JP2009044832A - サーボ制御方法、サーボ制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】制御対象に摩擦が存在する場合におけるサーボ制御の高応答化を図る。
【解決手段】積分器を持たないバックステッピング制御系を用いてサーボ制御を行うこととした。これにより、積分器に由来するオーバーシュート及びアンダーシュートの反復の問題を解消することができ、サーボ制御の高応答化が実現する。
【選択図】図5
【解決手段】積分器を持たないバックステッピング制御系を用いてサーボ制御を行うこととした。これにより、積分器に由来するオーバーシュート及びアンダーシュートの反復の問題を解消することができ、サーボ制御の高応答化が実現する。
【選択図】図5
Description
本発明は、サーボ制御、特にモータの回転角度等の制御に関する。
従来、VVT(可変バルブタイミング機構)のバルブの開閉駆動等は油圧アクチュエータによって行っていたが、即応性の観点から近時ではモータ駆動することも増えてきている。そのようなモータの回転角度の制御には、サーボを用いる。
制御量を目標値に追従させるサーボ制御系は、通常、制御量と目標値との偏差を積分する積分器を有している(例えば、下記特許文献1を参照)。いわゆる内部モデル原理が、制御系に積分器を必要とする理由である(下記非特許文献1を参照)。
特開2001−009514号公報
野波健蔵編著、西村秀和共著、「MATLABによる制御理論の基礎」、第1版、東京電機大学出版局、1998年3月30日、p.191−193
図13は、1形のLQI制御系にてDCモータの回転角度を制御した結果例である。グラフは上から順に、目標値1をStep的に与えたときの制御出力たるDCモータの回転角度位置、制御出力の変化量(時間微分)たるDCモータの回転速度、制御入力たるDCモータの印可電圧を示す。
制御対象の装置に摩擦が存在する場合、積分器を持つ制御系では出力のオーバーシュート及びアンダーシュートを繰り返してしまうことがある。図13の(モータの位置の)グラフでは、立ち上がりにおいて過補正によるオーバーシュートが発生し、偏差が残った状態がしばらく続いている。これは、オーバーシュートに伴う偏差が比較的小さいために制御入力が小さくなってクーロン摩擦を下回り、モータが静止してしまったことによる。その後、偏差の積分により制御入力が増大し、静止摩擦に打ち勝った瞬間にモータが再始動するが、今度はクーロン摩擦を超えた制御入力がアンダーシュートの原因になってしまう。このような事象は、スティックスリップと呼ばれる。
以上の問題に初めて着目してなされた本発明は、制御対象に摩擦が存在する場合におけるサーボ制御の高応答化を図ることを所期の目的としている。
本発明では、積分器を持たないバックステッピング制御系にてサーボ制御を行うこととした。積分器を排したことで、過補正及びスティックスリップによるオーバーシュート及びアンダーシュートの反復の問題を解消できる。
加えて、制御出力(制御対象の装置の部材の位置、方位、姿勢等)それ自体を状態量として設計することでオブザーバを排し、状態量の推定誤りを原因とする追従性能の低下を回避している。
また、積分器を持たない制御系では、制御対象に存在する摩擦に屈して制御出力が目標値に届かず定常偏差が残るおそれがある。従って、制御系のゲインを、追従偏差を解消し目標値に十分到達し得る程度のハイゲインに設定する必要がある。一方で、ハイゲインに設定していると、制御入力がクーロン摩擦に相当する値を超えた振幅でチャタリングすることがあり、そうなれば出力もまたチャタリングを起こしてしまう。このチャタリングを低減ないし解消するためには、制御対象の速度即ち制御量の変化量(時間微分)が所定の閾値を下回ったときに、制御量と目標値との偏差に応じて制御入力に補償値を加減算する摩擦補正を行うことが好適である。
制御量と目標値との偏差が小さくなるほどゲインを小さくする入力減衰処理を行うことも、チャタリングの低減ないし解消に奏効する。
本発明によれば、制御対象に摩擦が存在する場合におけるサーボ制御の高応答化を実現できる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。制御対象として、ここでは、VVTのバルブ等を開閉駆動するためのDCモータを想定する。DCモータは、出力軸が所定ギヤ比(例えば、7.5:1)のギヤに接続して減速され、その後段ギヤの軸にポテンショメータが付設される。制御入力はDCモータの印可電圧、制御出力はポテンショメータで検出される位置である。
