JP2009046703A - 耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管及び熱交換器 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐食性に優れ、十分な強度を有し、薄肉化可能な熱交換器用押出扁平多穴管及び熱交換器を提供することを目的とする。
【解決手段】質量%でSi:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Cu:0.05〜0.40%、Mn:0.05〜0.30%、Zr:0.05〜0.25%、Ti:0〜0.15%含有し、ZrとTiとの合計が0.3%以下であり、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、マトリックス中に分散している粒子面積1.0μm2以上の粒子のうち、AlFeSi安定相の占める面積率が0.1%以上0.5%未満であり、外表面にZnフラックス層を設けてなることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】質量%でSi:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Cu:0.05〜0.40%、Mn:0.05〜0.30%、Zr:0.05〜0.25%、Ti:0〜0.15%含有し、ZrとTiとの合計が0.3%以下であり、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、マトリックス中に分散している粒子面積1.0μm2以上の粒子のうち、AlFeSi安定相の占める面積率が0.1%以上0.5%未満であり、外表面にZnフラックス層を設けてなることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、カーエアコンなどの自動車用熱交換器に好適に用いることができる耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管及び熱交換器に関する。
従来から、カーエアコンのコンデンサやエバポレータなどの自動車用熱交換器には、純アルミニウムやアルミニウム合金を押出加工してなるチューブや扁平多穴管が用いられている。
一般に、熱交換器は、図2に示されるように、ヘッダーパイプ5と称される左右一対の管体と、そのヘッダーパイプ5の間に互いに平行に間隔を空けて設けられたアルミニウム合金からなる多数のチューブ1と、チューブ1、1同士の間に設けられたフィン6とで構成されている。そして各チューブ1…の内部空間とヘッダーパイプ5の内部空間を連通させ、ヘッダーパイプ5の内部空間と各チューブ1の内部空間に媒体を循環させ、前記フィン6を介して効率良く熱交換ができるようになっている。
この熱交換器を構成する各チューブ1は、図1の斜視図に示されるような複数の冷媒通路穴4を有する断面偏平状のAl合金押出管3の表面に、ろう材粉末を含有したフラックスを塗布することによりフラックス層2を形成した熱交換器用押出扁平多穴管11を用いて製造されることが知られており、前記フラックス層2に含まれるろう材としては、Si粉末、Al−Si系合金粉末、またはAl−Si−Zn系合金粉末が使用されることも知られている。
熱交換器用押出扁平多穴管11を用いて熱交換器を作製するには、互いに平行に間隔を空けて設けられたヘッダーパイプ5に対して熱交換器用押出扁平多穴管11を直角に架設し、各熱交換器用押出扁平多穴管11の端部をヘッダーパイプ5の側面に設けられた開口(図示せず)に挿入し、この熱交換器用押出扁平多穴管11の間に波形のフィン6を配置して組み立て、得られた組立体を加熱炉に装入し加熱すると、熱交換器用押出扁平多穴管11のろう材によりヘッダーパイプ5とチューブ1がろう付けされ固定されるとともにチューブ1、1同士の間に波形のフィン6がろう付けされ固定された熱交換器が得られる。
一般に、熱交換器を構成するチューブ1の肉厚は、熱交換を効率よく行う観点から、ヘッダーパイプ5などに比べて薄くなっている。このため、チューブ1とヘッダーパイプ5がほぼ同一の速度で腐食した場合、先にチューブ1に穴が空き、そこから媒体が漏れるおそれがある。従って熱交換器では、主にチューブ1の防食対策が重要な課題になっている。
また、熱交換器用押出扁平多穴管11では、組立性、ろう付け性、熱交換器の強度・耐食性などについて所定の条件を満たすことが要求されている。さらに、このような熱交換器用押出扁平多穴管11は、一般に、幅5〜50mm、高さ1〜5mmの断面形状とされており、所定の寸法精度や表面粗さなどの条件を満たすことが要求されている。
このような条件を満たす熱交換器用押出扁平多穴管11を実現できる材料としては、押出性の良好な純アルミニウムや、少量のCuが含有されたアルミニウム合金などが挙げられ、広く使用されている(例えば、特許文献1)。
このCuの添加は、製品強度を高める一方で、適度な添加量に制御する事により高温での変形抵抗が低減し、押出性の改善に寄与している。
一方、熱交換器用押出扁平多穴管11を腐食環境下で使用した場合には孔食などの局部腐食が生じることがあるが、特に近年の軽量・薄肉化を図った場合には比較的早期に貫通孔が生じ、使用に耐えられなくなる虞があった。
この耐食性の問題に関しては、チューブ表面にZnを被覆して製品のろう付け時の加熱でチューブ内面へと拡散させる手法が用いられており、実環境ではチューブ肉厚が比較的厚い場合にはZnのいわゆる犠牲陽極効果によって局部腐食に進行を最小限に抑える方法が用いられていた。
例えば、特許文献2には、表面にZnまたはZn含有層を設けた熱交換器用チューブが記載されている。
特開2001−26832号公報
特開2004−244696号公報
一方、熱交換器用押出扁平多穴管11を腐食環境下で使用した場合には孔食などの局部腐食が生じることがあるが、特に近年の軽量・薄肉化を図った場合には比較的早期に貫通孔が生じ、使用に耐えられなくなる虞があった。
この耐食性の問題に関しては、チューブ表面にZnを被覆して製品のろう付け時の加熱でチューブ内面へと拡散させる手法が用いられており、実環境ではチューブ肉厚が比較的厚い場合にはZnのいわゆる犠牲陽極効果によって局部腐食に進行を最小限に抑える方法が用いられていた。
例えば、特許文献2には、表面にZnまたはZn含有層を設けた熱交換器用チューブが記載されている。
