JP2009041515A - 内燃機関の触媒劣化診断装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料性状を的確に推定して診断精度を向上し、誤診断を防止する。
【解決手段】空燃比センサにより検出される排気空燃比がリーン側及びリッチ側に交互に切り替わるようアクティブ空燃比制御を実行する。アクティブ空燃比制御実行中の燃料噴射量の値を用いて触媒の第1の酸素吸蔵容量OSC(1)を計測する。他方、アクティブ空燃比制御実行中の燃料噴射量の値を用いずに、機関回転数の値を用いて第2の酸素吸蔵容量OSC(2)を計測する。これら計測値に基づき燃料性状を推定する。第2の酸素吸蔵容量計測値が、アルコール燃料の使用による燃料噴射量の増大の影響を受けないので、この値と第1の酸素吸蔵容量計測値とに基づき燃料性状を的確に推定できる。
【選択図】図5
【解決手段】空燃比センサにより検出される排気空燃比がリーン側及びリッチ側に交互に切り替わるようアクティブ空燃比制御を実行する。アクティブ空燃比制御実行中の燃料噴射量の値を用いて触媒の第1の酸素吸蔵容量OSC(1)を計測する。他方、アクティブ空燃比制御実行中の燃料噴射量の値を用いずに、機関回転数の値を用いて第2の酸素吸蔵容量OSC(2)を計測する。これら計測値に基づき燃料性状を推定する。第2の酸素吸蔵容量計測値が、アルコール燃料の使用による燃料噴射量の増大の影響を受けないので、この値と第1の酸素吸蔵容量計測値とに基づき燃料性状を的確に推定できる。
【選択図】図5
Description
本発明は、内燃機関の排気通路に配置された触媒の劣化を診断する装置に関する。
例えば車両用の内燃機関において、その排気系には排気ガスを浄化するための触媒が設置されている。この触媒の中には酸素吸蔵能(O2ストレージ能)を有するものがあり、これは、触媒に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比(ストイキ)よりも大きくなると、即ちリーンになると排気ガス中に存在する過剰酸素を吸着保持し、触媒流入排気ガスの空燃比がストイキよりも小さくなると、即ちリッチになると吸着保持された酸素を放出する。例えばガソリンエンジンでは触媒に流入する排気ガスがストイキ近傍となるよう空燃比制御が行われるが、酸素吸蔵能を有する三元触媒を使用すると、運転条件により実際の空燃比がストイキから多少振れてしまっても、三元触媒による酸素の吸蔵・放出作用により、そのような空燃比ずれを吸収することができる。
ところで、触媒が劣化すると触媒の浄化効率が低下する。一方、触媒の劣化度と酸素吸蔵能の低下度との間にはともに貴金属を介する反応であるため相関関係がある。よって、酸素吸蔵能が低下したことを検出することで触媒が劣化したことを検出することができる。一般的には、触媒に流入する排気ガスの空燃比を強制的にリッチ及びリーンに切り替えるアクティブ空燃比制御を行い、このアクティブ空燃比制御の実行に伴って触媒の酸素吸蔵容量を計測し、触媒の劣化を診断する方法(所謂Cmax法)が採用される。
ところで、基準燃料に対して燃料の性状が変化すると、酸素吸蔵容量計測値が変化し、正確な劣化診断を行えなくなる場合がある。そこでこの場合には燃料性状を判定した上で劣化診断を行うのが好ましい。例えば特許文献1には、燃料性状が重質であるか軽質であるかを判定する燃料性状判定装置が開示されている。これによると、始動から空燃比センサが活性化してその検出空燃比が理論空燃比になるまでの吸入空気量積算値と燃料噴射量積算値とに基づき、燃料性状を判定している。なおこの装置の場合、空燃比センサの暖機時しか燃料性状を判定することができない。
近年、ガソリンエンジンに対して、基準燃料としてのガソリンにアルコール(主にエタノール)を混合した燃料(以下、「アルコール燃料」という)が、使用される例がしばしば見受けられる。ガソリンエンジンにアルコール燃料が使用されると、劣化診断時の酸素吸蔵容量計測値が、ガソリン100%の燃料(以下、「ガソリン燃料」という)を使用したときに比べて変化することが、本発明者らの試験により確認された。その理由は必ずしも明らかでないが、大凡次の通りと考えられる。
ガソリン100%の燃料の理論空燃比は例えば14.6であり、他方、アルコール100%の燃料の理論空燃比は、例えばエタノールの場合9.0である。したがって、燃料のアルコール濃度が高くなるほど、理論空燃比は低下し、必要な燃料噴射量は多くなる。
実際、ストイキ空燃比フィードバック制御においては、触媒に流入する排気ガスの空燃比、より正確には排気ガスの酸素濃度を空燃比センサで検出し、この検出された酸素濃度がガソリンストイキ相当の酸素濃度となるよう制御するが、アルコール燃料が新たに給油されると、アルコールが酸素を含むこととも関連して、空燃比センサで検出される酸素濃度が増加し、検出空燃比がリーン側にずれる。そのため燃料噴射量は増大側に補正され、最終的には、空燃比センサで検出される酸素濃度が、ガソリンストイキ相当の酸素濃度と等しくなる。このときの酸素濃度はアルコール燃料のストイキ相当の酸素濃度とも等しく、こうして排気ガスの空燃比は、実際に使用中のアルコール燃料に対応した理論空燃比に制御される。
しかしながら、触媒流入ガスの空燃比がアルコール燃料の理論空燃比に制御されても、触媒に流入する排気ガスの成分は、ガソリンストイキ時と異なり、触媒表面では違った反応が起こる。即ち、アルコール燃料のストイキ時には必ずしもガソリン燃料のストイキ時のように触媒にとって最良のガス状態ではない。このことが劣化診断時に酸素吸蔵容量計測値が変化する一つの理由と考えられる。
また、アルコール燃料使用時にはガソリン燃料使用時よりも燃料噴射量が多くなる。酸素吸蔵容量の計測には燃料噴射量の値が用いられるので、むしろこのことが、劣化診断時に酸素吸蔵容量計測値が変化する主な理由と考えられる。本発明者らの試験によれば、アルコール燃料使用時にはガソリン燃料使用時に比べ酸素吸蔵容量計測値が増大することが判明している。
