JP2009050230A - 大麦シロップの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】α−アミラーゼ存在下、大麦又はその粉砕物を20〜65℃で分解する分解工程を備える、大麦シロップの製造方法。分解工程においては、β−グルカナーゼやプルラナーゼ、プロテアーゼ等の酵素を共存させてもよい。
【選択図】なし
Description
α−アミラーゼとしては、従来公知のものを用いることができ、例えば市販されているアミラーゼAD「アマノ」1(天野エンザイム社製)、クライスターゼT10S(大和化成株式会社製)、クライスターゼYC15S(大和化成株式会社製)等を用いることができる。このようなα−アミラーゼの添加量は、α−アミラーゼの活性等に合わせて適宜調整することができ、例えば、大麦又はその粉砕物の合計100質量部に対して0.01〜1質量部とすることができる。なお、α−アミラーゼとしては、β−グルカナーゼ活性が混在する酵素を用いることもできる。
さらに、分解工程においては、原料の大麦由来のβ−グルカンを分解し、さらに粘度を低くさせるために、β−グルカナーゼを共存させることが好ましい。β−グルカナーゼとしては、従来公知のものを用いることができる。β−グルカナーゼを共存させる場合のその添加量は、大麦又はその粉砕物の合計100質量部に対して、0.01〜1質量部であることが好ましい。
分解工程において、大麦又はその粉砕物を分解する際の温度は、20〜65℃であり、45〜65℃であることが好ましく、50〜60℃であることがより好ましい。この温度が20℃未満である場合には、原料の大麦中のでん粉等の炭水化物の分解が不十分である。また、この温度が20℃以上である場合には、原料の大麦中のでん粉等の炭水化物が分解される。更に、この温度が65℃以下である場合には、得られるシロップの粘度が低くなる。
次に、上述の分解工程において得られる糖化液から遠心分離やフィルタープレスにより不溶部を除く。さらに、残った可溶部をケイソウ土や活性炭等を助剤として濾過し、さらに精密濾過を行うことにより精製することにより、目的の大麦シロップが得られる。
なお、上述の製造方法は、分解工程の前に、大麦又はその粉砕物を20〜40℃で前処理する前処理工程を備えていてもよい。
上述の製造方法により得られる大麦シロップは、GABAやグルタミン酸等のアミノ酸を含む。なお、大麦シロップに含まれるアミノ酸の種類及び含有量は、原料の大麦の種類や分解工程において用いる酵素の種類を適宜調整することにより、変えることができる。
上述の製造方法により得られる大麦シロップは、例えば、パン、ヨーグルト、チーズ、菓子、スナック類等の固形食材、味醂、酢、味噌、醤油、バター等の調味料、及び清涼飲料水、清酒、ビール、発泡酒、焼酎等の飲料等の食品に好適に用いることができる。
CDC Fibar(2006年カナダ産)を全粒のままサイクロンミルで粉砕し、大麦シロップの原料とした。なお、この大麦の粉砕物50gを、75μmメッシュ、150μmメッシュ、300μmメッシュ、600μmメッシュ、1000μmメッシュ、2000μmメッシュの篩を設置した上に載せ、5分間篩にかけることにより、大麦の粉砕物の粒径測定を行った。得られた結果を図1に示す。また、この大麦の粉砕物について、ケルダール法により粗たん白率を測定したところ、その値は無水換算で18.5%であった。
α−アミラーゼとして、クライスターゼYC15S(商品名、大和化成株式会社製)を、プロテアーゼとして、プロテアーゼS「アマノ」G(商品名、天野エンザイム株式会社製)を、β−アミラーゼとして、東京化成工業株式会社製のβ−アミラーゼを、プルラナーゼとして、天野エンザイム株式会社製のプルラナーゼを、それぞれ準備した。以下の実施例では、これらの酵素25mgを、それぞれH2O1000μlで溶解し、その溶液40μlを用いた。
50mlファルコンチューブにH2O40mlを入れ、H2Oを50℃にインキュベート(予熱)した。これに上述の大麦の粉砕物1.0gを入れ、α−アミラーゼを対大麦0.1%(w/w%)添加し、内温を50℃に保ったエアーインキュベーター内シェーカーで4時間振とう分解した(分解工程)。その後、アイスバスで急冷し、800rpm15分間遠心にかけ、上清を濾紙(ADVANTEC社製)で濾過することにより、実施例1の大麦シロップを得た。