しかしながら、このチューブ肉厚が0.3mmより薄くなると、従来の肉厚では看過できた局部腐食でも材料強度の著しい低下が起こり、熱交換器冷媒の内圧によって、この局部腐食での変形が進み、容易に破断に至る傾向がある。このことから更なる耐食性向上が求められた。
現在、広く用いられている合金としては、純アルミに少量のCuを添加した合金があるが、経時変化や加熱によってそれまで固溶していたCuが析出し、粒界腐食による耐食性の著しい劣化(早期貫通孔の発生)に至るケースが考えられ、問題となっていた。
そこで、合金添加元素および添加量を見直し、現行よりも耐食性の優れるチューブ材の検討を行った。前記の如く、耐食性劣化の原因となるCu添加量の低減を検討した。ただ、Cu添加量を低減した場合、機械的性質の低下に直結するため、多元素による強度補完が必須となる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、耐食性に優れ、十分な強度を有し、薄肉化可能な熱交換器用押出扁平多穴管を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、上記の熱交換器用押出扁平多穴管を用い、耐食性に優れ、十分な強度を有する熱交換器を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、上記の熱交換器用押出扁平多穴管を用い、耐食性に優れ、十分な強度を有する熱交換器を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明者は、前述の強度補完元素について鋭意検討した結果、耐食性および押出性を劣化させない条件を満たすものとしてTi、Zrが求められた。そして、このTi、Zrは機械的性質の補完ができるだけでなく、Al−Ti系、Al−Zr系化合物をそれぞれ形成し、押出時の金型クリーニング効果を発揮することや、チューブ組織の扁平化を促し、孔食状腐食による貫通孔発生を遅延させる効果があることを見出した。またCu固溶量を制御することで前記のTiによる耐食性向上効果を更に有効とする手段を発明した。そして、更なる耐食性を付与するためにZnを被覆する方法を考案し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)本発明の熱交換器用押出扁平多穴管は、質量%でSi:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Cu:0.05〜0.40%、Mn:0.05〜0.30%、Zr:0.05〜0.25%、Ti:0〜0.15%含有し、ZrとTiとの合計が0.3%以下であり、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、マトリックス中に分散している粒子面積1.0μm2以上の粒子のうち、AlFeSi安定相の占める面積率が0.1%以上0.5%未満であり、外表面にZnフラックス層を設けてなることを特徴とする。
(2)また、本発明の熱交換器用押出扁平多穴管は、Tiを0.05〜0.15質量%含有することができる。
(3)また、本発明の熱交換器用押出扁平多穴管は、前記Znフラックス層がZnF2,ZnCl2,KZnF3のいずれか1種又は2種以上からなることができる。
(4)また、本発明の熱交換器は、(1)〜(3)のいずれかに記載の熱交換器用押出扁平多穴管を備えたことを特徴とする。
本発明の熱交換器用押出扁平多穴管によれば、質量%でSi:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Cu:0.05〜0.40%、Mn:0.05〜0.30%、Zr:0.05〜0.25%、Ti:0〜0.15%含有し、ZrとTiとの合計が0.3%以下であり、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、マトリックス中に分散している粒子面積1.0μm2以上の粒子のうち、AlFeSi安定相の占める面積率が0.1%以上0.5%未満であり、外表面にZnフラックス層を設けてなることで、耐食性劣化の原因となるCu添加量を低減した上で、Cu低減による機械的性質の低下を防ぐための強度補完元素として、Ti、Zrを含有することで、耐食性および押出性を劣化させずに機械的性質の補完ができる。更に、Tiの添加によりAl−Ti系、Al−Zr系化合物をそれぞれ形成できるため、押出時の金型クリーニング効果を発揮する。また、Tiの添加により、押出多穴管の組織の扁平化を促し、孔食状腐食による貫通孔発生を抑制する効果がある。
次に、Cu固溶量を可能な限り低減することで、その後の経時変化や加熱による粒界腐食を防止し、かつTiによる耐食性向上効果を更に有効とする。このCu固溶量を低減するということは、すなわちCuを析出するということであり、このCuを析出させる手段として、AlFeSi安定相の発生を利用する。CuはSiと似た挙動を示すことから、AlFeSi安定相を築くということは、AlFeSi(Cu)安定相を築くことに共通する。このようにして、Cuを析出させ、合金中における固溶量を低減することで、耐食性を向上させることができる。
また、Znフラックス層を被覆することで、更に耐食性を付与できる。被覆方法として、Znフラックス(Flux)(例えば、ZnF2、ZnCl2、KZnF3など)を塗布した場合、薄くかつ均一な犠牲陽極層を得ることができ、図2に示すようにチューブと多穴管とヘッダーパイプを組み付けてからろう付けする場合、コア組み付け後のフラックス塗布が省ける利点がある。このZnフラックスによる犠牲陽極効果を妨げるものとしてCuが挙げられるが、今回の発明によってCu添加量を低減できていることや、Cu固溶量を低減できていることも耐食性向上効果を更に有効とする。
また、本発明の熱交換器は、上記の熱交換器用押出扁平多穴管を備えたことで、合金組織の調整と犠牲陽極層との組み合わせによる耐食性向上が可能となる。
以下、本発明に係る耐食性に熱交換器用押出扁平多穴管及び熱交換器について例を挙げて詳細に説明する。