このように、燃料性状の変化即ちアルコール濃度の増大に起因して、酸素吸蔵容量計測値が増大すると、正確な劣化診断が行えないばかりか、正常と劣化の境目(クライテリア)付近にありながら劣化している触媒について、誤って正常と誤診断してしまう虞があり、診断精度の点で問題となる。
そこで本発明は、かかる事情に鑑みて創案されたものであり、その目的は、燃料性状を的確に推定して診断精度を向上し、誤診断を防止し得る内燃機関の触媒劣化診断装置を提供することにある。
本発明の第1の形態によれば、
内燃機関の排気通路に配置された触媒の劣化を診断する装置であって、
前記触媒上流の排気通路に配置され、排気中の酸素濃度に基づいて排気空燃比を検出する空燃比センサと、
機関回転数を検出する回転数検出手段と、
前記空燃比センサにより検出された排気空燃比がリーン側及びリッチ側に交互に切り替わるように空燃比を制御するアクティブ空燃比制御を実行するアクティブ空燃比制御手段と、
前記アクティブ空燃比制御の実行中における燃料噴射量の値を用いて、前記触媒の第1の酸素吸蔵容量を計測する第1の計測手段と、
前記アクティブ空燃比制御の実行中における燃料噴射量の値を用いずに、少なくとも前記回転数検出手段によって検出された機関回転数の値を用いて、前記触媒の第2の酸素吸蔵容量を計測する第2の計測手段と、
前記第1及び第2の計測手段によってそれぞれ計測された第1及び第2の酸素吸蔵容量に基づき、燃料性状を推定する推定手段と
を備えたことを特徴とする内燃機関の触媒劣化診断装置が提供される。
内燃機関の排気通路に配置された触媒の劣化を診断する装置であって、
前記触媒上流の排気通路に配置され、排気中の酸素濃度に基づいて排気空燃比を検出する空燃比センサと、
機関回転数を検出する回転数検出手段と、
前記空燃比センサにより検出された排気空燃比がリーン側及びリッチ側に交互に切り替わるように空燃比を制御するアクティブ空燃比制御を実行するアクティブ空燃比制御手段と、
前記アクティブ空燃比制御の実行中における燃料噴射量の値を用いて、前記触媒の第1の酸素吸蔵容量を計測する第1の計測手段と、
前記アクティブ空燃比制御の実行中における燃料噴射量の値を用いずに、少なくとも前記回転数検出手段によって検出された機関回転数の値を用いて、前記触媒の第2の酸素吸蔵容量を計測する第2の計測手段と、
前記第1及び第2の計測手段によってそれぞれ計測された第1及び第2の酸素吸蔵容量に基づき、燃料性状を推定する推定手段と
を備えたことを特徴とする内燃機関の触媒劣化診断装置が提供される。
これによれば、アクティブ空燃比制御の実行中における燃料噴射量の値を用いずに、機関回転数の値を用いて、触媒の第2の酸素吸蔵容量が計測される。この第2の酸素吸蔵容量計測値は、アルコール燃料の使用による燃料噴射量の増大の影響を受けない値である。よってこの値と第1の酸素吸蔵容量計測値とに基づき、燃料性状を的確に推定することができる。
本発明の第2の形態は、前記第1の形態において、
前記第2の計測手段は、前記アクティブ空燃比制御の実行中における前記機関回転数と、前記空燃比センサにより検出された排気空燃比との値に基づき、前記第2の酸素吸蔵容量を計測する
ことを特徴とする。
前記第2の計測手段は、前記アクティブ空燃比制御の実行中における前記機関回転数と、前記空燃比センサにより検出された排気空燃比との値に基づき、前記第2の酸素吸蔵容量を計測する
ことを特徴とする。
本発明の第3の形態は、前記第2の形態において、
前記第2の計測手段は、次式に基づき単位時間当たりの第2の酸素吸蔵容量dOSCを計測すると共に、この単位時間当たりの第2の酸素吸蔵容量を所定時間積算して前記第2の酸素吸蔵容量を算出することを特徴とする。
前記第2の計測手段は、次式に基づき単位時間当たりの第2の酸素吸蔵容量dOSCを計測すると共に、この単位時間当たりの第2の酸素吸蔵容量を所定時間積算して前記第2の酸素吸蔵容量を算出することを特徴とする。
但し、Vは機関排気量、Neは機関回転数、γは排気ガスの比重、A/Fは触媒流入排気ガスの空燃比、A/Fsは基準燃料に対応した理論空燃比、Kは空気中の酸素割合である。
本発明の第4の形態は、前記第1乃至第3のいずれかの形態において、
前記推定手段による推定結果に応じて前記第1の酸素吸蔵容量計測値を補正する補正手段と、
この補正された第1の酸素吸蔵容量計測値に基づき前記触媒の劣化を判定する判定手段と
を備えたことを特徴とする。
前記推定手段による推定結果に応じて前記第1の酸素吸蔵容量計測値を補正する補正手段と、
この補正された第1の酸素吸蔵容量計測値に基づき前記触媒の劣化を判定する判定手段と
を備えたことを特徴とする。
これにより、第1の酸素吸蔵容量計測値を基準燃料使用時相当の値に補正し、燃料中のアルコールの影響を取り除いた上で劣化判定することができ、診断精度を向上すると共に誤診断を防止できる。
本発明の第5の形態は、前記第4の形態において、
前記補正手段は、前記第2の酸素吸蔵容量計測値に対する前記第1の酸素吸蔵容量計測値の比に基づいて前記第1の酸素吸蔵容量計測値を補正する
ことを特徴とする。
前記補正手段は、前記第2の酸素吸蔵容量計測値に対する前記第1の酸素吸蔵容量計測値の比に基づいて前記第1の酸素吸蔵容量計測値を補正する
ことを特徴とする。
本発明の第6の形態は、前記第5の形態において、
前記補正手段は、前記比が所定値より大きいとき、前記第1の酸素吸蔵容量計測値を減量補正する
ことを特徴とする請求項記載の内燃機関の触媒劣化診断装置。
前記補正手段は、前記比が所定値より大きいとき、前記第1の酸素吸蔵容量計測値を減量補正する
ことを特徴とする請求項記載の内燃機関の触媒劣化診断装置。
燃料中のアルコール濃度が高くなるほど、第2の酸素吸蔵容量計測値に対する第1の酸素吸蔵容量計測値の比は大きくなる。よってこの比が所定値より大きいとき、第1の酸素吸蔵容量計測値を減量補正することで、第1の酸素吸蔵容量計測値を基準燃料使用時相当の値に好適に補正することができる。
本発明の第7の形態は、前記第5又は第6の形態において、
