JP2009047249A - 3次元免震装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】免震対象物に想定を超える地震力が作用するのを回避でき、免震部の重量の変更にも柔軟かつ容易に対応できる3次元免震装置を提供する。
【解決手段】免震対象物が基準位置から任意の方向に変位した時に、変位が微小な範囲では復元力が高い初期剛性を有し、変位が微小な範囲を超える場合には復元力の大きさがほぼ一定になるように構成することで、通常状態における免震対象物の安定性を確保した上で、免震対象物に過大な地震力が作用するのを防止するようにした。また、変速機を介して上下方向免震デバイスと免震部を接続することで、免震対象物の重量が変化した時に復元力の大きさを調節することや、支持荷重を大きくすることが容易に行えるようにした。
【選択図】 図2

Description

本発明は、免震対象物に過大な地震力(=免震対象物の質量×応答加速度)が作用することを回避するための3次元免震装置に関するものである。
地震から構造物や構造物内の機器を保護するための方法として、3次元免震装置の利用がある。一般に、3次元免震装置は水平動免震と上下動免震に分解できるが、上下動免震は水平動免震と比較して格段に難しいことが知られている。水平動免震では、通常、アイソレーターと呼ばれる水平方向の剛性のみを低下させた免震デバイスを免震部と基盤の間に挿入することで、基盤から免震部に伝達される地震力を低減する。水平方向には通常時に大きな力が作用しないため、アイソレーターを挿入することにより深刻な問題が生じることはない。しかし、上下方向には通常時において重力が作用するため、鉛直方向の剛性を低下させたアイソレーターを免震部と基盤の間に挿入すると、アイソレーターに許容できない過大な変形が生じるという深刻な問題が生じることが知られている。
上下方向の過大変形の問題を解決するため、図1(a)に示す非線形復元力特性を持つ上下方向免震デバイスを利用することで、重力の影響を軽減する3次元免震装置が、これまでに提案されている。図1(a)において、wは基準位置(静的釣合位置)を原点として鉛直下向きを正の方向とする免震部(免震対象物を設置し、免震対象物と共に移動する部分)の変位であり、Fwは免震部に作用する鉛直方向上向きの抵抗力である。また、mは免震対象物を含む免震部の質量であり、gは重力加速度である。この場合、免震対象物を基準位置に復帰させるように作用する力である復元力RwはFwとmgの差、つまり、Rw=Fw−mgで定義される。基準位置で復元力はRw=0であり、免震対象物が基準位置から鉛直方向下向きに変位する時(w>0の時)には鉛直方向上向きの復元力(Rw>0)が作用し、免震対象物が基準位置から鉛直方向上向きに変位する時(w<0の時)には鉛直方向下向きの復元力(Rw<0)が作用する。このような3次元免震装置の具体例として、特許文献1では斜めに配置されたロッドを復元ばねで接続した上下方向免震デバイスを用いることで上下動免震を行う3次元免震装置が提案されており、特許文献2ではリンク機構をばね部材で接続した上下方向免震デバイスを用いることで上下動免震を行う3次元免震装置が提案されている。
特開平9−112068号公報 特開平2006−349045号公報
しかし、上記を含む従来の3次元免震装置には、以下のような課題が残されている。
基準状態付近では上下方向の復元力特性が図1(a)で示すように正の勾配を持つ線形関数かこれに近い関数であるため、地震動が大きくなれば免震対象物に入力される地震力もほぼ比例的に増加する。つまり、地震動の大きさが2倍になれば、免震対象物に作用する地震力もほぼ2倍となる。そのため、想定を大きく超える地震動が免震装置の基盤に入力されると、想定を大きく超える上下方向の地震力が免震対象物に作用することが避けられない。また、地震動の卓越周期が免震装置を含む振動系の固有周期と近くなれば、周期の同調や共振により、免震対象物に過大な上下方向の地震力が作用するおそれがある。