本実施形態の耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管は、質量%でSi:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Cu:0.05〜0.40%、Mn:0.05〜0.30%からなる組成に、Zrを0.05〜0.25%含有、またはZrを0.05〜0.15%、Tiを0.05〜0.15%含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、マトリックス中に分散している粒子面積1.0μm2以上の粒子のうち、AlFeSi安定相の占める面積率が0.1%以上0.5%未満であり、外表面にZnフラックス層を設けてなることを特徴とする。
本実施形態の耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管は、質量%でSi:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Cu:0.05〜0.40%、Mn:0.05〜0.30%からなる組成に、Zrを0.05〜0.25%含有、またはZrを0.05〜0.15%、Tiを0.05〜0.15%含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、マトリックス中に分散している粒子面積1.0μm2以上の粒子のうち、AlFeSi安定相の占める面積率が0.1%以上0.5%未満であり、外表面にZnフラックス層を設けてなることを特徴とする。
[アルミニウム合金の成分組成]
本発明に係る耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管に用いるアルミニウム合金の成分組成について説明する。以下に記載する各元素の含有量は、特に規定しない限り質量%である。
本発明に係る耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管に用いるアルミニウム合金の成分組成について説明する。以下に記載する各元素の含有量は、特に規定しない限り質量%である。
「Si」0.01〜0.30%
本発明を構成する熱交換器用押出扁平多穴管において、Siを含有させることでAlFeSi安定相を発生させ、Cuを析出させることができる。CuはSiと似た挙動を示すことから、AlFeSi安定相を築くということは、AlFeSi(Cu)安定相を築くことに共通する。そして、その後の経時変化や加熱による粒界腐食を防止し、かつTiによる耐食性向上効果を更に有効とする。
Siの含有量が0.01%未満であると、マトリックス中にAlFeSi安定相を生じさせる効果が十分に得られず、Cuの析出が不十分となるため、耐食性を十分に向上させることができない場合がある。また、Siの含有量が0.01%未満であると、強度が不十分となるため好ましくない。また、Siの含有量が0.30%を超えると、低融点化合物が形成されやすくなり、高速押出の押出加工熱に起因するピックアップが生じやすくなる。
本発明を構成する熱交換器用押出扁平多穴管において、Siを含有させることでAlFeSi安定相を発生させ、Cuを析出させることができる。CuはSiと似た挙動を示すことから、AlFeSi安定相を築くということは、AlFeSi(Cu)安定相を築くことに共通する。そして、その後の経時変化や加熱による粒界腐食を防止し、かつTiによる耐食性向上効果を更に有効とする。
Siの含有量が0.01%未満であると、マトリックス中にAlFeSi安定相を生じさせる効果が十分に得られず、Cuの析出が不十分となるため、耐食性を十分に向上させることができない場合がある。また、Siの含有量が0.01%未満であると、強度が不十分となるため好ましくない。また、Siの含有量が0.30%を超えると、低融点化合物が形成されやすくなり、高速押出の押出加工熱に起因するピックアップが生じやすくなる。
「Fe」0.01〜0.30%
本発明を構成する熱交換器用押出扁平多穴管において、アルミニウム合金にFeを含有させることにより、マトリックス中にAlFeSi安定相を生じさせることができる。また、Feは、分散強化によってアルミニウム合金の強度を向上させる一方、粗大な晶出物を生成しやすく、合金の腐食速度を増大させて、耐食性を低下させる虞がある。また、Feを含有させることによって、生成した晶出物が再結晶の核となるため、ろう付け時の再結晶が微細となり、耐ろう侵食性が低下する場合がある。このため、Feの含有量は、質量%で0.01〜0.30であることが望ましい。Feの含有量を0.01〜0.30とすることにより、耐食性、ろう付性を劣化させることなく、強度を向上させることができる。
本発明を構成する熱交換器用押出扁平多穴管において、アルミニウム合金にFeを含有させることにより、マトリックス中にAlFeSi安定相を生じさせることができる。また、Feは、分散強化によってアルミニウム合金の強度を向上させる一方、粗大な晶出物を生成しやすく、合金の腐食速度を増大させて、耐食性を低下させる虞がある。また、Feを含有させることによって、生成した晶出物が再結晶の核となるため、ろう付け時の再結晶が微細となり、耐ろう侵食性が低下する場合がある。このため、Feの含有量は、質量%で0.01〜0.30であることが望ましい。Feの含有量を0.01〜0.30とすることにより、耐食性、ろう付性を劣化させることなく、強度を向上させることができる。
「Cu」0.05〜0.40%
本発明を構成する熱交換器用押出扁平多穴管において、Cuは、熱交換器用押出扁平多穴管の強度、耐食性、押出性を向上させる作用がある。
Cuの含有量が0.05%未満であると、熱交換器用押出扁平多穴管の強度、耐食性が不十分となるため好ましくない。また、Cuの含有量が0.40%を超えると、低融点化合物が形成されやすくなり、押出時の変形抵抗が上昇して高速押出が困難となる虞が生じ、高速押出時の加工熱によって生じるアルミ滓に起因するピックアップが生じ易くなるため好ましくない。また、Cuの含有量が0.40%を超えると、低融点化合物が形成されやすくなり、高速押出の押出加工熱によって生じるアルミ滓に起因するピックアップが生じやすくなる。
本発明を構成する熱交換器用押出扁平多穴管において、Cuは、熱交換器用押出扁平多穴管の強度、耐食性、押出性を向上させる作用がある。
Cuの含有量が0.05%未満であると、熱交換器用押出扁平多穴管の強度、耐食性が不十分となるため好ましくない。また、Cuの含有量が0.40%を超えると、低融点化合物が形成されやすくなり、押出時の変形抵抗が上昇して高速押出が困難となる虞が生じ、高速押出時の加工熱によって生じるアルミ滓に起因するピックアップが生じ易くなるため好ましくない。また、Cuの含有量が0.40%を超えると、低融点化合物が形成されやすくなり、高速押出の押出加工熱によって生じるアルミ滓に起因するピックアップが生じやすくなる。