前記補正手段は、前記比が大きくなるにつれ前記第1の酸素吸蔵容量計測値が小さくなるように、前記第1の酸素吸蔵容量計測値を補正する
ことを特徴とする。
前記補正手段は、前記比が大きくなるにつれ前記第1の酸素吸蔵容量計測値が小さくなるように、前記第1の酸素吸蔵容量計測値を補正する
ことを特徴とする。
本発明によれば、燃料性状を的確に推定して診断精度を向上すると共に、誤診断を防止できるという、優れた効果が発揮される。
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づき説明する。
図1は、本実施形態の構成を示す概略図である。図示されるように、内燃機関1は、シリンダブロック2に形成された燃焼室3の内部で燃料および空気の混合気を燃焼させ、燃焼室3内でピストン4を往復移動させることにより動力を発生する。内燃機関1は車両用多気筒エンジン(1気筒のみ図示)であり、火花点火式内燃機関、より具体的にはガソリンを基準燃料とするガソリンエンジンである。
内燃機関1のシリンダヘッドには、吸気ポートを開閉する吸気弁Viと、排気ポートを開閉する排気弁Veとが気筒ごとに配設されている。各吸気弁Viおよび各排気弁Veは図示しないカムシャフトによって開閉させられる。また、シリンダヘッドの頂部には、燃焼室3内の混合気に点火するための点火プラグ7が気筒ごとに取り付けられている。
各気筒の吸気ポートは気筒毎の枝管を介して吸気集合室であるサージタンク8に接続されている。サージタンク8の上流側には吸気集合通路をなす吸気管13が接続されており、吸気管13の上流端にはエアクリーナ9が設けられている。そして吸気管13には、上流側から順に、吸入空気量を検出するためのエアフローメータ5と、電子制御式スロットルバルブ10とが組み込まれている。なお吸気ポート、サージタンク8及び吸気管13により吸気通路が形成される。
吸気通路、特に吸気ポート内に燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)12が気筒ごとに配設される。インジェクタ12から噴射された燃料は吸入空気と混合されて混合気をなし、この混合気が吸気弁Viの開弁時に燃焼室3に吸入され、ピストン4で圧縮され、点火プラグ7で点火燃焼させられる。
一方、各気筒の排気ポートは気筒毎の枝管を介して排気集合通路をなす排気管6に接続されており、排気管6には、O2ストレージ機能(酸素吸蔵能)を有する三元触媒からなる触媒11が取り付けられている。なお排気ポート、枝管及び排気管6により排気通路が形成される。触媒11の上流側と下流側とにそれぞれ、排気中の酸素濃度に基づいて排気空燃比を検出する空燃比センサ、即ち触媒前センサ17及び触媒後センサ18が設置されている。触媒前センサ17は所謂広域空燃比センサからなり、比較的広範囲に亘る空燃比を連続的に検出可能で、排気空燃比に比例した値の信号を出力する。他方、触媒後センサ18は所謂O2センサからなり、理論空燃比を境に出力値が急変する特性を持つ。
上述の点火プラグ7、スロットルバルブ10及びインジェクタ12等は、制御手段としての電子制御ユニット(以下ECUと称す)20に電気的に接続されている。ECU20は、何れも図示されないCPU、ROM、RAM、入出力ポート、および記憶装置等を含むものである。またECU20には、図示されるように、前述のエアフローメータ5、触媒前センサ17、触媒後センサ18のほか、内燃機関1のクランク角を検出するクランク角センサ14、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ15、その他の各種センサが図示されないA/D変換器等を介して電気的に接続されている。ECU20は、各種センサの検出値等に基づいて、所望の出力が得られるように、点火プラグ7、スロットルバルブ10、インジェクタ12等を制御し、点火時期、燃料噴射量、燃料噴射時期、スロットル開度等を制御する。
触媒11は、これに流入する排気ガスの空燃比A/Fが理論空燃比(ストイキ、例えばA/Fs=14.6)近傍のときにNOx ,HCおよびCOを同時に浄化する。そしてこれに対応して、ECU20は、内燃機関の通常運転時、触媒11に流入する排気ガスの空燃比即ち触媒前空燃比A/Ffrが理論空燃比に一致するように空燃比を制御する。具体的にはECU20は、理論空燃比に等しい目標空燃比A/Ftを設定すると共に、触媒前センサ17により検出された触媒前空燃比A/Ffrが目標空燃比A/Ftに一致するように、インジェクタ12から噴射される燃料噴射量をフィードバック制御する。これにより触媒11に流入する排気ガスの空燃比は理論空燃比近傍に保たれ、触媒11において最大の浄化性能が発揮されるようになる。
より具体的には、触媒前センサ17は図10に示すように、排気中の酸素濃度に比例した信号Iを出力する。そしてガソリン100%の燃料が用いられているときのストイキ(ガソリンストイキ)相当のセンサ出力値Istが予め定められ、実際のセンサ出力Iがストイキ相当のセンサ出力値Istに一致するように空燃比がフィードバック制御される。センサ出力値Iは、ECU20において、ガソリン燃料使用時の空燃比の値に換算される。
ここで、燃料にアルコールが混入されたときにも同様に、実際のセンサ出力Iがガソリンストイキ相当のセンサ出力値Istに一致するように空燃比がフィードバック制御される。アルコールが酸素を含むので、その分燃料噴射量が増加し、数値上の空燃比はガソリンストイキ時の値(14.6)より小さな値となるが、結果として空燃比は実際に使用されているアルコール燃料のストイキ(例えば12.0等)に制御される。後述するアクティブ空燃比制御において、空燃比がストイキよりリーン側又はリッチ側に制御されたときも同様である。要は、アルコール燃料使用時にはガソリン燃料使用時と比べて数値上の空燃比が違うだけで、排気中酸素濃度及びセンサ出力については同一であり、結果的に同じガス状態(リーン、ストイキ、リッチ)が実現されることとなる。