基準位置付近における上下方向復元力特性の勾配を単純に小さくすると、通常時において免震部が不安定になり、わずかな外乱で大きな上下方向変位が生じるおそれがある。また、摩擦力などを含む非弾性復元力に起因して、地震中に免震部の変位が一方向に累積するおそれが生じ、地震後に免震部が基準位置近傍に復帰させることが困難になる。
免震対象物の重量が変更された時の対応や、免震対象物の大規模化に伴う重量の増大への対応が容易でない。
現在広く利用されている、復元力として免震部に作用する重力を利用する転がり支承もしくは滑り支承を用いた水平動免震装置をそのまま利用して、従来の上下動免震装置を付加することで3次元免震装置を構成しようとすると、想定を超える上下方向の地震力が免震対象物に作用するおそれがあるばかりでなく、水平方向にも想定を越える地震力が免震対象物に作用するおそれがある。
本発明は、上記従来技術の課題の全てを解決し、免震対象物に想定を超える地震力が発生するのを有効に回避でき、免震対象物の重量の変更や大規模化にも柔軟かつ容易に対応できる3次元免震装置を提供するために、以下のような手段を講じるものである。
本発明の3次元免震装置は、図1(b)に示すように、免震部が基準位置から鉛直方向に変位した時に、変位が微小な範囲では鉛直方向復元力Rw(=Fw−mg)が高い初期剛性を有し、変位が微小な範囲を超える場合には(免震装置のクリアランスの範囲内で)復元力Rwの大きさがほぼ一定になるように構成した上下動免震装置を備えるようにしたものである。図1(b)において、N1は免震部が鉛直上向きに移動した時の抵抗力Fwの値であり、N2は免震部が鉛直方向下向きに移動した時のFwの値である。また、ΔN=N2−N1である。
このようにすると、免震装置基盤から免震部に伝達される力RwがΔNの範囲でしか変動せず、Rwの大きさが常に一定値以下になり、免震対象物には復元力とほぼ同じ大きさの地震力が作用するのみとなる。そのため、地震動の周期特性や大きさに依存せず、免震対象物に作用する上下方向の地震力をあらかじめ指定した値以下に制限することができる。また、変位が微小な範囲を超えた場合の復元力の勾配がほぼ0となるため、地震動との周期の同調や共振が問題になることはない。言い換えると、地震動との周期の同調や共振が免震効果に影響を与えない程度であれば、復元力が一定値から変動するように構成しても問題ない。また、基準位置付近では復元力が高い剛性を持つため、通常時に免震部が不安定になることもない。
水平動免震については上下動免震と同様に、免震対象物が基準位置から任意の水平方向に変位した時に、変位が微小な範囲では水平方向復元力が高い初期剛性を有し、変位が微小な範囲を超える場合には、水平方向復元力の大きさがほぼ一定となるように構成することが有効である。このようにすることで、水平方向にも上記の上下動免震と同様の効果を得ることができる。
上記3次元免震装置の具体的な構造としては様々なものが考えられるが、簡単に構成するには、変位が微小な範囲では高い初期剛性を有し、変位が微小な範囲を超える場合には復元力の大きさがほぼ一定である定荷重支持機構を複数組み合わせて構成するのが便利である。定荷重支持機構の具体例として、定荷重バネのように巻尺型で一定引張力を支持する形式のものが挙げられる。定荷重バネを利用すれば、免震で必要とされる数cmから数十cmの大ストロークを有する免震装置が、安価かつ容易に実現できる。なお、ここでは簡素な一定荷重支持機構の一例として、簡単かつ非能動型(パッシブ)のものである定荷重バネを挙げているが、上記の効果をあげる限りにおいては、さらに複雑なものや能動型のものを使用することを排除するものではない。
