JP2009047295A - 動力伝達チェーンおよび動力伝達装置 - Google Patents

動力伝達チェーンおよび動力伝達装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 ピンの接触位置ランダムと同等の効果をピン端面形状を変更せずに得ることを可能とし、これにより、加工および組立てが容易でかつ騒音を低減した動力伝達チェーンおよび動力伝達装置を提供する。
【解決手段】 複数のリンク11A,11B,11Cは、前後挿通部12,13が基準位置に設けられた第1のリンク11Aと、前後挿通部22,23が基準位置からチェーン径方向にオフセットされた第2のリンク11B,11Cとを含んでいる。
【選択図】 図3

Description

この発明は、動力伝達チェーン、さらに詳しくは、自動車等の無段変速機(CVT)に好適な動力伝達チェーンおよびこれを用いた動力伝達装置に関する。
自動車用無段変速機として、図5に示すように、固定シーブ(2a)および可動シーブ(2b)を有しエンジン側に設けられたドライブプーリ(2)と、固定シーブ(3b)および可動シーブ(3a)を有し駆動輪側に設けられたドリブンプーリ(3)と、両者間に架け渡された無端状動力伝達チェーン(1)とからなり、油圧アクチュエータによって可動シーブ(2b)(3a)を固定シーブ(2a)(3b)に対して接近・離隔させることにより、油圧でチェーン(1)をクランプし、このクランプ力によりプーリ(2)(3)とチェーン(1)との間に接触荷重を生じさせ、この接触部の摩擦力によりトルクを伝達するものが知られている。
動力伝達チェーンとしては、従来、ピンが挿通される前後挿通部を有する複数のリンクと、一のリンクの前挿通部と他のリンクの後挿通部とが対応するようにチェーン幅方向に並ぶリンク同士を長さ方向に屈曲可能に連結する複数の第1ピンおよび複数の第2ピンとを備え、一のリンクの前挿通部に固定されかつ他のリンクの後挿通部に移動可能に嵌め入れられた第1ピンと一のリンクの前挿通部に移動可能に嵌め入れられかつ他のリンクの後挿通部に固定された第2ピンとが相対的に転がり接触移動することにより、リンク同士の長さ方向の屈曲が可能とされているものが知られている。
この種の動力伝達チェーンでは、騒音低減が課題となっており、特許文献1には、ピン端面形状を複数種類として、プーリとの接触位置が異なるピンをランダムに配列することが提案されている。
特開2004−301257号公報
上記特許文献1の動力伝達チェーンに提案されているように、ピン端面形状を複数種類とする場合、騒音を低減することができるが、ピン端面形状が異なるピン同士を区別しにくいため、組立ての手間が増加することになる。また、ピン端面形状を形成するには、高度な加工技術が必要で、端面頂点位置がばらつき易い。
この発明の目的は、ピンの接触位置ランダムと同等の効果をピン端面形状を変更せずに得ることを可能とし、これにより、加工および組立てが容易でかつ騒音を低減した動力伝達チェーンおよび動力伝達装置を提供することにある。
この発明による動力伝達チェーンは、ピンが挿通される前後挿通部を有する複数のリンクと、一のリンクの前挿通部と他のリンクの後挿通部とが対応するようにチェーン幅方向に並ぶリンク同士を長さ方向に屈曲可能に連結する複数の第1ピンおよび複数の第2ピンとを備え、第1ピンと第2ピンとが相対的に転がり接触移動することにより、リンク同士の長さ方向の屈曲が可能とされており、第1ピンおよび第2ピンの少なくとも一方の両端面がプーリのシーブ面と接触して摩擦力により動力が伝達される動力伝達チェーンにおいて、複数のリンクは、前後挿通部が基準位置に設けられた第1のリンクと、前後挿通部の少なくとも一方が基準位置からチェーン径方向にオフセットされた第2のリンクとを含んでいることを特徴とするものである。