「Mn」0.05〜0.30%
本発明を構成する熱交換器用押出扁平多穴管において、Mnは、熱交換器用押出扁平多穴管の強度および耐食性を向上させる作用がある。
Mnの含有量が0.05%未満であると、熱交換器用押出扁平多穴管の強度および耐食性が不十分となるため好ましくない。また、Mnの含有量が0.30%を超えると、押出時の変形抵抗が上昇して高速押出が困難となる虞が生じるため好ましくない。また、Mnの含有量が0.30%を超えると、高速押出時にピックアップが生じやすくなる。
本発明を構成する熱交換器用押出扁平多穴管において、Mnは、熱交換器用押出扁平多穴管の強度および耐食性を向上させる作用がある。
Mnの含有量が0.05%未満であると、熱交換器用押出扁平多穴管の強度および耐食性が不十分となるため好ましくない。また、Mnの含有量が0.30%を超えると、押出時の変形抵抗が上昇して高速押出が困難となる虞が生じるため好ましくない。また、Mnの含有量が0.30%を超えると、高速押出時にピックアップが生じやすくなる。
「Zr」0.05〜0.25%
本発明を構成する熱交換器用押出扁平多穴管において、Zrは、熱交換器用押出扁平多穴管の強度の向上、および金型への清浄効果によって押出性を向上させる作用や、押出装置の金型とアルミニウム合金との接触部分の高速押出時における潤滑性を向上させてピックアップの発生を抑制するとともに、金型の磨耗性を向上させる作用がある。
Zrの含有量が0.05%未満であると、熱交換器用押出扁平多穴管の強度が不十分となるため好ましくない。また、Zrの含有量が0.05%未満であると、金型への清浄効果が十分に得られない虞や、高速押出時におけるピックアップの発生を十分に抑制できない虞が生じる。また、Zrの含有量が0.25%を超えると、鋳造性が低下して割れなどが生じやすくなるため好ましくない。さらに、Zrの含有量が0.25%を超えると、粗大なZr化合物が発生しやすくなって、アルミニウム合金中の成分が不均一となり、素材の品質を損なうことになるため好ましくない。
本発明を構成する熱交換器用押出扁平多穴管において、Zrは、熱交換器用押出扁平多穴管の強度の向上、および金型への清浄効果によって押出性を向上させる作用や、押出装置の金型とアルミニウム合金との接触部分の高速押出時における潤滑性を向上させてピックアップの発生を抑制するとともに、金型の磨耗性を向上させる作用がある。
Zrの含有量が0.05%未満であると、熱交換器用押出扁平多穴管の強度が不十分となるため好ましくない。また、Zrの含有量が0.05%未満であると、金型への清浄効果が十分に得られない虞や、高速押出時におけるピックアップの発生を十分に抑制できない虞が生じる。また、Zrの含有量が0.25%を超えると、鋳造性が低下して割れなどが生じやすくなるため好ましくない。さらに、Zrの含有量が0.25%を超えると、粗大なZr化合物が発生しやすくなって、アルミニウム合金中の成分が不均一となり、素材の品質を損なうことになるため好ましくない。
また、本発明を構成する熱交換器用押出扁平多穴管においては、ZrとTiとの合計が0.3%以下となる範囲で必要に応じてTiを0〜0.15%、好ましくは0.05〜0.15%含有することができる。
「Ti」0〜0.15%
本発明を構成する熱交換器用押出扁平多穴管において、Tiは、Zrと共に含有されることで、組織を扁平化させることができ、アルミニウム合金の断面厚み方向への腐食の進行を抑制して、局部腐食による貫通孔の形成を遅延させることができ、耐食性を向上させることができる。Tiの含有量が0.055未満であると、TiとZrとを共に含有させることによって得られる上記作用が十分に得られない場合がある。また、Tiの含有量が0.15%を超えると、金型の磨耗性が低下するとともに、鋳造性が低下して割れなどが生じやすくなるため好ましくない。さらに、Tiの含有量が0.15%を超えると、粗大なTi化合物が発生しやすくなって、アルミニウム合金中の成分が不均一となり、素材の品質を損なうことになるため好ましくない。
本発明を構成する熱交換器用押出扁平多穴管において、Tiは、Zrと共に含有されることで、組織を扁平化させることができ、アルミニウム合金の断面厚み方向への腐食の進行を抑制して、局部腐食による貫通孔の形成を遅延させることができ、耐食性を向上させることができる。Tiの含有量が0.055未満であると、TiとZrとを共に含有させることによって得られる上記作用が十分に得られない場合がある。また、Tiの含有量が0.15%を超えると、金型の磨耗性が低下するとともに、鋳造性が低下して割れなどが生じやすくなるため好ましくない。さらに、Tiの含有量が0.15%を超えると、粗大なTi化合物が発生しやすくなって、アルミニウム合金中の成分が不均一となり、素材の品質を損なうことになるため好ましくない。
[AlFeSi安定相]
本発明の熱交換器用押出扁平多穴管では、マトリックス中に分散している粒子面積1.0μm2以上の粒子のうち、AlFeSi安定相の占める面積率が0.1%以上0.5%未満であるものとすることが好ましい。このようなアルミニウム合金は、マトリックス中のSiがAlFeSi安定相と共にAlFeSi(Cu)安定相として析出されたものとなる。ここで、マトリックス中に分散している粒子の粒子面積1.0μm2未満の粒子は、粒子の容量が少ないため、押出時の加熱(予熱、加工熱、摩擦熱)によって、容易にSiの固溶が生じ、効果的にSiをAlFeSi安定相として析出させることができないため、好ましくない。上記面積率が0.1%未満であると、SiをAlFeSi安定相として析出させる効果や、CuをAlFeSi(Cu)安定相として析出させることによる効果が十分に得られないため、好ましくない。また、上記面積率を0.5%以上としても、SiやCuを析出させることによる効果が飽和するため、耐食性の向上は見られない。