免震対象物の重量の変化が予想される場合には、変速機を介して定荷重支持機構と免震部を接続することが有効である。このようにすることで、免震対象物の重量が変化した時に、免震デバイスから免震部へ伝達される復元力の大きさを、重量の変化に合わせて調節することが極めて容易になる。また、現在、市販されている定荷重バネの支持荷重は、300N(ニュートン)程度と大きくはない。しかし、定荷重バネの特徴であるストロークの大きさを有効に利用して、変速機やギアを介して免震部と定荷重バネを接続することで、支持荷重を数倍にすることが容易に行える。変速機の具体例としては、自転車などで用いられるものが簡単かつ安価である。もちろん、復元力特性を連続的に変化させたい場合などにおいては、自動車などで用いられる無段階変速機などの高度で高価なものを用いることも効果的である。
免震対象物の変化に対応するには、バランスウェイトを用いて免震部の重量を一定にすることが考えられるが、上下方向免震デバイスの支持荷重が大きい場合、大重量のバランバランスウェイトが必要となり、これを取り替えるには多大な労力とコストを要する。また、免震対象物が免震デバイスの支持荷重と比較して非常に軽量である場合にも、バランスウェイトを含む免震装置全体としての重量が大きなものになり、免震装置を設置する構造物や地盤に対して、不必要に大きな荷重を与えることになる。
なお、変速機を介して上下方向免震デバイスと免震部を直列に接続すれば、従来の特許文献1や特許文献2のように、図1(a)の非線形復元力特性を持つ上下方向免震デバイスを利用する3次元免震装置の場合においても、免震対象物の重量の変化に対して容易に対応することができる。もちろん、変速機を水平免震に利用することもできる。
ここまでの説明では、復元力と比較して減衰力が十分に小さいことを想定していたが、抵抗力が指定値以下となり得るように構成された粘性ダンパー、粘弾性ダンパー、履歴ダンパー、摩擦ダンパーの内、少なくとも一つのダンパーを利用して免震部の振動をより早期に減衰させることも可能である。粘性ダンパーや粘弾性ダンパーの抵抗力を一定値以下とするには、定荷重支持機構とこれらのダンパーを直列に接続することが考えられる。また、粘性ダンパーならば、調圧弁を利用することも考えられる。履歴ダンパーや摩擦ダンパーは単体で抵抗力が指定値以下とすることが可能であるが、地震中に免震部の変位が一方向に累積するのを避け、地震後に免震部が基準位置近傍に復帰するようにするには、基準位置からの変位が微小範囲を超える場合に、これらのダンパーを含む復元力の方向が、常に免震部を基準位置へと戻す方向となるように構成する必要がある。
現在、水平方向復元力として重力を利用する、転がり支承もしくは滑り支承を用いる水平動免震装置が広く利用されている。この種の免震装置では、強い上下動を伴う地震が発生すると、想定を超える上下方向地震力が免震対象物に作用し、水平方向の地震動の大きさが想定内であるにもかかわらず、想定を大きく越える水平方向地震力が発生するおそれがある。この問題を解決するためには、本発明の3次元免震装置の一部である上下動免震装置を、これら既存の水平動免震装置の上もしくは下に設置することが効果的である。このようにすることで、免震対象物に作用する上下方向地震力を指定値以下に抑制できるため、想定を大きく超える水平方向地震力が免震対象物に作用するのを回避することが可能となる。この方法は、既に使用中の水平動免震装置に上下動免震装置を付加して3次元免震装置を構成する際に、上下方向のみならず水平方向の免震効果を改善する手法として有効である。
また、少なくとも一部に円錐(すり鉢状)曲面部分を有する台座を備えるか、少なくとも一部に直線部分を有するレールを備える、転がり支承もしくは滑り支承を有する水平動免震装置の上もしくは下に本発明の上下動免震装置を設置することで、上下方向の地震力を指定値以下とすることに加え、水平方向地震力を免震対象物の質量で序した値を、指定値以下とすることが可能となる。もちろん、このように3次元免震装置を構成する方法は、既に使用中の水平動免震装置を利用して3次元免震装置を構成する場合のみでなく、新規に3次元免震装置を構成する場合にも利用できる。