第2のリンクを得るには、前後挿通部が基準位置に設けられた第1のリンクに対し、前挿通部だけをオフセットしてもよく、後挿通部だけをオフセットしてもよく、また、前後挿通部両方ともオフセットしてもよい。オフセットする方向は、チェーンの外径方向でもよく、内径方向でもよい。そして、例えば、前挿通部だけをオフセットしたものと後挿通部だけをオフセットしたものとの2種類を混在させて、第1のリンクと組み合わされてランダムに配列される。
チェーンには、基準となる第1のリンクと、前後挿通部のいずれか一方がオフセットされた第2のリンクと、前後挿通部の他方がオフセットされた第3のリンクとが含まれることがあり、また、基準となる第1のリンクと、前後挿通部のいずれか一方がオフセットされた第2のリンクと、前後挿通部の他方がオフセットされた第3のリンクと、前後挿通部の両方がオフセットされた第4のリンクとが含まれることがある。
いずれにしろ、ピンの端面形状は、1種類でよく、ピンの加工が容易になる。そして、第1のリンクと第2のリンクとをランダムに配列することにより、基準のものとピン全体がオフセットしたもの(ピン接触位置が異なるもの)とがランダムに存在し、従来、ピン端面形状を変更することで得られていたピン接触位置ランダムと同じ騒音低減効果を得ることができる。また、ピンの端面形状は、負荷時に接触楕円位置が変化してもプーリ端面内に収まるように設定することが容易であり、エッジ当りによる極大面圧が立たないため、基準ピンとオフセット位置をずらしたピンとが混在したものに比べて、ピンの端面摩耗量が平均化される。リンクのオフセット品は、プレス型を変更するのみで容易に得ることができる。従来のチェーンに比べて、リンクのオフセット有無の区別が必要となるが、この区別は、目視で容易に行うことができ、組立てについても、ピン端面形状を区別しなくてよい分容易となる。
なお、前後挿通部が基準位置に設けられた第1のリンクについては、ピッチ長が異なる2種類のものを使用することが好ましく、この場合に、2種類の第1のリンクにそれぞれ対応する2種類の第2のリンクを使用することがより好ましい。
この発明による動力伝達チェーンでは、第1ピンおよび第2ピンの少なくとも一方がプーリと接触して摩擦力により動力伝達する。いずれか一方のピンがプーリと接触するチェーンにおいては、第1ピンおよび第2ピンのうちのいずれか一方は、このチェーンが無段変速機で使用される際にプーリに接触する方のピン(以下では、「第1ピン」または「ピン」と称す)とされ、他方は、プーリに接触しない方のピン(インターピースまたはストリップと称されており、以下では、「第2ピン」または「インターピース」と称す)とされる。
第1ピンおよび第2ピンのうちの一方は、一のリンクの前挿通部に固定されかつ他のリンクの後挿通部に移動可能に嵌め入れられ、同他方は、一のリンクの前挿通部に移動可能に嵌め入れられかつ他のリンクの後挿通部に固定されていることが好ましい。ピンが前後挿通部に固定される場合の前後挿通部へのピンの固定は、例えば、機械的圧入による挿通部内縁とピン外周面との嵌合固定とされるが、これに代えて、焼き嵌めまたは冷やし嵌めによってもよい。1つの挿通部には、第1ピンと第2ピンとがチェーンの長さ方向に対向するように嵌め合わせられ、このうちのいずれか一方がリンクの挿通部の周面に嵌合固定される。嵌合固定は、挿通部の長さ方向に対して直交する部分の縁(上下の縁)で行われるのが好ましい。この嵌合固定の後、上記の予張力付与工程において予張力が付与されることにより、リンクのピン固定部(ピン圧入部)に均等にかつ適正な残留圧縮応力が高精度に付与される。
リンクは、例えば、ばね鋼や炭素工具鋼製とされる。リンクの材質は、ばね鋼や炭素工具鋼に限られるものではなく、軸受鋼などの他の鋼でももちろんよい。リンクは、前後挿通部がそれぞれ独立の貫通孔(柱有りリンク)とされていてもよく、前後挿通部が1つの貫通孔(柱無しリンク)とされていてもよい。ピンの材質としては、軸受鋼などの適宜な鋼が使用される。
