JP2009048684A - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】非磁性支持体上に、放射線硬化性化合物及び無機粉体を含む層を放射線照射によって硬化させた放射線硬化層と、強磁性粉末を結合剤中に分散させた磁性層とを、この順に有し、前記無機粉体が5nm〜50nmの平均粒子径を有し、前記無機粉体が2種類以上のシランカップリング剤により表面処理されており、前記2種類以上のシランカップリング剤のうち、少なくとも1つが(メタ)アクリロイル基を含むものであり、前記放射線硬化層中の前記無機粉体の含有量が、30体積%〜60体積%であることを特徴とする磁気記録媒体。
【選択図】なし
Description
<1> 非磁性支持体上に、放射線硬化性化合物及び無機粉体を含む層を放射線照射によって硬化させた放射線硬化層と、強磁性粉末を結合剤中に分散させた磁性層とを、この順に有し、前記無機粉体が5nm〜50nmの平均粒子径を有し、前記無機粉体が2種類以上のシランカップリング剤により表面処理されており、前記2種類以上のシランカップリング剤のうち、少なくとも1つが(メタ)アクリロイル基を含むものであり、前記放射線硬化層中の前記無機粉体の含有量が、30体積%〜60体積%であることを特徴とする磁気記録媒体、
<2> 前記シランカップリング剤が式(1)で表される請求項1に記載の磁気記録媒体、
(X)4-n−Si−(Y)n (1)
ここで、Xは炭素数4以上18以下のアルキル基、フェニル基、アクリロキシ基、又は、炭素数4〜22の(メタ)アクリロキシアルキル基であり、YはOCH3、OC2H5又はOC3H7であり、nは2又は3である。
<3> 前記放射線硬化層と前記磁性層との間に、非磁性粉末を結合剤中に分散させた非磁性層を有する請求項1又は2に記載の磁気記録媒体。
以下、本発明について詳細に説明する。
放射線硬化性化合物は一般的に低分子量であるモノマー、オリゴマーであり粘度が低く塗膜がレベリングしやすいため、優れた平滑性を得ることができる。しかしながら、このような放射線硬化層は強度が低く、テープ裏面の突起がテープ表面に凹みを作り、また湿度膨張が大きく、特にコンピュター用の磁気記録媒体においては保存環境で寸法が変化することで走行エラー等を生じることがある。
本発明の磁気記録媒体は、放射線硬化層に無機粉体を含むものであり、前述した温度膨張を抑制する作用がある。また、放射線硬化層にシランカップリング剤によって表面被覆された無機粉体を含むことで、強度が高く、温度湿度膨張の低い層を得ることができる。
本発明の磁気記録媒体は、放射線硬化層に疎水性の高いアルキル鎖を有するシランカップリング剤と共に、硬化時に放射線硬化性化合物と結合する、アクリロイル基を有するシランカップリング剤で無機粉体を表面被覆することで、無機粉体に比べて疎水性の低い放射線硬化性化合物を用いた場合であっても、面異常を抑え、温度湿度膨張抑制と平滑性の両立を達成する作用もある。
本発明において、放射線硬化層は、放射線硬化性化合物含有層を放射線照射によって硬化させた層であり、シランカップリング剤で表面処理した無機粉体を含有する。
本発明において放射線硬化層に含まれる放射線硬化性化合物とは、紫外線又は電子線などの放射線を照射すると重合又は架橋を開始し、高分子化して硬化する性質を有する化合物をいう。放射線硬化性化合物は、外部からエネルギー(紫外線又は電子線等)を与えない限り反応が進行しない。このため、放射線硬化性化合物を含む塗布液は、紫外線又は電子線等を照射しない限り粘度が安定しており、高い塗膜平滑性を得ることができる。また、紫外線又は電子線等の高いエネルギー放射線の照射により瞬時に反応が進むため、放射線硬化性化合物を含む塗布液では高い塗膜強度を得ることができる。
なお、本発明で用いられる放射線には、電子線(β線)、紫外線、X線、γ線、α線などの各種の放射線が含まれる。
また、ジイソシアネート化合物や末端イソシアネートプレポリマーにヒドロキシエチル(メタ)アクリレートやヒドロキシブチル(メタ)アクリレートに代表されるイソシアネート基と反応する基と放射線硬化性官能基を有する化合物を反応させて得られるものが例示できる。
なお、ここでいう「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの総称である。また、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の総称である。以下同じ。
2官能のものとしては、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジメタアクリレート、シクロペンタジエニルアルコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも好ましい放射線硬化性化合物は、2〜6官能の単量体であり、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する放射線硬化性化合物が好ましい。また、官能基としては、重合性に優れることからメタクリロイル基よりもアクリロイル基が好ましい。
脂肪族系の好ましい例としてはヘキサメチレンジオールジアクリレート(ヘキサンジオールジアクリレート)、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、3−メチルペンタンジオールジアクリレート、2−メチルオクタンジオールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートのウレタンジアクリレート等が例示される。
また、放射線硬化層は、結合剤を使用することなく放射線硬化性化合物及び表面処理された無機粉体を硬化させることが好ましい。
