JP2009057222A - ガラス着色方法及び記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ガラス中に銀のナノ粒子41を拡散させた銀含有ガラスを生成する第1のステップ(a)と、前記銀含有ガラスに吸収され易い波長の第1のレーザ光を照射して、前記銀含有ガラスを前記第1のレーザ光の出力強度に応じた色に着色する第2のステップ(b)〜(e)と、を備える。第1のステップで得られる銀含有ガラスは、ガラス中に銀のナノ粒子41が拡散しているため、表面プラズモンにより橙色を呈している。それ故、この銀含有ガラスに橙色の補色である緑青のレーザ光を照射すると、レーザ光のエネルギが効率よく銀含有ガラスに吸収され、このエネルギで銀のナノ粒子が凝集(42,43,44,45)する。凝集の程度は、レーザ光の出力強度によって変わり、銀含有ガラスは、凝集した銀のサイズに応じた色に着色される。
【選択図】図4
Description
この方法では、先ず、ソーダライムガラス基板を硝酸銀の溶融塩等に浸漬し、ガラス内部のナトリウムイオンと銀イオンとをイオン交換させて、ガラス中に銀イオンを含有した銀イオン含有ガラスを生成する。この銀イオン含有ガラスは透明である。
次に、この銀イオン含有ガラスに、炭酸ガスレーザ、UVパルスレーザまたはアルゴンイオンレーザのレーザ光を照射し、銀イオンを凝集させて銀微粒子を生成する。この銀微粒子の生成により、ガラスは着色する。
本発明者等は、先に、板ガラス上に形成した銀薄膜にレーザを照射して銀ナノ粒子を創成し、表面プラズモンにより黄色、紫色等に発色させることに成功した(下記非特許文献1)。
ただ、ガラス表面上の銀は、空気中で不安定であり、硫化等で黒化する場合がある。
しかし、特許文献1の方法では、銀ナノ粒子の多彩な色を発色させることに成功していない。
この方法の第1のステップで得られる銀含有ガラスは、ガラス中に銀のナノ粒子が拡散しているため、表面プラズモンにより橙色を呈している。それ故、この銀含有ガラスに橙色の補色である緑青のレーザ光を照射すると、レーザ光のエネルギが効率よく銀含有ガラスに吸収され、このエネルギで銀のナノ粒子が凝集する。凝集の程度は、レーザ光の出力強度によって変わり、銀含有ガラスは、凝集した銀のサイズに応じて、赤、青、緑等に発色する。
この波長の範囲は、緑青色を中心とする波長範囲であり、第1のステップで得られた銀含有ガラスに効率的に吸収される。
第2のレーザ光の照射により、凝集していた銀微粒子が分散し、そのために銀含有ガラスの色が変わる。
この波長の範囲は、変色により透過率が大きく変動する波長の範囲であり、このレーザ光の照射により、着色された銀含有ガラスの色が、効率的に赤色に変色する。
このように、着色領域の一部に変色領域を形成し、その変色領域の一部に着色領域を形成し、また、必要に応じて、これらの操作を繰り返すことで、複雑な模様のカラーマーキングを実現することができる。
この処理により、20nm前後の粒子径の銀微粒子がガラス中に拡散する。ガラス表面に残った銀は、拭うことで除去できる。
耐熱性ガラスは、第1のステップや第2のステップでの熱応力に耐えるとともに、ガラス内での銀ナノ粒子の凝集や分散を許容する。
第2のステップによる着色や第3のステップによる変色は短時間で実現するため、回転する銀含有ガラスの半径方向にレーザ光を移動させる方式により、効率的に銀含有ガラスを着色または変色することができる。
この記録媒体では、着色された色で表される情報が安定的に保持される。
また、このマーキング技術は、記録媒体への情報記録に応用することができる。
図1は、本発明のガラス着色方法に用いたレーザ光照射装置を示す図、図2は、レーザ出力と着色した色との関係を示す図、図3は、図2の色の変化を色度図上で表した図、図4は、銀ナノ粒子の凝集を説明する図、図5は、変色処理による色の変化を示す図、図6は、着色と変色とを繰り返したときの色模様を示す図、図7は、図6の各領域の透過率と波長との関係を示す図、また、図8は、レーザ光照射装置の他の例を示す図である。
次に、この耐熱ガラスを電気炉で、750℃、1時間の加熱条件で加熱し、ガラス表層に銀を含浸させた。ガラス表層に残った銀は、擦って除去した。この加熱処理により、耐熱ガラスの表層から6μm〜10μmの領域に銀ナノ粒子が拡散し、透明だった耐熱ガラスは橙色に変色した。耐熱ガラスに拡散した銀粒子の粒子径は、その色から判断して、20nm前後と考えられる。
このレーザ照射装置は、532nmの波長のレーザ光を出力するNd:YVO4レーザ10と、可視光のBRG成分を分岐するダイクロイックミラー11と、対物レンズ12と、銀含有ガラス20を載置する自動3軸ステージ13と、自動3軸ステージ13を駆動するステージコントローラ14と、ステージコントローラ14を制御するパソコン15と、ダイクロイックミラー11から分岐された可視光を集光するレンズ16と、フィルタ17と、撮影用のCCDカメラ18とを備えている。
