JP2009039966A - 繊維強化樹脂歯車 - Google Patents

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Abstract

【課題】切削加工により歯部を形成することで歯車の周方向に延びる連続繊維が切断された状態になっても歯部の強度低下を抑制することができる繊維強化樹脂歯車を提供する。
【解決手段】繊維強化樹脂歯車11は、芯金12の外周に樹脂部13が形成され、樹脂部13の外周に繊維強化樹脂部14が形成されている。繊維強化樹脂部14には歯部15が形成されている。繊維強化樹脂部14は連続繊維からなるとともに歯車の周方向に沿う面を形成するように歯車の径方向に積層された複数の繊維層で構成された強化材を有する繊維強化樹脂で形成されている。強化材は、少なくとも歯部15の各山15aと対応する位置に複数の繊維層16を貫通する繊維としての厚さ方向糸17が存在するように形成された三次元繊維組織で構成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、繊維強化樹脂歯車に関する。
繊維強化樹脂歯車は、噛み合い音が低い、軽量で回転慣性力が小さい等の利点を持つため、種々の分野で使用されている。そして、近年、繊維強化樹脂歯車では、歯切り加工の良好性、歯部の耐摩耗性、歯部の強度、耐負荷性を備えたものが望まれている。この要求を満たすため、プリプレグを巻いて棒状とするとともに、その両端を合わせてドーナツ状として成形固化したリング状素材を歯切りして、歯部の噛み合い面にプリプレグを構成する基材の繊維が木の年輪状に配向された繊維強化樹脂歯車が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、つなぎ目の目立たないリング状補強繊維基材を用い、そのリング状成形体で歯部を構成した樹脂製歯車において、補強繊維が歯車の歯面に加わる応力を有効に受け止められるようにした樹脂製歯車が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の樹脂製歯車は、帯状のフェルトを重ね巻きし、中心には空間を残したリング状の補強繊維基材を用いる。フェルトを構成する補強繊維同士の間はフェルトの厚さ方向を向いた補強繊維により結合されている。フェルトの厚さ方向を向いた補強繊維は、補強繊維の集積層にニードリングを施して形成する。また、帯状のフェルトを重ね巻きし、重ね巻きしながら又は重ね巻き後にさらにニードリングを施して、重ね巻きしたフェルト層間にわたる補強繊維を生成する。このような補強繊維基材に樹脂を含浸したリング状成形体で歯車の歯部を構成する。
特開平5−240325号公報 特開2001−121617号公報
ところが、特許文献1の繊維強化樹脂歯車を模式的に示すと、図11に示すように、歯車71の中心と直交する断面において、歯部72を構成する連続繊維から成る複数の繊維層73が互いに平行な状態でマトリックス樹脂中に配置されている。しかし、切削加工で歯部を形成した際に歯車の周方向に延びる繊維が切断された状態となるとともに、繊維層73間を結合する(貫く)繊維が存在しないため、せん断方向に対する強度が弱いという問題がある。
一方、特許文献2の歯車では、繊維層を接合する補強繊維は存在する。しかし、各繊維層はフェルト、即ち短繊維で構成されているため、連続繊維が所望の配向角で配列された繊維層に比較して繊維強化樹脂の強度が低くなるという問題がある。
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は切削加工により歯部を形成することで歯車の周方向に延びる連続繊維が切断された状態になっても歯部の強度低下を抑制することができる繊維強化樹脂歯車を提供することにある。