本発明の磁気記録媒体は、放射線硬化層が2種類以上のシランカップリング剤で表面処理された無機粉体を含む。また、無機粉体は、5nm〜50nmの平均粒子径を有し、2種類以上のシランカップリング剤により表面処理されており、前記2種類以上のシランカップリング剤のうち、少なくとも1つが(メタ)アクリロイル基を含むものである。
ここで、無機粉体としては特に限定されず、公知の無機粉体を適宜選択して使用することができ、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、等の無機質化合物から選択することができる。
シランカップリング剤で表面処理を行う無機粉体の形状は特に限定はなく、針状、楕円状、球状、積層状等のものが使用できる。また、処理後無機粉体の平均粒子径が上記範囲内となるように、無機粉体の平均粒子径を適宜選択することが好ましい。なお、シランカップリング剤による表面処理によっても、無機粉体の粒子径は殆んど変化しないことから、処理後無機粉体の平均粒子径は、表面処理前の無機粉体の粒子径で近似できる。
本発明の磁気記録媒体において、放射線硬化層はシランカップリング剤の少なくとも1つはアクリロイル基を有する2種類以上のシランカップリング剤で表面処理された無機粉体を含む。
本発明に用いる無機粉体は、無機粉体表面のOH基と式(1)に示すシランカップリング剤とを脱水又は脱アルコール縮合させることによって表面処理されたものである。
本発明に用いることができる(メタ)アクリロキシ基を有するシランカップリング剤として、具体的には、(メタ)アクリロキシトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシオクチルトリメトキシシランが好ましく例示でき、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシオクチルトリメトキシシランがより好ましく例示できる。
また、本発明に用いることができるシランカップリング剤は、トリメトキシ系シランカップリング剤であることがより好ましい。また、本発明に用いることができる(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤は、アクリロイル基を有するシランカップリング剤であることが好ましい。
(X)4-n−Si−(Y)n (1)
ここで、Xは炭素数4〜22のアルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロキシ基又は炭素数4〜22の(メタ)アクリロキシアルキル基であり、YはOCH3、OC2H5又はOC3H7であり、nは2又は3である。
式(1)におけるXは、炭素数4〜22のアルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロキシ基又は炭素数4〜22の(メタ)アクリロキシアルキル基であることが好ましく、炭素数6〜18のアルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロキシ基又は炭素数5〜10の(メタ)アクリロキシアルキル基であることがより好ましい。
式(1)におけるYは、OCH3又はOC2H5であることがより好ましく、OCH3であることがより好ましい。
式(1)におけるnは、3であることが好ましい。
式(1)で表されるシランカップリング剤の中でも、表面処理過程における脱水又は脱アルコール縮合のしやすさから、トリメトキシシラン系が好ましく、シランカップリング剤としては、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ミリスチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ステアリルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン及びアクリロキシオクチルトリメトキシシランが特に好ましい。
シランカップリング剤を溶解する溶剤としては、極性の大きな有機溶剤が好ましい。具体的には、アルコール、ケトン、エステルなどの公知の溶剤が挙げられるが、アルコール又はケトンが好ましい。これらは一種を単独で使用してもよいし、複数の有機溶剤を混合して使用してもよい。
シランカップリング剤は、無機粉体100重量部に対して10重量部以上40重量部以下添加することが好ましく、15重量部以上30重量部以下添加することがより好ましい。シランカップリング剤の添加量が上記範囲内であると表面処理が良好に行われるので好ましい。
放射線硬化により放射線硬化性化合物の体積収縮(硬化収縮)が数%起こるが、上記の体積%は、硬化前の放射線硬化層において、溶媒等を除去した体積から概算することもできる。
放射線硬化層における処理後無機粉体の含有量は、磁気記録媒体の断面をFIB(集束イオンビーム)切削したのち、放射線硬化層のSEM観察を50,000倍で行うことにより算出することができる。
分散媒である有機溶媒としてはシクロヘキサノン、MEK、トルエン、イソプロピルアルコール、MIBKが例示でき、これらの中でもシクロヘキサノンであることが好ましい。シランカップリング剤で表面処理した無機粉体が有機溶媒分散シリカゾルであると良好な分散性が得られるので好ましい。
本発明において使用される放射線は電子線や紫外線を用いることができる。紫外線を使用する場合には前記の化合物に光重合開始剤を添加することが必要となる。電子線硬化の場合は重合開始剤が不要であり、透過深さも深いので好ましい。
紫外線光源としては、水銀灯が好適に用いられる。水銀灯は20W/cm〜240W/cm以下のランプを用い、速度0.3m/分〜20m/分で使用されることが好ましい。基体と水銀灯との距離は一般に1cm〜30cmであることが好ましい。