このNd:YVO4レーザ10は、基本波(波長1063nm)の2倍波(波長532nm)のレーザ光を出力する。このような波長のレーザ光を用いる理由については、後述する。
このレーザ光は、対物レンズ12(N.A.=0.3、理論焦点径6.45μm)で集光され、自動3軸ステージ13と共に移動する銀含有ガラス20の上を走査する。レーザ加工条件は、図9に示すように、レーザのスポット径を31.5μm、レーザ出力を0.2W〜0.6W、ステージ13の走査速度を1.0mm/s、レーザ走査ピッチ幅を10μm、レーザ走査範囲を4mm×4mmに設定している。
図3は、着色した各箇所の透過波長を分光光度計で測定し、その結果をYxy表色系xy色度図に表した図であり、レーザ走査範囲のレーザ出力に伴う色の変化を定量的に示している。
この色の推移は、表面プラズモンによる発色傾向(図11)と一致している。従って、銀含有ガラス20に含まれる銀ナノ粒子が、レーザ光のエネルギで凝集し、凝集した銀のサイズに応じた色を呈しているものと推定できる。
このように、レーザ出力が強くなる程、銀凝集体を構成する銀ナノ粒子41の個数が増加し、生成される銀凝集体の径が増大する。図4(d)のように、銀凝集体44の径が大きくなると、ガラスは青の透過色を示し、図4(e)のように、銀凝集体45の径がさらに増大すると、ガラスは、緑の透過色を示す。
波長532nmのレーザ光の照射で着色した銀含有ガラスの各着色領域に波長632.8nmのHe−Neレーザを照射すると、いずれの着色領域も赤く変色する。
この変色処理は、図1の装置のレーザ10を波長632.8nmのHe−Neレーザに換え、対物レンズ12に平凸レンズ(理論焦点径68.0μm)を使用して行う。レーザ加工条件は、図10に示すように、レーザのスポット径を68.0μm、レーザ出力を5.6mW、ステージ13の走査速度を1.5mm/s、レーザ走査ピッチ幅を10μm、レーザ走査範囲を3mm×3mmに設定している。
また、図5(B)は、これらの着色領域と重なる3mm×3mmの範囲に、波長632.8nm、レーザ出力5.6mWのHe−Neレーザ光を照射したときの色の変化を示している。いずれの着色領域(a)、(b)、(c)、(d)、(e)においても、He−Neレーザの走査範囲は、赤色に変色している。ただ、(a)、(b)では、元々の着色が赤に近いため、(c)、(d)、(e)と違って、変色した領域が明確でない。
この変色した領域は、再度、波長532nmのレーザ光を照射すると、レーザ出力に応じた色に着色し、また、その着色領域にHe−Neレーザ光を照射すると、再び、赤色に変色する。
この変色は、凝集した銀ナノ粒子が、He−Neレーザのエネルギを受けて分散するために生じると考えられる。例えば、図4(e)に示す緑色を呈する銀凝集体45が、分散して図4(b)の状態になるため赤色に変色する。
この赤色への変色を励起するレーザ光は、図7において、変色により透過率が大きく変動する赤色系の波長を有している必要がある。好ましい波長の範囲は600nm〜660nmであり、その中でも、この範囲の中心である630nm近辺の波長を有していることが望ましい。ここで用いたHe−Neレーザの波長は632.8nmである。また、好ましい波長範囲のレーザとして、その他に半導体レーザ等が存在する。
ちなみに、波長1064nmや10.6μmの赤外線レーザを用いた場合は、He−Neレーザのような変色現象は生じない。
そのため、銀ナノ粒子が拡散した銀含有ガラスは、緑青色系のレーザ光を効率的に吸収する。従って、この銀含有ガラスに緑青色系のレーザ光を照射することにより、銀ナノ粒子の凝集が顕著に促進され、銀含有ガラスの効果的な着色が可能になる。好ましい波長の範囲は420nm〜540nmであり、その中でも、490nm近辺の波長を有していることが望ましい。ここで用いたNd:YVO4レーザ10の2倍波の波長は532nmである。また、好ましい波長範囲のレーザとして、その他にYAGレーザやYLFレーザ等が存在する。
ちなみに、銀ナノ粒子が拡散した銀含有ガラスに波長632.8nmのHe−Neレーザを照射した場合は、着色が得られない。
高出力のレーザ照射は、ガラス基板の破壊を招来する。また、それを避けるため、レーザ走査速度を高速化する場合は、所定箇所へのマーキング操作が難しくなる。一方、低出力のレーザ照射は、ガラス基板に対し、大多数の銀ナノ粒子を凝集するだけのエネルギが供給できなければ、先に説明したように、ガラス基板を鮮明な色に着色することはできない。