本発明の熱交換器用押出扁平多穴管では、マトリックス中に分散している粒子面積1.0μm2以上の粒子のうち、AlFeSi安定相の占める面積率が0.1%以上0.5%未満であるものとすることが好ましい。このようなアルミニウム合金は、マトリックス中のSiがAlFeSi安定相と共にAlFeSi(Cu)安定相として析出されたものとなる。ここで、マトリックス中に分散している粒子の粒子面積1.0μm2未満の粒子は、粒子の容量が少ないため、押出時の加熱(予熱、加工熱、摩擦熱)によって、容易にSiの固溶が生じ、効果的にSiをAlFeSi安定相として析出させることができないため、好ましくない。上記面積率が0.1%未満であると、SiをAlFeSi安定相として析出させる効果や、CuをAlFeSi(Cu)安定相として析出させることによる効果が十分に得られないため、好ましくない。また、上記面積率を0.5%以上としても、SiやCuを析出させることによる効果が飽和するため、耐食性の向上は見られない。
なお、AlFeSi相にはAlFeSi安定相だけでなく、AlFeSi準安定相もある。AlFeSi準安定相は、粒子面積が1.0μm2以上であっても、押出時の加熱によって容易にSiの固溶が生じてしまうため、マトリックス中のSi濃度を向上させてしまうので本発明の目的達成には不利となる。
ここで、「AlFeSi安定相」とは、EDX(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy:エネルギー分散型X線分光法)により測定したFe,Si原子濃度の比(=Fe原子濃度/Si原子濃度)が3.5未満であるものを意味する。
また、「AlFeSi準安定相」とは、EDXにより測定したFe,Si原子濃度の比(=Fe原子濃度/Si原子濃度)が3.5〜7.0であるものを意味する。
ここで、「AlFeSi安定相」とは、EDX(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy:エネルギー分散型X線分光法)により測定したFe,Si原子濃度の比(=Fe原子濃度/Si原子濃度)が3.5未満であるものを意味する。
また、「AlFeSi準安定相」とは、EDXにより測定したFe,Si原子濃度の比(=Fe原子濃度/Si原子濃度)が3.5〜7.0であるものを意味する。
マトリックス中にCuが固溶していると、様々な問題が生じる。まず、加熱や経時変化でSiとともに析出し、粒界近傍にCu−Si欠乏相を形成して粒界腐食が発生する。また、マトリックスの電位が貴になり、AlZr、AlTi粒子と電位差がとれなくなることや、Zn Fluxによる犠牲陽極効果を阻害するなどの問題が生じる。このようなことが原因で、押出チューブに早期貫通孔が発生し、耐食性が劣化する。
そのため、Cuの固溶量の低減を検討し、Cuを析出させる手段として、AlFeSiすなわちAlFeSi(Cu)を析出する方法を採用した。マトリックス中に分散している粒子面積1.0μm2以上の粒子のうち、AlFeSi安定相の占める面積率が0.1%未満であると効果が得られないため、好ましくない。また、AlFeSi安定相の占める面積率が0.5%以上であると飽和する。そのため、AlFeSi安定相の占める面積率が0.1%以上0.5%未満であるアルミニウム合金を用いることが好ましい。
そのため、Cuの固溶量の低減を検討し、Cuを析出させる手段として、AlFeSiすなわちAlFeSi(Cu)を析出する方法を採用した。マトリックス中に分散している粒子面積1.0μm2以上の粒子のうち、AlFeSi安定相の占める面積率が0.1%未満であると効果が得られないため、好ましくない。また、AlFeSi安定相の占める面積率が0.5%以上であると飽和する。そのため、AlFeSi安定相の占める面積率が0.1%以上0.5%未満であるアルミニウム合金を用いることが好ましい。
この方法によって、加熱や経時変化によるCu析出を防止でき、粒界腐食を防止できる。また、AlTi粒子との電位差が得られ、層状腐食を促進することから、孔食性腐食が防止できる。また、Znフラックスによる犠牲陽極効果も増加する。したがって、熱交換器用押出扁平多穴管における耐食性の向上が可能になる。
続いて、本発明に係る熱交換器用押出扁平多穴管の製造方法について説明する。ただし、これは一例であって、本発明は以下の製造方法に限定されない。
[熱交換器用押出扁平多穴管の製造方法]
本実施形態においては、アルミニウム合金を均質化処理する工程において、第1熱処理と冷却工程と第2熱処理とを順に行なう。
「第1熱処理」
第1熱処理においては、上記のアルミニウム合金を560℃〜620℃の範囲の温度、より好ましくは590℃超〜610℃の範囲の温度で1時間〜18時間、より好ましくは3時間〜10時間保持する。
第1熱処理を行なうことで、Cuや不可避不純物として含まれるSiなどの低融点元素を均一に分布させ、高速押出時にピックアップを発生させる元素を固溶させて、ピックアップの発生を抑制することができる。また、アルミニウム合金中に均一に拡散しにくいZrを、アルミニウム合金中に均一に拡散させることができる。
本実施形態においては、アルミニウム合金を均質化処理する工程において、第1熱処理と冷却工程と第2熱処理とを順に行なう。
「第1熱処理」
第1熱処理においては、上記のアルミニウム合金を560℃〜620℃の範囲の温度、より好ましくは590℃超〜610℃の範囲の温度で1時間〜18時間、より好ましくは3時間〜10時間保持する。
第1熱処理を行なうことで、Cuや不可避不純物として含まれるSiなどの低融点元素を均一に分布させ、高速押出時にピックアップを発生させる元素を固溶させて、ピックアップの発生を抑制することができる。また、アルミニウム合金中に均一に拡散しにくいZrを、アルミニウム合金中に均一に拡散させることができる。
第1熱処理の処理温度が上記範囲よりも低い場合や処理時間が上記範囲よりも短い場合には、Si、Cu、Zrなどの元素の分布が不均一となったり、高速押出時にピックアップを発生させる元素の固溶が不十分となり、高速押出時におけるピックアップの発生を十分に抑制できなかったりする虞が生じる。また、第1熱処理の処理温度が上記範囲よりも高い場合や処理時間が上記範囲よりも長い場合には、アルミニウム合金の一部が溶解する虞があるし、第1熱処理を行なうことによる費用が大きくなり、経済的に不利となる。
「冷却工程」
冷却工程は、第1熱処理の後、第2熱処理の前に、第1熱処理によって高温となったアルミニウム合金を常温とする工程である。