本発明において、放射線硬化層にカーボンブラックを添加することも好ましい。
カーボンブラックを添加すると公知の効果である表面電気抵抗Rsを下げることができ、光透過率を小さくすることができるとともに、所望のマイクロビッカース硬度を得る事ができるので好ましい。一方、カーボンブラックを全く添加しないことも好ましい実施態様である。
カーボンブラックの比表面積は100m2/g以上500m2/g以下であることが好ましく、より好ましくは150m2/g以上400m2/g以下である。ジブチルフタレート(DBP)吸油量は好ましくは20ml/100g以上400ml/100g以下であり、より好ましくは30ml/100g以上200ml/100g以下である。カーボンブラックの粒子径は5nm以上80nm以下であることが好ましく、より好ましくは10nm以上50nm以下であり、さらに好ましくは10nm以上40nm以下である。カーボンブラックのpHは2以上10以下であることが好ましく、含水率は0.1%以上10%以下であることが好ましく、タップ密度は0.1g/ml以上1g/ml以下であることが好ましい。
カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ放射線硬化性化合物に分散してもかまわない。
これらのカーボンブラックは上記無機粉体に対して50重量%を越えない範囲で使用することが好ましく、放射線硬化層の総重量の40重量%を越えない範囲で使用することが好ましい。これらのカーボンブラックは単独、又は組合せで使用することができる。
本発明で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
(厚み)
本発明において、放射線硬化層の厚みは0.1μm〜1.0μmが好ましく、0.3μm〜0.7μmがさらに好ましい。なお、放射線硬化層の厚みは、乾燥後の厚さである。放射線硬化層の厚みが上記範囲内であると、十分な平滑性を得ることが、支持体との密着性が良好であるので好ましい。
本発明において、放射線硬化層の弾性率は1.5GPa〜10GPaであることが好ましい。弾性率が上記範囲内であると、塗膜の粘着故障を生じることのない、良好な塗膜強度が得られるので好ましい。
本発明において、放射線硬化層のカットオフ値0.25mmにおける平均粗さ(Ra)は1nm〜2nmであることが好ましい。平均粗さが上記範囲内であると、塗布工程でのパスロールへの張り付き故障が生じることのない、十分な磁性層の平滑性が得られるので好ましい。
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に、強磁性粉末を結合剤中に分散させた磁性層を有する。
1.強磁性粉末
本発明の磁気記録媒体には、強磁性粉末として、長軸長が20nm〜50nmの針状強磁性体、板径10nm〜50nmの平板状磁性体、又は直径10nm〜50nmの球状又は楕円状磁性体を使用することが好ましい。以下、それぞれについて説明する。
(1)針状強磁性体
本発明の磁気記録媒体に使用される強磁性粉末として、長軸長が20nm〜50nm以下である針状強磁性体を使用することができる。針状強磁性体としては、針状であるコバルト含有強磁性酸化鉄又は強磁性合金粉末等の強磁性金属粉末が例示でき、BET比表面積(SBET)が好ましくは40m2/g〜80m2/g、より好ましくは50m2/g〜70m2/gである。結晶子サイズは好ましくは12nm〜25nm、より好ましくは13nm〜22nmであり、特に好ましくは14nm〜20nmである。長軸長は20nm〜50nmであることが好ましく、より好ましくは20nm〜40nmである。
第一鉄塩とアルカリを混合した水性懸濁液に、酸化性気体を吹き込むことによって得られるオキシ水酸化鉄を出発原料とする例を挙げることができる。
このオキシ水酸化鉄の種類としては、α−FeOOHが好ましい。その製法としては、第一鉄塩を水酸化アルカリで中和してFe(OH)2の水性懸濁液とし、この懸濁液に酸化性ガスを吹き込んで針状のα−FeOOHとする第一の製法がある。一方、第一鉄塩を炭酸アルカリで中和してFeCO3の水性懸濁液とし、この懸濁液に酸化性気体を吹き込んで紡錘状のα−FeOOHとする第二の製法がある。このようなオキシ水酸化鉄は第一鉄塩水溶液とアルカリ水溶液とを反応させて水酸化第一鉄を含有する水溶液を得て、これを空気酸化等により酸化して得られたものであることが好ましい。この際、第一鉄塩水溶液にNi塩や、Ca塩、Ba塩、Sr塩等のアルカリ土類元素の塩、Cr塩、Zn塩などを共存させても良く、このような塩を適宜選択して用いることによって粒子形状(軸比)などを調製することができる。
また、飽和磁束密度は、好ましくは150mT〜300mT(1,500G〜3,000G)であり、さらに好ましくは160mT〜290mT(1,600G〜2,900G)である。また飽和磁化(σs)は、好ましくは100A・m2/kg〜170A・m2/kg(100emu/g〜170emu/g)であり、さらに好ましくは110A・m2/kg〜160A・m2/kg(110emu/g〜160emu/g)である。
本発明で用いることのできる板径が10〜50nmである平板状磁性体としては六方晶フェライト粉末が好ましい。