先行特許として、特願2006−249034号(未公開特許)に記載の上下動免震装置は、本発明の上下動免震装置と同様の構成および効果を持つ。また、特開2002−227923号広報に記載された免震装置のトリガー機構は、本発明の水平動免震装置と同様の構成を持つ。しかし、これらの特許では、上下方向の復元力と水平方向の復元力の大きさをどちらもほぼ一定にすることで、上下・水平の任意の3次元方向に対して免震対象物に過大な地震力が作用することを回避することについての言及はなされていない。また、上下方向の復元力の最大値を容易に変更可能とし、支持荷重を向上するために、変速機を利用することについての言及もない。さらに、本発明の一部である上下動免震装置を、重力を利用する転がり支承もしくは滑り支承を用いる水平免震装置の上もしくは下に設置することで、上下方向のみならず水平方向の免震効果を改善することについての記載もない。本発明は、3次元の任意の方向に対して、免震部に想定を超える地震力が発生するのを有効に回避でき、かつ、免震対象物の重量の変更や大規模化にも柔軟かつ容易に対応できる3次元免震装置を提供しようとするものであり、このような試みは新規である。
なお、定荷重支持機構により対象物を支持する場合において、対象物の重量の変化にどのように対応するかは簡単な問題ではない。例えば、特開2007−20648号広報に記載された(3次元免震装置ではない)装置においても、対象物の荷重の変更に対してバランスウェイトを用いて対応する手法を提示しているのみである。
本発明は、以上に説明した構成であり、地震動の周期特性や大きさがいかなるものであろうとも、免震装置のクリアランスさえ十分に確保されていれば、免震対象物に過大な地震力が作用することを抑制でき、免震対象物が破損に至る事態を回避できる。また、免震対象物が変更された時にも、これに応じて免震台の支持荷重を容易に変更でき、大重量免震対象物への対応が容易となる。さらに、現在、広く利用されている水平方向復元力として重力を利用する転がり支承もしくは滑り支承を用いる水平動免震装置に関しては、既存の水平方向免震装置の上もしくは下に、本発明の3次元免震装置の上下動免震装置部分を設置することで、上下方向のみならず水平方向の免震効果を改善できる。
本発明の免震装置は、文化財や美術品を展示するための免震台や、コンピューターサーバーや原子力発電所などで用いられる精密機器を設置するための免震台を始めとして、各種の3次元方向の振動絶縁が要求される場面への適用が可能である。
以下では、図面を参照して本発明の実施形態の例を説明する。なお、各部の具体的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、以下に述べる実施形態のみに限定されるものではない。
図2に示すように、この実施形態の3次元免震装置は、板9より上部の上下動免震装置部分と、板9より下部の水平動免震装置部分から構成される。本免震装置において、免震対象物Aは板1の上部に設置される。uは免震部の水平方向変位であり、wは免震部の鉛直方向変位である。各変位は、図2中の矢印の向きを正の方向とする。また、抵抗力や復元力は、変位とは反対の方向を正の方向とする。ここで用いられる定荷重バネは伸びが微小な範囲では高い剛性を有し、伸びが微小を超える範囲ではほぼ一定の引張力を支持する巻尺型のものである。なお、説明を簡単にするために、ここでは水平動免震装置部分に関しては1方向のみの免震装置を図示しているが、同様の水平動免震装置部分を直行方向に配することで3次元免震装置を構成することができる。
まず、上下動免震装置部分について説明する。板1は柱2を介して板3に接続される。板3は定荷重バネ5により吊り下げられる形で支持されており、定荷重バネ5は支持棒6を介して板9に接続されている。板4は定荷重バネ7により吊り下げられる形で支持されており、定荷重バネ7は支持棒8を介して板9に接続されている。ここで、板4は定荷重バネ7より上部には移動しないように設置されている。板3と板4は接続されていないが、基準状態では板3と板4が接触するように構成されている。