前記の目的を達成するため請求項1に記載の発明は、少なくとも歯部が、連続繊維からなるとともに歯車の周方向に沿う面を形成するように歯車の径方向に積層された複数の繊維層で構成された強化材を有する繊維強化樹脂で形成された繊維強化樹脂歯車であって、前記強化材は、少なくとも前記歯部の各山と対応する位置に前記複数の繊維層を貫通する繊維が存在するように形成された三次元繊維組織で構成されている。ここで、「三次元繊維組織」とは、面を形成するように配列された繊維(糸)からなる繊維層が複数層積層され、その繊維層を貫通する方向に配列された厚さ方向糸を含むものを意味する。そして、繊維層は一方向に配列された繊維だけで構成される場合に限らず、平織物や綾織物等の織物のように複数の方向に配列された繊維が相互に結合された構成やあるいは組紐状組織体で構成されたものであってもよい。また、「複数の繊維層を貫通する繊維」とは、単なる繊維に限らず繊維に樹脂を含浸させてロッド状にしたものも含む。
この発明では、繊維強化樹脂歯車の歯部を構成する繊維強化樹脂の強化材は、各山の位置において複数の繊維層を貫通する繊維が存在するため、周方向に延びる繊維が切断された状態であっても積層された繊維層が、繊維層を貫通する繊維によって結合されているため、歯部の強度低下を抑制することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記歯部の各山と対応する位置に前記複数の繊維層を貫通するように存在する繊維として、少なくとも前記各歯部の歯面に沿って延びるように配列されたものが存在する。ここで、「歯面に沿って延びる」とは、例えば、歯車のピッチ円と歯部との交線(歯すじ)における歯面接線方向と平行に延びることを意味する。したがって、この発明では、各歯部の強度がより向上する。
請求項3に記載の発明は、少なくとも歯部が、連続繊維からなるとともに歯車の周方向に沿う面を形成するように歯車の径方向に積層された複数の繊維層で構成された強化材を有する繊維強化樹脂で形成された繊維強化樹脂歯車であって、前記強化材は、少なくとも前記歯部の各山と対応する位置に、ニードルパンチにより形成されて、少なくとも隣接する繊維層を貫通するように延びる繊維が存在している。ここで、「繊維層」とは、一方向に配列された繊維だけで構成される場合に限らず、平織物や綾織物等の織物のように複数の方向に配列された繊維が相互に結合された構成やあるいは組紐状組織体で構成されたものであってもよい。この発明では、隣接する繊維層を貫通するように延びる繊維がニードルパンチによって形成されるため、三次元繊維組織の厚さ方向糸のように複数の繊維層全体を貫通するような繊維は少ないが、隣接する繊維層を貫通するように延びる繊維を形成(配列)する装置の構成が簡単になる。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記歯部の各山と対応する位置に、隣接する繊維層を貫通するように延びる繊維として、少なくとも前記各歯部の歯面に沿って延びるように配列されたものが存在する。したがって、この発明では、各歯部の強度がより向上する。
本発明によれば、切削加工により歯部を形成することで歯車の周方向に延びる連続繊維が切断された状態になっても歯部の強度低下を抑制することができる繊維強化樹脂歯車を提供することができる。
(第1の実施形態)
以下、本発明を平歯車に具体化した一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。図1に示すように、繊維強化樹脂歯車11は、芯金12の外周に樹脂部13が形成され、樹脂部13の外周に繊維強化樹脂部14が形成されている。繊維強化樹脂部14には歯部15が形成されている。
繊維強化樹脂部14は連続繊維からなるとともに歯車の周方向に沿う面を形成するように歯車の径方向に積層された複数の繊維層で構成された強化材を有する繊維強化樹脂で形成されている。強化材は、少なくとも歯部15の各山15aと対応する位置に複数の繊維層16を貫通する繊維としての厚さ方向糸17が存在するように形成された三次元繊維組織で構成されている。ここで、山15aとは、歯車の歯底円から歯先円までの歯車の凸部の部分を意味する。厚さ方向糸17は、好ましくは歯底円より歯車の内周側まで達しており、さらに好ましくは繊維強化樹脂部14の外側から内側に渡っている。