第1ピンおよび第2ピンは、例えば、いずれか一方の転がり接触面が平坦面とされ、他方の転がり接触面が相対的に転がり接触移動可能なように所要の曲面に形成される。また、第1ピンおよび第2ピンは、それぞれの転がり接触面が所要の曲面に形成されるようにしてもよい。いずれの場合でも、各ピンの転がり接触面形状がそれぞれ2種類(例えば相対的に曲率が大のものと相対的に曲率が小のもの)形成されることで、転がり接触移動の軌跡が相違するピンの組が2種類存在するようにしてもよい。第1ピンと第2ピンとの接触位置の軌跡は、例えば、インボリュート曲線とされる。第1ピンおよび第2ピンは、異なる断面形状であってもよく、同一形状であってもよい。
なお、この明細書において、リンクの長さ方向の一端側を前、同他端側を後としているが、この前後は便宜的なものであり、リンクの長さ方向が前後方向と常に一致することを意味するものではない。
上記の動力伝達チェーンは、いずれか一方のピン(インターピース)が他方のピン(ピン)よりも短くされ、長い方のピンの端面が無段変速機のプーリの円錐状シーブ面に接触し、この接触による摩擦力により動力を伝達するものであることが好ましい。各プーリは、円錐状のシーブ面を有する固定シーブと、固定シーブのシーブ面に対向する円錐状のシーブ面を有する可動シーブとからなり、両シーブのシーブ面間にチェーンを挟持し、可動シーブを油圧アクチュエータによって移動させることにより、無段変速機のシーブ面間距離したがってチェーンの巻き掛け半径が変化し、スムーズな動きで無段の変速を行うことができる。
この発明による動力伝達装置は、円錐面状のシーブ面を有する第1のプーリと、円錐面状のシーブ面を有する第2のプーリと、これら第1および第2のプーリに掛け渡される動力伝達チェーンとを備えたもので、動力伝達チェーンが上記いずれかに記載のものとされる。
この動力伝達装置は、自動車等の無段変速機としての使用に好適なものとなる。
この発明の動力伝達チェーンおよび動力伝達装置によると、複数のリンクは、前後挿通部が基準位置に設けられた第1のリンクと、前後挿通部の少なくとも一方が基準位置からチェーン径方向にオフセットされた第2のリンクとを含んでいるので、ピン接触位置が異なるものが存在することになり、騒音を低減することができる。ピン端面形状については、1種類とすることができ、また、リンクの挿通部のオフセットは、プレス型を変更するのみで容易に得られるから、ピン端面形状が2種類で同等の効果が得られるものに比べて、加工および組立てが容易となる。
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。以下の説明において、上下は、図2の上下をいうものとする。
図1は、この発明による動力伝達チェーンの一部を示しており、動力伝達チェーン(1)は、チェーン長さ方向に所定間隔をおいて設けられた前後挿通部(12)(13)を有する複数のリンク(11)と、チェーン幅方向に並ぶリンク(11)同士を長さ方向に屈曲可能に連結する複数のピン(第1ピン)(14)およびインターピース(第2ピン)(15)とを備えている。インターピース(15)は、ピン(14)よりも短くなされ、両者は、インターピース(15)が前側に、ピン(14)が後側に配置された状態で対向させられている。
チェーン(1)は、幅方向同位相の複数のリンクで構成されるリンク列を進行方向(前後方向)に3つ並べて1つのリンクユニットとし、この3列のリンク列からなるリンクユニットを進行方向に複数連結して形成されている。この実施形態では、リンク枚数が9枚のリンク列とリンク枚数が8枚のリンク列2つとが1つのリンクユニットとされている。
図2に示すように、リンク(11)の前挿通部(12)は、ピン(14)が移動可能に嵌め合わせられるピン可動部(16)およびインターピース(15)が固定されるインターピース固定部(17)からなり、後挿通部(13)は、ピン(14)が固定されるピン固定部(18)およびインターピース(15)が移動可能に嵌め合わせられるインターピース可動部(19)からなる。