このDCモータを、プログラマブルディジタルコントローラ1を用い、所定周期(例えば、10ms)にて制御する。コントローラ1は、図1に示すように、プロセッサ1a、RAM1b、ROMまたはフラッシュメモリ1c、I/Oインタフェース1d等を備えてなる。I/Oインタフェース1dは、モータ及びポテンショメータと接続して制御信号の入力や検出信号の受信を担うもので、A/D変換回路及び/またはD/A変換回路を含む。ROMまたはフラッシュメモリ1cには、実行されるべきプログラムが予め格納されており、実行に際してRAM1bへ読み込まれ、プロセッサ1aによって解読される。しかして、コントローラ1は、プログラムに従い、図2に示すように、ポテンショメータを介してモータの位置やその速度を検出する検出部101、並びに制御入力の値を算定してモータに印加する制御部102としての機能を発揮する。
DCモータ単体の特性は、インダクタンスの影響を無視すると、周知の通り図3のブロック線図のようになる。ここで、θ(rad)は角度、ω(rad/sec)は速度、Kt(N・m/A)はトルク定数、Ke(V/rad・sec)は誘起電圧定数、Raは電機子抵抗、Jm(kg/m2)は電機子慣性モーメントを意味する。
これを状態空間方程式で表すと、式(数1)となる。
式(数1)における定数a及びbは、実験的に同定することができる。具体的には、制御入力であるDCモータへの印可電圧を、応答性に配慮した所定周波数(例えば、2Hz)の矩形波で駆動し、そのときの入出力データを基に予測誤差法等による同定を行う。
また、制御入力の大きさをゆっくりと変化させるsweep試験を行い、制御対象の摩擦特性を調べた。結果を、図4に示す。正負の方向で大きさは若干異なるが、静止摩擦力は約1V、クーロン摩擦力は約0.6Vと非常に大きな値であることが分かる。
制御入力の振幅が1.0V程度であると、クーロン摩擦の影響で定常ゲインが小さくなると考えられる。従って、クーロン摩擦の影響が少ない入力振幅2.0Vのときをノミナルモデルとして、コントローラ1の設計を行う。
積分器を持たない制御系の一であるバックステッピング制御系の構造を、図5に示す。バックステッピング制御では、まず仮想入力で出力とその目標値との誤差がなくなるように制御し、次に真の入力で状態量とその目標値との誤差がなくなるように制御する。本実施形態では、制御出力yそのものを状態量x1として、オブザーバによる状態量の推定を排している。
第一段階として、仮想入力を設計する。第一段階では、目標値ysとの誤差z1=y−ysが0となるように、状態量x2を仮想入力と考え、その理想値α1をリアプノフの定理に基づいて設計する。
誤差z1に関するリアプノフ関数の候補V1(x)を式(数2)のように定義すると、その微分は式(数3)となる。
簡単化のため、ysを定数と考えると、式(数4)が成立する。
式(数4)を式(数3)に代入すると、式(数5)となる。
正の定数c1を用いて式(数6)が成立するとすると、式(数7)が成立し、V1(x)は真のリアプノフ関数となる。
よって、式(数6)が状態量x2の仮想入力α1となる。
第二段階として、真の入力を設計する。仮想入力x2は状態量なので、実際には式(数6)を満たすことができない。そこで、その誤差z2=x2−α1が0となるように、真の入力uをリアプノフの定理に基づいて設計する。
誤差z1とz2との双方に関するリアプノフ関数の候補V2(x)を式(数8)のように定義すると、その微分は式(数9)となる。
式(数9)の右辺の第一項は既に式(数7)で求められているが、第二段階では誤差z2を考慮しなければならないので、x2をz2に置換して式(数10)の形で表現する。
z2=x2−α1、α1=−c1z1より、式(数11)が成立する。
式(数10)及び式(数11)を式(数9)に代入すると、式(数12)となる。
正の定数c1及びc2を用いて式(数13)が成立するとすると、式(数14)が成立し、V2(x)は真のリアプノフ関数となる。
よって、式(数13)が真の入力uとなる。
図6は、上述の如く設計したバックステッピング制御系にてDCモータの回転角度を制御したシミュレーション結果である。グラフは上から順に、目標値1をStep的に与えたときのDCモータの回転角度位置、DCモータの回転速度、DCモータの印可電圧を示す。実線は制御対象に摩擦がある場合、破線は摩擦がない場合の結果である。摩擦がない場合には目標値に収束できているが、摩擦がある場合には収束できていない。これは、バックステッピング制御が積分器を持たない構造である故に、目標値に近づくと制御入力が小さくなり、一度クーロン摩擦を下回ってしまうとモータの速度が0となりそのまま静止状態が維持されてしまうためと考えられる。
