JP2009049977A - エコーキャンセラ - Google Patents

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Abstract

【課題】コストの増加の抑制を図りつつ、固定小数点形式の信号によってフィルタ処理を行う場合よりも、エコーを効果的に抑圧することが可能なエコーキャンセラを提供する。
【解決手段】エコーキャンセラ1は、浮動小数点DSP部10、固定小数点DSP部20を備える。浮動小数点DSP部10は、FIRフィルタ処理部12、加算器14、第1変換部16を有する。FIRフィルタ処理部12は浮動小数点形式の擬似エコー信号を生成し、加算器14は上記擬似エコー信号を収音信号から差し引き第1補正信号を生成する。第1変換部16は第1補正信号を固定小数点形式に変換し、ゲインを調節する。固定小数点DSP部20は、FIRフィルタ処理部21、加算器22を有する。FIRフィルタ処理部21は固定小数点形式の擬似エコー信号を生成し、加算器22は上記擬似エコー信号を固定小数点形式に変換した第1補正信号から差し引き出力信号を生成する。
【選択図】図1

Description

この発明は、収音した音からエコーを取り除くエコーキャンセラに関する。
一般に、マイクロホン及びスピーカを用いる、電話機、カラオケ装置等では、スピーカから放音される音の一部がマイクロホンに回り込み収音信号として取り込まれ、放音した音がエコーとなって相手側のスピーカから放音されることがある。そして、エコーのレベルが高い場合には不快感を生じさせるといった問題があった。
そこで、上述のようなエコーを抑圧する一つの手段として、エコーキャンセラがこれまでに提案されている。
このようなエコーキャンセラの中には、スピーカ信号を増幅してエコーキャンセラに与えることにより、エコーが大きくてもエコーを低減することができるものがある(特許文献1参照。)。
また、適応フィルタが学習に用いる信号、すなわち、スピーカからの受話信号を増幅して出力することで背景雑音とのS/N比を改善し、適応フィルタの学習精度の向上を図ることでエコーを低減させたものがある(特許文献2参照。)。
特開2002−290286号公報 特開2000−101484号公報
しかしながら、上記特許文献1に示すエコーキャンセラでは、エコーの大きさによってマイク入力信号(収音信号)のゲインの最大値が決定されるため、収音信号のダイナミックレンジが小さくなってしまうという問題があった。
また、特許文献2に示すエコーキャンセラでは、スピーカ信号を増幅することでエコーも増幅されてしまうため、収音信号のダイナミックレンジが小さくなるという問題があった。すなわち、スピーカからの放音音声の回り込みにより発生するエコーが本来収音するべき話者の発声よりも大きいと、話者音声のダイナミックレンジを十分に得ることができない。
一般に、固定小数点DSP(Digital Signal Processing)よりも浮動小数点DSP(DigitalSignal Processing)の方が表現可能なデータの範囲が広く、製造コストが高い。そのため、収音信号のダイナミックレンジを広くする方法として、浮動小数点形式の信号を用いてフィルタ処理を行うことも考えられる。しかし、エコーキャンセラの演算はメモリを多量に必要とする。また、メモリが多い浮動小数点DSPは高価であり、浮動小数点形式の信号によって処理を行うと、固定小数点形式の信号を用いる場合よりも製造コストの増加を招くという問題もあった。
そこで、本発明では、コストの増加の抑制を図りつつ、固定小数点形式の信号によってフィルタ処理を行う場合よりも、エコーを効果的に抑圧することが可能なエコーキャンセラを提供することを目的とする。