アルミニウム合金中に析出されたZr化合物は、押出装置の金型と熱交換器用押出合金との接触部分の高速押出時における潤滑性を向上させてピックアップの発生を抑制するとともに、金型の磨耗性を向上させる。Zr化合物からなる析出物(サイト)の大きさは、均質化処理における温度が高温であるほど大きく、低温であるほど小さくなり、Zr化合物からなる析出物の数は、均質化処理における温度が高温であるほど少なく、低温であるほど多くなる。したがって、冷却工程により、Zr化合物からなる析出物の核となる大きさの小さい析出物を多数形成しておくことで、第2熱処理において、冷却工程で形成された小さい析出物を軸としたZr化合物の析出を促進することができ、大きい析出物を多数形成することができる。
冷却工程は、第1熱処理の後、第2熱処理の前に、第1熱処理によって高温となったアルミニウム合金を常温とする工程である。
アルミニウム合金中に析出されたZr化合物は、押出装置の金型と熱交換器用押出合金との接触部分の高速押出時における潤滑性を向上させてピックアップの発生を抑制するとともに、金型の磨耗性を向上させる。Zr化合物からなる析出物(サイト)の大きさは、均質化処理における温度が高温であるほど大きく、低温であるほど小さくなり、Zr化合物からなる析出物の数は、均質化処理における温度が高温であるほど少なく、低温であるほど多くなる。したがって、冷却工程により、Zr化合物からなる析出物の核となる大きさの小さい析出物を多数形成しておくことで、第2熱処理において、冷却工程で形成された小さい析出物を軸としたZr化合物の析出を促進することができ、大きい析出物を多数形成することができる。
冷却工程においては、第1熱処理後のアルミニウム合金を、好ましくは20℃/min〜100℃/min、より好ましくは40℃/min〜60℃/minの冷却速度で冷却する。冷却速度を20℃/min未満としても、冷却工程を行うことによるZr化合物からなる析出物の核の形成効果に変化はないし、冷却工程に要する時間が長くなるため好ましくない。また、冷却速度が100℃/minを超えると、冷却工程を行っても、Zr化合物からなる析出物の核が十分に形成されない虞がある。
「第2熱処理」
第2熱処理は、第1熱処理後のアルミニウム合金を450℃〜520℃の範囲の温度、より好ましくは480℃〜510℃の範囲の温度で2時間超〜18時間、より好ましくは3時間〜10時間保持する。
第2熱処理を行なうことで、第1熱処理によって一旦固溶したSi、Cu、Mn、Zrを前記冷却工程で形成した析出物(サイト)と結合させることで、押出装置の金型と熱交換器用押出合金との接触部分の高速押出時における潤滑性を向上させ、ピックアップの発生を抑制するとともに、金型の磨耗性を向上させることができる。
第2熱処理は、第1熱処理後のアルミニウム合金を450℃〜520℃の範囲の温度、より好ましくは480℃〜510℃の範囲の温度で2時間超〜18時間、より好ましくは3時間〜10時間保持する。
第2熱処理を行なうことで、第1熱処理によって一旦固溶したSi、Cu、Mn、Zrを前記冷却工程で形成した析出物(サイト)と結合させることで、押出装置の金型と熱交換器用押出合金との接触部分の高速押出時における潤滑性を向上させ、ピックアップの発生を抑制するとともに、金型の磨耗性を向上させることができる。
第2熱処理の処理温度が上記範囲よりも低い場合や処理時間が上記範囲よりも短い場合には、AlFeSi安定相およびAlFeSi(Cu)安定相の析出物を十分に析出させることができない虞や、アルミニウム合金中に析出物を十分に拡散させることができない虞が生じる。また、第2熱処理の処理温度が上記範囲よりも高い場合は、アルミニウム合金中における元素の拡散が活発となり、アルミニウム合金中の元素が拡散して、AlFeSi安定相およびAlFeSi(Cu)安定相の析出物が析出されにくくなり、上記範囲よりも処理時間を長くしても、得られる効果は変わらず、むしろ経済的に不利となる。
なお、上記均質化処理における加熱方法や加熱炉の構造等については特に限定されない。また、均質化処理する工程の後のアルミニウム合金を押出すことにより熱交換器用押出合金が得られる。ここでの押出において、押出形状は特に限定されるものではなく、熱交換器の形状等に応じて押出形状が選定される。また、押出方法(方式)については特に限定されるものではなく、押出形状等に合わせて適宜常法の方法を採用することができる。
このような熱交換器用押出合金は、熱交換器用の材料として使用されるものであり、例えば、熱媒体を流通させる熱交換器用押出扁平多穴管などとして用いられる。また、熱交換器の使用場所は、特に限定されるものではないが、自動車用の熱交換器に好適である。また、自動車用の熱交換器として、具体的にはコンデンサ、エバポレータ、インタクーラ等の用途に好適に使用できる。
また、このような熱交換器用押出扁平多穴管は、熱交換器用の部品として使用するに際し、他部材(例えばフィンやヘッダパイプ)と組み付けて、通常はろう付けにより接合される。なお、本発明においては、ろう付けの際の雰囲気や加熱温度、時間などの条件について、特に限定されるものではなく、ろう付け方法も特に限定されない。
また、このような熱交換器用押出扁平多穴管は、熱交換器用の部品として使用するに際し、他部材(例えばフィンやヘッダパイプ)と組み付けて、通常はろう付けにより接合される。なお、本発明においては、ろう付けの際の雰囲気や加熱温度、時間などの条件について、特に限定されるものではなく、ろう付け方法も特に限定されない。
このような熱交換器用押出扁平多穴管は、高速押出により製造がなされた場合であっても、表面にピックアップのない良好なものとなる。また、このような熱交換器用押出扁平多穴管は、高い強度を有しており、かつ高速押出により薄肉化および小断面積化された熱交換器用押出扁平多穴管の製造がなされた場合であっても、押出形状の寸法精度が十分に高い良好なものとなる。
また、上述した実施形態のように、アルミニウム合金を均質化処理する工程において、第1熱処理の後、第2熱処理の前に冷却工程を行った場合、第2熱処理において、冷却工程で形成された小さい析出物にSi、Cu、Mn、Zrの結合を促進することができ、大きい析出物を多数形成することができ、より一層、ピックアップの発生を抑制することができるとともに、より一層、金型の磨耗性を向上させることができる。
なお、上述した実施形態では、アルミニウム合金を均質化処理する工程において、第1熱処理と冷却工程と第2熱処理とを順に行なったが、第1熱処理と第2熱処理のみを行なってもよい。この場合においても、十分な強度および耐食性を有し、高速押出により多穴管を製造した場合に表面にピックアップの発生しない多穴管を製造できる。また、冷却工程を行なわない場合、第2熱処理のために常温から所定の温度まで再度加熱する必要がないので、冷却工程を行なう場合と比較して、製造に必要なエネルギーを削減できる。また、冷却工程を行なわない場合、冷却工程を行なう場合と比較して、製造工程を削減できるので、製造効率を向上させることができる。
