推定部50dには、かかる車体速推定処理構成の修正のために、車輪速値に加えて、四輪駆動装置の現在の駆動モード(二輪駆動モードか四輪駆動モードか)、目標スリップ率Si、旋回状態量(US,etc.)、任意の形式の路面摩擦係数推定装置50eからの路面摩擦係数推定値μ、ブレーキペダル踏込量θbが入力されるようになっていてよい。
車体速推定部50dの構成及び作動−車体速推定値Vxeの決定
(車体速推定処理の基本構成)
上記の車体速推定部50dに於いては、四輪駆動モードのときには、全輪が駆動装置と作動的に連結されており、いずれの車輪に於いてもスリップが存在する可能性がある。従って、この場合、通常は、挙動制御による制動力が付与されていない車輪の車輪速値のうちの最低値が車体速推定値として選択される。即ち、車体速推定値Vxeは、
Vxe=Min(VwFR,VwFL,VwRR,VwRL) …(4)
により与えられる。なお、Minは、括弧内の数値の最低値を選択する演算子である(下から二番目の値が採用される場合もある。)。しかしながら、車両が四輪駆動モードにて走行中に前記の挙動制御が実行され、或る特定の車輪に制動力が付与されるときには、その制動力の付与された車輪、即ち、制御輪は、スリップが発生していることとなるので、車体速推定値Vxeは、制動力の付与されていない非制御輪の車輪速値のみから選択される。即ち、
Vxe=Min(VwFR非制御,VwFL非制御,VwRR非制御,VwRL非制御)…(4a)
ここで、“非制御”の表記は、対応する車輪が非制御輪であるときのみ、選択可能であることを示している。なお、挙動制御の形式にもよるが、典型的な車両の旋回時の挙動制御の例では、旋回外輪と両後輪が制御輪となる。その場合は、
Vxe=Vwf_in …(4b)
により、車体速推定値Vxeが与えられる。
(車体速推定値の精度の悪化の原理)
しかしながら、既に触れた通り、四輪駆動装置が直結四輪駆動状態にあるときに、前輪又は後輪に於いて、左右輪の片側だけに車輪スリップ制御による制動力が付与される場合、その制御輪の左右反対の側の車輪の車輪速が車体速に比して相対的に高くなる現象が発生し、これにより、車体速推定値が過大になることが見出された。
例えば、図2に例示されている如く、車両の旋回中(図では、左方向)、トランスファ22からの回転がプロペラシャフトを介してデフ24及び26へそれぞれ伝達される際、当業者に於いてよく知られている如く、車両の旋回外内に於いて旋回半径が異なるので、その各デフ24、26は、それぞれ、旋回外方の車輪の回転が旋回内方の車輪の回転よりも速くなるよう各輪のアクスルシャフトに回転を伝達する。即ち、図示の例の場合、
ωFR>ωFL 及び ωRR>ωRL …(5)
ここで、ωiは、各輪のアクスルシャフトの回転速である。このとき、四輪駆動装置が直結四輪駆動状態にある場合には、前輪側プロペラシャフト28Fと後輪側プロペラシャフト28Rとは、機械的に連結され、プロペラシャフト間で回転滑りがない状態なので、それぞれの回転速ωF、ωRとの間には、
ωF=ωR …(6)
が成立し、各デフ24、26により各輪のアクスルシャフトに伝達された回転速ωiに於いては、常に、
ωFR+ωFL=ωRR+ωRL …(7)
が成立する。
上記の式(7)の関係は、車両に於いてVSCのための車輪スリップ制御の実行により、或る特定の車輪に制動力が付与されて、その車輪の車輪速が低下した場合にも成立する。例えば、図示の例で、旋回外前輪(12FR)に制動力が付与され、その回転速ωFRがΔだけ低減した場合、両後輪の回転数の総和が変化しないとすると、旋回内前輪(12FL)の回転速ωFLは、Δだけ増大することとなる。即ち、
(ωFR−Δ)+(ωFL+Δ)=ωRR+ωRL …(7a)
[実際の車両に於いて、旋回外前輪に制動力が付与されると、車両全体が減速され、両後輪の車輪速も低下する。しかしながら、旋回外前輪で発生する制動力の作用が、車両の減速及び両後輪の車輪速の低下に反映されるまでの時間に、旋回内前輪の回転速が増大する。]