この発明のエコーキャンセラは、収音部、および放音部に接続され、放音部から放音された音が収音部に収音されて生じるエコーを低減させる第1音響処理部および第2音響処理部を備えたエコーキャンセラである。収音部は、収音して収音信号を生成する。放音部は、放音信号に基づく音を放音する。第1音響処理部は、第1フィルタ処理部と、第1演算処理部と、第1変換部と、を有している。第1フィルタ処理部は、放音信号に基づく浮動小数点形式の擬似エコー信号を生成する。第1演算処理部は、浮動小数点形式の擬似エコー信号を浮動小数点形式で入力した収音信号から差し引いて第1補正信号を生成する。第1変換部は、第1演算処理部から出力される浮動小数点形式の第1補正信号を固定小数点形式に変換するとともにゲインを調節する。第2音響処理部は、第2フィルタ処理部と、第2演算処理部と、を有している。第2フィルタ処理部は、放音信号に基づく固定小数点形式の擬似エコー信号を生成する。第2演算処理部は、固定小数点形式の擬似エコー信号を固定小数点形式に変換した第1補正信号から差し引いて出力音声信号を生成する。
この構成では、浮動小数点形式の擬似エコー信号を収音信号から差し引いて第1補正信号を生成する。そして、固定小数点形式に変換した第1補正信号から固定小数点形式の疑似エコー信号をさらに差し引く。これにより、浮動小数点形式の擬似エコー信号によって収音信号を補正した後に、さらに固定小数点形式の擬似エコー信号によって収音信号を補正することができる。この際、浮動小数点形式の第1音響処理部によりある程度エコー成分が抑圧された信号が、第2音響処理部へ入力される。このため、第2音響処理部は、元の収音信号よりも、目的とする音声成分の比率が高い信号を固定小数点形式でエコーキャンセルする。これにより、目的とする音声成分のダイナミックレンジが大きく取れるので、エコーキャンセルの精度が高くなる。
この構成において、第2フィルタ処理部は、フィルタ演算に用いた第2係数情報を第1音響処理部へ出力する。第1音響処理部は、第2係数情報に基づいて演算処理を行って第1係数情報を算出する係数演算部をさらに有している。第1フィルタ処理部は、第1係数情報によりフィルタ係数を補正して浮動小数点形式の擬似エコー信号の生成を行うようにしても良い。これにより、第1音響処理部は、第2係数情報に基づいて算出された第1係数情報によりフィルタ係数を補正して浮動小数点形式の擬似エコー信号の生成を行うことができる。
さらに、第1音響処理部は、第2変換部と、第3変換部と、をさらに有していても良い。第2変換部は、第2フィルタ処理部から出力される第2係数情報を浮動小数点形式に変換するとともにゲインを調節して係数演算部へ出力する。第3変換部は、第2演算処理部からの出力音声信号のゲインを調節する。第1変換部、第2変換部、第3変換部、におけるゲインの値をそれぞれA、B、C、としたときに式(1)の関係を満たしている。
(1.0/A)=B=C・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
この構成では、第2音響処理部に入力される第1補正信号が、ゲインAで増幅された場合、第2音響処理部は増幅された信号に基づく出力音声信号や第2係数情報を算出する。しかしながら、増幅された信号は、元々の収音信号に対して、ゲインAで増幅されたものであるので、そのまま出力したり第1音響処理部にフィードバックすると、元の収音信号のレベルに準じた処理が実行できなくなる。従って、第2音響処理部から出力される信号に、ゲインAの逆数であるB、Cを乗算することで、元の収音信号のレベルに準じた処理を行うことができる。
なお、この構成において、エコーキャンセラは、第2係数情報に含まれる数値を監視する監視部をさらに備えていても良い。監視部は、数値が所定の閾値よりも小さくなると、第1変換部のゲインを増加させる。この構成では、第2係数情報に含まれる値が所定の閾値よりも小さくなる、すなわち浮動小数点形式でのエコー除去が向上すると、第1変換部のゲインを増加させる。これにより、自装置側の発話者の発生音のような目的とする音声信号の比が高くなった第1補正信号が、第2音響処理部で処理される。