強化材を構成する繊維は、繊維強化樹脂歯車11に要求される物性によって選択されるが、高強度が要求される場合は、例えば、アラミド繊維、炭素繊維等が使用される。樹脂部13や繊維強化樹脂部14のマトリックス樹脂としてはモノマーキャストナイロン樹脂が使用されている。
次に繊維強化樹脂歯車11の製造方法を説明する。繊維強化樹脂歯車11の製造工程は、平板状の積層繊維層を形成する工程と、その積層繊維層の所定の位置に厚さ方向糸を挿入して三次元繊維組織を形成する工程と、三次元繊維組織を円筒状に変形させ、円筒状の三次元繊維組織に樹脂を含浸させて円筒状の繊維強化樹脂成形体を製造する繊維強化樹脂成形体形成工程とを有する。また、円筒状の繊維強化樹脂成形体を切断して歯車用繊維強化樹脂成形体を形成する工程と、歯車用繊維強化樹脂成形体の中央部に芯金12を加熱圧入する工程と、芯金12が加熱圧入された歯車用繊維強化樹脂成形体に歯切り加工を行う工程とを有する。
平板状の積層繊維層を形成する工程では、図2(a)に示すように、矩形の枠状に形成されるとともに、規制部材としてのピン20aが所定ピッチで配置された治具20を使用する。そして、治具20上にピン20aと係合して折り返すように連続繊維21がピン20a間に配列されて、配列角度0°の繊維層としての0度繊維層22aと、配列角度90°の繊維層としての90度繊維層22bとが交互に複数積層されることにより、2軸配向となる積層繊維層22(図3に図示)が形成される。図2(a)では、連続繊維21の配列間隔が広く図示されているが、繊維層22a,22bは、隣接する連続繊維21同士が接触する状態で配列される。
次に積層繊維層22の所定位置に厚さ方向糸17を挿入する三次元繊維組織形成工程が行われる。厚さ方向糸17の挿入は、例えば、特開平8−218249号公報に開示されている方法と同様に行われる。詳述すれば、図3に示すように、厚さ方向糸挿入装置23は、テーブル24が図示しないレールに沿って移動可能に設けられ、治具20は積層繊維層22を保持した状態でテーブル24上に図示しない支持ブラケットを介して支持される。
厚さ方向糸挿入装置23は、厚さ方向糸挿入針25を1列に固定した状態で支持する針支持体26を備えている。針支持体26は、図示しない駆動手段により、厚さ方向糸挿入針25が支持ブラケットに保持された積層繊維層22と係合不能な待機位置と、針孔25aが積層繊維層22の反対側となる位置まで積層繊維層22を貫通する作用位置とに移動される。厚さ方向糸挿入装置23は、厚さ方向糸挿入針25を積層繊維層22に突き刺す前に、予め積層繊維層22の所定位置に孔を形成する穿孔針27を厚さ方向糸挿入針25と同じ本数備えている。
厚さ方向糸挿入装置23は、治具20上に形成された積層繊維層22を厚さ方向糸挿入針25の挿入側から押圧するプレスプレート28を備えている。治具20を挟んでプレスプレート28と反対側には対を成すプレスブロック29,30が設けられている。両プレスブロック29,30は平面L字状に形成されるとともにプレスプレート28と同じ長さに形成され、積層繊維層22との接触部の幅がピン20aのピッチより広く形成されている。両プレスブロック29,30はプレスプレート28と対向する位置で、厚さ方向糸挿入針25又は穿孔針27の進入を許容する隙間が生じるように互いに近接して配設されている。そして、各プレスブロック29,30は、図示しないエアシリンダにより積層繊維層22を針列の後退側へ押圧する作用位置と、積層繊維層22と係合不能な待機位置とに移動される。
また、テーブル24には支持ブラケットに保持された積層繊維層22の下端と対応する位置に孔24aが形成されている。そして、厚さ方向糸挿入針25列が積層繊維層22を貫通する位置と対応する位置に、抜け止め糸挿通用針31が厚さ方向糸挿入針25の列の配列方向に沿って移動可能に配設されている。抜け止め糸挿通用針31は先端にベラを有し、図示しない駆動装置により往復動されて、作用位置に配置されたときの厚さ方向糸挿入針25列に連なる厚さ方向糸17のループを貫通する作用位置と、積層繊維層22と対応する位置から退避した待機位置とに配置されるようになっている。