そこで、ゲインを大きくして追従性能を改善することを試みる。ゲインを大きくしたシミュレーション結果を、図7に示す。先の実験よりもゲインを大きく設定する(c1=c2=75)と、追従偏差が小さくなる。さらにゲインを大きくしてゆく(c1=c2=80)と、追従偏差はなくなる。しかしながら、制御入力が摩擦力を超える値でチャタリングを起こし、それによって制御出力にもチャタリングが起こってしまう。
ハイゲインにおけるチャタリングを低減ないし解消するには、摩擦補償を加えるのがよい。摩擦補償では、追従偏差を残した状態で制御対象の速度が0近傍となったときに、制御量yと目標値ysとの偏差に応じた補償値を制御入力uに加減算する。
摩擦補償を加味した制御を行うべくコントローラ1が実行する処理の手順を、図8のフローチャートに示す。コントローラ1は、ポテンショメータを介して制御対象の位置及び速度を検出、知得する(ステップS1)。そして、制御対象の速度が(速度≒0であると判断する)所定の閾値を下回ったときに(ステップS2)、制御対象の現在位置とその目標値とを比較し(ステップS3)、その偏差に応じて補償値を決定、モータに印加する制御入力を算定する。比較の結果、目標値−制御量>0、即ち目標未達であるならば、正の補償値を加算する(ステップS4)。逆に、目標値−制御量<0、即ち目標超過であるならば、負の補償値を加算する(ステップS5)。本実施形態では、補償値を定数値とし、その大きさをクーロン摩擦に相当する約0.6Vとしている。目標値−制御量=0であるならば、補償値を加減算する必要はない。以上の処理を、反復的に実行する。
摩擦補償を加味した制御のシミュレーション結果を、図9に示す。このように、制御入力のチャタリングを摩擦の範囲内に抑制し、制御出力をオーバーシュートさせることなく目標値に追従させることができている。
上記の摩擦補償は、バックステッピング制御以外の種類の制御系に適用しても有効である。同様の摩擦補償を加えたバックステッピング制御及びLQ制御のシミュレーション結果を、図10に示す。実線はバックステッピング制御、破線はLQ制御の結果である。バックステッピング制御は、立ち上がりに変動があるものの、LQ制御と比べてオーバーシュートを起こすことなく早く目標値に収束している。他方、LQ制御でも、図13で見られたようなスティックスリップによるオーバーシュートとアンダーシュートとの繰り返しが消失している。
本実施形態によれば、積分器を持たないバックステッピング制御系にてサーボ制御を行うこととしたため、オーバーシュート及びスティックスリップを発生させることなく、LQI制御等よりも優れた高応答化を得られる。並びに、制御出力それ自体を状態量として設計することでオブザーバを排しており、状態量の推定誤りを原因とする追従性能の低下の問題も起こらない。
尤も、制御対象の摩擦力が大きい場合には、制御出力が目標値に十分到達し得る程度のハイゲインに設定する必要がある。ハイゲインに設定することで引き起こされるチャタリングは、摩擦補償を加えることにより沈静化できる。摩擦補償を加味した制御を行うためには、制御対象の制御量及び速度を検出する検出部101と、制御対象の速度が所定の閾値を下回ったときに制御量と目標値との偏差に応じて制御入力に補償値を加減算する制御部102とを具備するサーボ制御装置1を構成すればよい。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。特に、ハイゲインにおけるチャタリングを低減ないし解消する手法は、摩擦補償には限定されない。以降に述べる入力減衰処理によっても、チャタリングの低減ないし解消が可能である。
上述のバックステッピング制御系では、ゲインを司る値c1、c2がそれぞれ定数であった。入力減衰処理では、制御量yと目標値ysとの偏差z1が小さくなるほど、ゲインを小さくする。
入力減衰を加味した制御を行うべくコントローラ1が実行する処理の手順を、図11のフローチャートに示す。コントローラ1は、ポテンショメータを介して制御対象の位置を検出、知得する(ステップS6)。そして、制御対象の現在位置とその目標値とを比較して偏差を得(ステップS7)、その偏差の大きさに応じてゲインの値を決定する(ステップS8)。以上の処理を、反復的に実行する。