ここで、触媒11についてより詳細に説明する。図2に示すように、触媒11においては、図示しない担体基材の表面上にコート材31が被覆され、このコート材31に微粒子状の触媒成分32が多数分散配置された状態で保持され、触媒11内部で露出されている。触媒成分32は主にPt,Pd等の貴金属からなり、NOx ,HCおよびCOといった排ガス成分を反応させる際の活性点となる。他方、コート材31は、排気ガスと触媒成分32との界面における反応を促進させる助触媒の役割を担うと共に、雰囲気ガスの空燃比に応じて酸素を吸収放出可能な酸素吸蔵成分を含む。酸素吸蔵成分は例えば酸化セリウムCeO2やジルコニアからなる。例えば、触媒成分32及びコート材31の雰囲気ガスが理論空燃比よりリッチであると、触媒成分32の周囲に存在する酸素吸蔵成分に吸蔵されていた酸素が放出され、この結果、放出された酸素によりHCおよびCOといった未燃成分が酸化され、浄化される。逆に、触媒成分32及びコート材31の雰囲気ガスが理論空燃比よりリーンであると、触媒成分32の周囲に存在する酸素吸蔵成分が雰囲気ガスから酸素を吸収し、この結果NOxが還元浄化される。
このような酸素吸放出作用により、通常の空燃比制御の際に触媒前空燃比A/Ffrが理論空燃比に対し多少ばらついたとしても、NOx、HCおよびCOといった三つの排気ガス成分を同時浄化することができる。よって通常の空燃比制御において、触媒前空燃比A/Ffrを敢えて理論空燃比を中心に微小振動させ、酸素の吸放出を繰り返させることにより排ガス浄化を行うことも可能である。
ところで、新品状態の触媒11では前述したように細かい粒子状の触媒成分32が多数均等に分散配置されており、排気ガスと触媒成分32との接触確率が高い状態に維持されている。しかしながら、触媒11が劣化してくると、一部の触媒成分32に消失が見られるほか、触媒成分32同士が排気熱で焼き固まって焼結状態になるものがある(図の破線参照)。こうなると排気ガスと触媒成分32との接触確率の低下を引き起こし、浄化率を落としめる原因となる。そしてこのほかに、触媒成分32の周囲に存在するコート材31の量、即ち酸素吸蔵成分の量が減少し、酸素吸蔵能自体が低下する。
このように、触媒11の劣化度と触媒11の持つ酸素吸蔵能の低下度とは相関関係にある。そこで本実施形態では、触媒11の酸素吸蔵能を検出することにより触媒11の劣化度を検出することとしている。ここで、触媒11の酸素吸蔵能は、現状の触媒11が吸蔵し得る最大酸素量である酸素吸蔵容量(OSC;O2 Strage Capacity、単位はg)の大きさによって表される。
以下、本実施形態における触媒劣化診断について説明する。
本実施形態の触媒劣化診断は前述のCmax法によるものを基本とする。そして触媒11の劣化診断に際しては、ECU20によりアクティブ空燃比制御が実行される。アクティブ空燃比制御において、触媒前空燃比A/Ffrは、所定の中心空燃比A/Fcを境にリッチ側及びリーン側に強制的に(アクティブに)交互に切り替えられる。なおリッチ側に変化されたときの空燃比をリッチ空燃比A/Fr、リーン側に変化されたときの空燃比をリーン空燃比A/Flと称す。このアクティブ空燃比制御によって触媒前空燃比A/Ffrがリッチ側又はリーン側に変化されているときに触媒の酸素吸蔵容量OSCが計測される。
触媒11の劣化診断は、内燃機関1の定常運転時で且つ触媒11が活性温度域にあるときに実行される。触媒11の温度は、温度センサを用いて直接検出してもよいが、本実施形態の場合内燃機関の運転状態から推定することとしている。例えばECU20は、エアフローメータ5によって検出される吸入空気量Gaと、クランク角センサ14の出力に基づいて検出される機関回転数Ne(rpm)とに基づいて、予め実験等を通じて設定されたマップ又は関数を利用し、触媒11の温度を推定する。
図3(A),(B)にはそれぞれ、アクティブ空燃比制御実行時における触媒前センサ17及び触媒後センサ18の出力が実線で示されている。また、図3(A)には、ECU20内部で発生される目標空燃比A/Ftが破線で示されている。触媒前センサ17及び触媒後センサ18の出力値はそれぞれ触媒前空燃比A/Ffr及び触媒後空燃比A/Frrの値を表す。なお空燃比の値についてはガソリン燃料使用時の値である。
図3(A)に示されるように、目標空燃比A/Ftは、中心空燃比としての理論空燃比A/Fsを中心として、そこからリッチ側に所定の振幅(リッチ振幅Ar、Ar>0)だけ離れた空燃比(リッチ空燃比A/Fr)と、そこからリーン側に所定の振幅(リーン振幅Al、Al>0)だけ離れた空燃比(リーン空燃比A/Fl)とに強制的に、且つ交互に切り替えられる。そしてこの目標空燃比A/Ftの切り替えに追従して、実際値としての触媒前空燃比A/Ffrも、目標空燃比A/Ftに対し僅かな時間遅れを伴って切り替わる。このことから目標空燃比A/Ftと触媒前空燃比A/Ffrとは時間遅れがあること以外等価であることが理解されよう。
図示例においてリッチ振幅Arとリーン振幅Alとは等しい。例えば理論空燃比A/Fs=14.6、リッチ空燃比A/Fr=14.1、リーン空燃比A/Fl=15.1、リッチ振幅Ar=リーン振幅Al=0.5である。通常の空燃比制御の場合に比べ、アクティブ空燃比制御の場合は空燃比の振り幅が大きく、即ちリッチ振幅Arとリーン振幅Alとの値は大きい。
ところで、目標空燃比A/Ftが切り替えられるタイミングは、触媒後センサ18の出力がリッチからリーンに、又はリーンからリッチに切り替わるタイミングである。ここで図示されるように触媒後センサ18の出力電圧は理論空燃比A/Fsを境に急変し、触媒後空燃比A/Frrが理論空燃比A/Fsより小さいリッチ側の空燃比であるときその出力電圧がリッチ判定値VR以上となり、触媒後空燃比A/Frrが理論空燃比A/Fsより大きいリーン側の空燃比であるときその出力電圧がリーン判定値VL以下となる。ここでVR>VLであり、例えばVR=0.59(V)、VL=0.21(V)である。