上述のα−アミラーゼに加えて、プロテアーゼを添加したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の大麦シロップを得た。
インキュベート温度及びエアーインキュベーターの内温を50℃から60℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の大麦シロップを得た。
インキュベート温度及びエアーインキュベーターの内温を50℃から60℃に変更し、且つ上述のα−アミラーゼに加えて、プロテアーゼを添加したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の大麦シロップを得た。
実施例1〜4で得られた大麦シロップについて、粘度、濾過速度、β−グルカンの濃度、SN(Soluble Nitrogen)、アミノ酸の濃度、及びBrixを測定した。
実施例1〜4で得られた大麦シロップについて、ウベローデ型粘度計を用い、原液サンプルもしくはH2Oで希釈した原液サンプルの20.00℃における粘度を測定した。その結果を表1に示す。
上述の実施例1〜4における濾過に要した時間を測定した。濾過時間が15分以内である場合を「A」、15〜30分である場合を「B」、30分を超える場合を「C」として評価した結果を表1に示す。
実施例1〜4で得られた大麦シロップを、それぞれH2Oで7.5倍希釈した後に、0.45μmフィルターで濾過し、この濾過物について20℃の測定室で、以下に示す装置を用いβ−グルカンの濃度を測定した。その結果を表1に示す。
高圧ポンプ2台:
Shodex(昭和電工株式会社)DS−4(H2O1.0ml/min.)
HITACHI L−6000 Pump(反応液2.0ml/min.)
オートサンプラー:
No.1:システムインスツルメンツ株式会社 オートサンプラ モデルAS−09
No.2:システムインスツルメンツ株式会社 オートサンプラ モデル33
蛍光検出器:島津高速液体クロマトグラフ用分光蛍光検出器RF−10AXL(励起波長360nm蛍光波長420nm)
カラム恒温槽:Shodex(昭和電工株式会社) OVEN AO−30C
脱気装置:株式会社イーアールシー ERC−3215
データ処理機:システムインスツルメンツ株式会社 Chromatocorder21
ミキシングコイル:内径0.5mm,空寸体積0.5mlのテフロンチューブを径7cmに丸巻き
ゲル濾過カラム:
Shodex SUGAR BT−603
カラムサイズ: 6φ×50mm
カラム末端接続ネジ:オシネジ型,No.10−32UNF
カラム材質: SUS 316
充填剤: ポリヒドロキシメタクリレート
排除限界分子量: 1×105(プルラン)
実施例1〜4で得られた大麦シロップの濾過液について、ケルダール法でSNを測定した。その結果を表1に示す。
実施例1〜4で得られた大麦シロップの濾過液について、ATAGOのRX−5000でBrixを測定した。その結果を表1に示す。
実施例1〜4で得られた大麦シロップをUltracel YM−10 Regenerated Cellulose 10,000MWCO(MILLIPORE社製)で濾過し、濾過液をH2Oで希釈した後のAccQ・FLUOR REAGENT KIT(Waters社製)を使用し、AccQ・Tag法で誘導体化させ,アミノ酸の濃度の測定を行った。得られた結果を表1に示す。なお、表中、「total a.a.」は、たん白構成アミノ酸のうち検出不可のトリプトファンを除いた全遊離アミノ酸を、「GABA」はγ−アミノ酪酸を、「Glu」はグルタミン酸をそれぞれ示す。また、測定には以下の装置を用いた。
装置:2695セパレーションモジュール,カラムヒーター,2475マルチλ蛍光検出器,Empowerパーソナル
移動相A:166mM酢酸ナトリウム,5.6mMトリエチルアミン (pH 5.7)
移動相B:166mM酢酸ナトリウム,5.6mMトリエチルアミン (pH 6.8)
移動相C:アセトニトリル
移動相D:H2O
カラム:AccQ−Tag Amino Acid Analysis Column(3.9×150mm)+Sentry Nova C18
カラム温度:39℃
注入量:39μL
検出:Ex 250nm Em395nm GAIN10
