JP2009054198A - 磁気記録媒体 - Google Patents

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朗 今國
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寛敬 佐藤
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Abstract

【課題】平滑性及び電磁変換特性に優れ、カッピング、摺動エッジダメージを抑制できる磁気記録媒体を提供すること。
【解決手段】非磁性支持体上に放射線硬化性化合物及び無機粉体を含む層を放射線照射によって硬化させた放射線硬化層を有する磁気記録媒体であって、放射線硬化性化合物はカーボネート結合を有する単量体単位を全単量体単位の50〜100重量%含む分子量1,000〜10,000のポリカーボネートポリ(メタ)アクリレートであり、無機粉体は式(1)の化合物により表面処理された平均粒径5〜50nmの無機粉体であり、放射線硬化層中の無機粉体の含有量が放射線硬化層全体積の25〜65体積%であることを特徴とする磁気記録媒体。X−Si−Y4−k(1)(式(1)において、Xはアルキル基、アルケニル基、アリール基又は(メタ)アクリロキシ基であり、Yは低級アルコキシ基であり、kは1〜3である。)
【選択図】なし

Description

非磁性支持体上に強磁性微粉末を結合剤中に分散させてなる少なくとも一層の磁性層を設けた磁気記録媒体において、優れた耐久性及び電磁変換特性をもつ磁気記録媒体に関する。
オーディオ用、ビデオ用、コンピュータ用などのテープ状磁気記録媒体及びフレキシブルディスクなどのディスク状磁気記録媒体として、γ−酸化鉄、Co含有酸化鉄、酸化クロム、強磁性金属粉末などの強磁性粉末を結合剤中に分散させた磁性層を支持体上に設けた磁気記録媒体が用いられている。磁気記録媒体に用いられている支持体としては、一般にポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが用いられている。これらの支持体は延伸し高度に結晶化されているため機械的強度が強く耐溶剤性に優れている。
強磁性粉末を結合剤中に分散させた塗布液を支持体に塗布して得られる磁性層は、強磁性粉末の充填度が高く破断伸びが小さく脆いため、機械的な力を加えることにより簡単に破壊され、支持体から剥離することがある。そこで、支持体上に下塗り層を設けて、磁性層を支持体上に強く接着させることが行われている。
一方、電子線などの放射線により硬化する官能基をもつ化合物、即ち放射線硬化性化合物を用いて放射線硬化層を形成した磁気記録媒体が知られている。これらの放射線硬化性化合物を用いた放射線硬化層は、磁性層の平滑性が不十分であり、十分な電磁変換特性が得られなかった(特許文献1〜3参照)。また、磁性層の剥離強度が不十分であるために、VTR等で繰り返し走行させると磁性層の一部が剥離し、ドロップアウトなどの故障の原因となることがあった。さらに、放射線硬化層が軟らかいために塗布工程などでガイドローラ等へはりつく故障が多いという問題もあった。
また、放射線硬化層に無機フィラーを含有させることによって、磁性層の平滑性を向上させることや、塗膜強度を向上させることが提案されている(特許文献4及び5参照)。しかし、特許文献4及び5に開示された放射線硬化層では、十分な平滑性が得られないという問題があり、また、放射線硬化性化合物の十分な硬化性が得られず、長期保存性が不十分であるとの問題があった。
さらに、環状エーテル骨格を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物、又は、環状構造及びエーテル基を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有し、分子量が250〜1,000である化合物(但し、エステル結合を有する芳香族化合物を除く。)を放射線硬化して得た放射線硬化層を有する磁気記録媒体が提案されているが(特許文献6)、十分な耐久性が得られていない。
特開昭60−133531号公報 特開昭57−40747号公報 特開2001−84582号公報 特開2004−5890号公報 特開平1−213829号公報 特開2004−111001号公報
本発明が解決しようとする課題は、平滑性及び電磁変換特性に優れ、カッピング、摺動エッジダメージを抑制できる磁気記録媒体を提供することである。
本発明が解決しようとする課題は、下記<1>の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<4>と共に以下に記載する。
<1>非磁性支持体上に、放射線硬化性化合物及び無機粉体を含む層を放射線照射によって硬化させた放射線硬化層と、強磁性粉末を結合剤中に分散させた磁性層とを、この順に有する磁気記録媒体であって、前記放射線硬化性化合物は、カーボネート結合を有する単量体単位を全単量体単位の50〜100重量%含む分子量1,000〜10,000であるポリカーボネートポリ(メタ)アクリレートであり、前記無機粉体は、式(1)に示す化合物を用いて表面処理された平均粒径5〜50nmの無機粉体であり、前記放射線硬化層中の前記無機粉体の含有量が、放射線硬化層全体積の25〜65体積%であることを特徴とする磁気記録媒体、
−Si−Y4−k (1)
(式(1)において、Xはそれぞれ独立に炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基及び(メタ)アクリロキシ基よりなる群から選ばれた基であり、Yはそれぞれ独立に炭素数1〜3の低級アルコキシ基であり、kは1〜3の整数である。)
<2>前記ポリカーボネートポリ(メタ)アクリレートが式(2)に示す化合物である<1>に記載の磁気記録媒体、
Figure 2009054198
(式(2)において、Zはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、n+1個のRはそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキレン基又は炭素数3〜28の環状構造を有するアルキレン基を示し、nは式(2)の化合物の分子量が1,000〜10,000となる任意の整数を示す。)
<3>前記式(2)において、n+1個のRが、それぞれ独立にヘキサメチレン基又はパラシクロヘキサンジメチレン基である<2>に記載の磁気記録媒体、
<4>前記放射線硬化層と前記磁性層との間に、非磁性粉末を結合剤中に分散させた非磁性層を有する<1>〜<3>いずれか1つに記載の磁気記録媒体。
本発明によれば、平滑性及び電磁変換特性に優れ、カッピング、摺動エッジダメージを抑制できる磁気記録媒体を提供することができる。
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に、放射線硬化性化合物及び無機粉体を含む層を放射線照射によって硬化させた放射線硬化層と、強磁性粉末を結合剤中に分散させた磁性層とを、この順に有する磁気記録媒体であって、前記放射線硬化性化合物は、カーボネート結合を有する単量体単位を全単量体単位の50〜100重量%含み、分子量1,000〜10,000であるポリカーボネートポリ(メタ)アクリレートであり、前記無機粉体は、式(1)に示す化合物を用いて表面処理された平均粒径5〜50nmの無機粉体であり、前記放射線硬化層中の前記無機粉体の含有量が、放射線硬化層全体積の25〜65体積%であることを特徴とする。
−Si−Y4−k (1)
式(1)において、Xはそれぞれ独立に炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基及び(メタ)アクリロキシ基よりなる群から選ばれた基であり、Yはそれぞれ独立に炭素数1〜3の低級アルコキシ基であり、kは1〜3の整数である。
また、放射線硬化層と磁性層との間に、非磁性粉末を結合剤中に分散させた非磁性層を有することが好ましい。
なお、「(メタ)アクリロキシ基」はメタクリロキシ基又はアクリロキシ基を示し、「(メタ)アクリレート」は「メタクリレート」又は「アクリレート」を示す。また「1,000〜10,000」は「1,000以上10,000以下」を意味するものとし、以下、特にことわりのない限り、他の数値範囲の記載についても同様とする。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は非磁性支持体上に放射線硬化性化合物及び無機粉体を含む層を放射線照射して硬化させた放射線硬化層(以下、「平滑化層」ともいう。)を有する磁気記録媒体に関する。
放射線硬化層の形成に用いられる放射線硬化性化合物は、一般的に低分子量(1,000未満)であるモノマー、オリゴマーであり、これらを用いた場合には、塗布液の粘度が低く塗膜がレベリングしやすいため、優れた平滑性を有する放射線硬化層を得ることができる。しかしながら、このような放射線硬化層は硬化収縮が大きい。これにより、支持体上に放射線硬化性化合物を塗布・放射線硬化処理後にテープが反り返る現象、即ちカッピングが起こる。特にコンピューター用の磁気記録媒体において寸法、テープ形状が微小に変化することで走行エラー等を生じることがあった。また繰り返し摺動によりテープエッジ部から放射線硬化層が脱落し走行故障を生じることもある。
本発明の磁気記録媒体は放射線硬化層に無機粉体を含むものであり、前述した硬化収縮や、カッピングを抑制する作用がある。
一方、従来技術のようにシリカ等の無機粉体を含む放射線硬化層は、粒子の凝集により平滑性が損なわれるため少量の無機粉体しか含むことができなかった。本発明においては無機粉体をシランカップリング剤で表面処理することで粒子の凝集を抑制し、高い平滑性を維持したままテープの寸法変化も抑制できる。
放射線硬化性化合物の分子量の最適化を図る事で、未硬化成分の表面析出を抑制し、かつ従来よりも多い量の無機粉体を含むことを可能とした。また、従来よりも多量の無機粉体を含むことにより放射線硬化層の力学強度を向上でき、繰り返し摺動による放射線硬化層の脱落を抑制できた。
I.放射線硬化層
本発明において、放射線硬化層は平滑化層としての役割を果たす。平滑化層とは、非磁性支持体表面の突起を埋めるための層であり、非磁性支持体上に磁性層を設けた磁気記録媒体の場合は非磁性支持体と磁性層の間に、非磁性支持体上に非磁性層および磁性層をこの順に設けた磁気記録媒体の場合には非磁性支持体と非磁性層の間に設けられる。平滑化層は、放射線硬化性化合物を放射線照射により硬化させて形成することができる。
1.放射線硬化性化合物
放射線硬化性化合物は、紫外線又は電子線などの放射線を照射すると重合又は架橋を開始し、高分子化して硬化する性質を有する化合物である。放射線硬化性化合物は、外部からエネルギー(紫外線又は電子線)を付与しない限り反応が進行しない。このため、放射線硬化性化合物を含む塗布液は、紫外線又は電子線を照射しない限り粘度が安定しており、高い塗膜平滑性を得ることができる。また、紫外線又は電子線による高いエネルギーにより瞬時に反応が進むため、放射線硬化性化合物を含む塗布液を用いることにより、高い塗膜強度を得ることができる。
なお、本発明で用いられる放射線としては、電子線(β線)、紫外線、X線、γ線、α線などの各種の放射線が含まれ、中でも電子線、紫外線が好ましく、電子線がより好ましい。
<ポリカーボネートポリ(メタ)アクリレート>
本発明において、放射線硬化性化合物は、カーボネート結合を有する単量体単位を全単量体単位の50〜100重量%含み、分子量が1,000〜10,000であるポリカーボネートポリ(メタ)アクリレートである。
ポリカーボネートポリ(メタ)アクリレート1分子あたりに含まれるカーボネート結合を有する単量体単位の数は、分子量が1,000〜10,000の範囲内である限り限定されるものではないが5以上であることが好ましい。
また、ポリカーボネートポリ(メタ)アクリレート1分子あたりの放射線官能基(ポリ(メタ)アクリレート)の数は、2官能又は3官能が好ましく、2官能であることがより好ましい。上記の官能基数であると原料の保存安定性、及び硬化性に優れる。
本発明において、ポリカーボネートポリ(メタ)アクリレートは、アクリロキシ基を有するものが好ましい。
本発明におけるポリカーボネートポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、
(1)芳香族基を有するカーボネート単量体単位よりなる芳香族ポリカーボネートポリ(メタ)アクリレート、
(2)芳香族基を有するカーボネート単量体単位及び脂肪族基を有するカーボネート単量体単位よりなる芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートポリ(メタ)アクリレート、並びに、