図3(A),(B)に示されるように、触媒後センサ18の出力電圧がリッチ側の値からリーン側に変化してリーン判定値VLに等しくなった時(時刻t1)、目標空燃比A/Ftはリーン空燃比A/Flからリッチ空燃比A/Frに切り替えられる。その後、触媒後センサ18の出力電圧がリーン側の値からリッチ側に変化してリッチ判定値VRに等しくなった時(時刻t2)、目標空燃比A/Ftはリッチ空燃比A/Frからリーン空燃比A/Flに切り替えられる。
このような空燃比変化を行うアクティブ空燃比制御を実行しつつ、次のようにして触媒11の酸素吸蔵容量OSCが計測され、触媒11の劣化が判定される。
図3を参照して、時刻t1より前では目標空燃比A/Ftがリーン空燃比A/Flとされ、触媒11にはリーンガスが流入されている。このとき触媒11では酸素を吸収し続けているが、一杯に酸素を吸収した時点でそれ以上酸素を吸収できなくなり、リーンガスが触媒11を通り抜けて触媒11の下流側に流れ出す。こうなると触媒後空燃比A/Frrがリーン側に変化し、触媒後センサ18の出力電圧がリーン判定値VLに達した時点(t1)で、目標空燃比A/Ftがリッチ空燃比A/Frに切り替えられ、或いは反転される。このように目標空燃比A/Ftは触媒後センサ18の出力をトリガにして反転される。
そして今度は触媒11にリッチガスが流入されることとなる。このとき触媒11では、それまで吸蔵されていた酸素が放出され続ける。よって触媒11の下流側にはほぼ理論空燃比A/Fsの排気ガスが流出し、触媒後空燃比A/Frrがリッチにならないことから、触媒後センサ18の出力は反転しない。触媒11から酸素が放出され続けるとやがて触媒11からは全ての吸蔵酸素が放出され尽くし、その時点でそれ以上酸素を放出できなくなり、リッチガスが触媒11を通り抜けて触媒11の下流側に流れ出す。こうなると触媒後空燃比A/Frrがリッチ側に変化し、触媒後センサ18の出力電圧がリッチ判定値VRに達した時点(t2)で、目標空燃比A/Ftがリーン空燃比A/Flに切り替えられる。
酸素吸蔵容量OSCが大きいほど、酸素を吸収或いは放出し続けることのできる時間が長くなる。つまり、触媒が劣化していない場合は目標空燃比A/Ftの反転周期(例えばt1からt2までの時間)が長くなり、触媒の劣化が進むほど目標空燃比A/Ftの反転周期は短くなる。
そこで、このことを利用して酸素吸蔵容量OSCが以下のようにして計測される。図4に示すように、時刻t1で目標空燃比A/Ftがリッチ空燃比A/Frに切り替えられた直後、僅かに遅れて実際値としての触媒前空燃比A/Ffrがリッチ空燃比A/Frに切り替わる。そして触媒前空燃比A/Ffrが理論空燃比A/Fsに達した時点t11から、次に目標空燃比A/Ftが反転する時点t2まで、次式(1)により、所定の微小時間毎の酸素吸蔵容量dOSC(酸素吸蔵容量の瞬時値)が算出され、且つこの微小時間毎の酸素吸蔵容量dOSCが時刻t11から時刻t2まで積算される。こうしてこの酸素放出サイクルにおける酸素吸蔵容量即ち放出酸素量(図4のOSC1)が計測される。
ここで、Qは燃料噴射量であり、空燃比差ΔA/Fに燃料噴射量Qを乗じるとストイキに対し不足又は過剰分の空気量を算出できる。Kは空気に含まれる酸素割合(約0.23)を表す定数である。
基本的には、この1回で計測された酸素吸蔵容量OSCを用い、これを所定の劣化判定値OSCsと比較し、酸素吸蔵容量OSCが劣化判定値OSCsを超えていれば正常、酸素吸蔵容量OSCが劣化判定値OSCs以下ならば劣化、というように触媒の劣化を判定できる。しかしながら、本実施形態では精度を向上させるため、目標空燃比A/Ftがリーン側となっている酸素吸蔵サイクルでも同様に酸素吸蔵容量(この場合酸素吸蔵量)を計測し、これら酸素吸蔵容量の平均値を1吸放出サイクルに係る1単位の酸素吸蔵容量として計測している。そしてさらに、吸放出サイクルを複数回繰り返し、複数単位の酸素吸蔵容量の値を得、その平均値を最終的な酸素吸蔵容量計測値とし、劣化判定値と比較して、最終的な劣化判定を行っている。
酸素吸蔵サイクルにおける酸素吸蔵容量(酸素吸蔵量)の計測については、図4に示すように、時刻t2で目標空燃比A/Ftがリーン空燃比A/Flに切り替えられた後、触媒前空燃比A/Ffrが理論空燃比A/Fsに達した時点t21から、次に目標空燃比A/Ftがリッチ側に反転する時点t3まで、前式(1)により微小時間毎の酸素吸蔵容量dOSCが算出され、且つこの微小時間毎の酸素吸蔵容量dOSCが積算される。こうしてこの酸素吸収サイクルにおける酸素吸蔵容量OSC即ち吸蔵酸素量(図4のOSC2)が計測される。前回サイクルの酸素吸蔵容量OSC1と今回サイクルの酸素吸蔵容量OSC2とはほぼ等しい値となるはずである。
さて、前述したように、本実施形態のようなガソリンエンジンにガソリンとアルコールの混合燃料(アルコール燃料)が使用されると、酸素吸蔵容量計測値がガソリン燃料使用時に比べて増加することが本発明者らの試験により判明している。そして、その主な理由は、アルコール燃料使用時にガソリン燃料使用時よりも燃料噴射量が多くなること、及び酸素吸蔵容量の計測に前記式(1)の如く燃料噴射量の値が用いられることによるものと考えられる。なお、アルコール燃料使用時とガソリン燃料使用時とでは、触媒前センサ17により検出される排気中の酸素濃度が同じでも、排気ガスの成分が異なり、触媒内で同じ反応が起きないことも理由の一つと推察される。
このように、燃料性状即ちアルコール濃度に起因して酸素吸蔵容量計測値が増大すると、正確な劣化診断が行えないばかりか、正常と劣化の境目(クライテリア)付近にありながらなお劣化している触媒について、誤って正常と誤診断してしまう虞がある。そこで本実施形態では、以下のようにして燃料性状を的確に推定し、診断精度を向上して誤診断を防止することとしている。
図5に、本実施形態の劣化診断処理を実行するためのルーチンを示す。このルーチンはECU20により所定の演算周期毎に繰り返し実行される。