[Znフラックス層]
このようにして得られた押出合金材の外表面に、フラックス層を設ける。
フラックス層には、Znが少なくとも含まれるが、Znの他に、Znを含まないZn非含有フラックス層が含まれていても良い。
Zn含有フラックスには、例えばZnF2、ZnCl2、KZnF3等のZn化合物が少なくとも1種以上含まれることが好ましい。また、Zn非含有フラックスには、例えば、LiF,KF,CaF2、AlF3、SiF4などの弗化物や、前記弗化物の錯化合物であるKAlF4、KAlF3などが少なくとも1種以上含まれることが好ましい。
熱交換器用押出扁平多穴管(以下、チューブと略す。)のフラックス層にZn含有層を含有させることで、ろう付け後のチューブ表面にZn拡散層(ろう材層)が形成され、このZn拡散層が犠牲陽極層として機能することによりチューブの防食効果を高めることができる。
このようにして得られた押出合金材の外表面に、フラックス層を設ける。
フラックス層には、Znが少なくとも含まれるが、Znの他に、Znを含まないZn非含有フラックス層が含まれていても良い。
Zn含有フラックスには、例えばZnF2、ZnCl2、KZnF3等のZn化合物が少なくとも1種以上含まれることが好ましい。また、Zn非含有フラックスには、例えば、LiF,KF,CaF2、AlF3、SiF4などの弗化物や、前記弗化物の錯化合物であるKAlF4、KAlF3などが少なくとも1種以上含まれることが好ましい。
熱交換器用押出扁平多穴管(以下、チューブと略す。)のフラックス層にZn含有層を含有させることで、ろう付け後のチューブ表面にZn拡散層(ろう材層)が形成され、このZn拡散層が犠牲陽極層として機能することによりチューブの防食効果を高めることができる。
チューブに対するZn含有フラックスの塗布量は5g/m2以上20g/m2以下の範囲が好ましい。塗布量が5g/m2未満であると、Zn拡散層の形成が不十分となって防食効果が充分に得られないので好ましくなく、塗布量が20g/m2を超えると、チューブと他の部品との接合部であるフィレット部に過剰のZnが集中し、その接合部において腐食速度が速まるので好ましくない。
[熱交換器]
上記のチューブに、熱交換器用ヘッダーパイプやフィンをろう付けすることにより、熱交換器を構成することができる。
すなわち、この熱交換器は、本発明に係る熱交換器用押出扁平多穴管と、熱交換器用ヘッダーパイプとフィンとが接合されて構成される。即ち、従来の技術において説明した熱交換器と同様に、熱交換器用ヘッダーパイプと称される左右一対の管体と、その熱交換器用ヘッダーパイプの間に互いに平行に間隔を空けて設けられた複数のチューブと、チューブ同士の間に設けられたフィンとで構成されている。そして各チューブの内部空間と熱交換器用ヘッダーパイプの内部空間を連通させ、熱交換器用ヘッダーパイプの内部空間と各チューブの内部空間に媒体を循環させ、フィンを介して効率良く熱交換ができるようになっている。
上記のチューブに、熱交換器用ヘッダーパイプやフィンをろう付けすることにより、熱交換器を構成することができる。
すなわち、この熱交換器は、本発明に係る熱交換器用押出扁平多穴管と、熱交換器用ヘッダーパイプとフィンとが接合されて構成される。即ち、従来の技術において説明した熱交換器と同様に、熱交換器用ヘッダーパイプと称される左右一対の管体と、その熱交換器用ヘッダーパイプの間に互いに平行に間隔を空けて設けられた複数のチューブと、チューブ同士の間に設けられたフィンとで構成されている。そして各チューブの内部空間と熱交換器用ヘッダーパイプの内部空間を連通させ、熱交換器用ヘッダーパイプの内部空間と各チューブの内部空間に媒体を循環させ、フィンを介して効率良く熱交換ができるようになっている。
「実施例1〜実施例7、比較例1〜比較例7」
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
表1に示す成分を含有するアルミニウム合金を鋳造してなるビレットを製作した。このビレットに、表2に示す均質化処理を行なった。そして均質化処理後のビレットを以下に示す条件で押出すことにより、図1に示す複数の媒体通路用穴4を有する断面形状の熱交換器用押出扁平多穴管11を得た。
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
表1に示す成分を含有するアルミニウム合金を鋳造してなるビレットを製作した。このビレットに、表2に示す均質化処理を行なった。そして均質化処理後のビレットを以下に示す条件で押出すことにより、図1に示す複数の媒体通路用穴4を有する断面形状の熱交換器用押出扁平多穴管11を得た。
このようにして得られた熱交換器用押出扁平多穴管11に、所定の条件で外部形状を整える圧延加工を行ない、鋳造割れ、表面粗さ、AlFeSi安定相面積率を測定した。
「鋳造割れ」
鋳造割れの測定は、クラウトレーマー社製USM25Jにより二極判定を行なった。評価方法は、鋳造割れが○であるとは、ビレットに次工程の押出で不具合が出るような割れが発生していなかったことを意味し、鋳造割れが×であるとは、ビレットに次工程の押出で不具合が出るような割れが発生していたことを意味する。
鋳造割れの測定は、クラウトレーマー社製USM25Jにより二極判定を行なった。評価方法は、鋳造割れが○であるとは、ビレットに次工程の押出で不具合が出るような割れが発生していなかったことを意味し、鋳造割れが×であるとは、ビレットに次工程の押出で不具合が出るような割れが発生していたことを意味する。
「チューブ表面粗さ」
チューブ表面粗さは金型磨耗が進行すると悪化する傾向があり、フラックスやSBLを塗布した際にムラにつながる。また、ろう付け時にヘッダーのろうが凹凸溝に導かれ、チューブ上に流れてきて、エロージョンが発生しチューブに貫通孔が発生しやすくなる。
そのため、チューブ表面粗さの測定として、チューブ幅方向におけるRmaxの値を計測し、Rmaxの値が15μm以上になると好ましくないと判断した。
チューブ表面粗さは金型磨耗が進行すると悪化する傾向があり、フラックスやSBLを塗布した際にムラにつながる。また、ろう付け時にヘッダーのろうが凹凸溝に導かれ、チューブ上に流れてきて、エロージョンが発生しチューブに貫通孔が発生しやすくなる。