(3)脂肪族基を有するカーボネート単量体単位よりなる脂肪族ポリカーボネートポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
中でも構造が柔軟であり、分子間の相互作用が小さく、多くの有機溶媒に可溶であるため、平滑性に優れた放射線硬化層を得られることから(3)脂肪族ポリカーボネートポリ(メタ)アクリレートであることが好ましい。
前記放射線硬化性化合物は、カーボネート結合を有する単量体単位を全単量体単位の50〜100重量%含み、70〜100重量%含むことが好ましく、90〜100重量%含むことがより好ましく、100重量%含むことがさらに好ましい。カーボネート結合を有する単量体単位の占める割合が上記の数値の範囲内であると、無機粉体の分散性や、放射線硬化性化合物の保存安定性、磁気記録媒体の保存安定性に優れる。
カーボネート結合を有する単量体単位以外の単量体単位としては、エステル結合、エーテル結合を有する単量体単位等が挙げられるが、分散性、保存安定性の観点から、カーボネート結合を有する単量体単位以外の単量体単位を含まないことが好ましい。
<分子量>
本発明に用いるポリカーボネートポリ(メタ)アクリレートの分子量は、1,000〜10,000であり、1,200〜9,500が好ましく、4,000〜8,000がより好ましい。分子量が1,000より小さいと、電子線(以下、「EB」ともいう。)硬化性置換基の濃度が増し、EB硬化時の収縮が大きくなり、カッピングが生じやすくなる。また、未反応物が塗膜表面に析出しやすくなり、耐久性が損なわれる。分子量が10,000より大きいと粘度が高くなり、無機粉体の分散性が低下し、十分な平滑性が得られない。
<ポリカーボネートジ(メタ)アクリレート>
前記ポリカーボネートポリ(メタ)アクリレートは式(2)に示す、ポリカーボネートジ(メタ)アクリレートであることが好ましい。
Figure 2009054198
式(2)において、Zはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、n+1個のRはそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキレン基又は炭素数3〜28の環状構造を有するアルキレン基を示し、nは式(2)の化合物の分子量が1,000〜10,000となる任意の整数を示す。
炭素数1〜20のアルキレン基としては、直鎖脂肪族アルキレン基や分岐側鎖を持つ脂肪族アルキレン基が挙げられる。これらのアルキレン基の炭素数は2〜15が好ましく、3〜10がより好ましい。
直鎖脂肪族アルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、オクタデカメチレン基等が挙げられる。
分岐側鎖を持つ脂肪族アルキレン基としては、2,2−ジメチル−トリメチレン基、2,2−ジメチル−テトラメチレン基、2−エチル−2−メチル−トリメチレン基、3−メチル−3−エチル−ペンタメチレン基、2−メチル−2−プロピル−トリメチレン基、3−メチル−3−プロピル−ペンタメチレン基、2−メチル−2−ブチル−トリメチレン基、3−メチル−3−ブチル−ペンタメチレン基、2,2−ジエチル−トリメチレン基、3,3−ジエチル−ペンタメチレン基、2−エチル−2−ブチル−トリメチレン基、3−エチル−3−ブチル−ペンタメチレン基、2−エチル−2−プロピル−トリメチレン基、3−エチル−3−プロピル−ペンタメチレン基、2,2−ジブチル−トリメチレン基、3,3−ジブチル−ペンタメチレン基、2,2−ジプロピル−トリメチレン基、3,3−ジプロピル−ペンタメチレン基、2−ブチル−2−プロピル−トリメチレン基、3−ブチル−3−プロピル−ペンタメチレン基、2−エチル−トリメチレン基、2−プロピル−トリメチレン基、2−ブチル−トリメチレン基、3−エチル−ペンタメチレン基、3−プロピル−ペンタメチレン基、3−ブチル−ペンタメチレン基、3−オクチル−ペンタメチレン基、3−ミリスチル−ペンタメチレン基、3−ステアリル−ペンタメチレン基、2−エチル−ヘキサメチレン基、2−プロピル−ヘキサメチレン基、2−ブチル−ヘキサメチレン基、5−エチル−ノナメチレン基、5−プロピル−ノナメチレン基、5−ブチル−ノナメチレン基等の分岐側鎖を持つ脂肪族アルキレン基が挙げられる。
中でもヘキサメチレン基が好ましい。
炭素数3〜28の環状構造を有するアルキレン基としては、具体的には二価の脂環式炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基、又は、脂環式炭化水素基若しくは芳香族炭化水素基にメチレン基、エチレン基、トリメチレン基等の炭素数1〜3のアルキレン基が2つ結合した基が挙げられる。環状構造を有するアルキレン基炭素数は3〜20が好ましく、3〜15がより好ましい。
前記脂環式炭化水素基となる脂環式炭化水素としては、具体的にはシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ノルボルネン、アダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン、アイセアン及びツイスタンが挙げられ、中でもシクロヘキサンが好ましい。
シクロヘキサンを有するアルキレン基の具体例としては、1,4−シクロヘキサンジメチレン基、1,3−シクロヘキサンジメチレン基、1,2−シクロヘキサンジメチレン基等が挙げられ、中でも1,4−シクロヘキサンジメチレン基が好ましい。
前記芳香族炭化水素基となる芳香族炭化水素としては、具体的にはベンゼン、ナフタレン、アセナフチレン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、フルオランセン、ピレン、ベンゾフルオレン、ベンゾフェナントレン、クリセン、トリフェニレン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールS及びビスフェノールZが挙げられる。
本発明においては、ポリカーボネートジ(メタ)アクリレートは、脂肪族アルキレン基及び/又は脂環式炭化水素基を有するアルキレン基を有することが好ましく、平滑性、電磁変換特性に優れることから、脂肪族アルキレン基及び脂環式炭化水素基を有するアルキレン基の両方のアルキレン基を含むことが好ましい。
本発明においては「ポリカーボネート樹脂ハンドブック((株)日刊工業出版プロダクション発行)」、「化学工学便覧」等に記載されている公知の材料及び製造方法によりポリカーボネートを製造することができる。例えば、HO−R−OHとして示されるジオールとカーボネートとを触媒の存在下、エステル交換反応させてポリカーボネートジオールを製造できる。
得られたポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸等の放射線硬化性官能基を有する化合物を反応させることにより、式(2)に示すポリカーボネートジ(メタ)アクリレートが得られる。
<併用できるその他の放射線硬化性化合物>
本発明において、上述したポリカーボネート(メタ)アクリレートの他に、その他の放射線硬化性化合物を必要に応じて併用してもよい。併用できるその他の放射線硬化性化合物としては、例えば、
(1)多価アルコールに、(メタ)アクリル酸に代表されるカルボキシ基と放射線硬化成性官能基とを有する化合物を反応させて得られる(メタ)アクリレート化合物や、
(2)多価アルコールに、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートに代表される水酸基と反応する基と放射線硬化性官能基とを有する化合物を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートがある。
(3)また、ジイソシアネート化合物や末端イソシアネートプレポリマーに、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートやヒドロキシブチル(メタ)アクリレートに代表されるイソシアネート基と反応する基と放射線硬化性官能基とを有する化合物を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートがある。
前記の多価アルコールとしては、従来公知のポリウレタン原料として用いられているジオールのほかポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルエステルポリオールを用いることができる。ジイソシアネート化合物もポリウレタン原料として知られているものを用いることができる。
架橋性のある多官能(メタ)アクリレートの例としては、3官能以上としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートおよびそのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド変性物等が挙げられる。
2官能の脂肪族ジ(メタ)アクリレートとしては、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチルオクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートのウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2官能の脂環族ジ(メタ)アクリレートとしては、シクロペンタジエニルアルコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、リモネンアルコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ダイマージオールジ(メタ)アクリレート、5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1’−ジメチルエチル)−5−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフランジメタノールジ(メタ)アクリレート、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)−ウンデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
併用できるその他の放射線硬化性化合物として、得られる磁気記録媒体の機械的強度と吸湿性とのバランスに優れることから、脂肪族ジアクリレートや脂環族ジアクリレートが好ましい。官能基としては重合性に優れることからメタクリロイル基よりもアクリロイル基が好ましい。
脂肪族ジアクリレートの好ましい例としては、ヘキサメチレンジオールジアクリレート、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、3−メチルペンタンジオールジアクリレート、2−メチルオクタンジオールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートのウレタンジアクリレート等が例示される。
これらのうち、得られる放射線硬化層の平滑性に優れることから、分岐側鎖を有するものが好ましく、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、3−メチルペンタンジオールジアクリレート、2−メチルオクタンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートのウレタンジアクリレートがより好ましい。
また、脂環族ジアクリレートの好ましい例としては、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、リモネンアルコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ダイマージオールジアクリレート、5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1’−ジメチルエチル)−5−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンジアクリレート、テトラヒドロフランジメタノールジアクリレート、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)−ウンデカンジアクリレート等がある。これらの中でも好ましいものはトリシクロデカンジメタノールジアクリレートである。
上記多官能エステル以外の(メタ)アクリレートとしては、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート、ポリアミドポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これら併用できるその他の放射線硬化性化合物の使用量としては、放射線硬化層の0〜40重量%が好ましく、0〜30重量%であることがより好ましい。