図3(A)は、上記の如く、四輪駆動装置が直結四輪駆動状態にあるときに、旋回外前輪に車輪スリップ制御による制動力が付与されたときの旋回外前輪の車輪速Vwf_out、旋回内前輪の車輪速Vwf_in及び(真の)車体速Vxの変化の例を示したものである。同図を参照して、制御開始の時点から旋回外前輪に制動力が付与されると、図中、細線にて示されている如く、車輪速Vwf_outは、徐々に低下する(開始初期に大きく低下しているのは、その時期にややオーバーシュート気味に制動力を与えて、挙動制御が速やかに効果を発揮させるためである。)。また、既に触れたように、旋回外前輪に制動力が作用することで、車体速Vxも制御開始の時点から徐々に低下する(図中、一点鎖線)。しかしながら、旋回外前輪に制動力が作用し、車輪速Vwf_outが低下すると、式(7a)の関係が維持されることにより、旋回内前輪の車輪速Vwf_inは、図中、太線にて示されている如く、制御開始の時点から一旦上昇し、しかる後に徐々に低下する。このとき、旋回外前輪に制動力が作用し続ける間は、旋回外前輪の車輪速Vwf_outは、相対的に車体速Vxよりも低くなるので、その代わりに、旋回内前輪の車輪速Vwf_inが相対的に車体速Vxよりも高い方向に持ち上がった状態となる。また、既に述べた如く、現在のスリップ率Saiが車体速推定値Vxeを用いて、式(3)により算出されると、その算出結果値が真のスリップ率よりも大きくなり、実際には、真のスリップ率が目標スリップ率Siに到達していなくても、みかけ上、Sai=Siの状態が成立することとなる。その結果、挙動制御の要求するスリップ率が達成されず、挙動制御の効果が低減されてしまうこととなり得る。
(車体速推定処理の構成の修正)
上記の如く、四輪駆動装置が四輪駆動モードにあるときにVSCのための車輪スリップ制御が実行されている際には、制御輪の車輪速が低下する一方で、非制御輪の車輪速が増大することとなり、非制御輪の車輪速値が実際の車体速から乖離するので、車体速推定処理に際しては、結局、制御輪だけでなく、非制御輪の車輪速値もそのままでは精度の良い車体速推定値として採用できない。そこで、本発明の実施形態では、車両が四輪駆動モードにて走行中に車輪スリップ制御が開始されるときには、車体速推定値Vxeに於いて、図3(A)中の車輪速Vwf_inが車体速Vxを上回る量(以下、「非制御輪車輪速増分」とする。)が反映されないように、車体速推定値を与える式(4a)〜(4b)が修正される。
具体的には、本実施形態に於いては、決定される車体速推定値Vxeに於いて非制御輪車輪速増分が低減又は除去されるように、非制御輪の車輪速からその増大側の変化量を低減して得られた値を用いて車体速推定値Vxeが決定される。図3(A)を再度参照して、非制御輪(旋回内前輪)の車輪速Vwf_inが車体速Vxから高速側に乖離する原因は、車輪速Vwf_inが制御開始直後のその反対側の車輪速Vwf_outの低下に対応して逆方向に増加するためである。しかしながら、同図から理解される如く、車輪速Vwf_inは、制御開始後、一旦上昇した後には、真の車体速Vxの低下と伴に低減する。かくして、非制御輪車輪速増分が車体速推定値Vxに反映されないようにするために、本実施形態では、図3(B)に例示されている如く、非制御輪の車輪速に於いて増大側の変化があったとき(変化率>0)、その変化量を制限又は無視し、減少側の変化があったとき(変化率<0)のみ、その変化量を反映させることにより得られた値(以下、「制限付き車輪速値」とする。)を算出し、その算出値が、車体速推定値Vxeの決定のために用いられる。
かかる制限付き車輪速値Vwf_in*は、例えば、下記の式により与えられてよい。[以下に於いては、非制御輪の車輪速を便宜上、Vwf_inを用いて表すが、挙動制御の形式によっては、必ずしも、非制御輪が旋回内前輪でなくてもよい。]
Vwf_in*=Min(dVwf_in,dVupper)×dt+Vwf_in*(前回値)
…(8a)
ここで、dVwf_inは、所定時間dt(例えば、1制御サイクル時間)当たりのVwf_inの変化量であり、Vwf_in*(前回値)は、所定時間dt前のVwf_in*の値である。また、dVupperは、変化率の上限値であり、典型的には、dVupper=0に設定される。かくして、式(8a)によれば、dVwf_in>dVupperとなるときには、Min演算子により、dVupperが選択され、これにより、制限付き車輪速値Vwf_in*が増大することが回避される。或いは、制限付き車輪速値Vwf_in*の算出に於いて、Vwf_inの変化率が過剰に負側に変位することを回避するために、制限付き車輪速値Vwf_in*は、好ましくは、
Vwf_in*=Mid(dVlower,dVwf_in,dVupper)×dt+Vwf_in(前回値)
…(8b)