50mlファルコンチューブにH2O40mlを入れ、H2Oを60℃にインキュベート(予熱)した。これに上述の大麦の粉砕物1.0gを入れ、α−アミラーゼを対大麦0.1%(w/w%)添加し、内温を60℃に保ったエアーインキュベーター内シェーカーで24時間振とう分解した(分解工程)。その後、アイスバスで急冷し、800rpmで15分間遠心にかけ、上清を濾紙(ADVANTEC社製)で濾過することにより、実施例5の大麦シロップを得た。
上述のα−アミラーゼに加えて、β−アミラーゼを添加したこと以外は、実施例5と同様にして、実施例6の大麦シロップを得た。
上述のα−アミラーゼに加えて、プルラナーゼを添加したこと以外は、実施例5と同様にして、実施例7の大麦シロップを得た。
上述のα−アミラーゼに加えて、β−アミラーゼ及びプルラナーゼを添加したこと以外は、実施例5と同様にして、実施例8の大麦シロップを得た。
上述のα−アミラーゼに加えて、β−アミラーゼ、プルラナーゼ及びプロテアーゼを添加したこと以外は、実施例5と同様にして、実施例9の大麦シロップを得た。
実施例5〜9で得られた大麦シロップについて、β−グルカンの濃度、アミノ酸の濃度、Brix、及び糖濃度を測定した。なお、β−グルカンの濃度、アミノ酸の濃度、及びBrixの測定については、上述の大麦シロップの評価1の場合と同様の方法により測定した。その結果を表2に示す。
実施例5〜9で得られた大麦シロップの濾過液を100℃10分間熱処理した後アイスバスで急冷した。これを、15000rpm、5℃で15分間遠心にかけ、上清を0.1%安息香酸で希釈して糖濃度の測定に供した。その結果を表2に示す。なお、糖濃度の測定には以下の装置を用いた。
装置:DIONEX DX−300
移動相A:0.1M 水酸化ナトリウム
移動相B:0.1M 水酸化ナトリウム、1M 酢酸ナトリウム
カラム:CarboPac PA1
注入量:15μl
500mlチューブにH2O400mlを入れ、H2Oを60℃にインキュベート(予熱)した。これに上述の大麦の粉砕物50gを入れ、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ及びプルラナーゼをそれぞれ対大麦0.1%(w/w%)添加し、内温を60℃に保ったエアーインキュベーター内シェーカーで24時間振とう分解した(分解工程)。その後、アイスバスで急冷し、800rpmで15分間遠心にかけ、上清を濾紙(ADVANTEC社製)で濾過することにより、実施例10の大麦シロップを得た。
500mlチューブにH2O400mlを入れ、H2Oを55℃にインキュベート(予熱)した。これに上述の大麦の粉砕物50gを入れ、α−アミラーゼを対大麦0.05%(w/w%)添加し、内温を55℃に保ったエアーインキュベーター内シェーカーで1時間振とうした。その後、1時間かけて90℃に昇温し、更にα−アミラーゼを対大麦0.05%(w/w%)添加し、1時間反応させて液化液を得た。次に、得られた液化液を60℃まで冷却し、β−アミラーゼを対大麦0.1%(w/w%)添加し、60℃で24時間反応させて糖化液を得た。その後、プロテアーゼを対大麦0.1%(w/w%)添加して60℃で24時間反応させた。反応液を濾紙で濾過することにより比較例1の大麦シロップを得た。
実施例10及び比較例1で得られた大麦シロップについて、上述の大麦シロップの評価1の場合と同様の方法により、粘度、β−グルカンの濃度、SN及びBrixを測定した。得られた結果を表3に示す。
Claims (6)
- α−アミラーゼ存在下、大麦又はその粉砕物を20〜65℃で分解する分解工程を備える、大麦シロップの製造方法。
- 前記分解工程においてプルラナーゼを共存させる、請求項1記載の大麦シロップの製造方法。
- 前記分解工程においてプロテアーゼを共存させる、請求項1又は2記載の大麦シロップの製造方法。
- 前記分解工程においてβ−グルカナーゼを共存させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の大麦シロップの製造方法。
- 請求項1〜4記載の製造方法により得られる大麦シロップを含む食品。
- 請求項1〜4記載の製造方法により得られる大麦シロップを含む培地。
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