次に、水平動免震装置部分について説明する。板9は柱10を介してリニアガイド15の上に設置された滑動板11aおよび11bに接続される。リニアガイド15は基盤16に固定されている。リニアガイド15の上に設置された滑動板14aは定荷重バネ12aに接続されており、定荷重バネ12aは支持棒13aを介して基盤16に接続されている。滑動板14aは定荷重バネ12aよりも左にしか移動しないように設置されている。滑動板11aと滑動板14aは接続されていないが、基準状態ではこれらが接触するように構成されている。滑動板11b、定荷重バネ12b、支持棒13b、滑動板14bは、それぞれ、滑動板11a、定荷重バネ12a、支持棒13a、滑動板14aと、免震装置の対称面に関して対称となるように構成されている。
図3を参照して、上下動免震装置部分の動作と荷重−変位関係を説明する。本図において免震部は板1、柱2、板3で構成される。上述のように、基準状態では板3と板4が接触している。図3(a)に示すように、免震部が基準状態より上方に移動する時(w<0の時)は、免震部は板4から離れて移動し、板4は静止したままとなる。一方、図3(b)に示すように免震部が基準状態より下方に移動する時(w>0の時)は、免震部と板4は接触して共に移動する。このように上下動免震装置部分を構成した上で、定荷重バネ5の支持荷重の総和をN1とし、定荷重バネ7の支持荷重の総和をΔN(=N2−N1)とすることで、図1(b)に示す鉛直方向抵抗力Fwと鉛直方向変位wの関係を実現できる。なお、免震部の動きを滑らかにし、不要な水平方向揺れを防ぐためには、鉛直方向のリニアガイドを介して免震部を板9に接続することが望ましい。
図4を参照して、水平動免震装置部分の動きと荷重−変位関係を詳細に説明する。この図では、免震部は板9、柱10、滑動板11a、滑動板11bにより構成される。基準状態では滑動板11aと滑動板14aが接触しているとともに、滑動板11bと滑動板14bが接触している。図4(a)に示すように免震部が基準状態より右に移動する時(u>0の時)は、免震部と滑動板14bは接触して共に右に移動する。その一方で、免震部は滑動板14aから離れて右に移動し、滑動板14aは静止したままとなる。この時、定荷重バネ12bは伸びて抵抗力を与えるが、定荷重バネ12aの伸びは0のままで抵抗力を与えることはない。図4(b)に示すように免震部が基準状態より左に移動する時(u<0の時)は、免震部と滑動板14aは接触して共に左に移動する一方で、免震部は滑動板14bから離れて左に移動し、滑動板14bは静止したままとなる。この時、定荷重バネ12aは伸びて抵抗力を与えるが、定荷重バネ12bの伸びは0のままで抵抗力を与えることはない。このように水平動免震装置部分を構成した上で、定荷重バネ12aと定荷重バネ12bの支持荷重をいずれもN3とすることで、図5(a)に示す水平方向抵抗力Fuと水平方向変位uの関係を実現できる。水平動免震装置部分では、水平方向抵抗力Fuと水平方向復元力Ruの値は一致し、Fu=Ruの関係が成り立つ。なお、定荷重バネ12aと定荷重バネ12bの支持荷重を異なるものとすることも可能である。
図5(a)は、摩擦が全く無い場合の理想的な復元力特性を描いているが、実際には不可避の摩擦があるために、復元力特性は図5(b)のようになる。また、摩擦ダンパーを用いた場合の復元力特性も同様である。N3が小さいほど免震対象物に作用する地震力を低減することができるが、N3を小さくしすぎると水平方向変位uが正で微小範囲を超える場合において、水平方向復元力Ruが負となる可能性がある。このような場合、地震中に免震部の変位が一方向に累積したり、地震後に免震部が基準位置近傍に復帰するのが困難になるおそれがある。これらの問題を回避するには、uが正で微小範囲を超える場合においてはRuが常に正となるように構成するとともに、uが負で微小範囲を超える場合においてはRuが常に負となるように構成することが有効である。なお、上下動免震装置においても同様の理由で、鉛直方向変位wが正で微小範囲を超える場合においては鉛直方向復元力Rwが正となり、wが負で微小範囲を超える場合においてはRwが負となるように構成することが残留変位の抑制に効果的である。