各ピン(14)は、インターピース(15)に比べて前後方向の幅が広くなされており、インターピース(15)の上下縁部には、各ピン(14)側にのびる突出縁部(15a)(15b)が設けられている。
図2において、符号AおよびBで示す箇所は、チェーン(1)の直線部分においてピン(14)とインターピース(15)とが接触している線(断面では点)であり、AB間の距離がピッチである。
チェーン幅方向に並ぶリンク(11)を連結するに際しては、一のリンク(11)の前挿通部(12)と他のリンク(11)の後挿通部(13)とが対応するようにリンク(11)同士が重ねられ、ピン(14)が一のリンク(11)の後挿通部(13)に固定されかつ他のリンク(11)の前挿通部(12)に移動可能に嵌め合わせられ、インターピース(15)が一のリンク(11)の後挿通部(13)に移動可能に嵌め合わせられかつ他のリンク(11)の前挿通部(12)に固定される。そして、このピン(14)とインターピース(15)とが相対的に転がり接触移動することにより、リンク(11)同士の長さ方向(前後方向)の屈曲が可能とされる。
リンク(11)のピン固定部(18)とインターピース可動部(19)との境界部分には、インターピース可動部(19)の上下の凹円弧状案内部(19a)(19b)にそれぞれ連なりピン固定部(18)に固定されているピン(14)を保持する上下の凸円弧状保持部(18a)(18b)が設けられている。同様に、インターピース固定部(17)とピン可動部(16)との境界部分には、ピン可動部(16)の上下の凹円弧状案内部(16a)(16b)にそれぞれ連なりインターピース固定部(17)に固定されているインターピース(15)を保持する上下の凸円弧状保持部(17a)(17b)が設けられている。
ピン(14)を基準としたピン(14)とインターピース(15)との接触位置の軌跡は、円のインボリュートとされており、この実施形態では、ピン(14)の転がり接触面(14a)が、断面において半径Rb、中心Mの基礎円を持つインボリュート形状を有し、インターピース(15)の転がり接触面(15c)が平坦面(断面形状が直線)とされている。これにより、各リンク(11)がチェーン(1)の直線部分から曲線部分へまたは曲線部分から直線部分へと移行する際、前挿通部(12)においては、ピン(14)が固定状態のインターピース(15)に対してその転がり接触面(14a)がインターピース(15)の転がり接触面(15c)に転がり接触(若干のすべり接触を含む)しながらピン可動部(16)内を移動し、後挿通部(13)においては、インターピース(15)がインターピース可動部(19)内を固定状態のピン(14)に対してその転がり接触面(15c)がピン(14)の転がり接触面(14a)に転がり接触(若干のすべり接触を含む)しながら移動する。
上記の動力伝達チェーン(1)では、ピンの上下移動の繰り返しにより、多角形振動が生じ、これが騒音の要因となるが、ピン(14)とインターピース(15)とが相対的に転がり接触移動しかつピン(14)を基準としたピン(14)とインターピース(15)との接触位置の軌跡が円のインボリュートとされていることにより、ピンおよびインターピースの転がり接触面がともに円弧面である場合などと比べて、振動を小さくすることができ、騒音を低減することができる。
より一層の騒音の低減のためには、形状が異なる2種類以上のリンク(11)やピン(14)をランダムに配列することにより、打音発生の周期がずれて、音のエネルギーが異なる周波数帯に分散され、音圧レベルのピークが低減されることが好ましい。一方、このようなランダム配列には、製造工程が煩雑となるという問題がある。特に、ピン(14)については、リンク(11)に比べて、相対的に加工が面倒であり、また、異なる形状のもの同士を目視で区別することが困難なものとなっている。
そこで、この発明による動力伝達チェーン(1)では、ピン(14)端面形状については1種類とし、リンク(11)形状を変更することで、異なる端面形状のピン(14)をランダムに配列することで得られるピン(14)の接触位置ランダムと同等の効果が達成されている。