そして、厚さ方向糸17の挿入工程では、プレスプレート28及び両プレスブロック29,30により積層繊維層22の厚さ方向糸17の挿入箇所が圧縮状態に保持された状態において、厚さ方向糸挿入針25が、針孔25aが積層繊維層22のプレスブロック30と当接する面側に出るまで積層繊維層22に挿通される。厚さ方向糸挿入針25は前進端に達した後、わずかに後退される。その結果、厚さ方向糸17はU字状のループを形成した状態となる。次に抜け止め糸挿通用針31が前記U字状のループ内を通過し、積層繊維層22の端部まで到達した時点で停止する。この時抜け止め糸Pが抜け止め糸挿通用針31の先端に掛止される。そして、抜け止め糸挿通用針31が引き戻され、抜け止め糸Pが厚さ方向糸17のU字状ループ内に挿通された状態になる。その状態で厚さ方向糸挿入針25が引き戻され、厚さ方向糸17により抜け止め糸Pが締め付けられて0度繊維層22a及び90度繊維層22bが結合される。
次にテーブル24が厚さ方向糸17の挿入ピッチ分移動され、以下、前記と同様にして順次厚さ方向糸17の挿入サイクルが実行され、厚さ方向糸17が積層繊維層22の所定の挿入領域に挿入される。所定の挿入領域とは、円筒状積層繊維層を強化材とした繊維強化樹脂成形体33を形成した後、歯部15を形成した際に歯部15の山15aになる箇所である。その結果、積層繊維層22を構成する0度繊維層22a及び90度繊維層22bが厚さ方向糸17により結合されて三次元繊維組織が製造される。積層繊維層22の厚さ方向糸挿入区域全域への厚さ方向糸17の挿入が終了した後、各ピン20aが治具20から取り外された後、三次元繊維組織が治具20から取り外されて、図2(b)に示すように、平板状の三次元繊維組織32が得られる。図2(b)では繊維層16の図示を省略している。
次に、三次元繊維組織32への樹脂の含浸作業が行われる。樹脂の含浸には、例えば、レジントランスファーモールディング(RTM)法が採用される。RTM法では、樹脂含浸用金型(成形金型)内に三次元繊維組織32を円筒状に変形させて配置する。そして、成形金型内にポリアミド(ナイロン)のモノマーを注入して三次元繊維組織32に含浸させるとともに加熱して重合させた後、成形金型を冷却することにより、図4に示すように円筒状の繊維強化樹脂成形体33が得られる。ポリアミドのモノマーとしては、例えば、ε−カプロラクタムが使用される。なお、図4に示すように、繊維強化樹脂成形体33は、内側に繊維層16のない樹脂部13を有する状態に形成される。
次に繊維強化樹脂成形体33を切断して、繊維強化樹脂歯車11の厚さを有する複数の歯車用繊維強化樹脂成形体を形成する。次に歯車用繊維強化樹脂成形体の中央部に芯金12を加熱圧入して芯金12を中央部に有する環状体を形成する。そして、この環状体の外周部に切削加工で歯車の歯部15を形成することにより繊維強化樹脂歯車11が形成される。
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)繊維強化樹脂歯車11は、少なくとも歯部15が、連続繊維からなるとともに歯車の周方向に沿う面を形成するように歯車の径方向に積層された複数の繊維層16で構成された強化材を有する繊維強化樹脂で形成されている。強化材は、少なくとも歯部15の各山15aと対応する位置に複数の繊維層16を貫通する繊維(厚さ方向糸17)が存在するように形成された三次元繊維組織32で構成されている。したがって、周方向に延びる繊維が切断された状態であっても積層された繊維層16が、繊維層16を貫通する繊維によって結合されているため、歯部15の強度低下、特に剪断力に対する強度低下を抑制することができる。