また、粘度調節、基材との密着性向上等の理由で必要に応じて単官能(メタ)アクリレートを添加してもよい。かかる単官能(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートや2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
これら単官能アクリレートの使用量としては、放射線硬化層の0〜40重量%が好ましく、耐擦傷性等を考慮すると0〜30重量%であることがより好ましい。
放射線硬化層には「低エネルギー電子線照射の応用技術(シーエムシー発行)」、「UV・EB硬化技術((株)総合技術センター発行)」などに記載されている公知の(メタ)アクリレート化合物などの放射線硬化性化合物を併用してもよい。
2.無機粉体
<無機粉体>
本発明において、放射線硬化層は無機粉体を含有する。前記無機粉体は、シランカップリング剤を用いて表面処理された平均粒径5〜50nmの無機粉体であり、前記放射線硬化層中の前記無機粉体の含有量が、放射線硬化層全体積の25〜65体積%である。
無機粉体は、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、等の無機質化合物から選択することができる。なお、本発明において、カーボンブラックは無機粉体には含まれない。
本発明に用いることができる無機粉体としては、例えばα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、二酸化珪素、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデン等が挙げられ、これらは単独または2以上の組合せで使用される。中でも好ましいのは、二酸化珪素、α−酸化鉄、二酸化チタンである。中でも粒子サイズが適当であり、粒度分布が狭く、機能付与の手段が多いこと等から、特に二酸化珪素が好ましく、シクロヘキサノン、MEK、トルエン、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン(MIBK)等に分散されたコロイダルシリカが特に好ましい。
本発明において、無機粉体は球状粒子であることが好ましい。球状粒子とは、略球状の粒子をも含み、「略球状」とは、粒子の直交3軸の比が2以下のものをいう。本発明の無機粉体は真球状であることが好ましい。「真球状」とは、粒子の直交3軸の比が0.9〜1.1のものをいう。
なお、本発明において、無機粉体の形状は球状に限定されず針状、楕円状、積層状の無機粉体も使用することができる。
<無機粉体を表面処理するシランカップリング剤>
本発明に用いる無機粉体は、無機粉体表面のOH基と式(1)に示すシランカップリング剤とを脱水縮合させることによって表面処理されたものである。
−Si−Y4−k (1)
式(1)において、Xはそれぞれ独立に炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基及び(メタ)アクリロキシ基よりなる群から選ばれた基であり、Yはそれぞれ独立に炭素数1〜3の低級アルコキシ基であり、kは1〜3の整数である。
炭素数1〜18のアルキル基としては、メチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ミリスチル基、ステアリル基等が挙げられる。炭素数2〜18のアルケニル基としては、ビニル基が挙げられる。炭素数6〜18のアリール基としては、フェニル基、ベンジル基、スチリル基が挙げられる。
これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基は、少なくとも1つの置換基を有していてもよい。該置換基としては、メチル基、アミノ基、ビニル基、グリシドキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基、(メタ)アクリロキシ基等が挙げられる。
本発明に用いることのできるシランカップリング剤は特に限定はされない。例えばメチルトリメトキシシラン、ジメチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリプロポキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ミリスチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ステアリルトリメトキシシランフェニルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシラン、ビニルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、中でも表面処理過程における脱水縮合のしやすさからトリメトキシシラン系のシランカップリング剤が好ましく、特に好ましくはヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ステアリルトリメトキシシラン、アクリロイルオキシトリメトキシシランである。
表面処理を施した無機粉体の粒子サイズは、平均粒径で5nm〜50nmであり、5nm〜30nmが好ましく、5nm〜20nmがより好ましい。50nmを超えると、磁気記録媒体表面の平滑性及び電磁変換特性に劣る。なお、平均粒径は数平均粒子径を意味し、レーザー光散乱法等によって測定することができる。
放射線硬化層中の無機粉体の含有量は、放射線硬化層全体積の25〜65体積%であり、30〜60体積%であることが好ましく、35〜45体積%であることがより好ましい。無機粉体の含有量が25体積%未満であると、温度変化による膨張や、強度不足による放射線硬化層の脱落が生じる。また、無機粉体の含有量が65重量%を超えると、放射線硬化層が脆くなるため追従性に劣り、放射線硬化層の脱落が生じる。
3.カーボンブラック
本発明において、放射線硬化層にカーボンブラックを添加することも好ましい。
カーボンブラックを添加すると公知の効果である表面電気抵抗Rsを下げることができ、光透過率を小さくすることができるとともに、所望のマイクロビッカース硬度を得る事ができるので好ましい。一方、カーボンブラックを全く添加しないことも好ましい実施態様である。
カーボンブラックの種類はゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック、等を用いることができる。放射線硬化層のカーボンブラックは所望する効果によって、以下のような特性を最適化すべきであり、併用することでより効果が得られることがある。
カーボンブラックの比表面積は100〜500m2/gであることが好ましく、より好ましくは150〜400m2/gである。DBP吸油量は好ましくは20〜400ml/100gであり、より好ましくは30〜200ml/100gである。カーボンブラックの粒子径は5nm〜50nmであることが好ましく、より好ましくは5〜30nmであり、さらに好ましくは5〜20nmである。カーボンブラックのpHは2〜10であることが好ましく、含水率は0.1〜10%であることが好ましく、タップ密度は0.1〜1g/mlであることが好ましい。
本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製 BLACKPEARLS 2000,1300,1000,900,800,880,700、VULCAN XC−72、三菱化成工業社製 #3050B,#3150B,#3250B,#3750B,#3950B,#950,#650B,#970B,#850B,MA−600,MA−230,#4000,#4010、コンロンビアカーボン社製 CONDUCTEX SC、RAVEN 8800,8000,7000,5750,5250,3500,2100,2000,1800,1500,1255,1250、アクゾー社製ケッチェンブラックECなどが挙げられる。
カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ放射線硬化性化合物に分散してもかまわない。
これらのカーボンブラックは上記無機粉体に対して50重量%を越えない範囲で使用することが好ましく、放射線硬化層の総重量の40%を越えない範囲で使用することが好ましい。これらのカーボンブラックは単独、または組合せで使用することができる。
本発明で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
4.粘度
本発明において、前記放射線硬化性化合物及び前記無機粉体を含む放射線硬化層用塗布液の粘度は、25℃において、1,000〜50,000mPa・sが好ましく、さらに好ましくは1,000〜20,000mPa・s、特に好ましくは1,000〜10,000mPa・sである。
放射線硬化層用塗布液の粘度は、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン(MIBK)等の溶媒を添加して上記の数値の範囲内に調整してもよい。粘度が上記の数値の範囲内であると平滑性に優れた磁気記録媒体が得られる。
溶媒を添加して粘度を調整する場合、放射線硬化性化合物及び無機粉体よりなる固形分濃度は10重量%以上であることが好ましく、15重量%以上であることがより好ましい。
5.放射線照射に関して
本発明において使用される放射線には、電子線(β線)、紫外線、X線、γ線、α線などの各種の放射線が含まれ、中でも電子線や紫外線を好ましく用いることができる。紫外線を使用する場合には前記の化合物に光重合開始剤を添加することが必要となる。電子線硬化の場合は重合開始剤が不要であり、透過深さも深いので好ましい。本発明においては、放射線は電子線であることがより好ましい。
電子線加速器としてはスキャニング方式、ダブルスキャニング方式あるいはカーテンビーム方式が採用できるが、好ましいのは比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式である。電子線特性としては、加速電圧が30〜1,000kV、好ましくは50〜300kVであり、吸収線量として0.5〜20Mrad、好ましくは2〜10Mradである。加速電圧が30kV以下の場合はエネルギーの透過量が不足し、300kVを超えると重合に使われるエネルギーの効率が低下し経済的でない。
電子線を照射する雰囲気は窒素パージにより酸素濃度を200ppm以下にすることが好ましい。酸素濃度が高いと表面近傍の架橋、硬化反応が阻害される。
紫外線光源としては、水銀灯が用いられる。水銀灯は20〜240W/cmのランプを用い、速度0.3m/分〜20m/分で使用される。基体と水銀灯との距離は一般に1〜30cmであることが好ましい。
紫外線硬化に用いる光重合開始剤としては、公知の光ラジカル重合開始剤が用いられる。詳細は例えば「新高分子実験学第2巻 第6章 光・放射線重合」(共立出版1995発行、高分子学会編)に記載されているものを使用できる。
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルメチルケタール、ベンジルエチルケタール、ベンゾインイソブチルケトン、ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、などがある。
芳香族ケトンの混合比率は、放射線硬化化合物100重量部に対し0.5〜20重量部、好ましくは2〜15重量部、さらに好ましくは3〜10重量部である。
放射線硬化装置、条件などについては「UV・EB硬化技術」((株)総合技術センター発行)や「低エネルギー電子線照射の応用技術」(2000、(株)シーエムシー発行)などに記載されている公知のものを用いることができる。
6.放射線硬化層の特性
<放射線硬化層の厚み>
放射線硬化層の厚みは0.1〜1.0μmが好ましく、0.3〜0.8μmがより好ましい。上記の数値の範囲内であると、平滑性及び支持体との密着性に優れる。
<ガラス転移温度Tg>
放射線硬化層のガラス転移温度(Tg)は80゜C〜150゜Cが好ましく、さらに好ましくは100゜C〜130゜Cである。上記の数値の範囲内であると、塗布工程で粘着故障を起こすことがなく、優れた塗膜強度が得られる。
<弾性率>
本発明において、放射線硬化層の弾性率は1.5GPa〜10GPaであることが好ましく、2GPa〜10GPaであることがより好ましい。
弾性率が1.5GPa以上であると、塗膜が粘着故障を生じることがないので好ましい。また、弾性率が10GPa以下であると、良好な塗膜強度が得られるので好ましい。
<放射線硬化層の平均粗さ>
本発明において、放射線硬化層のカットオフ値0.25nmにおける平均粗さ(Ra)は1〜3nmであることが好ましい。
平均粗さが1nm以上であると、塗布工程でのパスロールへの張り付き故障を生じることがないので好ましい。また、3nm以下であると、十分な磁性層の平滑性が得られるので好ましい。