また、第1音響処理部は、緩和演算処理部をさらに有していても良い。緩和演算処理部は、第2係数情報の所定時間当たりの変化量が予め設定された上限値を超える場合には、第2係数情報を平滑化して係数演算部へ出力する。ここで、予め設定された上限値は、第1フィルタ処理部におけるフィルタ処理が安定して実行できる変化量に基づいて設定されている。これにより、第2係数情報の所定時間当たりの変化量が予め設定された上限値を超える場合には、第2係数情報の変化量を平滑化して除々に変化させることでフィルタ処理が不安定になるのを防止することができる。
また、エコーキャンセラは、放音信号のゲインを調節するゲイン制御部をさらに備えていても良い。これにより、放音部の音量が急激に上昇して収音信号がオーバーフローするのを防止することができる。
この発明によれば、エコーが話者の発生音よりも大きな環境であっても、収音信号のダイナミックレンジを広くとり、効果的にエコーを抑圧するエコーキャンセラを安価に構成することができる。
以下、図面を参照してこの発明の一実施形態であるエコーキャンセラ1について説明する。エコーキャンセラ1は、会議システムに搭載されたマイコンを駆動することによって形成される。
図1は、エコーキャンセラ1の全体の構成を模式的に示す図である。図2は、図1に含まれる固定小数点DSP部20の構成を模式的に示す図である。
図1において、エコーキャンセラ1は、浮動小数点DSP部10、ゲイン制御部11、固定小数点DSP部20、監視部30、を備えており、エコーを収音信号から除去する。なお、本実施形態に係るエコーキャンセラ1では、浮動小数点DSP部10内に監視部30が配置されている例を挙げて説明する。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、監視部30は浮動小数点DSP部10以外の場所に配置されていても良い。
マイク2は、マイク2周囲の音を収音して収音信号、いわゆる近端信号を生成しA/Dコンバータ2Aへ出力する。A/Dコンバータ2Aは、マイク2からの収音信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換して加算器(第1演算処理部)14へ出力する。
スピーカ3は、遠端信号に基づいて放音する。ここで、遠端信号は、入出力インターフェースI/F(図示せず)からエコーキャンセラ1へ入力されるデジタル信号である。そして、遠端信号は、エコーキャンセラ1のゲイン制御部11(後段にて詳述)を経由してD/Aコンバータ3Aによってアナログ信号に変換されスピーカ3へ出力される。
ゲイン制御部11は、入出力インターフェースI/Fから入力される遠端信号のゲインを調節して、D/Aコンバータ3A、信号変換部18へ出力する。これにより、遠端信号のレベルが急激に増加しスピーカ3から放音される音量が急激に増大するのを防止することができる。この結果、スピーカ3から放音された音がマイク2に収音されて生じるエコーが急激に増加して、収音信号がオーバーフロー(すなわち、クリップ)することを防止することができる。
浮動小数点DSP部10は、図1に示すように、FIRフィルタ処理部12、FIR係数部13、加算器(第1演算処理部)14、緩和演算処理部15、第1変換部16、第2変換部17、信号変換部18、第3変換部19、を有している。浮動小数点DSP部10は、浮動小数点形式の収音信号に含まれるエコーの除去を行う。なお、第2変換部17と緩和演算処理部15、FIR係数部13からなる回路が本発明の係数演算部に相当する。
固定小数点DSP部20は、図1および図2に示すように、FIRフィルタ処理部21、加算器(第2演算処理部)22を有している。固定小数点DSP部20は、浮動小数点DSP部10においてエコーが除去されて固定小数点形式の信号に変換された第1補正信号に対してエコーの除去を行う。このように、浮動小数点DSP部10、固定小数点DSP部20の2つのDSP部にて収音信号のエコーキャンセル処理を行うことで、効果的にエコーキャンセル処理を行うことができる。
なお、浮動小数点DSP部10および固定小数点DSP部20では、約10〜20dB程度エコーを減衰、すなわち抑圧している。
信号変換部18は、ゲイン制御部11から入力される遠端信号をFIRフィルタ処理部12およびFIRフィルタ処理部21へ出力する。この際、信号変換部18は、固定小数点DSP部20の演算可能範囲内に遠端信号のレベルが納まるようにゲインを調整する。