(2)三次元繊維組織32は、面を形成するように配列された連続繊維(糸)からなる0度繊維層22a及び90度繊維層22bが複数層積層された積層繊維層22を、その積層繊維層22を貫通する方向に配列された厚さ方向糸17で結合した構成である。したがって、繊維層が平織物や綾織物等の織物のように複数の方向に配列された連続繊維が相互に結合された構成に比較して、繊維層を構成する連続繊維が真っ直ぐに延びた状態で配列されるため、繊維強化樹脂部14の強度が高くなる。
(3)各繊維層16を貫通してその厚さ方向に延びる繊維が、厚さ方向糸挿入装置23によって挿入された厚さ方向糸17によって構成されている。したがって、繊維層16の厚さ方向に延びる繊維を、積層繊維層22にニードルパンチを行うことにより形成した場合に比較して、前記繊維を所望の位置に正確に配列させることができる。
(4)繊維強化樹脂歯車11は、芯金12と繊維強化樹脂部14との間に強化繊維が存在しない樹脂部13を有するように構成されている。したがって、繊維強化樹脂歯車11を回転軸に固定する際の芯出しを精度良く行うことができるとともに、芯金12及び繊維強化樹脂部14の体積を必要以上に大きくせずに繊維強化樹脂歯車11を製造することができ、芯金12と繊維強化樹脂部14で構成した繊維強化樹脂歯車11に比較して軽量化及びコスト削減の点で有利である。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を、図5及び図6を参照しながら説明する。この実施形態は、平板状の積層繊維層22を形成せずに、最初から円筒状の積層繊維層を形成して繊維強化樹脂成形体33を形成する点が第1の実施形態と異なっている。また、連続繊維の配列はドライフィラメントワインディングで行う点も第1の実施形態と異なっている。以下、繊維強化樹脂成形体33の製造方法を説明する。
図5に示すように、フィラメントワインディングに使用するマンドレル40は、円柱状に形成されるとともに、複数のピン41aが周方向に等間隔で取り付けられた補助リング41が両端部に取り付けられている。マンドレル40は、フィラメントワインディングで連続繊維が配列されて積層繊維層が形成された後、積層繊維層にニードルパンチを施す際に、ニードルが損傷しないように外側部40aが発泡樹脂で形成されている。
このマンドレル40を使用して、連続繊維21をピン41aに係合させて位置規制をするとともに軸42に巻き掛けて折り返すようにして配列することによりヘリカル巻繊維層を形成し、その上にフープ巻き繊維層を配列する。そして、ヘリカル巻繊維層とフープ巻繊維層とを複数層ずつ積層形成して所定の厚さの円筒状積層繊維層を形成する。
次に円筒状積層繊維層の所定箇所にニードルパンチを施して、所定箇所に少なくとも隣接する繊維層を貫通するように延びる繊維が存在する状態にする。ここで、所定箇所とは、円筒状積層繊維層を強化材とした繊維強化樹脂成形体33を形成した後、歯部15を形成した際に歯部15の山15aになる箇所である。
ニードルパンチが施された後、円筒状積層繊維層をマンドレル40から取り外す。例えば、補助リング41より内側の部分で切断して取り外せば、図6に示すような、円筒状積層繊維層43が得られる。次に、この円筒状積層繊維層43を成形金型内に配置し、成形金型内にポリアミド(ナイロン)のモノマーを注入して円筒状積層繊維層43に含浸させるとともに加熱して重合させた後、成形金型を冷却することにより、円筒状の繊維強化樹脂成形体33が得られる。以下、第1の実施形態と同様にして繊維強化樹脂成形体33から繊維強化樹脂歯車11が形成される。
この実施形態においては、第1の実施形態における効果(1),(2),(4)と同様な効果を有する他に次の効果を有する。
(5)平板状の積層繊維層22を形成せずに直接、円筒状積層繊維層43を形成するため、平板状の積層繊維層22を変形させて円筒を形成した場合と異なり平板の端部同士の接合部がなく、全周にわたって強度が均一になるとともに、製造が容易になる。