六方晶フェライトとしてバリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等がある。具体的にはマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、さらに一部スピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられ、その他所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nb、Zr、Znなどの原子を含んでもかまわない。一般にはCo−Zn、Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、Sb−Zn−Co、Nb−Zn等の元素を添加した物を使用することができる。原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。
板状比(板径/板厚)は1以上15以下が好ましく、2以上7以下がより好ましい。上記範囲であると配向性が十分であり、粒子間のスタッキングが起こりにくくノイズが小さくなる。この粒子サイズ範囲のBET法による比表面積は10m2/g〜200m2/gを示す。比表面積は概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符号する。結晶子サイズは50Å〜450Åであることが好ましく、より好ましくは100Å〜350Åである。粒子板径・板厚の分布は通常狭いほど好ましい。数値化は困難であるが粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定する事で比較できる。分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すとσ/平均サイズ=0.1〜2.0であることが好ましい。粒子サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。たとえば酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
Hcは粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。飽和磁化σsは40A・m2/kg以上80A・m2/kg以下(40emu/g〜80emu/g)である。σsは高い方が好ましいが微粒子になるほど小さくなる傾向がある。σs改良のためマグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合すること、含有元素の種類と添加量の選択等が良く知られている。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。
球状又は楕円状磁性体としては、Fe16N2を主相とする窒化鉄系の強磁性粉末が好ましい。Fe、N原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。Feに対するNの含有量は1.0原子%〜20.0原子%が好ましい。
窒化鉄は球状又は楕円状が好ましく、長軸径/短軸径の軸比は1〜2が好ましい。BET比表面積(SBET)が30m2/g〜100m2/gであることが好ましく、より好ましくは50m2/g〜70m2/gである。結晶子サイズは12nm〜25nmであることが好ましく、より好ましくは13nm〜22nmである。
飽和磁化σsは50A・m2/kg(50emu/g)〜200A・m2/kg(200emu/g)〜が好ましい。さらに好ましくは70A・m2/kg(70emu/g)〜150A・m2/kg(150emu/g)である。
磁性層に用いる結合剤としてはポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどを共重合したアクリル系樹脂、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルキラール樹脂などから単独あるいは複数の樹脂を混合して用いることができる。これらの中で好ましいのはポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂である。
結合剤の分子量は重量平均分子量で10,000〜200,000であることが好ましく、20,000〜100,000であることがさらに好ましい。上記範囲内にあると、塗膜強度が十分であり、耐久性が良好であり、また分散性が向上するので好ましい。
ポリエステルジオールは耐加水分解性の観点で分岐側鎖をもつもの、芳香族、脂環族の原料から得られるものが好ましい。
これらの長鎖ジオールは複数の種類のものを併用、混合して用いることもできる。
ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度は1meq/g〜5meq/gが好ましく、1.5meq/g〜4.5meq/gがさらに好ましい。ウレタン基濃度が上記範囲内であると、高い力学的強度が得られると共に、溶液粘度が良好であり、良好な分散性が得られるので好ましい。
ポリウレタン樹脂のガラス転移温度は0℃以上200℃以下が好ましく、より好ましくは40℃〜160℃である。ガラス転移温度が上記範囲内であると、高い耐久性が得られると共に、良好なカレンダー成形性が得られ、良好な電磁変換特性が得られるので好ましい。
共重合モノマーとしては酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどのアクリレート、メタクリレート類、アリルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、アリルプロピルエーテル、アリルブチルエーテルなどのアルキルアリルエーテル類、その他スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、エチレン、ブタジエン、アクリルアミド、さらに官能基をもつ共重合モノマーとしてビニルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、2−ヒドロキシプロピルアリルエーテル、3−ヒドロキシプロピルアリルエーテル、p−ビニルフェノール、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ホスホエチル(メタ)アクリレート、スルホエチル(メタ)アクリレート、p−スチレンスルホン酸、及びこれらのNa塩、K塩などが用いられる。