FIRフィルタ処理部12は、FIR係数部13に保持されている第1係数情報を使用してフィルタ処理を行う。FIRフィルタ処理部12は、信号変換部18から出力される浮動小数点形式の遠端信号をフィルタ処理関数に入力して浮動小数点形式の擬似エコー信号を生成するフィルタである。
FIR係数部13は、FIRフィルタ処理部12のフィルタ処理に用いられる係数データとして、第1係数情報を保持している。
ここで、第1係数情報に含まれる各係数の初期値は0に設定されている。第1係数情報の各係数は、第2係数情報に基づいて設定されている。すなわち、FIR係数部13は、第2変換部17および緩和演算処理部15を経て入力される第2係数情報に基づく信号を用いて第1係数情報を算出する。本実施形態では、上記各係数の初期値を全て0とする例を挙げて説明する。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、浮動小数点DSP部10の仕様や、使用環境等の諸条件に応じて初期値を変更しても良い。また、各係数の全ての初期値を一致させなくても良い。
加算器14は、浮動小数点形式の収音信号から上記浮動小数点形式の擬似エコー信号を差し引いて第1補正信号を生成して第1変換部16へ出力する。
第1変換部16は、第1補正信号を固定小数点形式に変換するとともに、監視部30(後段にて詳述)により設定されたゲイン量に基づいてゲインを調節して固定小数点DSP部20の加算器22(図2参照)へ出力する。
FIRフィルタ処理部21は、信号変換部18から出力される固定小数点形式の遠端信号をフィルタ処理関数に入力して固定小数点形式の擬似エコー信号を生成する適応型のフィルタ処理部である。ここで、FIRフィルタ処理部21は、加算器22を通過した出力音声信号を参照してフィルタ処理関数に用いられる第2係数情報を更新する。さらに、FIRフィルタ処理部21は、第2係数情報を第2変換部17へ出力する。
第2変換部17は、第2係数情報を浮動小数点形式の信号に変換するとともに第1変換部16のゲインに応じてゲインを調節して緩和演算処理部15へ出力する。
加算器22は、第1変換部16から出力される固定小数点形式の第1補正信号からFIRフィルタ処理部21から出力される固定小数点形式の擬似エコー信号を差し引いて出力音声信号を生成し第3変換部19へ出力する。
第3変換部19は、上記固定小数点形式の出力音声信号を浮動小数点形式の出力音声信号へ変換するとともに第1変換部16のゲインに応じて出力ゲインを調節してエコーサプレッサ(図示せず)へ出力する。エコーサプレッサは、入力された出力音声信号のゲインを約20〜30dB減衰させてから入出力I/Fインターフェース(図示せず)へ出力する。
なお、本実施形態では、エコーサプレッサによって出力音声信号のゲインを減衰させる例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。出力音声信号に含まれるエコーを十分に減衰させることができる場合には、エコーサプレッサを設けなくても良い。
また、エコーを消去させるためには、収音信号を40〜50dB程度減衰させることが好ましいが、仮にエコーサプレッサによってのみ減衰させると音質の劣化を招く場合もある。
これに対しエコーキャンセラ1では、浮動小数点DSP部10および固定小数点DSP部20によって20dB程度エコーを減衰させてからエコーサプレッサに入力するため音質の劣化を抑制するといった効果を得ることもできる。
ここで、第1変換部16、第2変換部17、第3変換部19におけるゲイン調整についてより具体的に説明すると以下の通りである。
第1変換部16、第2変換部17、第3変換部19におけるゲインの値をそれぞれA、B、Cとしたときに各ゲインの増減値は式(1)の関係を満たしている、
(1.0/A)=B=C・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