(6)隣接する繊維層を貫通するように延びる繊維がニードルパンチによって形成されるため、三次元繊維組織32の厚さ方向糸17のように複数の繊維層全体を貫通するような繊維は少ないが、隣接する繊維層を貫通するように延びる繊維を形成(配列)する装置の構成が簡単になる。
(7)マンドレル40の外側部40aが発泡樹脂で形成されているため、ニードルパンチの際にニードルが損傷する虞がない。また、円筒状積層繊維層43をマンドレル40から取り外す際、外側部40aを破壊してもよいため、円筒状積層繊維層43の取り外しが容易になる。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 図7に示すように、繊維強化樹脂歯車11の歯部15の各山15aと対応する位置に複数の繊維層16を貫通するように存在する繊維として、厚さ方向糸17が少なくとも各歯部15の歯面15bに沿って延びるように配列されたものが存在してもよい。「歯面15bに沿って延びる」とは、例えば、歯車のピッチ円と歯部15との交線(歯すじ)における歯面接線方向と平行に延びることを意味する。この場合、各歯部15の強度がより向上する。
○ 図7に示すように、繊維強化樹脂歯車11の歯部15の各山15aと対応する位置に複数の繊維層16を貫通するように存在する繊維として、厚さ方向糸17が組になる歯車からの荷重方向に少なくとも配列されたものが存在してもよい。この場合、各歯部15の強度がより向上する。
○ 図7に示す繊維強化樹脂歯車11を製造するための繊維強化樹脂成形体33を製造する場合は、例えば、第1の実施形態のように、先ず治具20上に積層繊維層22を形成した後、厚さ方向糸挿入装置23を用いて厚さ方向糸17を挿入する。厚さ方向糸挿入装置23は、テーブル24が回動可能に構成され、厚さ方向糸挿入針25が積層繊維層22に挿通される際の角度を所定の角度に調整可能に構成されている。そして、厚さ方向糸挿入針25の挿入角度が、積層繊維層22に挿入された厚さ方向糸17が、円筒状の繊維強化樹脂成形体33に切削加工で歯部15を形成した際に、歯面15bに沿って延びるように調整された状態で厚さ方向糸17が挿入される。その結果、図8(a)に示すように、厚さ方向糸17が三次元繊維組織32の厚さ方向に対して斜めに挿入された三次元繊維組織32が形成される。そして、図8(b)に示すように、その三次元繊維組織32を円筒状に変形させて成型金型内に配置して、第1の実施形態と同様にして、RTMで繊維強化樹脂成形体33を形成する。なお、図8(a)及び図8(b)では厚さ方向糸17の一部の図示を省略している。
○ 図7に示す繊維強化樹脂歯車11を製造するための繊維強化樹脂成形体33を製造する場合は、例えば、第1の実施形態のように、先ず治具20上に積層繊維層22を形成した後、厚さ方向糸挿入装置23を用いて厚さ方向糸17を挿入する。厚さ方向糸挿入装置23は、テーブル24が回動可能に構成され、厚さ方向糸挿入針25が積層繊維層22に挿通される際の角度を所定の角度に調整可能に構成されている。そして、厚さ方向糸挿入針25の挿入角度が、積層繊維層22に挿入された厚さ方向糸17が、円筒状の繊維強化樹脂成形体33に切削加工で歯部15を形成した際に、組になる歯車からの荷重方向に沿って延びるように調整された状態で厚さ方向糸17が挿入される。その結果、図8(a)に示すように、厚さ方向糸17が三次元繊維組織32の厚さ方向に対して斜めに挿入された三次元繊維組織32が形成される。そして、図8(b)に示すように、その三次元繊維組織32を円筒状に変形させて成型金型内に配置して、第1の実施形態と同様にして、RTMで繊維強化樹脂成形体33を形成する。なお、図8(a)及び図8(b)では厚さ方向糸17の一部の図示を省略している。
○ 繊維層16を貫通する厚さ方向糸17は、U字状に折り返して、抜け止め糸Pで抜け止めされる構成に限らず、抜け止め糸Pを用いずに、単にU字状に折り返した状態で挿入される構成としてもよい。