以上に述べたように3次元免震装置を構成することで、免震部に想定を超える地震力が発生することや、地震中に免震部の変位が一方向に累積することを回避でき、地震後に免震部が基準位置近傍に復帰させることができる。免震対象物を変更することが無い場合にはこの構成で問題ないが、将来、免震対象物が変更されることが予測される場合には、鉛直方向の復元力を容易に変更できるように免震装置を構成しておく必要がある。また、市販の定荷重バネの支持荷重は現在のところ最大でも300N(ニュートン)程度であるので、大規模免震対象物を支持するには、上下動免震装置の支持荷重を大きくするために、何らかの工夫が必要である。
図6は鉛直方向の抵抗力Fwの最大値を容易に変更したり大きくするために、変速機を利用する装置の構成を示す。図6(a)は装置の側面立面図であり、図6(b)は装置のCC’断面図である。この装置は、柱101、スプロケット102、チェーン103、ギア104、定荷重バネ105、装置底板106、ワイヤー107、上部ホイール108、下部ホイール109により構成されている。このようにギアや変速機を介して定荷重バネとワイヤーを接続することで、ワイヤーに作用する張力Fの値を変更することや、Fの値を定荷重バネの支持荷重の数倍に大きくすることが容易になる。
上部ホイールと下部ホイールのギア比が一定であれば、ギア104とホイール109の半径の比が大きいほどFの値を大きくすることができるが、定荷重バネ105に要求されるストロークも大きくなる。定荷重支持機構には様々なものがあるが、巻尺型の定荷重バネであれば1mを超えるようなストロークを持つものが既に市販されており、ストロークをさらに増加させることも容易である。そのため、巻尺型の定荷重バネを利用すれば、ストロークが問題となることはない。この点においても、本発明の3次元免震装置の定荷重支持機構として、巻尺型の定荷重バネを利用することが効果的である。なお、このように変速機を介して定荷重バネとワイヤーを接続する装置は、3次元免震装置に用途が限定されるものではなく、定荷重支持機構の支持荷重を容易に変更することが求められる用途に広範に利用できる。
現在、水平方向復元力として重力を利用する転がり支承もしくは滑り支承を用いる水平動免震装置が広く利用されている。図7(a)は2次曲面(椀)形状の台座を持つ転がり支承の模式図を示し、図7(b)は、上下方向応答加速度aが0の場合における、転がり支承の水平方向変位uと水平方向復元力Fuの関係を示す。図7(a)においてxは水平方向の位置であり、kは台座の断面形状を示す2次関数の係数である。この場合、水平方向の復元力はFu=km(g+a)uとあらわせるため、aの大きさが大きくなるとFuの大きさも大きくなることがわかる。図8(a)は円錐(すり鉢)形状の台座を持つ転がり支承の模式図を示し、図8(b)は、aが0の場合における、転がり支承のuとFuの関係を示す。図8(a)においてk’と−k’は、それぞれ、x>0とx<0における台座の断面の傾きを示す。この場合、水平方向の復元力は|Fu|=k’m(g+a)とあらわせる。そのため、この場合もaの大きさが大きくなるとFuの大きさも大きくなることがわかる。
上記のように、この種の免震装置では、強い上下動を伴う地震が発生して想定を超える上下方向地震力が免震対象物に作用すると、水平方向の地震動の大きさが想定内であるにもかかわらず、免震物に作用する水平方向地震力が想定を大きく超えるおそれがある。この問題を解決するためには、本発明の上下動免震装置をこれらの水平動免震装置の上もしくは下に設置することで、既存の水平動免震装置を利用した3次元免震装置を構成することが効果的である。このようにすることで、免震対象物に作用する上下方向の応答加速度aを指定値以下に抑制することが可能となり、これに伴って想定を大きく超える水平方向の地震力が免震対象物に作用するのを回避できる。