塩化ビニル系樹脂中の塩化ビニルモノマーの組成は60重量%〜95重量%であることが好ましい。上記範囲内にあると、良好な力学強度が得られると共に、溶剤溶解性が良好で、好適な溶液粘度のために良好な分散性が得られるので好ましい。
好ましい重合度は200〜600、より好ましくは240〜450である。上記範囲内にあると、良好な力学強度が得られると共に、好適な溶液粘度のために良好な分散性が得られるので好ましい。
具体的にはトリメチロールプロパン(TMP)にTDI(トリレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにIPDI(イソホロンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにXDI(キシリレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、などアダクト型ポリイソシアネート化合物。TDIの縮合イソシアヌレート型3量体、TDIの縮合イソシアヌレート5量体、TDIの縮合イソシアヌレート7量体、及びこれらの混合物。HDIのイソシアヌレート型縮合物、IPDIのイソシアヌレート型縮合物。さらにクルードMDIなどがある。
これらの中で好ましいのはTMPにTDIを3モル付加した化合物、TDIのイソシアヌレート型3量体などである。
硬化剤は結合剤100重量部に対して0重量部〜80重量部添加するのが好ましい。上記範囲内にあると分散性が良好であるので好ましい。
これら添加剤としては、例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基を持つシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸基、フェネチルホスホン酸、α−メチルベンジルホスホン酸、1−メチル−1−フェネチルホスホン酸、ジフェニルメチルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ベンジルフェニルホスホン酸、α−クミルホスホン酸、トルイルホスホン酸、キシリルホスホン酸、エチルフェニルホスホン酸、クメニルホスホン酸、プロピルフェニルホスホン酸、ブチルフェニルホスホン酸、ヘプチルフェニルホスホン酸、オクチルフェニルホスホン酸、ノニルフェニルホスホン酸等の芳香族環含有有機ホスホン酸及びそのアルカリ金属塩、オクチルホスホン酸、2−エチルヘキシルホスホン酸、イソオクチルホスホン酸、イソノニルホスホン酸、イソデシルホスホン酸、イソウンデシルホスホン酸、イソドデシルホスホン酸、イソヘキサデシルホスホン酸、イソオクタデシルホスホン酸、イソエイコシルホスホン酸等のアルキルホスホン酸及びそのアルカリ金属塩、リン酸フェニル、リン酸ベンジル、リン酸フェネチル、リン酸α−メチルベンジル、リン酸1−メチル−1−フェネチル、リン酸ジフェニルメチル、リン酸ビフェニル、リン酸ベンジルフェニル、リン酸α−クミル、リン酸トルイル、リン酸キシリル、リン酸エチルフェニル、リン酸クメニル、リン酸プロピルフェニル、リン酸ブチルフェニル、リン酸ヘプチルフェニル、リン酸オクチルフェニル、リン酸ノニルフェニル等の芳香族リン酸エステル及びそのアルカリ金属塩、リン酸オクチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸イソオクチル、リン酸イソノニル、リン酸イソデシル、リン酸イソウンデシル、リン酸イソドデシル、リン酸イソヘキサデシル、リン酸イソオクタデシル、リン酸イソエイコシル等のリン酸アルキルエステル及びそのアルカリ金属塩、アルキルスルホン酸エステル及びそのアルカリ金属塩、フッ素含有アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、エルカ酸等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい一塩基性脂肪酸及びこれらの金属塩、又はステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ラウリル酸ブチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタンジステアレート、アンヒドロソルビタントリステアレート等の炭素数10〜24以下の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい一塩基性脂肪酸と炭素数2〜22の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい1〜6価アルコール、炭素数12〜22の不飽和結合を含んでも分岐していてもよいアルコキシアルコール又はアルキレンオキサイド重合物のモノアルキルエーテルのいずれか一つとからなるモノ脂肪酸エステル、ジ脂肪酸エステル又は多価脂肪酸エステル、炭素数2〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミンなどが使用できる。また、上記炭化水素基以外にもニトロ基及びF、Cl、Br、CF3、CCl3、CBr3等の含ハロゲン炭化水素等炭化水素基以外の基が置換したアルキル基、アリール基、アラルキル基を持つものでもよい。