II.磁性層
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に、強磁性粉末を結合剤中に分散させた磁性層を有する。
1.強磁性粉末
本発明の磁気記録媒体には、強磁性粉末として、長軸長が20〜50nmの針状強磁性体、板径10〜50nmの平板状磁性体、または直径10〜50nmの球状または楕円状磁性体を使用することが好ましい。以下、それぞれについて説明する。
(1)針状強磁性体
本発明の磁気記録媒体に使用される強磁性粉末として、長軸長が20〜50nmである針状強磁性体を使用することができる。針状強磁性体としては、針状であるコバルト含有強磁性酸化鉄又は強磁性合金粉末等の強磁性金属粉末が例示でき、BET比表面積(SBET)が好ましくは40〜80m2/g、より好ましくは50〜70m2/gである。結晶子サイズは好ましくは12〜25nm、より好ましくは13〜22nmであり、特に好ましくは14〜20nmである。長軸長は20〜50nmであるが、好ましくは20〜40nmである。
強磁性粉末としては、イットリウムを含むFe、Fe−Co、Fe−Ni、Co−Ni−Feが挙げられ、強磁性粉末中のイットリウム含有量は、鉄原子に対してイットリウム原子の比、Y/Feが0.5〜20原子%が好ましく、さらに好ましくは、5〜10原子%である。0.5原子%よりも少ないと強磁性粉末の高σS化できないために磁気特性が低下し、電磁変換特性が低下する。20原子%よりも大きいと鉄の含有量が少なくなるので磁気特性が低下し、電磁変換特性が低下する。さらに、鉄100原子%に対して20原子%以下の範囲内で、アルミニウム、ケイ素、硫黄、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、銅、亜鉛、モリブデン、ロジウム、パラジウム、錫、アンチモン、ホウ素、バリウム、タンタル、タングステン、レニウム、金、鉛、リン、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、テルル、ビスマス等を含むことができる。また、強磁性金属粉末が少量の水、水酸化物または酸化物を含むものなどであってもよい。
本発明に使用する、コバルト、イットリウムを導入した強磁性粉末の製造方法の一例を示す。
第一鉄塩とアルカリを混合した水性懸濁液に、酸化性気体を吹き込むことによって得られるオキシ水酸化鉄を出発原料とする例を挙げることができる。
このオキシ水酸化鉄の種類としては、α−FeOOHが好ましい。その製法としては、第一鉄塩を水酸化アルカリで中和してFe(OH)2の水性懸濁液とし、この懸濁液に酸化性ガスを吹き込んで針状のα−FeOOHとする第一の製法がある。一方、第一鉄塩を炭酸アルカリで中和してFeCO3の水性懸濁液とし、この懸濁液に酸化性気体を吹き込んで紡錘状のα−FeOOHとする第二の製法がある。このようなオキシ水酸化鉄は第一鉄塩水溶液とアルカリ水溶液とを反応させて水酸化第一鉄を含有する水溶液を得て、これを空気酸化等により酸化して得られたものであることが好ましい。この際、第一鉄塩水溶液にNi塩や、Ca塩、Ba塩、Sr塩等のアルカリ土類元素の塩、Cr塩、Zn塩などを共存させても良く、このような塩を適宜選択して用いることによって粒子形状(軸比)などを調製することができる。
第一鉄塩としては、塩化第一鉄、硫酸第一鉄等が好ましい。またアルカリとしては水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等が好ましい。また、共存させることができる塩としては、塩化ニッケル、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化クロム、塩化亜鉛等の塩化物が好ましい。
次いで、鉄にコバルトを導入する場合は、イットリウムを導入する前に、硫酸コバルト、塩化コバルト等のコバルト化合物の水溶液を前記のオキシ水酸化鉄のスラリーに撹拌混合する。コバルトを含有するオキシ水酸化鉄のスラリーを調製した後、このスラリーにイットリウムの化合物を含有する水溶液を添加し、撹拌混合することによって導入することができる。
本発明において、強磁性粉末には、イットリウム以外にもネオジム、サマリウム、プラセオジウム、ランタン等を導入することができる。これらは、塩化イットリウム、塩化ネオジム、塩化サマリウム、塩化プラセオジウム、塩化ランタン等の塩化物、硝酸ネオジム、硝酸ガドリニウム等の硝酸塩などを用いて導入することができ、これらは、二種以上を併用しても良い。
強磁性金属粉末の抗磁力(Hc)は、好ましくは159.2〜238.8kA/m(2,000〜3,000Oe)であり、さらに好ましくは167.2〜230.8kA/m(2,100〜2,900Oe)である。
また、飽和磁束密度は、好ましくは150〜300mT(1,500〜3,000G)であり、さらに好ましくは160〜290mT(1,600〜2,900G)である。また飽和磁化(σs)は、好ましくは100〜170A・m2/kg(100〜170emu/g)であり、さらに好ましくは110〜160A・m2/kg(110〜160emu/g)である。
磁性体自体のSFD(switching field distribution)は小さい方が好ましく、0.8以下であることが好ましい。SFDが0.8以下であると、電磁変換特性が良好で、出力が高く、また磁化反転がシャープでピークシフトが小さくなり、高密度デジタル磁気記録に好適である。Hc分布を小さくするためには、強磁性金属粉末においてはゲータイトの粒度分布を良くする、単分散α−Fe23を使用する、粒子間の焼結を防止するなどの方法がある。
(2)平板状磁性体
本発明で用いることのできる板径が10〜50nmである平板状磁性体としては六方晶フェライト粉末が好ましい。
六方晶フェライトとしてバリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等がある。具体的にはマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、さらに一部スピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられ、その他所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nb、Znなどの原子を含んでもかまわない。一般にはCo−Zn、Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、Sb−Zn−Co、Nb−Zn等の元素を添加した物を使用することができる。原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。
粒子サイズは六角板径で10〜50nmであることが好ましい。磁気抵抗ヘッドで再生する場合は、低ノイズにする必要があり、板径は40nm以下が好ましい。板径が上記範囲であると、熱揺らぎがなく安定な磁化が望める。また、ノイズも低くなるため高密度磁気記録に適する。
板状比(板径/板厚)は1〜15が好ましく、2〜7がより好ましい。上記範囲であると配向性が十分であり、粒子間のスタッキングが起こりにくくノイズが小さくなる。この粒子サイズ範囲のBET法による比表面積は10〜200m2/gを示す。比表面積は概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符合する。結晶子サイズは50〜450Å、好ましくは100〜350Åである。粒子板径・板厚の分布は通常狭いほど好ましい。数値化は困難であるが粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定する事で比較できる。分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すとσ/平均サイズ=0.1〜2.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。たとえば酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
磁性体で測定される抗磁力Hcは39.8〜398kA/m(500〜5,000Oe)程度まで作製できる。Hcは高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。通常63.7〜318.4kA/m(800〜4,000Oe)程度であるが、好ましくは119.4kA/m(1,500Oe)以上、278.6kA/m(3,500Oe)以下である。ヘッドの飽和磁化が1.4テスラを越える場合は、159.2kA/m(2,000Oe)以上にすることが好ましい。
Hcは粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。飽和磁化σsは40〜80A・m2/kg(40〜80emu/gである。σsは高い方が好ましいが微粒子になるほど小さくなる傾向がある。σs改良のためマグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合すること、含有元素の種類と添加量の選択等が良く知られている。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。
磁性体(磁性粉末)を分散する際に磁性体粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することも行われている。表面処理材は無機化合物、有機化合物が使用される。主な化合物としてはSi、Al、P等の酸化物または水酸化物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。量は磁性体に対して0.1〜10%である。磁性体のPHも分散に重要である。通常4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から6〜10程度が選択される。磁性体に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01〜2.0%が選ばれる。
六方晶フェライトの製法としては、(1)酸化バリウム・酸化鉄・鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得るガラス結晶化法。(2)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後100℃以上で液相加熱した後洗浄・乾燥・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る水熱反応法。(3)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1,100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る共沈法等があるが、本発明は製法を選ばない。
(3)球状または楕円状磁性体
球状または楕円状磁性体としては、Fe162を主相とする窒化鉄系の強磁性粉末が好ましい。Fe、N原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。Feに対するNの含有量は1.0〜20.0原子%が好ましい。
窒化鉄は球状または楕円状が好ましく、長軸径/短軸径の軸比は1〜2が好ましい。BET比表面積(SBET)が30〜100m2/gであることが好ましく、より好ましくは50〜70m2/gである。結晶子サイズは12〜25nmであることが好ましく、より好ましくは13〜22nmである。
飽和磁化σsは50〜200A・m2/kg(emu/g)が好ましい。さらに好ましくは70〜150A・m2/kg(emu/g)である。
2.結合剤
磁性層に用いる結合剤としてはポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどを共重合したアクリル樹脂、ニトロセルロースなどのセルロース樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルキラール樹脂などから単独あるいは複数の樹脂を混合して用いることができる。これらの中で好ましいのはポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、塩化ビニル樹脂である。
結合剤には強磁性粉末、非磁性粉体の分散性を向上させるためこれらの粉体表面に吸着する官能基(極性基)を持つことが好ましい。好ましい官能基としては−SO3M、−SO4M、−PO(OM)2、−OPO(OM)2、−COOM、>NSO3M、>NRSO3M、−NR12、−N+123-などがある。ここでMは水素又はNa、K等のアルカリ金属、Rはアルキレン基、R1、R2、R3はアルキル基又はヒドロキシアルキル基又は水素原子、XはCl、Br等のハロゲン原子である。結合剤中の官能基の量は10〜200μeq/gが好ましく、30〜120μeq/gがさらに好ましい。この範囲内にあると、良好な分散性が得られるので好ましい。