すなわち、この発明による動力伝達チェーン(1)では、図3(a)に示すように、ピン(14)およびインターピース(15)については、1種類とされ、リンク(11)については、基準品(11A)とオフセット品(11B)(11C)とが使用されて、これらがランダムに配列されている。同図の中央に示すオフセット品(11C)は、同図の左に示す基準品(11A)に対し、前挿通部(22)が基準品(11A)の前挿通部(12)よりも図の上方(チェーンの外径方向)にオフセットされている。また、同図の右に示すオフセット品(11B)は、同図の左に示す基準品(11A)に対し、後挿通部(23)が基準品(11A)の後挿通部(13)よりも図の上方(チェーンの外径方向)にオフセットされている。中央のオフセット品(11C)の前挿通部(22)および右側のオフセット品(11B)の後挿通部(23)内にあるピン(14)は、他のピン(14)に比べて全体がチェーン(1)の外径方向にオフセットしており、これにより、ピン(14)がプーリ(2)(3)に接触する位置がランダムとなり、騒音が低減される。
後挿通部(23)がオフセットされたリンク(11B)および前挿通部(22)がオフセットされたリンク(11C)は、プレス型を変更するのみで、基準品(11A)を得るのと同様にして容易に得ることができる。
図3(b)は、従来のピン接触位置ランダム配列を示すもので、同図において、リンク(11)については、オフセット品は無しとされ、ピン(14)(24)について、基準品(14)とオフセット品(24)とが使用されている。ピンのオフセット品(24)は、基準品(14)と断面形状は同じであるが、その端面形状が異なる形状とされることで、接触楕円(24a)が基準品(14)の接触楕円(14a)に対しチェーン外径方向にオフセットされている。これにより、ピン(14)(24)がプーリ(2)(3)に接触する位置がランダムとなり、騒音が低減される。接触位置ランダムという点で、図3(a)のものと図3(b)のものとは同じであるが、図3(a)のものでは、リンク(11A)(11B)(11C)形状を変更することでこれが得られ、図3(b)のものではピン(14)(24)端面形状を変更することでこれが得られている点で相違している。
この動力伝達チェーン(1)は、必要な数のピン(14)およびインターピース(15)を台上に垂直状に保持した後、リンク(11)を1つずつあるいは数枚まとめて圧入していくことにより製造される。圧入は、ピン(14)およびインターピース(15)の上下縁部とピン固定部(18)およびインターピース固定部(17)の上下縁部との間において行われており、その圧入代は0.005mm〜0.1mmとされている。こうして、組み立てられたチェーン(1)には張力が付与(予張)される。
なお、リンク(11)については、上記の挿通部オフセット品(11B)(11C)の他に、ピッチ長(リンクのチェーン方向長さ)が異なるものが使用されることが好ましく、さらに、ピン(14)について、転がり接触面形状が異なるものが使用されることがより好ましい。いずれにしろ、ピン(14)端面形状は1種類とされ、これにより、ピン(14)の加工が容易となり、異なる形状のピン(14)(24)同士を区別するのに比べて、異なる形状のリンク(11A)(11B)(11C)を区別するのが容易な分、組立ても容易になる。また、図3(b)に示す従来のものでは、ピンのオフセット品(24)の接触楕円(24a)がピン中心からずれていることで、負荷時に接触楕円(24a)がピン端面から外れやすくなり、外れた場合に、エッジが立って、端面の摩耗が大きくなるのに対し、ピン(14)の接触位置については1種類(図3(b)に示す基準品(14)と同じもの)とすることができ、ピン(14)の端面摩耗量が平均化されるという効果も得られる。