これらの添加物の具体例としては、例えば、日本油脂社製:NAA−102、ヒマシ油硬化脂肪酸、NAA−42、カチオンSA、ナイミーンL−201、ノニオンE−208、アノンBF、アノンLG、竹本油脂社製:FAL−205、FAL−123、新日本理化社製:エヌジエルブOL、信越化学社製:TA−3、ライオンアーマー社製:アーマイドP、ライオン社製:デュオミンTDO、日清製油社製:BA−41G、三洋化成社製:プロフアン2012E、ニューポールPE61、イオネットMS−400等が挙げられる。
本発明の磁気記録媒体は、放射線硬化層と磁性層との間に結合剤及び非磁性粉末を含む非磁性層を有していてもよい。また、非磁性層には非磁性粉末と共に、必要に応じてカーボンブラックを混合してもよい。
非磁性層には、下層が実質的に非磁性である範囲で磁性粉末を使用してもよいが、非磁性粉末を用いることが好ましい。
非磁性層に使用できる非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物などが挙げられる。
非磁性粉末の結晶子サイズは、4nm〜1μmが好ましく、40nm〜100nmがより好ましい。結晶子サイズが上記数値範囲であれば、分散が困難になることもなく、また好適な表面粗さを有するため好ましい。
これら非磁性粉末の平均粒径は、5nm〜2μmが好ましいが、必要に応じて平均粒径の異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くしたりして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましい非磁性粉末の平均粒径は、10nm〜200nmである。平均粒径が上記数値範囲であれば、分散も良好で、かつ好適な表面粗さを有するため好ましい。
ジブチルフタレート(DBP)を用いた吸油量は、好ましくは5ml/100g〜100ml/100g、より好ましくは10ml/100g〜80ml/100g、さらに好ましくは20〜60ml/100gである。
比重は、好ましくは1〜12であり、より好ましくは3〜6である。タップ密度は好ましくは0.05g/ml〜2g/mlであり、より好ましくは0.2g/ml〜1.5g/mlである。タップ密度が上記数値範囲であれば、飛散する粒子が少なく操作が容易であり、また装置にも固着しにくくなる傾向があるので好ましい。
非磁性粉末の含水率は、好ましくは0.1重量%〜5重量%、より好ましくは0.2重量%〜3重量%、さらに好ましくは0.3重量%〜1.5重量%である。含水量が上記数値範囲であれば、分散も良好で、分散後の塗料粘度も安定するため好ましい。
強熱減量は、20重量%以下であることが好ましく、強熱減量が小さいものが好ましい。
非磁性粉末の25℃での水への湿潤熱は、20μJ/cm2〜60μJ/cm2(200erg/cm2〜600erg/cm2)の範囲にあることが好ましい。また、この湿潤熱の範囲にある溶媒を使用することが好ましい。
100℃〜400℃での表面の水分子の量は1個/100Å〜10個/100Åが適当である。水中での等電点のpHは、3〜9であることが好ましい。
本発明に用いることのできる非磁性支持体としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドが好ましい。
これらの支持体はあらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理などを行ってもよい。また、本発明に用いることのできる非磁性支持体の表面粗さはカットオフ値0.25mmにおいて中心平均粗さRaが3〜10nmであることが好ましい。
一般に、コンピュータデータ記録用の磁気テープは、ビデオテープ、オーディオテープに比較して繰り返し走行性が強く要求される。このような高い保存安定性を維持させるために、非磁性支持体の非磁性層及び磁性層が設けられた面とは反対の面にバックコート層を設けることもできる。バックコート層用塗料は、研磨剤、帯電防止剤などの粒子成分と結合剤とを有機溶媒に分散させることで調製できる。粒子成分として各種の無機顔料やカーボンブラックを使用することができる。また、結合剤としては、例えば、ニトロセルロース、フェノキシ樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン等の樹脂を単独又はこれらを混合して使用することができる。
本発明で用いられる磁気記録媒体の構成において、放射線硬化層の厚さは、上述のとおり0.1μm〜1.0μmが好ましく、0.3μm〜0.7μmがさらに好ましい。また非磁性支持体の好ましい厚さは、3μm〜80μmである。また、非磁性支持体の非磁性層及び磁性層が設けられた面とは反対側の面に設けられたバックコート層の厚さは、好ましくは0.1μm〜1.0μm、より好ましくは0.2μm〜0.8μmである。
本発明で用いられる磁気記録媒体の磁性層塗布液を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、及びこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられる強磁性六方晶フェライト粉末又は強磁性金属粉末、非磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨材、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初又は途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。ニーダを用いる場合は強磁性粉末又は非磁性粉末と結合剤のすべて又はその一部(但し、全結合剤の30%以上が好ましい)及び強磁性粉末100重量部に対し15〜500重量部の範囲で混練処理されることが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層用液及び非磁性層用液を分散させるには、ガラスビーズを用いることができる。このようなガラスビーズは、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できるようにすることが好ましく、塗布速度は20m/分以上1,000m/分以下、乾燥風の温度は60℃以上が好ましい。また磁石ゾーンに入る前に適度の予備乾燥を行うこともできる。