結合剤には吸着官能基のほかにイソシアネート硬化剤と反応して架橋構造を形成し塗膜強度を向上させるために−OH基などの活性水素を持つ官能基を付与することが好ましい。好ましい量は0.1〜2meq/gである。
結合剤の分子量は重量平均分子量で10,000〜200,000が好ましく、20,000〜100,000がさらに好ましい。この範囲内にあると、塗膜強度が十分であり、耐久性が良好であり、また分散性が向上するので好ましい。
好ましい結合剤であるポリウレタン樹脂は例えば「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治 編、1986年 日刊工業新聞社)に詳しく記載されているが、通常、長鎖ジオール、短鎖ジオール(鎖延長剤と呼ばれることもある)とジイソシアネート化合物の付加重合によって得られる。長鎖ジオールは分子量500〜5,000のポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエーテルエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリオレフィンジオールなどが用いられる。この長鎖ポリオールの種類によりポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリエーテルエステルウレタン、ポリカーボネートウレタンなどと呼ばれる。
ポリエステルジオールとしてはアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、などの脂肪族二塩基酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族二塩基酸とグリコールとの縮重合によって得られる。グリコール成分としてはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAなどがある。また、ポリエステルジオールにはこのほかに、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトンを開環重合したポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオールなども用いることができる。
ポリエステルジオールは耐加水分解性の観点で分岐側鎖をもつもの、芳香族、脂環族の原料から得られるものが好ましい。
ポリエーテルジオールとしてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールや、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールP、水素化ビスフェノールAなどの芳香族グリコールや脂環族ジオールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加重合したものなどがある。
これらの長鎖ジオールは複数の種類のものを併用、混合して用いることもできる。
短鎖ジオールとしては上記ポリエステルジオールのグリコール成分に例示したものと同じ化合物群の中から選ぶことができる。また3官能以上の多価アルコール例えばトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどを少量併用すると分岐構造のポリウレタン樹脂が得られ溶液粘度を低下させたり、ポリウレタンの末端のOH基を増やすことでイソシアネート系硬化剤との硬化性を高めることができる。
ジイソシアネート化合物としてはMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、2,4−TDI(トリレンジイソシアネート)、2,6−TDI、1,5−NDI(ナフタレンジイソシアネート)、TODI(トリジンジイソシアネート)、p−フェニレンジイソシアネート、XDI(キシリレンジイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、H6XDI(水素添加キシリレンジイソシアネート)、H12MDI(水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート)などの脂肪族、脂環族ジイソシアネートなどが用いられる。
ポリウレタン樹脂中の長鎖ジオール/短鎖ジオール/ジイソシアネートの好ましい組成は(80〜15重量%)/(5〜40重量%)/(15〜50重量%)である。
ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度は1〜5meq/gが好ましく、1.5〜4.5がさらに好ましい。この範囲より少ないと力学強度が小さく、多すぎると溶液粘度が高く分散性が低下する。
ポリウレタン樹脂のガラス転移温度は0〜200℃が好ましく、さらには40〜160℃である。この範囲より低いと耐久性が低下し、高すぎるとカレンダー成形性が低下し電磁変換特性が低下する。
ポリウレタン樹脂に前述した吸着官能基(極性基)を導入する方法としては官能基を長鎖ジオールのモノマーの一部に用いる方法、短鎖ジオールの一部に用いる方法やポリウレタンを重合した後、高分子反応で極性基を導入する方法などがある。
塩化ビニル樹脂としては塩化ビニルモノマーに種々のモノマーと共重合したものが用いられる。
共重合モノマーとしては酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどのアクリレート、メタクリレート類、アリルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、アリルプロピルエーテル、アリルブチルエーテルなどのアルキルアリルエーテル類、その他スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、エチレン、ブタジエン、アクリルアミド、さらに官能基をもつ共重合モノマーとしてビニルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、2−ヒドロキシプロピルアリルエーテル、3−ヒドロキシプロピルアリルエーテル、p−ビニルフェノール、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ホスホエチル(メタ)アクリレート、スルホエチル(メタ)アクリレート、p−スチレンスルホン酸、及びこれらのNa塩、K塩などが用いられる。
塩化ビニル系樹脂中の塩化ビニルモノマーの組成は60〜95重量%が好ましい。上記範囲内にあると、良好な力学強度が得られると共に、溶剤溶解性が良好で、好適な溶液粘度のために良好な分散性が得られるので好ましい。
吸着官能基(極性基)、ポリイソシアネート系硬化剤との硬化性を高めるための官能基の好ましい量は前述したとおりである。これらの官能基の導入方法は上記の官能基含有モノマーを共重合しても良いし、塩化ビニル樹脂を共重合した後、高分子反応で官能基を導入しても良い。
好ましい重合度は200〜600、さらに好ましくは240〜450である。この範囲内にあると、良好な力学強度が得られると共に、好適な溶液粘度のために良好な分散性が得られるので好ましい。
本発明において、結合剤を架橋、硬化させ塗膜の力学強度や耐熱性高めるために硬化剤を用いることができる。好ましい硬化剤としてポリイソシアネート化合物がある。ポリイソシアネート化合物は3官能以上のポリイソシアネートが好ましい。
具体的にはトリメチロールプロパン(TMP)にTDI(トリレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにIPDI(イソホロンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにXDI(キシリレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、などアダクト型ポリイソシアネート化合物。TDIの縮合イソシアヌレート型3量体、TDIの縮合イソシアヌレート5量体、TDIの縮合イソシアヌレート7量体、及びこれらの混合物。HDIのイソシアヌレート型縮合物、IPDIのイソシアヌレート型縮合物。さらにクルードMDIなどがある。
これらの中で好ましいのはTMPにTDIを3モル付加した化合物、TDIのイソシアヌレート型3量体などである。
イソシアネート系硬化剤以外に電子線あるいは紫外線などの放射線硬化性の硬化剤を用いても良い。この場合放射線硬化性官能基としてアクリロイル基またはメタクリロイル基を分子内に2個以上、好ましくは3個以上有する硬化剤を用いることができる。例えばTMP(トリメチロールプロパン)のトリアクリレート、ペンタエリスリトールのテトラアクリレート、ウレタンアクリレートオリゴマーなどがある。この場合、硬化剤のほかに結合剤にも(メタ)アクリロイル基を導入するのが好ましい。紫外線硬化の場合はこのほかに光増感剤が併用される。
硬化剤は結合剤100重量部に対して0〜80重量部添加するのが好ましい。上記範囲内にあると分散性が良好であるので好ましい。
結合剤の添加量は磁性層の場合は強磁性粉末100重量部に対して、5〜30重量部が好ましく、10〜20重量部がさらに好ましい。
本発明における磁性層には、必要に応じて添加剤を加えることができる。添加剤としては、研磨剤、潤滑剤、分散剤・分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤、溶剤、カーボンブラックなどを挙げることができる。
これら添加剤としては、例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基を持つシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸基、フェネチルホスホン酸、α−メチルベンジルホスホン酸、1−メチル−1−フェネチルホスホン酸、ジフェニルメチルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ベンジルフェニルホスホン酸、α−クミルホスホン酸、トルイルホスホン酸、キシリルホスホン酸、エチルフェニルホスホン酸、クメニルホスホン酸、プロピルフェニルホスホン酸、ブチルフェニルホスホン酸、ヘプチルフェニルホスホン酸、オクチルフェニルホスホン酸、ノニルフェニルホスホン酸等の芳香族環含有有機ホスホン酸およびそのアルカリ金属塩、オクチルホスホン酸、2−エチルヘキシルホスホン酸、イソオクチルホスホン酸、イソノニルホスホン酸、イソデシルホスホン酸、イソウンデシルホスホン酸、イソドデシルホスホン酸、イソヘキサデシルホスホン酸、イソオクタデシルホスホン酸、イソエイコシルホスホン酸等のアルキルホスホン酸およびそのアルカリ金属塩、リン酸フェニル、リン酸ベンジル、リン酸フェネチル、リン酸α−メチルベンジル、リン酸1−メチル−1−フェネチル、リン酸ジフェニルメチル、リン酸ビフェニル、リン酸ベンジルフェニル、リン酸α−クミル、リン酸トルイル、リン酸キシリル、リン酸エチルフェニル、リン酸クメニル、リン酸プロピルフェニル、リン酸ブチルフェニル、リン酸ヘプチルフェニル、リン酸オクチルフェニル、リン酸ノニルフェニル等の芳香族リン酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、リン酸オクチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸イソオクチル、リン酸イソノニル、リン酸イソデシル、リン酸イソウンデシル、リン酸イソドデシル、リン酸イソヘキサデシル、リン酸イソオクタデシル、リン酸イソエイコシル等のリン酸アルキルエステルおよびそのアルカリ金属塩、アルキルスルホン酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、フッ素含有アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸ブチル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、エルカ酸等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい一塩基性脂肪酸およびこれらの金属塩、またはステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ラウリル酸ブチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタンジステアレート、アンヒドロソルビタントリステアレート等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい一塩基性脂肪酸と炭素数2〜22の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい1〜6価アルコール、炭素数12〜22の不飽和結合を含んでも分岐していてもよいアルコキシアルコールまたはアルキレンオキサイド重合物のモノアルキルエーテルのいずれか一つとからなるモノ脂肪酸エステル、ジ脂肪酸エステルまたは多価脂肪酸エステル、炭素数2〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミンなどが使用できる。また、上記炭化水素基以外にもニトロ基およびF、Cl、Br、CF3、CCl3、CBr3等の含ハロゲン炭化水素等炭化水素基以外の基が置換したアルキル基、アリール基、アラルキル基を持つものでもよい。