まずステップS101では、診断のための所定の前提条件が成立しているか否かが判断される。例えば、吸入空気量Ga及び機関回転数Neが略一定となっているなど、エンジンが定常運転状態にあり、且つ触媒及び触媒前後センサが活性化していれば、前提条件成立となる。前提条件が成立していない場合にはルーチンが終了され、他方、前提条件が成立している場合にはステップS102に進む。
ステップS102においては、前述の式(1)に従って酸素吸蔵容量の値が計測される。こうして計測された酸素吸蔵容量を「第1の酸素吸蔵容量」と称し、OSC(1)で表す。前記式(1)から分かるように、この第1の酸素吸蔵容量OSC(1)は、アクティブ空燃比制御実行中の燃料噴射量Qの検出値を用いて計測される値である。式(1)における触媒前空燃比A/Ffrの値については、単に触媒前センサ出力Iを図10に示したような関係に基づいて空燃比に換算した値が用いられる。またストイキ空燃比A/Fsの値についてもガソリンストイキ値=14.6が用いられる。
また、このステップS102においては、同一のアクティブ空燃比制御実行中に、次式(2)に従って、酸素吸蔵容量の値が計測される。こうして計測された酸素吸蔵容量を「第2の酸素吸蔵容量」と称し、OSC(2)で表す。次式(2)から分かるように、第2の酸素吸蔵容量OSC(2)は、アクティブ空燃比制御実行中の燃料噴射量Qの検出値を用いずに、機関回転数Neの検出値を用いて計測される値である。
ここで、dOSCは単位時間(ここでは1秒)当たりの酸素吸蔵容量(酸素吸蔵容量の瞬時値)、Vは機関排気量、Neは機関回転数(rpm)、γは排気ガスの比重、A/Fは触媒前センサ17によって検出された排気空燃比(触媒前空燃比fr)、A/Fsはガソリン燃料に対応した理論空燃比(=14.6)、Kは空気中の酸素割合(約0.23)である。V及びKは定数である。γは排気ガスの成分比率に応じて微妙に変化するが、精度上問題ないので、本実施形態では定数として取り扱う。また本実施形態では、後述するように第1の酸素吸蔵容量OSC(1)と第2の酸素吸蔵容量OSC(2)の計測値の比を求めて、γの変化の影響を極力排除するようにしている。式(1)と同様、式(2)における空燃比A/Fの値については、単に触媒前センサ出力Iを図10に示したような関係に基づいて空燃比に換算した値が用いられる。
式(2)において、V×Ne/2×1/60は単位時間当たりの排気ガス量であり、これに比重γを乗じると単位時間当たりの排気ガス重量が算出できる。{(A/F/(1+A/F)}はA/(A+F)と変形でき、燃料と吸入空気の総重量に対する吸入空気の重量割合を意味する。この値は空燃比がリーンであるほど大きくなり、空燃比がリッチであるほど小さくなる。{(A/Fs/(1+A/Fs)}はストイキ時の同重量割合である。これらの差が、ストイキに対し過剰又は不足となる空気量の割合を示し、この割合に排気ガス重量と酸素割合Kを乗じれば、吸蔵又は放出分に相当する酸素量を算出できる。なお、{(A/F/(1+A/F)}は{空気重量割合/(空気重量割合+燃料重量割合)}とも表現でき、{(A/Fs/(1+A/Fs)}は{ストイキ空気重量割合/(ストイキ空気重量割合+ストイキ燃料重量割合)}とも表現できる。ここで「空気重量割合」及び「燃料重量割合」とは、それぞれ排気ガス中の空気及び燃料の重量割合のことをいい、「ストイキ空気重量割合」及び「ストイキ燃料重量割合」とは、それぞれストイキ時の排気ガス中の空気及び燃料の重量割合のことをいう。
第2の酸素吸蔵容量OSC(2)の計測に際しては、式(2)に基づいて単位時間当たりの酸素吸蔵容量dOSCが算出され、この単位時間当たりの酸素吸蔵容量dOSCが、目標空燃比A/Ftの切替後に触媒前空燃比A/Ffrの計測値が理論空燃比A/Fsに達した時点(例えば図4のt11)から、次に目標空燃比A/Ftが反転する時点(例えば図4のt2)まで積算される。こうして1サイクルの酸素吸蔵容量が計測される。この後前記同様に、直後のサイクルでも酸素吸蔵容量が計測され、これら酸素吸蔵容量の平均値が1吸放出サイクルに係る1単位の酸素吸蔵容量として算出される。そしてさらに吸放出サイクルが複数回繰り返され、複数単位の酸素吸蔵容量の値を得、その平均値が最終的な酸素吸蔵容量計測値として算出される。
式(2)から分かるように、第2の酸素吸蔵容量OSC(2)は、アクティブ空燃比制御実行中の燃料噴射量Qの値を用いずに、機関回転数Neの値を用いて計測される値である。燃料噴射量Qの値が用いられないので、燃料のアルコール濃度が高くなって燃料噴射量Qが増えても、これに影響されない。よって第2の酸素吸蔵容量OSC(2)を基準とすることで燃料のアルコール濃度を推定することが可能である。
なお、ここでは複数の吸放出サイクルに係る複数単位の酸素吸蔵容量の値を平均化して最終的な酸素吸蔵容量の値を求めたが、これに限らず、例えば吸蔵又は放出の1サイクルにおける酸素吸蔵容量の値を最終値としてもよい。或いは、1吸放出サイクルに係る1単位の酸素吸蔵容量の値を最終値としてもよい。
次に、ステップS103において、第2の酸素吸蔵容量OSC(2)に対する第1の酸素吸蔵容量OSC(1)の比、即ち酸素吸蔵容量比(以下「OSC比」という)R=OSC(1)/OSC(2)が算出され、このOSC比Rが所定のしきい値Rsと比較される。
燃料中のアルコール濃度ひいては燃料噴射量Qの増加につれ、第1の酸素吸蔵容量OSC(1)は増加するのに対し、第2の酸素吸蔵容量OSC(2)は変化しない。よってOSC比Rは燃料中のアルコール濃度を反映した値となり、このOSC比Rによって燃料中のアルコール濃度が推定される。
図6には、燃料中のアルコール濃度BとOSC比Rとの関係を示す。図示するように、燃料中のアルコール濃度Bが増加するにつれ、OSC比Rが増加する。ここでは、第1の酸素吸蔵容量OSC(1)の計測値について誤差が許容範囲外となる最小のアルコール濃度Bsが定められ、このアルコール濃度Bsに対応するOSC比Rが前記しきい値Rsとして設定される。よって、OSC比Rがしきい値Rsより大きければ、アルコール濃度が許容範囲外となる程に高いと判定ないし推定され、第1の酸素吸蔵容量OSC(1)の計測値はそのまま劣化判定に用いることができない。逆に、OSC比Rがしきい値Rs以下であれば、アルコール濃度が許容範囲内となる程に低いと判定ないし推定され、第1の酸素吸蔵容量OSC(1)の計測値はそのまま劣化判定に用いることができる。