により算出される。ここで、dVlowerは、変化率の下限値であり、Midは、括弧内の数値から中間の値を選択する演算子である。dVlowerは、図4に例示のマップの如く、旋回状態量の大きさが大きくなるほど絶対値が大きくなるよう可変に設定されてよい(旋回状態量の大きさと伴にdVlowerの絶対値を大きくするのは、旋回状態量が大きいほど、挙動制御により要求される車両の減速度が大きくなることに対応したものである。)。上記の式(8a)又は(8b)により与えられる制限付き車輪速値Vwf_in*は、その式から容易に理解される如く、制御開始後、車輪速値Vwf_inが増大しても制御開始時の値(車体速Vxに略一致した値)を保持し、車輪速値Vwf_inが減少に転ずると、それとともに低減することとなり、従って、車輪速値Vwf_inから非制御輪車輪速増分の殆どを除去した値となる。
かくして、制限付き車輪速値Vwf_in*が与えられると、車体速推定値Vxは、
Vxe=Min(VwFR非制御,VwFL非制御,VwRR非制御,VwRL非制御,Vwf_in*)…(9a)
又は
(制御輪が三輪のとき)
Vxe=Vwf_in* …(9b)
によって与えられ、前記の式(4a)又は(4b)に比して、より真の車体速値に近い車体速推定値Vxが与えられることとなる。
なお、式(8a)又は(8b)及び式(9a)又は(9b)を用いた車体速推定処理は、VSC等の挙動制御の実行時に非制御輪の車輪速が図3(A)にて例示されている如く顕著に増大するときにのみ実行される。従って、車体速推定部50に於いては、そのような非制御輪の車輪速の増大が生じ得る状態の検出を待ってから、車体速推定処理の構成を、通常の構成から式(8a)、(8b)及び式(9a)、(9b)を用いる構成に切り換えるようになっていてよい。かかる車体速推定処理の構成の切換のために、車体速推定部50には、既に触れたように、現在の駆動モード情報、目標スリップ率Si、旋回状態量、路面摩擦係数推定値μ、ブレーキ踏込量が入力され、下記の条件が全て成立しているか否かが判定される。
(a)駆動モード=四輪駆動モード
(b)目標スリップ率Si>所定値
(c)路面摩擦係数推定値μ>所定閾値
(d)上限速度>車体速度>下限速度
(e)ブレーキ踏込量θb=0
そして、上記の条件が全て成立しているとき、車体速推定処理の構成が式(8a)又は(8b)及び式(9a)又は(9b)を用いる構成に切り換えられる。
上記の条件について、各条件が成立しないときに、上記の修正された車体速推定処理の構成を使用しない理由は、以下の通りである。
(b)目標スリップ率Siが所定値を超えないときには、車輪スリップ制御自体が実行されていないか、制御輪に付与される制動力が小さく、非制御輪の車輪速の増加が問題にならないためである。
(c)路面摩擦係数が所定閾値を下回るときには、タイヤがスリップしやすく、旋回外前輪等に制動力が付与された際に両後輪がスリップし、旋回内前輪の車輪速の増加が生じないためである。
(d)車体速度が上記範囲外にあるときは、車輪速に基づく車体速推定の精度自体が別の理由で低下するためである。
(e)運転者がブレーキペダルを踏込み、制動操作を行った場合、全輪に制動力が発生し、非制御輪の車輪速の増加が生じないためである。なお、この場合、非制御輪の車輪速値がそのまま車体速推定値とされてよい(式(4a)又は(4b))。
以上に於いては本発明を一つの実施の形態について詳細に説明したが、かかる実施の形態について本発明の範囲内にて種々の変更が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
例えば、本実施形態では、車体速推定値を算出する前に非制御輪の車輪速値から制限付き車輪速値を算出しているが、非制御輪の車輪速値から車体速推定値を一旦決定した後に、車体速推定値の増大側の変化を制限した値を算出し、その値を挙動制御又はその他の制御に於いて車体速として用いるようになっていてもよい(式(9b)の場合、参照)また、挙動制御の態様及び旋回状態量は、例示のものに限らず、任意の形式のものであってよく、そのようなものも本発明の範囲に属することは理解されるべきである。
図1(A)は、本発明の車体速推定装置の好ましい実施形態が搭載される車両の模式図であり、図1(B)は、本発明による車体速推定装置を組み込んだ挙制御装置の好ましい実施形態を実現する電子制御装置の制御ブロック図である。 図2は、直結四輪駆動状態(パートタイム4WDの四輪駆動モード)に於けるプロペラシャフト、各輪アクスルシャフトの回転数の関係を説明する車両の模式図である。典型的な挙動制御の例として、旋回外前輪と両後輪が制御輪となり、旋回内前輪が非制御輪となるものが例示されているが、これに限定されない。 図3(A)は、旋回外前輪に制動力が付与された際の旋回外前輪の車輪速Vwf_outと旋回内前輪の車輪速Vwf_inと(真の)車体速Vxの時間変化をそれぞれグラフ形式で表したものである。図3(B)は、旋回内前輪の車輪速Vwf_inの変化率の時間変化をグラフ形式で表したものである。制限付き車輪速値は、図中、変化率>0となる期間に於いて増大しないように算定される。また、変化率<下限ガード値となるときにも、制限付き車輪速値は、減少しないように算定される。 図4は、制限付き車輪速値を算定する際に、その変化率の許容可能な制限範囲(上限値dVupper、下限値dVlower)を表すマップである。典型的には、上限値dVupper=0として設定されるが、下限値dVlowerは、旋回状態量、例えば、US、OS又はLS状態量、の大きさによって可変に設定されてよい。dVlower_satは、その飽和値である。