カレンダ処理ロールとしてはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用することが好ましい。また金属ロールで処理することもできる。本発明の磁気記録媒体は、表面の中心面平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて好ましくは0.1nm〜4.0nm、より好ましくは0.5nm〜3.0nmという極めて優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。その方法として、例えば上述したように特定の強磁性粉末と結合剤を選んで形成した磁性層を上記カレンダ処理を施すことにより行われる。カレンダ処理条件としては、カレンダーロールの温度は好ましくは60℃〜100℃、より好ましくは70℃〜100℃、特に好ましくは80℃〜100℃であり、圧力は好ましくは100kg/cm〜500kg/cm、より好ましくは200kg/cm〜450kg/cmであり、特に好ましくは300kg/cm〜400kg/cmの条件で作動させることによって行われることが好ましい。
本発明に用いられる磁気記録媒体の磁性層の飽和磁束密度は、100mT〜300mT(1,000G〜3,000G)であることが好ましい。また磁性層の抗磁力(Hr)は、143.3kA/m〜318.4kA/m(1,800〜4,000Oe)であることが好ましいが、より好ましくは159.2kA/m〜278.6kA/m(2,000Oe〜3,500Oe)である。抗磁力の分布は狭い方が好ましく、SFD及びSFDrは好ましくは0.6以下、さらに好ましくは0.2以下である。
磁性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは100mg/m2以下、さらに好ましくは10mg/m2以下である。塗布層が有する空隙率は非磁性層、磁性層とも好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは20容量%以下である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方がよい場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が保存安定性は好ましいことが多い。
本発明の磁気記録媒体は、磁気記録媒体に磁気記録された信号を再生するヘッドについては特に制限はないが、MRヘッドのために用いることが好ましい。本発明の磁気記録媒体の再生にMRヘッドを用いる場合、MRヘッドには特に制限はなく、例えばGMRヘッドやTMRヘッドを用いることもできる。また、磁気記録に用いるヘッドは特に制限されないが、飽和磁化量が好ましくは1.0T以上であり、1.5T以上であることがより好ましい。
<無機粉体のシランカップリング剤処理>
平均一次粒子径12nmのコロイダルシリカ(メタノール分散)(PL1−MA、扶桑化学工業(株)製)を80℃に加熱し、メタノールを蒸発させながらブタノールを滴下し、溶媒置換を行い、ブタノール分散ゾルを得た。
次に、ブタノールゾルに対して酢酸を20重量%添加後、ヘキシルトリメトキシシラン及びアクリロキシプロピルトリメトキシシランをコロイダルシリカ(固形分)に対して各10重量%となるように添加し、2時間130℃にて撹拌することにより、表面処理を行った。
次に、140℃まで加温し、ブタノールを蒸発させながらシクロヘキサノンを滴下して溶媒置換したシクロヘキサノンゾルを得た。
表1に示す放射線硬化性化合物、及び、シクロヘキサノンゾル(固形分15重量%)を、全体の固形分濃度が20重量%となるようにシクロヘキサノン及びMEKで希釈し、20分間撹拌したものを平均孔径0.1μmのフィルターで濾過し、放射線硬化層用塗布液を調製した。
強磁性合金粉末(組成:Fe 100原子%に対して、Co 20原子%、Al 9原子%、Y 6原子%、Hc 175kA/m、結晶子サイズ11nm、BET比表面積(SBET)70m2/g、長軸長45nm、σs111emu/g)100部をオープンニーダーで10分間粉砕し、次いで、ポリウレタン樹脂溶液(SO3Na基70μeq/g含有ポリエステルポリウレタン、Tg=100℃、Mw7万)15部(固形分)で60分間混練し、次いで研磨剤(Al2O3、粒子サイズ0.3μm)2部、カーボンブラック(粒子サイズ 40nm)2部、メチルエチルケトン/トルエン=1/1 200部を加えてサンドミルで360分間分散した。
これにブチルステアレート 2部、ステアリン酸 1部、シクロヘキサノン 50部を加え、さらに20分間撹拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性塗料(磁性層用塗布液)を調製した。