しかし、本発明の方法では、レーザ出力が低いにも関わらず、そのエネルギがガラス基板に効率的に吸収されるため、ガラス基板の破損を伴わずに、ガラス基板を鮮明に着色することができる。
また、緑色に着色したガラス基板を電気炉で400℃から50℃ずつ温度を上げながら1時間再加熱した場合は、ガラス基板の色が、緑から青、青から赤と、レーザによる発色とは逆の順を辿りながら退色した。そして、500℃以上の加熱で着色が完全に消失し、元の橙色の状態に戻った。
この退色は、レーザによって凝集した銀ナノ粒子が、加熱により再び分散するために生じていると考えられる。
この性質を利用すれば、ガラス基板へのレーザ照射と再加熱とを繰り返すことで、ガラス基板へのマークの書き換えが可能になる。
この場合、記録媒体への情報記録を効率化するため、図8に示す装置を使用しても良い。
この装置は、銀ナノ粒子を拡散したガラス基板51が載置される回転板52と、回転板52の半径方向に移動可能なミラー53と、ガラス基板51に照射されるレーザ光を出力するレーザ装置54とを有している。この装置では、回転板52を回してガラス基板51を回転し、ミラー53を回転板52の半径方向に移動しながら、レーザ装置54から出力されたレーザ光をミラー53で反射させてガラス基板51の方に向かわせ、このレーザ光でガラス基板51の着色や変色を行う。
本発明は、装飾品の着色や、光学フィルタ等の着色製品の製造などに応用することができ、また、腕時計の文字盤に配置した銀含有ガラスに、レーザカラーマーキングで所有者の名前を記録する等、セキュリティ保持の技術にも応用することができる。また、退色を利用した温度センサ等の応用も可能である。
11 ダイクロイックミラー
12 対物レンズ
13 自動3軸ステージ
14 ステージコントローラ
15 パソコン
16 集光レンズ
17 フィルタ
18 CCDカメラ
20 銀含有ガラス
41 銀ナノ粒子
42 銀凝集体
43 銀凝集体
44 銀凝集体
45 銀凝集体
51 ガラス基板
52 回転板
53 ミラー
54 レーザ装置
Claims (11)
- ガラス中に銀のナノ粒子を拡散させた銀含有ガラスを生成する第1のステップと、
前記銀含有ガラスに吸収され易い波長の第1のレーザ光を照射して、前記銀含有ガラスを前記第1のレーザ光の出力強度に応じた色に着色する第2のステップと、
を備えることを特徴とするガラス着色方法。 - 請求項1に記載のガラス着色方法であって、前記第1のレーザ光が、420nm以上で540nm以下の波長を有することを特徴とするガラス着色方法。
- 請求項1に記載のガラス着色方法であって、さらに、前記第2のステップで着色された前記銀含有ガラスの着色領域に赤色系の第2のレーザ光を照射して、前記着色領域の色を変色した変色領域を生成する第3のステップを備えることを特徴とするガラス着色方法。
- 請求項3に記載のガラス着色方法であって、前記第2のレーザ光が、600nm以上で660nm以下の波長を有することを特徴とするガラス着色方法。
- 請求項3に記載のガラス着色方法であって、さらに、前記第3のステップで変色された前記銀含有ガラスの前記変色領域に前記第1のレーザ光を照射して、前記変色領域に、前記第1のレーザ光の出力強度に応じた色に着色した着色領域を生成する第4のステップを備えることを特徴とするガラス着色方法。
- 請求項1に記載のガラス着色方法であって、前記第1のステップにおいて、ガラス基板の表面に銀薄膜を形成し、これを加熱処理して、銀のナノ粒子をガラス基板に拡散させることを特徴とするガラス着色方法。
- 請求項1に記載のガラス着色方法であって、前記ガラスとして耐熱性ガラスを用いることを特徴とするガラス着色方法。
- 請求項1に記載のガラス着色方法であって、回転板の上に前記銀含有ガラスを載置して前記回転板を回転し、前記銀含有ガラスに向かう前記第1のレーザ光または第2のレーザ光を、前記回転板の半径方向に移動させながら、前記銀含有ガラスに照射することを特徴とするガラス着色方法。
- ガラス中に銀のナノ粒子が拡散された銀含有ガラスに、当該銀含有ガラスに吸収され易い波長の第1のレーザ光を照射して、前記銀含有ガラスを前記第1のレーザ光の出力強度に応じた色に着色し、情報を色で記録することを特徴とする記録媒体。
- 請求項9に記載の記録媒体であって、着色された前記銀含有ガラスに赤色系の第2のレーザ光を照射して、色で記録された前記情報を書換えることを特徴とする記録媒体。
- 請求項9に記載の記録媒体であって、前記銀含有ガラスを加熱して、色で記録された前記情報を消去することを特徴とする記録媒体。
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