これにより、加算器14から第1変換部16へ出力される第1補正信号(図1に示すS2参照)と、固定小数点DSP部20から第3変換部19を介して出力される出力音声信号と、におけるゲインの大きさを等しくすることができる。また、第2変換部17は、緩和演算処理部15へ第2係数情報を出力する際に、第1変換部16において増加させたゲインの大きさだけゲインを下げる。これにより、第1変換部16において第1補正信号に与えられたゲインの影響を打ち消した第2係数情報を設定することができる。
緩和演算処理部15は、第2変換部17から出力された第2係数情報に含まれる各係数の所定時間単位毎の変化量が予め設定された上限値を超える場合には、上記各係数を平滑化してからFIR係数部13へ出力する。
また、緩和演算処理部15を介さずに第2変換部17から直接FIR係数部13へ第2係数情報を入力すると、FIRフィルタ処理部12におけるフィルタ処理にとって第2係数情報に含まれる各係数の時間変化率が大きすぎる場合もある。すなわち、上記各係数の経時変化の非線形性が大きすぎる場合がある。
このように、第1係数情報の非線形性が大きすぎる場合には、浮動小数点DSP部10および固定小数点DSP部20におけるエコー除去処理の不安定化、すなわちシステムの不安定化を招くおそれもある。
そこで、緩和演算処理部15では、第2変換部17から出力された第2係数情報に含まれる各係数の経時的変化が所定の変化量よりも大きい場合には、上記各係数を平滑化して経時的変化を緩やかにする。これにより、エコーの除去処理が不安定化するのを防止することができる。
監視部30は、第2フィルタ処理部21において算出される第2係数情報に含まれる各係数の大きさをモニタリングする。そして、監視部30は、第2係数情報に含まれる各係数の大きさが所定の閾値よりも小さくなると、第1変換部16におけるゲインの量を増加させる。
なお、第2係数情報は出力音声信号を参照して所定の時間ごとに更新され、第1係数情報は第2係数情報に基づいて同様に更新される。
より具体的には、浮動小数点DSP部10および固定小数点DSP部20におけるエコー除去処理の開始時点において、第1係数情報に含まれる各係数の初期値は0に設定されている。このため、浮動小数点DSP部10においてエコーの除去処理はなされず、信号処理の下流側に位置する固定小数点DSP部20においてのみエコーの除去処理が実行される。
そして、FIRフィルタ処理部21におけるエコーの除去処理が実行されると、FIR係数部13では第2係数情報に基づいて算出された情報、すなわち、第2係数情報に第2変換部17と緩和演算処理部15の係数を乗じて得られた値を第1係数情報に足し込むことで第1係数情報を更新する。更新された第1係数情報は、FIRフィルタ処理部12へ入力され、FIRフィルタ処理部12は、第1係数情報を用いてフィルタ処理を実行する。これにより、FIRフィルタ処理部12において浮動小数点形式の擬似エコー信号が生成され、エコー除去処理が浮動小数点DSP部10においても実行される。
浮動小数点DSP部10においてエコー除去処理が実行されることにより、浮動小数点DSP部10から固定小数点DSP部20へ出力される第1補正信号に含まれるエコー成分が減少する。これにより、浮動小数点DSP部10におけるエコーの除去処理が固定小数点DSP部20におけるエコーの除去処理結果に基づいてより最適なものに更新され、処理時間の経過とともにエコー除去処理の精度が向上する。より具体的には、処理時間が経過すると、出力音声信号に含まれるエコー信号成分の減少に伴い第2係数情報に含まれる各係数の値が小さくなっていく。
監視部30は、第2係数情報に含まれる各係数の大きさが所定の閾値を下回ると、第1変換部16において第1補正信号に加えるゲインの大きさを所定の値だけ増加させる。この際、第2係数情報に含まれる各係数の値は一時的に増加するが、さらに処理時間が経過するとエコーの信号成分がさらに減少するため、再び上記各係数が減少する。このように、一連の浮動小数点DSP部10および固定小数点DSP部20におけるエコーの除去処理が繰り返し実行されることにより、出力音声信号に含まれるエコー信号成分を精度良く除去することができる。