また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフエノールエチレンオキサイド付加体等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウムまたはスルホニウム類等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル基等の酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸またはリン酸エステル類、アルキルベタイン型等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。
上記分散剤、潤滑剤等は必ずしも純粋ではなく主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれても構わない。これらの不純分は30重量%以下が好ましく、さらに好ましくは10重量%以下である。
これらの添加物の具体例としては、例えば、日本油脂社製:NAA−102、ヒマシ油硬化脂肪酸、NAA−42、カチオンSA、ナイミーンL−201、ノニオンE−208、アノンBF、アノンLG、竹本油脂社製:FAL−205、FAL−123、新日本理化社製:エヌジエルブOL、信越化学社製:TA−3、ライオンアーマー社製:アーマイドP、ライオン社製:デュオミンTDO、日清製油社製:BA−41G、三洋化成社製:プロフアン2012E、ニューポールPE61、イオネットMS−400等が挙げられる。
本発明において、磁性層で用いられる有機溶剤は、公知のものが使用できる。有機溶剤は、任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン等のグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等を使用することができる。
これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。本発明で用いる有機溶媒は磁性層と非磁性層でその種類は同じであることが好ましい。その添加量は変えてもかまわない。非磁性層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジオキサンなど)を用い塗布の安定性を上げる、具体的には上層溶剤組成の算術平均値が非磁性層溶剤組成の算術平均値を下回らないことが肝要である。分散性を向上させるためにはある程度極性が強い方が好ましく、溶剤組成の内、誘電率が15以上の溶剤が50%以上含まれることが好ましい。また、溶解パラメータは8〜11であることが好ましい。
本発明において磁性層で用いられるこれらの分散剤、潤滑剤、界面活性剤は磁性層および後述する非磁性層でその種類、量を必要に応じ使い分けることができる。例えば、無論ここに示した例のみに限られるものではないが、分散剤は極性基で吸着もしくは結合する性質を有しており、磁性層においては主に強磁性粉末の表面に、また後述する非磁性層においては主に非磁性粉末の表面に前記の極性基で吸着もしくは結合し、一度吸着した有機リン化合物は金属あるいは金属化合物等の表面から脱着しがたいと推察される。したがって、強磁性粉末表面あるいは後述する非磁性粉末表面は、アルキル基、芳香族基等で被覆されたような状態になるので、強磁性粉末あるいは非磁性粉末の結合剤樹脂成分に対する親和性が向上し、さらに強磁性粉末あるいは非磁性粉末の分散安定性も改善される。また、潤滑剤としては遊離の状態で存在するため非磁性層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、沸点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を非磁性層で多くして潤滑効果を向上させるなどが考えられる。また本発明で用いられる添加剤のすべてまたはその一部は、磁性層あるいは非磁性層用塗布液の製造時のいずれの工程で添加してもよい。例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。
また、本発明における磁性層には、必要に応じてカーボンブラックを添加することができる。カーボンブラックとしては、上記の放射線硬化層で使用したものと同様のものを使用することができる。
カーボンブラックは単独または組み合せで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合、強磁性粉末の重量に対して0.1〜30重量%で用いることが好ましい。カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。したがって本発明で使用されるこれらのカーボンブラックは、磁性層でその種類、量、組み合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性を基に目的に応じて使い分けることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきものである。
III.非磁性層
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に結合剤および非磁性粉末を含む非磁性層を有していてもよい。非磁性層に使用できる非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、非磁性層には非磁性粉末と共に、必要に応じてカーボンブラックを混合してもよい。
1.非磁性粉末
次に非磁性層に関する詳細な内容について説明する。
本発明の磁気記録媒体は、放射線硬化層を設けた非磁性支持体上に結合剤及び非磁性粉末を含む非磁性層(下層)を有していてもよい。
非磁性層には、下層が実質的に非磁性である範囲で磁性粉末を使用してもよいが、非磁性粉末を用いることが好ましい。
非磁性層に使用できる非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物などが挙げられる。
具体的には二酸化チタン等のチタン酸化物、酸化セリウム、酸化スズ、酸化タングステン、ZnO、ZrO2、SiO2、Cr23、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、α−酸化鉄、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、2硫化モリブデン、酸化銅、MgCO3、CaCO3、BaCO3、SrCO3、BaSO4、炭化珪素、炭化チタンなどが単独又は2種類以上を組み合わせて使用される。好ましいのは、α−酸化鉄、酸化チタンである。
非磁性粉末の形状は、針状、球状、多面体状、板状のいずれでもあってもよい。
非磁性粉末の結晶子サイズは、4nm〜1μmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。結晶子サイズが4nm〜1μmの範囲であれば、分散が困難になることもなく、また好適な表面粗さを有するため好ましい。
これら非磁性粉末の平均粒径は、5nm〜2μmが好ましいが、必要に応じて平均粒径の異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くしたりして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましい非磁性粉末の平均粒径は、10〜200nmである。5nm〜2μmの範囲であれば、分散も良好で、かつ好適な表面粗さを有するため好ましい。
非磁性粉末の比表面積は、好ましくは1〜100m2/gであり、より好ましくは5〜70m2/gであり、さらに好ましくは10〜65m2/gである。比表面積が1〜100m2/gの範囲内にあれば、好適な表面粗さを有し、かつ、所望の結合剤量で分散できるため好ましい。
ジブチルフタレート(DBP)を用いた吸油量は、好ましくは5〜100ml/100g、より好ましくは10〜80ml/100g、さらに好ましくは20〜60ml/100gである。
比重は好ましくは1〜12、より好ましくは3〜6である。タップ密度は好ましくは0.05〜2g/ml、より好ましくは0.2〜1.5g/mlである。タップ密度が0.05〜2g/mlの範囲であれば、飛散する粒子が少なく操作が容易であり、また装置にも固着しにくくなる傾向がある。
非磁性粉末のpHは2〜11であることが好ましいが、pHは6〜9の間が特に好ましい。pHが2〜11の範囲にあれば、高温、高湿下又は脂肪酸の遊離により摩擦係数が大きくなることはない。
非磁性粉末の含水率は、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.2〜3重量%、さらに好ましくは0.3〜1.5重量%である。含水量が0.1〜5重量%の範囲であれば、分散も良好で、分散後の塗料粘度も安定するため好ましい。
強熱減量は、20重量%以下であることが好ましく、強熱減量が小さいものが好ましい。
また、非磁性粉末が無機粉末である場合には、モース硬度は4〜10のものが好ましい。モース硬度が4〜10の範囲であれば耐久性を確保することができる。非磁性粉末のステアリン酸吸着量は、1〜20μmol/m2であり、さらに好ましくは2〜15μmol/m2である。
非磁性粉末の25℃での水への湿潤熱は、20〜60μJ/cm2(200〜600erg/cm2)の範囲にあることが好ましい。また、この湿潤熱の範囲にある溶媒を使用することができる。
100〜400℃での表面の水分子の量は1〜10個/100Åが適当である。水中での等電点のpHは、3〜9の間にあることが好ましい。
これらの非磁性粉末の表面にはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23、ZnOで表面処理することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2であるが、さらに好ましいのはAl23、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用してもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
本発明において非磁性層に用いられる非磁性粉末の具体的な例としては、例えば、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−100、ZA−G1、戸田工業社製DPN−250、DPN−250BX、DPN−245、DPN−270BX、DPB−550BX、DPN−550RX 石原産業製酸化チタンTTO−51B、TTO−55A、TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100、MJ−7、α−酸化鉄E270、E271、E300、チタン工業製STT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、テイカ製MT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、T−600B、T−100F、T−500HDなどが挙げられる。堺化学製FINEX−25、BF−1、BF−10、BF−20、ST−M、同和鉱業製DEFIC−Y、DEFIC−R、日本アエロジル製AS2BM、TiO2P25、宇部興産製100A、500A、チタン工業製Y−LOP及びそれを焼成したものが挙げられる。特に好ましい非磁性粉末は二酸化チタンとα−酸化鉄である。
非磁性層には非磁性粉末と共に、カーボンブラックを混合し表面電気抵抗を下げ、光透過率を小さくすると共に、所望のμビッカース硬度を得ることができる。非磁性層のμビッカース硬度は、好ましくは25〜60kg/mm2、より好ましくはヘッド当りを調整するために、30〜50kg/mm2であり、薄膜硬度計(日本電気製 HMA−400)を用いて、稜角80度、先端半径0.1μmのダイヤモンド製三角錐針を圧子先端に用いて測定することができる。光透過率は一般に波長900nm程度の赤外線の吸収が3%以下、たとえばVHS用磁気テープでは0.8%以下であることが規格化されている。このためにはゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