○ 歯面15bに沿って延びる繊維は、全ての繊維層16を貫通するように配列される厚さ方向糸17に限らず、ニードルパンチにより形成され、一部の繊維層16を貫通するように配列された繊維であってもよい。
○ 繊維強化樹脂部14の強化材として用いられる三次元繊維組織32は、一方向に配列された連続繊維だけで構成される繊維層として0度繊維層22a及び90度繊維層22bの2種類に限らず、0度繊維層22a及び90度繊維層22bに加えて、例えば、+45度の配向角及び−45度の配向角で配列された繊維層が存在する構成としてもよい。
○ 三次元繊維組織32を構成する繊維層は、一方向に配列された連続繊維だけで構成される場合に限らず、平織物や綾織物等の織物のように複数の方向に配列された連続繊維が相互に結合された構成やあるいは組紐状組織体で構成されたものであってもよい。
○ フィラメントワインディングで円筒状積層繊維層43を形成する場合、連続繊維21を巻き付ける代わりに、織布又は組紐で形成されたテープを巻き付けてもよい。
○ 複数の円環状リングを複数のロッドで連結した構成の治具を使用して、一方向に配列された連続繊維だけで構成される繊維層として配向角の異なる繊維層で円筒状積層繊維層43を形成し、厚さ方向糸17で各繊維層を結合してもよい。また、同じ治具を使用するとともにピンを取り外した状態で織布又は組み物を治具に巻き付けて円筒状積層繊維層43を形成し、厚さ方向糸17で織布又は組み物の重なった部分を結合したり、ニードルパンチで発生した繊維で結合したりしてもよい。
○ 複数の繊維層を貫通する繊維は、単なる繊維に限らず繊維に樹脂を含浸させてロッド状にしたものであってもよい。例えば、図9に示すように、積層繊維層22にロッド34を挿入した構成であってもよい。樹脂としては、繊維強化樹脂成形体33のマトリックス樹脂と相溶性のある樹脂、特に同じ樹脂が好ましい。なお、図9では一部のロッド34の図示を省略している。
○ 繊維強化樹脂成形体33において、複数の繊維層を貫通する繊維は、少なくとも歯部15の各山15aと対応する位置に存在すればよく、山15a以外の部分、例えば谷部と対応する位置や、歯部15より内側の部分には複数の繊維層を貫通する繊維が存在しなくてもよい。なお、谷部とは歯底円から飛び出ていない部分を意味する。
○ 平板状の三次元繊維組織32を円筒状にした際、合わせ部を円筒の径方向に延びる平面とする代わりに、図10(a)に示すように、合わせ部35を三次元繊維組織32の長さ方向(軸線方向)においてジグザグ状に形成したり、図10(b)に示すように、合わせ部35を三次元繊維組織32の厚さ方向においてジグザグ状に形成したりしてもよい。また、図10(c)に示すように、合わせ部35を単純な平面にするとともに、三次元繊維組織32を二重に設けて、合わせ部35の位置が重ならない状態で円筒にしてもよい。
○ 繊維強化樹脂歯車11は、樹脂部13を設けずに、芯金12の外周に繊維強化樹脂部14が形成された構成としたり、芯金12を設けずに、繊維強化樹脂歯車11全体を繊維強化樹脂部14のみで構成したりしてもよい。
○ 強化材に使用される連続繊維は、炭素繊維やアラミド繊維に限らず、超高分子量ポリエチレン繊維やポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(PBO繊維)等の高強度繊維を使用したり、要求物性によってはガラス繊維やポリエステル繊維等を使用したりしてもよい。
○ マトリックス樹脂はモノマーキャストナイロン樹脂に限らず、他の熱可塑性樹脂や熱硬化製樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂としてはポリアミド以外の他のエンジニアリングプラスチックであるポリカーボネートやポブチレンテレフタレートやポリアセタール等を使用してもよい。また、熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂やビニールエステル系樹脂が使用される。ポリマー状態の熱可塑性樹脂を三次元繊維組織32に含浸させる場合は、成形型をマトリックス樹脂の溶融温度より高温に加熱した状態で溶融状態の熱可塑性樹脂を加圧状態で注入する。