符号の説明
10…車両
16…四輪駆動装置
18…駆動装置(エンジン又はモーター)
22…トランスファ
24、26…前輪側デフ、後輪側デフ
28F、28R…前輪側プロペラシャフト、後輪側プロペラシャフト
30FL〜RR…車輪速センサ
40…制動装置
42FL〜RR…各輪ホイールシリンダ
50…電子制御装置

Claims (9)

  1. 四輪駆動装置を有する車両の車体速値を車輪速値に基づいて推定する車体速推定装置であって、前記車両の各輪の車輪速値を取得する車輪速取得部と、前記車両の各輪のうちの少なくとも一つの車輪に制動力を付与する車輪スリップ制御が実行される際には前記制動力が付与されない車輪の車輪速値を用いて前記車両の車体速推定値を決定する車体速推定部とを含み、前記制動力が前記車両の少なくとも一対の左右の車輪のうちの一方に付与されるとき、前記車体速推定部にて決定される前記車体速推定値に於ける前記制動力が付与されない前記少なくとも一対の左右の車輪のうちの他方の車輪速値の増大側の変化量の寄与が低減されることを特徴とする装置。
  2. 請求項1の装置であって、前記少なくとも一部の車輪に付与される前記制動力が所定値より大きいとき、前記車体速推定値に於ける前記制動力が付与されない車輪の車輪速値の増大側の変化量の寄与が低減されることを特徴とする装置。
  3. 請求項1又は2の装置であって、前記四輪駆動装置が直結四輪駆動状態にあり且つ前記車両の挙動制御により前記車両の少なくとも一対の左右の車輪のうちの一方に選択的に制動力が付与されるとき、前記車体速推定値に於ける前記制動力が付与されない車輪の車輪速値の増大側の変化量の寄与の低減が、前記車体速推定値の決定に於いて、前記一対の左右の車輪のうちの他方の車輪速値に於ける増大側の変化量を低減して得られる値を用いることにより為されることを特徴とする装置。
  4. 請求項1乃至3の装置であって、前記車体速推定値に於ける前記制動力が付与されない車輪の車輪速値の増大側の変化量の寄与の低減が、前記制動力が付与されない車輪のうちの少なくとも一つの車輪速値の変化率が所定の上限値を超えるときに該変化率を前記所定の上限値に設定することにより為されることを特徴とする装置。
  5. 請求項1乃至4の装置であって、前記制動力が付与されない車輪の車輪速値のうちから選択された値が前記車体速推定値として決定され、前記選択された車輪速値がその増大側の変化量の寄与が低減された値であることを特徴とする装置。
  6. 請求項1乃至5の装置であって、前記制動力が前記少なくとも一部の車輪に付与されるとき、前記車体速推定値に於ける前記制動力が付与されない車輪の車輪速値の増大側の変化量の寄与が無視されることを特徴とする装置。
  7. 請求項4又は請求項4を引用する請求項5乃至6の装置であって、前記変化率が所定時間に於ける前記車輪速の変化量であり、該変化率が前記所定の上限値を超えるとき、該変化率に対応する前記車体速推定値の決定に用いられる前記車輪の車輪速値が前記所定の上限値に前記所定時間を乗じて与えられることを特徴とする装置。
  8. 請求項1乃至7の装置であって、前記四輪駆動装置が直結四輪駆動状態にあり且つ前記車両の挙動制御により前記車両の少なくとも一対の左右の車輪のうちの一方に選択的に制動力が付与されるとき、前記車体速推定値が前記制動力が付与されない車輪の車輪速値と前記少なくとも一対の左右の車輪のうちの他方の車輪速値からその増大側の変化量を低減して得られる値とのうち最も低い値に決定されることを特徴とする装置。
  9. 請求項1の装置であって、前記車体速推定値に於ける前記制動力が付与されない車輪の車輪速値の増大側の変化量の寄与の低減が、前記車体速推定値の変化率が所定の上限値を超えるときに該変化率を前記所定の上限値に設定することにより為されることを特徴とする装置。
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