ステップS103において、OSC比Rがしきい値Rs以下であるときは、ステップS105に進んで第1の酸素吸蔵容量OSC(1)が劣化判定値OSCsと比較される。そして第1の酸素吸蔵容量OSC(1)が劣化判定値OSCsより大きければ、ステップS106で触媒は正常と判定され、他方第1の酸素吸蔵容量OSC(1)が劣化判定値OSCs以下ならば、ステップS107で触媒は劣化と判定される。なお、触媒が劣化と判定された場合、その事実をユーザに知らせるため、チェックランプ等の警告装置を起動させるのが好ましい。以上でルーチンが終了する。
他方、ステップS103においてOSC比Rがしきい値Rsより大きいときは、ステップS104に進んで第1の酸素吸蔵容量OSC(1)が補正される。即ち、アルコール燃料使用時の第1の酸素吸蔵容量OSC(1)の計測値が、基準燃料としてのガソリン燃料使用時相当の値となるよう減量補正され、燃料中のアルコールの影響が排除される。
補正の方法としては、例えば第1の酸素吸蔵容量計測値OSC(1)に、補正量としての所定の補正係数Lを乗じて、補正された第1の酸素吸蔵容量計測値OSC(1)’を算出することができる。図7にはECU20に記憶された補正係数Lを算出するための第1のマップを示し、これによれば、OSC比Rがしきい値Rsより大きいとき、0<L<1の範囲の一定の補正係数Lが得られる。なおマップ上、OSC比Rがしきい値Rs以下のときにはL=1である。この補正係数Lを第1の酸素吸蔵容量計測値OSC(1)に乗じることによって、第1の酸素吸蔵容量計測値OSC(1)はガソリン使用時相当の値に減量補正されることとなる。
また、他の補正方法としては、例えば第1の酸素吸蔵容量計測値OSC(1)に、補正量としての所定の補正加算値Mを加えて、補正された第1の酸素吸蔵容量計測値OSC(1)を算出することができる。このとき図7に示す第1のマップは括弧書きの如く変形され、OSC比Rがしきい値Rsより大きいとき、M<0となるような一定の補正量Mが得られる。なおマップ上、OSC比Rがしきい値Rs以下のときにはM=0である。この補正加算値Mを第1の酸素吸蔵容量計測値OSC(1)に加算することによって、第1の酸素吸蔵容量計測値OSC(1)は減量補正されることとなる。
図8には補正係数Lを算出するための第2のマップを示す。これによれば、OSC比Rがしきい値Rsより大きいとき、0<L<1であり且つOSC比Rの増大につれ徐々に減少するような補正係数Lが得られる。また図8には括弧書きで補正加算値Mを併記しており、OSC比Rがしきい値Rsより大きいとき、M<0であり且つOSC比Rの増大につれ徐々に減少するような補正加算値Mが得られる。これによっても第1の酸素吸蔵容量計測値OSC(1)を減量補正することができる。特に、燃料中のアルコール濃度Bが増加するにつれOSC比Rが増加するという特性(図6参照)に合わせて、アルコール濃度Bが増加するほど減量補正量を増加することができる。
なお、図9には補正係数Lを算出するための第3のマップを示す。これによれば、OSC比R=1のとき補正係数L=1であり、ここからOSC比Rが増大するにつれ補正係数Lが小さくなる(但しL>0)。同様に、括弧書きで示される補正加算値Mを用いるときは、OSC比R=1のとき補正加算値M=0であり、ここからOSC比Rが増大するにつれ補正加算値Mが小さくなる。これは、アルコール濃度が増加してBsに達する以前にOSC比Rが増加し始めるという図6の特性を考慮し、マップの特性を図6の特性により合わせたものである。補正係数Lが1より小さくなったとき、或いは補正加算値Mが0より小さくなったとき、実質的な第1の酸素吸蔵容量計測値OSC(1)の減量補正が実施される。このマップを用いるときは、図5のステップS103、S104の代わりに、OSC比Rを算出してマップから補正係数L又は補正加算値Mを取得し、この補正係数L又は補正加算値Mにより第1の酸素吸蔵容量計測値OSC(1)を補正するステップが実行される。
図5に戻って、ステップS104で第1の酸素吸蔵容量OSC(1)が補正された後、ステップS105に進んで補正後の第1の酸素吸蔵容量OSC(1)が劣化判定値OSCsと比較される。そして、補正後の第1の酸素吸蔵容量OSC(1)が劣化判定値OSCsより大きければ、ステップS106で触媒は正常と判定され、他方、補正後の第1の酸素吸蔵容量OSC(1)が劣化判定値OSCs以下ならば、ステップS107で触媒は劣化と判定される。以上でルーチンが終了する。
このように、本実施形態によれば、第1及び第2の酸素吸蔵容量計測値OSC(1)、OSC(2)に基づき、燃料のアルコール濃度を推定し、この推定結果に応じて第1の酸素吸蔵容量計測値OSC(1)をガソリン使用時相当の値に補正し、この補正された第1の酸素吸蔵容量計測値に基づき触媒の劣化を判定している。よって、燃料中のアルコールの影響を排除した上で劣化診断を行うことができ、診断精度を向上すると共に、誤診断を確実に防止することができる。
以上、本発明の実施形態について詳細に述べたが、本発明の実施形態は他にも様々なものが考えられる。例えば内燃機関の用途や形式は任意であり、例えば車両用以外であってもよいし、直噴式等であってもよい。触媒後センサに触媒前センサと同様の広域空燃比センサを用いてもよいし、触媒前センサに触媒後センサと同様のO2センサを用いてもよい。これら広域空燃比センサやO2センサを含め、広く、排気空燃比を検出するセンサを空燃比センサということとする。
前記実施形態では第1及び第2の酸素吸蔵容量計測値の比(OSC比R)に基づき、燃料性状推定及び補正を実施したが、これに限らず、例えば両者の差に基づき、燃料性状推定及び補正を実施してもよい。この場合、第2の酸素吸蔵容量計測値から第1の酸素吸蔵容量計測値を減じて得られる差が所定値より大きいとき、第1の酸素吸蔵容量計測値を基準燃料相当の値に減量補正するのが好ましい。また、その差が大きくなるにつれ第1の酸素吸蔵容量計測値が小さくなるように、第1の酸素吸蔵容量計測値を補正するのが好ましい。