そのため、チューブ表面粗さの測定として、チューブ幅方向におけるRmaxの値を計測し、Rmaxの値が15μm以上になると好ましくないと判断した。
AlFeSi安定相面積率の測定方法は、測定面積1mm2の測定視野内に存在する全粒子について、EDX(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)によりFe、Si原子濃度を測定した。AlFeSi安定相の判定基準は、FeとSiの原子濃度の比(=Fe原子濃度/Si原子濃度)が3.5未満であることとした。そして、以下の式(1)により、AlFeSi安定相総面積率(%)を算出した。
AlFeSi安定相総面積率(%)=AlFeSi安定相総面積÷測定面積×100・・・(1)
AlFeSi安定相総面積率(%)=AlFeSi安定相総面積÷測定面積×100・・・(1)
続いて、これらの熱交換器用押出扁平多穴管11にZn Flux(KZnF3)を8g/m2塗布して、Zn含有層2を設けた。更に、600℃、3minの条件でろう付け加熱した後、その熱交換器用押出扁平多穴管11を長手方向に引張試験機にて引っ張る方法により熱交換器用押出扁平多穴管11の強度を測定した。
更に、これらの熱交換器用押出扁平多穴管11を、図2に示すような、両面ろうを有するフィン6と組み合わせたコアを作製して、SWAAT(Sea Water Acetic Acid Test、人工海水噴霧試験)評価を行なった。試験方法は、ASTM(G85−85)規格に則り、以下の条件で(1)および(2)を2サイクル行い実施した。
(1)人工海水(pH=3)噴霧:50℃、0.5時間
(2)湿潤:50℃、1.5時間
以上の結果を表3に示す。
(1)人工海水(pH=3)噴霧:50℃、0.5時間
(2)湿潤:50℃、1.5時間
以上の結果を表3に示す。
表3より、実施例1〜実施例7では、いずれもAlFeSi安定相の面積率(%)が0.1%以上0.5%未満であり、ろう付け後強度65(MPa)以上の十分な強度が得られ、鋳造割れの評価も○であり、表面粗さ(Rmax)15μm未満であった。
更に、SWAAT評価では、SWAAT貫通日数が30日を超え、耐食性の向上が確認できた。
更に、SWAAT評価では、SWAAT貫通日数が30日を超え、耐食性の向上が確認できた。
これに対し、比較例1では、Cu、Mn、Zr、Tiの添加量が少なすぎることから、相対的にアルミの純度が高くなったため、ろう付後強度が60MPa未満と低く、強度が不十分であった。
また、比較例2では、各元素の添加量が何れも多すぎるため、ろう付後強度は高いが、鋳造割れの評価が×となった。
また、比較例3では、Zrとの合計ではなくTiのみで0.3%添加したため、表面粗さが基準値15μmを超えた。
また、比較例4では、ZrおよびTiの添加量が多すぎるため、表面粗さが基準値15μmを超えた。
また、比較例5〜7では、均質化処理において、第1熱処理の後、冷却工程を200℃で行ない、第2熱処理を行なわず、AlFeSi安定相総面積率が0.1%未満となったため、SWAAT貫通日数が20日未満であった。
また、比較例2では、各元素の添加量が何れも多すぎるため、ろう付後強度は高いが、鋳造割れの評価が×となった。
また、比較例3では、Zrとの合計ではなくTiのみで0.3%添加したため、表面粗さが基準値15μmを超えた。
また、比較例4では、ZrおよびTiの添加量が多すぎるため、表面粗さが基準値15μmを超えた。
また、比較例5〜7では、均質化処理において、第1熱処理の後、冷却工程を200℃で行ない、第2熱処理を行なわず、AlFeSi安定相総面積率が0.1%未満となったため、SWAAT貫通日数が20日未満であった。
1・・・チューブ、2・・・フラックス層(Zn含有層)、3・・・押出管、4・・・媒体通路用穴、5・・・ヘッダーパイプ、6・・・フィン、11・・・熱交換器用押出扁平多穴管。
Claims (4)
- 質量%でSi:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Cu:0.05〜0.40%、Mn:0.05〜0.30%、Zr:0.05〜0.25%、Ti:0〜0.15%含有し、ZrとTiとの合計が0.3%以下であり、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、
マトリックス中に分散している粒子面積1.0μm2以上の粒子のうち、AlFeSi安定相の占める面積率が0.1%以上0.5%未満であり、外表面にZnフラックス層を設けてなることを特徴とする熱交換器用押出扁平多穴管。 - Tiを0.05〜0.15質量%含有することを特徴とする、請求項1に記載の熱交換器用押出扁平多穴管。
- 前記Znフラックス層がZnF2,ZnCl2,KZnF3のいずれか1種又は2種以上からなることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器用押出扁平多穴管。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の熱交換器用押出扁平多穴管を備えたことを特徴とする熱交換器。
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---|---|---|---|
JP2007211382A JP2009046703A (ja) | 2007-08-14 | 2007-08-14 | 耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管及び熱交換器 |
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---|---|---|---|---|
JP2014047997A (ja) * | 2012-09-03 | 2014-03-17 | Nippon Light Metal Co Ltd | ルームエアコン用アルミニウム製熱交換器 |
-
2007
- 2007-08-14 JP JP2007211382A patent/JP2009046703A/ja active Pending
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