本発明において非磁性層に用いられるカーボンブラックの比表面積は好ましくは100〜500m2/g、より好ましくは150〜400m2/g、DBP吸油量は好ましくは20〜400ml/100g、より好ましくは30〜200ml/100gである。カーボンブラックの粒子径は好ましくは5〜80nm、より好ましく10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。カーボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。
本発明において非磁性層に用いることができるカーボンブラックの具体的な例としては、キャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、880、700、VULCAN XC−72、三菱化成工業社製#3050B、#3150B、#3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B、#970B、#850B、MA−600、コロンビアカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN8800、8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、1500、1255、1250、アクゾー社製ケッチェンブラックECなどが挙げられる。
また、カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは上記無機質粉末に対して50重量%を越えない範囲、非磁性層総重量の40%を越えない範囲で使用することが好ましい。これらのカーボンブラックは単独、または組み合せで使用することができる。非磁性層で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」カーボンブラック協会編、を参考にすることができる。
また非磁性層には目的に応じて有機質粉末を添加することもできる。このような有機質粉末としては、例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。その製法は、特開昭62−18564号公報、特開昭60−255827号公報に記されているようなものが使用できる。
IV.非磁性支持体
本発明に用いることのできる非磁性支持体としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドが好ましい。
これらの支持体はあらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理などを行ってもよい。また、本発明に用いることのできる非磁性支持体の表面粗さはカットオフ値0.25mmにおいて中心平均粗さRaが3〜10nmであることが好ましい。
V.バックコート層
一般に、コンピュータデータ記録用の磁気テープは、ビデオテープ、オーディオテープに比較して繰り返し走行性が強く要求される。このような高い保存安定性を維持させるために、非磁性支持体の非磁性層および磁性層が設けられた面とは反対の面にバックコート層を設けることもできる。バックコート層用塗料は、研磨剤、帯電防止剤などの粒子成分と結合剤とを有機溶媒に分散させる。粒状成分として各種の無機顔料やカーボンブラックを使用することができる。また、結合剤としては、例えば、ニトロセルロース、フェノキシ樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン等の樹脂を単独またはこれらを混合して使用することができる。
VI.層構成
本発明で用いられる磁気記録媒体の構成において、放射線硬化層の厚さは、上述のとおり0.1〜1.0μmの範囲が好ましく、0.3〜0.7μmがさらに好ましい。また非磁性支持体の好ましい厚さは、3〜80μmである。また、非磁性支持体の非磁性層および磁性層が設けられた面とは反対側の面に設けられたバックコート層の厚さは、好ましくは0.1〜1.0μm、より好ましくは0.2〜0.8μmである。
磁性層の厚さは、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化されるものであるが、好ましくは0.01〜0.12μmであり、さらに好ましくは0.02〜0.10μmである。また、磁性層の厚さ変動率は±50%以内が好ましく、さらに好ましくは±40%以内である。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
本発明において非磁性層の厚さは、好ましくは0.2〜3.0μmであり、0.3〜2.5μmであることがより好ましく、0.4〜2.0μmであることがさらに好ましい。なお、本発明の磁気記録媒体の非磁性層は、実質的に非磁性であればその効果を発揮するものであり、例えば不純物として、あるいは意図的に少量の磁性体を含んでいても、本発明の効果を示すものであり、本発明の磁気記録媒体と実質的に同一の構成とみなすことができる。なお、実質的に同一とは、非磁性層の残留磁束密度が10T・m(100G)以下または抗磁力が7.96kA/m(100 Oe)以下であることを示し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力を持たないことを意味する。
VII.製造方法
本発明で用いられる磁気記録媒体の磁性層塗布液を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられる強磁性六方晶フェライト粉末または強磁性金属粉末、非磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨材、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。ニーダを用いる場合は磁性粉末または非磁性粉末と結合剤のすべてまたはその一部(但し、全結合剤の30%以上が好ましい)および強磁性粉末100重量部に対し15〜500重量部の範囲で混練処理される。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層用液および非磁性層用液を分散させるには、ガラスビーズを用いることができる。このようなガラスビーズは、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、例えば、走行下にある非磁性支持体の表面に磁性層用塗布液を所定の膜厚となるように塗布する。ここで複数の磁性層用塗布液を逐次あるいは同時に重層塗布してもよく、下層の磁性層用塗布液と上層の磁性層用塗布液とを逐次あるいは同時に重層塗布してもよい。上記磁性層用塗布液もしくは下層の磁性層用塗布液を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。これらについては例えば(株)総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。
磁性層塗布液の塗布層は、磁気テープの場合、磁性層塗布液の塗布層中に含まれる強磁性粉末にコバルト磁石やソレノイドを用いて長手方向に磁場配向処理を施す。ディスクの場合、配向装置を用いず無配向でも十分に等方的な配向性が得られることもあるが、コバルト磁石を斜めに交互に配置すること、ソレノイドで交流磁場を印加するなど公知のランダム配向装置を用いることが好ましい。等方的な配向とは強磁性金属粉末の場合、一般的には面内2次元ランダムが好ましいが、垂直成分をもたせて3次元ランダムとすることもできる。六方晶フェライトの場合は一般的に面内および垂直方向の3次元ランダムになりやすいが、面内2次元ランダムとすることも可能である。また異極対向磁石など公知の方法を用い、垂直配向とすることで円周方向に等方的な磁気特性を付与することもできる。特に高密度記録を行う場合は垂直配向が好ましい。また、スピンコートを用いて円周配向としてもよい。
乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できるようにすることが好ましく、塗布速度は20〜1,000m/分、乾燥風の温度は60℃以上が好ましい。また磁石ゾーンに入る前に適度の予備乾燥を行うこともできる。
乾燥された後、塗布層に表面平滑化処理を施す。表面平滑化処理には、例えばスーパーカレンダーロールなどが利用される。表面平滑化処理を行うことにより、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し磁性層中の強磁性粉末の充填率が向上するので、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。
カレンダー処理ロールとしてはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用する。また金属ロールで処理することもできる。本発明の磁気記録媒体は、表面の中心面平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて好ましくは0.1〜4.0nm、より好ましくは0.5〜3.0nmの範囲という極めて優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。その方法として、例えば上述したように特定の強磁性粉末と結合剤を選んで形成した磁性層を上記カレンダー処理を施すことにより行われる。カレンダー処理条件としては、カレンダーロールの温度は好ましくは60〜100℃の範囲、より好ましくは70〜100℃の範囲、特に好ましくは80〜100℃の範囲であり、圧力は好ましくは100〜500kg/cmの範囲、好ましくは200〜450kg/cmの範囲であり、特に好ましくは300〜400kg/cmの範囲の条件で作動させることによって行われることが好ましい。
熱収縮率低減手段として、低テンションでハンドリングしながらウエッブ状で熱処理する方法と、バルクまたはカセットに組み込んだ状態などテープが積層した形態で熱処理する方法(サーモ処理)があり、両者が利用できる。前者は、バックコート層表面の突起写りの影響が少ないが、熱収縮率を大きく下げることができない。一方、後者のサーモ処理は、熱収縮率を大幅に改善できるが、バックコート層表面の突起写りの影響を強く受けると、磁性層が面荒れし、出力低下およびノイズ増加を引き起こす。特に、サーモ処理を伴う磁気記録媒体で、高出力、低ノイズの磁気記録媒体を供給することができる。得られた磁気記録媒体は、裁断機、打抜機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。
VIII.物理特性
本発明に用いられる磁気記録媒体の磁性層の飽和磁束密度は、100〜300T・m(1,000〜3,000G)であることが好ましい。また磁性層の抗磁力(Hr)は、143.3〜318.4kA/m(1,800〜4,000Oe)であることが好ましいが、より好ましくは159.2〜278.6kA/m(2,000〜3,500Oe)である。抗磁力の分布は狭い方が好ましく、SFDおよびSFDrは好ましくは0.6以下、さらに好ましくは0.2以下である。
本発明で用いられる磁気記録媒体のヘッドに対する摩擦係数は、温度−10〜40℃、湿度0〜95%の範囲において好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.3以下である。また、帯電位は−500〜+500V以内が好ましい。磁性層の0.5%伸びでの弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜19.6GPa(100〜2,000kg/mm2)、破断強度は、好ましくは98〜686MPa(10〜70kg/mm2)、磁気記録媒体の弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜14.7GPa(100〜1,500kg/mm2)、残留のびは、好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は、好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.1%以下である。
磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50〜180℃が好ましく、非磁性層のそれは0〜180℃が好ましい。損失弾性率は1×107〜8×108Pa(1×108〜8×109dyne/cm2)の範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が0.2以下であると粘着故障が発生し難いので好ましい。これらの熱特性や機械特性は媒体の面内各方向において10%以内でほぼ等しいことが好ましい。