前述の如く推定されたアルコール濃度Bや、補正量L,Mの値を空燃比制御等の別の制御に利用することも可能である。
本発明には、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
1 内燃機関
6 排気管
11 触媒
12 インジェクタ
17 触媒前センサ
18 触媒後センサ
20 電子制御ユニット(ECU)
Q 燃料噴射量
Ne 機関回転数
A/Ffr 触媒前空燃比
L 補正係数
M 補正加算値
6 排気管
11 触媒
12 インジェクタ
17 触媒前センサ
18 触媒後センサ
20 電子制御ユニット(ECU)
Q 燃料噴射量
Ne 機関回転数
A/Ffr 触媒前空燃比
L 補正係数
M 補正加算値
Claims (7)
- 内燃機関の排気通路に配置された触媒の劣化を診断する装置であって、
前記触媒上流の排気通路に配置され、排気中の酸素濃度に基づいて排気空燃比を検出する空燃比センサと、
機関回転数を検出する回転数検出手段と、
前記空燃比センサにより検出された排気空燃比がリーン側及びリッチ側に交互に切り替わるように空燃比を制御するアクティブ空燃比制御を実行するアクティブ空燃比制御手段と、
前記アクティブ空燃比制御の実行中における燃料噴射量の値を用いて、前記触媒の第1の酸素吸蔵容量を計測する第1の計測手段と、
前記アクティブ空燃比制御の実行中における燃料噴射量の値を用いずに、少なくとも前記回転数検出手段によって検出された機関回転数の値を用いて、前記触媒の第2の酸素吸蔵容量を計測する第2の計測手段と、
前記第1及び第2の計測手段によってそれぞれ計測された前記第1及び第2の酸素吸蔵容量に基づき、燃料性状を推定する推定手段と
を備えたことを特徴とする内燃機関の触媒劣化診断装置。 - 前記第2の計測手段は、前記アクティブ空燃比制御の実行中における前記機関回転数と、前記空燃比センサにより検出された排気空燃比との値に基づき、前記第2の酸素吸蔵容量を計測する
ことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の触媒劣化診断装置。 - 前記推定手段による推定結果に応じて前記第1の酸素吸蔵容量計測値を補正する補正手段と、
この補正された第1の酸素吸蔵容量計測値に基づき前記触媒の劣化を判定する判定手段と
を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内燃機関の触媒劣化診断装置。 - 前記補正手段は、前記第2の酸素吸蔵容量計測値に対する前記第1の酸素吸蔵容量計測値の比に基づいて前記第1の酸素吸蔵容量計測値を補正する
ことを特徴とする請求項4記載の内燃機関の触媒劣化診断装置。 - 前記補正手段は、前記比が所定値より大きいとき、前記第1の酸素吸蔵容量計測値を減量補正する
ことを特徴とする請求項5記載の内燃機関の触媒劣化診断装置。 - 前記補正手段は、前記比が大きくなるにつれ前記第1の酸素吸蔵容量計測値が小さくなるように、前記第1の酸素吸蔵容量計測値を補正する
ことを特徴とする請求項5又は6記載の内燃機関の触媒劣化診断装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007209640A JP2009041515A (ja) | 2007-08-10 | 2007-08-10 | 内燃機関の触媒劣化診断装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007209640A JP2009041515A (ja) | 2007-08-10 | 2007-08-10 | 内燃機関の触媒劣化診断装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2009041515A true JP2009041515A (ja) | 2009-02-26 |
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ID=40442499
Family Applications (1)
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JP2007209640A Pending JP2009041515A (ja) | 2007-08-10 | 2007-08-10 | 内燃機関の触媒劣化診断装置 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2009041515A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2011111183A1 (ja) | 2010-03-10 | 2011-09-15 | トヨタ自動車株式会社 | 内燃機関の異常検出装置 |
-
2007
- 2007-08-10 JP JP2007209640A patent/JP2009041515A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2011111183A1 (ja) | 2010-03-10 | 2011-09-15 | トヨタ自動車株式会社 | 内燃機関の異常検出装置 |
US8918268B2 (en) | 2010-03-10 | 2014-12-23 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Malfunction detecting device for internal combustion engine |
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