さらに、上記エコー除去処理が繰り返し実行されていくと、ある時点で第1補正信号に含まれるエコー信号が本来収音したい音の信号、例えば、話者発声信号よりも小さくなる。このようにエコーが話者発声音を下回ると、第1変換部16におけるゲインの増加量を話者発声音のレベルによって決定することができる。そのため、固定小数点DSP部20のダイナミックレンジ一杯に話者発声音を増幅させるといったことが可能となる。
これにより、エコーが話者発声音等よりも大きな環境においても目的とする話者発生音に対するダイナミックレンジを広くとり、効果的にエコーを減衰させるエコーキャンセラを安価に構成することができる。
浮動小数点DSP部10および固定小数点DSP部20におけるエコー除去処理における信号波形(音圧値)の上記処理による変化を図3〜図6を用いて説明すると、以下の通りである。
図3は、A/Dコンバータ2Aを通過して加算器14に入力される前の収音信号に含まれる話者の音声信号とエコーの信号との経時的変化の一例を模式的に示した図である(図1に示すS1参照)。図4は、加算器14から第1変換部16へ出力される第1補正信号に含まれる話者の音声信号とエコーの信号とを模式的に示した図である(図1に示すS2参照)。図5は、第1変換部16から固定小数点DSP部20へ出力される信号に含まれる話者の音声信号とエコーの信号とを模式的に示した図である(図1に示すS3参照)。図6は、加算器22から第3変換部19へ出力される音声信号に含まれる話者の音声信号とエコーの信号とを模式的に示した図である(図1に示すS4参照)。なお、上記S1、S2における信号は、1ビットの符号部、8ビットの指数部、23ビットの仮数部、によって形成される32ビットの浮動小数点形式の信号である。このため、図3および図4に示す信号波形は上記仮数部の数値を示している。また、上記S3、S4における信号は、1ビットの符号部を含む±16ビットからなる32ビットの固定小数点形式の信号である。
加算器14において、FIRフィルタ処理部12で生成された擬似エコー信号がA/Dコンバータ2Aから出力される収音信号から差し引かれ、図3に示すエコーの信号が図4に示すエコーの信号のレベルまで低減(抑圧)された第1補正信号が生成される。
次に、第1変換部16において、固定小数点DSP部20における信号処理が適切に行えるように第1補正信号のゲインが増幅される(図5参照)。これにより、固定小数点DSP部20における信号処理において、オーバーフローの発生を防止しつつダイナミックレンジを効率良く使用して信号処理を実行することができる。
さらに、加算器22において、第1変換部16から出力された固定小数点形式の信号はFIRフィルタ処理部21において生成された擬似エコー信号を差し引かれ出力音声信号が生成される(図6参照)。
最後に、上記生成された出力音声信号は、エコーサプレッサ(図示せず)によって減衰され、入出力I/Fインターフェース(図示せず)へ出力される。
以上のように、浮動小数点DSP部10によるエコーキャンセルの後に、さらに固定小数点DSP部20によるエコーキャンセルを行うことで、単に固定小数点DSP部20を用いてエコーキャンセルを行うよりも効果的にエコーキャンセルを行うことができる。この際、浮動小数点DSP部10で予めエコーキャンセルされ、固定小数点DSP部20に入力される信号を固定小数点DSP部20のダイナミックレンジに応じてゲイン調整することで、エコーキャンセル処理に対して固定小数点DSP部20をより効果的に利用することができる。これにより、さらに高精度なエコーキャンセルを実現することができる。また、このような処理を、浮動小数点DSPおよび固定小数点DSPの機能を包括する浮動小数点DSPで実行することも考えられるが、当該浮動小数点DSPは高コスト化してしまうので、本実施形態の構成を用いることによってコストダウンが可能となる。
なお、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図されている。