さらに、少なくとも一部に円錐(すり鉢状)部分を有する台座を備えるか、少なくとも一部に直線部分を有するレールを備える、転がり支承もしくは滑り支承を有する水平動免震装置の上もしくは下に本発明の上下動免震装置を設置することで、上下方向の地震力を指定値以下とすることに加え、水平方向の地震力を免震対象物の質量で除した値を指定値以下とすることができる。言い換えると、このように構成した水平動免震装置は、本発明の一部である上下動免震装置部分と併用することで、地震動の周期特性や大きさに依存せず、ほぼ一定の荷重を支持する定荷重支持機構として用いることができる。
免震部の鉛直方向変位と免震部に作用する鉛直方向抵抗力のグラフ 本発明の3次元免震装置の構成の概略図 本発明の3次元免震装置の上下動免震装置部分の作動説明図 本発明の3次元免震装置の水平動免震装置部分の作動説明図 免震部の水平方向変位と免震部に作用する水平方向抵抗力のグラフ 変速機を介して上部ワイヤーと下部定荷重バネを接続する装置の構成図 2次曲面形状の台座を持つ転がり支承の模式図と荷重−変位関係のグラフ 円錐形状の台座を持つ転がり支承の模式図と荷重−変位関係のグラフ
符号の説明
5 上下動免震装置の上段定荷重バネ
7 上下動免震装置の中段定荷重バネ
A 免震対象物
Fw 免震部に作用する鉛直方向抵抗力
w 免震部の鉛直方向変位
Fu 免震部に作用する水平方向抵抗力
u 免震部の水平方向変位
m 上下動免震部の質量
g 重力加速度
N1 第1定荷重
N2 第2定荷重

Claims (8)

  1. 免震部が基準位置(静的釣合位置)から鉛直方向に変位した時に、変位が微小な範囲では復元力が高い初期剛性を有し、変位が微小な範囲を超える場合には鉛直方向復元力の大きさがほぼ一定になるように構成した上下動免震装置部分を備えることを特徴とする3次元免震装置。
  2. 免震部が基準位置から任意の水平方向に変位した時に、変位が微小な範囲では水平方向復元力が高い初期剛性を有し、変位が微小な範囲を超える場合には水平方向復元力の大きさがほぼ一定となるように構成した水平動免震装置部分を備えることを特徴とする請求項1に記載の3次元免震装置。
  3. 変位が微小な範囲では高い初期剛性を有し、変位が微小な範囲を超える場合には支持荷重の大きさがほぼ一定である定荷重支持機構を、復元力を与える手段として少なくとも一つは備えることを特徴とする、請求項1もしくは請求項2に記載の3次元免震装置。
  4. 定荷重支持機構として、巻尺型で一定引張力を支持するものを備えることを特徴とする、請求項3に記載の3次元免震装置。
  5. 変速機を介して定荷重支持機構と免震部を接続することで、鉛直方向復元力を調整可能としていることを特徴とする、請求項3もしくは請求項4に記載の3次元免震装置。
  6. 抵抗力が指定値以下となるように構成された、粘性ダンパー、粘弾性ダンパー、履歴ダンパー、摩擦ダンパーの内、少なくとも一つを備えることを特徴とする、請求項1から請求項5に記載の3次元免震装置。
  7. 水平方向復元力として重力を利用する転がり支承もしくは滑り支承を用いる水平動免震装置部分を備え、かつ、請求項1〜請求項6の何れかに記載の3次元免震装置の上下動免震装置部分を備えることを特徴とする3次元免震装置。
  8. 少なくとも一部に円錐形状部分を有する台座を備えるか、もしくは、少なくとも一部に直線部分を有するレールを備える、転がり支承もしくは滑り支承を用いる水平動免震装置部分を備えることを特徴とする、請求項7に記載の3次元免震装置。
JP2007214268A 2007-08-21 2007-08-21 3次元免震装置 Pending JP2009047249A (ja)

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