α−Fe2O3(平均粒径0.15μm、SBET52m2/g、表面処理Al2O3、SiO2、pH6.5〜8.0)85部をオープンニーダーで10分間粉砕し、次いで塩化ビニル/酢酸ビニル/グリシジルメタクリレート=86/9/5の共重合体にヒドロキシエチルスルフォネートナトリウム塩を付加した化合物(SO3Na=6×10-5eq/g、エポキシ=10-3eq/g、Mw 30,000)を7.5部及びポリウレタン樹脂溶液(SO3Na基70μeq/g含有ポリエステルポリウレタン、Tg=100℃、Mw7万)10部(固形分)、シクロヘキサノン60部で60分間混練し、次いでメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=6/4 200部を加えてサンドミルで120分間分散した。これにブチルステアレート 2部、ステアリン酸 1部、メチルエチルケトン 50部を加え、さらに20分間撹拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、下層用非磁性塗料(非磁性層用塗布液)を調製した。
その後、放射線硬化層の上に下層用非磁性塗料(非磁性層塗布液)を、さらにその上に磁性塗料(磁性層用塗布液)を乾燥後の厚みがそれぞれ0.5μm、0.1μmになるように、リバースロールを用いて同時重層塗布した。磁性塗料が未乾燥の状態で5,000ガウスのCo磁石と4,000ガウスのソレノイド磁石で磁場配向を行ない、溶剤を乾燥したものを金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロールの組み合せによるカレンダー処理を(速度100m/min、線圧300kg/cm、温度90℃)で行なった後1/2インチ(12.7mm)幅にスリットした。
放射線硬化性化合物、無機粉体を表1又は2に記載したものに変更した以外は実施例1と同様の方法で作製した。
なお、シランカップリング剤で表面処理した無機粉体の含有量は、硬化後の放射線硬化層における含有量(体積%)である。
<放射線硬化性化合物>
EB4858:EBYCRYL4858(ダイセル・サイテック(株)製)
ウレタンアクリレート、官能基数2、分子量450、7,000mPa・s(25℃)、溶解パラメータ(SP値)9.5以上
R604:5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1’−ジメチルエチル)−5−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンジアクリレート(日本化薬(株)製)
Acr−TMS:アクリロキシアルキルトリメトキシシラン(n=3、8)
De−TMS:デシルトリメトキシシラン
S−TMS:ステアリルトリメトキシシラン
Ph−TMS:フェニルトリメトキシシラン
Hex−TES:ヘキシルトリエトキシシラン
Hex−TPS:ヘキシルトリプロポキシシラン
また、放射線硬化層中のシランカップリング剤で表面処理した無機粉体(処理後無機粉体)の含有量は得られた磁気記録媒体の断面をFIB切削した後、放射線硬化層のSEM観察を50,000倍で行い、画像解析により測定した。
実施例1〜15、比較例1〜10で作製した磁気記録媒体を以下のように評価した。
(1)平滑性
磁性層表面をデジタルオプティカルプロフィーメーターを用い光干渉法によりカットオフ0.25mmの条件で250μm×250μmの面積における中心平均粗さをRaとした。
記録ヘッド(MIGギャップ0.15μm、1.8T)と再生用MRヘッドをドラムテスターにとりつけて測定した。
ヘッドとメディアの相対速度1〜3m/min、面記録密度0.57Gbit/inch2(0.88Mbit/mm2)で測定した時の再生出力を測定し、比較例1を0dBとした相対値で示した。
テープをその幅方向に30mm、長手方向に5mm切り出したサンプルをTMA装置にセットして30℃、0〜90%RHで24時間エージングした。エージング後、温度が30℃〜40℃におけるTD方向の寸法変化を測定し、湿度膨張係数を以下の式により求めた。
湿度膨張係数=((90%RHでの媒体長さ−0%RHでの媒体長さ)/0%RHでの媒体長さ)/湿度変化(90%RH−0%RH)
なお、TD方向とは磁気記録媒体の幅方向を意味する。
また、温度膨張係数の単位はppm/RHで示した。
テープを微分干渉顕微鏡で観察した。はじきや、ひび割れなどの面異常が生じたものは不良、はじきやひび割れが無い物を優秀とした。
テ−プを40℃10%RH環境下で磁性層面をAlTiC製の円柱棒に接触させて荷重100g(T1)をかけ、2m/secの摺動速度で繰り返し10,000パスまで摺動を行ったあとのテープエッジを光学顕微鏡で観察し以下のランクで評価した。
優秀:エッジダメ−ジなし
良好:エッジダメージはあるが放射線硬化層の脱落はない
不良:放射線硬化層の脱落が観察された
Claims (3)
- 非磁性支持体上に、放射線硬化性化合物及び無機粉体を含む層を放射線照射によって硬化させた放射線硬化層と、強磁性粉末を結合剤中に分散させた磁性層とを、この順に有し、
前記無機粉体が5nm〜50nmの平均粒子径を有し、
前記無機粉体が2種類以上のシランカップリング剤により表面処理されており、
前記2種類以上のシランカップリング剤のうち、少なくとも1つが(メタ)アクリロイル基を含むものであり、
前記放射線硬化層中の前記無機粉体の含有量が、30体積%〜60体積%であることを特徴とする
磁気記録媒体。 - 前記シランカップリング剤が式(1)で表される請求項1に記載の磁気記録媒体。
(X)4-n−Si−(Y)n (1)
ここで、Xは炭素数4〜22のアルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロキシ基、又は、炭素数4〜22の(メタ)アクリロキシアルキル基であり、YはOCH3、OC2H5又はOC3H7であり、nは2又は3である。 - 前記放射線硬化層と前記磁性層との間に、非磁性粉末を結合剤中に分散させた非磁性層を有する請求項1又は2に記載の磁気記録媒体。
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