エコーキャンセラの構成を模式的に示す図である。 図1に示す固定小数点DSP部の構成を模式的に示す図である。 図1に示すS1における収音信号に含まれる話者音声信号およびエコーの信号の一例を模式的に示す図である。 図1に示すS2における第1補正信号に含まれる話者音声信号およびエコーの信号の一例を模式的に示す図である。 図1に示すS3における信号に含まれる話者音声信号およびエコーの信号の一例を模式的に示す図である。 図1に示すS4における音声信号に含まれる話者音声信号およびエコーの信号の一例を模式的に示す図である。
符号の説明
1 エコーキャンセラ
2A A/Dコンバータ
2 マイク
3A D/Aコンバータ
3 スピーカ
10 浮動小数点DSP部
11 ゲイン制御部
12 FIRフィルタ処理部
13 FIR係数部
14 加算器(第1演算処理部)
15 緩和演算処理部
16 第1変換部
17 第2変換部
18 信号変換部
19 第3変換部
20 固定小数点DSP部
21 FIRフィルタ処理部
22 加算器(第2演算処理部)
30 監視部

Claims (6)

  1. 収音して収音信号を生成する収音部、および放音信号に基づく音を放音する放音部に接続され、前記放音部から放音された音が前記収音部に収音されて生じるエコーを低減させる第1音響処理部および第2音響処理部を備えたエコーキャンセラであって、
    前記第1音響処理部は、前記放音信号に基づく浮動小数点形式の擬似エコー信号を生成する第1フィルタ処理部と、前記浮動小数点形式の擬似エコー信号を浮動小数点形式で入力した前記収音信号から差し引いて第1補正信号を生成する第1演算処理部と、前記第1演算処理部から出力される浮動小数点形式の第1補正信号を固定小数点形式に変換するとともにゲインを調節する第1変換部と、を有し、
    前記第2音響処理部は、前記放音信号に基づく固定小数点形式の擬似エコー信号を生成する第2フィルタ処理部と、前記固定小数点形式の擬似エコー信号を固定小数点形式に変換した前記第1補正信号から差し引いて出力音声信号を生成する第2演算処理部と、を有している、
    エコーキャンセラ。
  2. 前記第2フィルタ処理部は、フィルタ演算に用いた第2係数情報を前記第1音響処理部へ出力し、
    前記第1音響処理部は、前記第2係数情報に基づいて第1係数情報を算出する係数演算部をさらに有し、
    前記第1フィルタ処理部は、前記第1係数情報によりフィルタ係数を補正して前記浮動小数点形式の擬似エコー信号の生成を行う、
    請求項1に記載のエコーキャンセラ。
  3. 前記第1音響処理部は、前記第2フィルタ処理部から出力される前記第2係数情報を浮動小数点形式に変換するとともにゲインを調節して前記係数演算部へ出力する第2変換部と、前記第2演算処理部からの前記出力音声信号のゲインを調節する第3変換部と、をさらに有し、
    前記第1変換部、前記第2変換部、前記3変換部におけるゲインの値をそれぞれA、B、Cとしたときに式(1)の関係を満たしている、
    (1.0/A)=B=C・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
    請求項2に記載のエコーキャンセラ。
  4. 前記第2係数情報に含まれる数値を監視する監視部をさらに備え、
    前記監視部は、前記数値が所定の閾値よりも小さくなると、前記第1変換部のゲインを増加させる、
    請求項3に記載のエコーキャンセラ。
  5. 前記第1音響処理部は、前記第2係数情報の所定時間当たりの変化量が予め設定された上限値を超える場合には、前記第2係数情報を平滑化して前記係数演算部へ出力する緩和演算処理部をさらに有している、
    請求項2から4のいずれか1項に記載のエコーキャンセラ。
  6. 放音信号のゲインを調節するゲイン制御部をさらに備えている、
    請求項1から5のいずれか1項に記載のエコーキャンセラ。
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