上記の動力伝達チェーンは、図5に示したCVTで使用されるが、この際、図4に示すように、プーリ軸(2e)を有するプーリ(2)の固定シーブ(2a)および可動シーブ(2b)の各円錐状シーブ面(2c)(2d)にインターピース(15)の端面が接触しない状態で、ピン(14)の端面がプーリ(2)の円錐状シーブ面(2c)(2d)に接触し、この接触による摩擦力により動力が伝達される。ピン(14)とインターピース(15)とは、上述のように、各可動部(16)(19)に案内されて転がり接触移動するので、プーリ(2)のシーブ面(2c)(2d)に対してピン(14)はほとんど回転しないことになり、摩擦損失が低減し、高い動力伝達率が確保される。そして、実線で示した位置にあるドライブプーリ(2)の可動シーブ(2b)を固定シーブ(2a)に対して接近・離隔させると、チェーン(1)の巻き掛け径は、同図に鎖線で示すように、接近時には大きく、離隔時には小さくなる。ドリブンプーリ(3)では、図示省略するが、その可動シーブがドライブプーリ(2)の可動シーブ(2b)とは逆向きに移動し、ドライブプーリ(2)の巻き掛け径が大きくなると、ドリブンプーリ(3)の巻き掛け径が小さくなり、ドライブプーリ(2)の巻き掛け径が小さくなると、ドリブンプーリ(3)の巻き掛け径が大きくなる。この結果、変速比が1:1である状態(初期値)を基準にして、ドライブプーリ(2)の巻き掛け径が最小で、ドリブンプーリ(3)の巻き掛け径が最大であるU/D状態が得られ、また、ドライブプーリ(2)の巻き掛け径が最大で、ドリブンプーリ(3)の巻き掛け径が最小のO/D状態が得られる。
なお、動力伝達チェーン(1)のリンクは、基準となる第1のリンク(11A)と、前後挿通部のいずれか一方がオフセットされた第2のリンク(11B)と、前後挿通部の他方がオフセットされた第3のリンク(11C)とだけを含むことがあり、図示省略するが、これらに加えて、前後挿通部の両方がオフセットされた第4のリンクが含まれるようにしてもよい。
図1は、この発明による動力伝達チェーンの1実施形態の一部を示す平面図である。 図2は、リンクの拡大側面図である。 図3(a)は、この発明による動力伝達チェーンの配列の一例を示す図であり、図3(b)は、これに対応する従来の動力伝達チェーンの配列を示す図である。 図4は、動力伝達チェーンがプーリに取り付けられた状態を示す正面図である。 図5は、無段変速機を示す斜視図である。
符号の説明
(1) 動力伝達チェーン
(2)(3) プーリ
(2a)(3b) 固定シーブ
(2b)(3a) 可動シーブ
(2c)(2d) 円錐状シーブ面
(11)(11A) 標準のリンク(第1のリンク)
(11B)(11C) リンクのオフセット品(第2のリンク)
(12)(22) 前挿通部
(13)(23) 後挿通部
(14) ピン(第1ピン)
(15) インターピース(第2ピン)

Claims (2)

  1. ピンが挿通される前後挿通部を有する複数のリンクと、一のリンクの前挿通部と他のリンクの後挿通部とが対応するようにチェーン幅方向に並ぶリンク同士を長さ方向に屈曲可能に連結する複数の第1ピンおよび複数の第2ピンとを備え、第1ピンと第2ピンとが相対的に転がり接触移動することにより、リンク同士の長さ方向の屈曲が可能とされており、第1ピンおよび第2ピンの少なくとも一方の両端面がプーリのシーブ面と接触して摩擦力により動力が伝達される動力伝達チェーンにおいて、
    複数のリンクは、前後挿通部が基準位置に設けられた第1のリンクと、前後挿通部の少なくとも一方が基準位置からチェーン径方向にオフセットされた第2のリンクとを含んでいることを特徴とする動力伝達チェーン。
  2. 円錐面状のシーブ面を有する第1のプーリと、円錐面状のシーブ面を有する第2のプーリと、これら第1および第2のプーリに掛け渡される動力伝達チェーンとを備え、動力伝達チェーンが請求項1記載のものである動力伝達装置。
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