ゲインの決定は、例えば、RAM1b、ROMまたはフラッシュメモリ1cに予め格納しているマップを参照して行う。マップの一例を、図12に示す。横軸は偏差z1(または、想定される偏差の最大値z1_maxと偏差z1との比z1/z1_max)、縦軸はc2(及び/または、c1)である。マップの特徴として、偏差z1が比較的大きい領域ではゲインc2の傾き(Δc2/Δz1)が小さく、偏差z1が比較的小さい領域ではゲインc2の傾きが大きくなっている。
上記の入力減衰処理によっても、チャタリングを沈静化できる。入力減衰を加味した制御を行うためには、制御対象の制御量を検出部101と、制御量と目標値との偏差が小さくなるほどゲインを小さくする制御部102とを具備するサーボ制御装置1を構成すればよい。
さらに、摩擦補償と入力減衰との両方を実施するようにしても構わない。
その他、各部の具体的構成や処理の手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
1…サーボ制御装置
11…検出部
12…制御部
11…検出部
12…制御部
Claims (5)
- 制御対象の制御量を目標値に追従させるサーボ制御方法であって、
制御出力そのものを状態量として設計したオブザーバ及び積分器を持たないバックステッピング制御系により行うサーボ制御方法。 - 制御対象の速度が所定の閾値を下回ったときに制御量と目標値との偏差に応じて制御入力に補償値を加減算する請求項1記載のサーボ制御方法。
- 制御量と目標値との偏差が小さくなるほどゲインを小さくする請求項1または2記載のサーボ制御方法。
- 請求項2記載のサーボ制御方法を実施するために用いられるものであって、
制御対象の制御量及び速度を検出する検出部と、
制御対象の速度が所定の閾値を下回ったときに、制御量と目標値との偏差に応じて制御入力に補償値を加減算して制御を行う制御部と
を具備するサーボ制御装置。 - 請求項3記載のサーボ制御方法を実施するために用いられるものであって、
制御対象の制御量を検出する検出部と、
制御量と目標値との偏差が小さくなるほどゲインを小さくする制御を行う制御部と
を具備するサーボ制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007206190A JP2009044832A (ja) | 2007-08-08 | 2007-08-08 | サーボ制御方法、サーボ制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2007206190A JP2009044832A (ja) | 2007-08-08 | 2007-08-08 | サーボ制御方法、サーボ制御装置 |
Publications (1)
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JP2009044832A true JP2009044832A (ja) | 2009-02-26 |
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ID=40444972
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2007206190A Pending JP2009044832A (ja) | 2007-08-08 | 2007-08-08 | サーボ制御方法、サーボ制御装置 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2009044832A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN108768238A (zh) * | 2018-06-27 | 2018-11-06 | 江南大学 | 基于lpv观测器的永磁同步电机无传感器反推控制方法 |
CN108809181A (zh) * | 2018-07-10 | 2018-11-13 | 华北电力大学(保定) | 基于反推控制的永磁同步电动机驱动柔性负载的振动抑制方法 |
CN111775142A (zh) * | 2020-08-12 | 2020-10-16 | 电子科技大学 | 一种液压机械臂的模型辨识与自适应控制方法 |
-
2007
- 2007-08-08 JP JP2007206190A patent/JP2009044832A/ja active Pending
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