磁性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは100mg/m2以下、さらに好ましくは10mg/m2以下である。塗布層が有する空隙率は非磁性層、磁性層とも好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは20容量%以下である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が保存安定性は好ましいことが多い。
磁性層のTOPO−3Dのmirau法で測定した中心面表面粗さRaは、好ましくは4.0nm以下であり、より好ましくは3.0nm以下であり、さらに好ましくは2.5nm以下である。磁性層の最大高さSRmaxは、0.5μm以下、十点平均粗さSRzは0.3μm以下、中心面山高さSRpは0.3μm以下、中心面谷深さSRvは0.3μm以下、中心面面積率SSrは20〜80%、平均波長Sλaは5〜300μmが好ましい。磁性層の表面突起は0.01〜1μmの大きさのものを100μm2当たり0〜2,000個の範囲で任意に設定することが可能であり、これにより電磁変換特性、摩擦係数を最適化することが好ましい。これらは支持体のフィラーによる表面性のコントロールや磁性層に添加する粉末の粒径と量、カレンダー処理のロール表面形状などで容易にコントロールすることができる。カールは±3mm以内とすることが好ましい。
本発明の磁気記録媒体における非磁性層と磁性層と間では、目的に応じ非磁性層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができるのは容易に推定されることである。例えば、磁性層の弾性率を高くし保存安定性を向上させると同時に非磁性層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りをよくするなどである。
本発明の磁気記録媒体は、磁気記録媒体に磁気記録された信号を再生するヘッドについては特に制限はないが、MRヘッドのために用いることが好ましい。本発明の磁気記録媒体の再生にMRヘッドを用いる場合、MRヘッドには特に制限はなく、例えばGMRヘッドやTMRヘッドを用いることもできる。また、磁気記録に用いるヘッドは特に制限されないが、飽和磁化量が好ましくは1.0T以上であり、1.5T以上であることがより好ましい。
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、ここに示す成分、割合、操作、順序等は本発明の精神から逸脱しない範囲で変更し得るものであり、下記の実施例に制限されるべきものではない。また、実施例中の「部」は、特に示さない限り重量部を示す。
(実施例1)
<放射線硬化層用塗布液の調製>
表1に示す放射線硬化性化合物、及び、表1に示す無機粉体(シクロヘキサノンゾル(固形分15重量%))を、全体の固形分濃度が20重量%となるようにシクロヘキサノンで希釈し、20分間撹拌したものを平均孔径0.1μmのフィルターで濾過し、放射線硬化層用塗布液を調製した。
ここで無機粉体は、放射線硬化性化合物及び無機粉体の総容量に対して含有量が40体積%(40vol%と同義。)となるように添加した。
<磁性塗料の調液>
強磁性合金粉末(組成:Fe 100原子%に対して、Co 20原子%、Al 9原子%、Y 6原子%、Hc 175kA/m、結晶子サイズ 11nm、BET比表面積(SBET) 70m/g、長軸長 45nm、σs 111emu/g)100部をオープンニーダーで10分間粉砕し、次いで
ポリウレタン樹脂溶液(SONa基70μeq/g含有ポリエステルポリウレタン Tg=100℃ Mw7万) 15部(固形分)
で60分間混練し、次いで
研磨剤(Al粒子サイズ0.3μm) 2部、
カーボンブラック(粒子サイズ 40μm) 2部、
メチルエチルケトン/トルエン=1/1 200部
を加えてサンドミルで360分間分散した。これに
ブチルステアレート 2部、
ステアリン酸 1部、
シクロヘキサノン 50部
を加え、さらに20分間撹拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性塗料を調製した。
<非磁性塗料の調液>
α−Fe(平均粒径0.15μm、SBET52m/g、表面処理Al、SiO、pH6.5〜8.0) 85部
をオープンニーダーで10分間粉砕し、次いで
塩化ビニル/酢酸ビニル/グリシジルメタクリレート=86/9/5(重量比)の共重合体にヒドロキシエチルスルフォネートナトリウム塩を付加した化合物(SONa=6*10−5eq/g,エポキシ=1*10−3eq/g,Mw 30,000)
7.5部
及びポリウレタン樹脂溶液(SONa基70μeq/g含有ポリエステルポリウレタン Tg=100℃ Mw7万) 10部(固形分)、
シクロヘキサノン 60部
で60分間混練し、次いで
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=6/4 200部
を加えてサンドミルで120分間分散した。これに
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
メチルエチルケトン 50部
を加え、さらに20分間撹拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性塗料を調製した。
<磁気記録媒体の作製>
放射線硬化層用塗布液を乾燥後の厚さが0.5μmになるようにコイルバーを用いて厚さ7μm、中心平均表面粗さRa3.1nmのポリエチレンテレフタレート支持体の表面に塗布したのち乾燥させ、塗膜表面に加速電圧120KVの電子線を吸収線量が20KGy(キログレイ)になるように照射し硬化させた。
その後、放射線硬化層の上に非磁性塗料を、さらにその上に磁性塗料を乾燥後の厚みがそれぞれ0.5μm、0.1μmになるように、リバースロールを用いて同時重層塗布した。磁性塗料が未乾燥の状態で5,000ガウスのCo磁石と4,000ガウスのソレノイド磁石で磁場配向を行ない、溶剤を乾燥したものを金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロールの組み合せによるカレンダー処理を(速度100m/min、線圧300kg/cm、温度90゜C)で行なった後1/2インチ幅にスリットした。
<測定方法>
(1)平滑性
磁性層表面をデジタルオプティカルプロフィーメーターを用い光干渉法によりカットオフ0.25mmの条件で250μ×250μ面積における中心平均粗さをRaとした。結果を表1に示す。
(2)電磁変換特性
記録ヘッド(MIGギャップ0.15μm、1.8T)と再生用MRヘッドをドラムテスターにとりつけて測定した。ヘッドとメディアの相対速度1〜3m/min、面記録密度0.57Gbit/インチで測定した時の再生出力を測定し比較例1を0dBとした相対値で示した。結果を表1に示す。
(3)カッピング
放射線硬化層用塗布液を支持体上に塗布・放射線硬化処理後に、磁性層を塗布し、長さ50mm、幅12.65mmのテープ状に切断し、放射線硬化層及び磁性層を塗布した面を上面にして水平な平面に静置した。
テープが反り返る程度について、テープの短辺の断面に垂直な方向から見て、テープの短辺の両末端がテープ短辺の中央と比較して上方に浮き上がった場合(すなわちテープが凹状の場合)をプラス、テープ短辺の中央と比較して両末端が下方に下がった場合(すなわちテープが凸状の場合)をマイナスとし、浮き上がり又は下がりの程度をmmで示した。結果を表1に示す。
以下にカッピングがマイナス値の場合における数値の算出方法について、図1を参照して説明する。
図1は、テープ断片の長手方向に平行に見た図である。カッピングがマイナス値の場合とは、適当な長さのテープ断片1を長手方向に直角に切断して採取し、平面にバック面2を下に向けてテンションフリーで平面3に置いた時にテープ幅方向の端部4、5が接触するが、バック面は接触しないでテープ断片が樋状となる状態、すなわちテープが凸状の場合をいう。この状態でスライドグラスをテープ断片にかぶせバック面を平面に接触させた時のテープ幅W1とスライドグラスを除去した時のテープ幅W2から次式の近似式にて求められる値にマイナスをつける。
カッピング=(W2/2)tan(S×1/2)
(ただし、S=10×{1−(1.2W2/W1−0.2)1/2})
なお、測定は2回行い、上記値の平均値を少数第2位まで求めた。
カッピングがプラス値の場合は、バック面を上にして同様の評価を行い、近似式にて求められる値にマイナスはつけない。
(4)摺動エッジダメージ
テープを温度40℃、湿度10%環境下で磁性層面をAlTiC製の円柱棒に接触させて荷重100g(T1)をかけ、2m/secの摺動速度で繰り返し50,000パスまで摺動を行ったあとのテープエッジを光学顕微鏡で観察し以下のランクで評価した。結果を表1に示す。
優秀:エッジダメージなし。
良好:エッジダメージはあるが放射線硬化層の脱落はない。
不良:放射線硬化層の脱落が観察された。
(実施例2〜19、比較例1〜15)
放射線硬化性化合物の平均分子量及び種類、並びに、無機粉体の種類、平均粒径、使用量及び表面処理に用いた化合物等を、表1及び表2に記載したものとした以外は実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を作製し、平滑性、電磁変換特性及び摺動エッジダメージを測定した。実施例2〜19の測定結果を表1に、比較例1〜15の測定結果を表2に示す。
Figure 2009054198
Figure 2009054198
表1及び表2中の略号は以下の通りである。
Hex−TMS:ヘキシルトリメトキシシラン
De−TMS:デシルトリメトキシシラン
S−TMS:ステアリルトリメトキシシラン
Ph−TMS:フェニルトリメトキシシラン
Acr−TMS:アクリロイルオキシトリメトキシシラン
Hex−TES:ヘキシルトリエトキシシラン
Hex−TPS:ヘキシルトリプロポキシシラン
また、表1及び表2中の放射線硬化性化合物FEBM−023〜027及び031は下記に示す通りである。
Figure 2009054198
<発明の効果>
(1)磁性層表面が平滑にでき、カッピングを抑制できたので電磁変換特性が向上した。
(2)繰り返し摺動による耐久性が向上した。
本発明におけるカッピング測定方法を示す概略図である。
符号の説明
1 テープ断片
2 バック面
3 平面
4、5 テープ幅方向の端部

Claims (4)

  1. 非磁性支持体上に、放射線硬化性化合物及び無機粉体を含む層を放射線照射によって硬化させた放射線硬化層と、強磁性粉末を結合剤中に分散させた磁性層とを、この順に有する磁気記録媒体であって、
    前記放射線硬化性化合物は、カーボネート結合を有する単量体単位を全単量体単位の50〜100重量%含む分子量1,000〜10,000であるポリカーボネートポリ(メタ)アクリレートであり、
    前記無機粉体は、式(1)に示す化合物を用いて表面処理された平均粒径5〜50nmの無機粉体であり、
    前記放射線硬化層中の前記無機粉体の含有量が、放射線硬化層全体積の25〜65体積%であることを特徴とする
    磁気記録媒体。
    −Si−Y4−k (1)
    式(1)において、Xはそれぞれ独立に炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基及び(メタ)アクリロキシ基よりなる群から選ばれた基であり、Yはそれぞれ独立に炭素数1〜3の低級アルコキシ基であり、kは1〜3の整数である。
  2. 前記ポリカーボネートポリ(メタ)アクリレートが式(2)に示す化合物である請求項1に記載の磁気記録媒体。
    Figure 2009054198
    式(2)において、Zはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、n+1個のRはそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキレン基又は炭素数3〜28の環状構造を有するアルキレン基を示し、nは式(2)の化合物の分子量が1,000〜10,000となる任意の整数を示す。
  3. 前記式(2)において、n+1個のRが、それぞれ独立にヘキサメチレン基又はパラシクロヘキサンジメチレン基である請求項2に記載の磁気記録媒体。
  4. 前記放射線硬化層と前記磁性層との間に、非磁性粉末を結合剤中に分散させた非磁性層を有する請求項1〜3いずれか1つに記載の磁気記録媒体。
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