○ 歯車は平歯車に限らず、他の種類の歯車でもよい。例えば、斜歯歯車(ヘリカルギア)、山歯歯車、かさ歯車(ベベルギア)、ラック、ピニオン、ウォーム歯車等に適用してもよい。
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)少なくとも歯部が、連続繊維からなる複数の繊維層で構成された強化材を有する繊維強化樹脂で形成された繊維強化樹脂歯車であって、前記強化材は、少なくとも前記歯部の各山と対応する位置において少なくとも隣接する繊維層を貫通するように延びる繊維が配列されていることを特徴とする繊維強化樹脂歯車。
(2)請求項1又は請求項2に記載された発明において、前記三次元繊維組織は少なくとも周方向に沿って配列された連続繊維からなる周方向繊維層、周方向と直交する方向に配列された連続繊維からなる繊維層を含む複数の繊維層が積層されるとともに、積層された複数の繊維層が繊維層を貫通するように延びる厚さ方向糸で結合された構成となっている。
(3)請求項1又は請求項2に記載された発明において、前記三次元繊維組織は前記繊維層が平織物又は綾織物で構成され、積層された複数の繊維層が繊維層を貫通するように延びる厚さ方向糸で結合された構成となっている。
第1の実施形態における繊維強化樹脂歯車の模式側面図。 (a)は連続繊維の配列状態を示す模式平面図、(b)は三次元繊維組織の模式図。 厚さ方向糸挿入装置を示す概略斜視図。 繊維強化樹脂成形体の模式図。 第2の実施形態のマンドレル及び連続繊維の配列状態を示す模式斜視図。 円筒状積層繊維層の模式斜視図。 別の実施形態の繊維強化樹脂歯車の部分模式側面図。 (a)は別の実施形態の三次元繊維組織を示す模式図、(b)は三次元繊維組織を円筒状に変形させた状態を示す模式図。 別の実施形態における三次元繊維組織を示す模式図。 (a)は三次元繊維組織を円筒状に変形させた状態の合わせ面を示す模式斜視図、(b)は別の実施形態の合わせ面を示す部分模式図、(c)は別の実施形態の三次元繊維組織を二重にして円筒状に変形させた状態を示す模式図。 従来技術の繊維強化樹脂歯車の模式側面図。
符号の説明
11…繊維強化樹脂歯車、15…歯部、15a…山、15b…歯面、16,22a,22b…繊維層、17…繊維層を貫通する繊維としての厚さ方向糸、21…連続繊維、32…三次元繊維組織、34…繊維層を貫通する繊維としてのロッド。

Claims (4)

  1. 少なくとも歯部が、連続繊維からなるとともに歯車の周方向に沿う面を形成するように歯車の径方向に積層された複数の繊維層で構成された強化材を有する繊維強化樹脂で形成された繊維強化樹脂歯車であって、
    前記強化材は、少なくとも前記歯部の各山と対応する位置に前記複数の繊維層を貫通する繊維が存在するように形成された三次元繊維組織で構成されていることを特徴とする繊維強化樹脂歯車。
  2. 前記歯部の各山と対応する位置に前記複数の繊維層を貫通するように存在する繊維として、少なくとも前記各歯部の歯面に沿って延びるように配列されたものが存在する請求項1に記載の繊維強化樹脂歯車。
  3. 少なくとも歯部が、連続繊維からなるとともに歯車の周方向に沿う面を形成するように歯車の径方向に積層された複数の繊維層で構成された強化材を有する繊維強化樹脂で形成された繊維強化樹脂歯車であって、
    前記強化材は、少なくとも前記歯部の各山と対応する位置に、ニードルパンチにより形成されて、少なくとも隣接する繊維層を貫通するように延びる繊維が存在していることを特徴とする繊維強化樹脂歯車。
  4. 前記歯部の各山と対応する位置に、隣接する繊維層を貫通するように延びる繊維として、少なくとも前記各歯部の歯面に沿って延びるように配列されたものが存在する請求項3に記載の繊維強化樹脂歯車。
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